(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139867
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20241003BHJP
B60W 30/02 20120101ALI20241003BHJP
B60W 30/09 20120101ALI20241003BHJP
B60W 40/08 20120101ALI20241003BHJP
B60W 40/114 20120101ALI20241003BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241003BHJP
B62D 7/14 20060101ALI20241003BHJP
B60R 11/04 20060101ALI20241003BHJP
B60R 1/29 20220101ALI20241003BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
B62D6/00
B60W30/02 ZYW
B60W30/09
B60W40/08
B60W40/114
G08G1/16 F
B62D7/14 A
B60R11/04
B60R1/29
B62D101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050798
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 渉
(72)【発明者】
【氏名】福川 将城
(72)【発明者】
【氏名】永井 陽平
【テーマコード(参考)】
3D020
3D034
3D232
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D020BA20
3D034CA01
3D034CD04
3D034CD05
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3D241BA18
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3D241DB12Z
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3D241DD02Z
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB13
5H181CC04
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5H181CC14
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF33
5H181FF35
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL20
(57)【要約】
【課題】車両の挙動を抑制することで、乗員に与える影響を少なくしつつ、車両を目標位置に退避させること。
【解決手段】実施形態の車両制御装置は、車両に搭載される車両制御装置であって、前記車両を移動させる目標位置または舵角の状況に応じて、目標舵角を算出する目標舵角算出部と、前記車両の前後の加速度に基づいて、前記車両の前輪と後輪との舵角の比率を決定する比率決定部と、前記前輪と前記後輪のそれぞれに対し、前記目標舵角を前記比率で定まる舵角を算出する舵角算出部と、前記前輪と前記後輪のそれぞれに、算出された前記前輪と前記後輪のそれぞれの舵角の指示を行う制御部と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車両制御装置であって、
前記車両を移動させる目標位置または舵角の状況に応じて、目標舵角を算出する目標舵角算出部と、
前記車両の前後の加速度に基づいて、前記車両の前輪と後輪との舵角の比率を決定する比率決定部と、
前記前輪と前記後輪のそれぞれに対し、前記目標舵角を前記比率で定まる舵角を算出する舵角算出部と、
前記前輪と前記後輪のそれぞれに、算出された前記前輪と前記後輪のそれぞれの舵角の指示を行う制御部と、
を備える車両制御装置。
【請求項2】
前記車両のヨー角に基づく補正値を決定する補正算出部をさらに備え、
前記舵角算出部は、前記前輪と前記後輪のそれぞれに対し、前記目標舵角を前記比率で定まる値に前記補正値で補正した舵角を算出する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記車両の速度に基づいて、舵角の変化率を求める制限部、をさらに備え、
前記制御部は、前記前輪と前記後輪のそれぞれに、前記変化率で、前記舵角を変化させるように前記舵角の指示を行う、
請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記舵角の指示を、前記前輪と前記後輪とに対して略同時に行う、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項5】
運転者の異常を判断する異常判断部、をさらに備え、
前記目標舵角算出部は、前記運転者の異常がであると判断された場合に、前記車両を退避させる前記目標位置に基づいて、前記目標舵角を算出する、
請求項1~4のいずれか一つに記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両を自動的に退避走行させる技術が知られている。例えば、ハンドルが故障した場合に、ブレーキを使用して、ヨーモーメントを発生させることで、車両を目的の位置に退避走行させる技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
運転者にとって、車両の挙動は意図した動作であれば快適に感じるが、乗員にとっては、運転操作を行っていない。このため、意図しない車両の挙動は体が揺さぶられるので、乗員にとって快適であるとは限らない。また、運転者が意識を失った場合に車両の退避走行を行う場合において、車両の挙動は小さいほうが運転者の姿勢も崩れず有益である。
【0004】
このため、車両の挙動の小さい退避走行を行う技術として、従来から、4WS等において、前輪と後輪とを同じ舵角として平行な車輪角度を実現することで、ヨーレートの発生を抑制する同相操舵制御の技術が知られている。例えば、車両の4輪を独立に操舵可能な機構を設け、ヨー挙動のない斜め方向に車両を走行させるために、車両停車中に4輪を平行な舵角に変化させる技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-063373号公報
【特許文献2】特開2008-13045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来技術では、前輪と後輪が過渡的に切れる状況においては、前後輪のタイヤの特性によっては、多少左右に車両が向いてしまう。このため、目標の退避位置まで車両を退避走行させることが困難になる場合がある。特に、制動中は前輪の荷重が増加し、舵角の効きが前輪は向上し、後輪は低下するので、前輪と後輪が同じ舵角になっても、ヨーレートが発生し続けてしまい、運転者の姿勢が崩れたり、乗員に不快感を与えてしまう場合もある。
【0007】
そこで、本発明の課題の一つは、車両の挙動を抑制することで、乗員に与える影響を少なくしつつ、車両を目標位置に退避させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の車両制御装置は、車両に搭載される車両制御装置であって、前記車両を移動させる目標位置または舵角の状況に応じて、目標舵角を算出する目標舵角算出部と、前記車両の前後の加速度に基づいて、前記車両の前輪と後輪との舵角の比率を決定する比率決定部と、前記前輪と前記後輪のそれぞれに対し、前記目標舵角を前記比率で定まる舵角を算出する舵角算出部と、前記前輪と前記後輪のそれぞれに、算出された前記前輪と前記後輪のそれぞれの舵角の指示を行う制御部と、を備える。
【0009】
当該構成により、一例として、車両の挙動を抑制することで、乗員に与える影響を少なくしつつ、車両を目標位置に移動させることができる。
【0010】
また、実施形態の車両制御装置において、前記車両のヨー角に基づく補正値を決定する補正算出部をさらに備え、前記舵角算出部は、前記前輪と前記後輪のそれぞれに対し、前記目標舵角を前記比率で定まる値に前記補正値で補正した舵角を算出する。当該構成により、一例として、ヨー角に起因して車両が目標位置に到達できないことを回避することで、車両を目標位置に確実に移動させることができる。
【0011】
また、実施形態の車両制御装置において、前記車両の速度に基づいて、舵角の変化率を求める制限部、をさらに備え、前記制御部は、前記前輪と前記後輪のそれぞれに、前記変化率で、前記舵角を変化させるように前記舵角の指示を行う。当該構成により、一例として、舵角を変化させていく際の横加速度の変化を一定にして、乗員に与える影響をより少なくすることができる。
【0012】
また、実施形態の車両制御装置において、前記制御部は、前記舵角の指示を、前記前輪と前記後輪とに対して略同時に行う。当該構成により、一例として、車両の移動動作をスムースに開始することができる。
【0013】
また、実施形態の車両制御装置において、運転者の異常を判断する異常判断部、をさらに備え、前記目標舵角算出部は、前記運転者の異常がであると判断された場合に、前記車両を退避させる前記目標位置に基づいて、前記目標舵角を算出する。当該構成により、一例として、運転者の異常がであると判断された場合で、車両を目標位置まで退避させる必要がある場合に、車両の挙動を抑制することで、乗員に与える影響を少なくしつつ、車両を目標位置に退避させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1-1】
図1-1は、実施形態にかかる車両の車室の一部が透視された状態が示された例示的な斜視図である。
【
図1-2】
図1-2は、実施形態にかかる車両の例示的な平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかる車両が有する撮像装置の配置の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかる車両が有する車両制御システムの構成の例示的なブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかる車両が有するECUの機能構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態における車両1の退避走行の一例を説明するための図である。
【
図6-1】
図6-1は、実施形態にかかる目標舵角の算出方法の一例を説明するための図である。
【
図6-2】
図6-2は、実施形態にかかる目標舵角の算出方法の一例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、実施形態における前後輪の比と車両の速度の関係を説明するための図である。
【
図8-1】
図8-1は、ヨー角が発生している場合における前後方向と車体の軌跡の関係およびヨー角の経時的変化の一例を示す図である。
【
図8-2】
図8-2は、実施形態において、ヨー角が発生しない場合における前後方向と車体の軌跡の関係およびヨー角の経時的変化の一例を示す図である。
【
図8-3】
図8-3は、ヨー角が発生している場合における前後方向と車体の軌跡の関係およびヨー角の経時的変化の一例を示す図である。
【
図8-4】
図8-4は、実施形態において、ヨー角が発生しない場合における前後方向と車体の軌跡の関係およびヨー角の経時的変化の一例を示す図である。
【
図9-1】
図9-1は、舵角と横加速度の関係を示す図である。
【
図9-2】
図9-2は、舵角および舵角速度と横加速度の関係を示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態にかかる車両制御システムによる車両制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施形態にかかる車両の退避処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用、結果、および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能であるとともに、基本的な構成に基づく種々の効果や、派生的な効果のうち、少なくとも一つを得ることが可能である。
【0016】
(実施形態)
本実施形態の車両1は、例えば、不図示の内燃機関を駆動源とする自動車、すなわち内燃機関自動車であってもよいし、不図示の電動機を駆動源とする自動車、すなわち電気自動車や燃料電池自動車等であってもよいし、それらの双方を駆動源とするハイブリッド自動車であってもよいし、他の駆動源を備えた自動車であってもよい。また、車両1は、種々の変速装置を搭載することができるし、内燃機関や電動機を駆動するのに必要な種々の装置、例えばシステムや部品等を搭載することができる。また、車両1における車輪3の駆動に関わる装置の方式や、数、レイアウト等は、種々に設定することができる。
【0017】
図1-1は、第1の実施形態にかかる車両の車室の一部が透視された状態が示された例示的な斜視図である。
図1-2は、第1の実施形態にかかる車両の例示的な平面図である。
図2は、第1の実施形態にかかる車両が有する撮像装置の配置の一例を示す図である。
図3は、第1の実施形態にかかる車両が有する車両制御システムの構成の例示的なブロック図である。
【0018】
まず、
図1-1~
図3を用いて、本実施形態にかかる車両1の構成の一例について説明する。
図1-1に例示されるように、車体2は、不図示の乗員が乗車する車室2aを構成している。車室2a内には、乗員としての運転者の座席2bに臨む状態で、操舵部4や、加速操作部5、制動操作部6、変速操作部7等が設けられている。
【0019】
操舵部4は、例えば、ダッシュボード24から突出したステアリングホイールである。加速操作部5は、例えば、運転者の足下に位置されたアクセルペダルである。制動操作部6は、例えば、運転者の足下に位置されたブレーキペダルである。変速操作部7は、例えば、センターコンソールから突出したシフトレバーである。なお、操舵部4や、加速操作部5、制動操作部6、変速操作部7等は、これらには限定されない。
【0020】
また、車室2a内には、表示出力部としての表示装置8や、音声出力部としての音声出力装置9が設けられている。表示装置8は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や、OELD(Organic Electroluminescent Display)等である。音声出力装置9は、例えば、スピーカである。また、表示装置8は、例えば、タッチパネル等、透明な操作入力部10で覆われている。乗員は、操作入力部10を介して表示装置8の表示画面に表示される画像を視認することができる。また、乗員は、表示装置8の表示画面に表示される画像に対応した位置で、手指等で操作入力部10を触れたり押したり動かしたりして操作することで、操作入力を実行することができる。
【0021】
これら表示装置8や、音声出力装置9、操作入力部10等は、例えば、ダッシュボード24の車幅方向すなわち左右方向の中央部に位置されたモニタ装置11に設けられている。モニタ装置11は、スイッチや、ダイヤル、ジョイスティック、押しボタン等の不図示の操作入力部を有することができる。また、モニタ装置11とは異なる車室2a内の他の位置に不図示の音声出力装置を設けることができるし、モニタ装置11の音声出力装置9と他の音声出力装置から、音声を出力することができる。なお、モニタ装置11は、例えば、ナビゲーションシステムやオーディオシステムと兼用されうる。また、車室2a内には、表示装置8とは別の表示装置12が設けられている。
【0022】
また、
図2に示すように、ハンドルコラム202には、ドライバーモニタカメラ201が設置されている。このドライバーモニタカメラ201は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラ等である。ドライバーモニタカメラ201は、座席2bに着座する運転者302の顔が、視野中心に位置するように、視野角および姿勢が調整されている。このドライバーモニタカメラ201は、運転者302の顔を順次撮像し、撮像により得た画像についての画像データを順次出力する。
【0023】
また、
図1-1,1-2に例示されるように、車両1は、例えば、四輪自動車であり、左右二つの前輪3Fと、左右二つの後輪3Rとを有する。これら四つの車輪3は、いずれも転舵可能に構成されうる。
図3に例示されるように、車両1は、少なくとも二つの車輪3を操舵する操舵システム13を有している。
【0024】
図3に例示されるように、操舵システム13は、アクチュエータ13aと、トルクセンサ13bとを有する。操舵システム13は、ECU14(Electronic Control Unit)等によって電気的に制御されて、アクチュエータ13aを動作させる。操舵システム13は、例えば、前輪3Fの操舵をアシストする電動パワーステアリングシステム(EPS:Electric Power Steering)13c、後輪3Rを操舵するアクティブリアステアリングシステム(ARS:Active Rear Steering)13d等である。また、トルクセンサ13bは、例えば、運転者が操舵部4に与えるトルクを検出する。
【0025】
また、
図3に例示されるように、車体2には、複数の撮像部15として、例えば四つの撮像部15a~15dが設けられている。撮像部15は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCIS(CMOS Image Sensor)等の撮像素子を内蔵するデジタルカメラである。撮像部15は、所定のフレームレートで動画データを出力することができる。撮像部15は、それぞれ、広角レンズまたは魚眼レンズを有し、水平方向には例えば140°~190°の範囲を撮影することができる。また、撮像部15の光軸は斜め下方に向けて設定されている。よって、撮像部15は、車両1が移動可能な路面や車両1が駐車可能な領域を含む車体2の周辺の外部の環境を逐次撮影し、撮像画像データとして出力する。
【0026】
撮像部15aは、例えば、車体2の後側の端部2eに位置され、リヤトランクのドア2hの下方の壁部に設けられている。撮像部15bは、例えば、車体2の右側の端部2fに位置され、右側のドアミラー2gに設けられている。撮像部15cは、例えば、車体2の前側、すなわち車両前後方向の前方側の端部2cに位置され、フロントバンパー等に設けられている。撮像部15dは、例えば、車体2の左側、すなわち車幅方向の左側の端部2dに位置され、左側の突出部としてのドアミラー2gに設けられている。ECU14は、複数の撮像部15で得られた画像データに基づいて演算処理や画像処理を実行し、より広い視野角の画像を生成したり、車両1を上方から見た仮想的な俯瞰画像を生成したりすることができる。なお、俯瞰画像は、平面画像とも称されることができる。
【0027】
本実施形態では、車体2の前側に設けられた撮像装置としての撮像部15cによって、車両1の進行方向である前方の路面を撮像する。なお、車両1が後進する場合には、車両の1の後方が進行方向となり、撮像部15aが車両1の後方の路面を撮像するように構成してもよい。
【0028】
また、
図1-1,1-2に例示されるように、車体2には、複数の測距部16,17として、例えば四つの測距部16a~16dと、八つの測距部17a~17hとが設けられている。測距部16,17は、例えば、超音波を発射してその反射波を捉えるソナーである。ソナーは、ソナーセンサ、あるいは超音波探知器とも称されることができる。ECU14は、測距部16,17の検出結果に車両1の周囲に位置された障害物等の物体の有無や当該物体までの距離を測定することができる。すなわち、測距部16,17は、物体を検出する検出部の一例である。なお、測距部17は、例えば、比較的近距離の物体の検出に用いられ、測距部16は、例えば、測距部17よりも遠い比較的長距離の物体の検出に用いられうる。また、測距部17は、例えば、車両1の前方および後方の物体の検出に用いられ、測距部16は、車両1の側方の物体の検出に用いられることができる。
【0029】
また、
図3に例示されるように、車両制御システム100では、ECU14や、モニタ装置11、操舵システム13、測距部16,17等の他、ブレーキシステム18、サスペンションシステム30、舵角センサ19、アクセルセンサ20、シフトセンサ21、車輪速センサ22等が、電気通信回線としての車内ネットワーク23を介して電気的に接続されている。車内ネットワーク23は、例えば、CAN(controller area network)として構成されている。
【0030】
ECU14は、車内ネットワーク23を通じて制御信号を送ることで、操舵システム13、ブレーキシステム18等を制御することができる。また、ECU14は、車内ネットワーク23を介して、トルクセンサ13b、ブレーキセンサ18b、舵角センサ19、測距部16、測距部17、アクセルセンサ20、シフトセンサ21、車輪速センサ22等の検出結果や、操作入力部10等の操作信号等を、受け取ることができる。
【0031】
ECU14は、例えば、CPU14a(Central Processing Unit)や、ROM(Read Only Memory)14b、RAM(Random Access Memory)14c、表示制御部14d、音声制御部14e、SSD(Solid State Drive、フラッシュメモリ)14f等を有している。
【0032】
CPU14aは、例えば、表示装置8,12で表示される画像に関連した画像処理や、車両1の目標位置の決定、車両1の移動経路の演算、物体との干渉の有無の判断、車両1の自動制御、自動制御の解除、サスペンションシステム30の減衰制御、ばね定数切替え制御、ステアリング制御、スタビライザ制御等の、各種の演算処理および制御を実行することができる。CPU14aは、ROM14b等の不揮発性の記憶装置にインストールされ記憶されたプログラムを読み出し、当該プログラムにしたがって演算処理を実行することができる。
【0033】
RAM14cは、CPU14aでの演算で用いられる各種のデータを一時的に記憶する。また、表示制御部14dは、ECU14での演算処理のうち、主として、撮像部15で得られた画像データを用いた画像処理や、表示装置8で表示される画像データの合成等を実行する。また、音声制御部14eは、ECU14での演算処理のうち、主として、音声出力装置9で出力される音声データの処理を実行する。また、SSD14fは、書き換え可能な不揮発性の記憶部であって、ECU14の電源がオフされた場合にあってもデータを記憶することができる。なお、CPU14aや、ROM14b、RAM14c等は、同一パッケージ内に集積されうる。また、ECU14は、CPU14aに替えて、DSP(Digital Signal Processor)等の他の論理演算プロセッサや論理回路等が用いられる構成であってもよい。また、SSD14fに替えてHDD(Hard Disk Drive)が設けられてもよいし、SSD14fやHDDは、ECU14とは別に設けられてもよい。
【0034】
ブレーキシステム18は、例えば、ブレーキのロックを抑制するABS(Anti-lock Brake System)や、コーナリング時の車両1の横滑りを抑制する横滑り防止装置(ESC:Electronic Stability Control)、ブレーキ力を増強させる(ブレーキアシストを実行する)電動ブレーキシステム、BBW(Brake By Wire)等である。ブレーキシステム18は、アクチュエータ18aを介して、車輪3ひいては車両1に制動力を与える。また、ブレーキシステム18は、左右の車輪3の回転差などからブレーキのロックや、車輪3の空回り、横滑りの兆候等を検出して、各種制御を実行することができる。ブレーキセンサ18bは、例えば、制動操作部6の可動部の位置を検出するセンサである。ブレーキセンサ18bは、可動部としてのブレーキペダルの位置を検出することができる。ブレーキセンサ18bは、変位センサを含む。
【0035】
舵角センサ19は、例えば、ステアリングホイール等の操舵部4の操舵量を検出するセンサである。舵角センサ19は、例えば、ホール素子などを用いて構成される。ECU14は、運転者による操舵部4の操舵量や、自動操舵時の各車輪3の操舵量等を、舵角センサ19から取得して各種制御を実行する。なお、舵角センサ19は、操舵部4に含まれる回転部分の回転角度を検出する。
【0036】
アクセルセンサ20は、例えば、加速操作部5の可動部の位置を検出するセンサである。アクセルセンサ20は、可動部としてのアクセルペダルの位置を検出することができる。アクセルセンサ20は、変位センサを含む。
【0037】
シフトセンサ21は、例えば、変速操作部7の可動部の位置を検出するセンサである。シフトセンサ21は、可動部としての、レバーや、アーム、ボタン等の位置を検出することができる。シフトセンサ21は、変位センサを含んでもよいし、スイッチとして構成されてもよい。
【0038】
車輪速センサ22は、車輪3の回転量や単位時間当たりの回転数を検出するセンサである。車輪速センサ22は、検出した回転数を示す車輪速パルス数をセンサ値として出力する。車輪速センサ22は、例えば、ホール素子などを用いて構成されうる。ECU14は、車輪速センサ22から取得したセンサ値に基づいて車両1の移動量などを演算し、各種制御を実行する。なお、車輪速センサ22は、ブレーキシステム18に設けられている場合もある。その場合、ECU14は、車輪速センサ22の検出結果を、ブレーキシステム18を介して取得する。
【0039】
サスペンションシステム30は、車両1の車体2と車輪3との間に配置される。サスペンションシステム30は、路面からの車両1に対する衝撃による車両1の振動を吸収するバネ(スプリング)と、当該バネの振動を減衰させかつ当該バネの振動の減衰力を変更可能な減衰力可変ダンパと、を備える。本実施形態では、サスペンションシステム30は、ECU14と協働して、ソレノイドアクチュエータ等の減衰力調整装置を制御して、減衰力可変ダンパの減衰力を変更する。これにサスペンションシステム30は、路面からの車両1に対する衝撃による車体の上下方向、横方向、前後方向の振動を減衰させるAVS(Adaptive Variable Suspension System)を実現する。
【0040】
サスペンションシステム30に対して車体2側の車両の部分(ばね上とも称する)とサスペンションシステム30に対して車輪3側の車両1部分(ばね下とも称する)のそれぞれの近傍には、不図示の加速度センサが設けられている。
【0041】
なお、上述した各種センサやアクチュエータの構成や、配置、電気的な接続形態等は、一例であって、種々に設定(変更)することができる。
【0042】
次に、
図4を用いて、本実施形態にかかる車両1が有するECU14の機能構成の一例について説明する。
図4は、第1の実施形態にかかる車両が有するECU14の機能構成の一例を示す図である。
【0043】
本実施形態にかかるECU14は、
図4に示すように、ドライバー情報取得部148と、異常判断部141と、算出部143と、制御部145と、記憶部150とを少なくとも有する車両制御装置として機能する。
【0044】
また、ドライバー情報取得部148と、異常判断部141と、舵角算出部143と、制御部145等の各種の機能モジュールは、一例であり、同様の機能を実現できれば、各機能モジュールが統合されたり、細分化されたりしていても良い。
【0045】
ドライバー情報取得部148は、ドライバーモニタカメラ201で撮像された画像を取得する。
異常判断部141は、ドライバー情報取得部148で取得した撮像画像を解析して、運転者に異常があったか否かを判断する。ここで、運転者の異常とは、例えば、居眠りや意識を失った状態が該当するが、これらに限定されるものではない。
【0046】
算出部143は、車両1を移動させる目標位置または舵角の状況に応じて、前輪3Fおよび後輪3Rの舵角を算出する。より具体的には、算出部143は、運転者に異常があると判断された場合であって、かつ測距部16の検出結果等から前方の先行車両と衝突する可能性があると判断された場合には、車両1を退避走行させるための前輪3Fおよび後輪3Rの舵角を算出する。
【0047】
図5は、実施形態における車両1の退避走行の一例を説明するための図である。
図5に示しように、本実施形態では、車両制御システム100は、前輪3Fと後輪3Rとを同相操舵で車両を退避走行させる。このため、算出部143は、同相操舵で車両1を退避走行させるためのの舵角を算出する。
【0048】
図4に戻り、算出部143は、
図4に示すように、目標舵角算出部1431と、比率決定部1433と、ヨー角補正部1435と、舵角変化率制限部1437と、舵角算出部1441と、を備えている。
【0049】
目標舵角算出部1431は、車両を退避させる目標位置に基づいて、目標舵角を算出する。
図6-1、6-2は、実施形態にかかる目標舵角の算出方法の一例を説明するための図である。具体的には、目標舵角算出部1431は、車両1の初速と減速度と最大リア角度から停車目標位置までの進行方向移動量x
dと目標横移動量y
dを算出する。そして、目標舵角算出部1431は、次の(1)式により目標舵角を算出する。
【0050】
目標舵角=arctan(yd/xd) ・・・(1)
【0051】
前輪3Fの舵角は目標舵角となるが、後輪3Rの舵角は、以下に示すように補正される。
【0052】
比率決定部1433は、車両1の前後の加速度に基づいて、前記車両の前輪と後輪との舵角の比率を決定する。
前輪3Fの舵角と後輪3Rの舵角を同一にした場合、ヨーレートが発生し、車両1が平行移動せずに回転してしまう場合がある。
図7は、実施形態における前後輪の比と車両の速度の関係を説明するための図である。
図7のグラフにおいて、横軸は時間、縦軸は、車両1の速度(車体速度)、前後輪の角度、ヨーレート、ヨー角度を示す。
【0053】
車両1の速度が一定の場合において、前輪3Fの舵角と後輪3Rの舵角の比を100:100、すなわち、前輪3Fの舵角と後輪3Rの舵角を同一とした場合、
図7の(a)に示すように、車両1にはヨーレートが発生し、このためヨー角度が負となって、車両1がゆるやかに回転してしまう。
【0054】
このため、本実施形態では、比率決定部1433は、前輪3Fの舵角と後輪3Rの舵角の比率を100:99として比率を決定する。このようにすることで、
図7(b)に示すように、車両1にヨーレートが発生せず、車両1はレーンに平行に移動しながら退避走行するようになる。
【0055】
また、前輪3Fの舵角と後輪3Rの舵角の比率を100:99とした場合でも、車両1が減速中の場合には、
図7(c)で示すように、車両1にはヨーレートが発生し、このため、車両1が右側にわずかに偏向してしまう。すなわち、車両1の前後加速度に応じて前輪3Fの舵角と後輪3Rの舵角の比率を定める必要がある。
【0056】
このため、本実施形態では、比率決定部1433は、車両1が減速中は、前輪3Fの舵角と後輪3Rの舵角の比率を100:93として比率を決定する。このようにすることで、
図7(d)に示すように、車両1にヨーレートが発生せず、車両1はレーンに平行に移動しながら退避走行するようになる。
【0057】
このように、本実施形態では、比率決定部1433は、車両1の前後加速度に基づいて、前輪3Fの舵角と後輪3Rの舵角の比率を決定する。具体的には、前後加速度の範囲と前輪3Fの舵角と後輪3Rの舵角の比率と対応付けた補正比率データベース151(補正比率DB151とも称する)を準備しておき、記憶部150に予め保存しておく。
【0058】
そして、比率決定部1433は、加速度センサにより前後加速度を検出し、補正比率DB151において、検出された前後加速度が属する範囲に対応付けられた前輪3Fの舵角と後輪3Rの舵角の比率を、採用する比率として決定する。
【0059】
ヨー角補正部1435は、車両1のヨー角に基づく補正値を決定する。ヨー角補正部1435は、補正部の一例である。
【0060】
ここで、
図6-1、6-2に示すようにX-Y座標系を考える。絶対座標(路面)のY座標方向の速度は以下の(2)式で示される。ここで、θはヨー角である。
【0061】
絶対座標(路面)のY座標方向の速度
=Vx*sin(θ)+Vy*cos(θ)・・・(2)
【0062】
ヨー角が負となると、車両1の進行方向速度(Vx)の絶対座標Y方向の速度であるVx*sin(ヨー角)がY座標に対して負となる。このため、(2)式で示される絶対座標系Y方向の速度が減少する結果、Y方向の移動量に不足が生じてしまう。
【0063】
図8-1、8-3は、ヨー角が発生している場合における前後方向と車体の軌跡の関係およびヨー角の経時的変化の一例を示す図である。
図8-2、8-4は、ヨー角が発生しない場合における前後方向と車体の軌跡の関係およびヨー角の経時的変化の一例を示す図である。
【0064】
図8-1,8-3に示すように、負のヨー角(すなわち、右向きのヨー角)が発生した場合には、車両1は距離不足となって目標位置に達していないことがわかる。一方、
図8-2,8-4に示すように、ヨー角が発生しない場合には、車両1は目標退避位置に達することがわかる。
【0065】
このため、本実施形態では、ヨー角補正部1435が、ヨー角と同一方向に後輪2Rの舵角を増加させるように補正値を算出し、舵角算出部1441が目標舵角を補正値で補正する。これにより、ヨー角が負となることによる車両1の回転が抑制され、その結果、車両1が目標位置に到達するようになる。
【0066】
具体的には、ヨー角補正部1435は、補正値を次の(3)式で算出する。
補正値=(0°-計測角度)*比例ゲイン ・・・(3)
【0067】
ここで、計測角度は、例えば、撮像部15で撮像した周囲の画像から、ヨー角補正部1435が車両1のレーンに対する角度を求めれば良い。また、比例ゲインは予め実験等により定めておく。
【0068】
舵角算出部1441は、目標舵角算出部1431で求めた目標舵角を前輪3Fの舵角とする。また、舵角算出部1441は、目標舵角算出部1431で求めた目標舵角、すなわち、前輪3Fの舵角に、比率決定部1433で決定された比率を乗じ、さらにヨー角補正部1435で算出された補正値を加算した値を後輪3Rの舵角として算出する。具体的には、舵角算出部1441は、後輪3Rの舵角を、次の(4)式で算出する。
【0069】
後輪3Rの舵角=目標舵角*比率+補正値 ・・・(4)
【0070】
舵角変化率制限部1437は、舵角の変化率を調整する。車輪速センサ22による検出結果から車両1の速度を求め、当該速度に基づいて、舵角変化率制限部1437は、変化率を求める。舵角変化率制限部1437は、制限部の一例である。
【0071】
図9-1は、舵角と横加速度の関係を示す図である。
図9-1(a)は前輪3Fおよび後輪3Rの舵角の変化を示し、横軸は時間、縦軸は舵角である。
図9-2(b)は横加速度の変化を車速ごとに複数示しており、横軸は時間、縦軸は横加速度舵角である。
【0072】
図9-1に示すように。2~4sの間に舵角をきっていき、その間の車両1の横加速度は、車両の速度が速いほど、大きい値となっている。ここで、車両の速度とは制御開始時の速度を意味する。
【0073】
図9-2は、舵角および舵角速度と横加速度の関係を示す図である。
図9-2(a)は横加速度の変化を車速ごとに複数示しており、、横軸は時間、縦軸は横加速度舵角である。前輪3Fおよび後輪3Rの舵角の変化を示し、横軸は時間、縦軸は舵角である。
図9-2(b)は舵角および舵角速度の変化を示し。横軸は時間、舵角β(スリップ角度と同等)、舵角速度は、dβ/dtで現され、
図9-2(b)のグラフでは舵角βの傾きとなる。
【0074】
このため、
図9-2に示すように、舵角速度が変化しても横加速度は一定となる。ここで、車両の速度Vとすると、V*(dβ/dt)は一定である。
【0075】
本実施形態では、舵角変化率制限部1437は、車両1の速度に基づいて、舵角変化率を決定する。具体的には、舵角変化率制限部1437は、車両1の速度が速くなると、舵角速度は小さくなるように舵角の変化率を決定する。
【0076】
制御部145は、前輪3Fと後輪3Rのそれぞれに、操舵システム13を介して舵角算出部1441で算出された舵角の指示を行う。この際、制御部145は、舵角変化率制限部1437で定めた変化率で算出された舵角となるように、操舵システム13を介して指示を行う。
【0077】
また、制御部145は、上記舵角の指示を、前輪3Fと後輪3Rとに対して略同時に行う。ただし、これに限定されるものではなく、舵角の指示を、前輪3Fと後輪3Rとに対して異なるタイミングで行うように制御部145を構成してもよい。
【0078】
次に、以上のように構成された本実施形態の車両制御システム100による車両制御処理について説明する。
図10は、実施形態にかかる車両制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
まず、異常判断部141は、ドライバー情報取得部148からの撮像画像により、運転者を監視する(S11)。そして、異常判断部141は、運転者に異常があり、かつ先行車両に衝突する可能性があるか否かを判断する(S13)。
【0079】
運転者に異常がなく、または先行車両に衝突する可能性がないと判断された場合には(S13:No)、異常判断部141は運転者の監視を続行する。
【0080】
一方、S13で、運転者に異常があり、かつ先行車両に衝突する可能性があると判断された場合には(S13:Yes)、異常判断部141は、音声制御部14eに指示を行って、音声出力装置9から警報を出力する(S15)。そして、異常判断部141は、減速度を増加させる(S17)。そして、車両1の退避処理が実行される(S19)。
【0081】
図11は、実施形態にかかる車両1の退避処理の手順の一例を示すフローチャートである。
まず、目標舵角算出部1431は、上述した手法で、目標舵角を算出する(S31)。次いで、比率決定部1433は、前後加速度と補正比率DB151とから、補正のための比率を算出する(S33)。そして、ヨー角補正部1435は、上述した手法で補正値を算出する(S35)。次に、舵角算出部1441は、舵角を算出する(S37)。すなわち、舵角算出部1441は、目標舵角を前輪3Fの舵角とし、後輪3Rの舵角を(4)式により算出する。
【0082】
次に、舵角変化率制限部1437は、舵角変化率を算出してこの変化率の制限を行いながら(S39)、制御部145が操舵システム13に舵角の指示を行う(41)。そして、処理は復帰元に戻る。
【0083】
図10に戻り、退避処理が実行されると、車両1は目標位置で停止する。
【0084】
このように本実施形態では、車両制御システム100は、車両1を移動させる目標位置または舵角の状況に応じて、目標舵角を算出し、車両1の前後の加速度に基づいて、車両1の前輪と後輪との舵角の比率を決定し、前輪と後輪のそれぞれに対し、目標舵角を比率で定まる舵角を算出し、前輪3Fと後輪3Rのそれぞれに、算出された前輪3Fと後輪3Rのそれぞれの舵角の指示を行う。
【0085】
このため、本実施形態によれば、車両1の挙動を抑制することで、乗員に与える影響を少なくしつつ、車両1を目標位置に移動させることができる。
【0086】
また、本実施形態では、車両制御システム100は、車両1のヨー角に基づく補正値を決定し、前輪3Fと後輪3Rのそれぞれに対し、目標舵角を比率で定まる値に補正値で補正した舵角を算出する。このため、本実施形態によれば、ヨー角に起因して車両1が目標位置に到達できないことを回避することで、車両1を目標位置に確実に移動させることができる。
【0087】
また、本実施形態では、車両制御システム100は、車両1の速度に基づいて、舵角の変化率を求め、前輪3Fと後輪3Rのそれぞれに、変化率で、舵角を変化させるように前記舵角の指示を行う。このため、本実施形態によれば、舵角を変化させていく際の横加速度の変化を一定にして、より乗員に与える影響をより少なくすることができる。
【0088】
また、本実施形態では、車両制御システム100は、舵角の指示を、前輪3Fと後輪3Rとに対して略同時に行う。このため、本実施形態によれば、車両1の移動動作をスムースに開始することができる。
【0089】
また、本実施形態では、車両制御システム100は、運転者の異常の有無を判断し、運転者に異常があると判断され、かつ先行車両と衝突の可能性があると判断された場合に、車両1を退避させる目標位置に基づいて、目標舵角を算出し、車両1の前後の加速度に基づいて、車両1の前輪と後輪との舵角の比率を決定し、前輪と後輪のそれぞれに対し、目標舵角を比率で定まる舵角を算出し、前輪3Fと後輪3Rのそれぞれに、算出された前輪3Fと後輪3Rのそれぞれの舵角の指示を行う。
【0090】
このため、本実施形態によれば、運転者の異常がであると判断された場合で、かつ先行車両と衝突の可能性があると判断された場合において、車両1を目標位置まで退避させる必要があると判断して、車両1の挙動を抑制することで、乗員に与える影響を少なくしつつ、車両1を目標位置に退避させることができる。
【0091】
上記実施形態では、異常判断部141で運転者の異常がであると判断された場合で、かつ先行車両と衝突の可能性があると判断された場合に、車両1を目標位置まで退避させる必要があると判断して、算出部143が車両1を退避させる目標位置に基づいて、目標舵角を算出していたが、これに限定されるものではない。
【0092】
例えば、車両1が自動運転で走行している場合において、レーンチェンジを行う場合に、舵角の状況に応じて、目標舵角を算出するように算出部143を構成することができる。この場合には、自動運転におけるレーンチェンジにおいても、車両1の挙動を抑制することで、乗員に与える影響を少なくすることが可能となる。
【0093】
上述の実施形態では、CPU14aが、ROM14bやSSD14f等の記憶装置に記憶されるプログラムを読み出して実行することにより、ドライバー情報取得部148、異常判断部141、目標舵角算出部1431、比率決定部1433、ヨー角補正部1435と、舵角変化率制限部1437と、舵角算出部1441、制御部145等の各種の機能モジュールを実現する。
【0094】
上記実施形態では、ドライバー情報取得部148、異常判断部141、目標舵角算出部1431、比率決定部1433、ヨー角補正部1435と、舵角変化率制限部1437と、舵角算出部1441、制御部145等の各種の機能モジュールは、CPU14a等のプロセッサが、ROM14bやSSD14f等の記憶装置に記憶されるプログラムを読み出して実行することにより実現される。ただし、これに限定するものではない。例えば、ドライバー情報取得部148、異常判断部141、目標舵角算出部1431、比率決定部1433、ヨー角補正部1435と、舵角変化率制限部1437と、舵角算出部1441、制御部145等の各種の機能モジュールは、独立したハードウェアにより実現することも可能である。
【0095】
なお、上記実施形態の車両制御装置、車両制御システム100で実行される車両制御プログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。
【0096】
上記実施形態の車両制御装置、車両制御システム100で実行される車両制御プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0097】
さらに、上記実施形態の車両制御装置、車両制御システム100で実行される車両制御プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、上記実施形態の車両制御装置、車両制御システム100で実行される車両制御プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0098】
上記実施形態の車両制御装置、車両制御システム100で実行される車両制御プログラムは、上述した各部(すなわち、ドライバー情報取得部148、異常判断部141、目標舵角算出部1431、比率決定部1433、ヨー角補正部1435と、舵角変化率制限部1437と、舵角算出部1441、制御部145等)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPUが上記ROMから車両制御プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、ドライバー情報取得部148、異常判断部141、目標舵角算出部1431、比率決定部1433、ヨー角補正部1435と、舵角変化率制限部1437と、舵角算出部1441、制御部145等が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0100】
1…車両、2…車体、14…ECU、15,15a,15b,15c,15d…撮像部、100…車両制御システム、141…異常判断部、143…算出部、1431…目標舵角算出部、1433…比率決定部、1435…ヨー角補正部、1437…舵角変化率制限部、1441…舵角算出部、145…制御部、150…記憶部、151…補正比率DB、201…ドライバーモニタカメラ。