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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139830
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】既存部材再利用検討システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20241003BHJP
   G06Q 50/40 20240101ALI20241003BHJP
【FI】
G06F30/13
G06Q50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050740
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】今橋 裕里奈
【テーマコード(参考)】
5B146
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146DE12
5B146DE16
5B146DL04
5B146DL08
5B146EA06
5B146EC09
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】加工により再利用可能となる部材を考慮した既存部材の再利用の検討を行うことができる既存部材再利用検討システムを提供する。
【解決手段】住宅2に関する情報及び建物の改修に関する情報を取得する情報取得部と、建物の改修に使用される新しい部材である新設部材を特定する新設部材特定部と、住宅2に含まれる既存部材を抽出する抽出部と、既存部材及び新設部材の互いの仕様が一致するか否かを判定する仕様判定部と、仕様判定部により仕様が一致しないと判定された既存部材について、加工を行なうことで仕様を一致させる対応が可能か否かを判定する加工判定部と、仕様判定部により仕様が一致すると判定された既存部材と、加工判定部により仕様を一致させる対応が可能であると判定された既存部材と、を改修に再利用可能な再利用可能部材として特定する再利用可能部材特定部と、を具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設建物に関する情報及び建物の改修に関する情報を取得する情報取得部と、
前記建物の改修に関する情報に基づいて、前記建物の改修に使用される新しい部材である新設部材を特定する新設部材特定部と、
前記既設建物に関する情報に基づいて、前記既設建物に含まれる既存部材を抽出する抽出部と、
前記既存部材及び前記新設部材の互いの仕様が一致するか否かを判定する仕様判定部と、
前記仕様判定部により前記仕様が一致しないと判定された前記既存部材について、加工を行なうことで前記仕様を一致させる対応が可能か否かを判定する加工判定部と、
前記仕様判定部により前記仕様が一致すると判定された前記既存部材と、前記加工判定部により前記仕様を一致させる対応が可能であると判定された前記既存部材と、を改修に再利用可能な再利用可能部材として特定する再利用可能部材特定部と、
を具備する既存部材再利用検討システム。
【請求項2】
前記加工判定部が、前記既存部材について加工を行なうことで前記仕様を一致させる対応が可能であると判定した場合、前記既存部材に対して行なう加工の内容を決定する加工指示部を具備する、
請求項1に記載の既存部材再利用検討システム。
【請求項3】
前記仕様には、部材の寸法が含まれ、
前記仕様判定部は、
前記既存部材及び前記新設部材の互いの前記寸法が一致するか否かを判定し、
前記加工判定部は、
前記仕様判定部により前記寸法が一致しないと判定された前記既存部材について、寸法調整の加工を行なうことで前記寸法を一致させる対応が可能か否かを判定する、
請求項1に記載の既存部材再利用検討システム。
【請求項4】
前記仕様には、部材の取り合いが含まれ、
前記仕様判定部は、
前記既存部材及び前記新設部材の互いの前記取り合いが一致するか否かを判定し、
前記加工判定部は、
前記仕様判定部により前記取り合いが一致しないと判定された前記既存部材について、取り合い調整の加工を行なうことで前記取り合いを一致させる対応が可能か否かを判定する、
請求項1に記載の既存部材再利用検討システム。
【請求項5】
前記既設建物に関する情報及び前記建物の改修に関する情報に基づいて、前記建物の改修に必要な部材の全てを前記新設部材とした場合の改修費用の見積りである新設改修費用と、前記建物の改修に必要な部材のうちの少なくとも一部を、前記新設部材に代えて前記再利用可能部材とした場合の改修費用の見積りである再利用改修費用と、を算出する費用算出部を具備する、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の既存部材再利用検討システム。
【請求項6】
前記新設改修費用と、前記再利用改修費用と、を比較した内容を提示する比較部を具備する、
請求項5に記載の既存部材再利用検討システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存部材再利用検討システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の工事を行う際に、解体された部材を再利用するための技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、解体された住宅又は解体予定の住宅で使用された部品のうち、再利用可能な部品の情報を蓄積可能な再利用可能部品情報蓄積部を有する住宅用部品検索システムが記載されている。上記システムは、入手を希望する部品の情報(入手希望部品情報)と一致する部品情報が、再利用可能部品情報蓄積部に蓄積された情報の中にあるか否かを検索する検索処理部を有する。上記システムによれば、検索処理部の検索結果を得ることで、住宅で使用された部品(既存部材)の再利用の検討を行うことができる。
【0004】
ここで、入手を希望する部材と既存部材との互いの仕様(寸法等)が一致しない場合であっても、既存部材に加工を施すことで、既存部材の再利用が可能となる場合がある。しかしながら、上記特許文献1に記載のシステムでは、加工により再利用可能となる部材を考慮した既存部材の再利用の検討を行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-318272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、加工により再利用可能となる部材を考慮した既存部材の再利用の検討を行うことができる既存部材再利用検討システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、既設建物に関する情報及び建物の改修に関する情報を取得する情報取得部と、前記建物の改修に関する情報に基づいて、前記建物の改修に使用される新しい部材である新設部材を特定する新設部材特定部と、前記既設建物に関する情報に基づいて、前記既設建物に含まれる既存部材を抽出する抽出部と、前記既存部材及び前記新設部材の互いの仕様が一致するか否かを判定する仕様判定部と、前記仕様判定部により前記仕様が一致しないと判定された前記既存部材について、加工を行なうことで前記仕様を一致させる対応が可能か否かを判定する加工判定部と、前記仕様判定部により前記仕様が一致すると判定された前記既存部材と、前記加工判定部により前記仕様を一致させる対応が可能であると判定された前記既存部材と、を改修に再利用可能な再利用可能部材として特定する再利用可能部材特定部と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記加工判定部が、前記既存部材について加工を行なうことで前記仕様を一致させる対応が可能であると判定した場合、前記既存部材に対して行なう加工の内容を決定する加工指示部を具備するものである。
【0010】
請求項3においては、前記仕様には、部材の寸法が含まれ、前記仕様判定部は、前記既存部材及び前記新設部材の互いの前記寸法が一致するか否かを判定し、前記加工判定部は、前記仕様判定部により前記寸法が一致しないと判定された前記既存部材について、寸法調整の加工を行なうことで前記寸法を一致させる対応が可能か否かを判定するものである。
【0011】
請求項4においては、前記仕様には、部材の取り合いが含まれ、前記仕様判定部は、前記既存部材及び前記新設部材の互いの前記取り合いが一致するか否かを判定し、前記加工判定部は、前記仕様判定部により前記取り合いが一致しないと判定された前記既存部材について、取り合い調整の加工を行なうことで前記取り合いを一致させる対応が可能か否かを判定するものである。
【0012】
請求項5においては、前記既設建物に関する情報及び前記建物の改修に関する情報に基づいて、前記建物の改修に必要な部材の全てを前記新設部材とした場合の改修費用の見積りである新設改修費用と、前記建物の改修に必要な部材のうちの少なくとも一部を、前記新設部材に代えて前記再利用可能部材とした場合の改修費用の見積りである再利用改修費用と、を算出する費用算出部を具備するものである。
【0013】
請求項6においては、前記新設改修費用と、前記再利用改修費用と、を比較した内容を提示する比較部を具備するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、加工により再利用可能となる部材を考慮した既存部材の再利用の検討を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る既存部材再利用検討システムを示したブロック図。
図2】(a)改修前の建物の一部を示した平面図。(b)改修後の建物の一部を示した平面図。
図3】既存部材再利用検討システムが実行する処理を示したフローチャート。
図4図3に示す処理の続きを示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の一実施形態に係る既存部材再利用検討システム1について説明する。既存部材再利用検討システム1は、既存の建物を改修する際に、既存の部材の再利用の検討に用いられるものである。
【0017】
本実施形態では、改修の対象となる建物として、住宅2を採用している。住宅2は、外壁3や内壁4、柱、梁、床、天井、屋根等の種々の部材により形成されている。図2(a)では、改修前の住宅2を示している。改修前の住宅2は、「洋室」の前方側に、外壁3を隔てて隣接する「ポーチ」を備えている。外壁3は、面材やフレーム等によって構成されている。また、外壁3には窓が設けられている。
【0018】
図2(b)では、改修後の住宅2を示している。住宅2の改修は、設計者による改修プランに基づいて行われる。改修後の住宅2は、屋外空間である「ポーチ」を、屋内空間である「子ども部屋」に変更している。上記変更に伴い、改修後の住宅2では、「洋室」の前側の外壁3が解体されると共に、「子ども部屋」の前側及び右側を区画する外壁3が設置されている。また、「洋室」と「子ども部屋」との間には、内壁4が設置されている。なお、改修前の「洋室」の外壁3と、改修後の「子ども部屋」の外壁3と、は寸法や窓の構成が互いに概ね同様であるものとする。
【0019】
上述のように住宅2の改修を行う場合、改修前の住宅2で使用されていた既存の部材(既存部材)を改修に使用することができる場合は、新しい部材(新設部材)に代えて、既存部材を再利用することも可能である。図2に示す例においては、改修に伴い解体された「洋室」の外壁3を構成する既存部材(面材やフレーム等)を、「子ども部屋」の外壁3に再利用することができる。このように既存部材を再利用した場合には、廃棄物の削減や、部材のコストの低減につながる。なお、住宅2の改修としては、上述した外壁3の移設に限定されず、柱や梁の移設等、種々の工事を採用可能である。
【0020】
ここで、既存部材の寸法等が、改修に用いられる部材の寸法等と一致する場合は、既存部材をそのまま使用することが可能であるが、上記寸法等が一致しない場合もある。その際には、切断や継ぎ足し等の簡易な加工を既存部材に施すことで、既存部材が使用可能となる場合がある。しかしながら、既存部材が加工により使用可能となるか否かの判断には手間と時間がかかり、設計者の負担となることが想定される。
【0021】
本実施形態に係る既存部材再利用検討システム1は、取得した情報を用いて既存部材及び新設部材の互いの仕様が合うか否かの判定を行い、上記判定結果に基づいて、既存部材が再利用可能な部材(再利用可能部材)であるか否かの判定を行うことができる。ここで、部材の「仕様」とは、新設部材に代えて既存部材を使用する際に、各部材同士の間で合う(一致する)必要がある構造を指す。本実施形態では、部材の仕様として、部材の寸法及び部材の取り合い(接合部分の構造)を採用している。
【0022】
図1に示すように、既存部材再利用検討システム1は、各種の情報の処理が可能な制御装置10により構成される。制御装置10としては、一般的なパーソナルコンピュータやサーバ等を用いることができる。制御装置10は、例えば住宅2の改修を行う住宅メーカーにより管理されている。制御装置10は、制御部11、記憶部12、入力部13及び表示部14を具備する。
【0023】
制御部11は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行するものである。制御部11は、CPUにより構成される。
【0024】
記憶部12は、各種のプログラムや取得された各種の情報が記憶されるものである。記憶部12は、HDD、RAM、ROM等により構成される。
【0025】
入力部13は、各種の情報を入力するためのものである。入力部13は、キーボード、マウス等により構成される。
【0026】
表示部14は、各種の情報を表示するものである。表示部14は、例えば液晶ディスプレイ等により構成される。
【0027】
以下では、図3及び図4のフローチャートを用いて、既存部材再利用検討システム1が実行する処理について説明する。本実施形態では、住宅2の改修を実際に行う前であって、改修プラン(改修計画)を作成している段階で、上記処理を実行するものとする。上記処理は、設計者が入力部13を用いた操作を行うことで実行される。
【0028】
ステップS101において、制御部11は、住宅2の改修プラン情報を取得する。ここで、改修プラン情報とは、住宅2の改修における費用や工事内容、工期の決定に必要な情報である。改修プラン情報には、改修前の住宅2の設計図面や、改修後の住宅2の設計図面が含まれている。
【0029】
また、改修プラン情報には、改修前の住宅2に使用されている既存部材の情報や、改修に使用可能な新設部材の情報が含まれている。上記各部材(既存部材及び新設部材)の情報には、各部材の寸法(長さ寸法や幅寸法、厚さ寸法等)や、各部材の取り合い(固定用の穴の位置等)の情報等、各部材の仕様の情報が含まれている。また、改修プラン情報には、各部材の費用(材料費)、各部材に加工(切断や継ぎ足し、穴あけ加工等)を施した場合の費用(工事費)、各部材の調達に要する期間等の情報が含まれている。
【0030】
上記各部材(既存部材及び新設部材)には、外壁3や内壁4、柱、梁、床、天井、屋根等の種々の種別の部材が含まれる。本実施形態に係る既存部材及び新設部材としては、同じ住宅メーカーの部材を想定している。既存部材及び新設部材には、例えば管理用の番号が設定されており、上記番号を用いて各部材の在庫の管理等を行うことができる。また、改修プラン情報には、工事の工程表(スケジュール)等の情報が含まれている。
【0031】
改修プラン情報は、記憶部12や所定のデータベース等に保存されている。制御部11は、上記保存先から住宅2の改修プラン情報を取得する。なお、入力部13を用いて改修プラン情報を入力することも可能である。制御部11は、ステップS101の処理を実行した後、ステップS102の処理に移行する。
【0032】
ステップS102において、制御部11は、改修後の住宅2に使用する新設部材の確定(特定)を行う。具体的には、制御部11は、改修プラン情報に基づいて、改修に使用する部材の全てに新設部材を用いた場合(既存部材を用いない場合)に、使用される新設部材を特定する。制御部11は、ステップS102の処理を実行した後、ステップS103の処理に移行する。
【0033】
ステップS103において、制御部11は、改修に使用する部材の全てに新設部材を用いた場合の工事の費用の見積りを算出する。制御部11は、ステップS102において特定した新設部材の情報と、改修プラン情報に含まれる新設部材の金額と、を用いて、上記費用の見積りを行う。制御部11は、上記見積りの結果を、表示部14に表示することができる。制御部11は、ステップS103の処理を実行した後、ステップS104の処理に移行する。
【0034】
ステップS104において、制御部11は、改修プラン情報から、既存解体部材情報を抽出する。ここで、既存解体部材情報とは、改修プラン情報の既存部材の情報のうち、住宅2の改修に伴い解体される既存部材(既存解体部材)の情報である。制御部11は、例えば、改修前後の図面情報に基づいて、既存解体部材情報を抽出することができる。制御部11は、ステップS104の処理を実行した後、ステップS105の処理に移行する。
【0035】
ステップS105において、制御部11は、ステップS104で抽出した既存解体部材の中に、ステップS102で特定した新設部材と同じ種別のものがあるか否かを判定する。ここで、「同じ種別」とは、外壁3や内壁4、柱、梁、床、天井、屋根等の部材の種類が共通していることを指す。制御部11は、既存解体部材の中に新設部材と同じ種別のものがあると判定した場合、ステップS106の処理に移行する。一方、制御部11は、既存解体部材の中に新設部材と同じ種別のものがないと判定した場合、既存部材再利用検討システム1の処理を終了する。
【0036】
ステップS106において、制御部11は、互いに同じ種別である既存解体部材及び新設部材の寸法が合うか否かを判定する。ここで、「寸法が合う」とは、既存解体部材及び新設部材の互いの寸法が一致することを指す。制御部11は、各部材の寸法が合うと判定した場合、ステップS110の処理に移行する。一方、制御部11は、各部材の寸法が合わないと判定した場合、ステップS107の処理に移行する。
【0037】
ステップS107において、制御部11は、ステップS106で寸法が合わないと判定された既存解体部材が、切断又は継ぎ足し等の寸法調整を行なうことで、寸法を一致させる対応が可能であるか否かを判定する。例えば、新設部材の長さ寸法に対して既存解体部材の長さ寸法が大きい場合には、既存解体部材を切断する加工を行なうことで各部材の寸法を一致させることができる。
【0038】
また、新設部材の長さ寸法に対して既存解体部材の長さ寸法が小さい場合には、既存解体部材を継ぎ足す加工を行なうことで各部材の寸法を一致させることができる。上記部材の継ぎ足しを行う際には、継ぎ足し用の金具が使用される。制御部11は、継ぎ足し用の金具を使用する際の制約(例えば既存解体部材の長手方向の断面積や、継ぎ足し用の金具の納まり等)に基づいて、継ぎ足しによる寸法調整が可能か否かの判定を行うことができる。制御部11は、既存解体部材の寸法を一致させる対応が可能であると判定した場合、ステップS108の処理に移行する。一方、制御部11は、既存解体部材の寸法を一致させる対応が可能でないと判定した場合、既存部材再利用検討システム1の処理を終了する。
【0039】
ステップS108及びステップS109において、制御部11は、既存解体部材の寸法調整の加工指示を決定する(ステップS108)と共に、加工後の既存解体部材の寸法が、新設部材の寸法と一致しているとみなす(ステップS109)。ここで、「加工指示」とは、ある既存解体部材を使用する場合に必要な加工を示す情報である。制御部11は、例えば予め記憶部12に保存されている複数のパターンの加工の情報から、ステップS107の判定結果に対応するものを選択し、加工指示として決定することができる。
【0040】
制御部11は、例えば、新設部材に対して既存解体部材の長さ寸法が大きい場合には、既存解体部材を切断する加工指示の決定を行う。この際に制御部11は、改修プラン情報に基づいて、切断箇所や切断する寸法等の決定を行うことができる。また、制御部11は、新設部材に対して既存解体部材の長さ寸法が小さい場合には、既存解体部材を継ぎ足す加工指示の決定を行う。この際に制御部11は、改修プラン情報に基づいて、継ぎ足しの寸法や継ぎ足しに用いる金具の決定を行うことができる。制御部11は、上記加工指示の内容を、表示部14に表示することができる。制御部11は、ステップS109の処理を実行した後、ステップS110の処理に移行する。
【0041】
ステップS106又はステップS109から移行するステップS110において、制御部11は、互いに同じ種別である既存解体部材及び新設部材の取り合いが合うか否かを判定する。ここで、「取り合い」とは、各部材の接合部分の構成を指す。本実施形態では、取り合いの一例として、部材の接合に使用される穴(固定用の穴)の位置を採用している。このためステップS110においては、各部材の穴の位置が合うか否かを判定する。また、「穴の位置が合う」とは、既存解体部材及び新設部材の互いの固定用の穴の位置が一致することを指す。制御部11は、各部材の穴の位置が合うと判定した場合、ステップS114の処理に移行する。一方、制御部11は、各部材の穴の位置が合わないと判定した場合、ステップS111の処理に移行する。
【0042】
ステップS111において、制御部11は、ステップS110で穴の位置が合わないと判定された既存解体部材が、穴あけ加工(新たに穴をあける加工)による位置調整を行なうことで、穴の位置を一致させる対応が可能であるか否かを判定する。
【0043】
制御部11は、例えば既存解体部材にすでに形成されている穴や、既存解体部材に取り付けられている部品(継ぎ足し用の金具等)の位置関係等に基づいて、穴あけ加工が可能か否かの判定を行うことができる。制御部11は、穴の位置を一致させる対応が可能であると判定した場合、ステップS112の処理に移行する。一方、制御部11は、穴の位置を一致させる対応が可能でないと判定した場合、既存部材再利用検討システム1の処理を終了する。
【0044】
ステップS112及びステップS113において、制御部11は、既存解体部材の穴あけ加工の加工指示を決定する(ステップS112)と共に、加工後の既存解体部材の穴の位置が、新設部材の穴の位置と一致しているとみなす(ステップS113)。制御部11は、ステップS108の処理と概ね同様に、ステップS111の判定結果に対応する加工指示の決定を行うことができる。
【0045】
制御部11は、加工指示を決定する際に、穴の形成位置の決定を行うことができる。制御部11は、上記加工指示の内容を、表示部14に表示することができる。制御部11は、ステップS113の処理を実行した後、ステップS114の処理に移行する。
【0046】
ステップS114において、制御部11は、上述した各処理に基づいて、再利用可能な部材(再利用可能部材)として確定(特定)する。具体的には、制御部11は、既存解体部材のうち、新設部材に対して寸法及び穴の位置が一致する既存解体部材を再利用可能部材として特定する。制御部11は、ステップS114の処理を実行した後、ステップS115の処理に移行する。
【0047】
ステップS115において、制御部11は、再利用可能部材を用いた(新設部材を再利用可能部材に置き換えた)場合の工事の費用の見積りを算出する。制御部11は、改修プラン情報に含まれる各部材の金額と、再利用可能部材の情報と、を用いて、上記費用の見積りを行う。なお、本実施形態では、再利用可能部材を用いた場合の工事の費用の見積りに、既存解体部材に加工(切断や継ぎ足し、穴あけ加工等)を施した場合の工事費を含めている。制御部11は、上記見積りの結果を、表示部14に表示することができる。
【0048】
また、ステップS115において制御部11は、新設部材をできる限り再利用可能部材に置き換えた(再利用可能部材を最大限に使用した)場合の工事の費用の見積りを行うことができる。また、制御部11は、再利用可能部材を最大限に使用した場合だけでなく、再利用可能部材をある程度(最大限に使用した場合よりも少ない数)使用した場合の見積りを行うこともできる。制御部11は、上述のように、再利用可能部材の使用量が異なる複数のパターンの見積りを算出することができる。制御部11は、ステップS115の処理を実行した後、ステップS116の処理に移行する。
【0049】
ステップS116において、制御部11は、改修費用の見積りの比較を行う。具体的には、制御部11は、ステップS103で算出した新設部材のみを用いた場合の費用の見積りと、ステップS115で算出した再利用可能部材を用いた場合の費用の見積りと、を比較した内容を、表示部14に表示することができる。本実施形態のように、改修前の住宅2の既存解体部材を再利用する場合は、既存解体部材の材料自体の費用はかからないため、この分の費用は安くなると想定される。
【0050】
また、制御部11は、費用の見積りに加えて、「工事内容」や「工期」、「既存解体部材の再利用率」の比較を行うことができる。ここで、「工事内容」とは、改修工事の作業内容を示すものである。「工事内容」には、再利用可能部材を用いた場合に行われる作業内容(切断や継ぎ足し、穴あけ加工等)の情報が含まれる。制御部11は、改修プラン情報に含まれる工程表(スケジュール)等の情報に基づいて、改修に新設部材のみを用いた場合の「工事内容」と、再利用可能部材を用いた場合の「工事内容」と、を比較すると共に、比較した内容を表示部14に表示することができる。
【0051】
また、「工期」とは、改修工事の期間を示すものである。制御部11は、「工事内容」や改修プラン情報に含まれる部材の調達に要する期間の情報に基づいて、改修に新設部材のみを用いた場合の「工期」と、再利用可能部材を用いた場合の「工期」と、を比較すると共に、比較した内容を表示部14に表示することができる。
【0052】
また、「既存解体部材の再利用率」とは、改修に使用する全ての部材の量に対する再利用可能部材の使用量の割合を示すものである。制御部11は、ステップS115において再利用可能部材の使用量が異なる複数のパターンの見積りを算出した場合、各パターンの「既存解体部材の再利用率」を比較すると共に、比較した内容を表示部14に表示することができる。制御部11は、ステップS116の処理を実行した後、既存部材再利用検討システム1の処理を終了する。
【0053】
上述の如き既存部材再利用検討システム1の処理を実行することで、改修前の住宅2に使用されていた既存解体部材が、再利用可能である否かを自動で判定することができる。また、上記既存部材再利用検討システム1の処理によれば、既存解体部材及び新設部材の互いの寸法や固定用の穴の位置が一致せず、既存解体部材をそのままの状態では再利用できない場合でも、既存解体部材に加工を施すことで再利用可能となるか否かの判定を自動で行うことができる。これにより、設計者の負担を軽減することができ、加工により再利用可能となる既存解体部材を考慮した改修計画の検討を容易に行うことができる。
【0054】
また、これにより、より多くの既存解体部材を再利用することができ、コストの低減や廃棄物の削減を図ることができる。また、改修の内容や時期によっては、住宅2に使用されていた部材自体が製造されておらず、新設部材の供給が困難となることが想定される。このような場合でも、本実施形態によれば、より多くの再利用可能な既存解体部材を把握することで、既存解体部材を考慮した改修工事の可否判断を好適に行うことができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、既存解体部材に加工を施すことで再利用可能となると既存部材再利用検討システム1が判定した場合、既存解体部材を再利用する場合に必要な加工の情報(加工指示)を自動で決定することができる。これにより、設計者の負担をより軽減することができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、新設部材のみを用いた場合の費用の見積りと、再利用可能部材を用いた場合の費用の見積りと、を比較した内容を、表示部14に表示することができる。これにより、改修計画の検討を容易に行うことができる。
【0057】
以上のように、本発明の一実施形態に係る既存部材再利用検討システム1は、
既設建物(住宅2)に関する情報及び建物の改修に関する情報を取得する(ステップS101)情報取得部(制御部11)と、
前記建物の改修に関する情報に基づいて、前記建物(住宅2)の改修に使用される新しい部材である新設部材を特定する(ステップS102)新設部材特定部(制御部11)と、
前記既設建物に関する情報に基づいて、前記住宅2に含まれる既存部材(既存解体部材)を抽出する(ステップS104)抽出部(制御部11)と、
前記既存解体部材及び前記新設部材の互いの仕様(部材の寸法や固定用の穴の位置)が一致するか否かを判定する(ステップS106、ステップS110)仕様判定部(制御部11)と、
前記仕様判定部(制御部11)により前記仕様が一致しない(ステップS106:NO、ステップS110:NO)と判定された前記既存解体部材について、加工を行なうことで前記仕様を一致させる対応が可能か否かを判定する(ステップS107、ステップS111)加工判定部(制御部11)と、
前記仕様判定部(制御部11)により前記仕様が一致する(ステップS106:YES、ステップS110:YES)と判定された前記既存解体部材と、前記加工判定部により前記仕様を一致させる対応が可能である(ステップS107:YES、ステップS111:YES)と判定された前記既存解体部材と、を改修に再利用可能な再利用可能部材として特定する(ステップS114)再利用可能部材特定部(制御部11)と、
を具備するものである。
【0058】
このような構成により、加工により再利用可能となる部材を考慮した既存部材の再利用の検討を行うことができる。すなわち、既存部材再利用検討システム1によれば、既存解体部材及び新設部材の互いの仕様(寸法や固定用の穴の位置)が一致せず、既存解体部材をそのままの状態では再利用できない場合でも、既存解体部材に加工を施すことで再利用可能となるか否かの判定を自動で行うことができる。上記判定結果を用いて、加工により再利用可能となる部材を考慮した既存部材の再利用の検討を行うことができる。
【0059】
また、既存部材再利用検討システム1は、
前記加工判定部(制御部11)が、前記既存解体部材について加工を行なうことで前記仕様を一致させる対応が可能であると判定した場合(ステップS107:YES、ステップS111:YES)、前記既存解体部材に対して行なう加工の内容を決定する(ステップS108、ステップS112)加工指示部(制御部11)を具備するものである。
【0060】
このような構成により、既存解体部材を再利用する場合に必要な加工の情報(加工指示)を自動で示すことができ、設計者の負担を軽減することができる。
【0061】
また、前記仕様には、部材の寸法が含まれ、
前記仕様判定部(制御部11)は、
前記既存解体部材及び前記新設部材の互いの前記寸法が一致するか否かを判定し(ステップS106)、
前記加工判定部(制御部11)は、
前記仕様判定部により前記寸法が一致しないと判定された前記既存解体部材について、寸法調整の加工を行なうことで前記寸法を一致させる対応が可能か否かを判定する(ステップS107)ものである。
【0062】
このような構成により、寸法調整(切断や継ぎ足し)の加工を施すことで既存解体部材が再利用可能となるか否かの判定を自動で行うことができる。
【0063】
また、前記仕様には、部材の取り合いが含まれ、
前記仕様判定部(制御部11)は、
前記既存解体部材及び前記新設部材の互いの前記取り合いが一致するか否かを判定し(ステップS110)、
前記加工判定部(制御部11)は、
前記仕様判定部により前記取り合いが一致しないと判定された前記既存解体部材について、位置調整の加工を行なうことで前記取り合いを一致させる対応が可能か否かを判定する(ステップS111)ものである。
【0064】
このような構成により、固定用の穴の位置調整の加工(穴あけ加工)を施すことで既存解体部材が再利用可能となるか否かの判定を自動で行うことができる。
【0065】
また、既存部材再利用検討システム1は、
前記既設建物に関する情報及び前記建物の改修に関する情報に基づいて、前記建物の改修に必要な部材の全てを前記新設部材とした場合の改修費用の見積りである新設改修費用と、前記建物の改修に必要な部材のうちの少なくとも一部を、前記新設部材に代えて前記再利用可能部材とした場合の改修費用の見積りである再利用改修費用と、を算出する(ステップS103、ステップS115)費用算出部(制御部11)を具備するものである。
【0066】
このような構成により、新設改修費用及び再利用改修費用の算出を自動で行うことで、設計者の負担を軽減し、改修計画の検討を容易に行うことができる。
【0067】
また、既存部材再利用検討システム1は、
前記新設改修費用と、前記再利用改修費用と、を比較した内容を提示する(ステップS116)比較部(制御部11)を具備するものである。
【0068】
このような構成により、各費用を比較することで、改修計画の検討を容易に行うことができる。
【0069】
なお、本実施形態に係る制御部11は、本発明に係る情報取得部、新設部材特定部、抽出部、仕様判定部、加工判定部、再利用可能部材特定部、費用算出部、及び比較部の一形態である。
また、本実施形態に係る住宅2は、本発明に係る建物の一形態である。
【0070】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、既存部材再利用検討システム1が実行する各処理は、上述したものに限定されず、任意に変更することが可能である。
【0071】
また、本実施形態では、部材の「取り合い」の一例として、部材の固定用の穴の位置を採用した例を示したが、取り合いとしては上述した例に限定されない。部材の取り合いとしては、種々の接合部分の構成を採用可能である。
【0072】
また、本実施形態では、既存解体部材の加工の例として、切断や、継ぎ足し、穴あけ加工を示したが、既存解体部材に施す加工としては上述した例に限定されない。例えば部材の補強等、種々の加工を採用可能である。
【0073】
また、本実施形態では、既存解体部材を、改修前の住宅2に使用されている部材とした例を示したが、このような構成に限定されない。例えば既存解体部材として、解体が行われた(又は解体される予定の)他の住宅に使用された部材を採用してもよい。
【0074】
また、本実施形態では、既存部材及び新設部材として、同じ住宅メーカーの部材を想定した例を示したが、このような構成に限定されず、複数の業者(住宅メーカー等)の部材を既存部材及び新設部材として採用してもよい。
【0075】
また、本実施形態では、既存部材再利用検討システム1が実行する処理において、改修費用の見積り(ステップS103、ステップS115)や、改修費用の比較(ステップS116)を行う例を示したが、このような構成に限定されない。例えば上述した各処理を行わず、再利用可能部材を特定する処理(ステップS114)を実行した後に既存部材再利用検討システム1が実行する処理を終了してもよい。
【0076】
また、本実施形態では、部材の「仕様」として、部材の寸法及び部材の取り合い(接合部分の構造)を採用した例を示したが、部材の仕様としては上述した例に限定されない。例えば部材の仕様として、品質や性能、剛性等を採用してもよい。部材の仕様としては、上述したものの他、新設部材及び既存部材の間で合う必要がある種々の構造を採用可能である。
【0077】
また、本実施形態では、既存部材の再利用可能性の判定として、部材の寸法と、部材の取り合いと、の判定を行う例を示したが、判定の内容としては上述した例に限定されない。例えば、部材の仕様の他の例(例えば品質や性能、剛性等)についての判定を行うようにしてもよい。また、上述した例では、部材の寸法及び部材の取り合いの2段階の判定を行う例を示したが、上記判定としては2段階の判定に限定されず、3段階以上の判定を行うようにしてもよい。
【0078】
また、本実施形態では、制御装置10をパーソナルコンピュータやサーバとした例を示したが、このような構成に限定されない。例えば、制御装置10をタブレットやスマートフォン等の端末としてもよい。
【0079】
また、本実施形態では、改修の対象となる建物として住宅2を採用した例を示したが、建物としては、住宅2等に限定されず、宿泊施設や商業施設、倉庫等の種々の建物を採用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 既存部材再利用検討システム
2 住宅
10 制御装置
図1
図2
図3
図4