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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139877
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
F25B1/00 304H
F25B1/00 101G
F25B1/00 321C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050809
(22)【出願日】2023-03-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 好亮
(72)【発明者】
【氏名】竹内 博俊
(72)【発明者】
【氏名】前間 慶成
(72)【発明者】
【氏名】兼井 一樹
(72)【発明者】
【氏名】煎谷 晴輝
(57)【要約】
【課題】蓄熱暖房運転中に暖房要求能力が変化した場合でも、快適性の低下および消費電力の増加を抑制することができる冷凍サイクル装置を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る冷凍サイクル装置は、前記圧縮機の吐出側を室外熱交換器と主膨張弁との間の冷媒配管に接続するバイパス流路と、前記バイパス流路に配置され前記圧縮機から吐出される冷媒の一部と熱交換可能な蓄熱材を有する補助熱交換器と、前記圧縮機と前記補助熱交換器との間の前記バイパス流路に配置された第1バイパス膨張弁と、前記補助熱交換器と前記冷媒配管との間の前記バイパス流路に配置された第2バイパス膨張弁とを含む蓄熱回路と、蓄熱暖房運転モードにおいて前記圧縮機の吐出側の冷媒の圧力を検出する圧力センサの検出値の変化率に基づいて、前記第1バイパス膨張弁の開度を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、室外熱交換器と、室内熱交換器と、前記室外熱交換器と前記室内熱交換器との間に配置された主膨張弁と、を含む冷媒回路と、
前記圧縮機の吐出側を前記室外熱交換器と前記主膨張弁との間の冷媒配管に接続するバイパス流路と、前記バイパス流路に配置され前記圧縮機から吐出される冷媒の一部と熱交換可能な蓄熱材を有する補助熱交換器と、前記圧縮機と前記補助熱交換器との間の前記バイパス流路に配置された第1バイパス膨張弁と、前記補助熱交換器と前記冷媒配管との間の前記バイパス流路に配置された第2バイパス膨張弁と、を含む蓄熱回路と、
前記圧縮機の吐出側の冷媒の圧力を検出する圧力センサと、
前記主膨張弁、前記第1バイパス膨張弁および前記第2バイパス膨張弁の開度をそれぞれ制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記室内熱交換器および前記補助熱交換器を凝縮器として機能させ、前記室外熱交換器を蒸発器として機能させる蓄熱暖房運転モードにおいて、前記圧力センサの検出値の変化率に基づいて、前記第1バイパス膨張弁の開度を制御する
冷凍サイクル装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷凍サイクル装置であって、
前記制御部は、前記蓄熱暖房運転モードにおいて、
前記圧力センサの検出値の変化率が正の値の場合は、前記第1バイパス膨張弁の開度が小さくなるように前記第1バイパス膨張弁の開度を制御し、
前記圧力センサの検出値の変化率が負の値の場合は、前記第1バイパス膨張弁の開度が大きくなるように前記第1バイパス膨張弁の開度を制御する
冷凍サイクル装置。
【請求項3】
請求項1に記載の冷凍サイクル装置であって、
前記制御部は、前記蓄熱暖房運転モードの開始時に、前記圧力センサの検出値に基づいて前記第1バイパス膨張弁の開度を制御する
冷凍サイクル装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置であって、
前記制御部は、蓄熱暖房運転モードにおいて、前記補助熱交換器から流出する冷媒のサブクールが予め設定された目標サブクールとなるように前記第2バイパス膨張弁の開度を制御する
冷凍サイクル装置。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置であって、
前記制御部は、前記圧縮機に吸入される冷媒を飽和蒸気としたときの吐出温度である理論吐出温度を算出し、前記圧縮機から吐出される冷媒の温度が前記理論吐出温度となるように前記主膨張弁の開度を制御する
冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱回路を備えた冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄熱材に蓄えられた熱を利用して室外熱交換器の除霜を行う冷凍サイクル装置が知られている。この種の冷凍サイクル装置は、圧縮機と、室外熱交換器と、室内熱交換器と、膨張弁とを含む冷媒回路のほか、圧縮機の吐出側を室外熱交換器と膨張弁との間の液冷媒配管に接続するバイパス流路と、バイパス流路に配置された蓄熱槽と、蓄熱槽の上流側および下流側にそれぞれ配置された2つのバイパス膨張弁とを有する蓄熱回路を備える(例えば特許文献1参照)。
【0003】
蓄熱槽は、圧縮機から吐出される冷媒の一部と熱交換可能な蓄熱材を有し、主として暖房運転中に圧縮機から吐出される冷媒の一部が蓄熱槽に導入されることで冷媒の熱を蓄える(以下、蓄熱暖房運転ともいう)。除霜運転時においては室内熱交換器および室外熱交換器を凝縮器として機能させるとともに、蓄熱材に蓄えられた熱を用いて蓄熱槽を蒸発器として機能させる。これにより、暖房運転を停止させることなく室外熱交換器の除霜運転(以下、除霜暖房運転ともいう)を行うことができるため、除霜運転中においても暖房能力の低下が抑えられるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-17738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
膨張弁の開度の制御方法としては一般的に、FB制御(フィードバック制御)と、FF制御(フィードフォワード制御)とが知られている。FB制御としては、冷媒回路全体の流量調整のために行う目標吐出温度制御や室内機の能力に応じた流量調整のために行う目標サブクール制御などが挙げられる。一方、FF制御は、追従性の改善を目的とした制御で、主として圧縮機の回転数に基づいて実行される。例えば、室内機からの暖房要求能力の増加に伴って圧縮機の回転数を上昇させるが、FF制御では、圧縮機から吐出される冷媒の温度が高くなり過ぎないように、圧縮機の回転数の上昇率に対応するように膨張弁の開度を大きくする制御が実行される。
【0006】
しかしながら特許文献1には、蓄熱暖房運転において各バイパス膨張弁を開放して蓄熱暖房運転を行うことが記載されてはいるが、蓄熱暖房運転中に室内機からの暖房要求能力が変化した場合における各バイパス膨張弁の開度の制御方法については記載がない。したがって特許文献1に記載の蓄熱暖房運転では、バイパス膨張弁の開度の制御が上述のようなFF制御で行われるとした場合、暖房要求能力の増加により圧縮機の回転数を上昇させると、バイパス膨張弁の開度が大きくなるように制御するため、蓄熱槽に過剰に冷媒が供給されてしまい、利用側熱交換器である室内熱交換器に供給される冷媒の量が暖房要求能力の増加により求められる冷媒の量よりも減少することで暖房能力(快適性)が低下するおそれがある。また、このような暖房能力の低下を抑えるためには圧縮機の回転数を過剰に高くする必要があり、それが原因で消費電力が増加するという問題がある。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、蓄熱暖房運転中に暖房要求能力が変化した場合でも、快適性の低下および消費電力の増加を抑制することができる冷凍サイクル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る冷凍サイクル装置は、
圧縮機と、室外熱交換器と、室内熱交換器と、前記室外熱交換器と前記室内熱交換器との間に配置された主膨張弁と、を含む冷媒回路と、
前記圧縮機の吐出側を前記室外熱交換器と前記主膨張弁との間の冷媒配管に接続するバイパス流路と、前記バイパス流路に配置され前記圧縮機から吐出される冷媒の一部と熱交換可能な蓄熱材を有する補助熱交換器と、前記圧縮機と前記補助熱交換器との間の前記バイパス流路に配置された第1バイパス膨張弁と、前記補助熱交換器と前記冷媒配管との間の前記バイパス流路に配置された第2バイパス膨張弁と、を含む蓄熱回路と、
前記圧縮機の吐出側の冷媒の圧力を検出する圧力センサと、
前記主膨張弁、前記第1バイパス膨張弁および前記第2バイパス膨張弁の開度をそれぞれ制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記室内熱交換器および前記補助熱交換器を凝縮器として機能させ、前記室外熱交換器を蒸発器として機能させる蓄熱暖房運転モードにおいて、前記圧力センサの検出値の変化率に基づいて、前記第1バイパス膨張弁の開度を制御する。
【0009】
前記制御部は、前記蓄熱暖房運転モードにおいて、前記圧力センサの検出値の変化率が正の値の場合は、前記第1バイパス膨張弁の開度が小さくなるように前記第1バイパス膨張弁の開度を制御し、前記圧力センサの検出値の変化率が負の値の場合は、前記第1バイパス膨張弁の開度が大きくなるように前記第1バイパス膨張弁の開度を制御するようにしてもよい。
【0010】
前記制御部は、前記蓄熱暖房運転モードの開始時に、前記圧力センサの検出値に基づいて前記第1バイパス膨張弁の開度を制御するようにしてもよい。
【0011】
前記制御部は、蓄熱暖房運転モードにおいて、前記補助熱交換器から流出する冷媒のサブクールが予め設定された目標サブクールとなるように前記第2バイパス膨張弁の開度を制御するようにしてもよい。
【0012】
前記制御部は、前記圧縮機に吸入される冷媒を飽和蒸気としたときの吐出温度である理論吐出温度を算出し、前記圧縮機から吐出される冷媒の温度が前記理論吐出温度となるように前記主膨張弁の開度を制御するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、蓄熱暖房運転中に暖房要求能力が変化した場合でも、快適性の低下および消費電力の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る冷凍サイクル装置の冷媒回路図である。
図2】上記冷凍サイクル装置における制御装置の構成を示すブロック図である。
図3】上記制御装置において実行される蓄熱暖房運転モードの処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4】蓄熱暖房運転モードの開始時における上記冷凍サイクル装置の各部の動作または状態を示すタイミングチャートである。
図5】蓄熱暖房運転モードの実行中における上記冷凍サイクル装置の各部の動作または状態を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る冷凍サイクル装置100の冷媒回路図である。本実施形態の冷凍サイクル装置100は、室外機2と室内機3とを備えた空気調和機である。以下、冷凍サイクル装置100の詳細について説明する。
【0017】
[冷凍サイクル装置の構成]
室外機2は、圧縮機21と、室外熱交換器22とを備える。室内機3は、室内熱交換器23を備える。室外機2と室内機3は、ガス管12と液管13で接続されている。冷凍サイクル装置100は、冷媒回路20と、蓄熱回路50と、制御装置90とを有する。
【0018】
(冷媒回路)
冷媒回路20は、圧縮機21と、室外熱交換器22と、室内熱交換器23と、室外熱交換器22と室内熱交換器23との間に配置された主膨張弁24とを含む。
【0019】
圧縮機21は、インバータにより回転数が制御される図示しないモータによって駆動されることで運転容量を可変できる能力可変型圧縮機である。圧縮機21の吐出側は、後述する第1四方弁41のポートaに吐出配管11で接続されている。また、圧縮機21の吸入側は、アキュムレータ25の流出側に吸入配管16で接続されている。
【0020】
室外熱交換器22および室内熱交換器23としては、例えば、空気と冷媒の間の熱交換ができるパラレルフロー型熱交換器、フィンチューブ型熱交換器、プレートフィン型熱交換器などの種々の型式の熱交換器が採用できる。
【0021】
室外熱交換器22の一方の冷媒出入口は、後述する第2四方弁42のポートeに冷媒配管14で接続されている。室外熱交換器22の他方の冷媒出入口は、主膨張弁24を介して室内熱交換器23の一方の冷媒出入口に液管13で接続されている。室外熱交換器22は、第1四方弁41および第2四方弁42の切り替えによって、冷房運転時および除霜暖房運転時は凝縮器として機能し、暖房運転時および蓄熱暖房運転時は蒸発器として機能する。なお室外熱交換器22の近傍には、室外熱交換器22を送風する図示しない室外ファンが配置されてもよい。
【0022】
室内熱交換器23の一方の冷媒出入口は、後述する第1四方弁41のポートbにガス管12で接続されている。室内熱交換器23の他方の冷媒出入口は、上述のように主膨張弁24を介して室外熱交換器22の他方の冷媒出入口に液管13で接続されている。室内熱交換器23は、第1四方弁41および第2四方弁42の切り替えによって、冷房運転時は蒸発器として機能し、暖房運転時、蓄熱暖房運転時および除霜暖房運転時は凝縮器として機能する。なお室内熱交換器23の近傍には、室内熱交換器23を送風する図示しない室内ファンが配置されてもよい。
【0023】
主膨張弁24は、図示しないステッピングモータに与えるパルス数に基づいて開度が制御される電子膨張弁であり、室外熱交換器22と室内熱交換器23との間を接続する液管13に配置される。主膨張弁24は、液管13を流れる冷媒を減圧する減圧弁である。主膨張弁24の開度は、暖房運転時には室内機3で要求される暖房能力に応じて調整され、冷房運転時には室内機3で要求される冷房能力に応じて調整される。
【0024】
第1四方弁41および第2四方弁42は、冷媒回路20における冷媒の流れる方向を切り替えるための流路切替弁である。第1四方弁41および第2四方弁42は、室外熱交換器22の一方の冷媒出入口の接続を圧縮機21の冷媒吐出口または冷媒吸入口へと切り替える。
【0025】
第1四方弁41は、a、b、c、dの4つのポートを備えている。ポートaは、圧縮機21の吐出側と吐出配管11で接続されている。ポートbは、室内熱交換器23の一方の冷媒出入口とガス管12で接続されている。ポートcは、アキュムレータ25の流入側と冷媒配管15で接続されている。ポートdは、逆止弁43を介して蓄熱回路50の第1バイパス配管54との合流点Bと冷媒配管17で接続されている。逆止弁43は、ポートdから合流点Bへ向かう冷媒の流れを許容し、その逆の流れを禁止する方向制御弁である。
【0026】
後述するように第1四方弁41は、暖房運転時、蓄熱暖房運転時および除霜暖房運転時には、図1において実線で示すように、ポートaとポートbが連通し、ポートcとポートdが連通する第1の状態をとる。また、第1四方弁41は、冷房運転時には、図1において破線で示すように、ポートaとポートdが連通し、ポートbとポートcが連通する第2の状態をとる。
【0027】
第2四方弁42は、e、f、g、hの4つのポートを備えている。ポートeは、室外熱交換器22の一方の冷媒出入口と冷媒配管14で接続されている。ポートfは、吐出配管の分岐点Aと第1バイパス配管54で接続されている。分岐点Aは、圧縮機21の吐出側と第1四方弁41のポートaとの間に設けられている。ポートgは、補助熱交換器53の一方の冷媒出入口と第2バイパス配管55で接続されている。ポートhは、冷媒配管15の合流点Cに接続されている。合流点Cは、第1四方弁41のポートcとアキュムレータ25の吸入側との間に設けられている。
【0028】
後述するように第2四方弁42は、暖房運転時および蓄熱暖房運転時には、図1において実線で示すように、ポートeとポートhが連通し、ポートfとポートgが連通する第1の状態をとる。また、第2四方弁42は、冷房運転時および除霜暖房運転時には、図1において破線で示すように、ポートeとポートfが連通し、ポートgとポートhが連通する第2の状態をとる。
【0029】
アキュムレータ25は、流入側が第1四方弁41のポートcに冷媒配管15で接続され、流出側が圧縮機21の吸入側と吸入配管16で接続されている。アキュムレータ25は、流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離し、ガス冷媒のみを圧縮機21に吸入させる。
【0030】
(蓄熱回路)
蓄熱回路50は、第1バイパス膨張弁51と、第2バイパス膨張弁52と、第1バイパス膨張弁51と第2バイパス膨張弁52との間に配置された補助熱交換器53とを含む。
【0031】
第1バイパス膨張弁51および第2バイパス膨張弁52は、図示しないステッピングモータに与えるパルス数に基づいて開度が制御される電子膨張弁である。第1バイパス膨張弁51は、吐出配管11の分岐点Aと冷媒配管17との合流点Bとの間の第1バイパス配管54に配置される。第2バイパス膨張弁52は、補助熱交換器53の他方の冷媒出入口と液管13の合流点Dとの間を接続する第3バイパス配管56に配置される。
【0032】
なお、第1バイパス配管54、第2バイパス配管55および第3バイパス配管56は、圧縮機21の吐出側を室外熱交換器22と主膨張弁24との間の冷媒配管(液管13の合流点D)に接続する本発明のバイパス流路を形成する。
【0033】
補助熱交換器53は、第2バイパス配管55に配置される。補助熱交換器53の一方の冷媒出入口は、第2四方弁42のポートgに第2バイパス配管55で接続され、補助熱交換器53の他方の冷媒出入口は、第2バイパス膨張弁52を介して液管13の合流点Dに第3バイパス配管56で接続されている。
【0034】
補助熱交換器53は、圧縮機21から吐出される冷媒の一部と熱交換可能な蓄熱材57を有する。蓄熱材57には例えば、銅やアルミニウムなどの熱伝導性に優れた金属製のブロック材が用いられる。これ以外にも、補助熱交換器53を流れる冷媒との熱交換により熱を蓄えることができる液状あるいはスラリー状の相変化物質が蓄熱材として用いられてもよい。また後述する除霜暖房運転時に、補助熱交換器53において室外熱交換器22および室内熱交換器23から流入する冷媒を蒸発させるのに十分な熱を蓄えることができれば、蓄熱材57の蓄熱量は特に限定されない。
【0035】
室外機2には各種のセンサが設けられる。本実施形態では図1に示すように、吐出配管11には、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力である吐出圧力を検出する吐出圧力センサ71と、圧縮機21から吐出される冷媒の温度である吐出温度を検出する吐出温度センサ73が設けられている。吸入配管16には、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力である吸入圧力を検出する吸入圧力センサ72と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度である吸入温度を検出する吸入温度センサ74が設けられている。
【0036】
室外熱交換器22には、室外熱交換器22の温度である室外熱交温度を検出する室外熱交温度センサ75が設けられている。そして、室外機2の図示しない吸込口付近には、室外機2の図示しない筐体の内部に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度センサ76が設けられている。
【0037】
一方、室内機3について、ガス管12の室内熱交換器23の一方の冷媒出入口側にはガス側温度センサ77が設けられ、液管13の室内熱交換器23の他方の冷媒出入口側には液側温度センサ78が設けられている。そして、室内機3の図示しない吸込口付近には、室内機3の内部に流入する室内空気の温度、すなわち室温を検出する室温センサ79が設けられている。
【0038】
さらに、蓄熱回路50については、蓄熱材57の温度を検出する蓄熱回路温度センサ80が設けられている。
【0039】
(制御装置)
制御装置90は、例えば、室外機2に備えられた室外機制御装置であり、室外機2の図示しない電装品箱に格納された制御基板に搭載されている。制御装置90は、本発明の制御部に相当する。
【0040】
図2は、制御装置90の構成を示すブロック図である。同図に示すように、制御装置90は、CPU91、記憶部92、通信部93、センサ入力部94および回転数検出部95を有する。
【0041】
記憶部92は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリであり、室外機2の制御プログラムや制御パラメータ、各種センサからの検出信号に対応した検出値、圧縮機21や室外ファン等の制御状態、通信部93を介して取得した室内ファンの回転数、使用者によって設定入力された運転モード等を含む室内機3の制御状態等を記憶している。
【0042】
通信部93は、室内機3との通信を行うインターフェイスである。センサ入力部94は、室外機2の各種センサでの検出結果を取り込んでCPU91に出力する。回転数検出部95は、圧縮機21のモータの回転数を検出してCPU91に出力する。回転数検出部95は、モータの駆動軸に取り付けられたエンコーダ等でモータの回転数を直接検出するように構成されてもよいし、モータに供給される駆動電流からモータの回転数を検出するように構成されてもよい。以下の説明において、圧縮機21の回転数とは、モータの回転数をいう。
【0043】
CPU91は、記憶部92に格納されたプログラムを実行することで、圧縮機21を含む室外機2の各部の運転を制御する制御部である。プログラムは、例えば種々の記録媒体を介して制御装置90にインストールされる。あるいは、インターネット等を介してプログラムのインストールが実行されてもよい。
【0044】
CPU91は、上述した室外機2の各センサでの検出結果を、センサ入力部94を介して取り込む。さらには、CPU91は、室内機3から送信される制御信号を、通信部93を介して取り込む。室内機3から送信される制御信号には、室内機3cから要求される必要運転能力(室内機3の熱負荷)などが含まれる。CPU91は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、圧縮機21や室外ファン、室内ファンの駆動制御、例えば、これらを駆動させる回転数である指示回転数の設定を行う。また、CPU91は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、第1四方弁41および第2四方弁42の切り替え制御を行う。さらには、CPU91は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、圧縮機21や室外ファンの回転数制御、主膨張弁24、第1バイパス膨張弁51および第2バイパス膨張弁52の開度制御などを行う。
【0045】
[冷凍サイクル装置の基本的な動作]
続いて、冷凍サイクル装置100の基本的な動作を説明する。本実施形態の冷凍サイクル装置100(制御装置90)は、表1に示す4つの運転モードを実行することができる。
【0046】
【表1】
【0047】
(1:冷房運転)
冷房運転モードでは、第1四方弁41は第2の状態(a-d連通、b-c連通)に切り替えられるとともに、第2四方弁42は第2の状態(e-f連通、g-h連通)に切り替えられる。主膨張弁24の開度は、圧縮機21から吐出される冷媒の温度が目標吐出温度となるようにフィードバック制御される。第1バイパス膨張弁51は全開とされ、第2バイパス膨張弁52は全閉とされる。冷房運転モードでは、室外熱交換器22を凝縮器として機能させ、室内熱交換器23を蒸発器として機能させる。
【0048】
ここで、目標吐出温度とは、圧縮機21に吸入される冷媒を飽和蒸気としたときの吐出温度である理論吐出温度をいう。理論吐出温度は、吐出圧力と吸入圧力とに基づいて算出される、圧縮機21に吸入される冷媒を飽和蒸気(乾き度が1)としたときの吐出温度であり、理想的な冷凍サイクルに調整された場合の吐出温度を意味する。理論吐出温度の算出パラメータには、吐出圧力および吸入圧力のほか、圧縮機11の回転数が含まれてもよい。圧縮機21から吐出される冷媒の温度がこの理論吐出温度となるように主膨張弁24の開度を制御することにより、圧縮機21の回転数の変化に合わせて圧縮機21に吸入される冷媒の乾き度が1となるように調整できるため、圧縮機の信頼性の低下を防ぐことができる。
【0049】
圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は、吐出配管11の分岐点Aにおいて第1四方弁41に流れる冷媒と、第1バイパス膨張弁51を介して第1バイパス配管54に流れる冷媒とに分流される。第1四方弁41に流れた高圧のガス冷媒は、冷媒配管17、逆止弁43および合流点Bを介して第1バイパス配管54に合流し、第2四方弁42を介して冷媒配管14へ流入する。冷媒配管14に流入した高圧のガス冷媒は、凝縮器として機能する室外熱交換器22において外気と熱交換することで凝縮して高圧の液冷媒となり液管13へ流入する。なお、通常は逆流防止の観点から第1バイパス膨張弁51を全開とするが、本実施形態のように冷媒配管17に逆止弁43を設ける場合には、第1バイパス膨張弁51を全閉としてもよい。
【0050】
液管13へ流入した中間圧の液冷媒は、主膨張弁24で減圧されて低圧の液冷媒となり室内熱交換器23へ流入する。第2バイパス膨張弁52は全閉とされているため、液管13の合流点Dから蓄熱回路50への液冷媒の流入は阻止される。蒸発器として機能する室内熱交換器23に流入した低圧の液冷媒は、室内の空気と熱交換することで蒸発して低圧のガス冷媒となりガス管12へ流入する。これにより室内機3が設置された室内の冷房が行われる。ガス管12へ流入した低圧のガス冷媒は、第1四方弁41および冷媒配管15を介してアキュムレータ25へ流入し、吸入配管16を介して圧縮機21に吸入される。
【0051】
(2:暖房運転)
暖房運転モードでは、第1四方弁41は第1の状態(a-b連通、c-d連通)に切り替えられるとともに、第2四方弁42は第1の状態(e-h連通、f-g連通)に切り替えられる。主膨張弁24の開度は、圧縮機21から吐出される冷媒の温度が目標吐出温度となるようにフィードバック制御される。第1バイパス膨張弁51は全閉とされ、第2バイパス膨張弁52は蓄熱回路50における冷媒の滞留を抑えられる程度の小さい開度とされる。暖房運転モードでは、室外熱交換器22を蒸発器として機能させ、室内熱交換器23を凝縮器として機能させる。
【0052】
圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は、吐出配管11、第1四方弁41およびガス管12を介して室内熱交換器23に流入する。第1バイパス膨張弁51は全閉にされているため、吐出配管11の分岐点Aから蓄熱回路50へのガス冷媒の流入は阻止される。凝縮器として機能する室内熱交換器23へ流入した高圧のガス冷媒は、室内の空気と熱交換することで凝縮して高圧の液冷媒となり液管13へ流入する。これにより室内機3が設置された室内の暖房が行われる。
【0053】
液管13へ流入した中間圧の液冷媒は、主膨張弁24で減圧されて低圧の液冷媒となり室外熱交換器22へ流入する。蓄熱回路50内に残留する冷媒は、その圧力が主膨張弁24の下流側である液管13の合流点Dにおける冷媒の圧力よりも高いため、その圧力差によって上述した所定の開度に調整された第2バイパス膨張弁52を通って液管13の合流点Dで合流する。蒸発器として機能する室外熱交換器22へ流入した低圧の液冷媒は、外気と熱交換することで蒸発して低圧のガス冷媒となり冷媒配管14へ流入する。冷媒配管14へ流入した低圧のガス冷媒は、第2四方弁42および冷媒配管15を介してアキュムレータ25へ流入し、吸入配管16を介して圧縮機21に吸入される。
【0054】
(3:蓄熱暖房運転)
蓄熱暖房運転モードでは、第1四方弁41は第1の状態(a-b連通、c-d連通)に切り替えられるとともに、第2四方弁42は第1の状態(e-h連通、f-g連通)に切り替えられる。主膨張弁24の開度は、圧縮機21から吐出される冷媒の温度が目標吐出温度となるようにフィードバック制御される。第1バイパス膨張弁51の開度は、補助熱交換器53を流れる冷媒の温度と蓄熱材57の温度との温度差が所定の温度差となるように制御され、本実施形態では後述するように、暖房要求能力が変更された場合には第1バイパス膨張弁の入口側の圧力(高圧)の変化に応じて制御される。第2バイパス膨張弁52の開度は固定値、あるいは補助熱交換器53から流出する冷媒のサブクール(過冷却度)が目標サブクールとなるようにフィードバック制御される。蓄熱暖房運転モードでは、室外熱交換器22を蒸発器として機能させ、室内熱交換器23および補助熱交換器53を凝縮器として機能させる。
【0055】
圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は、吐出配管11の分岐点Aにおいて第1四方弁41に流れる冷媒と、第1バイパス膨張弁51を介して第1バイパス配管54に流れる冷媒とに分流される。第1四方弁41に流れた高圧のガス冷媒は、ガス管12を介して凝縮器として機能する室内熱交換器23へ流入し、室内の空気と熱交換することで凝縮して高圧の液冷媒となり液管13へ流入する。これにより室内機3が設置された室内の暖房が行われる。液管13へ流入した中間圧の液冷媒は、主膨張弁24で減圧されて低圧の液冷媒となり室外熱交換器22へ流入する。
【0056】
一方、第1バイパス配管54へ流入した高圧のガス冷媒は、第2四方弁42および第2バイパス配管55を介して補助熱交換器53へ流入する。補助熱交換器53は凝縮器として機能し、補助熱交換器53へ流入した高圧のガス冷媒は、蓄熱材57と熱交換することで凝縮して高圧の液冷媒となり第3バイパス配管56へ流入する。これにより蓄熱材57に熱が蓄熱される。第3バイパス配管56へ流入した中間圧の液冷媒は、第2バイパス膨張弁52によって減圧され低圧の液冷媒となる。第2バイパス膨張弁52で減圧された低圧の液冷媒は、液管13の合流点Dにおいて主膨張弁24で減圧された低圧の液冷媒と合流し、室外熱交換器22へ流入する。
【0057】
室外熱交換器22は蒸発器として機能し、室外熱交換器22へ流入した低圧の液冷媒は、外気と熱交換することで蒸発して低圧のガス冷媒となり冷媒配管14へ流入する。冷媒配管14へ流入した低圧のガス冷媒は、第2四方弁42および冷媒配管15を介してアキュムレータ25へ流入し、吸入配管16を介して圧縮機21に吸入される。
【0058】
蓄熱暖房運転モードは、補助熱交換器53を後述する除霜暖房運転モードにおいて熱源側熱交換器として機能させるために、室内の暖房機能を維持しつつ、蓄熱材57に冷媒の熱を蓄えさせる運転モードである。蓄熱暖房運転モードは、典型的には、外気温度等に応じて暖房運転モードから自動的に切り替えられる。例えば、室外熱交換器22に着霜の恐れがあるほど外気温度が低い場合に、蓄熱暖房運転モードに切り替えられる。一方で、蓄熱暖房運転中に、外気温度が着霜の恐れがないほど上昇した場合には、暖房運転モードに自動的に切り替えられてもよい。
【0059】
また、蓄熱暖房運転中に蓄熱回路温度センサ80の検出値に基づいて蓄熱材57が除霜暖房運転を行うのに十分な熱量であるとして予め設定された温度に達したと判定されたとき、蓄熱暖房運転モードから暖房運転モードに自動的に切り替えられてもよい。あるいは、暖房運転中に蓄熱材57の蓄熱量が減少し、蓄熱材57の温度が上記温度を所定温度以上下回ったと判定されたとき、暖房運転モードから蓄熱暖房運転モードに自動的に切り替えられてもよい。
【0060】
(4:除霜暖房運転)
除霜暖房運転モードでは、第1四方弁41は第1の状態(a-b連通、c-d連通)に切り替えられるとともに、第2四方弁42は第2の状態(e-f連通、g-h連通)に切り替えられる。主膨張弁24の開度は、圧縮機21から吐出される冷媒の温度が目標吐出温度となるようにフィードバック制御される。第1バイパス膨張弁51の開度は、室外熱交換器22の除霜完了に必要な冷媒の流量を確保できる所定の開度に固定され、第2バイパス膨張弁52は全開とされる。除霜暖房運転モードでは、室外熱交換器22および室内熱交換器23を凝縮器として機能させ、補助熱交換器53を蒸発器として機能させる。
【0061】
圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は、吐出配管11の分岐点Aにおいて第1四方弁41に流れる冷媒と、第1バイパス膨張弁51を介して第1バイパス配管54に流れる冷媒とに分流される。第1四方弁41に流れた高圧のガス冷媒は、ガス管12を介して凝縮器として機能する室内熱交換器23に流入し、室内の空気と熱交換することで凝縮して高圧の液冷媒となり液管13へ流入する。これにより室内機3が設置された室内の暖房が行われる。液管13へ流入した中間圧の液冷媒は、主膨張弁24で減圧され低圧の液冷媒となる。
【0062】
一方、第1バイパス配管54へ流入した高圧のガス冷媒は、第2四方弁42および冷媒配管14を介して凝縮器として機能する室外熱交換器22へ流入する。室外熱交換器53へ流入した高圧のガス冷媒は、室外熱交換器22に付着した霜と熱交換することで凝縮して高圧の液冷媒となり液管13へ流入する。これにより、室外熱交換器22に付着した霜が冷媒の熱で融解し除去される。液管13へ流入した中間圧の液冷媒は、主膨張弁24で減圧された低圧の液冷媒ととともに液管13の合流点Dから第3バイパス配管56および第2バイパス膨張弁52を介して補助熱交換器53へ流入する。
【0063】
補助熱交換器53は蒸発器として機能し、補助熱交換器53へ流入した低圧の気液二相冷媒は、蓄熱材57に蓄熱された熱と熱交換することで蒸発して低圧のガス冷媒となり第2バイパス配管55へ流入する。第2バイパス配管55へ流入した低圧のガス冷媒は、第2四方弁42および冷媒配管15を介してアキュムレータ25へ流入し、吸入配管16を介して圧縮機21に吸入される。
【0064】
除霜暖房運転モードでは、暖房運転を停止させることなく室外機の除霜運転を行うことができるため、除霜運転の期間中に室内の暖房機能の低下を抑制することができる。
【0065】
[蓄熱暖房運転モードにおける課題]
蓄熱暖房運転モードを備えた冷凍サイクル装置においては、上述した蓄熱暖房運転モードを実行するに際して、蓄熱回路50を流れる冷媒の流量を調整する第1バイパス膨張弁51の制御方法として以下のような課題がある。
【0066】
一般に、膨張弁の制御方法として、FB制御(フィードバック制御)と、FF制御(フィードフォワード制御)とが知られている。FB制御は現在値と目標値とを比較し、現在値を目標値に一致させるようにする制御で、例えば、冷媒回路全体の流量調整のために行う目標吐出温度制御や室内機の能力に応じた流量調整のために行う目標サブクール制御などが挙げられる。一方、FF制御は、追従性の改善を目的とした制御で、主として圧縮機の回転数に基づいて実行される。例えば、室内機からの暖房要求能力の増加に伴って圧縮機の回転数を上昇させる場合、FF制御では、圧縮機から吐出される冷媒の温度が高くなり過ぎないように、圧縮機の回転数の上昇率に対応するように膨張弁の開度を大きくする制御が実行される。
【0067】
ここで、第1バイパス膨張弁51の開度の制御が上述のようなFF制御で行われるとした場合、暖房要求能力の増加により圧縮機21の回転数を上昇させると、第1バイパス膨張弁51の開度が大きくなるように制御するため、蓄熱槽である補助熱交換器53に過剰に冷媒が供給されてしまい、利用側熱交換器である室内熱交換器23に供給される冷媒の量が暖房要求能力の増加により求められる冷媒の量よりも減少することで暖房能力(快適性)が低下するおそれがある。また、このような暖房能力の低下を抑えるためには圧縮機21の回転数を過剰に高くする必要があり、それが原因で消費電力が増加するという問題がある。
【0068】
[本実施形態の詳細]
そこで本実施形態では、蓄熱暖房運転中に暖房要求能力が変化した場合でも快適性の低下および消費電力の増加を抑制するために、第1バイパス膨張弁51が以下のようにして制御される。以下、蓄熱暖房運転モードにおいて制御装置90により実行される処理の詳細について説明する。ここでは、暖房運転モードから蓄熱暖房運転モードに切り替えられる場合を例に挙げて説明する。
【0069】
図3は制御装置90において実行される蓄熱暖房運転モードの処理手順の一例を示すフローチャートである。図4は、蓄熱暖房運転モードの開始時における冷凍サイクル装置100の各部の動作または状態を示すタイミングチャートの一例であり、(A)は圧縮機21の回転数、(B)は室内熱交換器23における冷媒の凝縮圧力(冷媒回路20における高圧)、そして(C)は第1バイパス膨張弁51の開度(パルス数)をそれぞれ示している。図5は、蓄熱暖房運転モードの実行中における冷凍サイクル装置100の各部の動作または状態を示すタイミングチャートの一例であり、(A)は圧縮機21の回転数、(B)は室内熱交換器23における冷媒の凝縮圧力(冷媒回路20における高圧)、(C)は第1バイパス膨張弁51の開度(パルス数)、(D)は補助熱交換器53における冷媒の圧力(蓄熱回路50における高圧)、(E)は室内機3を流れる冷媒の流量、そして(F)は蓄熱回路50を流れる冷媒の流量をそれぞれ示している。
【0070】
蓄熱暖房運転モードを実行するとき、制御装置90は、圧縮機21の吐出側である冷媒の圧力に基づいて、第1バイパス膨張弁51の開度を調整する。ここで、圧縮機21の吐出側である冷媒の圧力とは、冷媒回路20における高圧側の圧力または蓄熱回路50における補助熱交換器53内の冷媒の圧力を意味し、本実施形態では第1バイパス膨張弁51の入口側の圧力である吐出圧力である。その圧力値は吐出圧力センサ71で検出される。以下、圧縮機21の吐出側である冷媒の圧力を単に「冷媒の高圧」ともいう。
【0071】
図4に示すように時刻T1において蓄熱暖房運転モードを開始するとき、制御装置90は、現在の冷媒の高圧を検出し(ST101)、検出された冷媒の高圧の値に基づいて第1バイパス膨張弁51の開度を設定する開度制御量を算出する(ST102)。
【0072】
通常の第1バイパス膨張弁51の開度制御においては、補助熱交換器53を流れる冷媒の温度と蓄熱材57の温度との温度差が所定の温度差となるように開度が調整される。しかし、第1バイパス膨張弁51を開くと圧縮機21から室内熱交換器23へ流入する冷媒の量が減少するため、蓄熱暖房運転の開始時に室内機3の暖房能力を一時的に大きく低下させるおそれがある。
【0073】
そこで本実施形態では、蓄熱暖房運転の開始時における室内の快適性(暖房能力)の低下を抑えるために、第1バイパス膨張弁51を開く前に現在の冷媒の高圧を検出し、その検出値に基づいて第1バイパス膨張弁の開度制御量を補正するようにしている(ST102)。具体的には、例えば冷媒の高圧が予め設定された閾値以上のときは、開度制御量を補正せずに圧縮機21の回転数に応じて予め設定された開度となるように第1バイパス膨張弁51の開度制御量を算出し、上記閾値を下回るときは、補正前(つまり補正無し)の開度よりも補正後の開度の方が小さくなるように第1バイパス膨張弁51の開度制御量を算出する。開度制御量の補正量は固定値であってもよいし、高圧の検出値に応じて可変に設定されてもよい。
【0074】
続いて制御装置90は、算出された開度制御量で第1バイパス膨張弁51の開度を調整する(ST103)。これにより第1バイパス膨張弁51が開き(図4の時刻T2)、算出された開度制御量で定まる目標開度に向かって段階的に開度が大きくなる。また、第1バイパス膨張弁51の開度が大きくなるにしたがって、室内熱交換器23における冷媒の圧力(凝縮圧力)も低下するが、室内の快適性を維持するのに必要な暖房能力が得られる圧力を確保できる。
【0075】
続いて制御装置90は、室内機3から要求される必要運転能力(以下、暖房要求能力ともいう)の変更の有無を所定時間間隔で判定する(ST104)。室内機3からの暖房要求能力の変更指示が確認されたとき(ST104においてYes)、制御装置90は、変更された暖房要求能力に対応する回転数となるように圧縮機21の回転数を変更するが、本実施形態では圧縮機21の回転数の変更前後での冷媒の高圧の変化率を算出する。冷媒の高圧の変化率は、吐出圧力センサ71の検出値の変化率に基づいて算出される。
【0076】
なお、暖房要求能力の変更指示がないとき(ST104においてNo)は、第1バイパス膨張弁51の入口側の冷媒温度(吐出温度センサ73の検出値)と蓄熱材57の温度(蓄熱回路温度センサ80の検出値)との差が一定となるように、第1バイパス膨張弁51の開度が制御される。
【0077】
図5に示すように、時刻T3において暖房要求能力の変更指示を受けたとき、制御装置90は、圧縮機21の回転数の変更前である現在(時刻T3)の冷媒の高圧を検出し、記憶部92へ記憶する(ST105)。
【0078】
続いて制御装置90は時刻T4において、変更された暖房要求能力に対応する目標回転数となるように圧縮機21の回転数を変更する(ST106)。ここでは、暖房要求能力が増加する場合を例に挙げて説明するが、この場合は暖房要求能力の増加量(あるいは増加率)に対応する回転数となるように圧縮機21の回転数を上昇させる。なお暖房要求能力が減少する場合にはその減少量(あるいは減少率)に対応する回転数となるように圧縮機21の回転数を低下させる。
【0079】
圧縮機21の回転数の上昇に伴い、圧縮機21の吐出圧力が上昇するため、室内熱交換器23を流れる冷媒の流量と圧力、および蓄熱回路50を流れる冷媒の流量と圧力がいずれも上昇する(図5(B),(D)~(F)参照)。圧縮機21の回転数が目標回転数に達したとき、制御装置90は、圧縮機21の回転数の変更後である現在(時刻T5)の冷媒の高圧を検出し、記憶部92へ記憶する(ST107)。
【0080】
続いて制御装置90は、ST105およびST107でそれぞれ検出した冷媒の高圧の変化率に基づいて、第1バイパス膨張弁51の開度制御量を算出する(ST108)。ここでは、ST105で検出した圧縮機21の回転数の変更前における高圧の検出値をP1とし、ST107で検出した圧縮機21の回転数の変更後における高圧の検出値をP2としたとき、(P2-P1)/P1の式で算出される値を上記高圧の変化率と定義する。
【0081】
ここで、検出値P1の検出タイミングとしては、例えば、ST104において暖房要求能力の変更指示があると判定したときとされる。また、検出値P2の検出タイミングとしては、例えば、圧縮機21の回転数変更の制御を開始してから、圧縮機21の回転数が目標回転数に到達するのに必要な予め設定された所定期間の経過後とされる。なおこれに限定されず、所定周期(例えば1分)ごとに吐出圧力センサ71の検出値を取得するようにしてもよく、この場合は圧縮機21の回転数変更の制御開始直後に取得した検出値がP1とされ、圧縮機21の回転数が目標回転数に到達直後に取得した検出値がP2とされる。
【0082】
制御装置90は、高圧の検出値の変化率が正の値の場合は、第1バイパス膨張弁51の開度が小さくなるように第1バイパス膨張弁51の開度量を算出する。図5に示す例では圧縮機21の回転数上昇により高圧が高くなる例を示しているため、高圧の検出値の変化率が正となり、したがって第1バイパス膨張弁41の開度が小さくなるように第1バイパス膨張弁51の開度が制御される(ST109、時刻T6)。
【0083】
これにより、蓄熱回路50へ流入する冷媒の量および圧力が低下する(図5(D),(G)参照)。その結果、室内熱交換器23へ流れる冷媒の流量および圧力が上昇するため(図5(B),(E)参照)、暖房能力の不足による室内の快適性の低下が抑えられる。
【0084】
なお、暖房要求能力が減少するときは、圧縮機21の回転数が減少するため高圧の検出値の変化率が負となり、この場合は、第1バイパス膨張弁51の開度が大きくなるように第1バイパス膨張弁51の開度が制御される。これにより、蓄熱回路50へ流入する冷媒の量および圧力が上昇するとともに、室内熱交換器23へ流れる冷媒の流量および圧力が低下する。
【0085】
以後、ST104~ST109の処理を所定周期で繰り返し実行することにより、蓄熱暖房運転中における室内の快適性の低下を抑制しつつ、蓄熱回路50に必要な量の冷媒を供給し続けることができる。
【0086】
以上のように本実施形態によれば、蓄熱暖房運転モードにおいて吐出圧力センサ71により検出される冷媒の高圧の検出値の変化率に基づいて第1バイパス膨張弁51の開度を制御するようにしているため、蓄熱暖房運転中に暖房要求能力が変化した場合でも、快適性の低下を抑制することができる。また、蓄熱暖房運転中に暖房要求能力が増大した場合でも、室内熱交換器23へ快適性の低下を抑制できる十分な量の冷媒を供給することができるため、圧縮機21の回転数を過剰に高くする必要がなくなり、これにより消費電力の増加を抑えることができる。
【0087】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0088】
例えば以上の実施形態では、室外機2に対して1台の室内機3が接続された冷凍サイクル装置を例に挙げて説明したが、これに限られず、室外機2に対して複数の室内機3が接続された冷凍サイクル装置にも本発明は適用可能である。
【0089】
また以上の実施形態では、冷媒の高圧の検出に吐出圧力センサ71を用いたが、これに代えて、室内熱熱交換器23を流れる冷媒の圧力(凝縮圧力)を検出可能なセンサが用いられてもよいし、補助熱交換器53を流れる冷媒の圧力を検出可能なセンサが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0090】
2…室外機
3…室内機
20…冷媒回路
21…圧縮機
22…室外熱交換器
23…室内熱交換器
24…主膨張弁
41…第1四方弁
42…第2四方弁
50…蓄熱回路
51…第1バイパス膨張弁
52…第2バイパス膨張弁
53…補助熱交換器
54…第1バイパス配管(バイパス流路)
55…第2バイパス配管(バイパス流路)
56…第3バイパス配管(バイパス流路)
57…蓄熱材
71…吐出圧力センサ(圧力センサ)
90…制御装置(制御部)
100…冷凍サイクル装置
図1
図2
図3
図4
図5