(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139864
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】空間浄化装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/01 20060101AFI20241003BHJP
B01D 61/00 20060101ALI20241003BHJP
C02F 1/461 20230101ALI20241003BHJP
A61L 9/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61L9/01 E
B01D61/00 500
C02F1/461 Z
A61L9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050794
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【弁理士】
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】水野 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】山口 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真司
(72)【発明者】
【氏名】和田 拓也
【テーマコード(参考)】
4C180
4D006
4D061
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180CB08
4C180EA58X
4C180HH05
4C180MM08
4D006GA14
4D006KA72
4D006KB01
4D006MA03
4D006PA01
4D006PB12
4D006PC80
4D061DA04
4D061DB09
4D061EA02
4D061EB01
4D061EB16
4D061EB19
(57)【要約】
【課題】水の補給頻度を減らすことが可能な空間浄化装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示の空間浄化装置10は、電気分解されることにより次亜塩素酸を生成可能な第1水溶液12を貯留する第1水溶液槽1と、塩化リチウムを含む第2水溶液22を貯留する第2水溶液槽2と、第1水溶液槽1と第2水溶液槽2とを連通させる連通部26と、連通部26に設けられ、浸透圧によって第1水溶液12の総イオン濃度C1と、第2水溶液22の総イオン濃度C2との濃度差が小さくなるように水分を透過させる半透膜27と、第1水溶液12を電気分解して次亜塩素酸を生成する電解部4と、電解部4で生成された次亜塩素酸を空気に含ませて放出する浄化部5と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気分解されることにより次亜塩素酸を生成可能な第1水溶液を貯留する第1水溶液槽と、
塩化リチウムを含む第2水溶液を貯留する第2水溶液槽と、
前記第1水溶液槽と前記第2水溶液槽とを連通させる連通部と、
前記連通部に設けられ、浸透圧によって前記第1水溶液の総イオン濃度と、前記第2水溶液の総イオン濃度との濃度差が小さくなるように水分を透過させる半透膜と、
前記第1水溶液を電気分解して次亜塩素酸を生成する電解部と、
前記電解部で生成された前記次亜塩素酸を空気に含ませて放出する浄化部と、
を備える、空間浄化装置。
【請求項2】
前記第1水溶液はリン酸塩を含有する、請求項1に記載の空間浄化装置。
【請求項3】
前記第1水溶液槽には、前記第1水溶液と接するように電解質の沈殿物を保持する溶質保持部が設けられる、請求項1に記載の空間浄化装置。
【請求項4】
前記第2水溶液槽の上部に、前記第2水溶液の液量が所定液量以上の場合に閉じ、当該液量が前記所定液量未満の場合に開かれる出入口部が設けられる、請求項1に記載の空間浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、居住空間などの除菌に用いられる空間浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
次亜塩素酸ガスを含む空気を居住空間などの対象空間に放出する空間浄化機器が知られている。例えば、特許文献1には、電気分解(以下、「電解」ということがある)により次亜塩素酸水などの電解水を生成する電解装置が記載されている。この装置は、陽極が配置された第1室と、陰極が配置された第2室と、第1室と第2室との間に形成される隔膜と、第1室に液体を供給する液体供給部と、第1室に電解水の生成元となる液体を供給する液体供給部と、第1室で気泡を発生させる気泡発生部と、気泡を排出する排出部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
所定成分を含む水溶液を電気分解することによって次亜塩素酸を生成し、この次亜塩素酸を利用して次亜塩素酸ガスを含ませた浄化用の空気を対象空間に放出する装置では、次亜塩素酸ガスを含ませた浄化用の空気の放出に伴って電解対象の水が減少する。この装置を継続的に運転するためには、電解対象の水を頻繁に補給する手間が掛かる問題がある。
特許文献1は、電解対象の水の補給頻度を減らす観点で、十分に開示しているとはいえない。
【0005】
本開示の目的は、水の補給頻度を減らすことが可能な空間浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の空間浄化装置は、電気分解されることにより次亜塩素酸を生成可能な第1水溶液を貯留する第1水溶液槽と、塩化リチウムを含む第2水溶液を貯留する第2水溶液槽と、第1水溶液槽と第2水溶液槽とを連通させる連通部と、連通部に設けられ、浸透圧によって第1水溶液の総イオン濃度と、第2水溶液の総イオン濃度との濃度差が小さくなるように水分を透過させる半透膜と、第1水溶液を電気分解して次亜塩素酸を生成する電解部と、電解部で生成された次亜塩素酸を空気に含ませて放出する浄化部と、を備える。
【0007】
なお、本開示の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、水の補給頻度を減らすことが可能な空間浄化装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例に係る空間浄化装置を備えた空間浄化機器の使用状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の空間浄化機器の構成を概略的に示す図である。
【
図3】
図3は、
図1の空間浄化装置の構成を概略的に示す側面図である。
【
図4】
図4は、
図1の空間浄化装置の構成を概略的に示す正面図である。
【
図5】
図5は、
図1の空間浄化装置の第1水分移動プロセスを模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、
図1の空間浄化装置の第2水分移動プロセスを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。実施例及び変形例では、同一又は同等の、構成要素及び部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施例を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
また、第1あるいは第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0012】
[実施例]
図1及び
図2を参照して、実施例に係る空間浄化装置10を説明する。
図1は、空間浄化装置10を備えた空間浄化機器100を示す斜視図である。この図は、空間浄化機器100の室内90における使用状態を示している。
図2は、空間浄化機器100の構成を概略的に示す図である。
【0013】
実施例では、空間浄化機器100は、室内90に設置されて用いられる。空間浄化機器100が置かれる室内90は、利用者が日常生活で使用する空間であり、空間に設置された台上に空間浄化機器100を置くことを想定している。空間浄化機器100は、室内90の空気を吸込空気F1として吸い込んで除塵し、次亜塩素酸ガスを含ませた吹出空気F5として室内90に吹き出す。これにより、空間浄化機器100は、室内90の浄化を行う。
【0014】
空間浄化機器100は、内部に空間浄化装置10を備える。空間浄化機器100は、吸込口81、集塵フィルタ82、送風機83、空間浄化装置10、及び吹出口84を有して構成される。
【0015】
空間浄化機器100は、上述した通り、吸込口81から吸込空気F1を吸い込んで除塵し、次亜塩素酸ガスを含ませた吹出空気F5として吹出口84から室内90に吹き出す。空間浄化機器100は、吹出口84から吹出空気F5を吹き出す際、空間浄化装置10によって吹出空気F5に次亜塩素酸ガスを含ませている。
【0016】
吸込口81は、空間浄化機器100の正面下部右側に設けられており、室内90から空間浄化機器100の内部に吸込空気F1を取り入れる。
【0017】
集塵フィルタ82は、通過する空気を浄化する部材である。集塵フィルタ82は、吸込口81から吸い込んだ吸込空気F1が通過するように設けられている。集塵フィルタ82を通過した吸込空気F1は、集塵フィルタ82によって微粒子が取り除かれることにより除塵される。集塵フィルタ82には、公知の原理に基づく各種のフィルタを採用できる。
【0018】
送風機83は、吸込口81から吸込空気F1を吸い込み、吹出口84から吹出空気F5として室内90に吹き出すための圧力を生じさせる部材である。送風機83は、吸込口81と吹出口84とを連通する内部風路において集塵フィルタ82の下流側に設置される。送風機83の動作によって、集塵フィルタ82を通過して送風機83に吸い込まれた吸込空気F1は、送風機83を通して除塵空気F2となる。
【0019】
除塵空気F2は、内部風路を流通する過程で、空間浄化装置10から放出される放出空気F4(次亜塩素酸ガス含む空気)と混合されて吹出空気F5として吹き出される。送風機83は、モータ部と、モータ部により回転するファン部と、それらを囲むスクロール形状のケーシング部とを有して構成されるが、一般的な送風ファンが用いられればよいので、詳細な説明は省略する。
【0020】
空間浄化装置10は、除塵空気F2の一部を導入空気F3として内部に取り込み、空間浄化装置10の内部(後述する浄化部5の上方空間51)で導入空気F3に次亜塩素酸ガスを含ませた後、放出空気F4として除塵空気F2に合流させる。これにより、除塵空気F2は、次亜塩素酸ガスを含む空気となる。なお、導入空気F3を吸い込み、放出空気F4として放出されるための空気の駆動力には、送風機83の風圧を利用できる。
【0021】
例えば、送風機83によって作られた除塵空気F2の流れ方向と対向するように導入空気F3の導入口を設け、送風機83によって作られた除塵空気F2の流れ方向と直交する向きに放出空気F4の放出口を設けてもよい。これにより、送風機83の風圧によって導入空気F3を空間浄化装置10内に導入させ、放出空気F4を空間浄化装置10から放出できる。空間浄化装置10の詳細については後述する。
【0022】
吹出口84は、空間浄化機器100の上面に設けられており、内部風路を流通して次亜塩素酸ガスを含んだ除塵空気F2を、吹出空気F5として室内90に吹き出す。
【0023】
以上の構成により、空間浄化機器100は、室内90の空気を吸込空気F1として吸い込んで除塵し、次亜塩素酸ガスを含ませた吹出空気F5として室内90に吹き出すことができる。
【0024】
図3及び
図4を参照して、空間浄化装置10を説明する。
図3は、空間浄化装置10の構成を概略的に示す側面図である。
図4は、空間浄化装置10の構成を概略的に示す正面図である。
【0025】
空間浄化装置10は、空間浄化機器100の内部に着脱可能に組み込まれるユニットである。空間浄化装置10は、空気導入部52から空間浄化機器100の除塵空気F2を導入空気F3として取り込み、次亜塩素酸ガスを含ませた放出空気F4として空気放出部53から空間浄化機器100の内部風路に放出する。
【0026】
空間浄化装置10は、第1水溶液槽1、第2水溶液槽2、連通部26、半透膜27、電解部4、浄化部5、攪拌部30、溶質保持部17、及び沈殿物フィルタ19を備える。第1水溶液槽1は、電気分解されることにより次亜塩素酸を生成可能な第1水溶液12を貯留する。具体的には、第1水溶液12は、塩化ナトリウム等の塩化物(以下、「電解質11」という)を含む水溶液である。電解質11は、当該電解質11の水溶液が電気分解されることにより次亜塩素酸を生成可能な塩化物であればよく、塩化カリウムあるいはその他の塩化物であってもよい。以下、電解質11が塩化ナトリウムである例を説明するが、その説明は、電解質11が塩化カリウムあるいはその他の塩化物である場合にも適用される。実施例の第1水溶液12には、電解質11とは別にリン酸塩(例えば、リン酸水素二ナトリウムとリン酸二水素カリウムとの混合リン酸塩)が添加されている。
【0027】
実施例の第1水溶液槽1は角筒状の容器である。第1水溶液槽1の上部には上方空間51が設けられ、第1水溶液槽1の下部には溶質保持部17が設けられる。第2水溶液槽2は、塩化リチウムを含む第2水溶液22を貯留する。つまり、第2水溶液22は塩化リチウム水溶液である。実施例の第2水溶液槽2は角筒状の容器である。第1水溶液槽1と第2水溶液槽2とは一体的な容器として形成されており、第1水溶液槽1と第2水溶液槽2との間は隔壁Wで仕切られている。
【0028】
連通部26は、第1水溶液槽1と第2水溶液槽2とを連通する。半透膜27は、連通部26に設けられる。実施例では、連通部26は、隔壁Wに設けられた開口であり、半透膜27は、当該開口を塞ぐように設けられる。半透膜27の機能については後述する。
【0029】
浄化部5は、導入空気F3に電解部4で生成された次亜塩素酸(次亜塩素酸ガス)を含ませて放出空気F4として放出する。実施例の浄化部5は、第1水溶液槽1の上部の密閉された空間である上方空間51に設けられる。浄化部5は、上方空間51で導入空気F3に次亜塩素酸を含ませる。浄化部5は、空気導入部52、空気放出部53、及び整流板54を有する。
【0030】
空気導入部52は、空間浄化装置10の内部に導入空気F3を取り入れる。空気導入部52は、空間浄化機器100の内部風路と、上方空間51とをつなぐ管状の部材である。実施例では、空気導入部52は、内部風路側に位置する導入口と、上方空間51側に位置する導出口とを有する。空気導入部52の内部風路側の導入口は、除塵空気F2を導入空気F3として取り込むための管の口であり、当該導入口の向きは、送風機83によって作られる除塵空気F2の流れ方向と対向するように設置されている。空気導入部52の上方空間51側の導出口は、導入空気F3を上方空間51に導入する管の口であり、空間浄化装置10の上面に設置されている。この構成により、空気導入部52は、導入口から取り込んだ導入空気F3を、導出口から上方空間51に供給する。
【0031】
空気放出部53は、上方空間51と、空間浄化機器100の内部風路とをつなぐ管状の部材であり、空間浄化装置10の内部から放出空気F4を放出する。実施例の空気放出部53は、上方空間51側に位置する導入口と、内部風路側に位置する放出口とを有する。空気放出部53の上方空間51側の導入口は、空間浄化装置10の上面に設置されている。空気放出部53の内部風路側の放出口は、次亜塩素酸ガスを含む放出空気F4を放出するための管の口であり、当該放出口の向きは、送風機83によって作られる除塵空気F2の流れ方向と直交するように設置されている。この構成により、空気放出部53は、空気導入部52から空間浄化装置10の内部に取り入れた導入空気F3を、次亜塩素酸ガスを含ませた放出空気F4として空間浄化機器100の内部風路に吹き出す。なお、空気放出部53の放出口は、空気導入部52の導入口よりも内部風路の下流側に設置されている。導入空気F3が次亜塩素酸ガスを含む過程については後述する。
【0032】
整流板54は、導入空気F3及び放出空気F4のガイドとして機能する板部材である。また、整流板54は、後述する水溶液吹出口32から噴出した第1水溶液12が空気導入部52及び空気放出部53に飛び散らないように進路を制限する機能を有する。
【0033】
第1水溶液槽1は、密閉された内部空間を構成し、内部に電解液121及び次亜塩素酸水溶液122を含む第1水溶液12を貯留する。つまり、第1水溶液12には、電解の対象である電解液121と、電解で生成された次亜塩素酸水溶液122とが混在している。
【0034】
空気導入部52及び空気放出部53は、第1水溶液槽1の上部に取り付けられる。第1水溶液槽1は、第1水溶液12の液面の上方に上方空間51を有する。第1水溶液槽1は、全体として内部構成を包囲する筐体として機能する。
【0035】
実施例では、第1水溶液槽1は、第1水溶液12を貯留しているが、以下では、両者を区別し、電解による次亜塩素酸水溶液の生成の際には電解液121と称し、次亜塩素酸ガスを放出する浄化運転の際には次亜塩素酸水溶液122と称する。
【0036】
電解液121は、電解することで次亜塩素酸水溶液122を生成するための水溶液であり、電解質11を溶解させた水溶液である。実施例では、第1水溶液槽1には、第1水溶液12と接するように電解質11の沈殿物172を保持する溶質保持部17が設けられている。つまり、電解質11は、電解液121に完全に溶解することなく、溶質保持部17に沈殿物172として貯留されている。実施例の溶質保持部17は、第1水溶液槽1の底部側に設けられており、沈殿物172を含む電解液121を保持する。
【0037】
沈殿物172は、電解によって電解液121から消費された電解質11を電解液121に再度供給するためのものである。こちらも詳細については後述する。
【0038】
次亜塩素酸水溶液122は、電解液121中に電解質11が沈殿している状態で、電解液121の電解を行って生成された溶液であり、いわゆる次亜塩素酸を含む水溶液である。次亜塩素酸水溶液122の水素イオン濃度(pH)は、5~13がよく、特に5~7が好適である。次亜塩素酸水溶液122のpHが5以上であると、次亜塩素酸ガスとして気化度が実用的な範囲となる。
【0039】
第1水溶液槽1は、上述した通り、電解液121中に電解質11が沈殿している状態で、電解液121を貯留するとともに、電解液121の液面の上方に上方空間51を有している。第1水溶液槽1は、電解質11が沈殿する溶質保持部17と、溶液領域18とに区画されている。溶液領域18には、後述する電解部4及び攪拌部30が設置される。
【0040】
溶液領域18は、溶質保持部17の上方に位置しており、沈殿物172を含まない電解液121を保持する領域である。溶液領域18には、電解部4及び攪拌部30がそれぞれ浸漬した状態で設置されている。溶質保持部17と溶液領域18との間には、沈殿物フィルタ19が設けられている。実施例の沈殿物フィルタ19は、溶質保持部17と溶液領域18との間を仕切る仕切部に形成された開口部を塞ぐように設けられている。沈殿物フィルタ19については後述する。
【0041】
なお、上述した溶質保持部17及び溶液領域18における電解液121は、次亜塩素酸水溶液122と読み替えてもよいし、電解液121と次亜塩素酸水溶液122との混合液と読み替えてもよい。
【0042】
浄化部5は、第1水溶液12の液面の上方に生じる空気領域である上方空間51を有する。上方空間51は、空気導入部52と空気放出部53とによって空間浄化機器100の内部風路と連通されている。上方空間51には、送風機83の動作時に、空間浄化機器100の内部風路から導入空気F3が空気導入部52を通じて導入される。導入空気F3が上方空間51に導入されることで、上方空間51内の空気(次亜塩素酸ガスを含む空気)が放出空気F4として空気放出部53から内部風路に押し出される。
【0043】
電解部4は、第1水溶液槽1に貯留された電解液121を電解して次亜塩素酸水溶液122を生成する。電解部4は、溶液領域18の底部側において、溶液領域18の電解液121に浸漬されて設置されている。実施例の電解部4は、導電性基体の表面に触媒被膜を有して構成される陽極と陰極との一対の電極である。電解部4は、一対の電極に通電することで電解液121の電解を行う。これにより、電解液121に含まれる塩化物イオンが電解部4において電解され、陽極側に次亜塩素酸が生成され、次亜塩素酸水溶液122が生成される。
【0044】
検討によれば、電解液121の電解による次亜塩素酸発生効率は、電解液121の塩化物イオンの濃度に依存し、塩化物イオンの濃度が高いほど、次亜塩素酸発生効率は高くなることが判明している。このため、次亜塩素酸発生効率を維持しながら次亜塩素酸を生成するためには、塩化物イオンの濃度を一定に維持することが重要である。沈殿物172は、電解によって電解液121から消費された塩化物イオンを電解液121に供給する。実施例では、電解液121の塩化物イオンを常に飽和状態(塩化ナトリウムの場合約4.4mol/L、塩化カリウムの場合約3.4mol/L)に保つように機能する。これにより、小型化して第1水溶液槽1に貯留可能な電解液121の量が少量である場合であっても、電解液121に含まれる塩化物イオンの濃度を一定に維持でき、次亜塩素酸発生効率を維持できる。
【0045】
攪拌部30は、第1水溶液槽1に貯留された第1水溶液12を槽内で攪拌し、電解液121の電解と次亜塩素酸ガスの発生とをそれぞれ加速させる機能を有する。攪拌部30は、その主要部が、電解部4の鉛直方向上方において、溶液領域18の電解液121に浸漬されて設置される。攪拌部30は、水溶液吸込口31、水溶液吹出口32、及び駆動部33を有する。
【0046】
水溶液吸込口31は、第1水溶液槽1の第1水溶液12を吸い込む円筒状の吸込口である。水溶液吸込口31は、第1水溶液槽1の底部に対して略水平状態で、第1水溶液槽1の正面を向いて設置される。水溶液吹出口32は、上方空間51に突出し、上方空間51に向けて第1水溶液12を吹き出す。実施例の駆動部33は、モータであり、第1水溶液12を付勢して矢印に示す循環水流Aを形成する。
【0047】
循環水流Aを説明する。まず、駆動部33が作動することによって溶液領域18の第1水溶液12が水溶液吸込口31から攪拌部30内に吸い込まれる。攪拌部30内に吸い込まれた第1水溶液12は、水溶液吹出口32から吹き出される。水溶液吹出口32から吹き出された第1水溶液12は、上方空間51を飛翔して溶液領域18に落下し、溶液領域18内に戻る。このように、第1水溶液12の循環水流Aは、矢印に示すように、溶液領域18から攪拌部30と上方空間51とを移動して溶液領域18に戻る。第1水溶液12は、上方空間51を飛翔するとき、細かいしぶきとなって飛散し、次亜塩素酸ガスを放出して導入空気F3に含ませる。
【0048】
第1水溶液12の循環水流Aの余波により、溶質保持部17の電解質11が浮遊して電解部4に到達することがある。このため、実施例では、空間浄化装置10は、溶質保持部17の電解質11の浮遊を抑制する沈殿物フィルタ19を有する。
【0049】
以上の構成により、実施例の第1水溶液槽1は、空間浄化機器100の内部風路から除塵空気F2を導入空気F3として取り込み、次亜塩素酸ガスを含ませた放出空気F4として内部風路に放出できる。
【0050】
次に、第2水溶液槽2を説明する。第2水溶液槽2は、内部に第2水溶液22を貯留する。第2水溶液槽2には、第2水溶液22の液面の上方に上部空間25が設けられる。第2水溶液槽2の上部に、空間浄化装置10の外部空間と上部空間25との間で空気が出入り可能な出入口部28が設けられる。
【0051】
第2水溶液22の塩化リチウムには吸湿性があり、その吸湿量は外気の湿度によって変化する。外気の湿度、あるいは第2水溶液22の濃度が変化すると第2水溶液22は外気の湿度と平衡状態になるように外気と湿度交換を行う。この作用により、外気湿度が一定の場合に、第2水溶液槽2では、第2水溶液22の水分が減少した場合、第2水溶液22の塩化リチウムが上部空間25の空気から吸湿し、第2水溶液22中の水分が補充される。
【0052】
過度な水分の吸湿を抑制するために、第2水溶液槽2は、出入口部28を通じての外部との空気の流通を制御する弁機構29を有する。弁機構29は、第2水溶液22の液量が所定液量以上の場合に出入口部28を閉じ、第2水溶液22の液量が所定液量未満の場合に出入口部28を開く。出入口部28が開かれた状態では、外部空間と上部空間25との間で空気の流通が可能になり、出入口部28が閉じた状態では、空気の流通が概ね遮断される。実施例の弁機構29はフロートであり、弁機構29の下部が第2水溶液22に沈み、弁機構29の上部は液面から突出する。したがって、弁機構29は、第2水溶液22の液面高さに応じて出入口部28を開閉する。
【0053】
弁機構29は、円筒状の大径部292と、大径部292から上方に突出する円筒状の小径部294とを有する。小径部294の直径は出入口部28の内径よりも小さく、小径部294は、出入口部28を貫通した状態で円滑に上下動できる。大径部292の直径は出入口部28の内径よりも大きい。
【0054】
第2水溶液槽2の水分が減って液面が下がると、弁機構29は液面と連動して下降し、出入口部28を開く。出入口部28が開かれると、外部空気が上部空間25に入り、第2水溶液22の塩化リチウムが上部空間25の空気から吸湿可能となる。第2水溶液槽2の水分が増えて液面が上がると、弁機構29は液面と連動して上昇し、大径部292が出入口部28を塞ぐ。出入口部28が塞がれ、上部空間25の空気が第2水溶液22と平衡状態になると吸湿は停止する。このように、弁機構29は、第2水溶液槽2の液面高さを一定の範囲に維持する機能を有する。
【0055】
半透膜27の機能を説明する。半透膜27は、浸透圧によって第1水溶液12の総イオン濃度C1と、第2水溶液22の総イオン濃度C2との濃度差Cdが小さくなるように水分を透過させる。つまり、第1水溶液12の水分が減って、総イオン濃度C1が総イオン濃度C2よりも高い状態になると、半透膜27は、水分を第2水溶液22から第1水溶液12に移動させる。この結果、第1水溶液12の水分量が回復する。逆に、第1水溶液12の水分が増えて、総イオン濃度C1が総イオン濃度C2よりも低い状態では、半透膜27は、水分を第1水溶液12から第2水溶液22に移動させる。このように、半透膜27は、第1水溶液12の水分量を一定の範囲に制御する機能を有する。
【0056】
[第1水分移動プロセス]
図5を参照して、空間浄化装置10が導入空気F3に次亜塩素酸ガスを含ませる浄化運転時の第1水分移動プロセスS110を説明する。
【0057】
(1)浄化運転で導入空気F3に次亜塩素酸ガスを含ませると、導入空気F3に水分も一緒に含まれてしまい、第1水溶液12の水分が失われる。この結果、第1水溶液12の総イオン濃度C1が第2水溶液22の総イオン濃度C2よりも高くなる(プロセスS111)。
【0058】
(2)総イオン濃度C1が総イオン濃度C2よりも高いと、半透膜27を通じて、これらが等しくなるように、第2水溶液22から第1水溶液12に水分が移動する(プロセスS112)。
【0059】
(3)第2水溶液22の水分が減ると、含有する塩化リチウムの濃度が高くなり、第2水溶液22と外気の湿度との平衡状態が崩れるので、第2水溶液22は、外気の湿度と平衡状態になるように外気から吸湿する(プロセスS113)。
【0060】
(4)プロセスS112及びプロセスS113は、連続的に繰り返され、総イオン濃度C1が総イオン濃度C2と等しくなり、且つ、第2水溶液22が外気の湿度と平衡状態になると収束する。このとき、第1水溶液槽1と第2水溶液槽2との液面高さ、総イオン濃度C1、及び総イオン濃度C2は、プロセスS111の開始直前の初期状態に戻る。
【0061】
[第2水分移動プロセス]
図6を参照して、空間浄化装置10が電解液121を電解する電解運転時の第2分水移動プロセスS210を説明する。
【0062】
(1)電解運転で電解部4によって電解液121を電解すると、第1水溶液12の電解質11が消費されるので総イオン濃度C1が低下する。この結果、第1水溶液12の総イオン濃度C1が第2水溶液22の総イオン濃度C2よりも低くなる(プロセスS211)。
【0063】
(2)総イオン濃度C1が総イオン濃度C2よりも低いと、半透膜27を通じて、これらが等しくなるように、第1水溶液12から第2水溶液22に水分が移動する(プロセスS212)。
【0064】
(3)第2水溶液22の水分が増えると、総イオン濃度C2が低くなり、総イオン濃度C2と外気の湿度との平衡状態が崩れるので、第2水溶液22は、外気の湿度と平衡状態になるように水分を外気に放出する(プロセスS213)。
【0065】
(4)水分を放出すると、第2水溶液22の総イオン濃度C2は上昇し、総イオン濃度C1よりも高くなる。総イオン濃度C2が総イオン濃度C1よりも高くなると、これらが等しくなるように、半透膜27を通じて、第1水溶液12から第2水溶液22に水分が移動する(プロセスS214)。
【0066】
(5)プロセスS212~プロセスS214は、連続的に繰り返され、第2水溶液22が外気の湿度と平衡状態になり、且つ、総イオン濃度C1が総イオン濃度C2と等しくなると収束する。このとき、総イオン濃度C1、総イオン濃度C2、及び第2水溶液槽2の液面高さは、プロセスS211の開始直前の初期状態に戻る。
【0067】
このように、空間浄化装置10では、浄化運転時に外気から水分を回収する反応が生じ、電解運転時に外気へ水分を放出する反応が生じる。電解運転される時間は、浄化運転される時間と比べると短いので、浄化運転時の水分回収量は、電解運転時に失われる水分量よりも多くなる。この結果、空間浄化装置10は外気から水分を回収することにより、給水作業をしなくても第1水溶液槽1の液量を一定の範囲に維持できる。
【0068】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示の空間浄化装置(10)は、電気分解されることにより次亜塩素酸を生成可能な第1水溶液(12)を貯留する第1水溶液槽(1)と、塩化リチウムを含む第2水溶液(22)を貯留する第2水溶液槽(2)と、第1水溶液槽(1)と第2水溶液槽(2)とを連通させる連通部(26)と、連通部(26)に設けられ、浸透圧によって第1水溶液(12)の総イオン濃度(C1)と、第2水溶液(22)の総イオン濃度(C2)との濃度差が小さくなるように水分を透過させる半透膜(27)と、第1水溶液(12)を電気分解して次亜塩素酸を生成する電解部(4)と、電解部(4)で生成された次亜塩素酸を空気に含ませて放出する浄化部(5)と、を備える。
【0069】
この構成によれば、空気を浄化することによって第1水溶液中の水分が減少すると、第1水溶液の総イオン濃度が上昇する。これにより濃度差が大きくなり、第2水溶液の水分が半透膜を透過して第1水溶液に移動するので、第1水溶液の水分の減少を抑制できる。また、第2水溶液の水分が減少すると、第2水溶液の塩化リチウムが外気中の水分を吸水し、第2水溶液の水分が補充される。これらの作用により、第1水溶液槽及び第2水溶液槽への給水の頻度を減らすことができる。
【0070】
一例として、実施例では、第1水溶液(12)はリン酸塩を含有する。この場合、リン酸塩を含まない場合と比べて、電解によって第1水溶液(12)中の電解質(11)が減少した場合の第1水溶液(12)の総イオン濃度の低下を減らせるので、第2水溶液(22)からの過度な水分移動を抑制できる。
【0071】
一例として、実施例の第1水溶液槽(1)には、第1水溶液(12)と接するように電解質(11)の沈殿物(172)を保持する溶質保持部(17)が設けられている。この場合、電解によって第1水溶液の電解質が減少して第1水溶液の総イオン濃度が低下した際に、沈殿物から電解質が第1水溶液中に溶出するため、イオン濃度の低下を補充できる。
【0072】
一例として、実施例では、第2水溶液槽(2)の上部に、第2水溶液(22)の液量が所定液量以上の場合に閉じ、当該液量が所定液量未満の場合に開かれる出入口部(28)が設けられる。この場合、所定液量に達すると出入口部が閉じられるので、第2水溶液槽における水分回収が停止して必要以上の水分回収を抑制できる。
【0073】
以上、本開示を、実施例をもとに詳細に説明した。上述した実施例は、いずれも本開示を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施例の内容は、請求の範囲に規定された思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。上述の説明では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施例の」「実施例では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容にも設計変更が許容される。
【0074】
(変形例)
実施例では、電解質11として、塩化ナトリウムあるいは塩化カリウムを用いる例を示したが、それに限定されない。電解質は、塩化カルシウムあるいは塩化リチウム等であってもよい。
【0075】
実施例では、弁機構29がフロートである例を示したが、これに限定されない。弁機構としては、公知の原理に基づく様々な弁機構を採用できる。
【0076】
実施例では、弁機構29が、円筒状である例を示したが、これに限定されない。弁機構は、角筒状であってもよい。
【0077】
実施例では、第1水溶液槽1と第2水溶液槽2とが一体的に形成される例を示したが、これに限定されない。第1水溶液槽と第2水溶液槽とが分離され、パイプ状の連通部によって接続される構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本開示の空間浄化装置は、屋内空間を浄化する空間浄化機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
100 空間浄化機器、 10 空間浄化装置、 1 第1水溶液槽、 2 第2水溶液槽、 4 電解部、 5 浄化部、 11 電解質、 12 第1水溶液、 17 溶質保持部、 18 溶液領域、 19 沈殿物フィルタ、 22 第2水溶液、 25 上部空間、 26 連通部、 27 半透膜、 28 出入口部、 29 弁機構、 30 攪拌部、 31 水溶液吸込口、 32 水溶液吹出口、 33 駆動部、 51 上方空間、 52 空気導入部、 53 空気放出部、 81 吸込口、 82 集塵フィルタ、 83 送風機、 84 吹出口、 90 室内、 121 電解液、 122 次亜塩素酸水溶液、 172 沈殿物、 292 大径部、 294 小径部。