(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139847
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】マルチフェーズLLC共振コンバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H02M3/28 Q
H02M3/28 V
H02M3/28 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050768
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】高木 一斗
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AA16
5H730AS01
5H730BB26
5H730BB66
5H730BB84
5H730BB85
5H730BB88
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE03
5H730EE07
5H730EE73
5H730EE75
5H730EE76
5H730ZZ16
(57)【要約】
【課題】大電力化あるいは高集積化を容易にできるマルチフェーズLLC共振コンバータを提供する。
【解決手段】直流電源Vinに並列に接続されたN台(Nは2以上の整数)の共振コンバータ1eを、360°/Nの位相差で動作させるN相のマルチフェーズLLC共振コンバータ100である。共振コンバータ1eは、m個の下変換回路10e
1~mの一次巻線T1と並列に接続された調整インダクタLpd(下調整インダクタ)を備える。共振コンバータ1eは、n個の上変換回路10e
m+1~m+nの一次巻線T1と並列に接続された調整インダクタLpu(上調整インダクタ)を備える。第2共振キャパシタCr2を介して中性点A
1~m+nでスター結線された下変換回路10e
1~m及び上変換回路10e
m+1~m+nの出力(高電位出力端子P
1~P
m+n、低電位出力端子N
1~N
m+n)は、それぞれ接続されている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源に並列に接続されたN台(Nは2以上の整数)の共振コンバータを、360°/Nの位相差で動作させるN相のマルチフェーズLLC共振コンバータであって、
N台の前記共振コンバータのそれぞれは、
前記直流電源の正極と負極との間に直列に接続された上スイッチ素子及び下スイッチ素子と、
前記上スイッチ素子と前記下スイッチ素子との接続点に一端が接続された共振インダクタと、
一次巻線及び二次巻線を備えたトランス、前記一次巻線に一端が接続された第1共振キャパシタ及び第2共振キャパシタ、前記二次巻線の両端に接続された整流器、を含み、前記一次巻線及び前記第1共振キャパシタが前記共振インダクタの他端と前記直流電源の前記負極との間に接続され、前記共振インダクタと共に前記上スイッチ素子及び前記下スイッチ素子のオンオフ動作によって動作するLLC共振コンバータをそれぞれ構成するm個(mは0以上の整数)の下変換回路と、
前記トランス、前記第1共振キャパシタ及び前記第2共振キャパシタ、前記整流器、を含み、前記一次巻線及び前記第1共振キャパシタが前記共振インダクタの他端と前記直流電源の前記正極との間に接続され、前記共振インダクタと共に前記上スイッチ素子及び前記下スイッチ素子のオンオフ動作によって動作するLLC共振コンバータを構成するn個(nは0以上の整数で、mとnとの少なくともいずれかは2以上)の上変換回路と、
m個の前記下変換回路の前記一次巻線と並列に接続された下調整インダクタと、
n個の前記上変換回路の前記一次巻線と並列に接続された上調整インダクタと、を備え、
前記下変換回路における前記第2共振キャパシタの他端は、各相を接続する共通の中性点で、他相の前記下変換回路における前記第2共振キャパシタの他端と接続されていると共に、前記上変換回路における前記第2共振キャパシタの他端は、各相を接続する共通の前記中性点で、他相の前記上変換回路における前記第2共振キャパシタの他端と接続され、
前記第2共振キャパシタを介して前記中性点でスター結線された前記下変換回路及び前記上変換回路の出力は、それぞれ接続されているマルチフェーズLLC共振コンバータ。
【請求項2】
各相の前記共振コンバータにおける前記共振インダクタは、ギャップを有するN本の中脚と2本と外脚とを備えた(N+2)脚のコアを用い、N本の中脚にそれぞれ巻き回されている請求項1記載のマルチフェーズLLC共振コンバータ。
【請求項3】
前記下調整インダクタ及び前記上調整インダクタは、結合インダクタである請求項1記載のマルチフェーズLLC共振コンバータ。
【請求項4】
前記下変換回路及び前記上変換回路の前記トランスの励磁インダクタンスは、前記下調整インダクタ及び前記上調整インダクタのインダクタンスよりも大きく設定されている請求項1から3のいずれか1項に記載のマルチフェーズLLC共振コンバータ。
【請求項5】
前記下変換回路及び前記上変換回路の前記トランスの前記励磁インダクタンスは、前記下調整インダクタ及び前記上調整インダクタのインダクタンスの10倍以上に設定されている請求項4記載のマルチフェーズLLC共振コンバータ。
【請求項6】
m個の前記下変換回路の出力とn個の前記上変換回路の出力とが並列に接続されている請求項1から3のいずれか1項に記載のマルチフェーズLLC共振コンバータ。
【請求項7】
m個の前記下変換回路の出力とn個の前記上変換回路の出力とが直列に接続されている請求項1から3のいずれか1項に記載のマルチフェーズLLC共振コンバータ。
【請求項8】
m個の前記下変換回路の出力とn個の前記上変換回路の出力とが複数組に振り分けられたマルチ出力コンバータである請求項2又は3記載のマルチフェーズLLC共振コンバータ。
【請求項9】
前記共振インダクタの他端と前記上変換回路及び前記下変換回路の前記一次巻線の一端との接続点に接続された中間外付け端子と、前記下変換回路の前記一次巻線の他端と前記第1共振キャパシタの一端との接続点に接続された下外付け端子と、前記上変換回路の前記一次巻線の他端と前記第1共振キャパシタの一端との接続点に接続された上外付け端子と、を備え、前記下調整インダクタは、前記中間外付け端子と前記下外付け端子との間に、前記上調整インダクタは、前記中間外付け端子と前記上外付け端子との間に、それぞれ外付けインダクタとして接続されている請求項1から3のいずれか1項に記載のマルチフェーズLLC共振コンバータ。
【請求項10】
前記下変換回路の前記一次巻線と前記第1共振キャパシタとの接続点と、前記上変換回路の前記一次巻線と前記第1共振キャパシタとの接続点との間に接続され、前記共振インダクタに流れる電流を検出する電流検出回路を備える請求項1から3のいずれか1項に記載のマルチフェーズLLC共振コンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列接続された複数のLLC共振コンバータを用いて入力電圧を出力電圧に変換するマルチフェーズLLC共振コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、出力負荷の増大に伴って大電流化や低リップル化を実現するために、動作フェーズ数(相数)を複数にし、位相をずらして各動作フェーズを駆動するマルチフェーズ型のスイッチング電源装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マルチフェーズLLC共振コンバータをさらに大電力化するために、あるいは、電力をそのままに回路を高集積化するために、変換回路の個数を増やし並列に拡張することが考えられる。しかし、トランスの励磁インダクタンスにばらつきがあると,複数の変換回路間で電流がバランスしないという問題が生じる。
【0005】
本発明の一態様は、大電力化あるいは高集積化を容易にできるマルチフェーズLLC共振コンバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るマルチフェーズLLC共振コンバータは、直流電源に並列に接続されたN台(Nは2以上の整数)の共振コンバータを、360°/Nの位相差で動作させるN相のマルチフェーズLLC共振コンバータである。N台の前記共振コンバータのそれぞれは、前記直流電源の正極と負極との間に直列に接続された上スイッチ素子及び下スイッチ素子を備える。前記共振コンバータは、前記上スイッチ素子と前記下スイッチ素子との接続点に一端が接続された共振インダクタを備える。前記共振コンバータは、一次巻線及び二次巻線を備えたトランス、前記一次巻線に一端が接続された第1共振キャパシタ及び第2共振キャパシタ、前記二次巻線の両端に接続された整流器、を含むm個(mは0以上の整数)の下変換回路を備える。下変換回路は、前記一次巻線及び前記第1共振キャパシタが前記共振インダクタの他端と前記直流電源の前記負極との間に接続され、前記共振インダクタと共に前記上スイッチ素子及び前記下スイッチ素子のオンオフ動作によって動作するLLC共振コンバータを構成する。前記共振コンバータは、前記トランス、前記第1共振キャパシタ及び前記第2共振キャパシタ、前記整流器、を含むn個(nは0以上の整数で、mとnとの少なくともいずれかは2以上)の上変換回路を備える。上変換回路は、前記一次巻線及び前記第1共振キャパシタが前記共振インダクタの他端と前記直流電源の前記正極との間に接続され、前記共振インダクタと共に前記上スイッチ素子及び前記下スイッチ素子のオンオフ動作によって動作するLLC共振コンバータを構成する。前記共振コンバータは、m個の前記下変換回路の前記一次巻線と並列に接続された下調整インダクタを備える。前記共振コンバータは、n個の前記上変換回路の前記一次巻線と並列に接続された上調整インダクタを備える。前記下変換回路における前記第2共振キャパシタの他端は、各相を接続する共通の中性点で、他相の前記下変換回路における前記第2共振キャパシタの他端と接続されている。前記上変換回路における前記第2共振キャパシタの他端は、各相を接続する共通の前記中性点で、他相の前記上変換回路における前記第2共振キャパシタの他端と接続されている。前記第2共振キャパシタを介して前記中性点でスター結線された前記下変換回路及び前記上変換回路の出力は、それぞれ接続されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、変換回路を並列に拡張しても複数の変換回路間で電流がバランスするため、大電力化あるいは高集積化を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】共振コンバータの実施の形態の回路構成を示す図である。
【
図2】
図1に示すトランスの構成例を示す図である。
【
図3】
図1に示す調整インダクタの構成例を示す図である。
【
図4】変換回路の出力が並列に接続された構成例を示す図である。
【
図5】変換回路の出力が直列に接続された構成例を示す図である。
【
図6】マルチ出力コンバータの構成例を示す図である。
【
図7】マルチ出力コンバータの構成例を示す図である。
【
図8】共振インダクタに流れる電流を検出する電流検出回路の構成例を示す図である。
【
図9】マルチフェーズLLC共振コンバータの実施の形態の回路構成を示す図である。
【
図10】
図9に示す共振インダクタの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下の実施の形態において、同様の機能を示す構成には、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0010】
本実施の形態の共振コンバータ1は、
図1を参照すると、直流電源Vinの正極と、直流電源Vinの負極との間に、スイッチングレグ(switching leg)として上スイッチ素子QH及び下スイッチ素子QLが直列に接続されている。上スイッチ素子QH及び下スイッチ素子QLは、例えば、電界効果トランジスタ(FET)で構成される。上スイッチ素子QH及び下スイッチ素子QLは、ソース-ドレイン間にボディダイオードを有する。
【0011】
直流電源Vinの正極に接続された上スイッチ素子QHは、スイッチングレグの上アーム(upper arm)である。直流電源Vinの負極側に接続された下スイッチ素子QLは、スイッチングレグの下アーム(lower arm)である。
【0012】
共振コンバータ1は、上スイッチ素子QHと下スイッチ素子QLとの接続点に、一端が接続された共振インダクタLrを備える。
【0013】
共振コンバータ1は、トランスT、共振キャパシタCr、及び、整流器REを含む、m+n個の変換回路101~10m+nを備える。m、nは、0以上の整数であり、mとnとのいずれかは、2以上である。
【0014】
m個の変換回路101~10mにおいて、それぞれのトランスTの一次巻線T1の一端は、共振インダクタLrの他端に接続され、トランスTの一次巻線T1の他端は、共振キャパシタCrを介して直流電源Vinの負極に接続されている。すなわち、変換回路101~10mのそれぞれのトランスTの一次巻線T1及び共振キャパシタCrは、共通の共振インダクタLrを用いて、スイッチングレグのオンオフ動作によって動作するLLC共振コンバータをそれぞれ構成する。以下、下アームに設けられたm個の変換回路101~10mは、下変換回路101~mとも称す。
【0015】
n個の変換回路10m+1~10m+nにおいて、それぞれのトランスTの一次巻線T1の一端は、共振インダクタLrの他端に接続され、トランスTの一次巻線T1の他端は、共振キャパシタCrを介して直流電源Vinの正極に接続されている。すなわち、変換回路10m+1~10m+nのそれぞれのトランスTの一次巻線T1及び共振キャパシタCrは、共通の共振インダクタLrを用いて、スイッチングレグのオンオフ動作によって動作するLLC共振コンバータをそれぞれ構成する。以下、上アームに設けられたn個の変換回路10m+1~10m+nは、上変換回路10m+1~m+nとも称す。
【0016】
m+n個の変換回路101~10m+nにおいて、整流器REは、トランスTの二次巻線T2から出力される交流電流を整流して高電位出力端子Pと低電位出力端子Nから出力する。整流器REは、センタータップ整流、ブリッジ整流、倍電圧整流、コックウォルトン整流などの回路方式を採用できる。また、整流器REは、ダイオードの代わりにFETを用いて同期整流とすることもできる。m+n個の変換回路101~10m+nは、高電位出力端子Pと低電位出力端子Nとの間に接続された出力キャパシタCoをそれぞれ備え、整流器REと出力キャパシタCoとで整流平滑回路を構成する。
【0017】
m+n個の変換回路101~10m+nを設けることで、共振コンバータ1は、大電力化、あるいは、電力をそのままに回路を高集積化できる。しかし、m+n個の変換回路101~10m+nにおいて、トランスTの励磁インダクタンスにばらつきがあると、m+n個の変換回路101~10m+n間で電流がバランスしない。例えば、変換回路101のトランスTの励磁インダクタンスが他の変換回路10のものよりも小さい場合、スイッチング直後に変換回路101のみに負荷電流IPLが流れている期間が生じる。これは、変換回路101のトランスTを流れる励磁電流Imが他の変換回路10よりも大きく、変換回路101の共振キャパシタCrがより充電されることに起因する。励磁電流Imは、トランスTの一次巻線T1を流れる電流の内、負荷電流IPLを除いた、トランスTの二次巻線T2に電力を送らない電流である。
【0018】
そこで、共振コンバータ1は、調整インダクタLpd及び調整インダクタLpuを備え、従来のLLC共振コンバータの励磁電流に相当する循環電流(circulating current)ICCを調整する。共振コンバータ1は、m+n個の変換回路101~10m+nのそれぞれのトランスTの励磁インダクタンスが調整インダクタのインダクタンスよりも十分に大きく(例えば、10倍以上に)設定されており、励磁電流Imが循環電流ICCよりも十分小さい。
【0019】
トランスTとしては、コアにギャップを設けて励磁インダクタンスを下げる必要がないため、
図2に示すようなギャップレスのトランスを用いることができる。
図2(a)は、コアの斜視図である。
図2(b)は、(a)に示す斜線部の断面図である。トランスTをギャップレスとした場合、ギャップの調整が不要となるため、生産性が向上する。
図2に示す例は、ギャップレスのEERコア(E型で中脚が円筒形のコアを二つ重ね、中脚間のギャップなし)に一次巻線T1と二次巻線T2とをサンドイッチ巻きしたものである。トランスTのコアには、制限はなく、EIコアやPQコアであってもよい。
【0020】
調整インダクタLpdは、下変換回路101~mのトランスTの一次巻線T1と並列に接続され、下アームに形成されたm個のLLC共振コンバータの循環電流ICCを調整する。言い換えると、下変換回路101~mのトランスTは、下アームに形成されたm個のLLC共振コンバータの循環電流ICCを調整する調整インダクタLpdを共有している。
【0021】
調整インダクタLpuは、上変換回路10m+1~m+nのトランスTの一次巻線T1と並列に接続され、上アームに形成されたn個のLLC共振コンバータの循環電流ICCを調整する。言い換えると、上変換回路10m+1~m+nのトランスTは、上アームに形成されたn個のLLC共振コンバータの循環電流ICCを調整する調整インダクタLpuを共有している。
【0022】
共振コンバータ1は、共振インダクタLrの他端と、m+n個の変換回路101~10m+nのトランスTの一次巻線T1の一端との接続点に接続された外付け端子(external terminal)Mを備える。共振コンバータ1は、m個の下変換回路101~mのトランスTの一次巻線T1の他端と共振キャパシタの一端との接続点に接続された外付け端子Aを備える。共振コンバータ1は、n個の上変換回路10m+1~m+nのトランスTの一次巻線T1の他端と共振キャパシタの一端との接続点に接続された外付け端子Bを備える。調整インダクタLpdは、外付け端子Mと外付け端子Aとの間に外付けインダクタとして接続されている。調整インダクタLpuは、外付け端子Mと外付け端子Bとの間に外付けインダクタとして接続されている。
【0023】
共振コンバータ1は、調整インダクタLpdと調整インダクタLpuとのインダクタンスを調整するだけで、m+n個の変換回路101~10m+nの循環電流ICCを一括して調整できる。従って、共振コンバータ1は、変換回路101~10m+nを並列に拡張しても電流がバランスするため、大電力化あるいは高集積化を容易にできる。
【0024】
共振コンバータ1は、循環電流ICCを調整インダクタLpd及び調整インダクタLpuで調整できるため、m+n個のトランスTを巻き直すことなく、共振コンバータ1の仕様を容易に変更できる。
【0025】
共振コンバータ1では、m+n個の変換回路101~10m+nの一次側を流れる共振電流irが1個の共振インダクタLrで重畳され、共振インダクタLrでは、(m+n)irの電流が流れる。従って、共振インダクタLrに印加する電圧vLについて、変換回路10が1台の場合の共振インダクタLrのインダクタンスL1と、変換回路10が(m+n)台の場合の共振インダクタLrのインダクタンスL2とを比較すると、以下の式(1)となる。
【0026】
【0027】
変換回路10が(m+n)台の場合の共振インダクタLrのインダクタンスL2は、変換回路10が1台の場合の共振インダクタLrのインダクタンスL1の(m+n)分の1に低減できる。従って、変換回路10が(m+n)台の場合、共振インダクタLrのサイズを小型化でき、プレーナ化(planar structure)やコアレス化(coreless structure)できる。
【0028】
共振コンバータ1は、共振インダクタLrがm+n個の変換回路101~10m+nで共通であるため、共振キャパシタCrの静電容量C1~Cm+nにばらつきがあっても電流のバランスが大きく損なわれることがない。また、以下の式(2)に示すように、共振周波数ωrは均一化される。式(2)中で、静電容量C1~Cm+nの平均値をCrとしている。
【0029】
【0030】
調整インダクタLpd及び調整インダクタLpuは、
図3(a)に示すように、巻線を各々のコアに巻き、独立したインダクタとしてもよく、
図3(b)に示すように、巻線を同一のコアに巻き、結合インダクタとしてもよい。
図3(b)に示す結合インダクタの模式図は、分割巻きで便宜上示されているが、実用上は、サンドイッチ巻きやバイファイラ(bifilar)巻きでもよい。
【0031】
調整インダクタLpd及び調整インダクタLpuを独立したインダクタとする場合、下変換回路101~mの個数と上変換回路10m+1~m+nの個数とが同一(m=n)である必要がある。インダクタンスLindは、巻数Nind、コアの磁気抵抗Rを用いて、
Lind=Nind
2/R で表せる。
【0032】
調整インダクタLpd及び調整インダクタLpuを結合インダクタとする場合、巻線の接続点から各巻線に電流が流れるとき(M→A、B)に磁束が加わり合うように巻く和動接続とする。これにより、下変換回路101~mの個数と上変換回路10m+1~m+nの個数とが異なっていても(m≠nであっても)m+n個の変換回路101~10m+n間で電流をバランスできる。
【0033】
調整インダクタLpd及び調整インダクタLpuを結合インダクタとする場合、共振コンバータ1において、以下の効果もある。
調整インダクタLpdと調整インダクタLpuとの間のインダクタンスのばらつきを低減できる。
調整インダクタLpd及び調整インダクタLpuに用いるコアの数は、1個でよい。
調整インダクタLpd及び調整インダクタLpuの巻線の巻数は、独立したインダクタとした場合と比較して削減できる。
【0034】
結合インダクタの場合,各巻線の自己インダクタンスLCPと相互インダクタンスMとは、巻数NCP、コアの磁気抵抗Rを用い、密結合(k=1)とすると、
LCP=NCP
2/R
M=kNCPNCP/R=LCP で表せる。
【0035】
巻線の接続点から各巻線に電流iが流れるとき,結合インダクタの端子間電圧VMA、VMBは、
VMA=VMB=(LCP+M)di/dt=2LCPdi/dt
となり、各巻線において電流iに対する合成インダクタンスは自己インダクタンスLCPの2倍となる。
【0036】
従って、結合インダクタで独立したインダクタと等しいインダクタンスを得るためには(Lind=2LCP)、結合インダクタにおける巻線の巻数NCPをNCP=Nind/√2とすればよい。すなわち、磁化曲線が線形、磁気抵抗が等しい場合、結合インダクタにおける巻線の巻数NCPは、独立したインダクタにおける巻線の巻数Nindと比較して1/√2(=0.71)に削減できる。
【0037】
図4に示す共振コンバータ1aは、m+n個の変換回路10
1~10
m+nの出力を並列に接続し、出力キャパシタCoが全体出力Voに一括して接続されている。調整インダクタLpd及び調整インダクタLpuは、独立したインダクタでもよく、結合インダクタでもよい。出力キャパシタCoは、m+n個の変換回路10
1~10
m+nのそれぞれに分割して接続してもよい。共振コンバータ1aは、m+n個の変換回路10
1~10
m+nからの出力を並列に接続することで、出力を容易に大電流化できる。
【0038】
図5に示す共振コンバータ1bは、m+n個の変換回路10
1~10
m+nの出力を直列に接続し、出力キャパシタCoが全体出力Voに一括して接続されている。調整インダクタLpd及び調整インダクタLpuは、独立したインダクタでもよく、結合インダクタでもよい。出力キャパシタCoは、m+n個の変換回路10
1~10
m+nのそれぞれに分割して接続してもよい。共振コンバータ1bは、m+n個の変換回路10
1~10
m+nからの出力を直列に接続することで、出力を容易に大電圧化できる。
【0039】
図6に示す共振コンバータ1cは、m+n個の変換回路10
1~10
m+nを3組に振り分けることで、並列出力・直列出力が混在したマルチ出力(Vo
1、Vo
2、Vo
3)を実現したマルチ出力コンバータである。共振コンバータ1cは、下変換回路10
1と上変換回路10
m+1とが並列に接続されて出力Vo
1を出力する第1の出力回路を備える。共振コンバータ1cは、下変換回路10
2~jと上変換回路10
m+1~m+jとが直列に接続されて出力Vo
2を出力する第2の出力回路を備える。共振コンバータ1cは、下変換回路10
j+1~mと上変換回路10
m+j+1~m+nとが並列に接続されて出力Vo
3を出力する第3の出力回路を備える。jは、1~m、nの整数。
図6では、出力キャパシタCo
1~Co
3は、各出力回路に設けられている。出力キャパシタCo
1~Co
3は、m+n個の変換回路10
1~10
m+nのそれぞれに分割して設けてもよい。
【0040】
共振コンバータ1cは、調整インダクタLpd及び調整インダクタLpuにより、マルチ出力であっても変換回路101~10m+n間の電流をバランスできる。共振コンバータ1cの調整インダクタLpd及び調整インダクタLpuは、独立したインダクタである。従って、下変換回路101~mの個数は、上変換回路10m+1~m+nの個数と同数(m=n)である。下変換回路101~mが出力する電力の小計と、上変換回路10m+1~m+nが出力する電力の小計とは、等しく設定されている。
【0041】
調整インダクタLpd及び調整インダクタLpuにより、変換回路101~10m+n間の電流をバランスできるため、各出力回路のトランスTの巻数比が異なってもよい。
【0042】
図7に示す共振コンバータ1dは、m+n個の変換回路10
1~10
m+nを4組に振り分けることで、単独出力、並列出力・直列出力が混在したマルチ出力(Vo
1、Vo
2、Vo
3、Vo
4)を実現したマルチ出力コンバータである。共振コンバータ1dは、出力Vo
1を出力する下変換回路10
1を第1の出力回路として備える。共振コンバータ1dは、出力Vo
2を出力する上変換回路10
m+1を第2の出力回路として備える。共振コンバータ1dは、下変換回路10
2~jと上変換回路10
m+1~m+jとが直列に接続されて出力Vo
3を出力する第3の出力回路を備える。共振コンバータ1dは、下変換回路10
j+1~mと上変換回路10
m+j+1~m+nとが並列に接続されて出力Vo
4を出力する第4の出力回路を備える。
図6では、出力キャパシタCo
1~Co
4は、各出力回路に設けられている。出力キャパシタCo
1~Co
4は、m+n個の変換回路10
1~10
m+nのそれぞれに分割して設けてもよい。
【0043】
共振コンバータ1dの調整インダクタLpd及び調整インダクタLpuは、結合インダクタである。従って、下変換回路101~mの個数と上変換回路10m+1~m+nの個数とが異なっていても(m≠nであっても)よい。各出力回路において、下変換回路101~mと上変換回路10m+1~m+nから使用する変換回路の個数が上下で異なっていても、変換回路が出力する電力の小計が上下で異なっていても、変換回路101~10m+n間の電流をバランスできる。
【0044】
調整インダクタLpd及び調整インダクタLpuにより、変換回路101~10m+n間の電流をバランスできるため、各出力回路のトランスTの巻数比が異なってもよい。
【0045】
共振コンバータ1~1dは、調整インダクタLpd及び調整インダクタLpuを外付けインダクタとして接続する外付け端子M、A、Bを備える。外付け端子A、Bは、
図8に示す電流検出回路2の接続端子として用いることができる。
【0046】
電流検出回路2は、外付け端子A、B間に直列に接続された2個の分流用キャパシタCsを備える。分流用キャパシタCsは共振キャパシタCrより十分に小さく、共振コンバータ1の動作に影響を与えない程度の静電容量に設定されている。電流検出回路2は、2個の分流用キャパシタCsの接続点と直流電源Vinの負極との間に接続された検出抵抗Rsを備える。検出抵抗Rsを流れる電流isは、m+n個の共振キャパシタCrと2個の分流用キャパシタCsとの間で共振インダクタ電流が分流するものである。電流isによって検出抵抗Rsに生じる電圧vsが電流検出値として上スイッチ素子QH及び下スイッチ素子QLをオンオフ制御する制御部に入力される。
【0047】
検出抵抗Rsを流れる電流isは、変換回路101~10m+nの個数に拘わらず、共振キャパシタCrと分流用キャパシタCsの容量比で決まる。従って、電流検出回路2は、共振インダクタLrに流れる電流を簡単に検出できる。電流検出回路2は、変換回路101~10m+nの個数に拘わらず、一台でよく、制御回路20のゲイン設定を変換回路101~10m+nの個数に応じて変更する必要もない。
【0048】
図9は、N台(Nは2以上の整数)の共振コンバータ1eが直流電源Vinに並列に接続され、第1相~第N相からなるN相のマルチフェーズLLC共振コンバータ100として構成されている。
【0049】
共振コンバータ1eは、直流電源Vinの正極と、直流電源Vinの負極との間に、スイッチングレグとして上スイッチ素子QH及び下スイッチ素子QLが直列に接続されている。
【0050】
共振コンバータ1eは、上スイッチ素子QHと下スイッチ素子QLとの接続点に、一端が接続された共振インダクタLrを備える。
【0051】
共振コンバータ1eは、m個の変換回路10e1~10emと、n個の変換回路10em~10em+nと、を備える。変換回路10e1~10em及び変換回路10em~10em+nは、トランスT、第1共振キャパシタCr1、第2共振キャパシタCr2、及び、整流器REをそれぞれ含む。m、nは、0以上の整数であり、mとnとのいずれかは、2以上である。
【0052】
m個の変換回路10e1~10emにおいて、それぞれのトランスTの一次巻線T1の一端は、共振インダクタLrの他端に接続され、トランスTの一次巻線T1の他端は、第1共振キャパシタCr1を介して直流電源Vinの負極に接続されている。
【0053】
m個の変換回路10e1~10emにおいて、それぞれのトランスTの一次巻線T1の一端は、共振インダクタLrの他端に接続され、トランスTの一次巻線T1の他端は、第2共振キャパシタCr2を介して中性点A1~mに接続されている。
【0054】
n個の変換回路10em+1~10em+nにおいて、それぞれのトランスTの一次巻線T1の一端は、が共振インダクタLrの他端に接続され、トランスTの一次巻線T1の他端は、第1共振キャパシタCr1を介して直流電源Vinの正極に接続されている
【0055】
n個の変換回路10em+1~10em+nにおいて、それぞれのトランスTの一次巻線T1の一端は、共振インダクタLrの他端に接続されている。n個の変換回路10em+1~10em+nにおいて、トランスTの一次巻線T1の他端は、第2共振キャパシタCr2を介して中性点Am+1~m+nにそれぞれ接続されている。
【0056】
中性点Ax(x=1~m、m+1~m+nの整数)は、第1相~第N相を接続する共通ノードであり、第1相~第N相の共振コンバータ1eにおける変換回路10exの第2共振キャパシタCr2の他端が接続される。第1相~第N相の共振コンバータ1eにおけるトランスTの一次巻線T1は、第2共振キャパシタCr2を介して中性点Axでスター結線されることになり、第1相~第N相の電流をバランスさせる。
【0057】
第1共振キャパシタCr1、第2共振キャパシタCr2の容量は、両者を加算した値(Cr1+Cr2)が所望の共振周波数ωrを得るために必要な共振キャパシタCrの静電容量となるように設定されている。
【0058】
m個の変換回路10e1~10em、n個の変換回路10em+1~10em+nにおいて、それぞれの整流器REは、トランスTの二次巻線T2から出力される交流電流を整流する。整流器REは、高電位出力端子P1~Pm+n及び低電位出力端子N1~Nm+nから出力電圧をそれぞれ出力する。
【0059】
少なくとも第1相~第N相の高電位出力端子P
xと低電位出力端子N
xとは、
図9に示すように、それぞれ接続(同一の負荷に接続)されている。従って、マルチフェーズLLC共振コンバータ100は、最大で変換回路10e
1~10e
mのm個の出力と変換回路10e
m+1~10e
m+nのn個の出力とを加算した(m+n)個の出力を備える。m個の変換回路10e
1~10e
mの出力とn個の変換回路10e
m+1~10e
m+nの出力とは、
図4に示すように並列に接続してもよく、
図5に示すように直列に接続してもよい。m個の変換回路10e
1~10e
mの出力とn個の変換回路10e
m+1~10e
m+nの出力とは、
図6に示すように、複数組に振り分けてもよい。
【0060】
N台の共振コンバータ1eは、従来のLLC共振コンバータの励磁電流に相当する循環電流(circulating current)ICCを調整する調整インダクタLpd及び調整インダクタLpuをそれぞれ備える。調整インダクタLpdは、変換回路10e1~mのトランスTの一次巻線T1と並列に接続され、下アームに形成されたm個のLLC共振コンバータの循環電流ICCを調整する。調整インダクタLpuは、変換回路10em+1~m+nのトランスTの一次巻線T1と並列に接続され、上アームに形成されたn個のLLC共振コンバータの循環電流ICCを調整する。
【0061】
マルチフェーズLLC共振コンバータ100は、上スイッチ素子QHと下スイッチ素子QLとを交互にオンオフさせる制御回路20を備える。
【0062】
制御回路20は、上スイッチ素子QH1~QHN及び下スイッチ素子QL1~QLNをそれぞれ駆動する上スイッチゲート信号GH1~GHN及び下スイッチゲート信号GL1~GLNを生成して出力する。制御回路20は、上スイッチゲート信号GH1及び下スイッチゲート信号GL1、上スイッチゲート信号GH2及び下スイッチゲート信号GL2、~上スイッチゲート信号GHN及び下スイッチゲート信号GLNを、360°/Nの位相差で制御し,N相のマルチフェーズ動作を行う。
【0063】
第1相~第N相の共振インダクタLrは、統合してもよい。三相のマルチフェーズLLC共振コンバータ100の場合、
図10(a)に示すように、三相分の共振インダクタLrは、3個の3脚コアを用いる代わりに、
図10(b)に示すように、5脚コアを用いて統合できる。
【0064】
5脚コアを用いる場合、共振インダクタLr(巻線)は、ギャップを有する3本の中脚にそれぞれ巻き、2本の外脚は、供用となる。5脚コアを用いる場合、3脚コアを3個用いた場合と比較すると、共振インダクタLrは、外脚4本分の体積を削減できる。3本の中脚から出た磁束は、ギャップのない2本の外脚を通るため、各相は非結合となる。外脚で磁束が合成されるため、磁束が低減し、鉄損が低減する。
【0065】
三相のマルチフェーズLLC共振コンバータ100の場合、N相分の共振インダクタLrは、
図10(c)に示すように、(N+2)脚コアを用いて統合できる。
【0066】
(N+2)脚コアを用いる場合、ギャップを有するN本の中脚に巻線(共振インダクタLr)をそれぞれ巻き、2本の外脚は、供用となる。(N+2)脚コアを用いる場合、3脚コアをN個用いた場合と比較すると、共振インダクタLrは、外脚(N+1)本分の体積を削減できる。N本の中脚から出た磁束は、ギャップのない2本の外脚を通るため、各相は非結合となる。外脚で磁束が合成されるため、磁束が低減し、鉄損が低減する。
【0067】
(まとめ)
(1)本発明の各実施形態にかかるマルチフェーズLLC共振コンバータ100は、直流電源Vinに並列に接続されたN台(Nは2以上の整数)の共振コンバータ1eを、360°/Nの位相差で動作させるN相のマルチフェーズLLC共振コンバータ100である。共振コンバータ1eは、直流電源Vinの両端に直列に接続された上スイッチ素子QH及び下スイッチ素子QLを備える。共振コンバータ1eは、上スイッチ素子QHと下スイッチ素子QLとの接続点に一端が接続された共振インダクタLrを備える。共振コンバータ1eは、一次巻線T1及び二次巻線T2を備えたトランスT、第1共振キャパシタCr1及び第2共振キャパシタCr2、整流器RE、を含むm個の下変換回路10e1~mを備える。第1共振キャパシタCr1及び第2共振キャパシタCr2は、一端が一次巻線T1に接続される。整流器REは、二次巻線T2の両端に接続される。m個の下変換回路10e1~mにおいて、一次巻線T1及び第1共振キャパシタCr1は、共振インダクタLrの他端と直流電源Vinの負極との間に接続される。m個の下変換回路10e1~mは、共振インダクタLrと共に上スイッチ素子QH及び下スイッチ素子QLのオンオフ動作によって動作するLLC共振コンバータを構成する。共振コンバータ1eは、トランスT、第1共振キャパシタCr1及び第2共振キャパシタCr2、整流器RE、を含むn個の上変換回路10em+1~m+nを備える。n個の上変換回路10em+1~m+nにおいて、一次巻線T1及び第1共振キャパシタCr1は、共振インダクタLrの他端と直流電源Vinの正極との間に接続される。n個の上変換回路10em+1~m+nは、共振インダクタLrと共に上スイッチ素子QH及び下スイッチ素子QLのオンオフ動作によって動作するLLC共振コンバータを構成する。共振コンバータ1eは、m個の下変換回路10e1~mの一次巻線T1と並列に接続された調整インダクタLpd(下調整インダクタ)を備える。共振コンバータ1eは、n個の下変換回路10em+1~m+nの一次巻線T1と並列に接続された調整インダクタLpu(上調整インダクタ)を備える。下変換回路10e1~mにおける第2共振キャパシタCr2の他端は、各相を接続する共通の中性点A1~mで、他相の下変換回路10e1~mにおける第2共振キャパシタCr2の他端と接続されている。上変換回路10em+1~m+nにおける第2共振キャパシタCr2の他端は、各相を接続する共通の中性点Am+1~m+nで、他相の上変換回路10em+1~m+nにおける第2共振キャパシタCr2の他端と接続されている。第2共振キャパシタCr2を介して中性点A1~m+nでスター結線された下変換回路10e1~m及び上変換回路10em+1~m+nの出力(高電位出力端子P1~Pm+n、低電位出力端子N1~Pm+n)は、それぞれ接続されている。
【0068】
上記(1)に記載のマルチフェーズLLC共振コンバータ100によれば、変換回路101~m、上変換回路10m+1~m+nを並列に拡張しても電流がバランスするため、マルチフェーズ化の利点(入出力電流リプル低減,出力電圧リプル低減など)を享受した上で、大電力化あるいは高集積化を容易にできる。複数の出力をそれぞれ大電力化できるため、マルチフェーズLLC共振コンバータ100は、例えば、複数の充電ポートを備えたEV用急速充電ステーション等に適用できる。
【0069】
(2)上記(1)に記載のマルチフェーズLLC共振コンバータ100において、各相の共振インダクタLrは、ギャップを有するN本の中脚と2本と外脚とを備えた(N+2)脚のコアを用い、N本の中脚にそれぞれ巻き回されている。
【0070】
上記(2)に記載のマルチフェーズLLC共振コンバータ100によれば、共振インダクタLrは、外脚(N+1)本分の体積を削減できる。外脚で磁束が合成されるため、磁束が低減し、鉄損が低減する。
【0071】
(3)上記(1)又は(2)のマルチフェーズLLC共振コンバータ100において、調整インダクタLpd及び調整インダクタLpuを結合インダクタとすることができる。
【0072】
上記(3)に記載のマルチフェーズLLC共振コンバータ100によれば、下変換回路101~mの個数と上変換回路10m+1~m+nの個数とが異なっていても(m≠nであっても)m+n個の変換回路101~10m+n間で電流をバランスできる。調整インダクタLpdと調整インダクタLpuとは、インダクタンスのばらつきを低減できる。調整インダクタLpd及び調整インダクタLpuに使用するコアの数は、1個でよい。調整インダクタLpd及び調整インダクタLpuの巻線の巻数は、独立したインダクタの場合と比較して削減できる。
【0073】
(4)上記(1)~(3)のマルチフェーズLLC共振コンバータ100において、下変換回路101~m及び上変換回路10m+1~m+nのトランスTの励磁インダクタンスは、調整インダクタLpd及び調整インダクタLpuのインダクタンスよりも大きく設定されている。
【0074】
上記(4)に記載のマルチフェーズLLC共振コンバータ100によれば、トランスTは、ギャップレスのコアを用いることができる。
【0075】
(5)上記(4)のマルチフェーズLLC共振コンバータ100において、下変換回路101~m及び上変換回路10m+1~m+nのトランスTの励磁インダクタンスは、調整インダクタLpd及び調整インダクタLpuのインダクタンスの10倍以上に設定されている。
【0076】
上記(5)に記載のマルチフェーズLLC共振コンバータ100によれば、トランスTは、ギャップレスのコアを用いることができる。
【0077】
(6)上記(1)~(3)のマルチフェーズLLC共振コンバータ100において、共振コンバータ1aのように、m個の下変換回路101~mの出力とn個の上変換回路10m+1~m+nの出力とを並列に接続することができる。
【0078】
上記(6)に記載のマルチフェーズLLC共振コンバータ100によれば、出力を容易に大電流化できる。
【0079】
(7)上記(1)~(3)のマルチフェーズLLC共振コンバータ100において、共振コンバータ1bのように、m個の下変換回路101~mの出力とn個の上変換回路10m+1~m+nの出力とを直列に接続することができる。
【0080】
上記(7)に記載のマルチフェーズLLC共振コンバータ100によれば、出力を容易に大電圧化できる。
【0081】
(8)上記(1)~(3)のマルチフェーズLLC共振コンバータ100において、共振コンバータ1c、1dのように、m個の下変換回路101~mの出力とn個の上変換回路10m+1~m+nの出力とを複数組に振り分けてマルチ出力コンバータを構成することができる。
【0082】
上記(8)に記載のマルチフェーズLLC共振コンバータ100によれば、簡単にマルチ出力に対応できる。
【0083】
(9)上記(1)~(3)のマルチフェーズLLC共振コンバータ100において、共振インダクタLrの他端と上下変換回路の一次巻線T1の一端との接続点に接続された外付け端子M(中間外付け端子)を備え,下変換回路101~mの一次巻線T1の他端と第1共振キャパシタCr1の一端との接続点に接続された外付け端子A(下外付け端子)を備え、上変換回路10m+1~m+nの一次巻線T1の他端と第1共振キャパシタCr1の一端との接続点に接続された外付け端子B(上外付け端子)を備える。調整インダクタLpdは、外付け端子Mと外付け端子Aとの間に、調整インダクタLpuは、外付け端子Mと外付け端子Bとの間に、それぞれ外付けインダクタとして接続されている。
【0084】
上記(9)に記載のマルチフェーズLLC共振コンバータ100によれば、調整インダクタLpd及び調整インダクタLpuは、インダクタンスを簡単に調整できる。外付け端子A、Bは、電流検出回路2の接続用の端子として用いることができ、電流検出回路2によって共振インダクタLrに流れる電流を簡単に検出できる。
【0085】
以上、本発明を具体的な実施形態で説明したが、上記実施形態は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更して実施できることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0086】
1、1a~1d 共振コンバータ
101~m 下変換回路
10m+1~m+n 上変換回路
100 マルチフェーズLLC共振コンバータ
Cr1 第1共振キャパシタ
Cr2 第2共振キャパシタ
Lpd 調整インダクタ(下調整インダクタ)
Lpu 調整インダクタ(上調整インダクタ)
Lr 共振インダクタ
QH 上スイッチ素子
QL 下スイッチ素子
RE 整流器
T1 一次巻線
T2 二次巻線
T トランス
Vin 直流電源