(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139838
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】車両のリスク回避アシスト方法及び車両のリスク回避アシスト装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G08G1/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050752
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】鐘 佩瑩
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF14
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
5H181LL14
(57)【要約】
【課題】リスク回避を犠牲にすることなく、運転の快適性を確保する。
【解決手段】リスク回避アシスト装置1は、車両の通過が予測される地点に生じるリスク、すなわち車両の走行中に車両進行方向の前方に生じるリスクを予測し、予測されたリスクを回避するためリスク回避アシストを実施する。そして、リスク回避アシストの設定は、運転者の過去の運転履歴に応じて変化させる。これによって、リスク回避アシスト装置1は、予測されたリスクを回避するにあたって、運転者の過去の運転履歴が反映されたリスク回避アシストが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の通過が予測される地点に生じるリスクを予測し、
上記リスクを回避する所定のリスク回避アシストを実施し、
上記リスク回避アシストの設定は、運転者の過去の運転履歴に応じて変化させることを特徴とする車両のリスク回避アシスト方法。
【請求項2】
上記リスクは、道路情報または人流情報の少なくとも一方を利用して予測することを特徴とする請求項1に記載の車両のリスク回避アシスト方法。
【請求項3】
上記リスクは、運転者による目視または車載カメラによって視認できないほど車両から離れた位置にあることを特徴とする請求項1に記載の車両のリスク回避アシスト方法。
【請求項4】
上記リスク回避アシストは、上記リスクを運転者へ周知させる周知アシストであることを特徴とする請求項1に記載の車両のリスク回避アシスト方法。
【請求項5】
上記リスク回避アシストは、上記リスクを回避する車両の運転アシストであることを特徴とする請求項1に記載の車両のリスク回避アシスト方法。
【請求項6】
上記リスク回避アシストは、上記リスクを運転者へ周知させる周知アシストを実施後に、上記リスクを回避する車両の運転アシストを実施することを特徴とする請求項1に記載の車両のリスク回避アシスト方法。
【請求項7】
上記周知アシストは、運転者が視認可能な視覚的な表示により上記リスクを周知させることを特徴とする請求項4または6に記載の車両のリスク回避アシスト方法。
【請求項8】
上記運転アシストは、運転者による加速要求に対する加速抑制、運転者の減速要求に対する減速促進、警告音の発令の少なくともいずれか一つを含むものであることを特徴とする請求項5または6に記載の車両のリスク回避アシスト方法。
【請求項9】
上記周知アシストは、車両が上記リスクの発生位置に到達する前に、運転者に当該リスクを周知させることを特徴とする請求項4または6に記載の車両のリスク回避アシスト方法。
【請求項10】
上記リスクに対して上記リスク回避アシストを実施しなくても安全な運転が可能と判定された場合には、当該リスクに対する上記リスク回避アシストを実施しないことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の車両のリスク回避アシスト方法。
【請求項11】
車両の通過が予測される地点に生じるリスクを予測するリスク予測部と、
上記リスクを回避する所定のリスク回避アシストを実施するリスク回避アシスト実施部と、を有し、
上記リスク回避アシスト実施部は、上記リスク回避アシストの設定を運転者の過去の運転履歴に応じて変化させることを特徴とする車両のリスク回避アシスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のリスク回避アシスト方法及び車両のリスク回避アシスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、自車両周辺に存在する他車両で撮影された車外の画像データを利用して車両の衝突可能性を算出し、衝突可能性に応じて、警告灯の点灯、警告音の発音、ブレーキアシスト装置の作動を実施する技術が開示されている。特許文献1のブレーキアシスト装置は、運転者に代わってブレーキペダルを踏み込む動作(ブレーキアシスト動作)を行えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1において、警告灯、警告音及びブレーキアシスト装置の設定は、運転者によらず一定である。
【0005】
すなわち、特許文献1においては、車両の衝突回避をアシストするにあたって、車両の運転者の運転履歴(運転嗜好)が考慮されていないため、運転者によっては衝突を回避するためであったとしても、設定された警告灯、警告音及びブレーキアシスト動作に対して違和感を覚える虞がある。
【0006】
つまり、車両の運転をアシストするにあたっては、安全性を確保しつつ運転者個別の運転の嗜好を満足させる点で更なる改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両のリスク回避アシストは、車両の通過が予測される地点に生じるリスクを予測し、上記リスクを回避するために実施するリスク回避アシストの設定が運転者の過去の運転履歴に応じて変化させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、リスク回避を犠牲にすることなく、運転者にとっての運転の快適性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る車両のリスク回避アシスト装置のシステム構成を模式的に示したブロック図。
【
図2】リスク回避の制御の流れを示すフローチャート。
【
図3】
図2のステップS2の内容を示すサブルーチン。
【
図4】車両がリスク位置を通過した際に実施される制御の内容を示すフローチャート。
【
図5】周知アシストの寄与度に関する演算の流れを示すフローチャート。
【
図6】運転アシストの寄与度に関する演算の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
本発明に係る車両のリスク回避アシスト装置1は、衝突等の危険がある位置から離れた所で衝突のリスクを事前に予測し、予測したリスクを運転者に周知させ、予測したリスクを回避できるように車両の運転をアシストし、運転者にとっての運転の快適性を確保しつつ、予測されたリスクを回避するものである。ここで予想されるリスクとは、運転者による目視または車載カメラによって視認できないほど車両から離れた位置のリスクであり、例えば、人の衝突のリスク、他車との衝突のリスク、道路(走行路)周辺や道路上の構造物等との衝突のリスク等である。
【0012】
図1は、本発明に係る車両のリスク回避アシスト装置1のシステム構成を模式的に示したブロック図である。
【0013】
リスク回避アシスト装置1は、車両に搭載されるものであって、走行情報取得部2と、車両周囲リスク取得部3と、リスク周知・運転アシスト設定取得部4と、ナビゲーションシステム5と、コントロールユニット6と、周知・運転アシスト部7と、ヒューマンインターフェイス(HMI)8と、スピーカー9と、アクセルアシスト装置10と、ブレーキアシスト装置11と、を有している。
【0014】
車両周囲リスク取得部3は、リスク予測部に相当する。リスク周知・運転アシスト設定取得部4、コントロールユニット6及び周知・運転アシスト部7は、全体としてリスク回避アシスト実施部に相当する。
【0015】
走行情報取得部2は、車両の運転状況(車両情報)を検出する各種センサ類によって構成されている。具体的には、走行情報取得部2は、車両の車速を検出する車速センサ12、車両のアクセル開度(アクセルペダルの踏み込み量)を検出するアクセル開度センサ13、車両のブレーキ開度(ブレーキペダルの踏み込み量)を検出するブレーキ開度センサ14、等により構成されている。
【0016】
走行情報取得部2で得られた車両情報は、コントロールユニット6に出力される。
【0017】
車両周囲リスク取得部3は、車両周囲のリスクに関する情報を所定のリスク位置・要因データベース15から取得する。すなわち、車両周囲リスク取得部3は、車両の通過が予測される地点に生じるリスクを予測している。換言すると、車両周囲リスク取得部3は、車両の走行中に車両進行方向の前方に生じるリスクを予測している。車両周囲リスク取得部3では、例えば、リスクの内容毎に付与されたリスク番号(リスクID)、リスクの位置(例えば、経度及び緯度)に関する情報(道路情報)、リスク位置の周辺施設(例えば、公園、学校等)に関する情報(道路情報)、リスク位置の道路特徴(例えば、横断歩道の有無、交差点、直線路、曲線路等)に関する情報(道路情報)、リスクが発生しやすい時間帯(道路情報)、リスク位置周辺の現在の人流量に関する情報(人流情報)、及びリスク位置における道路の制限車速(道路情報)、等をリスク位置・要因データベース15から取得する。リスク位置・要因データベース15は、例えば車外のクラウドサーバ上に設けられたものである。
【0018】
車両周囲リスク取得部3で取得された車両周囲のリスクに関する情報は、コントロールユニット6に出力される。
【0019】
リスク周知・運転アシスト設定取得部4は、リスクを回避するために実施されるリスク回避アシストの設定に関する運転者(ユーザー)毎の情報をリスク通過時設定データベース16から取得する。すなわち、リスク周知・運転アシスト設定取得部4は、運転者が過去に当該リスクを通過した際の運転履歴に応じて設定されたリスク回避アシストの設定をリスク通過時設定データベース16から取得する。換言すると、リスク周知・運転アシスト設定取得部4は、運転者の運転嗜好(運転傾向)に応じて設定されたリスク回避アシストの設定をリスク通過時設定データベース16から取得する。運転者の運転嗜好とは、換言すれば運転者の過去の運転履歴であり、運転者の運転傾向である。
【0020】
リスク通過時設定データベース16に保存されているリスク回避アシストの設定は、リスクを回避する上でリスク回避アシストの寄与度に応じて書き換え(更新)される。なお、運転者が経験していないリスクについては、例えば、運転者と運転傾向が似ている他の運転者の設定を初回値として使用(流用)したり、運転者が経験済みのリスクの中で類似したリスクのリスク回避アシストの設定を初回値として使用(流用)したりすればよい。
【0021】
リスク回避アシストは、リスクの内容を運転者へ周知させる(知らせる)周知アシストと、リスクを回避するために車両の運転を補助する車両の運転アシストと、からなっている。なお、リスク回避アシストは、周知アシストと運転アシストの少なくとも一方からなるものであってもよい。
【0022】
周知アシストは、車両がリスクの発生位置に到達する前に、運転者にリスクがあることを周知させる(知らせる)ものである。周知アシストは、具体的には、リスクに関する情報を車載の各種表示パネル(例えば、ヘッドアップディスプレイ、メータパネル、カーナビゲーションのモニター等)の少なくともいずれか一つに表示する。つまり、周知アシストは、運転者が視認可能な視覚的な表示により運転者にリスクを周知させるものである。
【0023】
周知アシストの設定は、例えば、リスクがあることを運転者に周知させる(知らせる)タイミングや、周知させる(知らせる)際の内容や方法等の設定である。すなわち、周知アシストの設定は、具体的には、周知アシストを開始するタイミングや、周知アシストを終了するタイミング、周知アシストに使用する機器の選択等である。
【0024】
運転アシストは、車両がリスクを通過する際に、リスクを回避できるように車両の運転をアシストするものである。運転アシストは、具体的には、運転者による加速要求に対する加速抑制や、運転者の減速要求に対する減速促進、警告音の発令等である。
【0025】
運転アシストは、例えば、加速要求に対する加速抑制、減速要求に対する減速促進、警告音の発令、の少なくともいずれか一つを含むものであってもよい。
【0026】
運転アシストの設定は、例えば、運転アシストを開始するタイミングや、運転アシストの内容等の設定である。すなわち、運転アシストの設定は、具体的には、加速抑制を開始するタイミング、加速抑制を実施する際の抑制の強さ(加速度の大きさ)、減速促進を開始するタイミング、及び減速促進を実施する際の促進の強さ(減速度の大きさ)、警告音の発令のタイミング等である。
【0027】
リスク周知・運転アシスト設定取得部4では、運転者毎に付与されたユーザー番号(ユーザーID)、リスクの内容毎に付与されたリスク番号(リスクID)、運転者が当該リスクを通過した回数、周知アシストを開始するタイミング、周知アシストを終了するタイミング、リスク回避アシストの実施の可否、運転アシストの開始のタイミング、運転アシストの終了のタイミング、運転アシストにおける加速抑制の設定、運転アシストにおける減速促進の設定、等をリスク通過時設定データベース16から取得する。リスク通過時設定データベース16は、例えば車外のクラウドサーバ上に設けられたものである。リスク回避アシストの実施の可否は、例えば、リスクに対して運転者が慣れてリスク回避アシストを実施しなくても安全な運転が可能と判定された場合に実施不要と判断される。リスク回避アシストなしで安全な運転が可能という判定は、例えば、寄与度が高い周知アシスト及び運転アシストを所定回数以上行ったリスクに対しては、当該リスクに対して運転者が慣れてサポートなしでも安全運転が判定する。
【0028】
リスク周知・運転アシスト設定取得部4で取得された車両周囲のリスクに関する情報は、コントロールユニット6に出力される。
【0029】
ナビゲーションシステム5は、GPS(Global Positioning System)を利用して車両の緯度経度情報を取得し、ディスプレイに表示した地図上に自車両の位置や、目的地までの走行経路を表示可能なものである。ナビゲーションシステム5で取得した車両の位置情報は、コントロールユニット6に出力される。
【0030】
コントロールユニット6は、例えば、CPU、ROM、RAM及び入出力のインターフェースを備えた周知のデジタルコンピュータである。
【0031】
コントロールユニット6は、走行情報取得部2、車両周囲リスク取得部3、リスク周知・運転アシスト設定取得部4、及びナビゲーションシステム5からの情報に基づいて、周知・運転アシスト部7にリスク回避アシストに関する制御指令を出力する。
【0032】
周知・運転アシスト部7は、主制御部17と、走行情報記憶部18と、アシスト設定更新部19と、を有している。
【0033】
主制御部17は、コントロールユニット6からの制御指令に基づいて周知アシスト及び運転アシストを実現する機器を制御する。すなわち、主制御部17は、周知アシストとして車載の各種表示パネル等のHMI(Human Machine Interface)8にリスクに関する情報を表示させ、運転アシストとして車載のスピーカー9からリスクが近いことを注意喚起する警告音を発令し、運転アシストとして所定のアクセルアシスト装置10の作動を制御し、運転アシストとして所定のブレーキアシスト装置11の作動を制御する。
【0034】
アクセルアシスト装置10は、運転者による車両のアクセルペダル(図示せず)の踏み込み量に対して、スロットル開度(スロットル弁の開度)の感度を増減させることが可能なものである。詳述すると、アクセルアシスト装置10は、例えば、アクセルペダルの踏み込み量を実際の踏み込み量よりも所定量少ないあるいは所定割合小さいものとしてスロットル開度を制御することが可能なものである。つまり、アクセルアシスト装置10は、運転アシストの実施時に、運転者のアクセルペダルの踏み込み量に対して車両の加速が抑制されるようにスロットル開度を閉じ側に制御可能なものである。
【0035】
ブレーキアシスト装置11は、運転者による車両のブレーキペダル(図示せず)の踏み込み量(踏力)に対して、ブレーキの感度を増減させることが可能なものである。詳述すると、ブレーキアシスト装置11は、例えば、ブレーキペダルの踏み込み量を実際の踏み込み量よりも所定量多いあるいは所定割合大きいものとしてブレーキを制御することが可能なものである。つまり、ブレーキアシスト装置11は、運転アシストの実施時に、運転者のブレーキペダルの踏み込み量に対して車両の減速が促進されるようにブレーキの利き方を制御可能なものである。
【0036】
走行情報記憶部18は、例えば、周知アシストの開始から周知アシストの終了または運転アシストの終了までの車両の走行情報を記憶する。走行情報記憶部18で記憶される走行情報は、例えば、車両の車速、アクセル操作、ブレーキ操作等の情報であり、運転アシストと関連する情報である。
【0037】
アシスト設定更新部19は、周知アシストの設定及び運転アシストの設定を更新する。すわわち、アシスト設定更新部19は、予測されたリスクに対する運転者の実際の運転履歴に応じて、周知アシストの設定及び運転アシストの設定を変化させる。詳述すると、アシスト設定更新部19は、リスクを回避する上で実施された周知アシストの寄与度が高い場合、取得された周知アシスト設定を維持する。
【0038】
アシスト設定更新部19は、リスクを回避する上で実施された周知アシストの寄与度が低い場合、実際にリスクを通過した際に走行情報に基づいて周知アシスト設定を変更する。例えば、周知アシストを開始してから車両が減速するまでの時間が予め設定された所定時間(所定閾値)よりも短い場合は、周知アシストを利用して運転者がリスクを回避するために車両を減速したものと考えられるので、取得された周知アシストの寄与度が高いと判定する。また、例えば、周知アシストを開始してから車両が減速するまでの時間が予め設定された所定時間(所定閾値)以上となる場合は、周知アシストを運転者が利用していないと考えられるので、取得された周知アシストの寄与度が低いと判定する。なお、例えば、周知アシストを開始しても車両の減速がみられなかった場合は、運転アシストの開始タイミングが早くなるように、運転アシストの設定を変更(更新)してもよい。
【0039】
アシスト設定更新部19は、リスクを回避する上で実施された運転アシストの寄与度が低い場合、実際にリスクを通過した際に走行情報に基づいて運転アシスト設定を変更する。例えば、運転アシスト中のアクセルペダルとブレーキペダルの踏み変え回数が予め設定された所定回数(所定閾値)よりも少ない場合は、運転アシストを利用して運転者がリスクを回避するために車両を減速したものと考えられるので、取得された運転アシストの寄与度が高いと判定する。また、例えば、運転アシストを実施してから車両が減速している際に、アクセルペダルとブレーキペダルの踏み変え回数が予め設定された所定回数(所定閾値)以上となる場合は、運転アシストを運転者が利用していないと考えられるので、取得された運転アシストの寄与度が低いと判定する。なお、例えば、運転アシストを開始しても車両の減速がみられなかった場合は、運転アシストの寄与度が低いと考えられるので、開始タイミングを早くするとともに、加速が抑制されるように運転アシストの設定を変更(更新)してもよい。
【0040】
周知・運転アシスト部7のアシスト設定更新部19において周知アシストの設定もしくは運転アシストの設定が変更された場合は、コントロールユニット6及びリスク周知・運転アシスト設定取得部4を介してリスク通過時設定データベース16の設定を更新(変更)する。
【0041】
図2は、上述した実施例のリスク回避アシスト装置1におけるリスク回避の制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【0042】
ステップS1では、ユーザー番号(ユーザーID)、自車位置をクラウドに送信する。
【0043】
ステップS2では、クラウド上のリスク位置・要因データベース15から車両周囲のリスクに関する情報を取得するとともに、クラウド上のリスク通過時設定データベース16からリスク回避アシストの設定に関する情報を取得する。
【0044】
図3を用いて車両周囲のリスクに関する情報及びリスク回避アシストの設定に関する情報を取得する手順を詳述する。
図3は、
図2のステップS2の内容を示すサブルーチンである。
【0045】
ステップS21では、ユーザー番号(ユーザーID)、自車位置をクラウドから受信する。
【0046】
ステップS22では、自車両の進路上で一番近いリスクの情報を読み込む。
【0047】
ステップS23では、リスク番号(リスクID)とユーザー番号(ユーザーID)から対応する周知アシスト設定及び運転アシスト設定をデータベースから検索する。
【0048】
ステップS24では、ユーザー番号(ユーザーID)とリスク番号(リスクID)に対応する周知アシスト設定及び運転アシスト設定の有無を確認する。ステップS24において周知アシスト設定及び運転アシスト設定が確認できない場合は、ステップS25へ進む。ステップS24において周知アシスト設定及び運転アシスト設定がある場合は、ステップS27へ進む。
【0049】
ステップS25では、運転傾向が似ている他の運転者がステップS22で読み込まれたリスクを通過する際に使用する設定を読み込む。例えば、ステップS25では、運転者と他の運転者が今回とは別のリスクを通過する際に使用するリスク回避アシストの設定を比較し、運転者のリスク回避アシストの設定に最も近い他の運転者が今回のリスクを通過する際に使用するリスク回避アシストの設定を使用する。
【0050】
ステップS26では、車両周囲のリスクに関する情報及びリスク回避アシストの設定に関する情報を送信する。
【0051】
ステップS27では、リスクの通過回数が所定の閾値未満であるか否かを判定する。ステップS27においてリスクの通過回数が所定の閾値未満である場合は、ステップS28へ進む。ステップS27においてリスクの通過回数が所定の閾値以上である場合は、ステップS29へ進む。
【0052】
ステップS28では、検索された記録を読み込む。
【0053】
ステップS29では、リスク回避アシストを実施するか否かを判定する。ステップS29においてリスク回避アシストを実施する場合は、ステップS28へ進む。ステップS29においてリスク回避アシストを実施しない場合は、ステップS30へ進む。
【0054】
ステップS30では、リスク回避アシスト不要という情報を車両に送信する。なお、リスク回避アシスト不要という情報が車両に送信された場合には、リスク回避アシストに関する今回のルーチンは見送られる(実施されない)。
【0055】
図2に戻って、ステップS3では、リスクからの距離が予め設定された第1所定距離以内になったか否かを判定する。ステップS3でリスクからの距離が第1所定距離以内であると判定された場合は、ステップS4へ進む。第1所定距離は、例えば、リスクのよらず同一の値が設定される。なお、第1所定距離は、所定車速が速くなるほど大きい値が設定されるように補正してもよい。
【0056】
ステップS4では、周知アシストを開始する。
【0057】
ステップS5では、車両の走行情報の記録を開始する。記録する走行情報は、例えば、車速、アクセルペダルの操作量や操作回数、ブレーキペダルの操作量や操作回数等である。
【0058】
ステップS6では、リスクからの距離が予め設定された第2所定距離以内になったか否かを判定する。第2所定距離は、上述した第1所定距離より小さい値である。第2所定距離は、例えば、リスクのよらず同一の値が設定される。ステップS6でリスクからの距離が第2所定距離以内であると判定された場合は、ステップS7へ進む。なお、第2所定距離は、所定車速が速くなるほど大きい値が設定されるように補正してもよい。
【0059】
ステップS7では、運転アシストを開始する。
【0060】
ステップS8では、リスク位置を通過したか否かを判定する。リスク位置を通過した際には、
図4に示すサブルーチンを実施する。
図4は、車両がリスク位置を通過した際に実施される制御の内容を示すフローチャートである。
【0061】
ステップS81では、ユーザー番号(ユーザーID)、自車位置をクラウドから受信する。
【0062】
ステップS82では、ユーザー番号(ユーザーID)とリスク番号(リスクID)に対応する周知アシスト設定及び運転アシスト設定の有無を確認する。ステップS82において周知アシスト設定及び運転アシスト設定が確認できない場合は、ステップS83へ進む。
【0063】
ステップS82において周知アシスト設定及び運転アシスト設定がある場合は、ステップS85へ進む。
【0064】
ステップS83では、通過回数を「1」としステップS84へ進む。
【0065】
ステップS84では、ユーザー番号(ユーザーID)、リスク番号(リスクID)、リスク回避アシストの設定、及びリスクの通過回数をデータベースに追加する。
【0066】
ステップS85では、前回までの通過回数に今回の通過を積算してステップS86へ進む。ステップS86では、データベースのリスク回避アシストの設定、及びリスクの通過回数を更新する。
【0067】
図2に戻って、ステップS9では、今回の走行情報から今回実施したリスク回避アシストの寄与度を演算する。
【0068】
図5を用いて周知アシストの寄与度の関する演算の流れを説明する。
図5は、周知アシストの寄与度に関する演算の流れを示すフローチャートである。
【0069】
ステップS101では、今回記録した走行情報を読み込む。
【0070】
ステップS102では、周知アシストの開始後に減速したか否かを判定する。ステップS102で周知アシストの開始後に減速していると判定された場合は、ステップS103へ進む。ステップS102で周知アシストの開始後に減速していないと判定された場合はステップS106へ進む。
【0071】
ステップS103では、周知アシストの開始から減速するまでの時間が予め設定された所定時間(所定閾値)よりも短いか否かを判定する。ステップS103で周知アシストの開始から減速するまでの時間が所定時間(所定閾値)よりも短いと判定された場合は、ステップS104へ進む。ステップS103で周知アシストの開始から減速するまでの時間が所定時間(所定閾値)以上と判定された場合は、ステップS107へ進む。
【0072】
ステップS104では、周知アシストの寄与度が高いと判定し、ステップS105へ進む。ステップS105では、周知アシストの設定を変化させずに維持したものとする。つまり、ステップS102→ステップS103→ステップS104→S105と進んだ場合は、周知アシストの寄与度が高いと判定して今回使用した周知アシストの設定を次回も使用する。
【0073】
ステップS106では、運転アシストの開始タイミングを早める。つまり、ステップS102→ステップS106へ進んだ場合は、周知アシストの寄与度については判定せず、運転アシストの開始タイミングが早まるように運転アシストの設定を変更する。すなわち、ステップS102→ステップS106へ進んだ場合は、運転アシストの設定が運転者の運転履歴(運転嗜好)に応じて変化することになる。
【0074】
ステップS107では、周知アシストの寄与度が低いと判定し、ステップS108へ進む。ステップS108では、周知アシストの開始タイミングを早める。つまり、ステップS102→ステップS103→ステップS107→S108と進んだ場合は、周知アシストの寄与度が低いと判定して周知アシストの開始タイミングが今回よりも早まるように周知アシストの設定を変更する。すなわち、ステップS102→ステップS103→ステップS107→S108と進んだ場合は、周知アシストの設定が運転者の運転履歴(運転嗜好)に応じて変化することになる。
【0075】
図6を用いて運転アシストの寄与度に関する演算の流れを説明する。
図6は、運転アシストの寄与度に関する演算の流れを示すフローチャートである。
【0076】
ステップS111では、今回記録した走行情報を読み込む。
【0077】
ステップS112では、運転アシストの開始後に減速したか否かを判定する。ステップS102で運転アシストの開始後に減速していると判定された場合は、ステップS113へ進む。ステップS102で運転アシストの開始後に減速していないと判定された場合はステップS116へ進む。
【0078】
ステップS113では、運転アシスト中のアクセルペダルとブレーキペダルの踏み変え回数が予め設定された所定回数(所定の閾値)よりも少ないか否かを判定する。ステップS113で運転アシスト中のアクセルペダルとブレーキペダルの踏み変え回数が予め設定された所定回数(所定の閾値)よりも少ないと判定された場合は、ステップS114へ進む。ステップS113で運転アシスト中のアクセルペダルとブレーキペダルの踏み変え回数が予め設定された所定回数(所定の閾値)以上と判定された場合は、ステップS118へ進む。
【0079】
ステップS114では、運転アシストの寄与度が高いと判定し、ステップS115へ進む。ステップS115では、運転アシストの設定を変化させずに維持したものとする。つまり、ステップS112→ステップS113→ステップS114→S115と進んだ場合は、運転アシストの寄与度が高いと判定して今回使用した運転アシストの設定を次回も使用する。
【0080】
ステップS116では、運転アシストの寄与度が低いと判定し、ステップS117へ進む。
【0081】
ステップS117では、運転アシストの開始タイミングを早めるとともに、加速抑制を実施する際の抑制の強さを強めるように、運転アシストの設定を変更する。つまり、ステップS112→ステップS116→ステップS117と進んだ場合は、運転アシストの寄与度が低いと判定して運転アシストの開始タイミング(加速抑制を開始するタイミング)が今回よりも早まり、かつ加速抑制を実施する際の抑制の強さが今回よりも強くなるように運転アシストの設定を変更する。すなわち、ステップS112→ステップS116→ステップS117と進んだ場合は、運転アシストの設定が運転者の運転履歴(運転嗜好)に応じて変化することになる。
【0082】
ステップS118では、運転アシストの寄与度が低いと判定し、ステップS119へ進む。ステップS119では、運転アシストの開始タイミングを早めるとともに、減速促進を実施する際の促進の強さを弱めるように、運転アシストの設定を変更する。つまり、ステップS112→ステップS113→ステップS118→ステップS119と進んだ場合は、運転アシストの寄与度が低いと判定して運転アシストの開始タイミング(減速促進を開始するタイミング)が今回よりも早まり、かつ減速促進を実施する際の促進の強さが今回よりも弱くなるように運転アシストの設定を変更する。すなわち、ステップS112→ステップS113→ステップS118→ステップS119と進んだ場合は、運転アシストの設定が運転者の運転履歴(運転嗜好)に応じて変化することになる。
【0083】
図2に戻って、ステップS10では、リスク回避アシストの寄与度が低いから否かを判定する。ステップS10でリスク回避アシストの寄与度が低いと判定された場合は、ステップS11へ進む。ステップS10でリスク回避アシストの寄与度が高いと判定された場合は、ステップS13へ進む。
【0084】
ステップS11では、今回記録された走行情報に基づいてリスク回避アシストの設定を決定する。
【0085】
ステップS12では、ユーザー番号(ユーザーID)、リスク番号(リスクID)、及び対応するリスク回避アシストの設定をクラウドに送信する。つまり、ステップS10→ステップS11→ステップS12と進んだ場合は、寄与度の低かった設定を今回の走行情報に基づいて変更し、データべースに保存する。そのため、ステップS10→ステップS11→ステップS12と進んだ場合は、運転者の運転履歴(運転嗜好)に応じてリスク回避アシストの設定が変更されることになる。
【0086】
ステップS13では、今回使用したリスク回避アシストの設定を記憶する。つまり、ステップS10→ステップS13→ステップS12と進んだ場合は、寄与度の高かった設定を記憶し、データべースに保存されている設定を変更せずに保持する。
【0087】
上述した実施例のリスク回避アシスト装置1は、車両の通過が予測される地点に生じるリスク、すなわち車両の走行中に車両進行方向の前方に生じるリスクを予測し、予測されたリスクを回避するためリスク回避アシストを実施する。そして、リスク回避アシストの設定は、運転者の過去の(それまでの)運転履歴(運転嗜好、過去に通過した際の運転履歴である運転傾向)に応じて変化させる。
【0088】
このような本発明のリスク回避アシスト装置1は、予測されたリスクを回避するにあたって、運転者の過去の運転履歴が反映されたリスク回避アシストが可能となる。つまり、リスク回避アシスト装置1は、運転者の嗜好性に応じてリスク回避アシストの設定を変化させることができる。
【0089】
そのため、運転者は、車の操作性に違和感を覚えることなく、予測されたリスクを容易に回避することができる。つまり、運転者は、リスク回避を犠牲にすることなく、運転者にとっての運転の快適性を確保することができる。
【0090】
以上、本発明の具体的な実施例を説明してきたが、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0091】
例えば、互いに異なる位置のリスクであっても、リスクの内容が類似あるいは同じような場合には、これらのリスクを同じタイプのリスクとしてひとまとめにしてデータベースに保存するようにしてもよい。つまり、例えば、互いに異なる位置のリスクであっても、リスクの内容が類似あるいは同じような場合には、同一のリスク番号(リスクID)にしてデータベースに保存し、リスク回避アシストの設定を同一に設定してもよい。この場合には、リスクの位置毎にスク番号(リスクID)を付与してデータベースに保存する場合に比べて、データベースの容量を少なくすることができる。
【0092】
上述した実施例は、車両のリスク回避アシスト方法及び車両のリスク回避アシスト装置に関するものである。
【符号の説明】
【0093】
1…リスク回避アシスト装置
2…走行情報取得部
3…車両周囲リスク取得部
4…リスク周知・運転アシスト設定取得部
5…ナビゲーションシステム
6…コントロールユニット
7…周知・運転アシスト部
8…ヒューマンインターフェイス
9…スピーカー
10…アクセルアシスト装置
11…ブレーキアシスト装置
12…車速センサ
13…アクセル開度センサ
14…ブレーキ開度センサ
15…リスク位置・要因データベース
16…リスク通過時設定データベース
17…主制御部
18…走行情報記憶部
19…アシスト設定更新部