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特開2024-139834処理物焼却装置および処理物焼却方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139834
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】処理物焼却装置および処理物焼却方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/027 20060101AFI20241003BHJP
   F23C 10/04 20060101ALI20241003BHJP
   F23G 5/30 20060101ALI20241003BHJP
   F23G 5/50 20060101ALI20241003BHJP
   F23G 5/16 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F23G5/027 B
F23C10/04
F23G5/30 K
F23G5/30 R
F23G5/30 A
F23G5/50 H
F23G5/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050748
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】傳田 知広
(72)【発明者】
【氏名】中山 剛
【テーマコード(参考)】
3K062
3K064
3K078
3K161
【Fターム(参考)】
3K062AA11
3K062AB01
3K062AB02
3K062AC01
3K062AC13
3K062AC20
3K062DB06
3K064AB03
3K064AD05
3K064AD08
3K064AE01
3K064AF02
3K064BA07
3K064BB09
3K078AA04
3K078AA06
3K078AA10
3K078CA02
3K161CA01
3K161CA03
3K161DA52
3K161DA53
3K161FA38
(57)【要約】
【課題】空気反応塔および燃料反応塔を備えたケミカルルーピング燃焼システムを採用した処理物焼却装置において、燃料反応塔に熱を供給すること。
【解決手段】流動媒体に対して気体が供給されて形成される流動層によって処理物を流動加熱して焼却可能に構成された燃料反応器、および燃料反応器において生成された熱分解ガスが流動媒体に対して供給されて形成される流動層を有する揮発分反応器が設けられた燃料反応塔と、流動媒体に対して酸素を含む気体が供給されて形成される流動層によって酸素キャリアを酸化可能に構成された空気反応塔と、を備え、酸素キャリアを空気反応塔と燃料反応塔との間で循環可能に構成された処理物焼却装置であって、燃料反応器に対して酸素を供給可能に構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動媒体に対して気体が供給されて形成される流動層によって処理物を流動加熱して焼却可能に構成された燃料反応器、および前記燃料反応器において生成された熱分解ガスが流動媒体に対して供給されて形成される流動層を有する揮発分反応器が設けられた燃料反応塔と、
前記流動媒体に対して酸素を含む気体が供給されて形成される流動層によって酸素キャリアを酸化可能に構成された空気反応塔と、を備え、
前記酸素キャリアを前記空気反応塔と前記燃料反応塔との間で循環可能に構成された処理物焼却装置であって、
前記燃料反応器に対して酸素を供給可能に構成される
処理物焼却装置。
【請求項2】
前記燃料反応器における前記流動媒体に対して供給される気体に酸素を添加可能に構成される
請求項1に記載の処理物焼却装置。
【請求項3】
前記燃料反応器に供給する前記酸素の添加量を制御する制御部をさらに備える
請求項1に記載の処理物焼却装置。
【請求項4】
前記処理物が固形燃料からなる
請求項1に記載の処理物焼却装置。
【請求項5】
流動媒体に対して気体が供給されて形成される流動層によって処理物を流動加熱して焼却可能に構成された燃料反応器、および前記燃料反応器において生成された熱分解ガスが流動媒体に対して供給されて形成される流動層を有する揮発分反応器が設けられた燃料反応塔と、前記流動媒体に対して酸素を含む気体が供給されて形成される流動層によって酸素キャリアを酸化可能に構成された空気反応塔との間で、酸素キャリアを循環させつつ前記処理物を焼却する処理物焼却方法であって、
前記燃料反応器に対して酸素を供給する
処理物焼却方法。
【請求項6】
前記燃料反応器における前記流動媒体に対して供給される気体に酸素を添加する
請求項5に記載の処理物焼却方法。
【請求項7】
前記燃料反応器に供給する前記酸素の添加量を制御可能に構成された制御部によって、前記燃料反応器に供給する前記酸素の供給量を制御する
請求項5に記載の処理物焼却方法。
【請求項8】
前記処理物が固形燃料からなる
請求項5に記載の処理物焼却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理物焼却装置および処理物焼却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ケミカルルーピング技術を利用した燃焼炉が開発されている。ケミカルルーピング技術を採用したケミカルルーピング燃焼システム(CLC:Chemical Looping Combustion)は、燃料反応塔と空気反応塔との2つの流動層炉から構成され、酸素キャリアと称される粒子が2つの流動層炉間を循環する構成を有する。ケミカルルーピング燃焼システムにおいては、燃料反応塔に廃棄物などの処理物が投入され、酸素キャリアに含まれる酸素(O2)によって酸化燃焼される。一方、空気反応塔には空気が投入されて循環されてきた燃料反応塔からの酸素が含まれていないキャリアに酸素を結合させる。酸素が結合されたキャリアは燃料反応塔に再度循環されて処理物を燃焼させる。これを繰り返すことにより、燃料反応塔に投入された処理物の焼却が行われる。燃料反応塔から排出される排ガスは、窒素(N2)や酸素(O2)が含まれない二酸化炭素(CO2)の高濃度の排ガスとなって排出される。
【0003】
特許文献1には、ケミカルルーピング燃焼システムにおいて、二酸化炭素(CO2)の分離回収を容易にするために、二酸化炭素の吸収剤を用いる技術が提案されている。特許文献2には、空気反応器、燃料反応器、揮発分反応器、金属粒子とガス成分を分離するサイクロン、各反応器をループ状に接続した金属粒子循環経路を備え、サイクロンの排気ガス出口側に酸素検出部を設け、排ガス中の酸素濃度に基づいて金属粒子の補給を行う金属粒子補給部を金属粒子循環経路上に設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-058002号公報
【特許文献2】特許第6214344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術において、燃料反応塔(FR:Fuel Reactor)は上段の揮発分反応器(VR:Volatile Reactor)と下段の燃料反応器(CR:Char Reactor)との上下2段に分かれた流動層が用いられる構成が採用されている。燃料反応塔(FR)において、石炭、バイオマス、廃棄物などの固形燃料を燃焼させる場合、下段の燃料反応器(CR)に固形燃料が投入されて、熱分解およびガス化が行われ、熱分解ガスが生成されて、上段の揮発分反応器(VR)に導入される。上段の揮発分反応器(VR)においては、導入された熱分解ガスが酸素キャリアの酸素(O2)によって燃焼される。
【0006】
下段の燃料反応器(CR)における流動媒体は、水蒸気(H2O)や二酸化炭素(CO2)であって、熱分解およびガス化が主たる反応になるため、吸熱反応が主に発生する。これにより、燃料反応塔、特に下段の燃料反応器(CR)に熱を供給し続ける必要が生じるという問題がある。
【0007】
また、燃料反応器(CR)において燃料が熱分解される際に、熱分解ガスとともにチャーが生成される。生成された熱分解ガスおよびチャーは、燃料反応器(CR)内においてガス化させることが望ましい。しかしながら、チャーは反応速度が比較的遅いため、チャーの一部が酸素キャリアである流動媒体とともに空気反応塔(AR:Air Reactor)に混入されてしまうという問題もある。
【0008】
そのため、空気反応塔(AR)と、揮発分反応器(VR)および燃料反応器(CR)を有する燃料反応塔(FR)とを備えたケミカルルーピング燃焼システムを採用した処理物焼却装置において、燃料反応塔(FR)に熱を供給するとともに、空気反応塔(AR)に可能な限りチャーを混入させないことが可能な技術が求められていた。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、空気反応塔と、揮発分反応器および燃料反応器を有する燃料反応塔とを備えたケミカルルーピング燃焼システムを採用した処理物焼却装置において、燃料反応塔に熱を供給するとともに、空気反応塔へのチャーの混入を抑制することができる処理物焼却装置および処理物焼却方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る処理物焼却装置は、流動媒体に対して気体が供給されて形成される流動層によって処理物を流動加熱して焼却可能に構成された燃料反応器、および前記燃料反応器において生成された熱分解ガスが流動媒体に対して供給されて形成される流動層を有する揮発分反応器が設けられた燃料反応塔と、前記流動媒体に対して酸素を含む気体が供給されて形成される流動層によって酸素キャリアを酸化可能に構成された空気反応塔と、を備え、前記酸素キャリアを前記空気反応塔と前記燃料反応器と前記揮発分反応器との間で循環可能に構成された処理物焼却装置であって、前記燃料反応器に対して酸素を供給可能に構成される。
【0011】
本発明の一態様に係る処理物焼却装置は、上記の発明において、前記燃料反応器における前記流動媒体に対して供給される気体に酸素を添加可能に構成される。
【0012】
本発明の一態様に係る処理物焼却装置は、上記の発明において、前記燃料反応器に供給する前記酸素の添加量を制御する制御部をさらに備える。
【0013】
本発明の一態様に係る処理物焼却装置は、上記の発明において、前記処理物が固形燃料からなる。
【0014】
本発明の一態様に係る処理物焼却方法は、流動媒体に対して気体が供給されて形成される流動層によって処理物を流動加熱して焼却可能に構成された燃料反応器、および前記燃料反応器において生成された熱分解ガスが流動媒体に対して供給されて形成される流動層を有する揮発分反応器が設けられた燃料反応塔と、前記流動媒体に対して酸素を含む気体が供給されて形成される流動層によって酸素キャリアを酸化可能に構成された空気反応塔との間で、酸素キャリアを循環させつつ前記処理物を焼却する処理物焼却方法であって、前記燃料反応器に対して酸素を供給する。
【0015】
本発明の一態様に係る処理物焼却方法は、上記の発明において、前記燃料反応器における前記流動媒体に対して供給される気体に酸素を添加する。
【0016】
本発明の一態様に係る処理物焼却方法は、上記の発明において、前記燃料反応器に供給する前記酸素の添加量を制御可能に構成された制御部によって、前記燃料反応器に供給する前記酸素の供給量を制御する。
【0017】
本発明の一態様に係る処理物焼却方法は、上記の発明において、前記処理物が固形燃料からなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る処理物焼却装置および処理物焼却方法によれば、揮発分反応器および燃料反応器を有する燃料反応塔と空気反応塔とを備えたケミカルルーピング燃焼システムを採用した処理物焼却装置において、燃料反応塔に熱を供給するとともに、空気反応塔へのチャーの混入を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施形態によるケミカルルーピング燃焼システムを採用した処理物焼却装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、従来技術によるケミカルルーピング燃焼システムを採用した処理物焼却装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の一実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する一実施形態によって限定されるものではない。
【0021】
まず、本発明の一実施形態を説明するにあたり、本発明の理解を容易にするために、本発明者が従来技術における上述した課題を解決するために行った鋭意検討について説明する。図2は、従来技術によるケミカルルーピング燃焼システムを示すブロック図である。
【0022】
従来技術によるケミカルルーピング燃焼システム(CLC:Chemical Looping Combustion)は、例えば2塔式のガス化設備から構成される、いわゆる2塔式CLCである。2塔式CLCは、空気反応塔(AR:Air Reactor)、上段の揮発分反応器(VR:Volatile Reactor)および下段の燃料反応器(CR:Char Reactor)が設けられて構成された二段式循環流動層である燃料反応塔(FR:Fuel Reactor)、およびライザなどによって構成される。空気反応塔(AR)に空気を供給し、燃料反応器(CR)に燃料となる処理物が供給される。空気反応塔(AR)内において空気によって酸化されたキャリアは、ライザによって上に飛ばされて分離器とループシールを経由して、揮発分反応器(VR)に供給されて熱分解ガスと反応する。キャリアはさらに、内部に設けられたオーバーフロー管に沿って燃料反応器(CR)に供給される。燃料反応器(CR)の中においてキャリアは、供給された燃料によってさらに還元される。還元されたキャリアはループシールを経由して再び空気反応塔(AR)に導入されて、空気によって酸化される。
【0023】
すなわち、図2に示すように、従来技術によるケミカルルーピング燃焼システム100は、空気反応塔110と、燃料反応器120および揮発分反応器130が設けられた燃料反応塔との2塔を主体に構成されている。燃料反応塔を構成する下段の燃料反応器120と上段の揮発分反応器130とは、多孔板132を介して連結されているとともに、オーバーフロー管122によって連通されている。ケミカルルーピング燃焼システム100はさらに、分離器140、除塵装置150、および熱交換器160を備えて構成される。
【0024】
空気反応塔110の下部には空気ブロアなどのブロア171が接続されている。ブロア171は、空気を空気反応塔110の下部から供給する。すなわち、ブロア171によって空気反応塔110には下部から空気が導入される。空気反応塔110内における流動は高速流動であり、導入された空気と酸素キャリアとが反応して酸素キャリアに酸素(O2)が結合する酸化反応が生じる。酸化反応に伴って酸化熱が生じることにより、熱交換器111内の水が加熱される。空気反応塔110の上部には熱回収用の熱交換器111が設けられている。熱交換器111には、水または水蒸気(H2O)が供給され、熱交換器111によって、空気反応塔110内において生じる酸素キャリアの反応熱、すなわち酸化熱と熱交換されて空気反応塔110内における熱回収が行われる。
【0025】
空気反応塔110においては、空気が金属酸化物(Mexy-1)と酸化反応することによって、酸化された金属酸化物(Mexy)が生成される。空気反応塔110の上部には移送管を介してサイクロンなどから構成される分離器140が接続される。分離器140は、例えばホットサイクロンから構成される。空気反応塔110内において酸化された金属酸化物(Mexy)は、残存する窒素(N2)および酸素(O2)を含む排ガスとともに分離器140に供給される。分離器140は、例えば比重差などによって固体の金属酸化物(Mexy)を含む排ガスを遠心分離して、窒素(N2)ガスを主に含む排ガスを排出する。
【0026】
分離器140において分離された、酸素キャリアとしての酸化された金属酸化物(Mexy)を含む流動媒体は、分離器140からループシール141を介して揮発分反応器130に供給される。揮発分反応器130内において、チャーおよび金属酸化物(Mexy)を含む流動媒体が所定量以上になると、オーバーフロー管122を通じて、流動媒体は燃料反応器120に供給される。
【0027】
一方、分離器140によって分離された排ガスは、例えばバグフィルタなどから構成される除塵装置150に供給される。除塵装置150においては、供給された排ガスから、分離器140によって回収しきれなかった酸素キャリアである流動媒体が除去される。除塵装置150からはブロア172によってN2ガスが排出され、排出されたN2ガスは煙突180に供給されて大気中に放出される。
【0028】
また、燃料反応器120内には、高温の酸化された金属酸化物(Mexy)と還元された金属酸化物(Mexy-1)とが混在した流動層121が形成されている。燃料反応器120には下部から、二酸化炭素(CO2)および水蒸気(H2O)を含む流動化ガスが供給される。流動化ガスと流動媒体によって処理物の撹拌混合が行われた結果、処理物に対する熱分解およびガス化が行われる。
【0029】
外部から供給される処理物は例えば900℃程度の高温によって熱分解される。処理物は、例えば粉砕された廃棄物やごみ固形化燃料(RDF:Refuse Derived Fuel)である。RDFは、生ごみや廃プラスチックや古紙などの可燃性の廃棄物を粉砕して乾燥させた後に、石灰を混合して圧縮させて固化したものである。燃料反応器120内において、処理物が熱分解されて、チャーおよび熱分解ガスが生成される。チャーは流動化ガスと流動媒体によって熱分解されて、熱分解ガスが生成される。精製された熱分解ガスは、最終的に揮発分反応器に供給される。燃料反応器120からは、還元された金属酸化物(Mexy-1)がループシールを経て排出される。還元された金属酸化物(Mexy-1)はチャーとともにループシール142を通じて空気反応塔110に供給される。
【0030】
燃料反応器120内において生成された生成ガスは、多孔板132を通じて燃料反応器120から上段の揮発分反応器130に供給される。ここで、生成ガスは、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、水素(H2)、水蒸気(H2O)、塩化水素(HCl)、および硫化水素(H2S)を含む熱分解ガスである。
【0031】
燃料反応器120において生成された熱分解ガスを、揮発分反応器130における流動層131を形成する流動化ガスとして用いることにより、酸素キャリアである金属酸化物(Mexy)と熱分解ガスとを接触させて反応させることができる。燃料反応器120から揮発分反応器130に供給された熱分解ガスは、揮発分反応器130内の酸化された金属酸化物(Mexy)を流動させつつ還元反応させる。金属酸化物(Mexy)は熱分解ガスとの反応によって還元され、還元された金属酸化物(Mexy-1)となる。燃料反応器120における還元反応によって、二酸化炭素(CO2)および水蒸気(H2O)が生成される。なお、還元された金属酸化物(Mexy-1)、および還元反応がされていない未反応の金属酸化物(Mexy)を含む流動媒体は、所定量以上になるとオーバーフロー管122を通じて燃料反応器120に供給される。
【0032】
揮発分反応器130内において生成された二酸化炭素(CO2)および水蒸気(H2O)は、熱交換器160に供給されて熱交換されることにより冷却される。熱交換器160によって冷却された二酸化炭素(CO2)および水蒸気(H2O)の少なくとも一部は、エコノマイザ、消石灰を吹き込む乾式スクラバなどの脱硫装置、およびバグフィルタなどの除塵装置(いずれも図示せず)を介して、熱交換器160に返送される。その後、返送された二酸化炭素(CO2)および水蒸気(H2O)は熱交換器160によって加熱された後、燃料反応器120の下部に再循環されて、流動化ガスとして用いられる。また、流動化ガスには、水蒸気(H2O)がさらに追加される。この水蒸気(H2O)には例えば、熱交換器111によって加熱された水蒸気(H2O)を追加することも可能である。
【0033】
以上のように、従来の2塔式CLCなどのケミカルルーピング燃焼システム100においては、酸素キャリアとしての金属酸化物(Mexy、Mexy-1)が、空気反応塔110から、分離器140、揮発分反応器130、燃料反応器120、および空気反応塔110を循環する。これにより、燃料反応器120において処理物の焼却が実行される。
【0034】
上述したように、2塔式LCCなどのケミカルルーピング燃焼システム100においては、燃料反応塔は上段の揮発分反応器130と下段の燃料反応器120との2段に分かれた流動層121,131が用いられる。石炭やバイオマスや廃棄物などの固形燃料を処理物として燃焼させる場合、下段の燃料反応器120に処理物を供給して、熱分解およびガス化反応を行って熱分解ガスを生成させる。上段の揮発分反応器130には、生成された熱分解ガスが導かれてガス燃焼が行われる。
【0035】
燃料反応塔の下段の燃料反応器120における流動媒体は、H2OやCO2を含む気体であり、熱分解やチャーのガス化反応が主たる反応となる。この場合、燃料反応器120においては、以下の反応式(1-1),(1-2),(1-3)に示すような反応が生じる。
C+H2O → CO+H2 …(1-1)
CO+H2O ←→ CO2+H2 …(1-2)
C+CO2 → 2CO …(1-3)
【0036】
すなわち、燃料反応器120においては、熱分解およびガス化反応が主な反応になるため、吸熱反応となる。また、本発明者の知見によれば、O2キャリアは混合および攪拌に寄与するのみであり、燃料反応器120に対する熱の供給は、キャリアおよび一部のチャーの燃焼に基づくもののみである。
【0037】
また、揮発分反応器130においては、酸素キャリアのガス燃焼による酸化反応が主な反応になる。この場合、揮発分反応器130においては、以下の反応式(2-1),(2-2),(2-3)に示すような反応が生じる。
2CO+O2 → 2CO2 …(2-1)
CO+H2O ←→ CO2+H2 …(2-2)
2H2+O2 → 2H2O …(2-3)
【0038】
以上のケミカルルーピング燃焼システム100における熱の収支においては、空気反応塔110における発熱量QAR、燃料反応器120における発熱量QCR(吸熱)、および揮発分反応器130における発熱量QVRを、空気反応塔110の熱交換器111によって所定の熱量Qによって熱交換するため、以下の(3)式による熱の収支が成立することが望ましいが、熱損失などが生じることにより現実的には完全に成立させることは困難である。
AR+QVR-QCR-Q=0 …(3)
【0039】
そこで、本発明者は、ケミカルルーピング燃焼システム100の全体で発生した熱を、燃料反応塔の下段の燃料反応器120に供給する必要があるという課題を見出した。この課題に基づいて、本発明者が鋭意検討を行い、下段の燃料反応器120に対して、流動化ガスとして二酸化炭素(CO2)および水蒸気(H2O)に加えて、酸素(O2)を供給する方法を案出した。これにより、燃料反応器120内の流動媒体における一部において、部分酸化反応による発熱を期待でき、処理物の熱分解反応に対して熱を供給可能になるので熱量アシストが可能になり、反応速度を向上できる。
【0040】
さらに、本発明者は検討を行い、追加する酸素(O2)の供給量は、揮発分反応器130から排出される排ガスに酸素(O2)の過不足がないように制御することを想到した。そのため、燃料反応塔における下段の燃料反応器120および上段の揮発分反応器130の少なくとも一方に、酸素濃度をモニタする濃度センサを設け、酸素濃度に基づいて燃料反応器120に供給する酸素の供給量を制御することを案出した。これにより、上段の揮発分反応器130および下段の燃料反応器120の少なくとも一方における、酸素(O2)の残存量に応じた供給量の制御を行うことが可能になる。以下に説明する一実施形態は、上述した本発明者による鋭意検討によって案出されたものである。
【0041】
図1は、本発明の一実施形態による処理物焼却装置としてのケミカルルーピング燃焼システムを示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態においてケミカルルーピング燃焼システム1は、従来技術によるケミカルルーピング燃焼システム100と同様の構成を有する。すなわち、本実施形態によるケミカルルーピング燃焼システム1は、熱交換器11aが設けられた空気反応塔11と、燃料反応器12および揮発分反応器13が設けられた燃料反応塔との2塔を主体に構成される。また、流動層12aを有する燃料反応器12と流動層13aを有する揮発分反応器13とは、多孔板13bを介して連結され、オーバーフロー管12bによって連通されている。下段の燃料反応器12および上段の揮発分反応器13によって燃料反応塔が構成される。ケミカルルーピング燃焼システム1はさらに、分離器14、ループシール14a,14b、除塵装置15、熱交換器16、ブロア17a,17b、制御部20、およびセンサ部21a,21bを備えて構成される。ケミカルルーピング燃焼システム1から放出される窒素(N2)ガスは、煙突18を通じて大気中に放出される。
【0042】
空気反応塔11、燃料反応器12、揮発分反応器13、分離器14、ループシール14a,14b、除塵装置15、熱交換器16、ブロア17a,17b、および煙突18はそれぞれ、上述した空気反応塔110、燃料反応器120、揮発分反応器130、分離器140、除塵装置150、熱交換器160、ブロア171,172、および煙突18と同様に構成され、稼働する。本実施形態によるケミカルルーピング燃焼システム1においてはさらに、制御部20およびセンサ部21a,21bを備える。
【0043】
制御部20は具体的に、ハードウェアを有するCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのプロセッサ、およびRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの主記憶部(いずれも図示せず)を備える。主記憶部には、制御部20の動作を実行するための、オペレーティングシステム(Operating System:OS)、各種プログラム、各種テーブル、各種データベースなどが記憶可能である。ここで、各種プログラムには、本実施形態による処理を実行する学習モデルや学習済みモデルなどのモデルに基づいた処理を実現する、情報処理プログラムも含まれる。これらの各種プログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、フレキシブルディスクなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。制御部20は、後述する燃料反応器12内に供給する酸素(O2)の添加量を制御する制御プログラムに基づいた処理を実行可能に構成される。
【0044】
センサ部21a,21bは、温度センサおよび酸素濃度センサの少なくとも一方を含んで構成されるセンサ群である。センサ部21a,21bによって計測された温度や酸素濃度の計測値は、制御部20に供給される。なお、センサ部21a,21bはいずれか一方のみ設けても良い。
【0045】
上述した従来技術においては、流動化ガスとして、CO2、H2O、またはCO2とH2Oとの混合ガスを使用していたのに対し、本実施形態においては、流動化ガスとして、O2およびCO2の混合ガス、O2およびH2Oの混合ガス、またはO2とCO2とH2Oとの混合ガスを使用する。これらのうちのCO2およびH2Oは、揮発分反応器13から排出された排ガスを再循環させた排ガスを用いても、他の系統から供給した気体を用いても良い。流動化ガスとして揮発分反応器130から排出される混合ガスの一部を再循環して用いることにより、ケミカルルーピング燃焼システム1におけるランニングコストを低減可能となる。また、H2Oの供給元として、熱交換器11aにおいて加熱された水蒸気を用いても良い。
【0046】
流動層12a,13aは、金属酸化物(Mexy)を主成分として含む流動媒体から構成される。流動媒体は酸素キャリアとして用いられ、酸素を吸収可能、搬送可能、および放出可能な媒体であり、酸素型と還元型とに状態変化する性質を有する。金属酸化物(Mexy)からなる酸素キャリアとしては、還元によって酸素を放出する遷移金属酸化物を使用可能であり、例えば三酸化二鉄(Fe23)や四酸化三鉄(Fe34)などの酸化鉄(Fexy)、酸化マンガン(MnO)、および酸化銅(II)(CuO)などを挙げることができる。Fe系の酸化物は、安価で反応性が良好であるため、CLCにおける酸素キャリアとして好適に用いられる。また、酸化マンガン(MnO)、酸化銅(II)(CuO)は、融点が低く焼結しやすいという利点を有する。なお、酸素キャリアとして、酸化カルシウム(CaO)や酸化ニッケル(NiO)を用いることも可能である。
【0047】
また、流動化ガスに酸素(O2)を添加する場合の添加量は、制御部20によって制御可能に構成される。すなわち、燃料反応器12の内部の酸素濃度および温度は、センサ部21aにより計測される。また、揮発分反応器13の内部の酸素濃度および温度は、センサ部21bにより計測される。センサ部21a,21bによって計測された酸素濃度および温度の少なくとも一方の計測値は、制御部20に出力される。制御部20は、取得した酸素濃度および温度に基づいて、燃料反応器12に対して下部から供給する流動化ガスに添加する酸素(O2)の添加量を導出する。制御部20は導出した酸素(O2)の添加量に基づいて、燃料反応器12に供給する酸素の添加量を制御する。
【0048】
制御部20は具体的に、センサ部21aによって計測される燃料反応器12の内部の酸素濃度が所定濃度以上、例えば1%以上になった場合に、酸素(O2)の添加量を低減させる。また、センサ部21aによって計測される燃料反応器12の内部のガスの温度が所定温度以上、例えば950℃以上の高温になった場合に、酸素(O2)の添加量を低減させる。反対に、制御部20は、センサ部21aによって計測される燃料反応器12の内部のガスの温度が所定温度未満、例えば800℃未満の低温になった場合に、酸素(O2)の添加量を増加させる。
【0049】
また、制御部20は具体的に、センサ部21bによって計測される揮発分反応器13の内部の酸素濃度が所定濃度以上になった場合に、酸素(O2)の添加量を低減させる。また、センサ部21bによって計測される揮発分反応器13の内部のガスの温度が所定温度以上、例えば950℃以上の高温になった場合に、酸素(O2)の添加量を低減させる。反対に、制御部20は、センサ部21bによって計測される揮発分反応器13の内部のガスの温度が所定温度未満、例えば800℃未満の低温になった場合に、酸素(O2)の添加量を増加させる。
【0050】
また、酸素(O2)の添加は、流動化ガスとは異なる別系統から行っても良い。具体的に、図1に示すように、流動層12aの上方のフリーボード部に、酸素(O2)を添加しても良く、酸素(O2)に水蒸気(H2O)および二酸化炭素(CO2)を加えて添加しても良い。この場合においても、制御部20によって酸素(O2)の添加量を制御可能である。
【0051】
以上説明した一実施形態によれば、制御部20によって燃料反応器12に酸素(O2)を過不足なく供給できるので、揮発分反応器13および燃料反応器12を備えたケミカルルーピング燃焼システム1によって構成される処理物焼却装置において、燃料反応器12に酸素(O2)を供給して、一部分で部分酸化反応による発熱が発生して、燃料反応塔における燃料反応器12内に投入される処理物の熱分解反応に対して熱を供給できるとともに、熱量アシストを実行でき、反応速度を向上させることが可能になる。これによって、燃料反応器12内においてチャーなどの熱分解残渣を燃焼させることができ、好適な状態として完全燃焼できるので、空気反応塔11へのチャーの混入を抑制することが可能になる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いても良い。上述した各実施形態および各変形例の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付のクレームおよびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 ケミカルルーピング燃焼システム
11 空気反応塔
11a,16 熱交換器
12 燃料反応器
12a,13a 流動層
12b オーバーフロー管
13 揮発分反応器
13b 多孔板
14 分離器
14a,14b ループシール
15 除塵装置
17a,17b ブロア
18 煙突
20 制御部
21a,21b センサ部
図1
図2