IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カヤバ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-流体圧機器 図1
  • 特開-流体圧機器 図2
  • 特開-流体圧機器 図3
  • 特開-流体圧機器 図4
  • 特開-流体圧機器 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139848
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】流体圧機器
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/22 20060101AFI20241003BHJP
   F15B 15/14 20060101ALI20241003BHJP
   F16F 9/58 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F15B15/22 D
F15B15/14
F16F9/58 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050769
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪田 卓哉
【テーマコード(参考)】
3H081
3J069
【Fターム(参考)】
3H081AA01
3H081BB02
3H081CC15
3H081CC23
3H081FF19
3H081HH10
3J069AA50
3J069CC05
(57)【要約】
【課題】簡易な構造でクッション作用を発揮させる。
【解決手段】油圧シリンダ100は、シリンダチューブ10と、シリンダチューブ10に進退自在に挿入されるピストンロッド20と、ピストンロッド20に連結されシリンダチューブ10内をロッド側室2とボトム側室3とに区画するピストン30と、を備え、ロッド側室2及びボトム側室3の少なくとも一方には、ピストンロッド20をストローク端付近で減速させるための複数の粒子40が収容され、複数の粒子40は、弾性体で形成され、ピストンロッド20に固定された部材(ピストン30)により圧縮されることでピストンロッド20を減速させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブと、
前記シリンダチューブに進退自在に挿入されるピストンロッドと、
前記ピストンロッドに連結され前記シリンダチューブ内をロッド側室とボトム側室とに区画するピストンと、を備え、
前記ロッド側室及び前記ボトム側室の少なくとも一方には、前記ピストンロッドをストローク端付近で減速させるための複数の粒子が収容され、
前記複数の粒子は、弾性体で形成され、前記ピストンロッドに固定された部材により圧縮されることで前記ピストンロッドを減速させることを特徴とする流体圧機器。
【請求項2】
請求項1に記載の流体圧機器であって、
前記複数の粒子は、前記ロッド側室に収容され、前記流体圧機器が伸長する際に前記ピストンロッドをストローク端付近で減速させることを特徴とする流体圧機器。
【請求項3】
請求項2に記載の流体圧機器であって、
前記流体圧機器は、単動型の流体圧シリンダであることを特徴とする流体圧機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ピストンが摺動自在に収容され内部にボトム側室及びロッド側室を有する筒状のシリンダチューブと、ピストンに連結されシリンダチューブの開口端から摺動自在に突出する筒状のピストンロッドと、ピストンロッドの内部に画成されるロッド内室と、ロッド内室を封止するロッドヘッドと、を備えることを特徴とする液圧シリンダが開示されている。液圧シリンダは、ボトム側室に作動液が給排されることにより伸縮する。ピストンロッドには、ロッド側室とロッド内室を連通するようにポートとオリフィスがそれぞれ形成され、ロッド側室にはクッション用油が入れられる。
【0003】
特許文献1に記載の液圧シリンダが伸長すると、ロッド側室が収縮し圧力が高まることにより、ロッド側室のクッション用油がポート及びオリフィスを通じてロッド内室に流入する。ピストンロッドがストローク端に近づくと、ポートが閉塞されてクッション用油がオリフィスのみを通じてロッド内室に流入する。オリフィスがクッション用油の流れに抵抗を付与することで、ピストンロッドが減速し、ピストンロッドがストローク端に達する際の衝撃が緩和される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-43875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のような流体圧シリンダでは、ピストンがストローク端に達する際の衝撃を緩和するために、ピストンロッドにロッド内室、ポート、及びオリフィスが形成され、ロッド内室がロッドヘッドにより封止される。そのため、流体圧シリンダの構造が複雑である。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、流体圧機器において、簡易な構造でクッション作用を発揮させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、流体圧機器であって、シリンダチューブと、シリンダチューブに進退自在に挿入されるピストンロッドと、ピストンロッドに連結されシリンダチューブ内をロッド側室とボトム側室とに区画するピストンと、を備え、ロッド側室及びボトム側室の少なくとも一方には、ピストンロッドをストローク端付近で減速させるための複数の粒子が収容され、複数の粒子は、弾性体で形成され、ピストンロッドに固定された部材により圧縮されることでピストンロッドを減速させることを特徴とする。
【0008】
この発明では、ピストンロッドは、ロッド側室及びボトム側室の少なくとも一方に収容される複数の粒子が圧縮されることにより、ストローク端付近で減速される。言い換えれば、複数の粒子をロッド側室及びボトム側室の少なくとも一方に収容することのみで、ピストンロッドをストローク端付近で減速させるクッション作用を発揮させることができる。そのため、ピストンロッドに中空部やオリフィス等を形成する必要がない。よって、簡易な構造でクッション作用を発揮させることができる。
【0009】
本発明は、複数の粒子は、ロッド側室に収容され、流体圧機器が伸長する際にピストンロッドをストローク端付近で減速させることを特徴とする。
【0010】
この発明では、伸長する際にピストンをストローク端付近で減速させる流体圧機器において、簡易な構造でクッション作用を発揮させることができる。
【0011】
本発明は、流体圧機器は、単動型の流体圧シリンダであることを特徴とする。
【0012】
この発明では、単動型の流体圧シリンダにおいて、簡易な構造でクッション作用を発揮させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構造でクッション作用を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る流体圧シリンダの部分断面図であり、流体圧シリンダが最収縮した状態を示す。
図2】本発明の第1実施形態に係る流体圧シリンダの部分断面図であり、流体圧シリンダが最伸長した状態を示す。
図3】本発明の第2実施形態に係るショックアブソーバの部分断面図である。
図4】本発明の比較例に係る流体圧シリンダの部分断面図であり、流体圧シリンダが最収縮した状態を示す。
図5】本発明の比較例に係る流体圧シリンダの部分断面図であり、流体圧シリンダが最伸長した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る流体圧機器について説明する。
【0016】
<第1実施形態>
図1図2を参照して、第1実施形態に係る流体圧機器について説明する。第1実施形態に係る流体圧機器は、作動油を作動流体として駆動する油圧シリンダ100である。図1は油圧シリンダ100が最収縮した状態を示しており、図2は油圧シリンダ100が最伸長した状態を示している。なお、流体圧機器は、作動油以外の作動水等を作動流体として駆動する流体圧シリンダであってもよい。
【0017】
油圧シリンダ100は、シリンダチューブ10と、シリンダチューブ10に進退自在に挿入されるピストンロッド20と、ピストンロッド20に連結されシリンダチューブ10内をロッド側室2とボトム側室3(図2参照)とに区画するピストン30と、を備える。
【0018】
本実施形態の油圧シリンダ100は、フォークリフトなどの昇降装置において積荷を昇降させるリフトシリンダとして用いられる。油圧シリンダ100は単動型の油圧シリンダであり、シリンダチューブ10の軸方向が鉛直方向と略一致する向きで使用され、ピストンロッド20がピストン30の上部に配置される。
【0019】
シリンダチューブ10は、筒状の本体部11と、本体部11の一端の開口部を閉塞しピストンロッド20が挿通されるヘッド部材としてのシリンダヘッド12と、本体部11の他端の開口部を閉塞するボトム部材としてのシリンダボトム13と、を有する。シリンダヘッド12は、例えば複数のボルト等の締結部材(図示せず)を介して本体部11に締結される。シリンダボトム13は、本体部11に例えば溶接により接合される。ピストン30は、本体部11の内周面に沿って摺動する。本体部11、シリンダヘッド12、及びピストン30によって、ロッド側室2が区画され、本体部11、シリンダボトム13、及びピストン30によって、ボトム側室3が区画される。ロッド側室2には、複数の粒子40と気体が収容される。複数の粒子40の詳細については後述する。
【0020】
シリンダヘッド12は環状に形成される。シリンダヘッド12の内周には、ピストンロッド20を摺動自在に支持するベアリング5が設けられる。また、シリンダヘッド12の内周にはさらに、ダストシール6と、ピストンロッド20の外周面に摺接するメインシール7が設けられる。ダストシール6は、シリンダチューブ10内へのダストの侵入を防止する。メインシール7は、シリンダチューブ10内のロッド側室2を密封する。
【0021】
シリンダボトム13には、ボトム側室3と連通する給排ポート13aが形成される。給排ポート13aは、例えば切換弁(図示省略)を介して、ポンプ等の油圧源(図示省略)及びタンク(図示省略)と選択的に接続される。ボトム側室3に油圧源から作動油が供給されボトム側室3内の圧力が上昇すると、図2に示すようにピストン30及びピストンロッド20が上方へ駆動され、油圧シリンダ100が伸長する。一方で、ボトム側室3内の圧力が低下すると、ピストン30及びピストンロッド20が自重によって下方へと移動し、ボトム側室3の作動油がタンクに排出されて油圧シリンダ100が収縮する。
【0022】
ピストン30は、ピストンロッド20の下端部20aを収容する収容穴31を有する。ピストン30は、ピストンロッド20の下端面20bが収容穴31の底部31aに当接して、ピストンロッド20に嵌合される。ピストン30がピストンロッド20に嵌合された状態では、ピストン30の収容穴31の内周面に設けられる環状溝32とピストンロッド20の下端部20aの外周面に設けられる環状溝21が対向する。環状溝21,32により形成される空間には、スナップリング8が嵌装される。これにより、ピストンロッド20とピストン30が互いに軸方向に係止され、連結される。図1に示すように、ピストン30がシリンダボトム13に当接することで、油圧シリンダ100の縮み側のストロークが規制される。なお、ピストンロッド20の下端部20aの外周面とピストン30の収容穴31の内周面との間、及びピストンロッド20の下端面20bと収容穴31の底部31aとの間には、わずかな隙間が形成される。後述するように、油圧シリンダ100が伸長する際には、この隙間とチェックバルブ38を通じて、ロッド側室2の気体と作動油がボトム側室3に排出される。
【0023】
ピストン30の外周面には、ベアリング35とシールリング36が設けられる。ピストン30は、ベアリング35を介してシリンダチューブ10の本体部11の内周面に摺接する。シールリング36は、ピストン30の外周面とシリンダチューブ10の本体部11の内周面との間を封止し、ボトム側室3の作動油がロッド側室2に漏出することを抑制する。
【0024】
また、ピストン30は、収容穴31の底部31aを軸方向に貫通して形成される貫通孔33を有する。貫通孔33は、ピストンロッド20と同軸上に形成される。貫通孔33には、チェックバルブ38が設けられる。チェックバルブ38は、ピストン30の上方から下方へ流れる流体の流れのみを許容する。チェックバルブ38は、公知の構成を採用できるため、詳細な説明を省略する。
【0025】
ピストン30の外周面にはシールリング36が設けられるものの、油圧源からボトム側室3に作動油が供給され、ピストンロッド20が上方に駆動されて油圧シリンダ100が伸長する際には、ボトム側室3の作動油の一部がシールリング36を超えてロッド側室2に漏出してしまう可能性がある。しかしながら、油圧シリンダ100の伸長時には、ロッド側室2が収縮し、ロッド側室2の気体とロッド側室2に漏出した作動油が、ピストンロッド20の下端部20aの外周面とピストン30の収容穴31の内周面との間、ピストンロッド20の下端面20bと収容穴31の底部31aとの間、及び貫通孔33を通じてチェックバルブ38に導かれ、ボトム側室3に排出される。これにより、油圧シリンダ100がストローク端付近までスムーズに伸長する。
【0026】
次に、複数の粒子40の詳細について説明する。
【0027】
複数の粒子40は、ピストンロッド20を伸び側のストローク端付近で減速させるためのものであり、弾性体で形成される。具体的には、粒子40は、ニトリルゴム(NBR)等のゴムやシリコン樹脂で形成される。粒子40は、ロッド側室2に収容され、シリンダチューブ10の本体部11の内周面とピストン30の外周面との間、及びピストンロッド20の下端部20aの外周面とピストン30の収容穴31の内周面との間を通じて、ロッド側室2から漏出しない大きさに形成される。具体的には、粒子40の直径は、1mm-10mm程度である。
【0028】
粒子40は、弾性体で形成されるため、外力を受けると弾性変形する。よって、図1に示す油圧シリンダ100が最収縮した状態から、ボトム側室3に作動油が供給されピストンロッド20が上方に移動して油圧シリンダ100が伸長すると、図2に示すように、ストローク端付近では複数の粒子40はピストン30によりシリンダヘッド12との間で圧縮される。この際、ピストンロッド20には、複数の粒子40からの弾性力、複数の粒子40同士の間で生じる摩擦力、複数の粒子40とシリンダチューブ10の本体部11との間で生じる摩擦力、及び複数の粒子40とピストンロッド20の外周面との間で生じる摩擦力が、減衰力として下方に向けて作用する。ピストンロッド20がストローク端に近づくにつれて、複数の粒子40がより圧縮されて弾性力が大きくなるため、ピストンロッド20に作用する減衰力が大きくなる。これにより、ピストンロッド20が伸び側のストローク端付近で減速されるクッション作用が発揮され、ピストンロッド20が伸び側のストローク端に達する際の衝撃が緩和される。なお、本実施形態では、特許請求の範囲に記載の「ピストンロッドに固定された部材」とは、ピストン30のことである。
【0029】
ここで、図4図5を参照して、本発明の比較例に係る油圧シリンダ300について説明する。なお、油圧シリンダ100と対応する構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0030】
油圧シリンダ300は、複数の粒子40ではなくクッション油240により、ピストンロッド220がストローク端付近で減速されるクッション作用が発揮される。
【0031】
具体的には、シリンダチューブ210の本体部211には、ロッド側室2にクッション油240を入れるための補充孔211aが径方向に貫通して形成される。補充孔211aは、プラグ215により封止される。ピストンロッド220には、下端面20bに開口する中空部225と、中空部225とロッド側室2を連通する連通孔226及びオリフィス227と、が形成される。オリフィス227は、連通孔226よりも下端面20bに近い位置に形成され、ピストン230に形成される切り欠き230aを通じて中空部225とロッド側室2を連通する。図4に示すように、油圧シリンダ300が最収縮した状態では、クッション油240はロッド側室2及び中空部225に収容される。
【0032】
ピストン230の貫通孔33には、軸方向に延びて形成されるバルブハウジング250が設けられる。バルブハウジング250は、軸方向に貫通して形成される貫通孔251を有し、ピストンロッド220の中空部225まで延びて設けられる。貫通孔251には、チェックバルブ38とロッド内管260が設けられる。ロッド内管260は、バルブハウジング250から上方に突出して設けられる。よって、クッション油240は、液面がロッド内管260の上端を超えると、ロッド内管260内に導かれチェックバルブ38を通じてボトム側室3に排出される。言い換えれば、ロッド内管260は、ロッド内管260内に導かれずにロッド側室2及び中空部225に貯留されるクッション油240の量を規定するために設けられる。ロッド側室2とボトム側室3は、連通孔226またはオリフィス227、中空部225、ロッド内管260、貫通孔251、及びチェックバルブ38を通じて連通する。
【0033】
図4に示す油圧シリンダ300が最収縮した状態から油圧シリンダ300が伸長すると、ロッド側室2が収縮し高圧になるため、ストローク端付近までは、ロッド側室2のクッション油240が主に連通孔226を通じてピストンロッド220の中空部225に導かれる。連通孔226は流路断面積が大きいため、ロッド側室2から連通孔226を通じて中空部225に導かれるクッション油240には、大きな抵抗は生じない。
【0034】
図5に示すように、油圧シリンダ300がストローク端付近まで伸長すると、連通孔226を通じたロッド側室2とボトム側室3の連通が遮断される。そのため、ロッド側室2のクッション油240は、オリフィス227のみを通じてピストンロッド220の中空部225に導かれる。オリフィス227は流路断面積が小さいため、ロッド側室2からオリフィス227を通じて中空部225に導かれるクッション油240には、大きな抵抗が生じる。これにより、ピストンロッド220が伸び側のストローク端付近で減速されるクッション作用が発揮される。
【0035】
このように、本発明の比較例に係る油圧シリンダ300では、クッション作用を発揮させるために、シリンダチューブ210に補充孔211a及びプラグ215が設けられ、ピストンロッド220に中空部225、連通孔226、及びオリフィス227が設けられ、ピストン230にバルブハウジング250及びロッド内管260が設けられるため、構造が複雑である。また、油圧シリンダ300は、構造が複雑であるため加工に手間がかかるだけでなく、部品点数も多いため、製造コストが高い。
【0036】
これに対し、本実施形態の油圧シリンダ100では、ピストンロッド20は、ロッド側室2に収容される複数の粒子40が圧縮されることにより、伸び側のストローク端付近で減速される。言い換えれば、複数の粒子40をロッド側室2に収容することのみで、ピストンロッド20を伸び側のストローク端付近で減速させるクッション作用を発揮させることができる。そのため、ピストンロッド20に中空部やオリフィス等を形成する必要がない。よって、簡易な構造でクッション作用を発揮させることができる。
【0037】
また、油圧シリンダ100では、ピストンロッド20に中空部を形成する必要がないため、中空部を形成する場合と比較してピストンロッド20の強度が高くなる。よって、ピストンロッド20を小径化することができる。
【0038】
また、油圧シリンダ100では、複数の粒子40によりクッション作用を発揮させるため、ロッド側室2に収容される粒子40の量や材質等を調整することにより、クッション作用の程度を容易に調整することができる。また、クッション性が悪化しても、粒子40の追加や交換をすることによりクッション性を容易に向上させることができ、メンテナンスが容易になる。
【0039】
以上の第1実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0040】
油圧シリンダ100では、複数の粒子40をロッド側室2に収容することのみで、ピストンロッド20を伸び側のストローク端付近で減速させるクッション作用を発揮させることができる。そのため、ピストンロッド20に中空部やオリフィス等を形成する必要がなく、簡易な構造でクッション作用を発揮させることができる。
【0041】
<第2実施形態>
図3を参照して、第2実施形態に係る流体圧機器について説明する。第2実施形態に係る流体圧機器は、車両等に搭載されるショックアブソーバ200である。ショックアブソーバ200は、例えば、車両の車体と車軸との間に介装され、減衰力を発生させて車体の振動を抑制する。
【0042】
ショックアブソーバ200は、シリンダチューブ110と、シリンダチューブ110に進退自在に挿入されるピストンロッド120と、ピストンロッド120に連結されシリンダチューブ110内をロッド側室102とボトム側室103とに区画するピストン130と、を備える。
【0043】
シリンダチューブ110のロッド側室102側の端部には、環状のシリンダヘッド150が設けられる。シリンダヘッド150は、ピストンロッド120を摺動自在に支持するとともに、シリンダチューブ110のロッド側室102側の端部を封止する。ロッド側室102とボトム側室103には、作動流体として作動油が収容される。
【0044】
ピストン130は、ロッド側室102とボトム側室103とを連通する通路130a、130bを有する。ピストン130のロッド側室102側には、複数の環状のリーフバルブを有する減衰バルブ135が設けられる。また、ピストン130のボトム側室103側には、複数の環状のリーフバルブを有する減衰バルブ136が設けられる。
【0045】
減衰バルブ135は、ショックアブソーバ200の収縮時にロッド側室102とボトム側室103の差圧により開弁して通路130aを開放するとともに、通路130aを通ってボトム側室103からロッド側室102に移動する作動油の流れに抵抗を与える。減衰バルブ135は、ショックアブソーバ200の伸長時には、通路130aを閉塞する。減衰バルブ136は、ショックアブソーバ200の伸長時に開弁して通路130bを開放するとともに、通路130bを通ってロッド側室102からボトム側室103に移動する作動油の流れに抵抗を与える。減衰バルブ136は、ショックアブソーバ200の収縮時には、通路130bを閉塞する。つまり、減衰バルブ135はショックアブソーバ200の収縮時にピストン130に減衰力を作用させ、減衰バルブ136はショックアブソーバ200の伸長時にピストン130に減衰力を作用させる。
【0046】
ピストンロッド120の外周面には、サポート160が設けられる。サポート160は、例えば、金属製のプレス成形品であり溶接等によりピストンロッド120の外周面に固定される。サポート160は、ピストン130よりも上方に設けられ、ショックアブソーバ200の伸び側のストロークを規制する。サポート160は、シリンダチューブ110の内周面近傍まで径方向に延びて設けられる。よって、ロッド側室102は、サポート160により、サポート160の上方の第1室102aとサポート160の下方の第2室102bに区画される。第1室102aには、複数の粒子40がサポート160に堆積されて収容される。サポート160とシリンダチューブ110の内周面との間の隙間は、粒子40の直径よりも小さく設定される。これにより、粒子40がサポート160の下方に落下して通路130a、130bを閉塞することが防止され、ショックアブソーバ200の動作に悪影響を与えることが防止される。ショックアブソーバ200では、このようにして、ロッド側室102(第1室102a)に複数の粒子40が収容される。
【0047】
粒子40は、第1実施形態と同様に、弾性体で形成され、ピストンロッド120を伸び側のストローク端付近で減速させるためのものである。図3に示す状態からピストンロッド120が上方に移動してショックアブソーバ200が伸長すると、ストローク端付近では複数の粒子40がサポート160によりシリンダヘッド150との間で圧縮される。この際、ピストンロッド120には、減衰バルブ136による減衰力に加えて、複数の粒子40からの弾性力、複数の粒子40同士の間で生じる摩擦力、及び複数の粒子40とシリンダチューブ110との間で生じる摩擦力が、減衰力として下方に向けて作用する。ピストンロッド120がストローク端に近づくにつれて、複数の粒子40がより圧縮されて弾性力が大きくなるため、ピストンロッド120に作用する減衰力が大きくなる。これにより、ピストンロッド120が伸び側のストローク端付近で減速されるクッション作用が発揮され、ピストンロッド120が伸び側のストローク端に達する際の衝撃が緩和される。なお、本実施形態では、特許請求の範囲に記載の「ピストンロッドに固定された部材」とは、サポート160のことである。
【0048】
このように、本実施形態のショックアブソーバ200では、第1実施形態の油圧シリンダ100と同様に、複数の粒子40をロッド側室102に収容することのみで、ピストンロッド120を伸び側のストローク端付近で減速させるクッション作用を発揮させることができる。そのため、ピストンロッド120に中空部やオリフィス等を形成する必要がなく、簡易な構造でクッション作用を発揮させることができる。
【0049】
さらに、本実施形態のショックアブソーバ200では、第1実施形態の油圧シリンダ100と同様に、ピストンロッド120に中空部を形成する必要がないため、中空部を形成する場合と比較してピストンロッド120の強度が高くなり、ピストンロッド120を小径化することができる。また、ロッド側室102に収容される粒子40の量を調整することにより、クッション作用の程度を容易に調整することができ、クッション性が悪化しても、粒子40の追加や交換をすることによりクッション性を容易に向上させることができる。
【0050】
以上の第2実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0051】
ショックアブソーバ200では、複数の粒子40をロッド側室102に収容することのみで、ピストンロッド120を伸び側のストローク端付近で減速させるクッション作用を発揮させることができる。そのため、ピストンロッド120に中空部やオリフィス等を形成する必要がなく、簡易な構造でクッション作用を発揮させることができる。
【0052】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、以下の変形例と上記実施形態の構成とを組み合わせることも可能である。
【0053】
<変形例>
上記第1実施形態では、ピストンロッド20を伸び側のストローク端付近で減速させるための複数の粒子40が、ロッド側室2に収容される。これに代えて、ピストンロッド20を縮み側のストローク端付近で減速させるために、ボトム側室3に複数の粒子40が収容されてもよい。この構成では、ボトム側室3に収容される複数の粒子40が給排ポート13aから排出されないように、シリンダボトム13における給排ポート13aの開口を覆うフィルターが設けられる。フィルターは、ボトム側室3に給排される作動油を透過するとともに、複数の粒子40が給排ポート13aから排出されないように遮断する。この構成であっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0054】
また、複数の粒子40は、ロッド側室2に収容されるとともに、ボトム側室3に収容されてもよい。つまり、油圧シリンダ100では、ロッド側室2及びボトム側室3の少なくとも一方にピストンロッド20をストローク端付近で減速させるための複数の粒子40が収容されればよい。
【0055】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0056】
流体圧機器(油圧シリンダ100、ショックアブソーバ200)は、シリンダチューブ10,110と、シリンダチューブ10,110に進退自在に挿入されるピストンロッド20,120と、ピストンロッド20,120に連結されシリンダチューブ10,110内をロッド側室2,102とボトム側室3,103とに区画するピストン30,130と、を備え、ロッド側室2,102及びボトム側室3,103の少なくとも一方には、ピストンロッド20,120をストローク端付近で減速させるための複数の粒子40が収容され、複数の粒子40は、弾性体で形成され、ピストンロッド20,120に固定された部材(ピストン30,サポート160)により圧縮されることでピストンロッド20,120を減速させる。
【0057】
この構成では、ピストンロッド20,120は、ロッド側室2,102及びボトム側室3,103の少なくとも一方に収容される複数の粒子40が圧縮されることにより、ストローク端付近で減速される。言い換えれば、複数の粒子40をロッド側室2,102及びボトム側室3,103の少なくとも一方に収容することのみで、ピストンロッド20,120をストローク端付近で減速させるクッション作用を発揮させることができる。そのため、ピストンロッド20,120に中空部やオリフィス等を形成する必要がない。よって、簡易な構造でクッション作用を発揮させることができる。
【0058】
また、流体圧機器(油圧シリンダ100、ショックアブソーバ200)では、複数の粒子40は、ロッド側室2,102に収容され、流体圧機器(油圧シリンダ100、ショックアブソーバ200)が伸長する際にピストンロッド20,120をストローク端付近で減速させる。
【0059】
この構成では、伸長する際にピストン30,130をストローク端付近で減速させる流体圧機器(油圧シリンダ100、ショックアブソーバ200)において、簡易な構造でクッション作用を発揮させることができる。
【0060】
また、流体圧機器は、単動型の流体圧シリンダ(油圧シリンダ100)である。
【0061】
この構成では、単動型の流体圧シリンダ(油圧シリンダ100)において、簡易な構造でクッション作用を発揮させることができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0063】
2,102…ロッド側室、3,103…ボトム側室、10,110…シリンダチューブ、20,120…ピストンロッド、30…ピストン、40…複数の粒子、100…油圧シリンダ(流体圧機器)、200…ショックアブソーバ(流体圧機器)
図1
図2
図3
図4
図5