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特開2024-13983追い越し支援車載器および運行管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013983
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】追い越し支援車載器および運行管理システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240125BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240125BHJP
   G07C 5/08 20060101ALI20240125BHJP
   G07C 5/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G08G1/16 C
G07C5/08
G07C5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116488
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑季
(72)【発明者】
【氏名】大石 啓之
【テーマコード(参考)】
3E138
5H181
【Fターム(参考)】
3E138MA01
3E138MB13
3E138MC05
3E138MD05
5H181AA01
5H181AA07
5H181BB04
5H181BB12
5H181BB15
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF05
5H181FF10
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL07
(57)【要約】
【課題】トラック等の自車両の運転手が低速の先行車両を追い越そうとする場合に、追い越しの運転操作のための適切な状況判断に役立つ情報を提供できる追い越し支援車載器および運行管理システムを提供する。
【解決手段】自車両に搭載した3次元センサを利用して前方の他車両および後方の他車両の位置関係および相対距離をそれぞれ検出し監視する制御部を備える。制御部は、後方の他車両が前方の他車両を追い越した後で自車両が前方の他車両を追い越す第1状態における予想待機時間(T1)を算出すると共に、自車両が後方の他車両よりも先に前方の他車両を追い越す場合の第2状態と、第1状態との違いが自車両の到着時間に与える予想時間差(T2)を算出し、予想時間差情報通知部により運転者に通知して運転を支援する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両上に搭載され、自車両と当該自車両周辺の他車両との位置関係および相対距離を検出可能な他車両検出部と、
前記自車両の前方に第1他車両が存在し、前記自車両の後方に第2他車両が存在する状況下で、前記他車両検出部の検出状態に基づいて前記自車両の追い越し運転を支援する支援情報を生成する制御部と、
前記制御部が生成した支援情報を運転者に通知する情報通知部と、
を備え、
前記制御部は、前記第2他車両が少なくとも前記自車両を追い越した後で当該自車両が前記第1他車両を追い越す場合の第1状態で想定される予想待機時間を算出すると共に、前記自車両が前記第2他車両よりも先に前記第1他車両を追い越す場合の第2状態と、前記第1状態との違いが前記自車両の到着時間に与える予想時間差を算出し、前記予想時間差を前記支援情報として前記情報通知部に与える、
追い越し支援車載器。
【請求項2】
前記制御部は、前記自車両の車体長、前記自車両と前記第2他車両との車間距離、前記第2他車両として認識した車両台数、前記自車両と前記第1他車両との車間距離、および前記自車両と前記第2他車両との速度差に基づいて前記予想待機時間を算出し、前記予想待機時間、前記自車両と前記第2他車両との速度差、および前記自車両の現在の車速に基づいて前記予想時間差を算出する、
請求項1に記載の追い越し支援車載器。
【請求項3】
前記制御部は、前記予想時間差の算出処理を繰り返すと共に、前記自車両と前記第1他車両との車間距離を監視し、前記車間距離が所定以下になった時に最新の前記予想時間差を前記支援情報として前記情報通知部に与える、
請求項1に記載の追い越し支援車載器。
【請求項4】
請求項1に記載の追い越し支援車載器と、
前記追い越し支援車載器からデータを取得して管理するサーバと、
前記サーバが記憶しているデータに基づいて運転者の運転状況を管理する管理者用端末と、
を備える運行管理システム。
【請求項5】
前記追い越し支援車載器は、前記支援情報の出力イベントに伴って運転者が前記第1状態および前記第2状態のいずれを選択したかを表す情報を含む運行実績データを生成し、
前記サーバは、前記運行実績データを前記追い越し支援車載器から取得し、運転者に対応付けて記憶する、
請求項4に記載の運行管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、追い越し支援車載器および運行管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1の車両誘導装置は、前方車両の走行状態を判断しつつ前方車両を安定に追い越すための技術を開示している。また、自車両が追突の恐れが有るか否かを判定する追突回避判定手段及び衝突回避と判定されたとき起動指令を操舵制御装置に送出する操舵指令手段も開示している。
【0003】
また、特許文献2の走行制御システムは、自車両や自車両周辺の車両の運転者に驚きや不快感を抱かせることなく、先行車両の追い越しを自動的に実行させるための技術を開示している。また、特許文献2に開示されている追い越し可否判定手段は、自車両による先行車両の追い越しが可能であるか否かを判定する。例えば、前方の所定距離範囲(例えば、500メートル)内に信号機や交差点等が存在する場合、追い越し経路内に別の先行車両が存在する場合、或いは、追い越し経路内に進入しようとする後続車両が存在する場合には、自車両による先行車両の追い越しが不可能であると判定する。
【0004】
また、特許文献3の車両用運転支援装置は、車長の長い先行車を追い抜く際に、先行車と自車両との関係から追越制御を継続するか中断するかを的確に判定するための技術を開示している。具体的には、自車両Aが先行車Bを追い越すべく車線変更した際に、運転支援制御ユニットは、車載カメラで撮影した画像に基づき先行車Bの車速Vb及び車長Lbを求め、この車長Lb、及び制限速度と先行車速Vbとの差分から追越に必要な必要追越時間tojを求め、この必要追越時間tojと中断判定しきい時間Ttoとを比較し、必要追越時間tojが中断判定しきい時間Ttoを越えている場合、先行車Bの車長Lbが長く、追越が困難と判定し、中断判定フラグFをセットして、追越制御を中断させ、その後先行車Bの後方に復帰させる車線復帰減速制御を実行させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-92795号公報
【特許文献2】特開2009-248892号公報
【特許文献3】特開2016-14970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば高速道路のように複数の車線が存在する道路においては、複数車両間で追い越しが発生する機会が多い。例えば、比較的高い走行速度で走行する後続車両は、比較的遅い走行速度で走行する先行車両に接近すると、走行車線から追い越し車線に移動して先行車両を追い越す。
【0007】
また、道交法上、高速道路においてトラックは制限速度80km/hまでしかスピードを出すことができないので、一般の車両と比べてトラックの走行速度は低速である。したがって、通常は一般の車両がトラックを追い越す機会が多くなる。しかし、各車両を運転する運転者毎に希望する走行速度が異なるので、複数のトラック同士の間で追い越しが発生する場合も多い。
【0008】
実際には、各トラックの運転手は、運行遅延の発生を避けるためにできる限り急いで車両を運行したい気持ちや、自身に対する運転評価が下がらないことを望む気持ちなどの影響から、常に一定の走行速度でトラックを運行しようと運転操作する傾向がある。その結果、自車両の走行速度よりも僅かに走行速度が遅い先行車両に追いついた場合であっても、希望する一定の走行速度を維持するために、運転手は自車両が先行車両を追い越すように運転操作する状況が発生する。しかし、トラックは車体の全長が長く、しかもトラック同士の追い越しの場合は車両間の走行速度の差が小さいので、追い越しの開始から終了までの所要時間が長くなる。
【0009】
一方、トラック同士の追い越しが発生している状況で、トラックよりも走行速度の速い後続車両が現れた場合には、後続車両の前方の全ての車線が追い越し中のトラックにより塞がれているため、後続車両は減速してトラックの追い越しが終了するまで待たなければならない。その結果、トラックの後方に複数台の後続車両が狭い車間距離で並んだまま走行する状態になり、トラック以外の車両に迷惑がかかることになる。また、このような迷惑な追い越しは、後続車両によるあおり運転などの危険な状況を誘発する可能性も考えられる。
【0010】
トラックの運転手が先行車両を追い越そうとする際に、後続車両の存在を認識した場合には、後続車両が通過するまで待機した後で、自車両(トラック)が先行車両の追い越しを開始するように運転することで、他の車両にとって迷惑な運転操作を回避できる。しかし、その場合は自車両が先行車両に追いついたときに、先行車両と同じ速度まで減速しなければならない。
【0011】
このような自車両の減速操作は、トラックの運転手にとってストレスになる場合がある。つまり、減速によって目的地への到着時間が遅延する可能性や、速度低下が自身の運転評価を落とす可能性をトラック運転手が考慮することになる。そのため、減速をせずに先行車両の追い越しをしたいと考えるトラック運転手が増えて、他の車両に迷惑がかかる状況が発生する。
【0012】
しかし、実際には、トラック同士の走行速度の差異は小さい場合が多く、走行速度の違いによって同じようなトラック同士が接近した場合に、後方のトラックの走行速度を先行するトラックの走行速度まで一時的に減速したとしても、一時的に減速した後方のトラックが目的地に到着する時間の変化はごく僅かであり、減速による走行速度の変化(例えば1km/h程度)は運転手の運転評価に影響を及ぼさない。
【0013】
しかしながら、トラックの運転手は一時的な減速の運転操作に伴う到着時間の変化が小さいことや、減速の運転操作が自身に対する運転評価に影響を及ぼさないことを正しく把握することが難しい。その結果、トラックの運転手が減速の運転操作に対してストレスを感じたり、他の車両の迷惑になる追い越しの運転操作をしてしまう状況が改善されないと考えられる。
【0014】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、トラック等の自車両の運転手が先行車両を追い越そうとする場合に、追い越しの運転操作のための適切な状況判断に役立つ情報を提供可能な追い越し支援車載器および運行管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 車両上に搭載され、自車両と当該自車両周辺の他車両との位置関係および相対距離を検出可能な他車両検出部と、
前記自車両の前方に第1他車両が存在し、前記自車両の後方に第2他車両が存在する状況下で、前記他車両検出部の検出状態に基づいて前記自車両の追い越し運転を支援する支援情報を生成する制御部と、
前記制御部が生成した支援情報を運転者に通知する情報通知部と、
を備え、
前記制御部は、前記第2他車両が少なくとも前記自車両を追い越した後で当該自車両が前記第1他車両を追い越す場合の第1状態で想定される予想待機時間を算出すると共に、前記自車両が前記第2他車両よりも先に前記第1他車両を追い越す場合の第2状態と、前記第1状態との違いが前記自車両の到着時間に与える予想時間差を算出し、前記予想時間差を前記支援情報として前記情報通知部に与える、
追い越し支援車載器。
【0016】
上記に記載の追い越し支援車載器と、
前記追い越し支援車載器からデータを取得して管理するサーバと、
前記サーバが記憶しているデータに基づいて運転者の運転状況を管理する管理者用端末と、
を備える運行管理システム。
【発明の効果】
【0017】
本発明の追い越し支援車載器は、トラック等の自車両の運転手が先行車両を追い越そうとする場合に、追い越しの運転操作のための適切な状況判断に役立つ情報を提供できる。また、本発明の運行管理システムは、追い越し支援車載器の機能を活用して運転手の運転状況をより正しく把握できる。
【0018】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、道路上における複数車両の走行パターンの代表例を示す平面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る車載器のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図3図3は、制御部における主要な機能を示すブロック図である。
図4図4は、道路上における複数車両の状態の例を示す平面図である。
図5図5は、車載器の動作例を示すフローチャートである。
図6図6は、本発明の実施形態に係る運行管理システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0021】
<トラック同士の追い越しが発生する状況の具体例>
道路10上における複数車両の走行パターンP0~P3の代表例を図1に示す。図1は道路10上の各車両の配置状態を平面図として表している。
【0022】
図1中の各走行パターンP0~P3は、自車両OV、先行車両PV、3台の後方車両FV1、FV2、及びFV3が道路10上を同じ進行方向A1に向かって走行している状況を表している。ここで、自車両OV、及び先行車両PVはトラックであり、後方車両FV1~FV3は一般車両である。
【0023】
図1中の走行パターンP0は、同じ車線10aを走行している自車両OVの走行速度が先行車両PVよりも少しだけ早い場合を想定している。したがって、自車両OVが一定の走行速度を維持したまま走行を続けると、自車両OVと先行車両PVとの車間距離が徐々に小さくなる。そのため、自車両OVの運転手は、自車両OVを左側の車線10aから右側の車線10bに移動し走行パターンP1の状態に遷移して先行車両PVを追い越すように運転操作する状況が想定される。
【0024】
しかし、トラックよりも一般車両の方が走行速度が速いので、自車両OVの後方で右側の車線10bに後方車両FV1~FV3が存在する場合には、走行パターンP1のように自車両OVの後方に後方車両FV1~FV3が接近し並んだまま走行する状態になる。ここで、自車両OV及び先行車両PVの車体長が長く、しかも追い越し中の相対速度差が小さいので、追い越しの開始から終了までの所要時間が比較的大きくなる。
【0025】
このとき、自車両OVの走行速度は比較的低速であるため、後方車両FV1~FV3はそれぞれ自車両OVに追いついた後で減速して走行速度を自車両OVに合わせ、自車両OVの追い越しが終了するまで低速で走行を続けることになる。つまり、走行パターンP1に示した自車両OVの追い越しにより、車線10bにおける後方車両FV1~FV3の速度低下が発生し、渋滞が生じやすくなる。
【0026】
一方、走行パターンP0の状態で、自車両OVの運転者の判断により、後方車両FV1~FV3の走行を優先させる場合には、走行パターンP1から走行パターンP2の状態に遷移して更に走行パターンP3に遷移するように、自車両OVの運転者が自車両OVを運転する。
【0027】
つまり、自車両OVは先行車両PVに接近しても車線変更は行わずに減速して走行パターンP2のように先行車両PVとの車間距離を一定に維持する。これにより、走行速度の速い後方車両FV1~FV3は右側の車線10bを走行して走行パターンP2のように自車両OVを追い越すことになる。
【0028】
後方車両FV1~FV3が自車両OVを追い越した後で、自車両OVの運転者は走行パターンP3のように自車両OVを右側の車線10bに移動して、後方車両FV1~FV3の後に続き、減速前の走行速度に戻して先行車両PVを追い越すことができる。走行パターンP2、P3のように自車両OVの運転者が後方車両FV1~FV3の走行を優先させるように運転することで、自車両OVの追い越しが迷惑行為になるのを避けることができる。
【0029】
しかし、自車両OVの運転者が走行パターンP2を選択するように判断した場合には、後方車両FV1~FV3の追い越しが終了するまで、自車両OVを一時的に減速しなければならない。トラックの運転者は、高速道路などにおいてなるべく一定の走行速度を維持するように運転する場合が多い。すなわち、多くのトラック運転者は、減速などの運転操作を減らすことで、目的地に到着する時間が遅延するのを避けると共に、自身の運転技術に対する管理者の評価が下がるのを避けられると考えている可能性がある。そのため、自車両OVの減速をせずに済むように、運転者が走行パターンP2よりも走行パターンP1を優先的に選択する可能性が高い。
【0030】
一方、追い越しの際に走行パターンP1、P2のいずれを選択した場合でも、実際にはトラック運転者にとって大きな影響は生じない状況が想定される。例えば、自車両OV、先行車両PVが同じようなトラックである場合には、通常の自車両OVと先行車両PVの走行速度差は例えば1km/h程度である。そのため、走行パターンP2を選択した場合の自車両OVの一時的な減速により生じる目的地への到着時間の遅延はごく僅かになる。
【0031】
したがって、トラック車両同士の間で追い越しを行う際には、トラック運転者が走行パターンP2を優先的に選択するように促すことで、自車両やその周辺に存在する他車両の運転者がストレスを感じにくい安全な走行環境を実現できる。本発明の実施形態に係る追い越し支援車載器は、後述するようにトラック運転者が走行パターンP2を優先的に選択するように運転操作を支援することができる。具体的には、走行パターンの違いの影響により想定される到着時間差がごく僅かであることを運転者に通知することができる。
【0032】
<車載器のハードウェア構成例>
本発明の実施形態に係る車載器20のハードウェア構成例を図2に示す。この車載器20が本発明の追い越し支援車載器の機能を装備している。
【0033】
車載器20は、主にトラックのような車両に搭載される。一例として、既存のデジタルタコグラフのような運行記録計や、ドライブレコーダのような一般的な車載器に、専用のアプリケーションソフトウェアなどの形態で特別な機能を付加することにより、本発明の追い越し支援車載器を実現できる。
【0034】
図2に示した車載器20は、制御部20a、IF部20b、車速検出部20c、GPS受信機20d、表示部20e、操作部20f、RTC20g、不揮発性メモリ20h、揮発性メモリ20i、メモリカードIF20j、メモリカード20k、無線通信部20m、音声信号生成部20n、及びスピーカ20oを備えている。
【0035】
制御部20aは、マイクロコンピュータを主体とする電子回路により構成され、予め組み込まれたプログラムを実行することにより、車載器11に必要とされる機能を実現するための各種制御を実施する。
【0036】
IF(インタフェース)部20bは、LiDAR(Light Detection and Ranging)ユニット21F、21Rと制御部20aとを接続するためのインタフェースである。
本実施形態では、2つのLiDARユニット21F、21RがIF部20bの入力に接続されている。一方のLiDARユニット21Fは、自車両の運転席の前方に配置され、進行方向前方側の道路上に存在する他車両などの物体を検知することができる。もう一方のLiDARユニット21Rは、自車両の運転席の後方に配置され、進行方向後方側の道路上に存在する他車両などの物体を検知することができる。
【0037】
なお、本実施形態では2つのLiDARユニット21F、21Rを利用しているが、例えばステレオカメラのような他の3次元センサでもよい。使用する3次元センサの数については必要に応じて増やすことができる。
【0038】
各LiDARユニット21F、21Rは、レーザー光を出射可能な光源と、反射光や散乱光を検出可能な検出器とを内蔵している。すなわち、LiDARユニット21F、21Rは被写体の三次元空間に対してレーザー光を照射し、その反射光や散乱光を検出器で検出することで、周辺の他車両などの対象物までの距離や形状を測定できる。
【0039】
車速検出部20cは、車両側から出力される車速パルスの信号を入力し、制御部20aにおける車速検出の処理に適した信号に変換する。
GPS(Global Positioning System)受信機20dは、複数のGPS衛星からの電波を受信して、受信した信号の時間に基づいて自車両の現在位置を表す緯度/経度を算出することができる
【0040】
表示部20eは、運転者の視認しやすい位置に配置され、運転者の入力操作の際に必要な案内の情報や数値、時間などの情報を表示可能な能力を有している。
操作部20fは、運転者の操作しやすい位置に配置され、運転者からの入力操作を受け付け可能な多数のボタンを有している。
【0041】
RTC(Real Time Clock)20gは、半導体の集積回路(IC)により構成され、現在の日付、曜日、時刻(時分秒)の情報を生成したり、時間を計測するための時計機能を有している。
【0042】
不揮発性メモリ20hは、車載器20の各種機能を実現するために必要な制御部20aのコンピュータが実行可能なプログラムや、車両固有の各種定数データを保持している。これらの定数データの中には、自車両の車体の全長を表す情報も含まれている。また、保存の必要な各種データを不揮発性メモリ20hに書き込み登録することができる。
【0043】
揮発性メモリ20iは、制御部20aが動作中に生成した各種データを一時的に保持するために利用される。
メモリカードIF20jは、メモリカード20kを着脱自在に保持可能なカードスロットを有し、メモリカード20kを制御部20aのマイクロコンピュータと接続することができる。
【0044】
メモリカード20kは、不揮発性メモリを内蔵し、自車両を運行する運転者を特定する情報、車両を特定する情報、車載器20が生成した運行記録データ、イベント毎に発生したトリガの種類などを登録し保持することができる。
【0045】
無線通信部20mは、例えばLTE(Long Term Evolution)などの通信規格に対応した無線通信機能を有し、移動体通信事業者などが提供する無線基地局と自車両との間で無線通信回線を確立することができる。
【0046】
音声信号生成部20nは、運転者の運転を支援するために必要な各種音声の信号を制御部20aの指示に従って生成することができる。スピーカ20oは、音声信号生成部20nが生成した音声信号を再生し音響として出力することができる。
【0047】
<制御部における主要な機能>
車載器20の制御部20aにおける主要な機能を図3に示す。また、道路上における複数車両の状態の例を図4に示す。
【0048】
図3に示すように、制御部20aは先行車両検出機能22F、後方車両検出機能22R、自車長保持部23、待機時間算出機能24、追い越し時間差算出機能25、及び追い越し支援制御機能26を有している。
【0049】
先行車両検出機能22Fは、例えば図4に示すような状況において、同じ車線上で自車両OVの前方を走行している先行車両PVをLiDARユニット21Fにより検出する。更に、自車両OVと先行車両PVとの間の前方車間距離L3、及び自車両OVの車速v1と先行車両PVの車速v3との速度差(v1-v3)を把握する。
【0050】
後方車両検出機能22Rは、例えば図4に示すような状況において、自車両OVの右後方を走行している後方車両FV1をLiDARユニット21Rにより検出する。また、複数台の後方車両が存在する場合は、検知した後方車両の台数nを把握する。更に、自車両OVと後方車両FV1との間の後方車間距離L2、及び自車両OVの車速v1と後方車両FV1の車速v2との速度差(v2-v1)を把握する。
【0051】
自車長保持部23は、自車両OV固有の車両長(自車長L1)を表すデータを予め保持している。
待機時間算出機能24は、図1中に示した走行パターンP0の状況から走行パターンP2の状況を経て走行パターンP3に移行する場合に必要な自車両OVの予想待機時間T1を算出する。この予想待機時間T1は推定値である。
【0052】
追い越し時間差算出機能25は、予想待機時間T1に基づいて追い越し時間差T2を算出する。この追い越し時間差T2は、図1中に示した走行パターンP0の状態から走行パターンP1への遷移を選択した場合と、走行パターンP2への遷移を選択した場合との違いが自車両OVが目的地に到着する時間に与える時間差の推定値を表す。
【0053】
追い越し支援制御機能26は、追い越し時間差T2を表す支援情報を運転者に通知するタイミングを制御する。追い越し支援制御機能26が出力する追い越し時間差T2は、表示部20eの表示内容、及びスピーカ20oの音声出力の少なくとも一方を利用して運転者に通知される。
【0054】
<車載器の動作>
車載器20の動作例を図5に示す。制御部20aの制御により図5の動作が実現する。図5に示した動作について以下に説明する。
【0055】
自車両のイグニッション(IGN)がオンになると、制御部20aは図5の動作を開始する。
制御部20aは、車速検出部20cに入力される車速パルスの状態を監視して現在の自車両の車速を把握する。そして、その車速が事前に定めた閾値以上で、且つその状態が一定時間以上継続したか否かをS11で識別する。この条件を満たすと、制御部20aはS11からS12以降の処理に進む。
【0056】
S11における車速の確認は、自車両が車線変更が発生するようなある程度広い道路を走行中かどうかを確認するために実施する。また、S11の閾値については、道路10における車線数の違いや、道路の種類(通行人の多寡など)を考慮して適宜決定する。例えば、通行人が多い2車線道路の場合は40km/h程度の閾値を採用する。
【0057】
制御部20aは、先行車両検出機能22Fにより検出した先行車両PVの有無をS12で識別し、先行車両PVが存在する場合はS13の処理に進む。そして、制御部20aは自車両OVと先行車両PVとの相対速度、すなわち前方速度差(v1-v3)の計測をS13で開始する。
【0058】
制御部20aは、検知した前方速度差(v1-v3)の数値をS14で閾値と比較する。そして、前方速度差(v1-v3)が0以上、且つ閾値以下の範囲内にある場合はS14からS20の処理に進む。なお、S14における比較は、自車両OVと先行車両PVとの距離が近づいていて、且つ自車両OVの方が車速が速い状態であるか否かを確認するために実施する。また、前方速度差(v1-v3)が非常に小さい場合はS12の処理に戻り、S20には進まない。
【0059】
一方、制御部20aの後方車両検出機能22Rは、追い越し車線(車線10b)上で自車両OVよりも後方における後方車両FV1等の存在の有無をS15で識別する。そして、後方車両FV1等を検知した場合は後方車両数nをS16で把握する。例えば図1のように後方車両FV1、FV2、FV3が連なって右側の車線10b上を走行している場合は、後方車両数nが「3」であることを検知する。
【0060】
また、制御部20aの後方車両検出機能22Rは、先頭の後方車両FV1と自車両OVとの相対速度、すなわち後方速度差(v2-v1)の計測をS17で開始する。
制御部20aは、検知した後方速度差(v2-v1)と閾値とをS18で比較する。これにより、後方車両FV1の走行速度v2が自車両OVの走行速度v1よりも速いか否かを識別する。この条件を満たす場合はS18からS19の処理に進み、条件を満たさない場合はS12の処理に戻る。
【0061】
制御部20aの待機時間算出機能24は、次の計算式(1)に基づいて予想待機時間T1をS19で算出する。
T1=(L1+L2・n+L3)/(v2-v1) ・・・(1)
L1:自車長
L2:後方車間距離
L3:前方車間距離(後方車両が通過した後の距離)
n:後方車両数
【0062】
なお、複数の後方車両FV1~FV3のそれぞれの車間距離を正しく計測できる場合には、上記計算式(1)とは異なる計算式を用いてより正確な予想待機時間T1を算出できる。また、上記計算式(1)における前方車間距離L3は自車両OVが追い越しを開始する前に事前に予想される推定値であるが、例えばこの前方車間距離L3を事前に定めた定数に置き換えても良いし、後方車間距離L2と同じ値に定めても良い。
【0063】
一方、制御部20aの追い越し時間差算出機能25は、S19で得られた予想待機時間T1を利用し、追い越し時間差T2を次の計算式(2)に基づいてS20で算出する。
T2=(T1(v1-v3))/v1 ・・・(2)
v1:自車両OVの現在の車速
v1-v3:前方速度差
【0064】
この追い越し時間差T2は、走行パターンの違いが自車両OVの目的地到着時刻に及ぼす時間差を表す。つまり、図1中の走行パターンP1のように自車両OVがそのまま先行車両PVの追い越しをする場合と、走行パターンP2のように後方車両FV1~FV3等が通過するまで自車両OVが減速し待機した後で、走行パターンP3のように自車両OVが先行車両PVを追い越す場合との間で、追い越し時間差T2だけ到着時刻の変化が見込まれる。
【0065】
制御部20aの追い越し支援制御機能26fは、追い越し時間差T2を運転者に通知するタイミングをS21で制御する。具体例としては、先行車両検出機能22Fが検出した前方車間距離L3を把握して前方車間距離L3と閾値とをS21で比較し、前方車間距離L3が閾値以下になった時にS21からS22の処理に進む。
【0066】
なお、追い越し支援制御機能26がS21でタイミングを判定する条件については、前方車間距離L3以外を監視しても良い。例えば、運転者のウインカー操作を行った時、すなわち自車両OVが車線変更することが予想される状態を検知したときにS21からS22の処理に進むように制御しても良い。また、過去の運転者の統計的な実績データに基づき、自車両OVの車線変更が予想される状態を検知したときにS21からS22の処理に進むように制御しても良い。ここで、運転者の統計的な実績データとしては、車線に対する幅方向の自車両OVの移動速度や、ハンドル(ステアリングホイール)の操作状況のデータを用いることができる。
【0067】
追い越し支援制御機能26が出力する追い越し時間差T2の情報は、S22で音声信号生成部20nに入力され、スピーカ20oから音声として運転者に通知される。運転者に通知する音声のパターンについては様々な種類を想定できる。
【0068】
代表例としては、追い越し時間差T2が「1秒」の場合に、「今前走車を追い越しても到着時間差は1秒以下です。落ち着いて走行しましょう。」のような音声アナウンスを用いることで状況を正しく運転者に伝えることができる。
また、音声と共に、或いは音声の代わりに、表示部20e等の表示を利用して追い越し時間差T2の数値を含むメッセージを運転者に通知しても良い。
【0069】
<運転者に通知する追い越し時間差T2の具体例>
ここでは、予想待機時間T1を計算する場合に以下の条件を想定する。
自車長L1:12[m]
自車両OVの車速v1: 80[km/h](=22.2[m/s])
後方車両FV1の車速v2:100[km/h](=27.8[m/s])
後方車間距離L2:50[m]
前方車間距離L3:50[m]
後方車両数n:3[台]
【0070】
予想待機時間T1は次式により算出される。
T1=(12+50×3+50)/(27.8-22.2)
≒38[s:秒]
【0071】
また、追い越し時間差T2を計算する場合に以下の条件を想定する。
先行車両PVの車速v3: 79[km/h](=21.9[m/s])
自車両OVの現在の車速v1:80[km/h](=22.2[m/s])
追い越し時間差T2は次式により算出される。
T2=(38×(22.2-21.9))/22.2
≒0.51[s:秒]
【0072】
つまり、走行パターンP0の状況で自車両OVの運転者が後方車両FV1~FV3に進路を譲り、走行パターンP2の状態で自車両OVが待機してから先行車両PVを追い越すように運転する場合には、予想待機時間T1の38秒間に亘って待機する必要があるが、到着時間に対する実際の影響は0.51秒(追い越し時間差T2)である。
【0073】
一般的なトラック運転者は、過去の運転において走行パターンP2を選択した場合には、例えば予想待機時間T1の38秒間に亘って待機することになるため、自車両OVの予定された運行に大きな影響を及ぼすと考えがちである。したがって、実際の到着時間の変化が僅か0.51秒でしかない事実を車載器20が自車両OVの運転者に通知することで、この運転者の認識に変化をもたらし、運転者が後方車両FV1~FV3等の迷惑にならない走行パターンP2を選択するように促すことができる。
【0074】
<運行管理システムの構成例>
本発明の実施形態における運行管理システム100の構成例を図6に示す。
図6に示した運行管理システム100は、運送会社が管理している各車両(自車両OV)に搭載された車載器20と、サーバ30と、運送会社事務所40に配置された事務所PC(パーソナルコンピュータ)41とを含んでいる。車載器20は、前述の追い越し支援車載器の機能を搭載している。
【0075】
車載器20は、一般的な運行記録計と同様に、各時点の車両の運行状態を表す車両位置情報、車速情報などの運行実績情報を送信することができる。また、図6に示した車載器20は、図5中のS22の処理により追い越し時間差T2が運転者に通知された時のイベントの情報も送信することができる。このイベントの情報は、当該イベントに伴って運転者が追い越しの前に予想待機時間T1相当の時間の待機を行ったか否かを示す情報や、予想待機時間T1、追い越し時間差T2、位置情報、時刻、運転者のIDなどの情報も含んでいる。
【0076】
車載器20が送信する運行実績情報や前記イベントの情報は、無線通信により所定の公衆通信回線および通信ネットワーク45を経由してサーバ30に入力される。
運行管理システム100のサーバ30は、通信部31、車両・運転者管理部32、運行記録DB(データベース)33、追い越しイベント検出部34、事務所PC管理部35、及び日報作成部36の各機能を搭載している。
【0077】
通信部31は、通信ネットワーク45を経由して各車両に搭載された車載器20とサーバ30との間でデータ通信を行う機能を提供する。また、通信部31は通信ネットワーク45を経由して事務所PC管理部35とサーバ30との間でデータ通信を行う機能を提供する。
【0078】
車両・運転者管理部32は、各車両の運行中に、車両毎のリアルタイムの運行状態を表す運行データを車両のIDや運転者のIDと共に各車載器20から逐次取得する機能を有する。車両・運転者管理部32が取得する運行データの中には、自車両OVの追い越しのイベントを表す情報も含まれる。
【0079】
運行記録DB33は、車両・運転者管理部32が取得した運行データを運転者毎に区別して蓄積し、運転者毎の運行実績データを生成する。
追い越しイベント検出部34は、車両・運転者管理部32が車載器20から取得した運行データの中から追い越しイベントのデータを抽出し、運転者毎の評価に利用可能な追い越し実績情報を作成する。すなわち、車載器20が追い越し時間差T2を運転者に通知するイベントが発生した時に、予想待機時間T1の待機を実施してから先行車両PVの追い越しを行ったか否かを示すデータと、予想待機時間T1、追い越し時間差T2等の値のデータと、該当する運転者のID、日付及び時刻、車両位置等を含む追い越し実績情報を作成する。この追い越し実績情報も運行記録DB33に登録され保持される。
【0080】
日報作成部36は、例えば管理対象の各車両の当日の運行業務が終了して入庫した時に、運行記録DB33に記録された実績データを集計して、運転者毎の当日の運行実績を主体とする日報を作成する。この日報の中には、追い越しイベント検出部34が生成した追い越し実績情報も含まれる。
【0081】
事務所PC管理部35は、サーバ30に対する事務所PC41のアクセスを管理する。事務所PC管理部35は、事務所PC41からの要求に応じて、サーバ30が把握している様々な情報を事務所PC41へ送信できる。例えば、車両・運転者管理部32が各車両の車載器20から取得したリアルタイムの運行データや、運行記録DB33が保持している運転者毎の実績データや、日報作成部36が生成した運転者毎の日報のデータが、事務所PC管理部35から事務所PC41へ送信される。
【0082】
したがって、運送会社の管理者は、事務所PC41をサーバ30と接続することで、各車両の現在位置、走行速度などの運行状況をリアルタイムで把握したり、運転者毎の運行実績を表す日報などのデータを入手できる。この日報に含まれている追い越し実績情報は、それぞれの運転者の運転状況の評価項目の1つとして利用できる。
【0083】
例えば、車載器20が運転者に追い越し時間差T2を通知した際に、予想待機時間T1相当の待機の後で先行車両PVの追い越しをした実績データがある場合には、該当する運転者の運転評価を上げるように配慮することが適切である。また、車載器20が運転者に追い越し時間差T2を通知した際に、予想待機時間T1相当の待機を行う前に先行車両PVの追い越しをした実績データがある場合には、該当する運転者の運転評価を下げるように配慮することが適切である。
【0084】
以上のように、本実施形態に係る車載器20は、図1の走行パターンP0のような状況において、自車両OVの運転者が走行パターンP2を選択するように追い越し時間差T2を含む支援情報を運転者に対して自動的に通知することができる。これにより、自車両OVの運転者は走行パターンP1のような運転を行っても意味が無い(到着時間がほとんど変化しない)ことを正しく認識することができ、自身の正しい判断により走行パターンP2で自車両OVを運行することができる。これにより、トラックのような低速の車両が道路の複数の車線を専有し、高速の後続車両の前方の進路が塞がれる走行パターンP1のような状況の発生を抑制できる。したがって、自車両OVの運転者および周辺車両の運転者にとってストレスの生じにくい安全な運転環境の実現に貢献できる。
【0085】
また、この車載器20を含む運行管理システム100を利用する場合には、運送会社の管理者は、それぞれの運転者が先行車両PVの追い越しをする際に適切な運転操作を行ったか否かを知ることができる。またこの追い越しイベントの実績情報を各運転者のより正しい運転評価に役立ていることができる。
【0086】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0087】
例えば、上述の車載器20は、図1に示すように複数の車線が並んでいる通常の道路上で自車両OVが先行車両PVを追い越す場合を想定しているが、これ以外の道路状況においても運転者の判断を支援するために同様の機能を利用することができる。例えば、道路上で複数の車線が合流する地点の手前側で、後方から接近している他車両がある場合に、他車両が通過するまで自車両が待機してから合流地点に侵入するか、他車両が通過する前に自車両が合流地点に侵入するかの判断を支援するための通知を車載器20で行うことが可能である。
なお、車載器20が生成した運行状況の実績データについては、無線通信を使わずに、メモリカード20kを利用して事務所PC41に転送しても良い。
【0088】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る追い越し支援車載器および運行管理システムの特徴をそれぞれ以下[1]~[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 車両上に搭載され、自車両と当該自車両周辺の他車両との位置関係および相対距離を検出可能な他車両検出部(LiDARユニット21F、21R、先行車両検出機能22F、後方車両検出機能22R)と、
前記自車両の前方に第1他車両(先行車両PV)が存在し、前記自車両の後方に第2他車両(後方車両FV1)が存在する状況下で、前記他車両検出部の検出状態に基づいて前記自車両の追い越し運転を支援する支援情報を生成する制御部(20a)と、
前記制御部が生成した支援情報を運転者に通知する情報通知部(音声信号生成部20n、表示部20e)と、
を備え、
前記制御部は、前記第2他車両が少なくとも前記自車両を追い越した後で当該自車両が前記第1他車両を追い越す場合の第1状態で想定される予想待機時間(T1)を算出する(S19)と共に、前記自車両が前記第2他車両よりも先に前記第1他車両を追い越す場合の第2状態と、前記第1状態との違いが前記自車両の到着時間に与える予想時間差(追い越し時間差T2)を算出し(S20)、前記予想時間差を前記支援情報として前記情報通知部に与える(S22)、
追い越し支援車載器(車載器20)。
【0089】
上記[1]の構成の追い越し支援車載器によれば、自車両(OV)および第1他車両(PV)がトラックのような低速車両である場合に、図1中の走行パターンP1、P2のいずれで追い越しをしても到着時間の変化への影響が僅かであることを運転者に通知できるので、運転者が走行パターンP2を選択するように促すことができる。これにより、トラックのような低速の車両が道路の複数の車線を専有し、高速の後続車両の前方の進路が塞がれる走行パターンP1のような状況の発生を抑制できる。したがって、自車両OVの運転者および周辺車両の運転者にとってストレスの生じにくい安全な運転環境の実現に貢献できる。
【0090】
[2] 前記制御部は、前記自車両の車体長(自車長L1)、前記自車両と前記第2他車両との車間距離(後方車間距離L2)、前記第2他車両として認識した車両台数(後方車両数n)、前記自車両と前記第1他車両との車間距離(前方車間距離L3)、および前記自車両と前記第2他車両との速度差(v2-v1)に基づいて前記予想待機時間(T1)を算出し、前記予想待機時間、前記自車両と前記第2他車両との速度差(v1-v3)、および前記自車両の現在の車速(v1)に基づいて前記予想時間差(追い越し時間差T2)を算出する、
上記[1]に記載の追い越し支援車載器。
【0091】
上記[2]の構成の追い越し支援車載器によれば、第2他車両が後方から自車両を追い越して自車両が安全に第1他車両の追い越しを開始できる状態になるまでの適切な待機時間(T1)をほぼ正確に推定できる。また、この待機時間に基づいて、到着時間の違いを表す予想時間差(T2)を正しく推定できる。
【0092】
[3] 前記制御部は、前記予想時間差(追い越し時間差T2)の算出処理を繰り返すと共に、前記自車両(OV)と前記第1他車両(先行車両PV)との車間距離を監視し、前記車間距離(前方車間距離L3)が所定以下になった時に(S21)最新の前記予想時間差を前記支援情報として前記情報通知部に与える(S22)、
上記[1]に記載の追い越し支援車載器。
【0093】
上記[3]の構成の追い越し支援車載器によれば、自車両(OV)の運転者が前方の第1他車両(先行車両PV)の追い越しを行う可能性の高い適切な状況および適切なタイミングで、追い越し運転を支援する情報を運転者に通知することができる。
【0094】
[4] 上記[1]に記載の追い越し支援車載器(車載器20)と、
前記追い越し支援車載器からデータを取得して管理するサーバ(30)と、
前記サーバが記憶しているデータに基づいて運転者の運転状況を管理する管理者用端末(事務所PC41)と、
を備える運行管理システム(100)。
【0095】
上記[4]の構成の運行管理システムによれば、運送会社の管理者が運転者の運行状況を管理する場合に、追い越し支援車載器の追い越し支援機能を活用できる。すなわち、管理対象の車両において追い越しのイベントが発生したときに、運転者が実際にどのような運転を行ったのかを管理者が把握できる。
【0096】
[5] 前記追い越し支援車載器は、前記支援情報の出力イベントに伴って運転者が前記第1状態および前記第2状態のいずれを選択したかを表す情報を含む運行実績データを生成し、
前記サーバは、前記運行実績データを前記追い越し支援車載器から取得し(車両・運転者管理部32)、運転者に対応付けて記憶する(運行記録DB33)、
上記[4]に記載の運行管理システム。
【0097】
上記[5]の構成の運行管理システムによれば、追い越しのイベントが発生したときに、運転者が実際にどのような運転を行ったのかを表す実績情報を自動的に生成して管理できる。これにより、運転者の適切な運転評価に利用可能な実績情報が得られる。
【符号の説明】
【0098】
10 道路
10a,10b 車線
20 車載器
20a 制御部
20b IF部
20c 車速検出部
20d GPS受信機
20e 表示部
20f 操作部
20g RTC
20h 不揮発性メモリ
20i 揮発性メモリ
20j メモリカードIF
20k メモリカード
20m 無線通信部
20n 音声信号生成部
20o スピーカ
21F,21R LiDARユニット
22F 先行車両検出機能
22R 後方車両検出機能
23 自車長保持部
24 待機時間算出機能
25 追い越し時間差算出機能
26 追い越し支援制御機能
30 サーバ
31 通信部
32 車両・運転者管理部
33 運行記録DB
34 追い越しイベント検出部
35 事務所PC管理部
36 日報作成部
40 運送会社事務所
41 事務所PC
45 通信ネットワーク
100 運行管理システム
A1 進行方向
FV1,FV2,FV3 後方車両
L1 自車長
L2 後方車間距離
L3 前方車間距離
n 後方車両数
OV 自車両
P0,P1,P2,P3 走行パターン
PV 先行車両
T1 予想待機時間
T2 追い越し時間差
v1,v2,v3 車速
図1
図2
図3
図4
図5
図6