(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139837
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】チタン・鉄固溶層の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 10/28 20060101AFI20241003BHJP
C23C 10/30 20060101ALI20241003BHJP
C23C 10/60 20060101ALI20241003BHJP
C25D 5/28 20060101ALI20241003BHJP
C25D 5/50 20060101ALI20241003BHJP
C23C 28/02 20060101ALI20241003BHJP
C22C 14/00 20060101ALN20241003BHJP
C22C 38/00 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
C23C10/28
C23C10/30
C23C10/60
C25D5/28
C25D5/50
C23C28/02
C22C14/00 Z
C22C38/00 302X
C22C38/00 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050751
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】517132810
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪産業技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】道山 泰宏
【テーマコード(参考)】
4K024
4K028
4K044
【Fターム(参考)】
4K024AA04
4K024AB01
4K024BA08
4K024DB01
4K024GA16
4K028CA01
4K028CB03
4K028CC06
4K028CE02
4K044AA06
4K044BA06
4K044BB03
4K044BB11
4K044BC06
4K044CA12
4K044CA18
4K044CA24
4K044CA62
(57)【要約】
【課題】チタン材に、より分厚い表面硬化層を形成する方法を提供すること。
【解決手段】 チタン材の被処理面に鉄による被覆処理を施す被覆工程(A)、及び該被覆工程(A)で形成された被覆面を加熱する加熱工程(B)をこの順に有する、チタン・鉄固溶層の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン材の被処理面に鉄による被覆処理を施す被覆工程(A)、及び
該被覆工程(A)で形成された被覆面を加熱する加熱工程(B)をこの順に有する、チタン・鉄固溶層の製造方法。
【請求項2】
前記被覆工程(A)は、下記(I)~(III)から選択される何れかの方法により実施される、請求項1に記載のチタン・鉄固溶層の製造方法。
(I):前記チタン材の被処理面に鉄めっきを施す
(II):前記チタン材の被処理面上に鉄紛をのせる
(III):前記チタン材の被処理面に鉄めっきを施し、さらに該鉄めっき面上に鉄粉をのせる
【請求項3】
前記加熱工程(B)はアルゴン雰囲気下で実施される、請求項1又は2に記載のチタン・鉄固溶層の製造方法。
【請求項4】
前記加熱工程(B)は、温度条件900~1500℃で実施される、請求項1又は2に記載のチタン・鉄固溶層の製造方法。
【請求項5】
前記加熱工程(B)で得られたチタン・鉄固溶層に、レーザ加熱、高周波誘導加熱及びガスバーナー加熱からなる群より選ばれる少なくとも一種の加熱処理を行う加熱工程(C)をさらに有する、請求項1又は2に記載のチタン・鉄固溶層の製造方法。
【請求項6】
チタン材表面に形成されたチタン・鉄固溶層であって、
該チタン・鉄固溶層の外表面から100μmの深さにおけるビッカース硬さが200HV以上である、チタン・鉄固溶層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン・鉄固溶層の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタンは金属の中でも比較的比重が小さく、また比較的強度が高いうえに耐食性にも優れるため、多様な用途に使用されており、今後も一層、様々な用途に活用されていくものと考えられる。
【0003】
チタン材の機能性をより高めるために、チタン材表面に特定の処理を実施することにより、チタン材の表面強度を向上させるといった試みもされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、チタン材表面に酸素処理を施すことによる表面硬化技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような事情に鑑み、本発明の目的とするところは、チタン材に、より分厚い表面硬化層を形成する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、チタン材表面に鉄による被覆処理を行った後に加熱することで、チタン材表面に分厚い表面硬化層を形成できることを見出した。本発明者は、かかる知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下のチタン・鉄固溶層の製造方法を提供する。
項1.
チタン材の被処理面に鉄による被覆処理を施す被覆工程(A)、及び
該被覆工程(A)で形成された被覆面を加熱する加熱工程(B)をこの順に有する、チタン・鉄固溶層の製造方法。
項2.
前記被覆工程(A)は、下記(I)~(III)から選択される何れかの方法により実施される、項1に記載のチタン・鉄固溶層の製造方法。
(I):前記チタン材の被処理面に鉄めっきを施す
(II):前記チタン材の被処理面上に鉄紛をのせる
(III):前記チタン材の被処理面に鉄めっきを施し、さらに該鉄めっき面上に鉄粉をのせる
項3.
前記加熱工程(B)は不活性ガス雰囲気下で実施される、項1又は2に記載のチタン・鉄固溶層の製造方法。
項4.
前記加熱工程(B)は、温度条件900~1500℃で実施される、項1又は2に記載のチタン・鉄固溶層の製造方法。
項5.
前記加熱工程(B)で得られたチタン・鉄固溶層に、レーザ加熱、高周波誘導加熱及びガスバーナー加熱からなる群より選ばれる少なくとも一種の加熱処理を行う加熱工程(C)をさらに有する、項1又は2に記載のチタン・鉄固溶層の製造方法。
項6.
チタン材表面に形成されたチタン・鉄固溶層であって、
該チタン・鉄固溶層の外表面から100μmの深さにおけるビッカース硬さが200HV以上である、チタン・鉄固溶層。
【発明の効果】
【0009】
以上にしてなる本発明に係るチタン・鉄固溶層の製造方法によれば、チタン材表面に分厚い表面硬化層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1、2及び比較例1、2のビッカース硬さ測定評価試験結果。
【
図3】実施例3、4及び比較例3のビッカース硬さ測定評価試験結果。
【
図9】実施例5、6及び比較例4のビッカース硬さ測定評価試験結果。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。また、本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、A以上B以下を意味する。
【0012】
(チタン・鉄固溶層の製造補法)
本発明に係るチタン・鉄固溶層の製造方法は、チタン材の被処理面に鉄による被覆処理を施す被覆工程(A)、及び該被覆工程(A)で形成された被覆面を加熱する加熱工程(B)をこの順に有する。
【0013】
被覆工程(A)
被覆工程(A)は、チタン材の被処理面に、鉄による被覆処理を施す工程である。
【0014】
使用するチタン材としては、純チタン(α型、β型)及びチタン合金の何れでも好適に使用することができ、特に限定はない。チタン合金としては、α+β型チタン合金、α型チタン合金、β型チタン合金が挙げられる。α+β型チタン合金としては、Ti-6Al-4V、Ti-8Mn、Ti-6Al-6V-2Sn、Ti-10V-2Fe-3Al等を挙げることができる。α型チタン合金としては、Ti-5Al-2.5Snを挙げることができる。β型チタン合金としては、Ti-13V-11Cr-3Al、Ti-15Mo-5Zr-3Ai、Ti-15V-3Cr-3Al-3Sn、Ti-22V-4Al等を挙げることができる。
【0015】
被覆工程(A)は、下記(I)~(III)から選択される何れかの方法により実施されることが好ましい。
(I):前記チタン材の被処理面に鉄めっきを施す
(II):前記チタン材の被処理面上に鉄紛をのせる
(III):前記チタン材の被処理面に鉄めっきを施し、さらに該鉄めっき面上に鉄粉をのせる
【0016】
上記(I)において鉄めっきを施す方法としては、公知の方法を広く採用することが可能であり、特に限定はない。具体的には、溶融めっき、湿式めっき、乾式めっき等を例示することができる。
【0017】
鉄めっきを施すことにより形成される鉄めっき層は、純鉄であってもよいし、鉄の純度が好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上の鉄系合金であってもよい。かかる鉄系合金としては特に限定はなく、Fe-Ni、Fe-Co、Fe-Ni-Coなどを例示することができ、特に限定はない。
【0018】
形成する鉄めっき層の厚みは、チタン材表面の酸化を防止するために、1μm以上とすることが好ましく、5μm以上とすることがより好ましい。また、鉄めっき層の剥離を防止するために、200μm以下とすることが好ましく、50μm以下とすることがより好ましい。
【0019】
上記(II)において被処理面上にのせる鉄粉は、上記鉄めっき層同様に、純鉄であってもよいし、鉄の純度が好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上の鉄系合金であってもよい。かかる鉄系合金としては特に限定はなく、Fe-C、Fe-Ni、Fe-Co、Fe-Ni-Coなどを例示することができ、特に限定はない。
【0020】
鉄粉の大きさに関しては、平均粒径で10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。一方、平均粒径が200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。
【0021】
チタン材にのせる鉄粉の量としては、表面全体に均一に粉末を分散させるため、チタン材の被処理面1cm2あたり0.03g以上であることが好ましく、0.20g以上であることがより好ましい。処理部分が複雑形状である場合は、粉末中へチタン材を入れても良い。また、鉄粉量の上限値としては特に制限はなく、チタン材の被処理面1cm2あたり3g以下とすればよい。
【0022】
上記(III)における鉄めっき及び鉄粉を被処理面上にのせる条件に関しては、上記(I)、(II)と同様に設定することができる。
【0023】
加熱工程(B)
加熱工程(B)では、被覆工程(A)で形成された被覆面を加熱する。
【0024】
この際、加熱温度は900℃以上とすることが好ましく、950℃以上とすることがより好ましい。一方、加熱温度は1500℃以下とすることが好ましく、Ti-Fe平衡状態図で固相線温度以下とすることがより好ましい。
【0025】
加熱時間は、加熱温度の関係で適宜設定することができ、特に限定はない。例えば、10秒以上とすることが好ましく、10分以上とすることがより好ましく、30分以上とすることがさらに好ましい。一方、加熱時間は、5時間以下とすることが好ましく、3時間以下とすることがより好ましい。
【0026】
加熱の方法は、鉄鋼加工分野における公知の手段を広く採用することが可能であり、特に限定はない。具体的には、炉中加熱、低周波加熱により全体加熱を実施することが好ましい。使用する炉としては、ガス炉、電気炉等を例示することができる。
【0027】
また、加熱工程(B)はチタン材表面が酸化するのを防ぐために、不活性雰囲気下で実施することが好ましく、中でもアルゴン雰囲気下で実施することが好ましい。
【0028】
加熱工程(B)を実施することにより、チタン・鉄固溶層が形成される。
【0029】
加熱工程(C)
加熱工程(B)の後に、前記加熱工程(B)で得られたチタン・鉄固溶層に、レーザ加熱、高周波誘導加熱及びガスバーナー加熱からなる群より選ばれる少なくとも一種の加熱処理を行う加熱工程(C)を設けることも好ましい。
【0030】
加熱工程(C)を設けることにより、チタン・鉄固溶層の焼入れがなされ、鉄の偏析が改善される。
【0031】
側に加熱工程(C)は、耐摩耗性を付与したい領域に対して、例えば局所的に実施することが好ましい。かかる加熱方法としては、例えば、レーザ、高周波誘導、ガスバーナー、電子ビーム等による加熱が挙げられる。局所加熱の中でも、レーザ加熱、高周波誘導加熱及びガスバーナー加熱からなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0032】
加熱工程(C)における加熱温度は、鉄偏析組織の均質化を図るため、Ti-Fe合金のβ変態点以上とすることが好ましく、Ti-Fe合金のβ変態点より50℃以上の高温とすることがより好ましく、Ti-Fe合金のβ変態点より100℃以上の高温とすることがさらに好ましい。一方、母材であるチタン材の溶融を防止するために、加熱温度はチタン材の固相線温度以下とすることが好ましく、チタン材の固相線温度より50℃以上の低温とすることがより好ましい。より具体的には、900℃以上とすることが好ましく、1000℃以上とすることがより好ましい。また、1600℃以下とすることが好ましく、1500℃以下とすることがより好ましい。
【0033】
加熱工程(C)における加熱時間については特に限定はなく、その加熱処理の具体的態様に応じて適宜設定すればよい。
【0034】
レーザ加熱としてのレーザは、CO2レーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ、UVレーザ、半導体レーザ、ファイバレーザ、LDレーザ、LD励起固体レーザ熱等が挙げられる。具体的に、局所加熱として半導体レーザによる加熱を行う場合、出力:300~1000W、移動速度6mm/sでチタンの処理表面を溶解させないという条件で行うことが好ましい。レーザ加熱装置は、市販品を使用することができる。例えば、発振器がLDL160-1000( レーザライン社)である高出力半導体レーザの他、坂口電熱(株)製、浜松ホトニクス(株)製の各種レーザ加熱装置が挙げられる。
【0035】
高周波誘導加熱は、交流電源による高周波電流の誘導加熱で加熱する。高周波誘導加熱装置は、市販品を使用することができる。ガスバーナーとしては、燃料ガス(例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン等の炭化水素系ガス) を空気と混合して燃焼させるものであれば特に限定されない。ガスバーナー装置は市販品を使用することができる。電子ビームによる加熱は、真空中で高密度に収束させた電子ビームを対象物に照射して加熱する。電子ビーム加熱装置は市販品を使用することができる。
【0036】
時効処理工程(D)
上記加熱工程(C)の後に、時効処理工程(D)を設けることも好ましい。時効処理は、当該技術分野で使用される公知の方法を広く採用することが可能であり、特に限定はない。
【0037】
(チタン・鉄固溶層)
本発明は、チタン・鉄固溶層に関する発明を含む。本発明のチタン・鉄固溶層は、チタン材表面に形成されたチタン・鉄固溶層であって、該チタン・鉄固溶層の外表面から100μmの深さにおけるビッカース硬さが200HV以上である。
【0038】
本発明のチタン・鉄固溶層は、例えば、上述したチタン・鉄固溶層と同様の方法により得ることができる。使用するチタン材についても、上述したチタン材と同様のチタン材を使用すればよい。
【0039】
本発明のチタン・鉄固溶層はチタン材表面上に形成され、当該固溶層は従来の物に比べて大きな厚みを有する。
【0040】
その結果、チタン材の外表面に形成されるチタン・鉄固溶層の外表面から100μmの深さにおけるビッカース硬さが200HV以上であり、300HV以上であることが好ましく、400HV以上であることがより好ましく、450HV以上であることがさらに好ましい。当該ビッカース硬さの上限値としては特に制限はなく、例えば900HV以下とすることが好ましく、800HV以下とすることがより好ましく、700HV以下とすることがさらに好ましく、650HV以下とすることがよりさらに好ましく、550HV以下とすることが特に好ましい。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例0042】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
JIS2種チタン(純チタン)からなるチタン材表面の一部に、電気めっきすることにより、前記チタン材表面に厚さ30μmの鉄めっき層を形成した。その後、電気炉に入れてアルゴン雰囲気下、1000℃で2時間加熱してチタン・鉄固溶層を得た。
【0044】
(実施例2)
実施例1と同様のチタン材に対し、実施例1と同様にして鉄めっき層を形成した。鉄めっき層の上に0.30g/cm2の量で鉄粉をのせ、実施例1同様に電気炉に入れてアルゴン雰囲気下、1000℃で2時間加熱してチタン・鉄固溶層を得た。
【0045】
(比較例1)
上記実施例1において鉄めっき層を形成しなかった箇所(つまり、鉄めっき層を形成させなかった箇所)についてはチタン・鉄固溶層が形成されず、当該箇所の外表面を比較例1とした。
【0046】
(比較例2)
上記実施例2において鉄めっき層を形成しなかった箇所についてはチタン・鉄固溶層が形成されず、当該箇所の外表面を比較例2とした。
【0047】
ビッカース硬さ測定評価試験
ビッカース硬さ計(フューチユアテック製、Cat No. M-310ARS-F)を使用し、20×60×3mm試験片の長手(60mm)方向に直角、かつ垂直な切断面において、各実施例及び比較例の中央表面直下から内部に向かって硬さ測定を行った。
【0048】
断面画像評価試験
倒立金属顕微鏡(ニコン製、Cat No. MA-100)を使用し、各実施例及び比較例の表層断面付近の画像を撮影した。
【0049】
実施例1及び2、並びに比較例1及び2のビッカース硬さの結果を
図1に、実施例1及び2の断面画像評価結果を
図2に示す。
【0050】
(実施例3)
JIS2種チタン(純チタン)からなるチタン材表面の一部に、鉄めっきした後、該鉄めっき層の上に0.30g/cm2の量で鉄粉をのせ、実施例1同様に電気炉に入れてアルゴン雰囲気下、1000℃で2時間加熱してチタン・鉄固溶層を形成した。その後、得られたチタン・鉄固溶層にレーザ焼入れを実施した。レーザ照射条件は、出力600W、スポット角5mmとして、20×60mmの試験片面に対して照射(温度:約1100℃)を行い、試験片面中央を試験片面長手方向に10mm/sで移動させた。
【0051】
(実施例4)
JIS2種チタン(純チタン)からなるチタン材表面の一部に、電気めっきを行わず、0.30g/cm2の量で鉄粉をのせた後、実施例1同様に電気炉に入れてアルゴン雰囲気下、900℃で2時間加熱してチタン・鉄固溶層を形成した。
【0052】
(比較例3)
上記実施例3において鉄めっき層を形成しなかった箇所についてはチタン・鉄固溶層が形成されず、当該箇所の外表面を比較例1とした。
【0053】
上記実施例3、4及び比較例3についても、ビッカース硬さ測定評価試験及び断面画像評価試験を実施した。結果を
図3及び4に示す。
【0054】
EPMA線分析試験
フィールドエミッション電子プローブマイクロアナライザ(FE-EPMA)(日本電子製、JXA-8530F)を使用して硬さ測定した表面付近の、EPMA線分析試験を実施した。実施例2の結果を
図5に、実施例3の結果を
図6に示す。
【0055】
EPMA面分析試験
硬さ測定した表面付近の、EPMA面分析試験を実施した。実施例4の結果を
図7に、実施例3の結果を
図8に示す。
【0056】
(実施例5)
JIS60種チタン(Ti-6Al-4V)からなるチタン材表面の一部に電気めっきを行い、0.30g/cm2の量で鉄粉をのせた後、実施例3同様に電気炉に入れてアルゴン雰囲気下、1000℃で2時間加熱してチタン・鉄固溶層を形成した。その後、得られたチタン・鉄固溶層に、実施例3と同様の条件でレーザ焼入れを実施した。
【0057】
(実施例6)
JIS60種チタン(Ti-6Al-4V)からなるチタン材表面の一部に電気めっきを行い、0.30g/cm2の量で鉄粉をのせた後、実施例2同様に電気炉に入れてアルゴン雰囲気下、1000℃で2時間加熱してチタン・鉄固溶層を形成した。
【0058】
(比較例4)
上記した実施例5におけるJIS60種チタン(Ti-6Al-4V)からなるチタン材表面で固溶層を形成させなかった場所の外表面を比較例4とした。
【0059】
上記実施例5及び6、並びに比較例4についてビッカース硬さ測定評価試験、実施例5についてEPMA線分析を実施した。ビッカース硬さ測定評価試験結果を
図9に、実施例5のEPMA線分析結果及びEPMA面分析結果を
図10及び
図11に、比較例4のEPMA線分析結果及びEPMA面分析結果を
図12及び13に示す。