IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本化薬株式会社の特許一覧

特開2024-139795色素増感太陽電池用シール剤及びそれを用いた色素増感太陽電池
<>
  • 特開-色素増感太陽電池用シール剤及びそれを用いた色素増感太陽電池 図1
  • 特開-色素増感太陽電池用シール剤及びそれを用いた色素増感太陽電池 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139795
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】色素増感太陽電池用シール剤及びそれを用いた色素増感太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/20 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H01G9/20 303A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050698
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内藤 正弘
(72)【発明者】
【氏名】安達 拓哉
(57)【要約】
【課題】
本発明は、電解液封止性、酸化物半導体電極への接着性、高温高湿信頼性に優れる色素増感太陽電池用シール剤を提供する。
【解決手段】
(A)硬化性化合物と、(B)光重合開始剤と、(C)リン酸基を含有する(メタ)アクリレートを含有する色素感太陽電池用シール剤。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)硬化性化合物と、(B)光重合開始剤と、(C)リン酸基を含有する(メタ)アクリレートを含有する色素感太陽電池用シール剤。
【請求項2】
前記成分(A)として、分子内に(メタ)アクリル基を有するポリブタジエン化合物を含有する請求項1に記載の色素増感太陽電池用シール剤。
【請求項3】
さらに、(D)無機フィラーを含有する請求項1に記載の色素増感太陽電池用シール剤。
【請求項4】
さらに、(E)シランカップリング剤を含有する請求項1に記載の色素増感太陽電池用シール剤。
【請求項5】
さらに、(F)チオール基を有する化合物を含有する請求項1に記載の色素増感太陽電池用シール剤。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池用シール剤を有してなる太陽電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感太陽電池用シール剤及びそれを用いた色素増感太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンなエネルギー源として注目されている太陽電池は、近年になって一般の住宅にも利用されるようになってきた。しかし、未だ充分に普及するには至っていない。その理由としては、太陽電池素子の性能が充分優れているとは言い難いためモジュールを大きくせざるを得ないことや、モジュール製造における生産性が低いため高価であること等が挙げられる。
【0003】
太陽電池にはいくつかの種類があるが、実用化されている太陽電池の大部分はシリコン太陽電池である。しかし、最近になって注目されるようになり、その実用化を目指して研究されているものに色素増感太陽電池がある。現在の色素増感太陽電池の原型は、1991年にグレッツェル(スイス)らによって開発され、グレッツェルセルとも呼ばれる。その構造は、色素によって増感された酸化物半導体微粒子層を有する導電性支持体(酸化物半導体電極)、対向電極としての白金等の対極を有する第二の導電性支持体、両極間に狭持された電荷移動層(レドックス物質を含む電解液等)、及び電荷移動層の周囲に配された樹脂等のシール剤からなるのが一般的である。また、その性能は、例えばルテニウム錯体色素を多孔質酸化チタン電極に吸着させることにより、アモルファスシリコン太陽電池並みの光電変換効率を有するまでに至っている(非特許文献1)。しかし、その実用化に向けては未だ多くの課題が残されており、電池の大面積化に対応した生産性の向上や、長期間使用するための耐久性の向上は、克服すべき重要な課題の一つとなっている。
【0004】
一般的に色素増感太陽電池は、酸化物半導体電極と対向電極の間に所定の間隙を設け、その状態で両極をシール剤で貼り合せた後、電荷移動層となる電解液を注入して製造される。電解液の注入法としては、例えば特許文献1に記載のように、対向電極に2つの貫通孔を設け、片方を注入孔、他方を脱気孔として用いて、毛細管現象を利用して注入する方法や、特許文献2に記載のように、対向電極に1つの貫通孔を設け、減圧下で貫通孔を電解液に浸漬し、大気解放後に大気圧により電解液を注入する方法等が挙げられる。しかしながら、これらの電解液注入工法は、作成する電池が大面積化するに伴い注入工程のタクトタイム(注入工程に要する時間)が大幅に長くなり、生産性が大きく低下する問題を抱えている。また、事前に電極に注入孔を設けなければならず、さらに電解液注入後には注入孔を封止せねばならないため、製造工程が増える。加えて、注入孔封止部分から電解液が漏れるリスクがあるため、耐久性が損なわれるおそれもある。
【0005】
前記のような問題を解決するため、特許文献3、特許文献4、特許文献5等では、一方の電極上に半導体含有層を取り囲む形となるようにシール剤の堰を切れ目なく配置し、該シール剤の堰の内側に所定量の電解液を滴下した後に他方の電極を重ね合せ、セルギャップ形成した後にシール剤を硬化させる工程を含む色素増感太陽電池の製造法(電解液滴下工法)が開示されている。これらの製造法によれは、電解液注入工程のタクトタイムが大幅に短縮されると共に、電極に注入孔を設ける工程及び注入孔を封止する工程が不要なことから製造工程数も低減可能であり、さらに得られる太陽電池が注入孔封止部分を持たないため、封止性の優れた色素増感太陽電池を製造できる等の効果が得られる。
【0006】
しかしながら、前期の製造方法では、一般的に色素増感太陽電池に用いられるレドックス対を含む電解液と未硬化のシール剤とが接触した状態でシール剤を硬化せねばならず、かつ製造したセルにおいてシール剤は電解液を保護する為に外部環境温度や湿度に対しての耐久性が必要とされる為、信頼性の高い色素増感太陽電池を製造するには、シール剤の選択が重要となる。適切でないシール剤を用いた場合、太陽電池のセルギャップ形成時の圧力やシール剤硬化時の内圧上昇によって電解液がシール剤の堰を破って噴出する不良が発生し、製造後においては高温高湿環境下での使用において電解液の膨張またはシール剤の酸化物半導体電極に対する接着強度の低下によりシール剤が剥離し、セル内部から電解液が漏出する又はセル外部から気泡が侵入する等の故障が発生し、満足な信頼性性能を有する色素増感太陽電池を得られないおそれがある。
【0007】
また、一般的に硬化性化合物のような有機物と酸化物半導体電極のような無機物を接着させるためには、水酸基等の官能基を有する化合物を添加する事により、硬化性化合物の極性を高くする事で水素結合により接着強度を高める方法や、シランカップリング剤に代表されるカップリング剤の添加によって有機物と無機物を化学的に結合させる方法が用いられるが、電解液滴下工法において比較的極性の高い電解液をシール剤が未硬化の状態で一旦封入させてから硬化させる為には、硬化性化合物を低極性にする事が好ましく、且つカップリング剤自体も電解液に溶解し易い傾向がある為、電解液の封止性と酸化物半導体電極に対する接着強度を両立する事が困難であった。未硬化のシール剤と電解液が接触する工程を含む電解液滴下工法は、優れた性能と高い生産性の色素増感太陽電池を実現できる可能性が高いものの、該工法で用い得る満足のいくシール剤は存在しておらず、未だ多くの問題が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-348783号公報
【特許文献2】特許第4037618号公報
【特許文献3】国際公開第2007/046499号
【特許文献4】特開2007-220608号公報
【特許文献5】特開2009-283228号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Nature,第353巻,第737~740頁,1991年
【非特許文献2】C.J.Barbe,F Arendse,P Compt and M.Graetzel J.Am.Ceram.Soc.,80,12,3157-71(1997).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電解液封止性、酸化物半導体電極への接着性、高温高湿信頼性に優れる色素増感太陽電池用シール剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち本発明は、次の[1]~[6]に関するものである。なお、本願において「(数値1)~(数値2)」は上下限値を含むことを示す。また、(メタ)アクリル基とは、メタクリル基および/またはアクリル基を意味し、(メタ)アクリレートとはメタクリレートおよび/またはアクリレートを意味する。
[1]
(A)硬化性化合物と、(B)光重合開始剤と、(C)リン酸基を含有する(メタ)アクリレートを含有する色素感太陽電池用シール剤。
[2]
前記成分(A)として、分子内に(メタ)アクリル基を有するポリブタジエン化合物を含有する色素増感太陽電池用シール剤。
[3]
さらに、(D)無機フィラーを含有する前項[1]または[2]に記載の色素増感太陽電池用シール剤。
[4]
さらに、(E)シランカップリング剤を含有する前項[1]から[3]のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池用シール剤。
[5]
さらに、(F)チオール基を有する化合物を含有する前項[1]から[4]のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池用シール剤。
[6]
前項[1]から[5]のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池用シール剤を有してなる太陽電池。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電解液封止性、酸化物半導体電極への接着性、高温高湿信頼性に優れる色素増感太陽電池用シール剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の色素増感太陽電池の構造を説明する要部断面模式図
図2】酸化物半導体接着強度試験用貼り合わせ基板
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の色素増感太陽電池用シール剤(以下単に「シール剤」ともいう。)は(A)硬化性化合物、(B)光重合開始剤及び(C)リン酸基を含有する(メタ)アクリレートを含有するものである。
【0015】
本発明のシール剤は電解液封止性、酸化物半導体電極への接着性、高温高湿信頼性に優れるものであり、特に、未硬化のシール剤と電解液が接触する工程を含む電解液滴下工法において優れた性能を発現することができる。
【0016】
[(A)硬化性化合物]
本発明のシール剤は、成分(A)として、硬化性化合物(単に「成分(A)」ともいう。)を含有する。成分(A)としては、光や熱等によって硬化する化合物であれば特に限定されないが、(メタ)アクリル基またはエポキシ基を有する化合物である場合が好ましく、特に好ましくは(メタ)アクリル基を有する化合物であり、例えば、(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、分子内に(メタ)アクリル基を有するポリブタジエン化合物、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、成分(A)には、後述のリン酸基を有する(メタ)アクリレートは含まれないものとする。
【0017】
[(メタ)アクリレート]
(メタ)アクリレートの具体例としては、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、アクリロイルモルホリン、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルポリエトキシ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールモノエトキシ(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート、p-クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリラート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールとヒドロキシピバリン酸のエステルジアクリレートやネオペンチルグリコールとヒドロキシピバリン酸のエステルのε-カプロラクトン付加物のジアクリレート等のモノマー類を挙げることができる。好ましくは、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0018】
[エポキシ(メタ)アクリレート]
エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応により公知の方法で得られる。原料となるエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ樹脂が好ましく、例えば、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他、カテコール、レゾルシノール等の二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられる。好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂やレゾルシンジグリシジルエーテルを挙げることができる。また、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基との比率は限定されるものではなく、工程適合性の観点から適切に選択される。
【0019】
[分子内に(メタ)アクリル基を有するポリブタジエン化合物]
分子内に(メタ)アクリル基を有するポリブタジエン化合物としては、例えば、日本曹達株式会社製TEAI-1000、TE-2000として市場から入手することができる。これら分子内に(メタ)アクリル基を有するポリブタジエン化合物の数平均分子量は、電解液汚染の観点から、成分下限は500が好ましく、更に好ましくは750、特に好ましくは1000である。また、ハンドリング性の観点から、数平均分子量の上限は10000が好ましく、更に好ましくは8000、特に好ましくは6000である。
【0020】
分子内に(メタ)アクリル基を有するポリブタジエン化合物は単独で用いても良いし、2種類以上を混合しても良い。分子内に(メタ)アクリル基を有するポリブタジエン化合物は、成分(A)総量100質量部に対して40~80質量部含有することが好ましく、さらに好ましくは50~70質量部である。分子内に(メタ)アクリル基を有するポリブタジエン化合物を40質量部以上含有することで電解液低汚染性に優れ、80質量部以下とすることで他成分との配合により性能向上を図ることができる。
【0021】
成分(A)は単独で用いても良いし、2種類以上を混合しても良い。また、成分(A)の総量100質量部中(メタ)アクリル基を有する化合物の含有量は80~100質量部であることが好ましく、100質量部であることが特に好ましい。
【0022】
[(B)光ラジカル重合開始剤]
本発明のシール剤は、成分(B)として光ラジカル重合開始剤(単に「成分(B)」ともいう。)を含有しても良い。光ラジカル重合開始剤としては、紫外線や可視光の照射によって、ラジカルや酸を発生し、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、例えば、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、2-エチルアンスラキノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-メチル-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノ-1-プロパン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスヒンオキサイド、カンファーキノン、9-フルオレノン、ジフェニルジスルフィド等を挙げることができる。具体的には、IRGACURERTM651、184、2959、127、907、369、379EG、819、784、754、500、OXE01、OXE02、OXE03、OXE04、DAROCURERTM1173、LUCIRINRTMTPO(いずれもBASF社製)、セイクオールRTMZ、BZ、BEE、BIP、BBI(いずれも精工化学株式会社製)等を挙げることができる。これらの中で、好ましくは、オキシムエステル系開始剤であるIRGACURERTMOXE01、OXE02、OXE03、OXE04である。
【0023】
本発明のシール剤において、成分(B)を使用する場合には、シール剤総量100質量部中0.001~3質量部含有することが好ましく、さらに好ましくは0.002~2質量部である。
【0024】
本発明のシール剤は、成分(C)としてリン酸基を有する(メタ)アクリレート(単に「成分(C)」ともいう。)を含有する。リン酸基を有する(メタ)アクリレートとは、1分子内にリン酸基を1個以上、好ましくは1~5個含有し、かつ(メタ)アクリロイル基を1個以上、好ましくは1~3個含有する化合物である。成分(C)は、そのリン酸基がITO(インジウムドープ酸化スズ)等の酸化物と結合し、且つアクリレート基が成分(A)と結合することにより、シール剤と酸化物半導体電極への接着強度を高めることが可能となり、高温高湿条件下においてもシール剤の剥離が無く、セル内の電解液を保持することが可能となる。
【0025】
成分(C)の添加量はシール剤総量100質量部中0.05~10質量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.3~5質量部であり、特に好ましくは0.5~3質量部である。10質量部より多いと接着剤組成物の硬化物の透明性が悪くなるおそれがあり、0.05質量部より少ないと十分な接着性が得られない。成分(C)は、単独で用いるか、または2種以上を併用することができる。
【0026】
成分(C)としては、特に限定されないが、例えば、2-(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート(例えば、共栄社化学社製の「ライトエステルP-1M」、「ライトアクリレートP-1A」等)、リン酸メチレン(メタ)アクリレート、リン酸エチレン(メタ)アクリレート、リン酸プロピレン(メタ)アクリレート、リン酸テトラメチレン(メタ)アクリレート等のリン酸アルキレン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレートのリン酸エステル、ポリプロピレングリコールモノメタクリレートのリン酸エステル、ビス(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート(例えば、共栄社化学社製の「ライトエステルP-2M」、「ライトアクリレートP-2A」等)、エチレンオキサイド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、トリス(2-アクリロイルオキシエチル) ホスフェート、カプロラクトン変性リン酸モノ(メタ)アクリレートとカプロラクトン変性リン酸ジ(メタ)アクリレートの混合物(例えば、日本化薬社製の「KAYAMER PM-21」等)等を挙げることができる。
【0027】
[(D)無機フィラー]
本発明のシール剤は、成分(D)として無機フィラー(単に「成分(D)」ともいう。)を含有しても良い。成分(D)としては、例えばシリカ、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、アスベスト等が挙げられ、好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウムが挙げられるが、好ましくはシリカ、アルミナ、タルクである。これら無機フィラーは2種以上を混合して用いても良い。
【0028】
本発明のシール剤において、成分(D)を使用する場合には、シール剤総量100質量中5~60質量部含有することが好ましく、さらに好ましくは5~50質量部である。無機フィラーの含有量が5質量部より低い場合、ガラス基板に対する接着強度が低下し、また耐湿信頼性も劣るために、吸湿後の接着強度の低下も大きくなる場合がある。又、無機フィラーの含有量が60質量部より多い場合、フィラー含有量が多すぎるため、色素増感太陽電池の製造時、2枚の電極を貼り合わせる際のギャップ形成に支障をきたすおそれがある。
【0029】
[(E)シランカップリング剤]
本発明のシール剤は、成分(E)としてシランカップリング剤(単に「成分(E)」ともいう。)を含有しても良い。成分(E)としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N-(2-(ビニルベンジルアミノ)エチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤はKBMシリーズ、KBEシリーズ等として信越化学工業株式会社等によって販売されている為、市場から容易に入手可能である。本発明のシール剤において、成分(E)を使用する場合には、シール剤総量100質量中0.05~3質量部含有することが好ましい。
【0030】
[(F)チオール基を有する化合物]
本発明のシール剤は、成分(F)としてチオール基を有する化合物(単に「成分(F)」ともいう。)を含有しても良い。成分(F)としては、メタンジチオール、1,2-ジメルカプトエタン、1,2-ジメルカプトプロパン、2,2-ジメルカプトプロパン、1,3-ジメルカプトプロパン、1,2,3-トリメルカプトプロパン、1,4-ジメルカプトブタン、1,6-ジメルカプトヘキサン、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,5-ジメルカプト-3-オキサペンタン、1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジチオール、3,4-ジメトキシブタン-1,2-ジチオール、2-メルカプトメチル-1,3-ジメルカプトプロパン、2-メルカプトメチル-1,4-ジメルカプトブタン、2-(2-メルカプトエチルチオ)-1,3-ジメルカプトプロパン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン、1,1,1-トリス(メルカプトメチル)プロパン、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールビス(2-メルカプトアセテート)、1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,1-ジメルカプトシクロヘキサン、1,4-ジメルカプトシクロヘキサン、1,3-ジメルカプトシクロヘキサン、1,2-ジメルカプトシクロヘキサン、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2-メルカプトアセテート)、1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプト-2-プロパノール、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、1,2-ジメルカプト-1,3-ブタンジオール、ヒドロキシチル-トリス(メルカプトエチルチオメチル)メタン、ヒドロキシエチルチオメチル-トリス(メルカプトエチルチオ)メタン、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロオネート)、プロピレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、オクタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(4-メルカプトブチレート)、プロピレングリコールビス(4-メルカプトブチレート)、ブタンジオールビス(4-メルカプトブチレート)、オクタンジオールビス(4-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(4-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(4-メルカプトブチレート)、エチレングリコールビス(6-メルカプトバレレート)、プロピレングリコールビス(6-メルカプトバレレート)、ブタンジオールビス(6-メルカプトバレレート)、オクタンジオールビス(6-メルカプトバレレート)、トリメチロールプロパントリス(6-メルカプトバレレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(6-メルカプトバレレート)、1,6-ヘキサンジチオール、1,9-ノナンジチオール、1,10-デカンジチオール、4,4’-ビス(メルカプトメチル)フェニルスルフィド、2,4’-ビス(メルプトメチル)フェニルスルフィド、2,4,4’-トリ(メルカプトメチル)フェニルスルフィド、2,2’,4,4’-テトラ(メルカプトメチル)フェニルスルフィド、1,3,5-トリス[2-(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ポリサルファイドポリマー等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上混合して用いても良い。これらのうち、好ましいものは、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,3,5-トリス[2-(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)が好ましく、さらに好ましくは、2級チオール構造を持つ1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)が特に好ましい。
【0031】
上記チオール基を有する化合物は、公知の方法で製造してもよく、市販されているものを使用してもよい。市販されているものとしては、カレンズMTRTMPE1、BD1、NR1、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)(いずれもレゾナック株式会社製)、ポリチオールRTM340M(東レ・ファインケミカル株式会社製)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(SC有機化学社製)等が挙げられる。
【0032】
また、分子内に3官能以上のチオール基を有する化合物であることも好ましい。例えば、2,4,4’-トリ(メルカプトメチル)フェニルスルフィド、2,2’,4,4’-テトラ(メルカプトメチル)フェニルスルフィド、1,3,5-トリス[2-(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン等が挙げられる。架橋密度の向上により、耐熱性等を向上できるためである。
【0033】
本発明のシール剤において、成分(F)を使用する場合には、シール剤総量100質量中1~10質量部含有することが好ましい。
【0034】
[有機フィラー]
本発明のシール剤は、有機フィラーを含有しても良い。上記有機フィラーとしては、例えばウレタン微粒子、アクリル微粒子、スチレン微粒子、スチレンオレフィン微粒子及びシリコーン微粒子が挙げられる。なおシリコーン微粒子としてはKMP-594、KMP-597、KMP-598(信越化学工業製)、トレフィルRTME-5500、9701、EP-2001(東レダウコーニング社製)が好ましく、ウレタン微粒子としてはJB-800T、HB-800BK(根上工業株式会社)、スチレン微粒子としてはラバロンRTMT320C、T331C、SJ4400、SJ5400、SJ6400、SJ4300C、SJ5300C、SJ6300C(三菱ケミカル社製)が好ましく、スチレンオレフィン微粒子としてはセプトンRTMSEPS2004、SEPS2063が好ましい。
これら有機フィラーは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また2種以上を用いてコアシェル構造としても良い。これらのうち、好ましくは、アクリル微粒子、シリコーン微粒子である。
【0035】
[熱ラジカル重合開始剤]
本発明のシール剤は、熱ラジカル重合開始剤を含有して、硬化速度、硬化性を向上することができる。
熱ラジカル重合開始剤は、加熱によりラジカルを生じ、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、有機過酸化物、アゾ化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾピナコール等が挙げられ、ベンゾピナコールが好適に用いられる。例えば、有機過酸化物としては、カヤメックRTMA、M、R、L、LH、SP-30C、パーカドックスCH-50L、BC-FF、カドックスB-40ES、パーカドックス14、トリゴノックスRTM22-70E、23-C70、121、121-50E、121-LS50E、21-LS50E、42、42LS、カヤエステルRTMP-70、TMPO-70、CND-C70、OO-50E、AN、カヤブチルRTMB、パーカドックス16、カヤカルボンRTMBIC-75、AIC-75(化薬アクゾ株式会社製)、パーメックRTMN、H、S、F、D、G、パーヘキサRTMH、HC、TMH、C、V、22、MC、パーキュアーRTMAH、AL、HB、パーブチルRTMH、C、ND、L、パークミルRTMH、D、パーロイルRTMIB、IPP、パーオクタRTMND(日油株式会社製)などが市販品として入手可能である。
【0036】
また、アゾ化合物としては、VA-044、086、V-070、VPE-0201、VSP-1001(富士フイルム和光純薬株式会社製)等が市販品として入手可能である。
【0037】
熱ラジカル重合開始剤の含有量としては、本発明のシール剤総量100質量部中0.0001~10質量部含有することが好ましく、さらに好ましくは0.0005~5質量部であり、0.001~3質量部であることが特に好ましい。
【0038】
本発明のシール剤には、さらに必要に応じて、ラジカル重合防止剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、溶剤などの添加剤を配合することができる。これらの添加剤は、電荷移動層に対する汚染性の低いものが好ましい。
【0039】
[ラジカル重合防止剤]
上記ラジカル重合防止剤としては、光ラジカル重合開始剤や熱ラジカル重合開始剤等から発生するラジカルと反応して重合を防止する化合物であれば特に限定されるものではなく、キノン系、ピペリジン系、ヒンダードフェノール系、ニトロソ系等を用いることができる。具体的には、ナフトキノン、2-ヒドロキシナフトキノン、2-メチルナフトキノン、2-メトキシナフトキノン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシル、2,2,6,6-テトラメチル-4-メトキシピペリジン-1-オキシル、2,2,6,6-テトラメチル-4-フェノキシピペリジン-1-オキシル、ハイドロキノン、2-メチルハイドロキノン、2-メトキシハイドロキノン、パラベンゾキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルクレゾール、ステアリルβ-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β―(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]、2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニルプロピオネート)メタン]、1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-sec-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン、パラメトキシフェノール、4-メトキシ-1-ナフトール、チオジフェニルアミン、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミンのアルミニウム塩、商品名アデカスタブLA-81、商品名アデカスタブLA-82(株式会社アデカ製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうちナフトキノン系、ハイドロキノン系、ニトロソ系、ピペラジン系のラジカル重合防止剤が好ましく、ナフトキノン、2-ヒドロキシナフトキノン、ハイドロキノン、2,6-ジ-tert-ブチル-P-クレゾール、ポリストップ7300P(伯東株式会社製)が更に好ましく、ポリストップ7300P(伯東株式会社製)が最も好ましい。
【0040】
ラジカル重合防止剤の含有量としては本発明のシール剤総量100質量中0.0001~1質量部含有することが好ましく、さらに好ましくは0.001~0.5質量部であり、特に好ましくは0.01~0.2質量部である。
【0041】
本発明のシール剤を得る方法の一例としては、次に示す方法がある。まず、成分(A)、(B)を加熱溶解する。次いで室温まで冷却後成分(C)を添加し、必要に応じて成分(D)、(E)、(F)、消泡剤、及びレベリング剤、溶剤等を添加し、公知の混合装置、例えば3本ロール、サンドミル、ボールミル、プラネタリミキサー等により均一に混合することにより製造することができる。必要により、混合が終わったあと夾雑物を除く為に、濾過処理を施してもよい。
【0042】
以下、本発明のシール剤を用いて製造される太陽電池について詳細に説明する。以下の具体的な実施形態は、単なる例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
一般に、色素増感太陽電池は、色素で増感された半導体含有層を表面に有する第一の導電性支持体(酸化物半導体電極)、対向電極としての第二の導電性支持体、及び電荷移動層を主要な構成要素として構成される。本発明のシール剤は、第一と第二の導電性支持体を接着し、かつ両支持体間に電荷移動層を保持する目的で用いられる。導電性支持体としては、例えばFTO(フッ素ドープ酸化スズ)、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、ITO(インジウムドープ酸化スズ)に代表される導電性物質を、ガラス、プラスチック、ポリマーフィルム、石英、シリコン等の基板の表面に薄膜化させたものが用いられる。基板の厚みは、通常0.01~10mmであり、その形状はフィルム状から板状まで様々な態様を取り得るが、2枚の基板のうち少なくとも一方には光透過性のある基板が用いられる。導電性支持体の導電性は、通常1000Ω/cm以下、好ましくは100Ω/cm以下である。
【0044】
半導体含有層の調製に用いられる酸化物半導体としては、金属カルケニドの微粒子が好ましい。その具体例としてはTi、Zn、Sn、Nb、W、In、Zr、Y、La、Ta等の遷移金属の酸化物、Alの酸化物、Siの酸化物、SiTiO 、CaTiO 、BaTiO等のペロブスカイト型酸化物等が挙げられる。これらの中でTiO 、ZnO、SnO が特に好ましい。また、これらは混合して用いても良く、SnO -ZnO混合系が好ましい例として挙げられる。混合系の場合は、微粒子の状態で混合したり、以下に述べるスラリーもしくはペースト状態で混合したり、各成分を層状に重ねて用いてもよい。スラリーまたはペースト中の酸化物半導体の濃度は通常1~90質量%、好ましくは5~80質量%である。用いられる酸化物半導体の一次粒径は通常1~200nm、好ましくは1~50nmである。
【0045】
半導体含有層の調製方法は、酸化物半導体からなる薄膜を蒸着により直接基板上に作製する方法、スラリーまたはペーストを基板上に塗布またはコートした後、圧力を加えることで作製する方法、基板を電極として電気的に析出させる方法、スラリーまたはペーストを基板上に塗布またはコートした後、乾燥し、硬化もしくは焼成する方法等がある。塗布またはコート法としては、バーコーター法、ディップコーティング法、スピンコート法、スプレー法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、ディスペンス法等が挙げられる。
【0046】
これらの方法は、基板の種類、形態により適宜選択あるいは併用することが可能である。酸化物半導体電極の性能上、スラリーまたはペーストを用いる方法が好ましい。スラリーは、例えば、2次凝集している酸化物半導体の微粒子を、分散剤を用いて分散媒中に平均1次粒子径が通常1~200nmになるように分散させることにより、又は、ゾルゲル法にて酸化物半導体の前駆体であるアルコキサイド等を加水分解することにより得られる。また、粒径分布の異なる酸化物半導体の微粒子を混合して用いてもよい。
【0047】
スラリーを分散させる分散媒としては、酸化物半導体の微粒子を分散できるものであれば特に限定されない。分散媒として、水、エタノール、ターピネオール等のアルコール、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン等の炭化水素等の有機溶媒が用いられる。これらは混合して用いても良い。水を用いることはスラリーの粘度変化を少なくするという点で好ましい。安定した一次微粒子を得る目的で、スラリーに分散安定剤等を加えてもよい。用いられる分散安定剤の具体例としては、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、フェノール、オクチルアルコール等の1価アルコール等の自己またはこれら相互間の共縮合物;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリアクリルアミド;アクリルアミド、(メタ)アクリル酸若しくはその塩、(メタ)アクリル酸エステル((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等)等の自己または相互間の共縮合物;アクリルアミド、(メタ)アクリル酸若しくはその塩、(メタ)アクリル酸エステル等とスチレン、エチレン、プロピレン等の疎水性モノマーとの共重合体で水溶性であるポリアクリル酸系誘導体;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩;ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩;高分子量のリグニンスルホン酸塩;塩酸、硝酸、酢酸等の酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの分散安定剤は単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0048】
これらの内、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、フェノール、オクチルアルコール等の自己またはこれら相互間の共縮合物、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸カリウム、ポリ(メタ)アクリル酸リチウム、カルボキシメチルセルロース、塩酸、硝酸、酢酸等が好ましい。
【0049】
導電性支持体上に塗布したスラリーを乾燥した後、導電性支持体に用いた基板の融点(または軟化点)以下の温度で焼成処理を行うことができる。焼成温度は、通常100~900℃、好ましくは100~600℃である。また、焼成時間は特に限定はないが、概ね4時間以内である。導電性支持体上に設けられる半導体含有層の膜厚は、通常1~50μmである。
【0050】
表面平滑性を向上させる目的で、半導体含有層に2次処理を施してもよい(非特許文献2参照)。例えば、半導体含有層の調製に用いたのと同一の金属のアルコキサイドもしくは塩化物、硝化物、硫化物等の溶液に、前記の手法で調製された半導体含有層の薄膜が設けられた導電性支持体を直接浸漬して乾燥することにより、または任意選択で更に前記と同様に焼成(再焼成)することにより、半導体含有層の平滑性を高めることができる。ここで、金属アルコキサイドとしては、チタンエトキサイド、チタンイソプロポキサイド、チタンt-ブトキサイド、n-ジブチル-ジアセチルスズ等が挙げられ、そのアルコール溶液が用いられる。塩化物の場合には、例えば、四塩化チタン、四塩化スズ、塩化亜鉛等が挙げられ、その水溶液が用いられる。この様にして得られる酸化物半導体微粒子から成る半導体含有層の比表面積は、通常1~1000m/g、好ましくは10~500m /gである。
【0051】
次に、半導体含有層に増感色素を担持する工程について説明する。増感色素としては、半導体含有層を構成する半導体微粒子と共に光吸収を増感させる作用を有するものであれば特に限定はない。増感色素として、ルテニウム等の金属元素を含んだ金属錯体色素や金属を含まない有機色素を単独で用いてもよく、また数種類を任意の割合で混合して用いてもよい。混合して用いる場合は、複数種の金属錯体色素同士、複数種の有機色素同士、及び金属錯体色素と有機色素との組み合わせのいずれであっても構わない。吸収波長領域の異なる複数種の色素同士を混合することにより、幅広い吸収波長を用いることができ、変換効率の高い太陽電池が得られる。
【0052】
担持できる金属錯体色素に特に制限は無いが、フタロシアニンやポルフィリン等が好ましく、ルテニウム錯体であることがより好ましい。また、担持できる有機色素にも特に制限は無く、例えば無金属のフタロシアニン、ポルフィリンやシアニン、メロシアニン、オキソノール、トリフェニルメタン系、アクリル酸系色素、ピラゾロン系メチン色素等のメチン系色素や、キサンテン系、アゾ系、アンスラキノン系、ペリレン系等の色素が挙げられる。国際公開第2002-001667号、国際公開第2002-011213号、国際公開第2002-071530号、特開2002-334729号公報、特開2003-007358号公報、特開2003-017146号公報、特開2003-059547号公報、特開2003-086257号公報、特開2003-115333号公報、特開2003-132965号公報、特開2003-142172号公報、特開2003-151649号公報、特開2003-157915号公報、特開2003-282165号公報、特開2004-014175号公報、特開2004-022222号公報、特開2004-022387号公報、特開2004-227825号公報、特開2005-005026号公報、特開2005-019130公報、特開2005-135656号公報、特開2006-079898号公報、特開2006-134649号公報、国際公開第2006-082061号等に記載の色素であることが好ましい。メロシアニンや上記のアクリル酸系等のメチン系色素等であることがさらに好ましい。複数種の色素を混合して用いる場合の各色素の比率は特に限定し無いが、一般的にはそれぞれの色素を少なくとも10モル%程度以上使用することが好ましい。2種以上の色素を溶解した溶液もしくは分散した分散液を用いて半導体含有層に色素を担持させる場合、溶液中の色素合計の濃度は1種類のみ担持させる場合と同様でよい。複数種の色素を混合して使用する場合の溶媒としては、酸化物半導体に関して前記したような溶媒が使用可能であり、使用する各色素用の溶媒は同一でも異なっていてもよい。
【0053】
増感色素を担持させる方法としては、色素を溶媒に溶解した溶液または色素を溶媒に分散した分散液に、上記の半導体含有層が設けられた導電性支持体を浸漬する方法が挙げられる。溶液または分散液中における色素の濃度は、色素の種類や溶解度によって適宜決めればよい。浸漬温度は概ね常温から溶媒の沸点迄であり、また浸漬時間は1時間~72時間程度であってよい。増感色素を溶解させるのに使用できる溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキサイド、ジメチルホルムアミド、t-ブタノール、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、また複数を任意の割合で混合して用いてもよい。溶液中の増感色素の濃度は通常1×10-6M~1M、好ましくは1×10-5M~1×10-1Mである。この様にして酸化物半導体電極として用いられる、色素で増感された半導体含有層を有する導電性支持体が得られる。
【0054】
半導体含有層に色素を担持する際、色素の粒子の会合を防ぐために、包接化合物の共存下で色素を担持することが効果的である。ここで包接化合物としては、コール酸等のステロイド系化合物、クラウンエーテル、シクロデキストリン、カリックスアレン、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。好ましいものとしては、コール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、コール酸メチルエステル、コール酸ナトリウム、ウルソデオキシコール酸等のコール酸類、ポリエチレンオキサイド等である。これらの包接化合物の使用形態としては、色素溶液に添加してもよく、予め包接化合物を溶媒に溶解させた後に色素を溶解または分散させてもよい。これらの包接化合物は2種類以上を組み合わせて用いることも可能であり、その割合は任意に選択することも可能である。また、色素を担持させた後、4-t-ブチルピリジン等のアミン化合物で半導体含有層を処理しても良い。処理方法は、例えばアミン化合物のエタノール溶液に色素を担持した半導体含有層が設けられた導電性支持体を浸す方法等が採られる。
【0055】
対向電極には、FTO導電性ガラス等の導電性支持体の表面に、酸化還元系電解質の還元反応に触媒的に作用する白金、カーボン、ロジウム、ルテニウム等の導電性微粒子を蒸着、またはこれらの導電性微粒子の前駆体を塗布、焼成したもの等が用いられる。
【0056】
次に、電荷移動層について説明する。電荷移動層には、酸化還元系電解質対や正孔輸送材料等を溶媒や常温溶融塩(イオン性液体)中に溶解させた溶液が用いられる。用いられる酸化還元系電解質としては、ハロゲンイオンを対イオンとするハロゲン化合物及びハロゲン分子からなるハロゲン酸化還元系電解質、フェロシアン酸塩-フェリシアン酸塩やフェロセン-フェリシニウムイオン、コバルト錯体等の金属錯体等の金属酸化還元系電解質、アルキルチオール-アルキルジスルフィド、ビオロゲン色素、ヒドロキノン-キノン等の有機酸化還元系電解質等を挙げることができる。ハロゲン酸化還元系電解質が好ましい。ハロゲン酸化還元系電解質におけるハロゲン分子としては、例えばヨウ素分子や臭素分子等が挙げられ、ヨウ素分子が好ましい。また、ハロゲン化合物としては、例えばLiI、NaI、KI、CsI、CaI、CuI等のハロゲン化金属塩、あるいはテトラアルキルアンモニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド、1-メチル-3-アルキルイミダゾリウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド等のハロゲンの有機4級アンモニウム塩等が挙げられる。ヨウ素イオンを対イオンとする塩化合物が好ましい。その具体例としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化トリメチルアンモニウム塩等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
また、電荷移動層が酸化還元系電解質を含む溶液で構成されている場合、その溶媒としては電気化学的に不活性なものが用いられる。用いられる溶媒の具体例としては、アセトニトリル、バレロニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、3-メトキシプロピオニトリル、3-ブトキシプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジメトキシエタン、ジエチルカーボネート、ジエチルエーテル、ジメチルカーボネート、1、2-ジメトキシエタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、1,3-ジオキソラン、メチルフォルメート、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルオキサゾリジン-2-オン、γ-ブチロラクトン、スルフォラン、テトラヒドロフラン、水等が挙げられる。これらの中で、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、3-メトキシプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、エチレングリコール、3-メチルオキサゾリジン-2-オン、γ-ブチロラクトン等が好ましい。これらは単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。溶液中の酸化還元系電解質の濃度は、通常0.01~99質量%、好ましくは0.1~90質量%である。
【0058】
また、電荷移動層が酸化還元系電解質を含む組成物の形で構成されている場合、溶媒的に用いるものに常温溶融液(イオン性液体)がある。用いられる常温溶融液の具体例としては、1-メチル-3-アルキルイミダゾリウムヨーダイド、ビニルイミダゾリウムテトラフルオライド、1-エチルイミダゾールスルフォネート、アルキルイミダゾリウムトリフルオロメチルスルホニルイミド、1-メチルピロリジニウムアイオダイド等が挙げられる。また、色素増感太陽電池の耐久性向上の目的で、例えば、電荷移動層に低分子ゲル化剤を溶解させて増粘させることにより、あるいは、反応性成分を併用した電荷移動層を注入後に反応させてゲル化させることにより、あるいは、あらかじめ高分子化したゲルに電荷移動層をしみこませることにより、ゲル電解質とすることが可能である。
【0059】
一方、完全固体型の電荷移動層の場合は酸化還元系電解質の替わりに正孔輸送材料やP型半導体を用いることもできる。用いられる正孔輸送材料としてはアミン誘導体やポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン等の導電性高分子等が挙げられる。また、P型半導体としてはCuI、CuSCN等が挙げられる。
【0060】
一対の導電性支持体の間隙に電荷移動層を注入した後、電荷移動層の注入口を封止することにより色素増感太陽電池を得ることができる。電荷移動層の注入口を封止する封止材(封口剤)としては、イソブチレン樹脂、エポキシ樹脂、UV硬化性のアクリル樹脂等が使用できる。
【0061】
次に、本発明のシール剤を用いた色素増感太陽電池の作製方法について説明する。本発明のシール剤に、グラスファイバー等のスペーサ(間隙制御材)を添加後、該一対の基板の一方にディスペンサー、またはスクリーン印刷装置等を用いて該シール剤を塗布し、半導体含有層を取り囲むように切れ目のない堰を設ける。その後、該シール剤の堰の内側に電荷移動層となる電荷移動層を、ディスペンサー等を用いて滴下する。その際に、電極貼り合わせ後の電極間のギャップが所定の大きさとなる様に、電荷移動層の滴下量を調整する。封入される電荷移動層の種類は特に限定されない。電荷移動層の滴下量は、太陽電池の実効面積とセルギャップから算出することができる。その後、真空貼り合わせ装置内に、第一と第二の導電性支持体が対面するように配置し、減圧下で2枚の電極を重ね合せ、大気圧に戻してギャップ出しを行う。ギャップ形成後、紫外線照射機によりシール剤部に紫外線を照射させて光硬化させる。紫外線照射量は、好ましくは500~6000mJ/cm、より好ましくは1000~4000mJ/cm(測定波長:365nm)の照射量が好ましい。その後必要に応じて、60~120℃で30分~2時間硬化することにより本発明の電気化学セルを得ることができる。第一と第二の導電性支持体の間隙(セルギャップ)は通常1~100μm、好ましくは20~70μmである。
【0062】
図1は、本発明のシール剤を用いて調製された色素増感太陽電池の構造を説明する要部断面模式図である。図中、1は内側が導電性を有する導電性支持体であり、2は色素によって増感された半導体含有層であり(1と2を併せて酸化物半導体電極という)、3は導電性支持体の内側の導電面の上に白金等を配置した対向電極であり、4は一対の導電性支持体の間隙に配置されている電荷移動層であり、5は本発明のシール剤であり、6はガラス基板である。このようにして得られた色素増感太陽電池の正極と負極にリード線を配置し、その間に抵抗成分を挿入することにより本発明の太陽電池を得ることができる。
【0063】
本発明のシール剤は、平面的に配置された複数の色素増感太陽電池が、電気的に直列に接続された大面積の色素増感太陽電池モジュールの作製にも適用できる。大面積化した色素増感太陽電池のモジュール構造はいくつかの種類が知られている。本発明のシール剤はいずれの種類のモジュール構造にも使用可能である。例えば、国際公開第2009/057704号等に記載の直列接続構造を有する色素増感太陽電池モジュールにも使用することができる。
【0064】
本発明のシール剤は、色素増感太陽電池の製造工程において、基板への塗布作業性、貼り合わせ性、接着性、電解液の封止性能に優れ、酸化物半導体電極への接着強度、高温高湿度環境での耐久性に優れる。従って、該シール剤を用いて得られた本発明の色素増感太陽電池は、電解液滴下工法による効率的製造が可能で且つ耐久性にも優れるものとなり、低コスト且つ屋内から屋外用途まで多岐に渡る用途への適用が可能となる。
【実施例0065】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
[実施例1~7、比較例1~7]
下記表1に示す割合で成分(A)、(B)を90℃で加熱溶解させた後、室温まで冷却し、成分(C)、(D)、(E)、(F)を添加し、攪拌した後、プラネタリミキサーにて分散させ、シール剤を調製した。
【0067】
[粘度]
E型粘度計(東機産業株式会社:RE105)の測定カップにシール剤を0.15mL加えた。温度25℃、コーン3°×R7.7の条件でプレヒートとして120秒放置した後、回転数5rpmで180秒後の値を測定した。結果は表1及び表2に記載する。
【0068】
[チクソ比]
E型粘度計(東機産業株式会社:RE105)の測定カップにシール剤を0.15mL加えた。温度25℃、コーン3°×R7.7の条件でプレヒートとして120秒放置した後、回転数5rpmで180秒後の値及び回転数0.5rpmで180秒後の値を測定した。そして0.5rpmの粘度を5rpmの粘度で除した値をチクソ比とした。結果は表1及び表2に記載する。
【0069】
[酸化物半導体接着強度]
シール剤を遊星攪拌装置(EME社製:VMX-360)にて混合撹拌を行い5mlシリンジに充填した。厚さ0.5mmのITO電極付ガラス基板のITO膜上に、充填したシール剤をR=0.5mm且つ長さ1cm×1cmのコーナー部分を再現する形でシール幅1mmとなるように塗布し、1~10Paの真空中にて対向の厚さ0.5mmのITO電極付ガラス基板とを貼り合わせ、大気解放後、UV照射機により3000mJ/cm(測定波長:365nm)の紫外線を照射後、80℃の送風オーブンにて60分間加熱硬化することで接着させた。得られた貼り合わせ基板を図2のような下基板のみがはみ出した形状に切断し、3mmφのニードル型端子を備えた万能試験機(島津製作所製:オートグラフAG-Xplus500N)にて塗布したシール剤のコーナーの対角線上4mm離れた地点の下基板を押し、貼り合わせ基板が剥がれた際の最大荷重を測定することで接着強度を求めた。結果は表1及び表2に記載する。
【0070】
[シール剤封止性]
シール剤が電解液の封止性能を有するか否か確認試験をした。具体的には以下の記載に従って試験をした。
シール剤を遊星攪拌装置(EME社製:VMX-360)にて混合撹拌を行い5mlシリンジに充填した。ITO電極付ガラス基板上のITO膜上に、シール剤をコーナー部がR=0.5mm且つ貼り合せ後の線幅が1mmとなるように3cm×3cmの正方形状にディスペンスし、次いでγーブチロラクトン(GBL)の微小滴をシールパターンの枠内に滴下した。更にもう一枚のITO付ガラス基板のITO膜上に面内スペーサ(ハヤビーズSD-BD-DEA-LT20μm:早川ゴム株式会社製)を散布、熱固着し、貼り合わせ装置を用いて真空中で先のGBL滴下済み基板と貼り合わせた。大気開放してギャップ形成した後、UV照射機により3000mJ/cm(測定波長:365nm)の紫外線を照射後、オーブンに投入して80℃60分加熱させ評価用電解液テストセルを作製した。得られた評価用セルを顕微鏡で観察し、シール剤の封止性能を以下に示す基準に従って評価を行った。結果は表1及び表2に記載する。
〇:シール剤がGBLを封止していて、GBLのシール剤への差し込みが確認されない
×:GBLがシール剤から漏れ出している、またはGBLのシール剤への差し込みが確認される
【0071】
[高温高湿信頼性]
前記シール剤封止性評価で作製した3cm×3cmのGBLを封止したセルを60℃90%に設定した恒温恒湿試験機に96時間投入した。その後試験機からセルを取り出し、目視で観察を行い以下に示す基準に従って評価を行った。結果は表1及び表2に記載する。
〇:シール剤がITO付ガラス基板から剥離しておらず、GBLのセル外部への漏出、セル外部からの気泡の侵入が見られない。
×:シール剤がITO付ガラス基板から剥離している状態が見られる、またはGBLのセル外部への漏出、セル外部からの気泡の侵入が見られる。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
表1及び表2の結果より、酸化物半導体に対する接着強度を上げる目的で種々のカップリング剤(E)を添加した比較例1~7のシール剤に対して、本発明に該当する実施例1~7のシール剤はリン酸基を有する(メタ)アクリレート(C)の添加により、酸化物半導体電極に対する接着強度が2.0kg以上まで向上し、電解液封止性に優れると共に高温高湿信頼性試験においても優れた耐久性を示したことから、高信頼性を有する色素増感太陽電池を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の色素増感太陽電池用シール剤は、色素増感太陽電池の製造工程において、基板への塗布作業性、貼り合わせ性、電解液の封止性能、酸化物半導体電極への接着強度に優れ、高温高湿度条件下においても優れた耐久性を持つ。従って、該シール剤を用いて得られた本発明の色素増感太陽電池は、電解液滴下工法による効率的製造が可能で、その耐久性にも優れる。
【符号の説明】
【0077】
1 導電性支持体
2 色素によって増感された半導体含有層
3 対向電極
4 電荷移動層
5 シール剤
6 ガラス基板

図1
図2