(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139876
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】温度調節装置
(51)【国際特許分類】
B29C 33/04 20060101AFI20241003BHJP
B29C 45/73 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B29C33/04
B29C45/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050808
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000146054
【氏名又は名称】株式会社松井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】目次 正明
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AK13
4F202AR06
4F202CA11
4F202CA30
4F202CB01
4F202CN01
4F202CN05
4F202CN14
4F202CN24
(57)【要約】
【課題】温度調節対象の媒体流通路に送媒される温調媒体に温度ばらつきが生じることを軽減し得、かつ温調媒体を円滑に媒体流通路に送媒し得る温度調節装置を提供する。
【解決手段】温度調節対象4の媒体流通路5の入口及び出口のそれぞれに接続される送媒路15及び返媒路18を有した循環路10に温調媒体を循環させる温度調節装置1であって、前記返媒路から分岐する一方の第1返媒路18Aが接続され加熱部12が設けられた貯留部11と、前記返媒路から分岐する他方の第2返媒路18Bが接続され温調媒体を通過させる媒体路21及び冷却媒体を通過させる冷却路22を有した熱交換器20と、前記媒体路の出口及び前記貯留部に管路15A,18Cを介して吸込側が接続される一方、吐出側に前記送媒路が接続される循環ポンプ16と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度調節対象の媒体流通路の入口及び出口のそれぞれに接続される送媒路及び返媒路を有した循環路に温調媒体を循環させる温度調節装置であって、
前記返媒路から分岐する一方の第1返媒路が接続され加熱部が設けられた貯留部と、前記返媒路から分岐する他方の第2返媒路が接続され温調媒体を通過させる媒体路及び冷却媒体を通過させる冷却路を有した熱交換器と、前記媒体路の出口及び前記貯留部に管路を介して吸込側が接続される一方、吐出側に前記送媒路が接続される循環ポンプと、を備えていることを特徴とする温度調節装置。
【請求項2】
請求項1おいて、
前記第2返媒路に該第2返媒路を開閉する冷却弁が設けられていることを特徴とする温度調節装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記熱交換器の冷却路に冷却媒体を供給する冷媒供給路に設けられ該冷媒供給路を開閉する冷媒弁を備えていることを特徴とする温度調節装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
温調媒体の供給源に連通するように接続され、前記貯留部を含む前記循環路の温調媒体を加圧する加圧ポンプを備えていることを特徴とする温度調節装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度調節対象を温度調節する温度調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金型等の温度調節対象の媒体流通路に温調媒体を循環供給し、温度調節対象の温度を調節する温度調節装置が知られている。
例えば、下記特許文献1には、ポンプの出口側と金型の入口側との間を接続する管路の中途にヒータユニットを設け、金型の出口側とポンプの入口側との間を接続する管路の中途に熱交換器を介装した金型温度調節機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された金型温度調節機においては、ポンプの出口側にヒータユニットが設けられているため、ヒータユニットの構成によっては、金型に向かう温調媒体に温度ムラが生じたり、ヒータユニットにおいて圧力損失が生じたりする懸念がある。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、温度調節対象の媒体流通路に送媒される温調媒体に温度ばらつきが生じることを軽減し得、かつ温調媒体を円滑に媒体流通路に送媒し得る温度調節装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本開示に係る温度調節装置の構成1は、温度調節対象の媒体流通路の入口及び出口のそれぞれに接続される送媒路及び返媒路を有した循環路に温調媒体を循環させる温度調節装置であって、前記返媒路から分岐する一方の第1返媒路が接続され加熱部が設けられた貯留部と、前記返媒路から分岐する他方の第2返媒路が接続され温調媒体を通過させる媒体路及び冷却媒体を通過させる冷却路を有した熱交換器と、前記媒体路の出口及び前記貯留部に管路を介して吸込側が接続される一方、吐出側に前記送媒路が接続される循環ポンプと、を備えていることを特徴とする。
【0007】
以下の実施の形態の記載により、本開示に係る温度調節装置は、以下の従属的構成を備えていてもよいことが開示される。
<構成2>
構成1において、前記第2返媒路に該第2返媒路を開閉する冷却弁が設けられていてもよい。
<構成3>
構成1または構成2において、前記熱交換器の冷却路に冷却媒体を供給する冷媒供給路に設けられ該冷媒供給路を開閉する冷媒弁を備えていてもよい。
<構成4>
構成1~構成3のいずれか1つにおいて、温調媒体の供給源に連通するように接続され、前記貯留部を含む前記循環路の温調媒体を加圧する加圧ポンプを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る温度調節装置は、上述のような構成としたことで、温度調節対象の媒体流通路に送媒される温調媒体に温度ばらつきが生じることを軽減することができ、また、温調媒体を円滑に媒体流通路に送媒することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係る温度調節装置の一例を模式的に示す概略システム構成図である。
【
図2】同温度調節装置において実行される基本動作の一例を模式的に示す概略タイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1では、温調媒体等の流体が通過する経路となる管路(配管)等を、実線及び破線にて模式的に示している。
図2における概略タイムチャートでは、各機器のON/OFF動作や開閉動作等を模式的に示している。
図2におけるグラフでは、横軸を時間軸、縦軸を温度検出部の検出温度とし、その推移を模式的に示している。
【0011】
図1及び
図2は、本実施形態に係る温度調節装置の一例及びこれを用いて実行される基本動作の一例を模式的に示す図である。
本実施形態に係る温度調節装置1は、
図1に示すように、温度調節対象としての金型4の媒体流通路5の入口及び出口のそれぞれに接続される送媒路15及び返媒路18を有した循環路10に温調媒体を循環させる構成とされている。つまり、本実施形態では、温度調節装置1は、金型4を温度調節する金型温度調節装置を構成する。
【0012】
金型4は、例えば、固定型と可動型とを有した構成とされており、これら固定型及び可動型には、温調媒体を流通させる媒体流通路5,5がそれぞれに設けられている。これら媒体流通路5,5の入口(送媒接続口)側に、循環路10を構成する送媒路15が接続される。媒体流通路5,5の出口(返媒接続口)側に、循環路10を構成する返媒路18が接続される。
送媒路15と媒体流通路5,5の入口とは、単一の送媒路15を複数に分岐させるマニホールド部やこのマニホールド部の複数の接続口に接続されたホースやチューブ等の可撓性を有した配管材を介して接続されていてもよい。また、マニホールド部や管路等の適所に、媒体流通路5,5に向けて送媒される温調媒体の通過を許容または遮断する送媒バルブを設けた例を示している。
返媒路18と媒体流通路5,5の出口とも略同様、単一の返媒路18を複数に分岐させるマニホールド部やこのマニホールド部の複数の接続口に接続されたホースやチューブ等の可撓性を有した配管材を介して接続されていてもよい。また、マニホールド部や管路等の適所に、媒体流通路5,5から返媒される温調媒体の通過を許容または遮断する返媒バルブを設けた例を示している。
【0013】
金型4の温度を検出する温度センサーを適所に設けた構成としてもよい。例えば、この温度センサーを、金型4に埋込状に設けた構成としてもよく、また、媒体流通路5の入口側部位や入口近傍部位の送媒路15、媒体流通路5の出口側部位や出口近傍部位の返媒路18等に設けた態様としてもよい。
この金型4の成形機としては、金型4の固定型と可動型とによって形成されるキャビティー等に、シリンダ等で溶融させた材料としての合成樹脂をノズル等から射出して充填し、成形品を逐次、成形する射出成形機等でもよい。成形機としては、溶融させた材料を金型からシート状に押し出して成形する押出成形機等でもよく、圧縮成形機等の他の成形機でもよい。成形材料としては、合成樹脂材料に、炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維を含有させた繊維強化合成樹脂材料等でもよい。
温度調節対象としては、金型4に限られず、温調媒体が供給されて温度調節される構成とされていればよく、例えば、床暖房装置や、その他、種々の機械等であってもよい。
【0014】
温度調節装置1は、返媒路18から分岐する一方の第1返媒路18Aが接続され加熱部を構成するヒーター12が設けられた貯留部11を備えている。温度調節装置1は、返媒路18から分岐する他方の第2返媒路18Bが接続され温調媒体を通過させる媒体路21及び冷却媒体を通過させる冷却路22を有した熱交換器20を備えている。温度調節装置1は、貯留部11及び媒体路21の出口に管路15A,18C(上流側送媒路15A及び下流側第2返媒路18C)を介して吸込側が接続される一方、吐出側に送媒路15が接続される循環ポンプ16を備えている。このような構成とすれば、ポンプの出口側と金型の入口側との間にヒータユニットを設けた構成と比べて、送媒側における圧力損失を生じ難くすることができ、温調媒体を円滑に媒体流通路5に送媒することができる。また、上記のような位置にヒータユニットを設けた構成と比べて、温調媒体を循環ポンプ16において撹拌させることができ、金型4の媒体流通路5に送媒される温調媒体の温度ばらつきを生じ難くすることができる。
【0015】
また、熱交換器20によって温調媒体を間接的に冷却することができる。また、この熱交換器20の媒体路21の出口及び貯留部11が下流側第2返媒路18C及び上流側送媒路15Aを介して循環ポンプ16の吸込側に接続されているので、循環ポンプ16の吸込作用によって、温調媒体を熱交換器20の媒体路21に円滑に流通させることができる。また、冷却動作が実行されている際には、貯留部11及び熱交換器20を経た温調媒体を循環ポンプ16において撹拌させることができ、金型4の媒体流通路5に送媒される温調媒体に温度ばらつきが生じることを効果的に軽減することができる。また、例えば、循環ポンプの吐出側を分岐させて熱交換器の媒体路の入口に接続した構成と比べて、金型4の媒体流通路5に送媒される温調媒体の流量にばらつき等が生じることを抑制することができる。
【0016】
温度調節装置1は、本実施形態では、第2返媒路18Bに設けられ、この第2返媒路18Bを開閉する冷却弁19を備えている。このような構成とすれば、例えば、熱交換器の媒体路の入口に接続された循環ポンプの吐出側の送媒路や送媒路から分岐した管路に冷却弁を設けた構成と比べて、冷却弁19の一次側(上流側)と二次側(下流側)との差圧を小さくすることができる。これにより、要求耐圧や最高作動圧力差の低い冷却弁19を採用することができ、低コスト化を図ることができる。また、熱交換器の媒体路の出口に接続される管路に冷却弁を設けた構成と比べて、冷却弁19の開閉(ON/OFF動作)時に生じるウォーターハンマーによって熱交換器20の媒体路21に掛かる負荷を低減することができ、熱交換器20の長寿命化を図ることもできる。
【0017】
温度調節装置1は、本実施形態では、熱交換器20の冷却路22に冷却媒体を供給する冷媒供給路28に設けられ冷媒供給路28を開閉する冷媒弁29を備えている。このような構成とすれば、熱交換器20の冷却路22の出口側に接続される排出路に冷媒弁を設けた構成と比べて、冷媒弁29の開閉(ON/OFF動作)時に生じるウォーターハンマーによって熱交換器20の冷却路22に掛かる負荷を低減することができ熱交換器20の長寿命化を図ることができる。
温度調節装置1は、本実施形態では、温調媒体の供給源2に連通するように接続され、貯留部11を含む循環路10の温調媒体を加圧する加圧ポンプ25を備えている。このような構成とすれば、常圧の沸点よりも高温に加熱された温調媒体を沸騰させることなく媒体流通路5に供給することができる。また、このように系内が加圧される場合には、冷却弁19や熱交換器20の要求耐圧がより高くなる傾向があるが、冷却弁19を上記のような配置とすることで冷却弁19や熱交換器20に掛かる負荷を軽減することができる。
【0018】
具体的には、温度調節装置1は、温調媒体の温度を検出する温度検出部17と、温調媒体の温度が予め設定された目標温度となるように、温度検出部17の検出温度に基づいてヒーター12及び冷却弁19を制御する制御部7と、を備えている。
貯留部11は、温調媒体を満たした状態(満水状態)で貯留し、送媒路15及び返媒路18並びに金型4の媒体流通路5,5とによって循環路10を構成する。
貯留部11は、有底筒状のタンク状とされ、当該温度調節装置1の稼働中には、原則的には温調媒体で満たされ満レベルとされる。ヒーター12は、筒状とされた貯留部11内において略同軸状に延びるように設けられている。このヒーター12は、図例では、貯留部11の天壁部に保持されている。貯留部11には、このヒーター12を停止させる過温防止用のサーモスタット13が設けられている。温調媒体を加熱する加熱部としては、このようなヒーター12に限られず、その他、種々の構成とされていてもよい。
【0019】
この貯留部11の上端部には、温調媒体を排出する(オーバーフローさせる)排出路26が接続されている。この排出路26には、温調媒体の通過を許容または遮断する排出弁27が設けられている。この排出弁27は、後記する制御部7によって開閉制御される電磁弁等でもよい。
貯留部11には、貯留部11内の温調媒体の媒体レベルの低下を検出する媒体センサー14が設けられている。この媒体センサー14としては、種々のレベル計(液面計)等でもよいが、図例では、貯留部11の上端部に管路を介して接続され、かつ排出路26に連通するように接続されたフロートスイッチとした例を示している。
貯留部11には、加圧ポンプ25によって加圧される循環路10を含む略密閉状となる系内の圧力を検出する適宜の圧力センサー等の圧力検出部が設けられていてもよい。圧力検出部は、貯留部11に限られず、送媒路15や返媒路18等の循環路10の適所に設けた態様としてもよい。また、図例では、貯留部11に、圧力の異常上昇を防止するリリーフ弁(安全弁)を設けた例を示している。
貯留部11の底部には、貯留部11内の温調媒体を排出するドレン(ドレンバルブ)等が設けられている。
【0020】
この貯留部11の下端部(図例では、底部)に、循環ポンプ16の吸込側に接続される上流側送媒路15Aが接続されている。循環ポンプ16の吐出側には、送媒路15が接続されている。図例では、循環ポンプ16の吐出側となる送媒路15に、温度検出部17を設けた例を示しているが、この温度検出部17に代えて、または加えて、送媒路15の他の部位や貯留部11、返媒路18等に温度検出部を設けた構成としてもよい。また、図例では、送媒路15に、圧力ゲージを設けた例を示している。送媒路15の途中部位と貯留部11とを接続するようにバイパス路を設けたり、送媒路15の途中部位と返媒路18の途中部位とを接続するようにバイパス路を設けたりしてもよい。また、このようなバイパス路に、温調媒体の通過を許容または遮断するバイパスバルブを設けてもよい。
【0021】
返媒路18は、二本に分岐、つまり、第1返媒路18Aと第2返媒路18Bとに分岐している。本実施形態では、熱交換器20の高温側流路となる媒体路21の入口に接続される第2返媒路18Bを、返媒路18から直進的に設けた構成としている。このような構成とすれば、冷却弁19を開放させれば、返媒路18からの温調媒体の動圧を利用して熱交換器20の媒体路21に温調媒体を円滑に供給することができる。つまり、直管状に形成された第2返媒路18Bと返媒路18との境界部から第1返媒路18Aが分岐するように設けられている。
第1返媒路18Aの下流側端部は、貯留部11(図例では、上端部の周壁)に接続されている。
第2返媒路18Bに設けられた冷却弁19は、温調媒体の通過を許容または遮断する。この冷却弁19は、後記する制御部7によって開閉制御される電磁弁等でもよい。
熱交換器20の媒体路21の出口には、循環ポンプ16の吸込側に接続される下流側第2返媒路18Cが接続されている。図例では、この下流側第2返媒路18Cの下流側部位と上流側送媒路15Aとを合流させた管路が循環ポンプ16の吸込側に接続されている。
返媒路18の適所に、ストレーナ等のフィルターが設けられていてもよい。循環路10の適所に循環路10を流通する温調媒体の流量を検出する流量計が設けられていてもよい。
【0022】
加圧ポンプ25は、供給源2からの温調媒体を貯留部11に供給する供給路23に設けられている。この加圧ポンプ25の吐出側には、逆流防止弁(逆止弁、チェックバルブ)等の適宜の逆流防止機能が設けられている。この加圧ポンプ25は、温度検出部17の検出温度に基づいて循環路10の温調媒体の圧力が飽和蒸気圧以上となるように制御部7に駆動制御される構成でもよい。このような構成とすれば、目標温度が高温である場合に加圧ポンプ25を常時稼働させる構成と比べて、加圧ポンプ25の長寿命化が図れ、また、循環路10や媒体流通路5に過剰な圧力が掛かることを抑制することができる。
供給路23の上流側端部が供給源2に連通するように接続され、供給路23の下流側端部が貯留部11に接続されている。この供給路23の上流側部位には、温調媒体の通過を許容または遮断する供給バルブやストレーナ等のフィルターが設けられている。この供給路23には、温調媒体の供給圧力(給水圧)を検出する供給圧力検出部が設けられていてもよい。温調媒体の供給源2としては、温調媒体としての水(清水)を供給する水道(工業用水道、上水道)でもよい。また、供給源2は、工場等に設置されるクーリングタワー等でもよい。この場合は、排出路26の下流側端部がクーリングタワーの戻り管路3に接続されていてもよい。温調媒体としては、水に限られず、油系やアルコール系等の他の温調媒体でもよい。
【0023】
供給路23には、加圧ポンプ25の吸込側となる上流側と加圧ポンプ25の吐出側となる下流側とを接続するようにバイパス路24が設けられている。このバイパス路24には、上流(供給源2)側から下流(貯留部11)側への温調媒体の流れを許容する一方、下流側から上流側への温調媒体の流れを阻止(遮断)する逆流防止弁(逆止弁、チェックバルブ)が設けられている。
この供給路23のバイパス路24よりも下流側部位から分岐するように、かつその下流側端部が排出路26の排出弁27よりも下流側部位に接続された分岐排出路が設けられていてもよい。この場合は、この分岐排出路に、適宜のリリーフ弁(圧力逃がし弁)等が設けられていてもよい。供給路23の上流側部位等の適所に、供給源2から供給される温調媒体の供給圧が概ね一定圧力となるように維持する減圧弁が設けられていてもよい。
【0024】
熱交換器20の低温側流路となる冷却路22の入口に接続される冷媒供給路28は、本実施形態では、供給路23から分岐するように設けられている。つまり、冷却媒体の供給源を、温調媒体の供給源2としている。この冷媒供給路28は、供給路23から分岐するバイパス路24の分岐部よりも上流側の供給路23から分岐するように設けられている。図例では、冷媒供給路28は、供給路23に設けられたフィルターの下流側部位から分岐している。
この冷媒供給路28に設けられた冷媒弁29は、冷却媒体の通過を許容または遮断する。この冷媒弁29は、後記する制御部7によって開閉制御される電磁弁等でもよい。
熱交換器20の冷却媒体の排出側となる冷却路22の出口には、冷媒排出路28Aが接続されている。この冷媒排出路28Aの下流側端部は、排出路26の排出弁27よりも下流側部位に接続されている。
【0025】
熱交換器20としては、プレート型や二重管型、シェルアンドチューブ型、クロスフィン型等の種々の構成とされていてもよい。図例では、向流型のような熱交換器20を例示しているが、直交流型や並流型等の種々の構成とされた熱交換器を採用するようにしてもよい。また、冷却媒体の供給源を温調媒体の供給源2と同一とした例に代えて、温調媒体の供給源2とは別の供給源に冷媒供給路28が接続されてもよい。また、冷却媒体としては、適宜のチラー等の冷却器等によって温度制御がなされる構成でもよく、また、本実施形態のように間接冷却(熱交換)式とし、温調媒体と混在しないように管路が構成された場合には、エタノールやエチレングリコール、その他のアルコール等としてもよく、その他の冷却媒体としてもよい。
【0026】
制御部7は、当該温度調節装置1の適所や当該温度調節装置1から離間した箇所に設置された適宜の制御盤6に設けられている。制御部7は、CPU(Central Processing Unit)等の制御回路を含み、後記する基本動作等を実行する。この制御部7は、上記したヒーター12やサーモスタット13、媒体センサー14、循環ポンプ16、温度検出部17、冷却弁19、加圧ポンプ25、排出弁27、冷媒弁29、各圧力検出部等を含む当該温度調節装置1の各部に信号線等を介して接続されている。ヒーター12や循環ポンプ16、冷却弁19、加圧ポンプ25、排出弁27、冷媒弁29等は、制御部7によって起動(ON)/停止(OFF)や開閉が制御される。
制御盤6には、各種設定などの設定や入力、表示をするための表示操作部9が設けられている。制御盤6には、表示操作部9の操作により設定、入力された設定条件や入力値、後記する基本動作等を実行するための制御プログラムなどの各種プログラム、予め設定された各種動作条件、各種データテーブル等が格納され、ROMやRAM等の各種メモリ等から構成された記憶部8が設けられている。
【0027】
上記構成とされた温度調節装置1においては、制御部7によって各部が制御され、以下のような基本動作等が実行されてもよい。
温度調節装置1においては、起動初期等において系内に温調媒体が満たされていない場合、つまり、媒体センサー14が媒体無(補給レベル)を検出していれば、排出弁27を開放させる。これにより、供給源2からの温調媒体が供給路23及びバイパス路24を介して系内、つまり、貯留部11、上流側送媒路15A、送媒路15、媒体流通路5、返媒路18、第1返媒路18A、排出路26等に供給され、これらが温調媒体で満たされる。この際、冷却弁19を開放させて第2返媒路18B、媒体路21及び下流側第2返媒路18Cにも温調媒体を通すようにしてもよい。そして、媒体センサー14が媒体満(満レベル)を検出すれば、排出弁27を閉鎖し、循環ポンプ16を起動して温調媒体を循環させながら温調媒体の温度が予め設定された目標温度となるようにヒーター12及び冷却弁19を制御し温調媒体を温度調節する定常運転を実行する。
【0028】
つまり、温度検出部17の検出温度に基づいて、温調媒体が目標温度となるように、ヒーター12への通電制御による加熱及び熱交換器20の媒体路21への温調媒体の供給制御(冷却弁19の開閉制御)による冷却がなされる。循環ポンプ16を起動すれば、温調媒体が循環路10を構成する上流側送媒路15A、送媒路15、媒体流通路5、返媒路18、第1返媒路18A及び貯留部11を循環する。ヒーター12が起動されれば、循環路10を循環する温調媒体が貯留部11において加熱され、所定温度を上回れば、ヒーター12が停止される。冷却弁19が開放されれば、循環路10を循環する温調媒体の一部が第2返媒路18Bを介して媒体路21に供給され、熱交換器20において冷却され、所定温度を下回れば、冷却弁19が閉鎖される。つまり、熱交換器20において冷却路22を通過する冷却媒体との熱交換がなされて媒体路21を通過する温調媒体が間接的に冷却される。なお、冷却路22に冷却媒体を通過させる冷媒弁29は、冷却弁19に同期させて開閉するようにしてもよい。このような態様に代えて、温度検出部17の検出温度または目標温度が所定温度(例えば70℃~100℃)以上であれば、冷媒弁29が常時開放される構成でもよい。このような構成とすれば、冷却弁19を開放させれば、冷却路22を通過する冷却媒体によって冷却された熱交換器20において迅速に熱交換がなされるので冷却効率を向上させることができる。
【0029】
上記のように温調媒体の温度調整がなされれば、温調媒体の温度は、常温程度から目標温度(例えば、110℃~230℃程度の範囲内で予め設定された温度)に向けて上昇する。この際、温度検出部17の検出温度が予め設定された加圧ポンプ25を駆動させる温度下限値となる加圧設定温度(
図2参照)を上回れば、加圧ポンプ25を駆動するようにしてもよい。例えば、温調媒体が水である場合には、系内における沸騰を確実に防止すべく、加圧設定温度を80℃~90℃程度としてもよい。
また、温度検出部17の検出温度に基づいて算出される飽和蒸気圧及び圧力検出部の検出圧力に基づいて、循環路10(系内)の圧力が飽和蒸気圧以上となるように加圧ポンプ25を駆動制御してもよい。温調媒体が水である場合には、飽和蒸気圧(絶対圧力)と温度(絶対温度)との関係は、例えば、ウェクスラーハイランドの式等を用いて算出可能である。このように算出された温度と飽和蒸気圧(絶対圧力)との関係から温度に対応するゲージ圧(飽和蒸気圧(絶対圧力)から大気圧を差し引いた圧力)を算出し記憶部8に予め格納させておいてもよく、制御部7の演算部等において算出してもよい。圧力検出部の検出圧力が温度検出部17の検出温度に対応する飽和蒸気圧またはこれをゲージ圧に換算した圧力(検出温度対応圧力)を下回れば、加圧ポンプ25を駆動するようにしてもよい。この際、加圧ポンプ25を予め設定された所定時間が経過するまで駆動してもよい。または、圧力検出部の検出圧力が検出温度対応圧力に所定値を加えた圧力を上回れば加圧ポンプ25を停止させるようにしてもよい。
【0030】
より具体的には、例えば、
図2に示すように、循環ポンプ16を起動して循環路10に温調媒体を循環させながら、温度検出部17の検出温度が予め設定された目標温度を上回るまでは、ヒーター12が起動されて加熱動作が実行される。図例では、冷媒弁29を常時、開放させた例を示しているが、このような例に限られない。
また、温度検出部17の検出温度が加圧設定温度を上回れば、加圧ポンプ25を駆動する。そして、循環路10(系内)の圧力が飽和蒸気圧以上となれば、加圧ポンプ25を停止する。また、温度検出部17の検出温度が目標温度を上回れば、加熱動作から冷却動作に切り替え、つまり、ヒーター12が停止され、冷却弁19が開放されて冷却がなされる。また、温度検出部17の検出温度が目標温度を下回れば、冷却動作から加熱動作に切り替えられ、冷却弁19が閉鎖され、ヒーター12が起動されて加熱がなされる。このように目標温度を境に切り替えられる態様に代えて、目標温度に数℃程度(例えば、1℃~3℃程度)の所定温度を加えた値(冷却開始温度)を上回れば、冷却がなされ、目標温度から数℃程度(例えば、1℃~3℃程度)の所定温度を差し引いた値(加熱開始温度)を下回れば、加熱がなされる構成としてもよい。
この基本動作は、一例であり、適宜の変形動作の実行が可能である。
【0031】
上記した例では、循環路10(系内)の温調媒体を加圧する加圧ポンプ25を設けた例を示しているが、このような加圧ポンプ25を設けていない構成としてもよい。この場合は、排出弁27に代えて、または加えて、供給路23の適所に制御部7によって開閉制御される適宜の供給弁等を設けた構成としてもよい。
上記した例では、熱交換器20の冷却路22の上流側となる入口に接続される冷媒供給路28に冷媒弁29を設けた例を示しているが、このような態様に代えて、冷却路22の下流側となる出口に接続される冷媒排出路28Aに冷媒弁29を設けた構成としてもよい。更には、このような冷媒弁29を設けずに冷却路22に常時、冷却媒体が供給される構成でもよい。
上記した例では、熱交換器20の媒体路21の上流側となる入口に接続される第2返媒路18Bに冷却弁19を設けた例を示しているが、このような態様に代えて、媒体路21の下流側となる出口に接続される下流側第2返媒路18Cに冷却弁19を設けた構成としてもよい。
本実施形態に係る温度調節装置1が備える各部の具体的構成や温度調節装置1において実行される温度調節方法としては、上記した構成に限られず、その他、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 温度調節装置
10 循環路
11 貯留部
12 ヒーター(加熱部)
15 送媒路
15A 上流側送媒路(管路)
16 循環ポンプ
18 返媒路
18A 第1返媒路
18B 第2返媒路
18C 下流側第2返媒路(管路)
19 冷却弁
20 熱交換器
21 媒体路
22 冷却路
25 加圧ポンプ
28 冷媒供給路
29 冷媒弁
2 供給源
4 金型(温度調節対象)
5 媒体流通路