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特開2024-139858在庫計画作成装置及び在庫計画作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139858
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】在庫計画作成装置及び在庫計画作成方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/087 20230101AFI20241003BHJP
【FI】
G06Q10/087
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050786
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森野 友真
(72)【発明者】
【氏名】森本 陽
(72)【発明者】
【氏名】古賀 祐一
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA16
5L049AA16
5L049CC52
(57)【要約】
【課題】良好な事業性評価指標を実現しつつ在庫購入費総額を抑制することが可能な在庫計画を作成することができる在庫計画作成装置を提供する。
【解決手段】在庫計画作成装置であって、所定の制約条件を満たすように親部品の充足率を最大化する最適化計算を行うことによって、在庫計画の候補を出力する充足率最適化部と、在庫計画の候補について事業性評価指標を算出する在庫計画評価部と、を備え、在庫計画探索部は、事業性評価指標と目標評価指標とに基づいて子部品の種類毎に子部品の在庫量の探索範囲を設定し、子部品の種類毎に子部品の在庫量を探索範囲内でランダムに決定することによって在庫計画の候補を出力し、在庫計画探索部は、在庫計画探索部から出力された在庫計画の候補の在庫購入費総額と、在庫計画評価部によって算出した事業性評価指標とに基づいて、在庫計画の最適解を出力する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親部品を構成する複数種類の子部品について前記子部品の種類毎の在庫量を規定する在庫計画を作成するための在庫計画作成装置であって、
前記在庫計画の事業性リスクの度合いを示す事業性評価指標の目標値である目標評価指標を取得するように構成されたデータ取得部と、
前記複数種類の子部品の在庫購入費の総額である在庫購入費総額について、前記在庫購入費総額の上限値である在庫購入費上限値を設定するように構成された在庫計画探索部と、
前記在庫計画探索部によって設定された前記在庫購入費上限値を前記在庫購入費総額が上回ってはならないことを含む少なくとも1つの制約条件を定義するように構成された制約条件定義部と、
前記少なくとも1つの制約条件を満たすように前記親部品の充足率を最大化する最適化計算を行うことによって、前記在庫計画の候補を出力するように構成された充足率最適化部と、
前記充足率最適化部から出力された前記在庫計画の候補について前記事業性評価指標を算出するように構成された在庫計画評価部と、
を備え、
前記在庫計画探索部は、前記在庫計画評価部によって算出した前記事業性評価指標と前記データ取得部によって取得した前記目標評価指標とに基づいて前記子部品の種類毎に前記子部品の在庫量の探索範囲を設定し、前記子部品の種類毎に前記子部品の在庫量を前記探索範囲内でランダムに決定することによって前記在庫計画の候補を出力し、
前記在庫計画評価部は、前記在庫計画探索部から出力された前記在庫計画の候補について前記事業性評価指標を算出し、
前記在庫計画探索部は、前記在庫計画探索部から出力された前記在庫計画の候補の前記在庫購入費総額と、前記在庫計画探索部から出力された前記在庫計画の候補について前記在庫計画評価部によって算出した前記事業性評価指標とに基づいて、前記在庫計画の最適解を出力するように構成された、在庫計画作成装置。
【請求項2】
前記在庫計画評価部は、前記事業性評価指標として、前記親部品の修理を依頼する場合における前記親部品の納期の遅延に関するリスクの度合いを示す指標を算出するように構成された、請求項1に記載の在庫計画作成装置。
【請求項3】
前記充足率最適化部から出力された前記在庫計画の候補と、前記充足率最適化部から出力された前記在庫計画の候補について前記在庫計画評価部によって算出した前記事業性評価指標とを関連付けて保存するように構成された評価結果保存部を更に備える、請求項1に記載の在庫計画作成装置。
【請求項4】
前記在庫計画探索部は、前記評価結果保存部に保存された前記在庫計画の候補の中から、前記目標評価指標を基準とする所定の範囲に収まる前記事業性評価指標に関連付けられた前記在庫計画の候補を抽出し、抽出した前記在庫計画の候補における前記子部品の在庫量の平均値を前記子部品の種類毎に算出し、前記子部品の種類毎に算出した前記子部品の在庫量の前記平均値に基づいて、前記子部品の種類毎に前記子部品の在庫量の前記探索範囲を設定するように構成された、請求項3に記載の在庫計画作成装置。
【請求項5】
前記在庫計画探索部は、前記在庫計画探索部によって抽出された前記在庫計画における前記子部品の在庫量のばらつきを示す統計量を前記子部品の種類毎に算出し、前記子部品の種類毎に算出した前記子部品の在庫量の前記平均値と前記統計量とに基づいて、前記子部品の種類毎に前記子部品の在庫量の前記探索範囲を設定するように構成された、請求項4に記載の在庫計画作成装置。
【請求項6】
前記充足率最適化部から出力された前記在庫計画の候補と、前記充足率最適化部から出力された前記在庫計画の候補について前記在庫計画評価部によって算出した前記事業性評価指標とを関連付けて保存し、前記在庫計画探索部から出力された前記在庫計画の候補と、前記在庫計画探索部から出力された前記在庫計画の候補について前記在庫計画評価部によって算出した前記事業性評価指標とを関連付けて保存するように構成された評価結果保存部を更に備える、請求項1に記載の在庫計画作成装置。
【請求項7】
前記在庫計画探索部は、前記評価結果保存部に保存された前記在庫計画の候補の中から、前記目標評価指標を基準とする所定の範囲に収まる前記事業性評価指標に関連付けられた前記在庫計画の候補を抽出し、抽出した前記在庫計画の中から前記在庫購入費総額に関する指標が最も小さい在庫計画を前記最適解として出力するように構成された、請求項6に記載の在庫計画作成装置。
【請求項8】
前記在庫計画探索部は、二分探索を用いて、前記在庫購入費上限値が所定の収束条件を満たすまで、前記事業性評価指標と前記目標評価指標とに基づいて前記在庫購入費上限値を変化させながら前記充足率最適化部に前記最適化計算を繰り返し実行させるように構成された、請求項1に記載の在庫計画作成装置。
【請求項9】
前記在庫計画探索部から出力された前記在庫計画の最適解に基づいて、子部品を発注するための発注情報を出力する出力部を更に備える、請求項1に記載の在庫計画作成装置。
【請求項10】
親部品を構成する複数種類の子部品について前記子部品の種類毎の在庫量を規定する在庫計画を作成するための在庫計画作成方法であって、
前記在庫計画の事業性リスクの度合いを示す事業性評価指標の目標値である目標評価指標を取得するデータ取得ステップと、
前記複数種類の子部品の在庫購入費の総額である在庫購入費総額について、前記在庫購入費総額の上限値である在庫購入費上限値を設定する在庫購入費上限値設定ステップと、
前記在庫購入費上限値を前記在庫購入費総額が上回ってはならないことを含む少なくとも1つの制約条件を定義するように構成された制約条件定義ステップと、
前記少なくとも1つの制約条件を満たすように前記親部品の充足率を最大化する最適化計算を行うことによって、前記在庫計画の候補を出力する充足率最適化ステップと、
前記充足率最適化ステップで出力された前記在庫計画の候補について前記事業性評価指標を算出する第1評価ステップと、
前記第1評価ステップで算出された前記事業性評価指標と前記データ取得ステップで取得した前記目標評価指標とに基づいて前記子部品の種類毎に前記子部品の在庫量の探索範囲を設定し、前記子部品の種類毎に前記子部品の在庫量を前記探索範囲内でランダムに決定することによって前記在庫計画の候補を出力する在庫計画探索ステップと、
前記在庫計画探索ステップで出力された前記在庫計画の候補について前記事業性評価指標を算出する第2評価ステップと、
前記在庫計画探索ステップで出力された前記在庫計画の候補の前記在庫購入費総額と、前記第2評価ステップで算出された前記事業性評価指標とに基づいて、前記在庫計画の最適解を出力する最適解出力ステップと、
を備える、在庫計画作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、在庫計画作成装置及び在庫計画作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の基本構成要素を組合せるときの組合せを最適化する最適化装置が開示されており、この最適化装置は、所定の評価条件を満たす生産スケジュールである解候補に基づいて解候補の探索範囲を限定し、その探索範囲に含まれるように、製品の並びを組み替えて新たな解候補を作成することで、生産ラインでの製品生産時間が最小になる生産スケジュールを決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-103417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、MRO(整備、修理及びオーバーホール)の対象となる製品に関して、例えば、修理の依頼から納品までにかかる期間であるTAT(Turn
Around Time)を短くするために必要以上の在庫量の部品(予備品)を保有すると、部品の調達に要するプラントの保守費用が余分にかかる懸念がある。このため、TAT等の事業性リスクの度合いを示す事業性評価指標を良好なレベルにしつつ部品の在庫購入費総額を抑制することが可能な優良な在庫計画を作成すること求められる。この点、特許文献1に記載の最適化手法では、遺伝的アルゴリズムを用いて解候補を求めて解候補の探索範囲を絞り込んでいるため、最適化計算の結果が局所解に収束するリスクが高く、上記のような優良な在庫計画を作成できない懸念がある。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態は、良好な事業性評価指標を実現しつつ在庫購入費総額を抑制することが可能な在庫計画を作成することができる在庫計画作成装置及び在庫計画作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係る在庫計画作成装置は、親部品を構成する複数種類の子部品について前記子部品の種類毎の在庫量を規定する在庫計画を作成するための在庫計画作成装置であって、
前記在庫計画の事業性リスクの度合いを示す事業性評価指標の目標値である目標評価指標を取得するように構成されたデータ取得部と、
前記複数種類の子部品の在庫購入費の総額である在庫購入費総額について、前記在庫購入費総額の上限値である在庫購入費上限値を設定するように構成された在庫計画探索部と、
前記在庫計画探索部によって設定された前記在庫購入費上限値を前記在庫購入費総額が上回ってはならないことを含む少なくとも1つの制約条件を定義するように構成された制約条件定義部と、
前記少なくとも1つの制約条件を満たすように前記親部品の充足率を最大化する最適化計算を行うことによって、前記在庫計画の候補を出力するように構成された充足率最適化部と、
前記充足率最適化部から出力された前記在庫計画の候補について前記事業性評価指標を算出するように構成された在庫計画評価部と、
を備え、
前記在庫計画探索部は、前記在庫計画評価部によって算出した前記事業性評価指標と前記データ取得部によって取得した前記目標評価指標とに基づいて前記子部品の種類毎に前記子部品の在庫量の探索範囲を設定し、前記子部品の種類毎に前記子部品の在庫量を前記探索範囲内でランダムに決定することによって前記在庫計画の候補を出力し、
前記在庫計画評価部は、前記在庫計画探索部から出力された前記在庫計画の候補について前記事業性評価指標を算出し、
前記在庫計画探索部は、前記在庫計画探索部から出力された前記在庫計画の候補の前記在庫購入費総額と、前記在庫計画評価部によって算出した前記事業性評価指標とに基づいて、前記在庫計画の最適解を出力するように構成される。
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係る在庫計画作成方法は、親部品を構成する複数種類の子部品について前記子部品の種類毎の在庫量を規定する在庫計画を作成するための在庫計画作成方法であって、
前記在庫計画の事業性リスクの度合いを示す事業性評価指標の目標値である目標評価指標を取得するデータ取得ステップと、
前記複数種類の子部品の在庫購入費の総額である在庫購入費総額について、前記在庫購入費総額の上限値である在庫購入費上限値を設定する在庫購入費上限値設定ステップと、
前記在庫購入費上限値を前記在庫購入費総額が上回ってはならないことを含む少なくとも1つの制約条件を定義するように構成された制約条件定義ステップと、
前記少なくとも1つの制約条件を満たすように前記親部品の充足率を最大化する最適化計算を行うことによって、前記在庫計画の候補を出力する充足率最適化ステップと、
前記充足率最適化ステップで出力された前記在庫計画の候補について前記事業性評価指標を算出する第1評価ステップと、
前記第1評価ステップで算出された前記事業性評価指標と前記データ取得ステップで取得した前記目標評価指標とに基づいて前記子部品の種類毎に前記子部品の在庫量の探索範囲を設定し、前記子部品の種類毎に前記子部品の在庫量を前記探索範囲内でランダムに決定することによって前記在庫計画の候補を出力する在庫計画探索ステップと、
前記在庫計画探索ステップで出力された前記在庫計画の候補について前記事業性評価指標を算出する第2評価ステップと、
前記在庫計画探索ステップで出力された前記在庫計画の候補の前記在庫購入費総額と、前記第2評価ステップで算出された前記事業性評価指標とに基づいて、前記在庫計画の最適解を出力する最適解出力ステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、良好な事業性評価指標を実現しつつ在庫購入費総額を抑制することが可能な在庫計画を作成することができる在庫計画作成装置及び在庫計画作成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る在庫計画作成装置100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図2】上記在庫計画作成装置100の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図3】充足率情報の一例を示す図である。
図4】充足率情報における子部品の在庫量と子部品の充足率との関係を示すグラフを区分線形関数に近似したグラフの一例を示す図である。
図5】在庫計画評価部5で実行されるシミュレーションの入力データの一例を示す図である。
図6】在庫計画評価部5で実行されるシミュレーションの流れを説明するための図である。
図7】在庫計画評価部5で実行されるシミュレーションの出力データの一例を示す図である。
図8】充足率最適化部10による在庫計画の作成フローを示す図である。
図9】二分探索を用いて目標充足率を更新する方法の一例を説明するための図である。
図10】在庫計画最適化部4と在庫計画評価部5とによる事業性評価指標の最適化フローの一例の一部を示す図である。
図11図10に示したフローの続きを示す図である。
図12図11に示したフローの続きを示す図である。
図13図12に示したフローの続きを示す図である。
図14】二分探索を用いて在庫購入費上限値Cthを更新する方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0011】
(在庫計画作成装置のハードウェア構成の一例)
図1は、一実施形態に係る在庫計画作成装置100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図2は、上記在庫計画作成装置100の機能的な構成の一例を示すブロック図である。在庫計画作成装置100は、後述するように、親部品(アセンブリ)を構成する複数種類の子部品について、子部品の種類毎の子部品の在庫量を規定する在庫計画(以下、単に「在庫計画」という。)を作成するように構成されている。在庫計画との対象となる親部品及び子部品の各々は、例えばMRO(整備、修理及びオーバーホール)事業の対象となる製品を構成する部品である。なお、以降の各実施形態において、「親部品を構成する複数種類の子部品」とは、親部品を構成する全ての種類の子部品を意味する。
【0012】
図1に示すように、在庫計画作成装置100は、例えばプロセッサ72、RAM(Random Access Memory)74、ROM(Read Only Memory)76、HDD (Hard Disk Drive)78、入力I/F80、及び出力I/F82を含み、これらがバス84を介して互いに接続されたコンピュータを用いて構成される。在庫計画作成装置100は、在庫計画作成装置100の各機能を実現するプログラムをコンピュータが実行することにより構成される。以下で説明する在庫計画作成装置100における各部の機能は、例えばROM76に保持されるプログラムをRAM74にロードしてプロセッサ72で実行するとともに、RAM74やROM76におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。在庫計画作成装置100を構成するハードウェアは、1つの場所に集約されていてもよいし、複数の場所に分散して設けられていてもよい。
【0013】
(在庫計画作成装置の機能的な構成の一例)
図2に示すように、在庫計画作成装置100は、データ取得部1、制約条件定義部2、目的関数定義部3、在庫計画最適化部4、在庫計画評価部5、評価結果保存部6、評価条件保存部7及び出力部8を備える。
【0014】
データ取得部1は、以下で説明する部品構成情報、充足率情報及び目標評価指標を取得するように構成されている。
【0015】
部品構成情報は、親部品を構成するために必要な子部品の種類及び数を示す情報、すなわち、親部品を構成するために必要な子部品の数を子部品の種類毎に示す情報である。具体的には、例えば親部品Aが1個の子部品aと1個の子部品bとによって構成されていること等を示す情報である。ここで、Aは親部品の種類を示す識別情報であり、a及びbの各々は子部品の種類を示す識別情報である。
【0016】
充足率情報は、図3に例示するように、親部品を構成する複数種類の子部品について、子部品の在庫量と子部品の充足率との関係を子部品の種類毎に示す情報である。ここで、子部品の充足率とは、在庫計画の対象とする期間に子部品の不足が生じない確率を子部品の種類毎に示した値であり、図3に示す例では、親部品を構成する子部品a~fについて、子部品の在庫量と子部品の充足率との関係を示すグラフが子部品の種類毎に示されている。
【0017】
目標評価指標は、後述する在庫計画最適化部4で算出された在庫計画の事業性リスクの度合いを示す事業性評価指標の目標値である。事業性評価指標については後述する。
【0018】
親部品の充足率は、親部品を構成する複数種類の子部品の充足率を総乗することで算出される値であり、下記式(1)によって定義される。
ここで、Pは親部品の充足率であり、mは親部品を構成する子部品の種類の数であり、iは子部品の種類であり、pは子部品i(ただし、1≦i≦mを満たす。)の充足率である。
以下の説明において、目標充足率とは、親部品の目標充足率、すなわち、親部品の充足率の目標値を意味することとする。
【0019】
制約条件定義部は、在庫計画の作成に用いる複数の制約条件を定義するように構成されている。ここでは、制約条件定義部2が定義する複数の制約条件は、以下で説明する制約条件(a)~(e)を含む。
【0020】
制約条件定義部2は、子部品の種類毎の子部品の在庫量と子部品の充足率との関係がデータ取得部によって取得した充足率情報に基づいて規定されることを制約条件(a)として定義する。制約条件定義部2は、制約条件(a)を線形関数を用いて定義するために、データ取得部1によって取得した充足率情報における子部品の在庫量と子部品の充足率との関係を示す非線形の各グラフ(図3参照)を図4に例示するように複数の区間に区切って区間毎に線形関数に近似することで、該非線形の各グラフを区分線形関数に近似(整形)する機能を有する。そして、制約条件定義部2は、子部品の種類毎の子部品の在庫量と子部品の充足率との関係が上記区分線形関数に従って規定されることを制約条件(a)として定義する。
【0021】
また、制約条件定義部2は、下記式(2)を近似した不等式である下記式(3)を制約条件(b)として定義するように構成される。
なお、上記式(2)及び(3)において、mは親部品を構成する子部品の種類の数であり、i(ただし、1≦i≦mを満たす。)は子部品の種類であり、pは子部品iの充足率であり、Pgoalは親部品の目標充足率である。
【0022】
上記式(2)は、親部品を構成する全ての種類の子部品の充足率の総乗によって算出される親部品の充足率が目標充足率を下回ってはならない、という制約条件を意味する。また、上記式(3)は、親部品を構成する全ての種類の子部品の充足率の相加平均が目標充足率のm乗根を下回ってはならない、という制約条件を意味する。制約条件定義部2は、相加平均が相乗平均以上となることを利用して、上記式(2)の近似式である上記式(3)を制約条件(b)として定義する。
【0023】
また、制約条件定義部2は、制約条件(c)として、親部品を構成する複数種類の子部品について、子部品の種類毎に規定された子部品の在庫量の上限値を子部品の在庫量が上回ってはならないことを規定している。すなわち、制約条件定義部2は、子部品の種類毎に規定された子部品の在庫量をx、子部品の種類毎に規定された子部品の在庫量の上限値をuとすると、x≦uを満たすことを制約条件(c)として規定している。
【0024】
また、親部品を構成する複数種類の子部品の在庫購入費の総額である在庫購入費総額をC、在庫購入費総額Cの上限値である在庫購入費上限値をCthとすると、制約条件定義部2は、制約条件(d)として、後述する在庫計画探索部12によって設定された在庫購入費上限値Cthを在庫購入費総額Cが上回ってはならないことを規定する。以下では、親部品を構成する複数種類の子部品の在庫購入費の総額Cを在庫購入費総額Cと記載し、在庫購入費総額Cの上限値を在庫購入費上限値Cthと記載する。
【0025】
また、制約条件定義部2は、制約条件(e)として、在庫計画評価部5によって算出された事業性評価指標が、データ取得部1によって取得した目標評価指標を基準とする所定範囲内(例えば目標評価指標から所定値以内の範囲)に収まらなければならないことを規定する。なお、事業性評価指標の詳細については後述する。
【0026】
目的関数定義部3は、在庫計画の作成に用いる目的関数を定義するように構成される。ここでは、目的関数定義部3は、在庫計画最適化部4で作成する在庫計画の在庫購入費総額Cを目的関数として定義する。ここで、親部品を構成する子部品の種類の数をm、子部品の種類をi(ただし、1≦i≦mを満たす。)、子部品iの単価をcとすると、在庫購入費総額Cは、下記式(4)によって算出される。
【0027】
在庫計画最適化部4は、制約条件定義部2で定義された上記制約条件(a)~(e)を全て満たすように、目的関数定義部3で目的関数として定義された在庫購入費総額Cを最小化する最適化計算を行うことによって、在庫計画を作成する。在庫計画最適化部4によって作成される在庫計画が規定する情報は、親部品を構成する複数種類の子部品について、子部品の充足率、子部品の在庫量及び子部品の在庫購入費を子部品の種類毎に含むとともに、在庫購入費総額C及び親部品の充足率を含む。在庫計画最適化部4は、上記制約条件(a)~(d)を満たすように親部品の充足率を最大化する在庫計画の候補を算出する充足率最適化部10と、上記制約条件(e)を満たす範囲で在庫購入費総額Cを最小化する最適な在庫計画を探索する在庫計画探索部12とを含む。なお、在庫計画の候補は、親部品を構成する複数種類の子部品について、子部品の種類毎の子部品の在庫量を規定する情報である。充足率最適化部10と在庫計画探索部12の各々の詳細については後述する。
【0028】
在庫計画評価部5は、在庫計画最適化部4から出力される在庫計画の候補について、事業性リスクの度合いを示す評価指標(以下、単に「事業性評価指標」という。)をシミュレーションによって算出するように構成されている。ここでの事業性リスクとは、例えば上述のMRO事業の事業性に関するリスクであり、事業性評価指標の例については後述する。
【0029】
例えば図5に示すように、在庫計画評価部5には、在庫計画最適化部4から出力された在庫計画の候補と、シミュレーションの条件とが入力される。シミュレーションの条件は、例えばシミュレーションの期間すなわち在庫計画の対象とする期間(例えば5年間等)及びシミュレーションの回数(例えば100回等)等を含む。シミュレーションの条件は、例えばデータ取得部1から取得されて在庫計画評価部5に入力されてもよいし、予め評価条件保存部7に保存されていたシミュレーションの条件が在庫計画評価部5に入力されてもよい。
【0030】
例えば図6に示すように、在庫計画評価部5は、部品の使用、補充、及び欠品による新たな調達等について、実際の在庫管理の運用を模擬したシミュレーションを実施する。図6に示す例では、1か月毎の在庫の使用、補充、及び欠品による新たな調達等を模擬したシミュレーションが示されており、欠品が発生するとTATを増加させ、納期の遅延が発生することをシミュレートしている。
【0031】
在庫計画評価部5は、入力された在庫計画の候補に対する上記シミュレーションの結果として、在庫計画の候補の事業性評価指標を出力するように構成されており、在庫計画評価部5から出力される事業性評価指標は、例えば図7に示すように、親部品の納期の遅延に関するリスクの度合いを示す指標を含んでいてもよい。図7に示す例では、在庫計画評価部5から出力される事業性評価指標は、TAT(Turn
Around Time)、納期遅延発生確率、納期遅延合計期間及び在庫金額合計を含む。
【0032】
TATは、親部品の修理の依頼から納品までに実際にかかる期間であり、例えば、親部品の分解検査を行う期間と、親部品の分解検査の完了から子部品を発注するまでの期間と、子部品の調達期間と、親部品の修理及び組立を行う期間との合計であってもよい。納期遅延発生確率は、シミュレーションの対象とする期間にTATが納期を超過する割合であり、例えば、納期を超過した部品の数を修理依頼があった部品の数で除算した値又はその値を百分率で示した値であってもよい。納期遅延合計期間は、在庫計画の対象とする期間においてTATが納期を超過している期間(=TAT-納期)の合計であり、例えば、シミュレーションの対象とする期間においてTATが納期を超過している期間(=TAT-納期)の合計を月数で示した納期遅延合計月数であってもよい。在庫金額合計は、シミュレーションの対象とする期間に保有する在庫にかかる金額の合計であり、在庫金額合計は上記式(4)によって算出される在庫購入費総額Cをシミュレーションの対象とする期間に亘って積算した金額に相当する。
【0033】
評価結果保存部6は、在庫計画最適化部4によって作成された在庫計画の候補と、在庫計画最適化部4によって作成された在庫計画の候補について在庫計画評価部5によって算出した事業性評価指標とを関連付けて保存する。より詳細には、充足率最適化部10から出力された在庫計画の候補と、充足率最適化部10から出力された在庫計画の候補について在庫計画評価部5によって算出した事業性評価指標とを関連付けて保存する。また、評価結果保存部6は、在庫計画探索部12から出力された在庫計画の候補と、在庫計画探索部12から出力された在庫計画の候補について在庫計画評価部5によって算出した事業性評価指標とを関連付けて保存する。
【0034】
出力部8は、在庫計画探索部12から出力された在庫計画の最適解を在庫計画作成装置100の外部(例えばディスプレイ等の表示装置20又は不図示の在庫管理システム等)に出力してもよいし、在庫計画探索部12から出力された在庫計画の最適解に基づいて、子部品を発注する発注情報を在庫計画作成装置100の外部(例えば部品を納入する業者の部品受注システム22等)に送信してもよい。これにより、在庫計画最適化部4によって作成された在庫計画の最適解に基づいて、部品を納入する業者から必要な子部品が納入される。
【0035】
(充足率最適化部の機能の詳細)
充足率最適化部10は、数理計画法の1つである混合整数線形計画法を用いて最適化問題を解く最適化ソルバーを含む。充足率最適化部10は、データ取得部1によって取得した部品構成情報及び充足率情報並びに在庫計画探索部12によって設定された在庫購入費上限値Cthを用いて、制約条件定義部2で定義された上記制約条件(a)、制約条件(b)、制約条件(c)及び制約条件(d)を満たすように、在庫購入費総額Cを最小化する最適化計算を上記最適化ソルバーを用いて行うことによって、在庫計画の候補を出力する。
【0036】
充足率最適化部10は、以下で説明するように、二分探索(昇順又は降順に整列済みのデータ群の探索範囲を半分に絞り込む操作を繰り返して高速に解の探索を行う手法)を用いて目標充足率を更新する機能を備えており、目標充足率が所定の収束条件を満たすまで、二分探索を用いて目標充足率を変化させながら上記第1最適化計算を繰り返し実行する。
【0037】
図8は、充足率最適化部10による在庫計画の作成フローを示す図である。図9は、二分探索を用いて目標充足率を更新する方法の一例を説明するための図である。
図8及び図9に示すように、S101において、充足率最適化部10は、充足率の探索範囲の最小値を0%に設定するとともに充足率の探索範囲の最大値を100%に設定し、上記最小値である0%と上記最大値である100%との中間値(上記最小値と最大値との和の半分の値)である50%を目標充足率の初期値として設定する。
【0038】
S102において、充足率最適化部10は、データ取得部1によって取得した部品構成情報及び充足率情報を用いて、制約条件定義部2で定義された上記制約条件(a)、制約条件(b)及び制約条件(c)を満たすように、混合整数線形計画法を用いて在庫購入費総額Cを最小化する最適化計算を行うことによって、在庫計画の候補を算出する。在庫計画の候補が規定する情報は、親部品を構成する複数種類の子部品について、子部品の充足率、子部品の在庫量及び子部品の在庫購入費を子部品の種類毎に含むとともに、在庫購入費総額C及び親部品の充足率を含む。
【0039】
S103において、充足率最適化部10は、S102で算出した在庫計画の候補の在庫購入費総額Cが在庫計画探索部12によって設定された在庫購入費上限値Cthを上回っているか否かを判定する。すなわち、S103において、充足率最適化部10は、上記制約条件(d)を満たしていないかを判定する。
【0040】
S103において、S102で算出した在庫計画における在庫購入費総額Cが在庫計画探索部12によって設定された在庫購入費上限値Cthを上回っていると判定した場合には、S104において、S102の最適化計算で用いた目標充足率(図9に示す例では50%)を次の充足率の探索範囲の最大値に設定するとともに、次の充足率の探索範囲の最小値(図6に示す例では0%)を維持し、上記最小値と上記最大値との中間値(図6に示す例では上記最小値と最大値との和の半分の値である25%)に次の目標充足率を設定する。
【0041】
S103において、S102で算出した在庫計画における在庫購入費総額Cが在庫計画探索部12によって設定された在庫購入費上限値Cthを上回っていないと判定した場合には、S105において、S102の第1最適化計算で用いた目標充足率(図6に示す例では50%)を次の目標充足率の探索範囲の最小値に設定するとともに、次の目標充足率の探索範囲の最大値(図6に示す例では100%)を維持し、上記最小値と上記最大値との中間値(図6に示す例では上記最小値と最大値との和の半分の値である75%)に次の目標充足率を設定する。
【0042】
S106において、目標充足率が所定の収束条件を満たしたか否か、すなわち、S102の最適化計算で用いた目標充足率とS105で設定した次の目標充足率との差分の絶対値が予め設定された閾値以下であるか否かを判定する。S106において、S102の最適化計算で用いた目標充足率とS105で設定した次の目標充足率との差分の絶対値が予め設定された閾値以下ではないと判定した場合(目標充足率が所定の収束条件を満たしていないと判定した場合)には、S102に戻って、S105で設定した次の目標充足率を制約条件(b)に適用して再びS102の最適化計算を行う。
【0043】
S106において、S102の最適化計算で用いた目標充足率とS105で設定した次の目標充足率との差分の絶対値が予め設定された閾値以下であると判定した場合(目標充足率が所定の収束条件を満たしていると判定した場合)には、親部品の充足率が最大化されたとみなせるため、S107において、充足率最適化部10は、S102で最後に算出した在庫計画の候補を、上記制約条件(a)~(d)を満たしつつ親部品の充足率が最大化された在庫計画の候補として出力する。以上のようにS101~S107のフローを実行して親部品の充足率を最大化した在庫計画の候補を出力することを、以下では「充足率最適化」と記載する。
【0044】
図8及び図9を用いて説明した充足率最適化部10では、在庫計画探索部12によって設定された在庫購入費上限値Cthを在庫購入費総額Cが上回らず、且つ、目標充足率が所定の収束条件を満たすまで、二分探索を用いて目標充足率を変化させながら最適化計算を繰り返し実行する。これにより、在庫購入費上限値Cthを在庫購入費総額Cが上回らないように、考えられる全ての在庫計画(子部品の種類毎の在庫量の全ての組み合わせ)の中から、親部品の充足率を最大化した在庫計画を作成することができる。
【0045】
また、区分線形関数を用いて上記第1制約条件を規定し、親部品を構成する複数種類の子部品の充足率の相加平均を用いた上記式(3)によって上記制約条件(b)を規定することにより、数理計画法の一種である混合整数線形計画法を用いて厳密解に近い最適解としての在庫計画を作成することができる。
【0046】
(事業性評価指標の最適化フローの一例)
図10は、在庫計画最適化部4と在庫計画評価部5とによる事業性評価指標の最適化フローの一例の一部を示す図である。図11は、図10に示したフローの一部の続きを示す図である。図12は、図11に示したフローの一部の続きを示す図である。図13は、図12に示したフローの一部の続きを示す図である。図14は、二分探索を用いて在庫購入費上限値Cthを更新する方法の一例を説明するための図である。
【0047】
図10に示すように、S201において、在庫計画探索部12は、在庫購入費上限値Cthの探索範囲の最大値Cthmax及び最小値Cthminを設定する。具体的には、親部品を構成する子部品の種類の数をm、子部品の種類をi(ただし、1≦i≦mを満たす。)、子部品iの単価をc、子部品iの充足率が約100%(例えば99.999%)になる子部品iの在庫量をxi99とすると、在庫計画探索部12は、親部品を構成する複数種類の子部品の在庫購入費上限値Cthの探索範囲の最大値Cthmaxを、下記式(5)によって算出される値に設定し、在庫購入費上限値Cthの探索範囲の最小値Cthminを0円に設定する。例えば図14に示す例では、最大値Cthmaxは100万円に設定され、最小値Cthminは0円に設定されている。
【0048】
S202において、在庫計画探索部12は、S201で設定した最大値Cthmax及び最小値Cthminの中間値(すなわち上記最小値Cthminと最大値Cthmaxとの和の半分の値)を在庫購入費上限値Cthとして設定する。すなわち、S202において、在庫計画探索部12は、S201で設定した最大値Cthmax及び最小値Cthminを用いて、(Cthmax+Cthmin)/2を算出し、その算出結果を在庫購入費上限値Cthとして設定する。例えば図12に示す例では、在庫計画探索部12は、S202における在庫購入費上限値Cthは(Cthmax+Cthmin)/2を算出した結果である50万円に設定されている。
【0049】
S203において、充足率最適化部10は、上記S101~S107からなる上述の充足率最適化を実行することで、制約条件(a)~(d)を満たしつつ親部品の充足率が最大化された在庫計画の候補を出力する。ここで、S203で実行する充足率最適化において、S202又は後述のS209若しくはS210で在庫計画探索部12によって設定された在庫購入費上限値Cthは、上記S103の判定(S102で算出した在庫計画の候補における在庫購入費総額Cが在庫計画探索部12によって設定された在庫購入費上限値Cthを上回っているかどうかの判定)に用いられる。
【0050】
S204において、S203で充足率最適化部10から出力された在庫計画の候補が在庫計画評価部5に入力され、在庫計画評価部5は、充足率最適化部10から出力された在庫計画の候補について上述のシミュレーションを実行して事業性評価指標を算出する(第1評価ステップ)。
【0051】
S205において、在庫計画探索部12は、S203で充足率最適化部10から出力された在庫計画の候補と、S204で当該候補について算出された事業性評価指標とを関連付けて評価結果保存部6に保存する。
【0052】
S206において、在庫計画探索部12は、前回設定された在庫購入費上限値Cthから現在設定されている在庫購入費上限値Cthを減じた値の絶対値が予め設定された閾値α以下であるか否かを判定する。S206において、前回設定された在庫購入費上限値Cthから現在設定されている在庫購入費上限値Cthを減じた値の絶対値が閾値α以下である場合にはS221へ移行し、閾値α以下でない場合にはS207へ移行する。また、S206において、現在設定されている在庫購入費上限値Cthが在庫購入費上限値Cthの初期値すなわちS202で設定された在庫購入費上限値Cthである場合には、前回設定された在庫購入費上限値Cthは存在しないため、前回設定された在庫購入費上限値Cthから現在されている在庫購入費上限値Cthを減じた値の絶対値が予め設定された閾値α以下ではないものとみなしてS207に移行する。換言すれば、現在設定されている在庫購入費上限値Cthが在庫購入費上限値Cthの初期値すなわちS202で設定された在庫購入費上限値Cthである場合には、S206を省略してS205からS207へ移行する。なお、現在設定されている在庫購入費上限値Cthとは、直近のS203の充足率最適化で制約条件(d)に用いられた在庫購入費上限値Cthを意味する。
【0053】
S207において、在庫計画探索部12は、S205で評価結果保存部6に保存された事業性評価指標(すなわちS204で算出された事業性評価指標)とデータ取得部1によって取得した目標評価指標との差分の絶対値が予め設定された閾値ε以下であるか否かを判定する。
【0054】
S207において、S205で評価結果保存部6に保存された事業性評価指標とデータ取得部1によって取得された目標評価指標との差分の絶対値が予め設定された閾値ε以下でない場合には、S208に移行し、S205で評価結果保存部6に保存された評価値とデータ取得部1によって取得された目標評価指標との差分の絶対値が予め設定された閾値ε以下である場合には、S209に移行する。
【0055】
S208において、在庫計画探索部12は、S205で評価結果保存部6に保存された事業性評価指標が、データ取得部1によって取得された目標評価指標よりも小さいか否かを判定する。S208において、S205で評価結果保存部6に保存された事業性評価指標がデータ取得部1によって取得された目標評価指標よりも小さい場合には、S209に移行し、S205で評価結果保存部6に保存された事業性評価指標がデータ取得部1によって取得された目標評価指標よりも小さくない場合には、S210に移行する。
【0056】
S209において、在庫計画探索部12は、現在設定されている在庫購入費上限値Cth(図14に示す例では50万円)すなわち直近のS203の充足率最適化で制約条件(d)に用いられた在庫購入費上限値Cthを、次の在庫購入費上限値Cthの探索範囲の最大値Cthmaxに設定するとともに、現在の在庫購入費上限値Cthの探索範囲の最小値Cthminを次の在庫購入費上限値Cthの探索範囲の最小値Cthminに維持し、上記最小値Cthminと上記最大値Cthmaxとの中間値(すなわち上記最小値Cthminと最大値Cthmaxとの和の半分の値)を、次の充足率最適化に用いる在庫購入費上限値Cthに設定する。図14に示す例では、次の在庫購入費上限値Cthの探索範囲の最大値Cthmaxである50万円と、次の在庫購入費上限値Cthの探索範囲の最小値Cthminである0円との中間値である25万円を、次の充足率最適化に用いる在庫購入費上限値Cthに設定する。在庫計画最適化部4は、S209の次にS203に戻ってS203以降のフローをS206の判定がYesとなるまで繰り返し実行する。
【0057】
S210において、在庫計画探索部12は、現在設定されている在庫購入費上限値Cth(図14に示す例では50万円)すなわち直近のS203の充足率最適化で制約条件(d)に用いた在庫購入費上限値Cthを、次の在庫購入費上限値Cthの探索範囲の最小値Cthminに設定するとともに、現在の在庫購入費上限値Cthの探索範囲の最大値Cthmaxを次の在庫購入費上限値Cthの探索範囲の最大値Cthmaxに維持し、上記最小値Cthminと上記最大値Cthmaxとの中間値(すなわち上記最小値Cthminと最大値Cthmaxとの和の半分の値)を、次の充足率最適化に用いる在庫購入費上限値Cthに設定する。図14に示す例では、次の在庫購入費上限値Cthの探索範囲の最小値Cthminである50万円と、次の在庫購入費上限値Cthの探索範囲の最大値Cthmaxである100万円との中間値である75万円を、次の充足率最適化に用いる在庫購入費上限値Cthに設定する。在庫計画最適化部4は、S210の次にS203に戻ってS203以降のフローをS206の判定がYesとなるまで繰り返し実行する。
【0058】
S221において、在庫計画探索部12は、評価結果保存部6に保存された在庫計画の候補と事業性評価指標との組み合わせ(S205で相互に関連付けられた在庫計画の候補と事業性評価指標の組み合わせ)の中から、データ取得部1によって取得された目標評価指標を基準とする所定の範囲に収まる事業性評価指標に関連付けられた在庫計画の候補(優良な候補)を抽出する。ここで、目標評価指標を基準とする所定の範囲とは、例えば、目標評価指標を中心に予め定められた許容差εに収まる範囲、すなわち、目標評価指標から許容差εを減算した値から、目標評価指標に許容差εを加算した値までの範囲である。
【0059】
S221からS222に移行した場合には、S222において、在庫計画探索部12は、S221で抽出した在庫計画の候補における子部品iの在庫量xの平均値averageiを算出するとともに、S221で抽出した在庫計画の候補における子部品iの在庫量xの標準偏差σiを算出する。また、S232からS222に移行した場合には、S222において、在庫計画探索部12は、S232で抽出した在庫計画の候補における子部品iの在庫量xの平均値averageiを算出するとともに、S232で抽出した在庫計画の候補における子部品iの在庫量xの標準偏差σiを算出する。
【0060】
S223において、在庫計画探索部12は、S222で算出した標準偏差σiが0であるか否かを判定する。
【0061】
S223においてS222で算出した標準偏差σiが0であると判定された場合には、S224において、在庫計画探索部12は、S222で算出した上記平均値averageiに予め定められた定数a1を加算した値を算出し、算出した値(=averagei+a1)を子部品iの在庫量xの探索範囲の最大値supply_MAXiとして設定する。また、S224において、在庫計画探索部12は、S222で算出した上記平均値averageiから予め定められた定数a2を減算した値を算出し、算出した値(=averagei-a2)を子部品iの在庫量xの探索範囲の最小値supply_MINiとして設定する。
【0062】
S223においてS222で算出した標準偏差σiが0でないと判定された場合には、S225において、在庫計画探索部12は、下記式(6)及び下記式(7)を用いて子部品iの在庫量xの探索範囲の最大値supply_MAXi及び子部品iの在庫量xの探索範囲の最小値supply_MINiの各々を算出及び設定する。すなわち、在庫計画探索部12は、最小値supply_MINiから最大値supply_MAXiまでの範囲を、子部品iの在庫量xの探索範囲として設定する。
supply_MAXi=averagei+k1×σi ・・・(6)
supply_MINi=averagei-k2×σi ・・・(7)
ここで、k1及びk2の各々は、在庫量xのばらつきを調節するために設定されるパラメータである。
【0063】
S226において、在庫計画探索部12は、親部品を構成する全ての子部品について、S224で設定された子部品iの在庫量xの探索範囲内で、子部品iの在庫量を乱数を用いてランダムに決定することにより、子部品の種類毎の子部品の在庫量を規定する在庫計画の候補を出力する。S226では、在庫計画探索部12は、S201~S210の繰り返しにおいて最後にS203で実行した充足率最適化で用いた在庫購入費上限値Cth(すなわち現在設定されている購入費上限値Cth)を超える在庫計画の候補をS226の出力の対象から除外してもよい。
【0064】
S227において、S226で在庫計画探索部12から出力された在庫計画の候補が在庫計画評価部5に入力され、在庫計画評価部5は、在庫計画探索部12から出力された在庫計画の候補について上述のシミュレーションを実行して事業性評価指標を算出する(第2評価ステップ)。
【0065】
S228において、在庫計画探索部12は、S226で在庫計画探索部12から出力された在庫計画の候補と、S227で当該候補について算出された事業性評価指標とを関連付けて評価結果保存部6に保存する。
【0066】
S229において、在庫計画探索部12は、在庫計画探索部12の計算時間(すなわち在庫計画探索部12による在庫計画の候補の探索にかかっている時間)が予め定められた上限時間未満であるか否かを判定し、在庫計画探索部12の計算時間が予め定められた上限時間未満であると判定した場合にはS230に移行し、在庫計画探索部12の計算時間が予め定められた上限時間未満でないと判定した場合にはS240に移行する。
【0067】
S230において、在庫計画探索部12は、在庫計画の候補を探索した回数が予め指定された回数に達したか否かを判定する。ここで、在庫計画の候補を探索した回数とは、S226からS228に至るフローを在庫計画の候補の1回の探索とみなした場合における在庫計画の候補を探索した回数であり、S226からS228に至るフローを実行した回数に相当する。
【0068】
S230において、在庫計画の候補を探索した回数が予め指定した回数に達したと判定された場合には、S231へ移行し、在庫計画の候補を探索した回数が予め指定した回数に達していないと判定された場合には、S226に戻る。
【0069】
在庫計画の探索をS230に記載の予め指定された回数行うこと(S224で設定した探索範囲についてS226~S228のフローを予め指定された回数繰り返すこと)を1セットの探索と定義した場合に、S231において、在庫計画探索部12は、直近の1セットの探索で評価結果保存部6に保存された在庫計画の候補の中に、前回の1セットの探索で評価結果保存部6に保存された在庫計画の候補の最優良解よりも在庫購入費総額Cが小さくなる在庫計画の候補があるか否かを判定する。なお、前回の1セットの探索で評価結果保存部6に保存された在庫計画の候補の最優良解とは、前回の1セットの探索で評価結果保存部6に保存された在庫計画の候補のうち在庫購入費総額Cが最も小さい在庫計画の候補である。ただし、S231において、直近の1セットの探索が最初のセットである場合(S226~S228のフローを1回しか実行していない場合)には、在庫計画探索部12は、直近の1セットの探索で評価結果保存部6に保存された在庫計画の候補の中に、S221で抽出した在庫計画の候補の最優良解よりも在庫購入費総額Cが小さくなる在庫計画の候補があるか否かを判定する。なお、S221で抽出した在庫計画の候補の最優良解とは、S221で抽出した在庫計画の候補のうち在庫購入費総額Cが最も小さい在庫計画の候補である。
【0070】
S231において、在庫計画探索部12は、直近の1セットの探索で評価結果保存部6に保存された在庫計画の候補の中に、前回の1セットの探索で評価結果保存部6に保存された在庫計画の候補の最優良解よりも在庫購入費総額Cが小さくなる在庫計画の候補があると判定された場合(ただし、直近の1セットの探索が最初のセットである場合には、直近の1セットの探索で評価結果保存部6に保存された在庫計画の候補の中にS221で抽出した在庫計画の候補の最優良解よりも在庫購入費総額Cが小さくなる在庫計画の候補がある場合)にはS232へ移行する。また、S231において、在庫計画探索部12は、直近の1セットの探索で評価結果保存部6に保存された在庫計画の候補の中に、前回の1セットの探索で評価結果保存部6に保存された在庫計画の候補の最優良解よりも在庫購入費総額Cが小さくなる在庫計画の候補がないと判定された場合(ただし、直近の1セットの探索が最初のセットである場合には、直近の1セットの探索で評価結果保存部6に保存された在庫計画の候補の中にS221で抽出した在庫計画の候補の最優良解よりも在庫購入費総額Cが小さくなる在庫計画の候補がない場合)にはS226に戻る。
【0071】
S232において、在庫計画探索部12は、直近の1セットの探索で評価結果保存部6に保存された在庫計画の候補のうち、前回の1セットの探索で評価結果保存部6に保存された在庫計画の候補の最優良解よりも在庫購入費総額Cが小さくなる在庫計画の候補を抽出する。ただし、S232において、直近の1セットの探索が最初のセットである場合には、在庫計画探索部12は、直近の1セットの探索で評価結果保存部6に保存された在庫計画の候補のうち、S221で抽出した在庫計画の候補の最優良解よりも在庫購入費総額Cが小さくなる在庫計画の候補を抽出し、S222に戻る。
【0072】
S240において、在庫計画探索部12は、評価結果保存部6に保存された在庫計画の候補の中から、目標評価指標を基準とする所定の範囲内に収まる事業評価指標に関連付けられた在庫計画の候補を抽出し、抽出した在庫計画の候補の中から、在庫購入費総額Cが最も小さい在庫計画の候補を、在庫計画の最適解として出力する。ここで、目標評価指標を基準とする所定の範囲とは、例えば、目標評価指標を中心に予め定められた許容差εに収まる範囲、すなわち、目標評価指標から許容差εを減算した値から、目標評価指標に許容差εを加算した値までの範囲であってもよい。
【0073】
S241において、出力部8は、在庫計画探索部12から出力された在庫計画の最適解を在庫計画作成装置100の外部に出力する。出力部8は、在庫計画探索部12から出力された在庫計画の最適解に基づいて子部品を発注する発注情報を在庫計画作成装置100の外部(例えば部品を納入する業者の部品受注システム等)に出力(送信)してもよい。ここでの発注情報とは、子部品の種類毎に子部品を発注する個数を示す情報を少なくとも含む。これにより、在庫計画探索部12から出力された在庫計画の最適解に基づいて、部品を納入する業者から在庫計画に基づいて子部品が納入される。
【0074】
上述のように、上記在庫計画作成装置100では、充足率最適化部10は、在庫購入費総額Cが在庫購入費上限値Cthを上回らないように、親部品の充足率を最適化した在庫計画の候補を出力する。そして、在庫計画探索部12は、その在庫計画の候補について在庫計画評価部5によって算出した事業性評価指標と目標評価指標とに基づいて子部品の種類毎に子部品の在庫量の探索範囲を設定する。これにより、複数種類の子部品の在庫量の膨大な組み合わせの中から、目標評価指標に近い事業性評価指標を実現する優良な在庫計画における子部品の種類毎の在庫量に基づいて、子部品の種類毎の在庫量の探索範囲を上記優良な在庫計画が存在する範囲に絞り込むことができる。また、在庫計画探索部12は、そのようにして絞り込んだ探索範囲内で子部品の種類毎に子部品の在庫量をランダムに決定することによって在庫計画の候補を出力する。そして、在庫計画探索部12は、在庫計画探索部12から出力された在庫計画の候補の在庫購入費総額Cと、該候補について在庫計画評価部5によって算出した事業性評価指標とに基づいて、在庫計画の最適解を出力する。
【0075】
これにより、事業性評価指標が悪い(事業性評価指標が目標評価指標から遠い)在庫計画や在庫購入費総額が高額な在庫計画等の局所解の探索を抑制することができ、良好な事業性評価指標を実現しつつ在庫購入費を抑制することが可能な優良な在庫計画を在庫計画の最適解として出力することができる。また、事業性リスクのばらつきを考慮した在庫計画の最適解を出力することができる。
【0076】
また、上述のように、在庫計画探索部12は、二分探索を用いて、S206に記載の所定の収束条件を在庫購入費上限値Cthが満たすまで、事業性評価指標と目標評価指標とに基づいて在庫購入費上限値Cthを変化させながら充足率最適化部10に充足率最適化を繰り返し実行させる。これにより、在庫計画探索部12は、在庫購入費総額Cが在庫購入費上限値Cthを超えない範囲で、目標評価指標に近い事業性評価指標を実現しつつ親部品の充足率を最大化する在庫計画の候補を出力することができる。
【0077】
また、上述のように、在庫計画探索部12は、事業性評価指標が目標評価指標に近い範囲(目標評価指標を基準とする所定の範囲)に含まれる在庫計画について、子部品の種類毎の子部品の在庫量のばらつきを示す統計量(例えば上述の標準偏差σi)を算出し、子部品の種類毎に算出した子部品の在庫量の平均値と統計量とを考慮して、子部品の種類毎に子部品の在庫量の探索範囲を設定する。これにより、解の精度を高めてより優良な在庫計画を在庫計画の最適解として出力する可能性を高めることができる。
【0078】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0079】
例えば、上述した実施形態では、S240において、在庫計画探索部12は、抽出した在庫計画の候補の中から、在庫購入費総額Cに関する指標としての上述した在庫金額合計が最も小さい在庫計画の候補を、在庫計画の最適解として出力してもよい。
【0080】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0081】
[1]本開示の少なくとも一実施形態に係る在庫計画作成装置(例えば上述の在庫計画作成装置100)は、親部品を構成する複数種類の子部品について前記子部品の種類毎の在庫量を規定する在庫計画を作成するための在庫計画作成装置であって、
前記在庫計画の事業性リスクの度合いを示す事業性評価指標の目標値である目標評価指標を取得するように構成されたデータ取得部(例えば上述のデータ取得部1)と、
前記複数種類の子部品の在庫購入費の総額である在庫購入費総額について、前記在庫購入費総額の上限値である在庫購入費上限値を設定するように構成された在庫計画探索部(例えば上述の在庫計画探索部12)と、
前記在庫計画探索部によって設定された前記在庫購入費上限値を前記在庫購入費総額が上回ってはならないことを含む少なくとも1つの制約条件を定義するように構成された制約条件定義部(例えば上述の制約条件定義部2)と、
前記少なくとも1つの制約条件を満たすように前記親部品の充足率を最大化する最適化計算を行うことによって、前記在庫計画の候補を出力するように構成された充足率最適化部(例えば上述の充足率最適化部10)と、
前記充足率最適化部から出力された前記在庫計画の候補について前記事業性評価指標を算出するように構成された在庫計画評価部(例えば上述の在庫計画評価部5)と、
を備え、
前記在庫計画探索部は、前記在庫計画評価部によって算出した前記事業性評価指標と前記データ取得部によって取得した前記目標評価指標とに基づいて前記子部品の種類毎に前記子部品の在庫量の探索範囲を設定し、前記子部品の種類毎に前記子部品の在庫量を前記探索範囲内でランダムに決定することによって前記在庫計画の候補を出力し、
前記在庫計画評価部は、前記在庫計画探索部から出力された前記在庫計画の候補について前記事業性評価指標を算出し、
前記在庫計画探索部は、前記在庫計画探索部から出力された前記在庫計画の候補の前記在庫購入費総額と、前記在庫計画探索部から出力された前記在庫計画の候補について前記在庫計画評価部によって算出した前記事業性評価指標とに基づいて、前記在庫計画の最適解を出力するように構成される。
【0082】
上記[1]に記載の在庫計画作成装置によれば、充足率最適化部は、在庫購入費総額が在庫購入費上限値を上回らないように、親部品の充足率を最適化した在庫計画の候補を出力する。そして、その在庫計画の候補について在庫計画評価部が事業性評価指標を算出し、算出された事業性評価指標と目標評価指標とに基づいて在庫計画探索部が子部品の種類毎の在庫量の探索範囲を設定する。これにより、複数種類の子部品の在庫量の膨大な組み合わせの中から、目標評価指標に近い事業性評価指標を実現する優良な在庫計画における子部品の種類毎の在庫量に基づいて、子部品の種類毎の在庫量の探索範囲を上記優良な在庫計画が存在する範囲に絞り込むことができる。在庫計画探索部は、そのようにして絞り込んだ探索範囲内で子部品の種類毎に子部品の在庫量をランダムに決定することで在庫計画の候補を出力し、出力した在庫計画の候補の事業性評価指標と在庫購入費総額とを考慮して在庫計画を出力する。このため、事業性評価指標が悪い(事業性評価指標が目標評価指標から遠い)在庫計画や在庫購入費用が高額な在庫計画等の局所解の探索を抑制することができ、良好な事業性評価指標を実現しつつ在庫購入費を抑制することが可能な優良な在庫計画を在庫計画の最適解として出力することができる。
【0083】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の在庫計画作成装置において、
前記在庫計画評価部は、前記事業性評価指標として、前記親部品の修理を依頼する場合における前記親部品の納期の遅延に関するリスクの度合いを示す指標を算出するように構成される。
【0084】
上記[2]に記載の在庫計画作成装置によれば、親部品の納期の遅延に関するリスクの増大を抑制しつつ在庫購入費を抑制することが可能な優良な在庫計画を在庫計画の最適解として出力することができる。
【0085】
[3]幾つかの実施形態では、上記[1]又は[2]に記載の在庫計画作成装置において、
前記充足率最適化部から出力された前記在庫計画の候補と、前記充足率最適化部から出力された前記在庫計画の候補について前記在庫計画評価部によって算出した前記事業性評価指標とを関連付けて保存するように構成された評価結果保存部(例えば上述の評価結果保存部6)を更に備える。
【0086】
上記[3]に記載の在庫計画作成装置によれば、評価結果保存部に保存された在庫計画の候補と当該候補に関連付けられた事業性評価指標を考慮して、在庫計画探索部が子部品の種類毎に子部品の在庫量の探索範囲を設定することができる。これにより、複数種類の子部品の在庫量の膨大な組み合わせの中から、目標評価指標に近い事業性評価指標を実現する優良な在庫計画における子部品の種類毎の在庫量に基づいて、子部品の種類毎の在庫量の探索範囲を上記優良な在庫計画が存在する範囲に絞り込むことができる。
【0087】
[4]幾つかの実施形態では、上記[3]に記載の在庫計画作成装置において、
前記在庫計画探索部は、前記評価結果保存部に保存された前記在庫計画の候補の中から、前記目標評価指標を基準とする所定の範囲に収まる前記事業性評価指標に関連付けられた前記在庫計画の候補を抽出し、抽出した前記在庫計画の候補における前記子部品の在庫量の平均値を前記子部品の種類毎に算出し、前記子部品の種類毎に算出した前記子部品の在庫量の前記平均値に基づいて、前記子部品の種類毎に前記子部品の在庫量の前記探索範囲を設定するように構成される。
【0088】
上記[4]に記載の在庫計画作成装置によれば、在庫計画探索部は、事業性評価指標が目標評価指標に近い範囲(目標評価指標を基準とする所定の範囲)に含まれる在庫計画について、子部品の種類毎の子部品の在庫量の平均値を算出し、子部品の種類毎に算出した子部品の在庫量の平均値に基づいて、子部品の種類毎に子部品の在庫量の探索範囲を設定することができる。これにより、複数種類の子部品の在庫量の膨大な組み合わせの中から、目標評価指標に近い事業性評価指標を実現する優良な在庫計画における子部品の種類毎の在庫量に基づいて、子部品の種類毎の在庫量の探索範囲を上記優良な在庫計画が存在する範囲に絞り込むことができる。
[5]幾つかの実施形態では、上記[4]に記載の在庫計画作成装置において、
前記在庫計画探索部は、前記在庫計画探索部によって抽出された前記在庫計画における前記子部品の在庫量のばらつきを示す統計量を前記子部品の種類毎に算出し、前記子部品の種類毎に算出した前記子部品の在庫量の前記平均値と前記統計量とに基づいて、前記子部品の種類毎に前記子部品の在庫量の前記探索範囲を設定するように構成される。
【0089】
上記[5]に記載の在庫計画作成装置によれば、在庫計画探索部は、事業性評価指標が目標評価指標に近い範囲(目標評価指標を基準とする所定の範囲)に含まれる在庫計画について、子部品の種類毎の子部品の在庫量のばらつきを示す統計量を算出し、子部品の種類毎に算出した子部品の在庫量の平均値と統計量とを考慮して、子部品の種類毎に子部品の在庫量の探索範囲を設定することができる。これにより、解の精度を高めてより優良な在庫計画を在庫計画の最適解として出力する可能性を高めることができる。
【0090】
[6]幾つかの実施形態では、上記[1]乃至[5]の何れかに記載の在庫計画作成装置において、
前記充足率最適化部から出力された前記在庫計画の候補と、前記充足率最適化部から出力された前記在庫計画の候補について前記在庫計画評価部によって算出した前記事業性評価指標とを関連付けて保存し、前記在庫計画探索部から出力された前記在庫計画の候補と、前記在庫計画探索部から出力された前記在庫計画の候補について前記在庫計画評価部によって算出した前記事業性評価指標とを関連付けて保存するように構成された評価結果保存部(例えば上述の評価結果保存部6)を更に備える。
【0091】
上記[6]に記載の在庫計画作成装置によれば、在庫計画探索部から出力された在庫計画の候補の中に、充足率最適化部から出力された在庫計画の候補よりも在庫購入費が小さくなる在庫計画がある場合に、充足率最適化部から出力された在庫計画の候補よりも在庫購入費が小さくなる在庫計画を抽出し、抽出された在庫計画の候補に関連付けられた事業性評価指標を考慮して、子部品の種類毎に子部品の在庫量の探索範囲を設定することができる。これにより、複数種類の子部品の在庫量の膨大な組み合わせの中から、目標評価指標に近い事業性評価指標を実現する優良な在庫計画における子部品の種類毎の在庫量に基づいて、子部品の種類毎の在庫量の探索範囲を上記優良な在庫計画が存在する範囲に絞り込むことができる。
【0092】
[7]幾つかの実施形態では、上記[6]に記載の在庫計画作成装置において、
前記在庫計画探索部は、前記評価結果保存部に保存された前記在庫計画の候補の中から、前記目標評価指標を基準とする所定の範囲に収まる前記事業性評価指標に関連付けられた前記在庫計画の候補を抽出し、抽出した前記在庫計画の中から前記在庫購入費総額に関する指標(例えば上述の在庫購入費総額C又は在庫金額合計)が最も小さい在庫計画を前記最適解として出力するように構成される。
【0093】
上記[7]に記載の在庫計画作成装置によれば、良好な事業性評価指標を実現しつつ在庫購入費を抑制することが可能な優良な在庫計画を在庫計画の最適解として出力することができる。
【0094】
[8]幾つかの実施形態では、上記[1]乃至[7]の何れかに記載の在庫計画作成装置において、
前記在庫計画探索部は、二分探索を用いて、前記在庫購入費上限値が所定の収束条件を満たすまで、前記事業性評価指標と前記目標評価指標とに基づいて前記在庫購入費上限値を変化させながら前記充足率最適化部に前記最適化計算を繰り返し実行させるように構成される。
【0095】
上記[8]に記載の在庫計画作成装置によれば、在庫計画探索部は、在庫購入費総額が在庫購入費上限を超えない範囲で、目標評価指標に近い事業性評価指標を実現しつつ親部品の充足率を最大化する在庫計画の候補を出力することができる。
【0096】
[9]幾つかの実施形態では、上記[1]乃至[7]の何れかに記載の在庫計画作成装置において、
前記在庫計画探索部から出力された前記在庫計画の最適解に基づいて、子部品を発注するための発注情報を出力する出力部(例えば上述の出力部8)を更に備える。
【0097】
上記[9]に記載の在庫計画作成装置によれば、在庫計画探索部から出力された在庫計画の最適解に基づいて子部品を発注することができる。
【0098】
[10]本開示の少なくとも一実施形態に係る在庫計画作成方法は、親部品を構成する複数種類の子部品について前記子部品の種類毎の在庫量を規定する在庫計画を作成するための在庫計画作成方法であって、
前記在庫計画の事業性リスクの度合いを示す事業性評価指標の目標値である目標評価指標を取得するデータ取得ステップと、
前記複数種類の子部品の在庫購入費の総額である在庫購入費総額について、前記在庫購入費総額の上限値である在庫購入費上限値を設定する在庫購入費上限値設定ステップと、
前記在庫購入費上限値を前記在庫購入費総額が上回ってはならないことを含む少なくとも1つの制約条件を定義するように構成された制約条件定義ステップと、
前記少なくとも1つの制約条件を満たすように前記親部品の充足率を最大化する最適化計算を行うことによって、前記在庫計画の候補を出力する充足率最適化ステップと、
前記充足率最適化ステップで出力された前記在庫計画の候補について前記事業性評価指標を算出する第1評価ステップと、
前記第1評価ステップで算出された前記事業性評価指標と前記データ取得ステップで取得した前記目標評価指標とに基づいて前記子部品の種類毎に前記子部品の在庫量の探索範囲を設定し、前記子部品の種類毎に前記子部品の在庫量を前記探索範囲内でランダムに決定することによって前記在庫計画の候補を出力する在庫計画探索ステップと、
前記在庫計画探索ステップで出力された前記在庫計画の候補について前記事業性評価指標を算出する第2評価ステップと、
前記在庫計画探索ステップで出力された前記在庫計画の候補の前記在庫購入費総額と、前記第2評価ステップで算出された前記事業性評価指標とに基づいて、前記在庫計画の最適解を出力する最適解出力ステップと、
を備える。
【0099】
上記[10]に記載の在庫計画作成方法によれば、充足率最適化ステップでは、在庫購入費総額が在庫購入費上限値を上回らないように、親部品の充足率を最適化した在庫計画の候補を出力する。そして、その在庫計画の候補について第1評価ステップで事業性評価指標を算出し、算出された事業性評価指標と目標評価指標とに基づいて在庫計画探索ステップで子部品の種類毎の在庫量の探索範囲を決定する。これにより、複数種類の子部品の在庫量の膨大な組み合わせの中から、目標評価指標に近い事業性評価指標を実現する優良な在庫計画における子部品の種類毎の在庫量に基づいて、子部品の種類毎の在庫量の探索範囲を上記優良な在庫計画が存在する範囲に絞り込むことができる。また、在庫計画探索ステップでは、そのようにして絞り込んだ探索範囲内で子部品の種類毎に子部品の在庫量をランダムに決定することで在庫計画の候補を出力し、出力した在庫計画の候補の事業性評価指標と在庫購入費総額とを考慮して最適解出力ステップで在庫計画を出力する。このため、事業性評価指標が悪い(事業性評価指標が目標評価指標から遠い)在庫計画や在庫購入費用が高額な在庫計画等の局所解の探索を抑制することができ、良好な事業性評価指標を実現しつつ在庫購入費を抑制することが可能な優良な在庫計画を在庫計画の最適解として出力することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 データ取得部
2 制約条件定義部
3 目的関数定義部
4 在庫計画最適化部
5 在庫計画評価部
6 評価結果保存部
7 評価条件保存部
8 出力部
10 充足率最適化部
12 在庫計画探索部
20 表示装置
22 部品受注システム
72 プロセッサ
74 RAM
76 ROM
78 HDD
80 入力I/F
82 出力I/F
84 バス
100 在庫計画作成装置
図1
図2
図3
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図5
図6
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図8
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図10
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