(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139853
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電力供給装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/26 20060101AFI20241003BHJP
A61B 18/00 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
H05H1/26
A61B18/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050778
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松元 裕次
(72)【発明者】
【氏名】中埜 吉博
【テーマコード(参考)】
2G084
4C160
【Fターム(参考)】
2G084AA24
2G084BB36
2G084CC20
2G084CC34
2G084DD15
2G084DD22
2G084EE12
2G084EE24
2G084GG02
2G084HH05
2G084HH28
2G084HH56
4C160JK00
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK22
(57)【要約】
【課題】容量性負荷に効率的に電力を供給できる電力供給装置を提供する。
【解決手段】電力供給装置20は、放電部53に電力を供給する。電力供給装置20は、スイッチング素子84A,85Bを有し、スイッチング素子84A,85Bのオンオフ動作によって出力電力を調整する電力調整部82と、電力調整部82から出力される電圧を昇圧して放電部53側に出力するトランス63と、電力調整部82の動作を制御する制御部71と、を備えている。制御部71は、スイッチング素子84A,85Bがオン動作しており、かつスイッチング素子84A,85Bにトランス63からの還流電流が流れているときに、スイッチング素子84A,85Bをオフ動作させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量性負荷に電力を供給する電力供給装置であって、
スイッチング素子を有し、前記スイッチング素子のオンオフ動作によって出力電力を調整する電力調整部と、
前記電力調整部から出力される電圧を昇圧して前記容量性負荷側に出力するトランスと、
前記電力調整部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記スイッチング素子がオン動作しており、かつ前記スイッチング素子に前記トランスからの還流電流が流れているときに、前記スイッチング素子をオフ動作させる、
電力供給装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記スイッチング素子に前記トランスからの還流電流が流れ始めたときに、前記スイッチング素子をオフ動作させる、
請求項1に記載の電力供給装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記スイッチング素子をオフ動作させた後、次の周期まで前記スイッチング素子のオフ動作を維持させる、
請求項1又は請求項2に記載の電力供給装置。
【請求項4】
前記電力調整部は、高電位側の第1電力供給路と低電位側の第2電力供給路との間に設けられる第1構成部および第2構成部を有し、
前記第1構成部において、前記第1電力供給路側に設けられる第1スイッチング素子と、前記第2電力供給路側に設けられる第1ダイオードと、が第1接続点を介して直列に接続され、
前記第2構成部において、前記第1電力供給路側に設けられる第2ダイオードと、前記第2電力供給路側に設けられる第2スイッチング素子と、が第2接続点を介して直列に接続され、
前記第1ダイオードのアノードが前記第2電力供給路に接続され、カソードが前記第1スイッチング素子に接続され、
前記第2ダイオードのアノードが前記第2スイッチング素子に接続され、カソードが前記第1電力供給路に接続され、
前記第1接続点に接続される導電路に前記トランスの1次側の一方の端子が接続され、前記第2接続点に接続される導電路に前記トランスの1次側の他方の端子が接続され、
前記スイッチング素子は、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を含む、
請求項1又は請求項2に記載の電力供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される電源装置は、DC入力を所望の交流電圧に変換して出力する共振インバータ回路と、制御部と、を備えている。制御部は、共振インバータ回路に流れる過電流を検知し、共振インバータ回路に流れる電流および共振時間に基づいて共振インバータ回路のスイッチング素子に流れる電流が最初に0になる時間の経過後にスイッチング素子をオフにする制御を行う。これにより、共振インバータ回路における過電流保護を行う構成となっている。
【0003】
特許文献2に開示される電力変換装置は、過電流検出回路によりIGBTに流れる主電流が過電流であることが検知され、過電流検出回路からの信号を受けた制御回路からの制御信号によりオンする第3スイッチング素子を備えている。そして、電力変換装置は、第3スイッチング素子がオンしたときに、飽和電流回路を介してIGBTのゲート容量は第2スイッチング素子がオンする場合よりも遅い速度で放電される構成となっている。これにより、IGBTのゲートに対する過度なサージ電圧の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013/080279号
【特許文献2】特開2018-33259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に開示されるような装置は、いずれも回路に過電流が発生した場合におけるスイッチング素子の制御に関するものである。しかしながら、容量性負荷に効率的に電力を供給し得るように制御を行う電力供給装置については、開示されていない。
【0006】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、容量性負荷に効率的に電力を供給できる電力供給装置を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の電力供給装置は、
容量性負荷に電力を供給する電力供給装置であって、
スイッチング素子を有し、前記スイッチング素子のオンオフ動作によって出力電力を調整する電力調整部と、
前記電力調整部から出力される電圧を昇圧して前記容量性負荷側に出力するトランスと、
前記電力調整部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記スイッチング素子がオン動作しており、かつ前記スイッチング素子に前記トランスからの還流電流が流れているときに、前記スイッチング素子をオフ動作させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の発明は、容量性負荷に効率的に電力を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態のプラズマ照射システムの構成を概略的に示す図である。
【
図2】着脱部が基部から離間した状態のプラズマ照射器具の一部の側面図である。
【
図4】着脱部が基部から離間した状態のプラズマ照射器具の一部の側断面図である。
【
図5】プラズマ照射システムの電気的構成を示すブロック図である。
【
図6】プラズマ照射システムの具体例を示す回路図である。
【
図7】プラズマ照射システムにおいて、スイッチング素子を制御するデューティを固定した場合に検出される各波形のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図8】プラズマ照射システムにおいて、スイッチング素子を制御するデューティを変動させる場合に検出される各波形のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図9】電力供給装置の制御部で実行されるフローチャートである。
【
図10】第2実施形態のプラズマ照射システムの具体例を示す回路図である。
【
図11】第3実施形態のプラズマ照射システムの具体例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。
〔1〕容量性負荷に電力を供給する電力供給装置であって、
スイッチング素子を有し、前記スイッチング素子のオンオフ動作によって出力電力を調整する電力調整部と、
前記電力調整部から出力される電圧を昇圧して前記容量性負荷側に出力するトランスと、
前記電力調整部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記スイッチング素子がオン動作しており、かつ前記スイッチング素子に前記トランスからの還流電流が流れているときに、前記スイッチング素子をオフ動作させる、
電力供給装置。
【0011】
この構成によれば、スイッチング素子にトランスからの還流電流が流れているときに、スイッチング素子をオフ動作させるため、スイッチング素子がオフ動作した後に電力調整部から容量性負荷への電力供給を停止できる。そのため、スイッチング素子にトランスからの還流電流が流れることで生じる、容量性負荷に対する不必要な電力供給を抑制できる。したがって、電力供給装置は、容量性負荷に効率的に電力を供給できる。
【0012】
〔2〕前記制御部は、前記スイッチング素子に前記トランスからの還流電流が流れ始めたときに、前記スイッチング素子をオフ動作させる、
〔1〕に記載の電力供給装置。
【0013】
この構成によれば、スイッチング素子にトランスからの還流電流が流れ始めたタイミングでスイッチング素子をオフ動作させることができる。そのため、スイッチング素子にトランスからの還流電流が流れる段階における、より早い時期から、容量性負荷に対する不必要な電力供給を抑制できる。したがって、電力供給装置は、容量性負荷により一層効率的に電力を供給できる。
【0014】
〔3〕前記制御部は、前記スイッチング素子をオフ動作させた後、次の周期まで前記スイッチング素子のオフ動作を維持させる
〔1〕又は〔2〕に記載の電力供給装置。
【0015】
この構成によれば、スイッチング素子をオフ動作させたタイミングから次の周期まで、確実に容量性負荷に対する電力供給を抑制できる。
【0016】
〔4〕前記電力調整部は、高電位側の第1電力供給路と低電位側の第2電力供給路との間に設けられる第1構成部および第2構成部を有し、
前記第1構成部において、前記第1電力供給路側に設けられる第1スイッチング素子と、前記第2電力供給路側に設けられる第1ダイオードと、が第1接続点を介して直列に接続され、
前記第2構成部において、前記第1電力供給路側に設けられる第2ダイオードと、前記第2電力供給路側に設けられる第2スイッチング素子と、が第2接続点を介して直列に接続され、
前記第1ダイオードのアノードが前記第2電力供給路に接続され、カソードが前記第1スイッチング素子に接続され、
前記第2ダイオードのアノードが前記第2スイッチング素子に接続され、カソードが前記第1電力供給路に接続され、
前記第1接続点に接続される導電路に前記トランスの1次側の一方の端子が接続され、前記第2接続点に接続される導電路に前記トランスの1次側の他方の端子が接続され、
前記スイッチング素子は、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を含む、
〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の電力供給装置。
【0017】
この構成によれば、第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子にトランスからの還流電流が流れているときに、第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子をオフ動作させることで、第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子がオフ動作した後に電力調整部から容量性負荷への電力供給を停止できる。
【0018】
<第1実施形態>
1.プラズマ照射システム100の構成
本開示の一例である電力供給装置は、プラズマ照射システムに適用できる。
図1は、電力供給装置20が適用されたプラズマ照射システム100を示している。
図1のプラズマ照射システム100は、例えば、低侵襲の低エネルギーのプラズマを照射する。プラズマ照射システム100は、例えば施術対象の生体組織に対して止血などを行い得る手術用装置として構成される。プラズマ照射システム100は、プラズマ照射器具10と、電力供給装置20と、を備えている。電力供給装置20は、プラズマ照射器具10に電力を供給する。
【0019】
2.プラズマ照射器具10の構成
プラズマ照射器具10は、例えば、手術を行う術者によって把持されて使用される器具である。プラズマ照射器具10は、
図2に示すように、基部11と、着脱部13と、第1コネクタ部15(
図1参照)と、ケーブル17と、を有している。基部11は、把持部として機能する。着脱部13は、後述する放出口51Bが設けられ、基部11に対して着脱可能に取り付けられる。
【0020】
プラズマ照射器具10は、長手形状である。プラズマ照射器具10の長手方向(
図2-
図4のX軸方向)を、前後方向と定義する。
図2-
図4におけるX軸の正方向を前方と定義し、X軸の負方向を後方と定義する。また、
図2-
図4において、プラズマ照射器具10の長手方向と直交する方向(
図2-
図4のY軸方向)を、上下方向と定義する。
図2-
図4におけるY軸の正方向を上方と定義し、Y軸の負方向を下方と定義する。
【0021】
基部11は、
図2に示すように、前後方向に長い形態をなしている。基部11は、第1ケース31を有する。第1ケース31は、基部11の外殻をなす。第1ケース31は、絶縁性を有し、例えば樹脂材料を用いて構成される。第1ケース31は、前後方向に長い筒状をなしている。基部11の先端には、着脱部13が着脱可能に取り付けられる。
【0022】
着脱部13は、
図2に示すように、第2ケース41を有する。第2ケース41は、着脱部13の外殻をなす。第2ケース41は、絶縁性を有し、例えば樹脂材料を用いて構成される。第2ケース41は、筒状をなす。第2ケース41の前端には、後述する放出口51Bが設けられている。放出口51Bは前方に向かって開放されている。
【0023】
第1コネクタ部15は、電力供給装置20に接続される。ケーブル17の一端は、第1コネクタ部15に接続されている。ケーブル17の他端は、基部11に接続されている。ケーブル17は、可撓性を有する。ケーブル17は、例えば、中継配線17A,17B(
図6参照)と、中継流路と、中継配線17A,17B及び中継流路の外周を一括して覆うシースと、を有する。中継配線17A,17Bは、後述する第1導電路55Cの一端(後端)及び第1導電路55Fの一端(後端)が接続されている。中継流路は、後述する第1流路51Dの導入口51Aに接続されている。
【0024】
プラズマ照射器具10は、
図3に示すように、前端に向かってガスを誘導するガス誘導路51と、ガス誘導路51内でプラズマを発生させる放電部53と、を有する。ガス誘導路51は、ケーブル17の中継流路を介して、後述するガス供給部76から供給されたガスを、ガス誘導路51の前端に向かって誘導する。
【0025】
ガス誘導路51は、
図3に示すように、ガスを導入する導入口51Aと、ガスを放出する放出口51Bと、導入口51Aと放出口51Bとの間に設けられる流路51Cと、を有する。ガス誘導路51は、後述するガス供給部76から供給されるガスを導入口51Aから導入し、導入口51A側から導入されたガスを流路51C内の空間を通して放出口51Bに誘導する誘導路となっている。ガス誘導路51は、流動するガスを放出口51Bを介して放出する。
【0026】
放電部53は、プラズマ放電を発生させる。放電部53は、本発明の「容量性負荷」の一例に相当する。放電部53は、
図3に示すように、着脱部13に設けられている。放電部53は、着脱部13における前端(放出口51B)側に配置されている。放電部53は、第1電極53Aと、第2電極53Bと、誘電体53Cと、を具備している。放電部53は、中空状をなしており、ガス誘導路51の少なくとも一部を構成している。放電部53は、着脱部13の長手方向(前後方向)に沿った長い形態をなしている。
【0027】
第1電極53Aは、放電電極として機能する。第2電極53Bは、接地電極として機能する。第1電極53A及び第2電極53Bは、それぞれ着脱部13の長手方向(前後方向)に沿って延びる形態をなしている。第1電極53A及び第2電極53Bは、誘電体53Cと一体的に設けられている。第1電極53A及び第2電極53Bは、互いに離間して配置され、誘電体53Cを介在させて上下方向で互いに対向して配置される。
【0028】
誘電体53Cは、中空状をなしており、ガス誘導路51の少なくとも一部を構成している。誘電体53Cは、基部11の長手方向(先後方向)に長い形態をなしている。誘電体53Cは、例えばアルミナなどのセラミック材料、ガラス材料、樹脂材料などを好適に用いることができる。誘電体53Cの先端は、第1電極53A及び第2電極53Bのいずれよりも先端側に配置されている。
【0029】
放電部53は、第1電極53Aと第2電極53Bとの間に電圧が印加されることに応じてガス誘導路51内でプラズマを発生させる。放電部53は、所定の電圧値の駆動電圧が印加されることでプラズマ放電を発生させる。より具体的には、放電部53は、第1電極53Aと第2電極53Bとの電位差に基づく電界をガス誘導路51内で発生させて、放電(より具体的には、沿面放電)によるプラズマ(より具体的には、低温プラズマ)をガス誘導路51内で発生させるように機能する。放電部53は、第2電極53Bの電位を一定の基準電位(例えば、0Vのグランド電位)に保ちつつ、周期的に変化する電圧が第1電極53Aに印加されることに応じてガス誘導路51内で沿面放電させ、プラズマ(より具体的には、低温プラズマ)を発生させる。
【0030】
上述したガス誘導路51の流路51Cは、基部11に設けられる第1流路51Dと、着脱部13に設けられる第2流路51Eと、を有する。第1流路51Dは、第1ケース31の内部に配置される。第1流路51Dは、第2流路51Eよりも後述するガス供給部76側に配置される。第2流路51Eは、第1流路51Dよりも放出口51B側に配置される。第1流路51Dには、ガス供給部76側から供給されるガスが導入される。第1流路51Dは、ガス供給部76側から供給されたガスを、第2流路51E側に流す。第2流路51Eは、第1流路51D側から供給されたガスを放出口51B側に誘導し、放出口51Bから放出させる。なお、放電部53は、第2流路51E内でプラズマを発生させる。
【0031】
プラズマ照射器具10は、第1電極53Aに電気的に接続される第1配線55Aと、第2電極53Bに電気的に接続される第2配線55Bと、を有する。第1配線55Aと第2配線55Bとの間には、後述する電源部80に基づく電圧が印加される。第1配線55Aと第2配線55Bとの間に印加された電圧は、第1電極53Aと第2電極53Bとの間に印加される。
【0032】
第1配線55Aは、第1導電路55Cと、第2導電路55Dと、第3導電路55Eと、を有している。第2配線55Bは、第1導電路55Fと、第2導電路55Gと、第3導電路55Hと、を有している。第1導電路55C,55F及び第2導電路55D,55Gは、基部11に設けられ、第1ケース31内に配置されている。第3導電路55E,55Hは、着脱部13に設けられ、第2ケース41内に配置されている。
【0033】
第1導電路55Cの一端(後端)及び第1導電路55Fの一端(後端)は、電源部80に電気的に接続されている。第1導電路55Cの他端(前端)及び第1導電路55Fの他端(前端)は、後述するトランス63の第1巻線部63Aに電気的に接続されている。
【0034】
第2導電路55Dの一端(後端)及び第2導電路55Gの一端(後端)は、トランス63の第2巻線部63Bに電気的に接続されている。
【0035】
基部11は、第2コネクタ部57Aを有する。第2コネクタ部57Aは、第1ケース31の前端側に設けられている。着脱部13は、第3コネクタ部57Bを有する。第3コネクタ部57Bは、第2ケース41の後端に設けられている。第2コネクタ部57Aと第3コネクタ部57Bは、前後方向で互いに接続される。
【0036】
第1流路51Dの一端(前端)は、第2コネクタ部57Aに設けられている。第1流路51Dの他端(後端)には、導入口51Aが設けられている。第2導電路55Dの他端(前端)及び第2導電路55Gの他端(前端)は、第2コネクタ部57Aに設けられている。
【0037】
第2流路51Eの一端(後端)は、第3コネクタ部57Bに設けられている。第2流路51Eの他端(前端)には、放出口51Bが設けられている。第3導電路55Eの一端(後端)及び第3導電路55Hの一端(後端)は、第3コネクタ部57Bに設けられている。第3導電路55Eの他端(前端)は、第1電極53Aに電気的に接続されている。第3導電路55Hの他端(前端)は、第2電極53Bに電気的に接続されている。
【0038】
基部11に着脱部13が取り付けられると、第2コネクタ部57Aに第3コネクタ部57Bが接続される。第2コネクタ部57Aに第3コネクタ部57Bが接続されたときに、第1流路51Dから第2流路51Eにガスを供給可能な状態となる。また、第2コネクタ部57Aに第3コネクタ部57Bが接続されたとき、第2導電路55Dに第3導電路55Eが電気的に接続されるとともに、第2導電路55Gに第3導電路55Hが電気的に接続される。
【0039】
例えば、第1流路51Dを構成する第1管部と、第2流路51Eを構成する第2管部とが、ガス漏れを防止した状態で接続される。例えば、第2導電路55Dと第3導電路55Eは、一方に雌端子が設けられ、他方に雄端子が設けられ、雌端子と雄端子が接続されることで互いに電気的に接続される。例えば、第2導電路55Dと第3導電路55Eは、一方に雌端子が設けられ、他方に雄端子が設けられ、雌端子と雄端子が接続されることで互いに電気的に接続される。第2導電路55Gと第3導電路55Hの構造も、第2導電路55Dと第3導電路55Eの構造と同様である。
【0040】
基部11には、
図3に示すように、トランス63と、スイッチ65と、が設けられている。トランス63及びスイッチ65は、例えば第1ケース31内に設けられる回路基板(図示略)に搭載される。トランス63は、電力供給装置20から出力される電圧を昇圧して放電部53側に出力する昇圧トランスとして構成される。トランス63は、1次側の第1巻線部63A(
図6参照)と、2次側の第2巻線部63B(
図6参照)と、を備えている。トランス63は、第1巻線部63Aの両端に交流電圧が印加された場合に、第1巻線部63Aの両端に印加される交流電圧を昇圧した交流電圧を第2巻線部63Bの両端に印加するように変圧する。トランス63は、後述する電源部80に基づく入力電圧(第1導電路55Cと第1導電路55Fとの間に印加される電圧)を昇圧し、昇圧した電圧を第2導電路55Dと第2導電路55Gとの間に印加する。これにより、トランス63は、第1電極53Aと第2電極53Bとの間に所望の電圧を印加する。
【0041】
トランス63は、高周波電圧発生回路として機能する。トランス63は、第2電極53Bを基準電位に保ちつつ、第1電極53Aと第2電極53Bとの間に所定周波数の交流電圧を印加する。トランス63は、高周波数(例えば、20kHz-300kHz程度)の高電圧(例えば、振幅が0.5kV-10kVの高電圧)を生成し得る回路であれば、公知の様々な回路を採用し得る。なお、トランス63が発生させる高電圧の周波数は、一定値に固定された周波数であってもよく、変動してもよい。また、トランス63が第1電極53Aと第2電極53Bとの間に印加する電圧は、周期的に変化する電圧であればよく、正弦波の交流電圧であってもよく、非正弦波(例えば、矩形波、三角波など)の交流電圧であってもよい。
【0042】
スイッチ65は、第2ケース41の上面側に露出している。スイッチ65は、プラズマ照射器具10からプラズマを照射する状態と、プラズマの照射を停止する状態とを切り替える操作部である。例えば、スイッチ65は、押圧式スイッチであり、押圧状態でプラズマを照射する状態となり、押圧解除状態でプラズマの照射を停止する状態となる。なお、
図3、
図4では、スイッチ65の周辺構成(スイッチ65の操作に基づいて放電部53の放電等を制御する回路等)を省略しているが、一般的な制御回路等を採用することができる。スイッチ65の操作結果は、例えばケーブル17に配される通信線(図示略)を介して電力供給装置20に送信される。
【0043】
3.電力供給装置20の構成
電力供給装置20は、
図5に示すように、制御部71と、入力部72と、出力部73と、記憶部74と、電流検出部75と、ガス供給部76と、電源部80と、を有する。
【0044】
制御部71は、電源部80の動作を制御する。制御部71は、例えばMCU(Micro Controller Unit)を含んで構成される。制御部71は、例えば、記憶部74に記憶されたプログラム等に基づいて、プラズマ照射器具10に入力電圧を入力する制御等を実行する。制御部71は、プラズマ照射器具10に入力される入力電圧を制御する。
【0045】
入力部72は、例えば公知の入力装置を用いて構成される。公知の入力装置は、例えばキーボード、マウス、タッチパネルなどである。入力部72によって入力された情報は、制御部71に入力される。
【0046】
出力部73は、例えば公知の出力装置を用いて構成される。公知の出力装置は、例えば表示部(例えば液晶表示部)、音声出力部(例えば、スピーカ)などである。
【0047】
記憶部74は、例えば公知の半導体メモリ等によって構成される。記憶部74には、制御部71の実行するプログラム等が記憶されている。
【0048】
電流検出部75は、後述する第6導電路86A(
図6参照)を流れる電流の値を検出するセンサである。電流検出部75の検出結果は、制御部71に送信される。電流検出部75は、例えば、抵抗と増幅部とを有し、抵抗の両端に印加される電圧を増幅した検出値(第6導電路86Aを流れる電流の値を特定し得るアナログ電圧値)を制御部71に与える。なお、電流検出部75は、第6導電路86Aを流れる電流の値を検出し得るセンサであれば、公知の他の構成であってもよい。
【0049】
ガス供給部76は、制御部71によって制御される。ガス供給部76は、ヘリウムガス等の不活性ガス(以下、単にガスともいう)を供給する装置である。ガス供給部76は、例えば、プラズマ照射器具10とガス供給部76との間に介在する可撓性の管路(ケーブル17内の中継流路)を介してガス誘導路51に不活性ガスを供給する。ガス供給部76は、例えばボンベ等から供給される高圧ガスを減圧するレギュレータ、流量制御を行うコントローラ等を含む。
【0050】
4.電源部80の詳細
電源部80は、プラズマ照射器具10に電力を供給する。
図6に示すように、電源部80は、電圧変換部81と、電力調整部82と、を有している。電圧変換部81は、例えばDCDCコンバータとして構成されている。電圧変換部81は、外部電源から入力される電圧を所定の大きさの直流電圧に変換して、電力調整部82に出力する。具体的には、電圧変換部81は、後述する電力調整部82の第4導電路83Aと第5導電路83Bとの間に所望の電圧を印加する。
【0051】
電力調整部82は、電圧変換部81からの電力に基づいて第1配線55A(具体的には第1導電路55C)と第2配線55B(具体的には第1導電路55F)との間に交流電圧を印加するように動作する回路である。電力調整部82は、後述するスイッチング素子84A,85Bのオンオフ動作によって出力電力を調整する。電力調整部82は、
図6に示すように、高電位側の第4導電路83Aと、低電位側の第5導電路83Bと、第1構成部84と、第2構成部85と、を有している。第4導電路83Aは、本発明の「第1電力供給路」に相当する。第5導電路83Bは、本発明の「第2電力供給路」に相当する。第1構成部84及び第2構成部85は、第4導電路83Aと第5導電路83Bとの間に設けられている。
【0052】
第1構成部84は、スイッチング素子84A,84Bと、ダイオード84C,84Dと、を具備している。スイッチング素子84Aは、本発明の「スイッチング素子」及び「第1スイッチング素子」に相当する。ダイオード84Dは、本発明の「第1ダイオード」に相当する。第1構成部84において、第4導電路83A側に設けられるスイッチング素子84Aと、第5導電路83B側に設けられるダイオード84Cと、が第1接続点84Eを介して直列に接続されている。スイッチング素子84A,84Bは、Nチャネル型MOSFETとして構成されている。
【0053】
スイッチング素子84Aのドレインは、第4導電路83Aに電気的に接続されている。スイッチング素子84Aのソースは、第1接続点84Eに電気的に接続されている。第1接続点84Eは、第6導電路86A及び中継配線17Aを介して第1導電路55Cに電気的に接続されている。ダイオード84Cは、スイッチング素子84Aの寄生ダイオードとして構成されている。ダイオード84Cのアノードは、スイッチング素子84Aのソース及び第1接続点84Eに電気的に接続されている。ダイオード84Cのカソードは、スイッチング素子84Aのドレイン及び第4導電路83Aに電気的に接続されている。
【0054】
スイッチング素子84Bのソースは、第5導電路83Bに電気的に接続されている。スイッチング素子84Bのドレインは、第1接続点84Eに電気的に接続されている。ダイオード84Dは、スイッチング素子84Bの寄生ダイオードとして構成されている。ダイオード84Dのアノードは、スイッチング素子84Bのソース及び第5導電路83Bに電気的に接続されている。ダイオード84Dのカソードは、スイッチング素子84Aのドレイン及び第1接続点84Eに電気的に接続されている。
【0055】
第2構成部85は、スイッチング素子85A,85Bと、ダイオード85C,85Dと、を具備している。スイッチング素子85Bは、本発明の「スイッチング素子」及び「第2スイッチング素子」に相当する。ダイオード85Cは、本発明の「第2ダイオード」に相当する。第2構成部85において、第4導電路83A側に設けられるダイオード85Cと、第5導電路83B側に設けられるスイッチング素子85Bと、が第2接続点85Eを介して直列に接続されている。スイッチング素子85A,85Bは、Nチャネル型MOSFETとして構成されている。
【0056】
スイッチング素子85Aのドレインは、第4導電路83Aに電気的に接続されている。スイッチング素子85Aのソースは、第2接続点85Eに電気的に接続されている。第2接続点85Eは、第7導電路86B及び中継配線17Bを介して第1導電路55Fに電気的に接続されている。ダイオード85Cは、スイッチング素子85Aの寄生ダイオードとして構成されている。ダイオード85Cのアノードは、スイッチング素子85Aのソース及び第2接続点85Eに電気的に接続されている。ダイオード85Cのカソードは、スイッチング素子85Aのドレイン及び第4導電路83Aに電気的に接続されている。
【0057】
スイッチング素子85Bのソースは、第5導電路83Bに電気的に接続されている。スイッチング素子85Bのドレインは、第2接続点85Eに電気的に接続されている。ダイオード85Dは、スイッチング素子85Bの寄生ダイオードとして構成されている。ダイオード85Dのアノードは、スイッチング素子85Bのソース及び第5導電路83Bに電気的に接続されている。ダイオード85Dのカソードは、スイッチング素子85Aのドレイン及び第2接続点85Eに電気的に接続されている。
【0058】
スイッチング素子84Aのゲート及びスイッチング素子85Bのゲートには、制御部71からの制御信号がゲート電圧として印加されるようになっている。スイッチング素子84Bのゲート及びスイッチング素子85Aのゲートは、グランドに接続されている。
【0059】
5.電力供給装置20の制御
電力調整部82は、制御部71によって制御される。制御部71は、スイッチング素子84A,85Bをいずれもオン状態にする制御と、スイッチング素子84A,85Bをいずれもオフ状態にする制御とを行う。
【0060】
図7は、デューティを固定する場合のプラズマ照射システム100で検出される各波形のシミュレーション結果を示している。
図7の上段に示す波形は、スイッチング素子84A,85Bのゲートに印加される電圧(Vgate)の波形の一例である。この波形の信号に基づくスイッチング素子84A,85Bの周期的制御によって、第1導電路55C,55Fの間に交流電圧が印加される。
図7の中段に示す波形は、
図7の上段に示す波形のゲート電圧に基づいて第1導電路55Cに流れる電流(I1)の波形、及び第1導電路55C,55F間に印加される電圧(V1)の波形の一例である。
図7の下段に示す波形は、
図7の上段に示す波形のゲート電圧に基づいて第3導電路55Eに流れる電流(I2)の波形、及び第3導電路55E,55H間に印加される電圧(V2)の波形の一例である。
図7の全てのグラフにおいて、横軸の時間が対応している。
【0061】
図7の例では、スイッチング素子84A,85Bがいずれもオフ状態であり且つ一対の第1導電路55C,55Fの間の電圧が0である状態のときには、外部電源からの電力に基づく直流電圧が第1導電路55C,55F間に印加されない。この状態からスイッチング素子84A,85Bがいずれもオン状態に切り替わると、外部電源からの電力に基づく直流電圧が第1導電路55C,55F間に印加されるため、第1導電路55C,55F間に印加される電圧(第1導電路55Fを基準とする第1導電路55Cの電圧)は上昇する(
図7の時間T1以降参照)。このような電圧上昇に伴い、第1巻線部63Aにおいて第1導電路55C側からトランス63を介して第1導電路55F側へ流れる電流は上昇する。そして、トランス63を介して放電部53に電流が流れ、放電部53で消費されなかった電流が電力調整部82に還流電流として還ってくる(
図7の時間T2から時間T3参照)。このような電圧変化及び電流変化がなされるオン状態からスイッチング素子84A,85Bがいずれもオフ状態に切り替わると、外部電源から第1導電路55C,55Fへの電力供給は停止する(
図7の時間T4以降参照)。
【0062】
図7の例において、第1導電路55C,55Fに還流電流(
図7で負の値を示す電流)が流れ始めてから、第1導電路55Cを流れる電流が0Aになった後も、スイッチング素子84A,85Bがいずれもオン状態である。そのため、第1導電路55C側からトランス63を介して第1導電路55F側へ流れる電流が増大する(
図7の時間T3から時間T4参照)。このような電流は、放電に寄与しない電流であり、第1導電路55C,55F等の抵抗成分等によって電力が消費されてしまう。
【0063】
そこで、第1導電路55C,55Fに還流電流が流れている間に、スイッチング素子84A,85Bをいずれもオフ状態にする対策が考えられる。しかしながら、
図7の中段及び下段に示す電流波形及び電圧波形は、電力調整部82と放電部53の間の共振特性、すなわちトランス63の巻き数比、第1導電路55C,55F等の抵抗成分等によってパルス幅にばらつきが生じ得る。そのため、スイッチング素子84A,85Bのデューティを固定することは困難である。そこで、第1導電路55Cを流れる電流が0Aになり、第1導電路55C,55Fに還流電流が流れる状態に応じたスイッチング素子84A,85Bのゲートコントロールが有効である。
【0064】
図8の例では、デューティを固定しない場合のプラズマ照射システム100で検出される各波形のシミュレーション結果を示している。
図8の上段、中断、下段に示す波形は、それぞれ
図7の上段、中断、下段に示す波形と同様に検出される波形である。
図8の時間T5で、スイッチング素子84A,85Bがオン状態となる。時間T7で、第1導電路55Cを流れる電流が0Aになり、それ以降、第1導電路55C,55Fに還流電流が流れる。ここで、第1導電路55Cを流れる電流が小さくなり時間T7で0Aになったことに基づいて、第1導電路55C,55Fに流れる還流電流が小さくなり0Aになるまでにスイッチング素子84A,85Bをオフ動作させる。これにより、スイッチング素子84A,85Bを制御するためのデューティを固定することなく、電力調整部82から放電部53への電力供給を停止でき、電力消費を抑制できる。
【0065】
次に、上述したデューティを固定しない場合(
図8の例の場合)の電力供給装置20の制御部71による制御について説明する。
【0066】
電力供給装置20の制御部71は、開始条件が成立した場合に、
図9に示す制御を行う。開始条件は、例えば、プラズマを照射する操作(プラズマ照射器具10のスイッチ65のオン操作)が行われたことである。
【0067】
まず、制御部71は、ステップS11にて、スイッチング素子84A,85Bをいずれもオン状態にするオン動作を行う。
【0068】
続いて、制御部71は、ステップS12にて、スイッチング素子84A,85Bのオン動作開始のタイミング(
図8の時間T5)から所定時間が経過したか否か判断する。例えば、スイッチング素子84A,85Bのオン動作開始のタイミング(
図8の時間T5)から10%のデューティとなる時間(
図8の時間T6)が経過したか否か判断する。制御部71は、ステップS12にて、スイッチング素子84A,85Bのオン動作開始のタイミングから所定時間が経過していないと判断する場合、Noに進み、スイッチング素子84A,85Bのオン動作開始のタイミングから所定時間が経過したと判断するまで、ステップS12の処理を繰り返し行う。
【0069】
制御部71は、ステップS12にて、スイッチング素子84A,85Bのオン動作開始のタイミングから所定時間が経過したと判断する場合、Yesに進み、ステップS13を行う。制御部71は、ステップS13にて、第1導電路55Cを流れる電流が正の値(第1導電路55C側から第1導電路55F側へ流れる際に検出される電流値)から0Aになったか否か判断する。制御部71は、ステップS13にて、第1導電路55Cを流れる電流が正の値から0Aになっていないと判断する場合、Noに進み、ステップS15を行う。
【0070】
制御部71は、ステップS15にて、ステップS11でスイッチング素子84A,85Bのオン動作開始のタイミングから、周期が終了したか否か判断する。制御部71は、ステップS15にて、周期が終了したと判断する場合、Yesに進み、再びステップS11を行う。一方で、制御部71は、ステップS15にて、周期が終了していないと判断する場合、Noに進み、第1導電路55Cを流れる電流が正の値から0Aになったと判断するまで、ステップS13の処理を繰り返し行う。
【0071】
制御部71は、ステップS13にて、第1導電路55Cを流れる電流が正の値から0Aになったと判断する場合、Yesに進み、ステップS14の処理を行う。
図8の例では、時間T7で、第1導電路55Cを流れる電流が正の値から0Aになっている。制御部71は、ステップS14にて、スイッチング素子84A,85Bをオフ動作させる。
図8の例では、時間T8で、スイッチング素子84A,85Bがオフ動作する。このように、スイッチング素子84A,85Bがオン動作しており、かつスイッチング素子84A,85Bにトランス63からの還流電流が流れているときに、スイッチング素子84A,85Bをオフ動作させる。これにより、スイッチング素子84A,85Bを制御するためのデューティを固定することなく、電力調整部82から放電部53への電力供給を停止でき、電力消費を抑制できる。
【0072】
制御部71は、スイッチング素子84A,85Bにトランス63からの還流電流が流れ始めたときに、スイッチング素子をオフ動作させることが好ましい。これにより、スイッチング素子84A,85Bにトランス63からの還流電流が流れ始めたタイミングでスイッチング素子84A,85Bをオフ動作させることができる。また、制御部71は、スイッチング素子84A,85Bをオフ動作させた後、次の周期(
図8の時間T5)までスイッチング素子84A,85Bのオフ動作を維持させることが好ましい。これにより、スイッチング素子84A,85Bをオフ動作させたタイミングから次の周期まで、確実に放電部53に対する電力供給を抑制できる。
【0073】
制御部71は、ステップS14の処理の後、次の周期で再びステップS11の処理を行う。制御部71は、終了条件が成立した場合に、
図9に示す制御を終了する。終了条件は、例えば、プラズマ照射を終了する操作(プラズマ照射器具10のスイッチ65のオフ操作)が行われたことである。
【0074】
6.効果の例
本開示のプラズマ照射器具10では、スイッチング素子84A,85Bにトランス63からの還流電流が流れているときに、スイッチング素子84A,85Bをオフ動作させるため、スイッチング素子84A,85Bがオフ動作した後に電力調整部82から放電部53への電力供給を停止できる。そのため、スイッチング素子84A,85Bにトランス63からの還流電流が流れることで生じる、放電部53に対する不必要な電力供給を抑制できる。したがって、電力供給装置20は、放電部53に効率的に電力を供給できる。
【0075】
更に、本開示のプラズマ照射器具10では、制御部71は、スイッチング素子84A,85Bにトランス63からの還流電流が流れ始めたときに、スイッチング素子84A,85Bをオフ動作させることが好ましい。この構成によれば、スイッチング素子84A,85Bにトランス63からの還流電流が流れ始めたタイミングでスイッチング素子84A,85Bをオフ動作させることができる。そのため、スイッチング素子84A,85Bにトランス63からの還流電流が流れる段階におけるより早い時期から、放電部53に対する不必要な電力供給を抑制できる。したがって、電力供給装置20は、放電部53により一層効率的に電力を供給できる。
【0076】
更に、本開示のプラズマ照射器具10では、制御部71は、スイッチング素子84A,85Bをオフ動作させた後、次の周期までスイッチング素子84A,85Bのオフ動作を維持させる。この構成によれば、スイッチング素子84A,85Bをオフ動作させたタイミングから次の周期まで、確実に放電部53に対する電力供給を抑制できる。
【0077】
更に、本開示のプラズマ照射器具10では、電力調整部82は、高電位側の第1電力供給路(第4導電路83A)と低電位側の第2電力供給路(第5導電路83B)との間に設けられる第1構成部84および第2構成部85を有している。第1構成部84において、第4導電路83A側に設けられる第1スイッチング素子(スイッチング素子84A)と、第5導電路83B側に設けられる第1ダイオード(ダイオード84D)と、が第1接続点84Eを介して直列に接続されている。第2構成部85において、第4導電路83A側に設けられる第2ダイオード(ダイオード85C)と、第5導電路83B側に設けられる第2スイッチング素子(スイッチング素子85B)と、が第2接続点85Eを介して直列に接続されている。ダイオード84Dのアノードが第5導電路83Bに接続され、カソードがスイッチング素子84Aに接続されている。ダイオード85Cのアノードがスイッチング素子85Aに接続され、カソードが第4導電路83Aに接続されている。第1接続点84Eに電気的に接続される導電路(第1導電路55C)にトランス63の1次側の一方の端子(第1巻線部63Aの一方の端子)が接続され、第2接続点85Eに電気的に接続される導電路(第1導電路55F)にトランス63の1次側の他方の端子(第1巻線部63Aの他方の端子)が接続されている。
【0078】
この構成によれば、スイッチング素子84A,85Bにトランス63からの還流電流が流れているときに、スイッチング素子84A,85Bをオフ動作させることで、スイッチング素子84A,85Bがオフ動作した後に電力調整部82から放電部53への電力供給を停止できる。
【0079】
<第2実施形態>
第1実施形態では、電力調整部82が、スイッチング素子84A,84B,85A,85Bを備えていたが、スイッチング素子84B,85Aを備えていない構成であってもよい。なお、第2実施形態の説明では、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0080】
図10に示すように、電力調整部82において、第1構成部84は、スイッチング素子84Aと、ダイオード84C,84Dと、を具備している。第2構成部85は、スイッチング素子85Bと、ダイオード85C,85Dと、を具備している。
【0081】
電力供給装置20の制御は、上記第1実施形態の電力供給装置20の制御と同様に行うことができる。このような構成によっても、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0082】
<第3実施形態>
第1実施形態では、制御部71が、スイッチング素子84A,85Bのオンオフ動作を制御する構成であったが、第3実施形態では、スイッチング素子84B,85Aのオンオフ動作も制御する構成である。なお、第3実施形態の説明では、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0083】
図11に示すように、スイッチング素子84Bのゲート及びスイッチング素子85Aのゲートには、制御部71からの制御信号がゲート電圧として印加されるようになっている。制御部71は、スイッチング素子84A,85Bのオン動作と、スイッチング素子84B,85Aのオン動作と、を交互に行う制御を行う。制御部71は、
図9に示す制御を、スイッチング素子84A,85Bとともに、スイッチング素子84B,85Aに対しても行う。
【0084】
スイッチング素子84B,85Aに対する制御については、スイッチング素子84B,85Aがオン動作しており、かつスイッチング素子84B,85Aにトランス63からの還流電流が流れているときに、スイッチング素子84B,85Aをオフ動作させる。具体的には、制御部71は、
図9のステップS13と同様の処理において、第1導電路55Cを流れる電流が負の値から0Aになったと判断する場合に、スイッチング素子84B,85Aをオフ動作させる。このような構成によって、スイッチング素子84B,85Aを制御するためのデューティを固定することなく、電力調整部82から放電部53への電力供給を停止でき、電力消費を抑制できる。
【0085】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0086】
上記第1実施形態では、本発明の電力供給装置がプラズマ照射システムに適用される例を示したが、医療機器、車載装置等その他の構成に適用可能である。
【0087】
上記第1実施形態のプラズマ照射システム100では、スイッチング素子84A,84B及びスイッチング素子85A,85Bが、Nチャネル型MOSFETとして構成されていたが、その他のスイッチング素子として構成されていてもよい。例えば、スイッチング素子84A,84B及びスイッチング素子85A,85Bは、バイポーラトランジスタ、IGBTとして構成されていてもよい。
【0088】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0089】
10: プラズマ照射器具
11: 基部
13: 着脱部
15: 第1コネクタ部
17: ケーブル
17A,17B:中継配線
20: 電力供給装置
31: 第1ケース
41: 第2ケース
51: ガス誘導路
51A: 導入口
51B: 放出口
51C: 流路
51D: 第1流路
51E: 第2流路
53: 放電部(容量性負荷)
53A: 第1電極
53B: 第2電極
53C: 誘電体
55A: 第1配線
55B: 第2配線
55C,55F: 第1導電路
55D,55G: 第2導電路
55E,55H: 第3導電路
57A: 第2コネクタ部
57B: 第3コネクタ部
63: トランス
63A: 第1巻線部
63B: 第2巻線部
65: スイッチ
71: 制御部
72: 入力部
73: 出力部
74: 記憶部
75: 電流検出部
76: ガス供給部
80: 電源部
81: 電圧変換部
82: 電力調整部
83A: 第4導電路(第1電力供給路)
83B: 第5導電路(第2電力供給路)
84: 第1構成部
84A: スイッチング素子(第1スイッチング素子)
84B: スイッチング素子
84C: ダイオード
84D: ダイオード(第1ダイオード)
84E: 第1接続点
85: 第2構成部
85A: スイッチング素子
85B: スイッチング素子(第2スイッチング素子)
85C: ダイオード(第2ダイオード)
85D: ダイオード
85E: 第2接続点
86A: 第6導電路
86B: 第7導電路
100: プラズマ照射システム