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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139852
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】プラズマ照射装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/26 20060101AFI20241003BHJP
   A61B 18/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61N 1/44 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H05H1/26
A61B18/00
A61N1/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050775
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 馨
(72)【発明者】
【氏名】中埜 吉博
(72)【発明者】
【氏名】松元 裕次
(72)【発明者】
【氏名】杉山 有美
(72)【発明者】
【氏名】安部 快彦
(72)【発明者】
【氏名】曽根 伸一郎
【テーマコード(参考)】
2G084
4C053
4C160
【Fターム(参考)】
2G084AA24
2G084BB03
2G084CC20
2G084DD15
2G084DD21
2G084DD22
2G084DD66
2G084EE12
2G084GG04
2G084GG11
4C053MM02
4C160KK04
(57)【要約】
【課題】ガス誘導路内で発生したプラズマが放出口から放出され易いプラズマ照射装置を提供する。
【解決手段】プラズマ照射装置10は、ガスを放出口51Bに誘導するガス誘導路51と、ガス誘導路51を構成する筒状の誘電体73と、ガス誘導路51内に面する第1電極71と、誘電体73の内部に設けられる第2電極72と、を有し、ガス誘導路51内でプラズマ放電を発生させる放電部70と、誘電体73の外周面に露出し、第2電極72に接続される構成である外部電極75と、第1電極71に接続されて誘電体73の外周面に露出する第1パッド71Bと、を備えている。外部電極75の全体は、第1パッド71Bよりも放出口51B側に配置される。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを放出口に誘導するガス誘導路と、
前記ガス誘導路を構成する筒状の誘電体と、前記ガス誘導路内に面する放電電極と、前記誘電体の内部に設けられる基準電極と、を有し、前記ガス誘導路内でプラズマ放電を発生させる放電部と、
前記誘電体の外周面に露出し、前記基準電極に接続される構成又は接地される構成である外部電極と、
前記放電電極に接続されて前記誘電体の外周面に露出するパッドと、
を備え、
前記外部電極の少なくとも一部は、前記パッドよりも前記放出口側に配置される、
プラズマ照射装置。
【請求項2】
前記外部電極は、接地される構成であり、
前記基準電極に接続されて前記誘電体の外周面に露出する第2パッドを備え、
前記外部電極の少なくとも一部は、前記第2パッドよりも前記放出口側に配置される、
請求項1に記載のプラズマ照射装置。
【請求項3】
前記外部電極は、前記誘電体の外周を覆うように環状に配置される、
請求項1又は請求項2に記載のプラズマ照射装置。
【請求項4】
前記外部電極は、前記誘電体において前記放出口から離れた位置に配置される、
請求項1又は請求項2に記載のプラズマ照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるプラズマ照射装置は、ガス誘導路と、沿面放電部と、を備える。沿面放電部は、放電電極が流路に面しつつ、周期的に変化する電圧が放電電極に印加されることに応じて流路内で沿面放電を発生させる。接地電極の一部は、放電電極よりも放出口側に配置される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-198238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるようなプラズマ照射装置では、放出口からより多くのプラズマを放出することを目的にしているが、より一層プラズマを放出させ易い構成が求められている。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ガス誘導路内で発生したプラズマが放出口から放出され易いプラズマ照射装置を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のプラズマ照射装置は、
ガスを放出口に誘導するガス誘導路と、
前記ガス誘導路を構成する筒状の誘電体と、前記ガス誘導路内に面する放電電極と、前記誘電体の内部に設けられる基準電極と、を有し、前記ガス誘導路内でプラズマ放電を発生させる放電部と、
前記誘電体の外周面に露出し、前記基準電極に接続される構成又は接地される構成である外部電極と、
前記放電電極に接続されて前記誘電体の外周面に露出するパッドと、
を備え、
前記外部電極の少なくとも一部は、前記パッドよりも前記放出口側に配置される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の発明は、ガス誘導路内で発生したプラズマが放出口から放出され易い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態のプラズマ照射システムの構成を概略的に示す図である。
図2】着脱部が基部から離間した状態のプラズマ照射装置の一部の側面図である。
図3】プラズマ照射装置の一部の側断面図である。
図4】着脱部が基部から離間した状態のプラズマ照射装置の一部の側断面図である。
図5】プラズマ照射システムの電気的構成を示すブロック図である。
図6】外部電極が組み付けられた放電部の下側から見た斜視図である。
図7】外部電極が組み付けられた放電部の平面図である。
図8】外部電極が組み付けられた放電部の側面図である。
図9】外部電極が組み付けられた放電部の底面図である。
図10】外部電極が組み付けられた放電部の側断面図である。
図11】第2実施形態における外部電極が組み付けられた放電部の下側から見た斜視図である。
図12】第2実施形態における外部電極が組み付けられた放電部の側断面図である。
図13】第3実施形態における外部電極が組み付けられた放電部の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。
〔1〕ガスを放出口に誘導するガス誘導路と、
前記ガス誘導路を構成する筒状の誘電体と、前記ガス誘導路内に面する放電電極と、前記誘電体の内部に設けられる基準電極と、を有し、前記ガス誘導路内でプラズマ放電を発生させる放電部と、
前記誘電体の外周面に露出し、前記基準電極に接続される構成又は接地される構成である外部電極と、
前記放電電極に接続されて前記誘電体の外周面に露出するパッドと、
を備え、
前記外部電極の少なくとも一部は、前記パッドよりも前記放出口側に配置される、
プラズマ照射装置。
【0010】
この構成によれば、誘電体の外周面に露出して基準電極に接続される構成又は接地される構成である外部電極が設けられるため、ガス誘導路内で発生したプラズマが外部電極に誘導されて放出口から放出され易くなる。特に、外部電極の少なくとも一部が、パッド(放電電極に接続されて誘電体の外周面に露出するパッド)よりも放出口側に配置される構成であるため、パッドに対して放出口とは反対側に配置される構成に比べて、放電電極と外部電極との間の放出口を介した距離が短くなる。そのため、ガス誘導路内で発生したプラズマが外部電極に誘導されて放出口からより一層放出され易くなる。
【0011】
〔2〕前記外部電極は、接地される構成であり、
前記基準電極に接続されて前記誘電体の外周面に露出する第2パッドを備え、
前記外部電極の少なくとも一部は、前記第2パッドよりも前記放出口側に配置される、
〔1〕に記載のプラズマ照射装置。
【0012】
この構成によれば、ガス誘導路内で発生したプラズマが、接地された外部電極によって誘導されて放出口から放出され易くなる。そして、外部電極の少なくとも一部が、第2パッド(基準電極に接続されて誘電体の外周面に露出するパッド)よりも放出口側に配置される構成であるため、放電電極と外部電極との間の放出口を介した距離がより一層短くなる。そのため、ガス誘導路内で発生したプラズマが外部電極に誘導されて放出口からより一層放出され易くなる。
【0013】
〔3〕前記外部電極は、前記誘電体の外周を覆うように環状に配置される、
〔1〕又は〔2〕に記載のプラズマ照射装置。
【0014】
この構成によれば、外部電極が誘電体の外周を覆うような環状ではない構成に比べて、放電電極と外部電極との間の導電パスが増加する。そのため、ガス誘導路内で発生したプラズマが外部電極に誘導されて放出口からより一層放出され易くなる。
【0015】
〔4〕前記外部電極は、前記誘電体において前記放出口から離れた位置に配置される、
〔1〕から〔3〕のいずれかに記載のプラズマ照射装置。
【0016】
この構成によれば、外部電極が誘電体において放出口に比較的近い位置に配置される構成に比べて、プラズマが外部電極に誘導され過ぎなくなり、ガス誘導路内で発生したプラズマが外部電極に短絡することがなく、効率的に放出口から照射対象物に放出される。
【0017】
<第1実施形態>
1.プラズマ照射システム100の構成
本開示の一例であるプラズマ照射システム100を図1に示す。図1のプラズマ照射システム100は、例えば、低侵襲の低エネルギーのプラズマを照射する。プラズマ照射システム100は、例えば施術対象の生体組織に対して止血などを行い得る手術用装置として構成される。プラズマ照射システム100は、プラズマ照射装置10と、制御装置20と、を備えている。制御装置20は、プラズマ照射装置10に電力を供給する。
【0018】
2.プラズマ照射装置10の構成
プラズマ照射装置10は、例えば、手術を行う術者によって把持されて使用される器具である。プラズマ照射装置10は、図2に示すように、基部11と、着脱部13と、第1コネクタ部15(図1参照)と、ケーブル17と、を有している。基部11は、把持部として機能する。着脱部13は、後述する放出口51Bが設けられ、基部11に対して着脱可能に取り付けられる。
【0019】
プラズマ照射装置10は、長手形状である。プラズマ照射装置10の長手方向(図2のX軸方向)を、前後方向と定義する。図2におけるX軸の正方向を前方と定義し、X軸の負方向を後方と定義する。また、図2において、プラズマ照射装置10の長手方向と直交する方向(図2のY軸方向)を、上下方向と定義する。図2におけるY軸の正方向を上方と定義し、Y軸の負方向を下方と定義する。また、図6において、X軸方向及びY軸方向に直交する方向であるZ軸方向を、左右方向と定義する。
【0020】
基部11は、図2に示すように、前後方向に長い形態をなしている。基部11は、第1ケース31を有する。第1ケース31は、基部11の外殻をなす。第1ケース31は、絶縁性を有し、例えば樹脂材料を用いて構成される。第1ケース31は、前後方向に長い筒状をなしている。基部11の先端には、着脱部13が着脱可能に取り付けられる。
【0021】
着脱部13は、図2に示すように、第2ケース41を有する。第2ケース41は、着脱部13の外殻をなす。第2ケース41は、絶縁性を有し、例えば樹脂材料を用いて構成される。第2ケース41は、筒状をなす。第2ケース41の前端には、後述する放出口51Bが設けられている。放出口51Bは前方に向かって開放されている。
【0022】
第1コネクタ部15は、制御装置20に接続される。ケーブル17の一端は、第1コネクタ部15に接続されている。ケーブル17の他端は、基部11に接続されている。ケーブル17は、可撓性を有する。ケーブル17は、例えば、中継配線と、中継流路と、中継配線及び中継流路の外周を一括して覆うシースと、を有する。中継配線は、後述する第1導電路55Cの一端(後端)及び第3導電路55Eの一端(後端)が接続されている。中継流路は、後述する第1流路51Dの導入口51Aに接続されている。
【0023】
プラズマ照射装置10は、図3に示すように、前端に向かってガス(例えば希ガス)を誘導するガス誘導路51と、ガス誘導路51内でプラズマを発生させる放電部70と、を有する。ガス誘導路51は、ケーブル17の中継流路を介して、後述するガス供給部25から供給されたガスを、ガス誘導路51の前端に向かって誘導する。
【0024】
ガス誘導路51は、図3に示すように、ガスを導入する導入口51Aと、ガスを放出する放出口51Bと、導入口51Aと放出口51Bとの間に設けられる流路51Cと、を有する。ガス誘導路51は、後述するガス供給部25から供給されるガスを導入口51Aから導入し、導入口51A側から導入されたガスを流路51C内の空間を通して放出口51Bに誘導する誘導路となっている。ガス誘導路51は、流動するガスを放出口51Bを介して放出する。
【0025】
放電部70は、ガス誘導路51内でプラズマ放電を発生させる。放電部70は、図3に示すように、着脱部13に設けられている。放電部70は、着脱部13における前端側に配置されている。放電部70は、第1電極71と、第2電極72と、誘電体73と、を具備している。放電部70には、外部電極75が設けられている。第1電極71は、本発明の「放電電極」に相当する。第2電極72は、本発明の「基準電極」に相当する。放電部70は、筒状をなしており、ガス誘導路51の少なくとも一部を構成している。放電部70は、着脱部13の長手方向(前後方向)に沿った長い形態をなしている。
【0026】
第1電極71及び第2電極72は、それぞれ着脱部13の長手方向(前後方向)に沿って延びる形態をなしている。第1電極71及び第2電極72は、誘電体73と一体的に設けられている。第1電極71及び第2電極72は、互いに離間して配置され、誘電体73を介在させて上下方向で互いに対向して配置される。第1電極71は、ガス誘導路51内に面している。第2電極72は、誘電体73の内部に設けられている。
【0027】
誘電体73は、筒状をなしており、ガス誘導路51の少なくとも一部を構成している。誘電体73は、基部11の長手方向(先後方向)に長い形態をなしている。誘電体73は、例えばアルミナなどのセラミック材料、ガラス材料、樹脂材料などを好適に用いることができる。誘電体73の先端は、第1電極71及び第2電極72のいずれよりも先端側に配置されている。
【0028】
放電部70は、第1電極71と第2電極72との間に電圧が印加されることに応じてガス誘導路51内でプラズマを発生させる。放電部70は、所定の電圧値の駆動電圧が印加されることでプラズマ放電を発生させる。より具体的には、放電部70は、第1電極71と第2電極72との電位差に基づく電界をガス誘導路51内で発生させて、放電(より具体的には、沿面放電)によるプラズマ(より具体的には、低温プラズマ)をガス誘導路51内で発生させるように機能する。放電部70は、第2電極72の電位を一定の基準電位(例えば、0Vのグラウンド電位)に保ちつつ、周期的に変化する電圧が第1電極71に印加されることに応じてガス誘導路51内で沿面放電させ、プラズマ(より具体的には、低温プラズマ)を発生させる。
【0029】
上述したガス誘導路51の流路51Cは、基部11に設けられる第1流路51Dと、着脱部13に設けられる第2流路51Eと、を有する。第1流路51Dは、第1ケース31の内部に配置される。第1流路51Dは、第2流路51Eよりも後述するガス供給部25側に配置される。第1流路51Dには、ガス供給部25側から供給されるガスが導入される。第1流路51Dは、ガス供給部25側から供給されたガスを、第2流路51E側に流す。第2流路51Eは、第1流路51D側から供給されたガスを放出口51B側に誘導し、放出口51Bから放出させる。なお、放電部70は、第2流路51E内でプラズマを発生させる。
【0030】
プラズマ照射装置10は、第1電極71に電気的に接続される第1配線55Aと、第2電極72に電気的に接続される第2配線55Bと、を有する。第1配線55Aと第2配線55Bとの間には、後述する電源部26に基づく電圧が印加される。第1配線55Aと第2配線55Bとの間に印加された電圧は、第1電極71と第2電極72との間に印加される。
【0031】
第1配線55Aは、基部11に設けられる第1導電路55Cと、着脱部13に設けられる第2導電路55Dと、を有する。第2配線55Bは、基部11に設けられる第3導電路55Eと、着脱部13に設けられる第4導電路55Fと、を有する。第1導電路55C及び第3導電路55Eは、第1ケース31内に配置される。第2導電路55D及び第4導電路55Fは、第2ケース41内に配置される。
【0032】
第1導電路55Cの一端(後端)及び第3導電路55Eの一端(後端)は、ケーブル17(具体的には中継配線)を介して、電源部26に電気的に接続されている。
【0033】
基部11は、第2コネクタ部57Aを有する。第2コネクタ部57Aは、第1ケース31の前端側に設けられている。着脱部13は、第3コネクタ部57Bを有する。第3コネクタ部57Bは、第2ケース41の後端に設けられている。第2コネクタ部57Aと第3コネクタ部57Bは、前後方向で互いに接続される。
【0034】
第1流路51Dの一端(前端)は、第2コネクタ部57Aに設けられている。第1流路51Dの他端(後端)には、導入口51Aが設けられている。第1導電路55Cの他端(前端)及び第3導電路55Eの他端(前端)は、第2コネクタ部57Aに設けられている。
【0035】
第2流路51Eの一端(後端)は、第3コネクタ部57Bに設けられている。第2流路51Eの他端(前端)には、放出口51Bが設けられている。第2導電路55Dの一端(後端)、及び第4導電路55Fの一端(後端)は、それぞれ第3コネクタ部57Bに設けられている。第2導電路55Dの他端(前端)は、第1電極71に電気的に接続されている。第4導電路55Fの他端(前端)は、第2電極72に電気的に接続されている。
【0036】
基部11に着脱部13が取り付けられると、第2コネクタ部57Aに第3コネクタ部57Bが接続される。第2コネクタ部57Aに第3コネクタ部57Bが接続されたときに、第1流路51Dから第2流路51Eにガスを供給可能な状態となる。また、第2コネクタ部57Aに第3コネクタ部57Bが接続されたとき、第1導電路55Cに第2導電路55Dが電気的に接続されるとともに、第3導電路55Eに第4導電路55Fが電気的に接続される。
【0037】
例えば、第1流路51Dを構成する第1管部と、第2流路51Eを構成する第2管部とが、ガス漏れを防止した状態で接続される。例えば、第1導電路55Cと第2導電路55Dは、一方に雌端子が設けられ、他方に雄端子が設けられ、雌端子と雄端子が接続されることで互いに電気的に接続される。また、第3導電路55Eと第4導電路55Fの構造も、一方に雌端子が設けられ、他方に雄端子が設けられ、雌端子と雄端子が接続されることで互いに電気的に接続される。
【0038】
基部11には、図3に示すように、トランス63と、スイッチ65と、が設けられている。トランス63及びスイッチ65は、例えば第1ケース31内に設けられる回路基板(図示略)に搭載される。トランス63は、制御装置20から出力される電圧を昇圧して放電部70側に出力する昇圧トランスとして構成される。トランス63は、1次側の第1巻線部と、2次側の第2巻線部と、を備えている。トランス63は、第1巻線部の両端に交流電圧が印加された場合に、第1巻線部の両端に印加される交流電圧を昇圧した交流電圧を第2巻線部の両端に印加するように変圧する。トランス63は、後述する電源部26に基づく入力電圧を昇圧し、昇圧した電圧を第1導電路55Cと第3導電路55Eとの間に印加する。これにより、トランス63は、第1電極71と第2電極72との間に所望の電圧を印加する。
【0039】
トランス63は、高周波電圧発生回路として機能する。トランス63は、第2電極72を基準電位に保ちつつ、第1電極71と第2電極72との間に所定周波数の交流電圧を印加する。トランス63は、高周波数(例えば、20kHz-300kHz程度)の高電圧(例えば、振幅が0.5kV-10kVの高電圧)を生成し得る回路であれば、公知の様々な回路を採用し得る。なお、トランス63が発生させる高電圧の周波数は、一定値に固定された周波数であってもよく、変動してもよい。また、トランス63が第1電極71と第2電極72との間に印加する電圧は、周期的に変化する電圧であればよく、正弦波の交流電圧であってもよく、非正弦波(例えば、矩形波、三角波など)の交流電圧であってもよい。
【0040】
スイッチ65は、第2ケース41の上面側に露出している。スイッチ65は、プラズマ照射装置10からプラズマを照射する状態と、プラズマの照射を停止する状態とを切り替える操作部である。例えば、スイッチ65は、押圧式スイッチであり、押圧状態でプラズマを照射する状態となり、押圧解除状態でプラズマの照射を停止する状態となる。なお、図3図4では、スイッチ65の周辺構成(スイッチ65の操作に基づいて放電部70の放電等を制御する回路等)を省略しているが、一般的な制御回路等を採用することができる。スイッチ65の操作結果は、例えばケーブル17に配される通信線(図示略)を介して制御装置20に送信される。
【0041】
3.制御装置20の構成
制御装置20は、図5に示すように、制御部21と、入力部22と、出力部23と、記憶部24と、ガス供給部25と、電源部26と、を有する。
【0042】
制御部21は、電源部26の動作を制御する。制御部21は、例えばMCU(Micro Controller Unit)を含んで構成される。制御部21は、例えば、記憶部24に記憶されたプログラム等に基づいて、プラズマ照射装置10に入力電圧を入力する制御等を実行する。
【0043】
入力部22は、例えば公知の入力装置を用いて構成される。公知の入力装置は、例えばキーボード、マウス、タッチパネルなどである。入力部22によって入力された情報は、制御部21に入力される。
【0044】
出力部23は、例えば公知の出力装置を用いて構成される。公知の出力装置は、例えば表示部(例えば液晶表示部)、音声出力部(例えば、スピーカ)などである。
【0045】
記憶部24は、例えば公知の半導体メモリ等によって構成される。記憶部24には、制御部21の実行するプログラム等が記憶されている。
【0046】
ガス供給部25は、制御部21によって制御される。ガス供給部25は、ヘリウムガス等の不活性ガス(以下、単にガスともいう)を供給する装置である。ガス供給部25は、例えば、プラズマ照射装置10とガス供給部25との間に介在する可撓性の管路(ケーブル17内の中継流路)を介してガス誘導路51に不活性ガスを供給する。ガス供給部25は、例えばボンベ等から供給される高圧ガスを減圧するレギュレータ、流量制御を行うコントローラ等を含む。
【0047】
電源部26は、公知の制御回路等を含み、放電部70の第1電極71と第2電極72との間に所望の電圧を印加するように機能する。電源部26は、例えばDCDCコンバータ、インバータ等を含む。電源部26は、第1電極71と第2電極72との間に所定周波数の交流電圧を印加する。なお、電源部26が発生させる高電圧の周波数は、一定値に固定された周波数であってもよく、変動してもよい。また、電源部26が第1電極71と第2電極72との間に印加する電圧は、周期的に変化する電圧であればよく、正弦波の交流電圧であってもよく、非正弦波(例えば、矩形波、三角波など)の交流電圧であってもよい。
【0048】
4.放電部70の詳細構成
次に、放電部70の詳細構成について説明する。
誘電体73は、図6図10に示すように、ガス誘導路51の一部を構成する流路74を有している。流路74の前端には、放出口51Bが設けられている。図10に示すように、流路74の後端には、開口74Aが設けられている。開口74Aは、ガス誘導路51における流路74の後方側の部分と連なっている。流路74の断面形状(前後方向に直交する断面形状)は、四角形状である。流路74の断面形状は、前後方向の全体に亘って同じサイズの四角形状である。
【0049】
図6図9に示すように、誘電体73は、本体部73Aと、前側構成部73Bと、後側構成部73Cと、を有している。本体部73Aは、前後方向に長い四角筒状である。前側構成部73Bは、本体部73Aの前端から前方に突出する四角筒状である。後側構成部73Cは、本体部73Aの後端から後方に突出する四角筒状である。例えば、前側構成部73Bの突出長さは、後側構成部73Cの突出長さよりも大きい。左右方向(Z軸方向)において、前側構成部73Bの幅及び後側構成部73Cの幅は、本体部73Aの幅よりも小さくなっている。
【0050】
図10に示すように、第1電極71は、流路74における下面に設けられている。なお、第1電極71は、薄い膜等に覆われていてもよい。第1電極71は、流路74の中央部分から後端に亘って位置している。第1電極71は、ビア71Aを介して第1パッド71Bに接続されている。ビア71Aは、例えば誘電体73の下面側に設けられたビアホールを貫通して設けられている。第1パッド71Bは、誘電体73の下面における後端側に配されている。第1パッド71Bは、誘電体73の外周面に露出している。第1パッド71Bは、第2導電路55Dの他端(前端)に電気的に接続されている。
【0051】
図10に示すように、第2電極72は、誘電体73における流路74の下方に埋設されている。第2電極72は、誘電体73において、前後方向の中央部分に配されている。第2電極72は、流路74内に露出しておらず、誘電体73の外部にも露出していない。第2電極72は、例えば、図示しないビア等を介して第4導電路55Fの他端(前端)に電気的に接続されている。
【0052】
放電部70には、図6図10に示すように、外部電極75が設けられている。外部電極75は、誘電体73の外周面に露出している。外部電極75は、四角環状である。外部電極75は、導電性部材である。外部電極75は、例えば、電気抵抗率の比較的低い金属(銅、アルミニウム等)によって構成されている。外部電極75は、環状部75Aと、延出部75Bと、を具備している。外部電極75は、四角環状である。延出部275Bは、四角板状である。延出部75Bは、環状部75Aの一端の1つの辺(図6では後端の下側の辺)から後方に延出している。延出部75Bの左右方向の幅は、環状部75Aの左右方向の幅よりも小さい。
【0053】
外部電極75は、図6図10に示すように、誘電体73の前側構成部73Bの外周を覆うように環状に配置されている。外部電極75は、前側構成部73Bの外周(上下両面及び左右両面の4面)を一周覆っている。ここで、外部電極75が環状であるとは、外部電極75が周方向に部分的に途切れる箇所がある形状も含まれる。延出部75Bは、誘電体73の本体部73Aの下面の一部を覆っている。例えば、環状部75Aの後端は、誘電体73の本体部73Aの前端に接触している。
【0054】
外部電極75は、図10に示すように、第2電極72に接続されている。具体的には、外部電極75は、ビア72Aを介して第2電極72に接続されている。ビア72Aは、例えば誘電体73の下面側に設けられたビアホールを貫通して設けられている。ビア72Aは、第2電極72の前端付近に接続されている。ビア72Aは、外部電極75の後端付近(具体的には延出部75B)に接続されている。例えば、外部電極75は、半田付け等によって接合されている。このような外部電極75が設けられることで、ガス誘導路51内で発生したプラズマが外部電極75に誘導されて放出口51Bから放出され易くなる。
【0055】
図10に示すように、外部電極75の全体が、第1パッド71Bよりも放出口51B側(前方側)に配置されている。そのため、第1パッド71Bに対して放出口51Bとは反対側に配置される構成に比べて、第1電極71と第2電極72との間の放出口51Bを介した距離が短くなる。そのため、ガス誘導路51内で発生したプラズマが外部電極75に誘導されて放出口51Bからより一層放出され易くなる。
【0056】
外部電極75は、図10に示すように、誘電体73において放出口51Bから離れた位置に配置されている。すなわち、外部電極75は、放出口51Bよりも後端側(開口74A側)に配されている。外部電極75は、放出口51Bと一定の間隔があることで、ガス誘導路51内のプラズマが外部電極75に誘導され過ぎることを抑制し、ガス誘導路51内のプラズマが効率的に放出口51Bから放出される。
【0057】
5.効果の例
本開示のプラズマ照射システム100では、誘電体73の外周面に露出して第2電極72に接続される構成である外部電極75が設けられるため、ガス誘導路51内で発生したプラズマが外部電極75に誘導されて放出口51Bから放出され易くなる。特に、外部電極75の全体が、第1パッド71B(第1電極71に接続されて誘電体73の外周面に露出するパッド)よりも放出口51B側に配置される構成であるため、第1パッド71Bに対して放出口51Bとは反対側に配置される構成に比べて、第1電極71と外部電極75との間の放出口51Bを介した距離が短くなる。そのため、ガス誘導路51内で発生したプラズマが外部電極75に誘導され、放電が伝搬するためのエネルギーが下がり、放出口51Bからより一層放出され易くなる。
【0058】
例えば、プラズマ照射量を増やそうとしたとき、プラズマ発生量を増やすために、第1電極71と第2電極72との間の沿面(絶縁)距離を短くしたり、放電温度を高めたりする必要がある。しかしながら、構造上の工夫が必要となり、装置の大型化を招くことになってしまう。そこで、第1実施形態のプラズマ照射装置10のように、外部電極75を設けることで、放出口51Bから照射されるプラズマの照射量を増やすことができ、構造上の制約や大型化を抑制できる。
【0059】
更に、本開示のプラズマ照射システム100では、外部電極75は、誘電体73の外周を覆うように環状に配置されている。この構成によれば、外部電極75が誘電体73の外周を覆うような環状ではない構成に比べて、第1電極71と外部電極75との間の導電パスが増加する。そのため、ガス誘導路51内で発生したプラズマが外部電極75に誘導されて放出口51Bからより一層放出され易くなる。
【0060】
更に、本開示のプラズマ照射システム100では、外部電極75は、誘電体73において放出口51Bから離れた位置に配置されている。この構成によれば、外部電極75が誘電体73において放出口51Bに比較的近い位置に配置される構成に比べて、プラズマが外部電極75に誘導され過ぎなくなり、ガス誘導路51内で発生したプラズマが外部電極75に短絡することがなく、効率的に放出口51Bから照射対象物に放出される。
【0061】
<第2実施形態>
第1実施形態では、外部電極75は、誘電体73の外周を覆う環状であったが、環状でなくてもよい。なお、第2実施形態の説明では、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0062】
図11図12に示すように、第2実施形態の放電部270には、外部電極275が設けられている。外部電極275は、平板状である。外部電極275は、誘電体73の外周面(下面)に露出している。外部電極275は、例えば、銅、アルミニウム等によって構成されている。外部電極275は、環状部275Aと、延出部275Bと、を具備している。環状部275Aは、四角板状である。延出部275Bは、環状部275Aの一端(図11図12では後端)から後方へ延出している。
【0063】
外部電極275は、図11図12に示すように、誘電体73の前側構成部73Bの下面における後端側を覆っている。延出部275Bは、誘電体73の本体部73Aの下面の一部を覆っている。延出部275Bの左右方向の幅は、環状部275Aの左右方向の幅よりも小さい。
【0064】
外部電極275は、図12に示すように、ビア72Aを介して第2電極72に接続されている。外部電極275の全体が、第1パッド71Bよりも放出口51B側(前方側)に配置されている。外部電極275は、誘電体73において放出口51Bから離れた位置に配置されている。
【0065】
第1実施形態と同様に、放電部270に外部電極275が設けられることで、ガス誘導路51内で発生したプラズマが外部電極275に誘導されて放出口51Bから放出され易くなる。
【0066】
<第3実施形態>
第1実施形態では、外部電極75が、第2電極72に接続される構成であったが、接続されない構成であってもよい。なお、第3実施形態の説明では、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0067】
図13に示すように、第3実施形態の放電部370には、外部電極375が設けられている。外部電極375は、第1実施形態の放電部70において延出部75Bが設けられない構成である。外部電極375は、四角環状である。外部電極375は、例えば、銅、アルミニウム等によって構成されている。
【0068】
図13に示すように、第2電極72は、ビア372Aを介して第2パッド372Bに接続されている。ビア372Aは、例えば誘電体73の下面側に設けられたビアホールを貫通して設けられている。第2パッド372Bは、誘電体73の下面における中央側(ビア71Aよりも前方側)に配されている。第2パッド372Bは、誘電体73の外周面に露出している。第2パッド372Bは、第4導電路55Fの他端(前端)に電気的に接続されている。
【0069】
図13に示すように、外部電極375は、接地される構成である。外部電極375の全体が、第1パッド71Bよりも放出口51B側(前方側)に配置されている。外部電極375は、誘電体73において放出口51Bから離れた位置に配置されている。外部電極375の全体は、第2パッド372Bよりも放出口51B側(前方側)に配置されている。
【0070】
このような構成によって、ガス誘導路51内で発生したプラズマが、接地された外部電極375によって誘導されて放出口51Bから放出され易くなる。そして、外部電極375の全体が、第2パッド372B(第2電極72に接続されて誘電体73の外周面に露出するパッド)よりも放出口51B側に配置される構成であるため、第1電極71と外部電極375との間の放出口51Bを介した距離がより一層短くなる。そのため、ガス誘導路51内で発生したプラズマが外部電極375に誘導されて放出口51Bからより一層放出され易くなる。
【0071】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0072】
上記第1実施形態では、外部電極75の全体が、第1パッド71Bよりも放出口51B側(前方側)に配置されていたが、外部電極75の一部(前端等)のみが、第1パッド71Bよりも放出口51B側(前方側)に配置される構成であってもよい。
【0073】
上記第3実施形態では、外部電極375の全体が、第2パッド372Bよりも放出口51B側(前方側)に配置されていたが、外部電極375の一部(前端等)のみが、第2パッド372Bよりも放出口51B側(前方側)に配置される構成であってもよい。
【0074】
上記第1実施形態では、外部電極75が前側構成部73Bの外周(上下両面及び左右両面の4面)を覆っていたが、4つ以下の数の面を覆っていてもよい。
【0075】
上記第1実施形態では、外部電極75が環状(誘電体73を連続的に囲む形状)であったが、誘電体73周りの複数の位置に設けられる構成であってもよい。
【0076】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0077】
10: プラズマ照射装置
11: 基部
13: 着脱部
15: 第1コネクタ部
17: ケーブル
20: 制御装置
21: 制御部
22: 入力部
23: 出力部
24: 記憶部
25: ガス供給部
26: 電源部
31: 第1ケース
41: 第2ケース
51: ガス誘導路
51A: 導入口
51B: 放出口
51C: 流路
51D: 第1流路
51E: 第2流路
55A: 第1配線
55B: 第2配線
55C: 第1導電路
55D: 第2導電路
55E: 第3導電路
55F: 第4導電路
57A: 第2コネクタ部
57B: 第3コネクタ部
63: トランス
65: スイッチ
70: 放電部
71: 第1電極(放電電極)
71A: ビア
71B: 第1パッド(パッド)
72: 第2電極(基準電極)
72A: ビア
73: 誘電体
73A: 本体部
73B: 前側構成部
73C: 後側構成部
74: 流路
74A: 開口
75: 外部電極
75A: 環状部
75B: 延出部
100: プラズマ照射システム
270: 放電部
275: 外部電極
275A: 環状部
275B: 延出部
370: 放電部
372A: ビア
372B: 第2パッド
375: 外部電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13