(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139849
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】駐車支援装置及び駐車支援方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/06 20060101AFI20241003BHJP
B60W 50/08 20200101ALI20241003BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B60W30/06
B60W50/08
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050770
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鹿谷 真依子
(72)【発明者】
【氏名】西村 洋文
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA22
3D241BA60
3D241BB03
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CE01
3D241CE02
3D241CE05
3D241CE08
3D241DB01Z
3D241DD12Z
5H181AA01
5H181BB05
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC14
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL02
5H181LL09
5H181LL17
(57)【要約】
【課題】本開示は、記憶経路に基づく幅寄せ駐車の精度を向上させることができる駐車支援装置及び駐車支援方法を提供する。
【解決手段】本開示に係る駐車支援装置は、ユーザによる教師走行に基づいて、車両の自動走行を行う駐車支援装置であって、記憶制御部と、補正部と、車両制御部と、を備える。記憶部は、教師走行における走行経路に関する情報を記憶装置に記憶させる。補正部は、走行経路上における自動走行の開始位置と前記車両が駐車可能な駐車領域を区画する構造物との相対的位置関係に応じて、自動走行の目的位置の車幅方向の位置が構造物に近付き、かつ、目的位置までの経路において、当該経路の曲率が閾値を下回る状態が長く保たれるように走行経路を補正する。車両制御部は、補正された走行経路に基づき、車両の制御を実行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによる教師走行に基づいて、車両の自動走行を行う駐車支援装置であって、
前記教師走行における走行経路に関する情報を記憶装置に記憶させる記憶制御部と、
前記走行経路上における前記自動走行の開始位置と前記車両が駐車可能な駐車領域を区画する構造物との相対的位置関係に応じて、前記自動走行の目的位置の車幅方向の位置が前記構造物に近付き、かつ、前記目的位置までの経路において、当該経路の曲率が閾値を下回る状態が長く保たれるように前記走行経路を補正する補正部と、
補正された前記走行経路に基づき、前記車両の制御を実行する車両制御部と、
を備える駐車支援装置。
【請求項2】
前記車両が駐車可能な駐車領域を区画する構造物を検知する検知部を更に備え、
前記補正部は、検知された構造物の位置に応じて、前記走行経路が、全体として前記構造物に近付き、かつ、前記目的位置までの経路において、当該経路の曲率が閾値を下回る状態が長く保たれるように、前記走行経路を補正する、
請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項3】
前記補正部は、ユーザから前記車両を前記構造物に寄せて駐車する旨の指示があった場合に、前記走行経路を補正し、
前記車両制御部は、ユーザから前記車両を前記構造物に寄せて駐車する旨の指示がなかった場合に、記憶された前記走行経路に基づき、前記車両の制御を実行する、
請求項1又は2に記載の駐車支援装置。
【請求項4】
前記自動走行開始前に、ユーザに対して前記車両を前記構造物に寄せて駐車するか否かの指示を受け付けるための受付画面を表示装置に表示させる表示制御部と、
前記受付画面を介してユーザから前記車両を前記構造物に寄せて駐車するか否かの指示を受け付ける受付部とを更に備える、
請求項3に記載の駐車支援装置。
【請求項5】
前記補正部は、所定距離分、前記走行経路を構造物から離すように、前記走行経路を補正する、
請求項1又は2に記載の駐車支援装置。
【請求項6】
ユーザによる教師走行に基づいて、車両の自動走行を行う駐車支援方法であって、
前記教師走行における走行経路に関する情報を記憶装置に記憶させる記憶制御ステップと、
前記走行経路上における前記自動走行の開始位置と前記車両が駐車可能な駐車領域を区画する構造物との相対的位置関係に応じて、前記自動走行の目的位置の車幅方向の位置が前記構造物に近付き、かつ、前記目的位置までの経路において、当該経路の曲率が閾値を下回る状態が長く保たれるように前記走行経路を補正する補正ステップと、
補正された前記走行経路に基づき、前記車両の制御を実行する車両制御ステップと、
を含む駐車支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駐車支援装置及び駐車支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の駐車の際に自動運転により車両を移動させる駐車支援の技術が知られている。このような駐車支援技術の1つとして、自動車の運転者が、頻繁に駐車する駐車スペース、例えば自宅の車庫等に車両を駐車する際、運転者が車両を所定の初期停止位置に停止させると、初期停止位置から駐車位置までの駐車走行を自動で支援する技術が知られている。
【0003】
また、駐車スペース内において、安全性を確保した上で、記憶経路を基に当該駐車スペースを区画する壁間近に寄せて駐車を行ったり(以下、「幅寄せ駐車」ともいう)、人が車両に乗降できるように、当該駐車場内の略中心位置に駐車を行ったりする技術も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、例えば、幅寄せ駐車を行う際、壁までの距離が短過ぎるために壁との接触を避けて車両の制御を行うこととすると、運転者が所望する位置まで幅寄せして駐車することができない可能性があった。
【0006】
本開示は上記の課題に鑑みてなされたものであり、記憶経路に基づく幅寄せ駐車の精度を向上させた駐車支援装置及び駐車支援方法を提供することをその主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る駐車支援装置は、ユーザによる教師走行に基づいて、車両の自動走行を行う駐車支援装置であって、記憶制御部と、補正部と、車両制御部と、を備える。記憶部は、教師走行における走行経路に関する情報を記憶装置に記憶させる。補正部は、走行経路上における自動走行の開始位置と前記車両が駐車可能な駐車領域を区画する構造物との相対的位置関係に応じて、自動走行の目的位置の車幅方向の位置が構造物に近付き、かつ、目的位置までの経路において、当該経路の曲率が閾値を下回る状態が長く保たれるように走行経路を補正する。車両制御部は、補正された走行経路に基づき、車両の制御を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本開示における駐車支援装置によれば、記憶経路に基づく幅寄せ駐車の精度を向上させることができる。
【0009】
以下、本開示の好ましい実施形態例を、添付の図面を参照して、詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る駐車支援システムのネットワーク構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る駐車支援装置が備える機能の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る教師経路の一例を説明する図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る制御経路の一例を説明する図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る制御経路を単純に壁側に移動させた経路の一例を説明する図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る補正経路の一例を説明する図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る幅寄せ指示画面の一例を説明する図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る駐車支援システムが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態の駐車支援装置を備える駐車支援システムの利用シーンとしては、自宅の駐車場に車両を駐車する場合であって、ユーザが車両を降車した後に車両が自動で駐車を実行するシーンを例示する。なお、本実施形態では、ユーザが車両を降車した後に車両が自動で駐車を実行する例について説明するが、車両は、ユーザが乗車したままの状態で自動駐車を実行しても良い。
【0012】
当該シーンにおいては、ユーザは駐車場内の所定の位置で降車した後、ユーザの通信端末を介して、車両に自動駐車の実行を指示する。ユーザは指示が完了すると家に入り、車両は駐車位置へ向けて自動駐車を実行する。なお、ユーザは、IVI(in-vehicle infotainment)システム等を介して、車両に自動駐車の実行を指示しても良い。
【0013】
(駐車支援システムの構成)
まず、駐車支援システムの構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、第1の実施形態に係る駐車支援システム1のネットワークN構成の一例を示す図である。
【0014】
図1に示すように、第1の実施形態に係る駐車支援システム1は、車両100、通信端末200を有する。車両100と通信端末200とは、ネットワークNにより相互に接続される。ネットワークNは、インターネット等の公衆ネットワーク、携帯電話網の無線ネットワーク、VPN(Virtual Private Network)等の専用ネットワーク、LAN(Local Area Network)等のネットワークを含む。
【0015】
(車両の構成)
次に、車両100の構成について説明する。車両100は、車体と、車体に所定方向に沿って配置された2対の車輪とを備える。2対の車輪は、1対のフロントタイヤ及び1対のリアタイヤを備える。なお、
図1では、車両100は、4つの車輪を備えるが、車輪の数はこれに限定されるものではない。例えば、車両100は二輪車であっても良い。
【0016】
車体は、車輪に結合され、車輪によって移動可能である。この場合、2対の車輪が配置される所定方向が車両100の走行方向(移動方向)となる。車両100は、ギアの切り替え等により前進又は後退することができる。また、車両100は、操舵により右左折することもできる。
【0017】
車体の所定の端部には、超音波等の音波の送受波を行う送受波部110(
図2参照)が配置される。例えば、フロントバンパーには1つ以上の送受波部110が配置され、リアバンパーには1つ以上の送受波部110が配置される。以下、フロントバンパーに配置された送受波部110とリアバンパーに配置された送受波部110を特に限定しない場合には、単に送受波部110という。
【0018】
また、車両100は、撮像装置120、操舵アクチュエータ130、エンジンアクチュエータ140、ブレーキアクチュエータ150、駐車支援装置160(
図2参照)を備える。
【0019】
送受波部110は、一例として、測距センサである。測距センサは、一例として、超音波ソナーである。例えば、超音波ソナーは、車両100が駐車場内を走行している場合に、超音波を照射し、反射されて検出された反射波に基づいて、車両100と後述する壁との距離を検出する。なお、超音波ソナーは、車両100の周囲に存在する障害物までの距離を検出しても良い。
【0020】
超音波ソナーは、物体までの距離に基づいて物体の輪郭点を算出し、輪郭点に基づき、物体の特徴点を検出する。なお、測距センサは、超音波センサに限らず、例えば、ミリ波レーダ又はLiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)であっても良い。
【0021】
撮像装置120は、一例として、可視光カメラである。例えば、車両100は、車両100の前方を撮像する第1の撮像装置、車両100の後方を撮像する第2の撮像装置、車両100の左側方を撮像する第3の撮像装置、及び車両100の右側方を撮像する第4の撮像装置を備える。以下、第1の撮像装置、第2の撮像装置、第3の撮像装置、及び第4の撮像装置を特に区別しない場合には単に撮像装置120という。
【0022】
また、詳細は後述するが、撮像装置120は、例えば、車両100の周囲に存在する物体の特徴点を検出し、車両100と特徴点との位置関係から、車両100の現在位置を推定する用途に適用される。撮像装置120は、撮像した画像信号を駐車支援装置160に出力する。
【0023】
なお、撮像装置120は、可視光カメラに限らず、例えば、CCDカメラ又はCMOSカメラであっても良い。また、撮像する画像は、静止画であっても動画であっても良い。また、撮像装置120は、車両100に内蔵されたカメラであっても良いし、車両100に後付けされたドライブレコーダのカメラ等であっても良い。
【0024】
なお、車両100の現在位置を推定するためのセンサとして、撮像装置120に代えて、測距センサとしての超音波センサ、LiDAR、又は、レーダ等が用いられても良い。
【0025】
操舵アクチュエータ130は、後述する駐車支援装置160の出力に基づき、車両100の操舵角を調節する。駐車支援装置160は、操舵アクチュエータ130に目標操舵角を送信することで操舵角を制御する。
【0026】
駐車支援装置160は、操舵アクチュエータ130を制御することで車両100の走行時の旋回曲率を制御する。エンジンアクチュエータ140は、駐車支援装置160の出力に基づき、エンジンに対する燃料及び空気の供給量を調節する。ブレーキアクチュエータ150は、駐車支援装置160の出力に基づき、車輪の制動力を調節する。
【0027】
車両100には、駐車支援装置160が搭載される。駐車支援装置160は、車両に搭載可能な情報処理装置である。駐車支援装置160は、例えば、車両100の内部に設けられたECU(Electronic Control Unit)、もしくはOBU(On Board Unit)である。あるいは、駐車支援装置160は、車両100のダッシュボード付近に設置された外付けの装置であっても良い。なお、駐車支援装置160はカーナビゲーション装置等を兼ねても良い。
【0028】
図2は、第1の実施形態に係る車両100が備える駐車支援装置160が備える機能を示すブロック図である。
図2に示すように、第1の実施形態の駐車支援装置160は記憶制御部161、検知部162、経路生成部163、補正部164、抽出部165、位置推定部166、車両制御部167、表示制御部168及び通信部169を機能部として備える。
【0029】
記憶制御部161は、車両100の運転者により車両100を駐車開始位置から駐車スペースに駐車した際に得られた走行情報を記憶装置に記憶させる。より具体的には、記憶制御部161は、車両100を駐車開始位置から駐車スペースに駐車した際に得られた走行情報を車両100が備えるHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶装置(図示しない)に記憶させる。
【0030】
なお、運転者が手動運転によって駐車開始位置から駐車スペースまで車両100を移動させる走行を教師走行とも称する。また教師走行時の走行情報を教師データとも称する。教師データは、教師走行時の駐車スペースの目標駐車位置、教師走行時の速度、教師走行時の操舵角、教師走行時の制動動作、教師走行時の走行経路(以下、教師経路とも称する)に関する情報、教師走行中に撮像された駐車スペースの周辺画像から抽出された特徴点情報を含む。教師経路は、記憶経路の一例である。
【0031】
ここで、教師走行時の走行経路に関する情報には、経路上の位置座標、経路長、最小旋回半径、切り返し位置、壁までの距離等の情報が含まれる。なお、教師走行は後進に限定されず、前進、もしくは前進と後退の両方を含むものであっても良い。
【0032】
なお、運転者が車両を後進させて車庫(駐車スペース)に入庫させた教師経路を、車庫から経路を逆にたどることにより、出庫時の教師経路として用いることもできる。
【0033】
図3は、教師経路の一例を説明する図である。
図3に示す教師経路MPは、運転者が駐車開始位置SPから駐車スペースPA内の駐車終了位置EPまで車両100を移動させた走行経路を表している。また、車両100の記憶装置には、教師経路MPに関する情報として、教師経路MP上の特定の特徴点から壁Wまでの距離L1の情報が記憶される。
【0034】
図2に戻り、説明を続ける。検知部162は、自動駐車処理に関する各種情報を検知する。例えば、検知部162は、送受波部110から取得した情報に基づいて、駐車開始位置における車両100と壁との距離を検出する。ここで、本明細書において、壁とは、車庫等の駐車スペースを区画する構造物のことをいうものとする。なお、壁は、ガイド、ポール、柵等であっても良い。
【0035】
なお、検知部162は、送受波部110及び撮像装置120から取得した情報に基づいて、駐車開始位置における車両100の各部の位置や車両100の姿勢を表す情報等を検出しても良い。また、検知部162は、送受波部110及び撮像装置120から取得した情報に基づいて、車両100の周辺に存在する障害物等を検出しても良い。
【0036】
経路生成部163は、教師経路に基づいて、実際の車両100の自動駐車の制御に用いる制御経路を生成する。例えば、経路生成部163は、ユーザから自動駐車の実行指示を受け付けた場合に、教師経路を変形して制御経路を生成する。
【0037】
一例として、経路生成部163は、検知部162の検出結果から推定される車両100と壁との距離や走行経路上の1又は複数の特徴点における車両100と壁との距離や車両100の各部の位置や姿勢等が、教師走行時における教師経路上の1又は複数の特徴点における車両100と壁との距離や車両100の各部の位置や姿勢等と一致するように、制御経路を生成する。
【0038】
なお、経路生成部163は、正確に教師走行時の駐車終了位置EPに駐車できるように、車両100の姿勢を調整するような経路を制御経路として生成しても良い。また、経路生成部163は、検知部162による車両100と壁との距離及び車両100の各部の位置や姿勢の検出結果に基づいて、リアルタイムで教師経路を変形して制御経路を生成しても良い。
【0039】
図4は、制御経路の一例を説明する図である。
図4に示す制御経路UPは、教師経路MPに基づいて生成された経路である。
図4の例では、駐車開始位置SP及び駐車終了位置EPは、
図3に示した教師経路MPの駐車開始位置SP及び駐車終了位置EPと同じ位置である。なお、駐車開始位置SPは、教師経路MPの駐車開始位置SPと同じ位置でなくても良い。
【0040】
具体的には、制御経路UPは、検知された駐車開始位置における車両100と壁Wとの距離及び車両100の各部の位置や姿勢に基づいて、経路上の1又は複数の特徴点において推定される車両100と壁Wとの距離及び車両100の各部の位置や姿勢が、当該特徴点における教師走行時の車両100と壁Wとの距離及び車両100の各部の位置や姿勢と一致するように教師経路MPを変形した経路である。
【0041】
ところで、実際の自動駐車シーンでは、狭い駐車スペースを有効に活用するため、ユーザが幅寄せ駐車を希望するような場面があると考えられる。この場合、単純に経路生成部163が生成した制御経路を壁側に移動させれば良いとも考えられる。
図5は、
図4の制御経路を単純に壁W側に移動させた経路の一例を示す図である。
図5には、制御経路UPを移動させた経路である制御経路UP1を示している。
【0042】
例えば、
図4の例で、ユーザが距離d分だけ壁W側に寄せて車両100を駐車させたいと考えたものとする。制御経路UP1は、このような場合に距離d分壁W側に寄せて車両100を駐車させるため、
図4の制御経路UP全体を距離d分だけ壁W側に移動させた経路である。
【0043】
図5に示すように、制御経路UP1を用いて車両100の自動駐車制御を行うと、車両100と壁Wとが接触する可能性がある。このような接触を避けるため、本実施形態では、補正部164が教師経路を基に壁Wとの接触を回避可能な経路を生成することとしている。
【0044】
図2に戻り、説明を続ける。補正部164は、教師経路を補正した補正経路を生成する。例えば、補正部164は、ユーザから幅寄せ駐車の指示を受け付けた場合に、教師経路を基に生成された制御経路を補正する。なお、補正部164は、検知部162で検出された車両100と壁との距離を考慮して、制御経路を補正しても良い。
【0045】
一例として、補正部164は、駐車終了位置が壁に近付き、かつ、壁際における駐車終了位置に至るまでの直線の経路の距離が長くなるように制御経路を補正して補正経路を生成する。なお、この場合の直線には曲率が所定の閾値を下回る(曲率が無視できるほど小さい)曲線も含まれるものとする。
【0046】
このように、直線経路を長く保つことで、後述のフィードバック制御を行う場合でも、車両100が左右に振れることが少なくなり、壁に車両100が衝突してしまう可能性を低減させることができる。
【0047】
また、補正部164は、補正経路を生成する際、車両100の制御時に発生し得る制御誤差を考慮して補正経路を生成する。例えば、制御誤差が5cmである場合、補正部164は、経路から±5cmずれたとしても車両100が壁に接触しないように補正経路を生成する。これにより、制御に誤差が生じたとしても、車両100が壁に衝突しないようにすることができる。
【0048】
なお、補正部164は、教師経路そのものを補正して上記のような補正経路を生成しても良い。また、補正部164は、検知部162による車両100と壁との距離及び車両100の各部の位置や姿勢の検出結果に基づいて、リアルタイムで教師経路を変形して上記のような補正経路を生成しても良い。
【0049】
図6は、補正経路の一例を説明する図である。
図6に示す補正経路CPの駐車開始位置SPは、
図3の教師経路MPの駐車開始位置SPと同じ位置である。なお、駐車開始位置SPは、教師経路MPと同じ位置でなくても良い。また、補正経路CPの駐車終了位置EP1は、
図3の教師経路MPの駐車開始位置EPよりも車幅方向に壁W側に寄せた位置である。駐車終了位置EP1の位置は、補正部164により制御誤差を考慮して定められている。
【0050】
また、補正経路CPでは、
図3の教師経路MPを基に生成された
図4の制御経路UPと比較して、壁W際における駐車終了位置EP1の手前から駐車終了位置EP1に至るまでの直線経路TPが長く保たれている。
【0051】
また、補正経路CP上の特定の特徴点から壁Wまでの距離L2は、当該特徴点に対応する教師経路MP上の特徴点から壁Wまでの距離L1(
図3参照)よりも小さくなっている。なお、図示しない経路上の他の特徴点についても、同様に、当該他の特徴点に対応する教師経路MP上の特徴点から壁Wまでの距離よりも、当該他の特徴点から壁Wまでの距離が小さくなっているものとする。
【0052】
つまり、
図6の補正経路CPは、経路全体として制御経路UPよりも壁Wに近く、かつ、壁W際における駐車終了位置EP1の手前から駐車終了位置EP1に至るまでの直線経路TPが長く保たれた経路である。
【0053】
図2に戻り、説明を続ける。抽出部165は、撮像装置120が撮像した周辺画像から特徴点を抽出する。抽出部165による特徴点の抽出の手法は特に限定されるものではなく、公知の手法を適用して良い。例えば、抽出部165は、FAST(Features from Accelerated Segment Test)又はORB (Oriented FAST and Rotated BRIEF)等の手法により特徴点を抽出する。
【0054】
位置推定部166は、抽出部165によって抽出された特徴点と、記憶制御部161が記憶装置に記憶させた教師データに記憶されている特徴点とを受信する。位置推定部166は、パターンマッチングや特徴量探索等を用いて、撮像装置120が撮像した撮像画像から抽出された特徴点と、教師データに記憶されている特徴点とを照合する。
【0055】
そして、位置推定部166は、撮像画像から抽出された特徴点で、かつ教師データに記憶されている特徴点と照合することができた特徴点のうち数個の特徴点をランダムに選択して、これらの数個の特徴点のカメラ画像内における位置と、当該数個の特徴点の実空間における三次元位置と、に基づいて、車両100の現在位置を推定する。
【0056】
車両制御部167は、エンジンアクチュエータ140、ブレーキアクチュエータ150、操舵アクチュエータ130を制御する。つまり、車両制御部167は、車両100の操舵、制動、及び加減速を制御することにより、車両100を制御することができる。さらに、車両制御部167は、通信端末200からの指示に基づき、経路生成部163が生成した制御経路又は補正部164が生成した補正経路を用いて自動走行(記憶型自動駐車)を実行する。
【0057】
一例として、車両制御部167は、通信部169を介して通信端末200から駐車指示を受信した場合、教師経路を基に生成された制御経路に基づき、駐車開始位置から駐車スペースに車両100が移動するように制御する。なお、車両制御部167は、駐車開始位置から駐車スペースに車両100が移動したことが完了した通知である入庫完了情報を後述の通信部169を介して、通信端末200に送信しても良い。
【0058】
また、車両制御部167は、駐車指示の受信後に通信部169を介して通信端末200から幅寄せ指示を受信した場合、制御経路が補正された補正経路に基づき、駐車開始位置から駐車スペースに車両100が移動するように制御する。
【0059】
上述の通り、本実施形態において、記憶型自動駐車は、駐車開始位置から駐車スペースへの車両の入庫、又は、駐車スペースから駐車開始位置への車両の出庫に適用される。
【0060】
なお、車両制御部167は、車両100が制御経路又は補正経路から外れた場合に、フィードバック制御により、車両100を制御経路又は補正経路に戻すように移動させても良い。この場合、例えば、車両制御部167は、位置推定部166によって推定された車両100の現在位置に基づいて、車両100の位置と、制御経路又は補正経路との差異を推定し、当該差異を小さくするように車両100を走行させる。
【0061】
フィードバック制御を行う理由としては、例えば、記憶型自動駐車を開始した際の車両100の位置が、教師経路の初期位置と一致しない場合があるためである。フィードバック制御を行うと、最終的な駐車位置が正確になるメリットがある反面、車両100が自動走行中に左右に振れやすくなる。本実施形態では、補正部164で生成された補正経路における壁際における駐車終了位置に至るまでの直線の経路の距離が長く保たれるため、フィードバック制御を行っても、車両100が壁に衝突してしまう可能性を低減できる。
【0062】
なお、車両制御部167は、駐車制御中に、送受波部110、撮像装置120、又はその他の車載センサ等により障害物を検出した際には、検出した障害物を回避するための回避経路を含むように走行経路を修正しても良い。
【0063】
表示制御部168は、各種情報を表示装置に表示させる。例えば、表示制御部168は、後述の通信部169と協働し、ユーザから駐車指示を受け付けるための画面を通信端末200のディスプレイに表示させる。
【0064】
また、例えば、表示制御部168は、ユーザから駐車指示を受け付けた場合に、ユーザから幅寄せ指示を受け付けるための画面を通信端末200のディスプレイに表示させる。
図7は、幅寄せ指示受付画面RSの一例を説明する図である、
図7の幅寄せ指示受付画面RSは、画面構成として、メッセージMG、第1ボタンYB、第2ボタンNBを備えている。
【0065】
メッセージMGは、ユーザに幅寄せ駐車するか否かを問うメッセージである。
図7の例では、「幅寄せしますか?」という文字列がメッセージMGとして幅寄せ指示受付画面RSに表示されている。
【0066】
第1ボタンYBは、ユーザから幅寄せ指示を受け付けるためのボタンである。ユーザが第1ボタンYBを押下した場合、通信端末200から駐車支援装置160に幅寄せ指示が送信される。この場合、車両制御部167は、補正経路を用いて自動駐車処理を行う。
【0067】
第2ボタンNBは、ユーザから幅寄せしない旨の指示を受け付けるためのボタンである。ユーザが第2ボタンNBを押下した場合、通信端末200から駐車支援装置160に幅寄せ駐車を行わない旨の情報が送信される。この場合、車両制御部167は、制御経路を用いて自動駐車を行う。
【0068】
また、表示制御部168は、送受波部110、撮像装置120、又はその他の車載センサ等により障害物が検出され、かつ、車両制御部167が回避経路を生成できなかった場合、ユーザに障害物を除去するよう促すメッセージを通信端末200のディスプレイに表示させても良い。
【0069】
なお、表示制御部168は、各種情報を車両100に搭載されるカーナビゲーション装置のディスプレイ等に表示させても良い。
【0070】
図2に戻り、説明を続ける。通信部169は、駐車支援装置160の通信インタフェース(図示しない)を制御し、通信端末200と通信する。例えば、通信部169は、通信端末200から自動駐車を実行する指示や幅寄せ指示を受信する。また、例えば、通信部169は、自動駐車を実行中に車両100が停車したこと又は車両100の近傍に障害物が存在することを示す情報を通信端末200に送信しても良い。
【0071】
(通信端末の構成)
通信端末200は、ユーザが使用する通信端末である。通信端末200としては、例えば、スマートフォンやタブレット端末等が挙げられる。通信端末200は、ネットワークNを介して、車両100と通信している。
【0072】
また、通信端末200は、車両100に関する自動駐車のシステムを表示する。ユーザは通信端末200を操作することで、車両100を降車した後においても、車両100を遠隔操作することが可能である。つまり、ユーザは通信端末200を操作することで、車両100の外から自動駐車の実行を指示することができる。
【0073】
(駐車支援装置の処理)
次に、本実施形態に係る駐車支援装置160が実行する処理について説明する。
図8は、本実施形態に係る駐車支援装置160が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0074】
まず、車両制御部167は、自動駐車の実行指示を受付ける(ステップS101)。例えば、車両制御部167は、ユーザから通信端末200を介し、自動駐車の実行指示を受付ける。
【0075】
次いで、経路生成部163は、教師経路に基づいて、制御経路を生成する(ステップS102)。例えば、経路生成部163は、検知部162で検知された車両100と壁との距離及び車両100の各部の位置や姿勢等に基づいて、教師経路を変形して制御経路を生成する。
【0076】
次いで、車両制御部167は、ユーザから幅寄せ指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS103)。例えば、車両制御部167は、ユーザから通信端末200を介し、幅寄せ指示を受付けたか否かを判定する。
【0077】
ユーザから幅寄せ指示を受け付けた場合(ステップS103:Yes)、検知部162は、車両100から壁までの距離を検知する(ステップS104)。例えば、検知部162は、送受波部110又は撮像装置120等の検知結果から、車両100から壁までの距離を検出する。
【0078】
なお、ステップS104の処理において、検知部162は、車両100の各部の位置や姿勢等を検出しても良い。また、検知部162は、ステップS104の処理を自動駐車処理が実行されている間、継続的に実施しても良い。この場合、ステップS102の処理よりも前にステップS104の処理が行われても良い。
【0079】
次いで、補正部164は、制御経路を補正した補正経路を生成する(ステップS105)。例えば、補正部164は、駐車終了位置が壁に近付き、かつ、壁際における駐車終了位置に至るまでの直線の経路の距離が長くなるように制御経路を補正して補正経路を生成する。
【0080】
次いで、車両制御部167は、補正経路を用いて自動駐車制御を開始する(ステップS106)。具体的には、車両制御部167は、ステップS105で生成された補正経路に基づき、駐車開始位置となる車両100の現在位置から駐車スペースに車両100が移動するように車両100の制御を開始する。
【0081】
次いで、車両制御部167は、車両100を制御して、駐車スペースへ車両100を移動させる(ステップS108)。
【0082】
例えば、車両制御部167は、補正経路又は制御経路に従い、車両100を駐車スペースへと移動させながら、検知部162による車両100と壁との距離及び車両100の各部の位置や姿勢の検知結果に基づいて、車両100が制御経路又は補正経路から外れたか否かを判定する。車両制御部167は、車両100が制御経路又は補正経路から外れた場合、フィードバック制御により、車両100を制御経路又は補正経路に戻すように移動させる制御を行う。
【0083】
次いで、車両制御部167は、車両100の駐車が完了したかどうかを判定する(ステップS109)。具体的には、車両制御部167は、送受波部110のセンサデータ又は撮像装置120により撮像された撮像画像に基づいて、駐車スペースに車両100が駐車したか否かを判断する。
【0084】
車両100の駐車が完了した場合(ステップS109:Yes)、車両制御部167は本処理を終了する。一方、車両100の駐車が完了していない場合(ステップS109:No)、自動駐車制御を続行し、ステップS108の処理に戻る。
【0085】
ステップS103でユーザから幅寄せ指示を受け付けなかった場合(ステップS103:No)、車両制御部167は、制御経路を用いて自動駐車制御を開始する(ステップS107)。具体的には、車両制御部167は、ステップS102で生成された制御経路に基づき、駐車開始位置となる車両100の現在位置から駐車スペースに車両100が移動するように車両100の制御を開始する。ステップS108以降の処理は上記と同様のため、説明は省略する。
【0086】
(駐車支援装置の効果)
次に、本実施形態に係る駐車支援装置160の効果について説明する。本実施形態に係る駐車支援装置160は、ユーザによる教師走行に基づく教師経路を、当該教師経路上における自動走行の開始位置と車両100が駐車可能な駐車領域を区画する壁との相対的位置関係に応じて、車両100の駐車終了位置の車幅方向の位置が壁に近付き、かつ、駐車終了位置までの経路において、当該経路の曲率が閾値を下回る状態が長く保たれるように補正する。
【0087】
これにより、駐車支援装置160は、車両100に教師経路に基づいた幅寄せ駐車を行わせることができる。また、壁際における駐車終了位置の手前から駐車終了位置に至るまでの略直線の経路を長く保つことにより、フィードバック制御を行った場合でも、車両100が壁に衝突してしまう可能性を低減することができる。つまり、本実施形態に係る駐車支援装置160によれば、記憶経路に基づく幅寄せ駐車の精度を向上させることができる。
【0088】
また、本実施形態に係る駐車支援装置160は、車両100と壁との距離を検出し、検出された当該距離に応じて、教師経路を補正する。これにより、実際の車両100と壁との距離を考慮して教師経路を補正することができ、車両100が壁に衝突する可能性をより低減した上で幅寄せ駐車を行うことができる。
【0089】
また、本実施形態に係る駐車支援装置160は、制御誤差を考慮して補正経路を生成する。これにより、本実施形態に係る駐車支援装置160は、車両100を幅寄せ駐車させる制御中に、制御誤差が生じたような場合でも、車両100が壁と衝突してしまう可能性を低減できる。
【0090】
また、本実施形態に係る駐車支援装置160は、ユーザから幅寄せ駐車の指示があった場合に、教師経路を補正する処理を行う。これにより、ユーザが幅寄せ駐車を希望する場合のみ、補正経路に基づいた自動駐車処理を行うことができる。
【0091】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上述した実施の形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0092】
1 駐車支援システム
100 車両
110 送受波部
120 撮像装置
130 操舵アクチュエータ
140 エンジンアクチュエータ
150 ブレーキアクチュエータ
160 駐車支援装置
161 記憶制御部
162 検知部
163 経路生成部
164 補正部
165 抽出部
166 位置推定部
167 車両制御部
168 表示制御部
169 通信部
200 通信端末
N ネットワーク