(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139879
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】家庭用薄葉紙製造方法及び家庭用薄葉紙製造システム
(51)【国際特許分類】
A47L 13/17 20060101AFI20241003BHJP
D21H 27/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A47L13/17 A
D21H27/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050813
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】新谷 尚己
【テーマコード(参考)】
3B074
4L055
【Fターム(参考)】
3B074AA01
3B074AA02
3B074AA04
3B074AB01
3B074CC03
4L055AJ07
4L055BE15
4L055GA29
(57)【要約】
【課題】凹凸が形成された家庭用薄葉紙について、折り畳まれた状態における凹凸の潰れにくさ及び折り目の広げ易さの両者を向上し易くする。
【解決手段】原紙シートGを端部がずれるように折り畳む第1折り畳み工程(ステップS2)と、第1折り畳み工程(ステップS2)で折り畳まれた原紙シートG1に凹凸を形成するエンボス加工工程(ステップS3)と、を含む。エンボス加工工程(ステップS3)で凹凸が形成された原紙シートG2をさらに折り畳む第2折り畳み工程(ステップS5)を含むことが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙シートを端部がずれるように折り畳む第1折り畳み工程と、
前記第1折り畳み工程で折り畳まれた前記原紙シートに凹凸を形成する凹凸形成工程と、
を含むことを特徴とする家庭用薄葉紙製造方法。
【請求項2】
前記凹凸形成工程で凹凸が形成された前記原紙シートをさらに折り畳む第2折り畳み工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の家庭用薄葉紙製造方法。
【請求項3】
前記原紙シートを裁断する裁断工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の家庭用薄葉紙製造方法。
【請求項4】
前記裁断工程における裁断後の前記原紙シートは、全ての折り目を広げた状態で矩形状となり、前記第1折り畳み工程では、当該状態において前記原紙シートの辺のいずれかと平行となる第1折り目において前記原紙シートを折り畳むことを特徴とする請求項3に記載の家庭用薄葉紙製造方法。
【請求項5】
前記第1折り目は、前記状態における前記原紙シートの長辺と平行な折り目であることを特徴とする請求項4に記載の家庭用薄葉紙製造方法。
【請求項6】
前記第1折り目は、前記状態における前記原紙シートの前記第1折り目と直交する方向における中央から0.5mm以上5.0mm以下ずれていることを特徴とする請求項4に記載の家庭用薄葉紙製造方法。
【請求項7】
前記第1折り目は、前記状態における前記原紙シートの前記第1折り目と直交する方向における中央から1.5mm以上3.5mm以下ずれていることを特徴とする請求項6に記載の家庭用薄葉紙製造方法。
【請求項8】
原紙シートを端部がずれるように折り畳む折り畳み手段と、
前記折り畳み手段によって折り畳まれた前記原紙シートに凹凸を形成する凹凸形成手段と、
を備えることを特徴とする家庭用薄葉紙製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用薄葉紙製造方法及び家庭用薄葉紙製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トイレクリーナーやキッチンクリーナー等の家庭用薄葉紙について、表面強度や嵩高さを向上するため、エンボス加工によって凹凸を形成することが多い。そして、家庭用薄葉紙は、折り畳まれた状態で使用者に提供される場合が多いところ、エンボス加工によって凹凸が形成された家庭用薄葉紙については、折り畳まれた状態で折り目の一方の側の凸部と折り目の他方の側の凹部とが重なり、折り目の一方の側の凸部が折り目の他方の側の凹部に入り込むように折り畳むことが、折り畳まれた状態で凹凸が潰れにくくする上で好ましい。
【0003】
そこで、このように折り畳まれた家庭用薄葉紙を製造するため、凸部と凹部とが交互に配置されるようにエンボス加工を施した後に、折り目の一方の側の凸部と折り目の一方の側の凹部とが重なるように折り目の位置を調整して折り畳む家庭用薄葉紙の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
家庭用薄葉紙が折り畳まれている場合、使用者は、これを折り畳まれたまま使用する場合と、広げてから使用する場合と、の両者が考えられるところ、折り畳まれた家庭用薄葉紙が密着していると、これを広げにくくなる可能性がある。
【0006】
この点、折り畳まれた家庭用薄葉紙を広げ易くするためには、その端部がぴったりと重ならず、所定の幅でずれるように折り畳むことが考えられるが、特許文献1のように、凸部と凹部とが交互に配置されるようにエンボス加工を施した後に、折り目の一方の側の凸部と折り目の一方の側の凹部とが重なるように折り目の位置を調整して折り畳む場合、折り目の位置はエンボスの凹凸の位置によって決定されてしまうことから、端部のずれ幅を、安定して適切な範囲に調整することが困難であった。
【0007】
本発明の課題は、凹凸が形成された家庭用薄葉紙について、折り畳まれた状態における凹凸の潰れにくさ及び折り目の広げ易さの両者を向上し易くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、家庭用薄葉紙製造方法において、
原紙シートを端部がずれるように折り畳む第1折り畳み工程と、
前記第1折り畳み工程で折り畳まれた前記原紙シートに凹凸を形成する凹凸形成工程と、
を含むことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の家庭用薄葉紙製造方法において、
前記凹凸形成工程で凹凸が形成された前記原紙シートをさらに折り畳む第2折り畳み工程を含むことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の家庭用薄葉紙製造方法において、
前記原紙シートを裁断する裁断工程を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の家庭用薄葉紙製造方法において、
前記裁断工程における裁断後の前記原紙シートは、全ての折り目を広げた状態で矩形状となり、前記第1折り畳み工程では、当該状態において前記原紙シートの辺のいずれかと平行となる第1折り目において前記原紙シートを折り畳むことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の家庭用薄葉紙製造方法において、
前記第1折り目は、前記状態における前記原紙シートの長辺と平行な折り目であることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の家庭用薄葉紙製造方法において、
前記第1折り目は、前記状態における前記原紙シートの前記第1折り目と直交する方向における中央から0.5mm以上5.0mm以下ずれていることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の家庭用薄葉紙製造方法において、
前記第1折り目は、前記状態における前記原紙シートの前記第1折り目と直交する方向における中央から1.5mm以上3.5mm以下ずれていることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、家庭用薄葉紙製造システムにおいて、
原紙シートを端部がずれるように折り畳む折り畳み手段と、
前記折り畳み手段によって折り畳まれた前記原紙シートに凹凸を形成する凹凸形成手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、凹凸が形成された家庭用薄葉紙について、折り畳まれた状態における凹凸の潰れにくさ及び折り目の広げ易さの両者を向上し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係るトイレクリーナーの製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】実施形態に係るトイレクリーナー製造システムを示す模式図である。なお、原紙シートの厚みを実際よりも強調して図示している。
【
図3】実施形態に係るトイレクリーナーの製造方法におけるステップS2の第1折り畳み工程における折り畳み方を示す図であり、(a)は折り畳まれる前の状態、(b)は第1折り目で折り畳まれた後の状態を示す図である。
【
図4】実施形態に係るトイレクリーナーの製造方法におけるステップS3のエンボス加工工程後の原紙シートの一部を拡大した平面図である。
【
図5】実施形態に係るトイレクリーナーの製造方法におけるステップS3のエンボス加工工程後の第1折り目と直交する方向の断面における断面図である。なお、形成される凹凸の数を実際より減らし、簡略化して図示している。
【
図6】実施形態に係るトイレクリーナーの製造方法におけるステップS5の第2折り畳み工程における折り畳み方を示す図であり、(a)は折り畳まれる前の状態、(b)は第2折り目で折り畳まれた後の状態、(c)は第3折り目で折り畳まれた後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、
図1から
図6に基づいて説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、図示例に限定されない。
なお、以下においては、家庭用薄葉紙の一例として、トイレの清掃に使用するウェットシートであるトイレクリーナーを製造する場合について説明する。
また、本実施形態の説明において、「から」を用いて記載する数値範囲は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含むものとする。
また、
図2に示すように、トイレクリーナー製造システム100を構成する各装置が直線上に配置されているものとして、原反ロール110からの原紙シートGの繰り出し方向をX方向、X方向と直行する原紙シートGの幅方向をY方向、原紙シートGの厚み方向をZ方向と定めて説明する。また、この場合、X方向が、原紙シートG製造時の抄紙機における紙の進行方向(machine direction)に沿い、Y方向が、原紙シートG製造時の抄紙機における紙の進行方向と直交する方向(cross machine direction)に沿うこととなる。
【0019】
[1 製造方法の説明]
実施形態に係るトイレクリーナー製造システム100を用いて、トイレクリーナーを製造する際の製造方法は、
図1に示すように、原紙繰り出し工程(ステップS1)と、第1折り畳み工程(ステップS2)と、エンボス加工工程(ステップS3)と、裁断工程(ステップS4)と、第2折り畳み工程(ステップS5)と、薬液含浸工程(ステップS6)と、積層工程(ステップS7)と、包装工程(ステップS8)と、を含む。
また、トイレクリーナー製造システム100は、トイレクリーナーを製造するための一式の製造ラインである。
【0020】
[(1) ステップS1:原紙繰り出し工程]
トイレクリーナー製造システム100を用いてトイレクリーナーを製造する場合、まず、トイレクリーナー製造システム100が備える原反ロール110から原紙シートGが繰り出される。
【0021】
原反ロール110は、長尺な原紙シートGが巻き取られ、連続して繰り出すことができるように構成されたものである。
【0022】
また、原紙シートGは、既知のパルプ繊維等を主原料とする繊維集合体を抄造して形成された薄葉紙を加工したものである。
【0023】
原紙シートGは、複数枚のシートがプライ加工されたものであっても一枚のシートにより構成されたものであってもよいが、目付け量が、30g/m2から150g/m2程度であることが好ましい。なお、目付け量は、JIS P8124に基づくものである。
【0024】
繊維集合体の原料繊維は、天然繊維でも合成繊維でもよく、これを混合することも可能である。好適な原料繊維としては、木材パルプ、非木材パルプ、レーヨン、コットン等のセルロース系繊維、ポリ乳酸等からなる生分解性繊維等を挙げることができる。また、これらの繊維を主体としてポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、ポリアクリニトリル繊維、合成パルプ、ガラスウール等を併用することができる。
【0025】
繊維集合体は、少なくともパルプを含むものであることが好ましく、原料となるパルプは、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を適宜の割合で配合したものが適する。パルプの配合比としては、針葉樹晒クラフトパルプの配合割合が50質量%から70質量%であるものが好ましい。
【0026】
また、原紙シートGには水溶性バインダーが添加されている。水溶性バインダーとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース(以下、CMCという)等のカルボキシル基を有する水溶性高分子を用いることができる。なお、水溶性バインダーとしてCMCを用いる場合、添加量は、原紙シートGの質量に対して0.5質量%から1.0質量%の割合とすることが好ましい。
【0027】
[(2) ステップS2:第1折り畳み工程]
続いて、ステップS1で原反ロール110から繰り出された原紙シートGについて、トイレクリーナー製造システム100が備える第1折り畳み装置120において、二つ折りとなるように折り畳む加工を行う。
【0028】
この際に、第1折り畳み装置120は、
図3に示すように、原紙シートGを、原反ロール110からの繰り出し方向(X方向)に沿う折り目である第1折り目F1で二つ折りにする。第1折り目F1で折り畳まれた状態の原紙シートを原紙シートG1とする。
【0029】
また、この際、第1折り畳み装置120は、
図3に示すように、第1折り目F1の位置を、原紙シートGの原反ロール110からの繰り出し方向と直交する方向(Y方向)の中心位置からずれた位置とすることによって、シートの端部がずれるように折り畳む。
具体的には、第1折り目F1の位置を、原紙シートGのY方向の中心位置から0.5mmから5.0mmずれた位置とすることによって、原紙シートGのY方向の端部の位置が1.0mmから10.0mmずれるように折り畳むことが好ましく、第1折り目F1の位置を、原紙シートGのY方向の中心位置から1.5mmから3.5mmずれた位置とすることによって、原紙シートGのY方向の端部の位置が3.0mmから7.0mmずれるように折り畳むことがさらに好ましい。
【0030】
[(3) ステップS3:エンボス加工工程]
続いて、ステップS2で折り畳まれた原紙シートG1について、トイレクリーナー製造システム100が備えるエンボス加工装置130において、凹凸を形成するエンボス加工を行う。
【0031】
エンボス加工装置130は、
図2に示すように、トップロール131及びボトムロール132の二つのロールを備える。また、トップロール131及びボトムロール132には、原紙シートG1に形成する凹凸のパターンに対応した凹凸が形成されると共に、トップロール131に形成された凹凸とボトムロール132に形成された凹凸とが咬み合うようになっている。
これによって、原紙シートG1をこれらの間に通すことで、原紙シートG1を圧縮すると共に、凹凸を形成することができる。
【0032】
この際には、第1折り目F1で折り畳まれた状態の原紙シートG1の全面に、凹凸が交互に配置されるようにエンボス加工を行う。
【0033】
具体的には、
図4に示すように、Z方向における一方(上方)に凸となる部分である凸エンボスE1及びZ方向における一方(上方)に凹となる(Z方向における他方(下方)に凸となる)部分である凹エンボスE2が、X方向、Y方向の両方向において交互に配置されるようにする。なお、凸エンボスE1と凹エンボスE2との間の平坦部分を、中間部Mとする。
凹エンボスE2は、凸エンボスE1をシートの厚み方向(Z方向)に反転した形状であり、中間部Mは、Z方向において凸エンボスE1と凹エンボスE2との間に位置することとなる。
【0034】
また、凸エンボスE1及び凹エンボスE2の形状としては、
図4に示すように、Y方向においてX方向よりも長尺となる略楕円形状であり、且つ、長辺にくびれ部を有するひょうたん形が好ましい。
【0035】
また、ステップS2において第1折り目F1で折り畳まれた状態の原紙シートG1に対してエンボス加工を施すことから、必然的に、
図5に示すように、第1折り目F1の一方の側に形成された凹凸と、第1折り目F1の他方の側に形成された凹凸とが組み合わさり、第1折り目F1の一方の側の凸部が、第1折り目F1の他方の側の凹部に入り込む状態となる。
【0036】
[(4) ステップS4:裁断工程]
続いて、ステップS3でエンボス加工が施された原紙シートG1を、トイレクリーナー製造システム100が備える裁断装置140に通すことで、裁断加工を実施する。裁断後の原紙シートを原紙シートG2とする。
【0037】
これによって、原紙シートG2は、
図6(a)に示すように、矩形状のシートが、第1折り目F1を広げた状態における長辺に沿う方向(X方向)と平行な折り目である第1折り目F1によって、第1折り目F1を広げた状態における短辺に沿う方向(Y方向)の両端部の位置がずれるように折り畳まれた状態となる。
【0038】
裁断後の原紙シートG2の大きさは、第1折り目F1を広げた状態で、長辺(X方向)100mmから200mm、短辺(Y方向)50mmから100mmの矩形状であることが好ましく、長辺(X方向)120mmから150mm、短辺(Y方向)70mmから100mmの矩形状であることがさらに好ましい。
【0039】
[(5) ステップS5:第2折り畳み工程]
ステップS5で裁断された原紙シートG2は、第1コンベアC1によって、トイレクリーナー製造システム100が備える第2折り畳み装置150に運ばれ、第2折り畳み装置150において、八つ折りとなるように折り畳む加工を行う。
【0040】
具体的には、第2折り畳み装置150は、まず、
図6(a)に示すように、第1折り目F1でY方向に折り畳まれて二つ折りにされた原紙シートG2を、
図6(b)に示すように、原紙シートG2のX方向の中央に位置するY方向に沿う折り目である第2折り目F2で折り畳む。これによって、原紙シートが四つ折りに取り畳まれることとなる。当該状態の原紙シートを、原紙シートG3とする。
【0041】
さらに、第2折り畳み装置150は、
図6(b)に示すように、第1折り目F1でY方向に折り畳まれ、第2折り目F2でX方向に折り畳まれて四つ折りにされた原紙シートG3を、
図6(c)に示すように、原紙シートG3のX方向の中央に位置するY方向に沿う折り目である第3折り目F3で折り畳む。これによって、原紙シートが八つ折りに取り畳まれることとなる。当該状態の原紙シートを、原紙シートG4とする。
【0042】
[(6) ステップS6:薬液含浸工程]
ステップS5で折り畳まれた原紙シートG4は、第2コンベアC2に載せて運搬され、運搬中に、第2コンベアC2の上方に設けられた薬液含浸装置160によって、薬液Lが含浸される。
【0043】
薬液含浸装置160は、薬液Lを噴射するスプレーノズル161と、薬液Lを貯蔵するタンク162と、スプレーノズル161とタンク162とを繋ぐ配管163と、を備え、第2コンベアC2の上方に設けられたスプレーノズル161からタンク162に貯蔵された薬液Lを噴射することで、原紙シートG4に対して薬液Lを含浸させる。
【0044】
薬液Lの含浸量としては、原紙シートG4の質量に対して100質量%から500質量%の含浸量となるように含浸させることが好ましく、150質量%から300質量%の含浸量となるように含浸させることがさらに好ましい。
【0045】
薬液Lの組成は特に限定されるものではないが、例えば、水及び水溶性バインダーと架橋する架橋剤に加えて、グリコールエーテル類、水性洗浄剤、防腐剤、除菌剤、有機溶剤、香料等の補助剤を含むものを使用することが好ましい。
【0046】
架橋剤としては、ホウ酸、種々の金属イオン等を使用することができるが、CMCを原紙シートGに添加される水溶性バインダーとして用いた場合、多価金属イオンを用いることが好ましい。特に、アルカリ土類金属、マンガン、亜鉛、コバルト及びニッケルからなる群から選択される1種又は2種以上の多価金属イオンを用いることが、繊維間が十分に結合されて使用に耐え得る湿潤強度を発現しつつ、水解性が十分になる点から好ましい。これらの金属イオンのうち、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、コバルト、ニッケルのイオンを用いることが特に好ましい。
【0047】
グリコールエーテル類とは、2価アルコールであるグリコールの片末端、あるいは両末端の水酸基をエーテル化した構造であり、分子内に疎水性のアルキル基並びに親水性のエーテル基及び水酸基を有する化合物であり、界面活性剤に比べ分子量が小さく、従来の界面活性剤のみを含んだ洗剤よりも動的表面張力が低いため、薬液と汚れとの間の界面形成をより速く起こすことができる。また、グリコールエーテル類は、疎水性の油分や汚れと水を相溶化するカップリング剤としても働き、汚れを引き離し、再付着することを防止することができる。そのため、薬液にグリコールエーテル類を添加することで、トイレクリーナーの拭き取り性能を向上させることができる。
【0048】
グリコールエーテル類としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DGME)、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等を含有させることができる。
【0049】
このうちPGMEは、通常、洗浄成分として添加され洗浄力が向上することが知られているが、直接シート強度を向上する効果を示し、CMCと多価金属イオンによるシート強度向上効果を高める効果を持っている。PGMEを原紙シートGに付与する場合、その付与量は、20g/m2から60g/m2であるのが好ましく、より好ましくは26g/m2から40g/m2である。
【0050】
水性洗浄剤としては、例えば、界面活性剤の他、低級又は高級(脂肪族)アルコールを使用することができる。
【0051】
防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン等のパラベン類を使用することができる。
【0052】
除菌剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ポピドンヨード、エタノール、セチル酸化ベンザニウム、トリクロサン、クロルキシレノール、フェノキシエタノール、イソプロピルメチルフェノール等を使用することができる。
【0053】
有機溶剤としては、グリコール(2価)、グリセリン(3価)、ソルビトール(4価)等の多価アルコールを使用することができる。
【0054】
香料としては、例えば、ローズ油、スペアミント油、L-シトロネラール等を使用することができる。
【0055】
また、上述した薬液の成分の補助剤については適宜選択可能であり、必要に応じて他の機能を果たす成分を薬液に含ませてもよい。例えば、防腐剤や除菌剤を可溶化する補助剤としてプロピレングリコール(PG)を使用することができる。
【0056】
また、原紙シートG4に対して薬液Lを含浸させる方法は、上記のようなスプレーノズルを用いたスプレー塗布が最も好ましいが、適切な含浸量となるように薬液Lを含浸させることができるものであればよく、これには限定されない。例えば、適切な含浸量となるように薬液Lを含浸させることができれば、ノズル含浸やロール転写等の方法で含浸させてもよい。
【0057】
[(7) ステップS7:積層工程]
ステップS6で薬液Lが含浸された原紙シートG4は、第2コンベアC2によって、トイレクリーナー製造システム100が備える積層装置170に運ばれ、積層装置170において、複数枚積層される。積層後に形成される、原紙シートG4が複数枚積層されたものを、シートブロックBとする。
積層する枚数は特に限定されないが、10枚程度が好ましい。
【0058】
[(8) ステップS8:包装工程]
ステップS7で積層されたシートブロックBは、第3コンベアC3によって、トイレクリーナー製造システム100が備える包装装置180に運ばれ、包装装置180において包装される。
具体的な包装方法は、薬液Lの揮発を抑制し、シートブロックBの乾燥を防止できるものであれば特に限定されない。
【0059】
[2 効果の説明]
本実施形態によれば、第1折り畳み工程(ステップS2)において、原紙シートGについて、端部が所定の幅ずれるように折り畳んだ上で、エンボス加工工程(ステップS3)において、ステップS2で折り畳まれた状態の原紙シートG1に凹凸を形成する。
これによって、第1折り畳み工程(ステップS2)では、凹凸の位置に影響されずに折り畳む際の折り目(第1折り目F1)の位置を決定でき、かつ、折り畳まれた状態で行われるエンボス加工工程(ステップS3)では、必然的に第1折り目F1の一方の側の凸部と第1折り目F1の他方の側の凹部とが重なることとなる。
【0060】
したがって、本実施形態によれば、第1折り畳み工程(ステップS2)における折り畳み時の端部のずれ幅を、第1折り目F1を広げ易い適切な幅に調整し易くなると共に、第1折り目F1の一方の側の凸部と第1折り目F1の他方の側の凹部とが重なることで、折り畳まれた状態において凹凸が潰れにくくすることができることから、凹凸が形成された家庭用薄葉紙について、折り畳まれた状態における凹凸の潰れにくさ及び折り目の広げ易さの両者を向上し易くなる。
【0061】
また、従来のように、エンボス加工を施した後に、折り目の一方の側の凸部と折り目の一方の側の凹部とが重なるようにして折り畳む場合、折り目の位置が少しでもずれると、折り目の一方の側の凸部と折り目の一方の側の凹部とが重ならなくなってしまい、エンボスが潰れやすくなる。そして、エンボスの形状を損なった家庭用薄葉紙は品質不良として廃棄せざるを得ないことから、コストが増大する要因となっていた。
この点、本実施形態によれば、確実に第1折り目F1の一方の側の凸部と第1折り目F1の他方の側の凹部とが重なる状態とできることから、上記のような品質不良製品の発生によるコストの増大も抑えることができる。
【0062】
また、家庭用薄葉紙を、第1折り目F1を広げずに二重に重なったままで使用する際に、凹凸がぴったりと重なっていることで、シートの強度を向上することができる。
【0063】
また、第2折り畳み工程(ステップS5)において、エンボス加工工程(ステップS3)で凹凸が形成された状態の原紙シートG2を更に折り畳むことで、第1折り畳み工程(ステップS2)で二つ折りとされた状態で凹凸が形成された原紙シートG2を更に折り畳み、包装に適した大きさとすることができる。
【0064】
また、第1折り畳み工程(ステップS2)をエンボス加工工程(ステップS3)の前に実施し、第2折り畳み工程(ステップS5)をエンボス加工工程(ステップS3)の後に実施することで、エンボス加工工程(ステップS3)は、第1折り畳み工程(ステップS2)で一度折り畳まれ、二重に重なった状態の原紙シートG1に対して行われることとなる。
この点、エンボス加工を行う際に、原紙シートが多重に重なった状態となると、エンボス加工時に形成される凹凸が不明瞭となるおそれがあるが、上記のように第1折り畳み工程(ステップS2)のみをエンボス加工工程(ステップS3)の前に実施し、二度目以降に折り畳む第2折り畳み工程(ステップS5)をエンボス加工工程(ステップS3)の後に実施することで、エンボス加工による凹凸が不明瞭となるという弊害を抑制しつつ、上記のような効果を得ることができる。
【0065】
また、第1折り目F1の位置を、原紙シートGの第1折り目F1と直交する方向における中央から0.5mmから5.0mmずれた位置とすることによって、第1折り目F1で折り畳まれた原紙シートG1について、第1折り目F1と直交する方向の端部の位置を、1.0mmから10.0mmという適切な範囲でずれた状態とすることができ、さらに第1折り目F1を広げ易くなる。
【0066】
また、第1折り目F1の位置を、原紙シートGの第1折り目F1と直交する方向における中央から1.5mmから3.5mmずれた位置とすることによって、第1折り目F1で折り畳まれた原紙シートG1について、第1折り目F1と直交する方向の端部の位置を、3.0mmから7.0mmというさらに適切な範囲でずれた状態とすることができ、さらに第1折り目F1を広げ易くなる。
【0067】
[3 変形例]
以下、本実施形態の変形例について説明する。
【0068】
上記製造方法の説明においては、第1折り畳み工程(ステップS2)において、第1折り目F1でY方向に一度折り畳んだ後に、第2折り畳み工程(ステップS5)において、第2折り目F2及び第3折り目F3でX方向に二度折り畳むことで、原紙シートが八つ折りとなる場合について説明した。
この点、上記のような折り畳み方が最も好ましいものの、原紙シートの折り畳み方はこれに限られるものではない。例えば、第2折り畳み工程(ステップS5)で折り畳む回数を一回のみとすることで、シートが四つ折りとなるようにしてもよいし、三回以上とすることで、原紙シートがさらに多重に折り畳まれるようにしてもよい。
【0069】
また、上記製造方法の説明においては、第1折り畳み工程(ステップS2)においてのみ端部がずれるように折り畳む場合について説明したが、これに加えて、第2折り畳み工程(ステップS5)においても、第2折り目F2及び第3折り目F3の位置をX方向の中央からずらすことで、所定の幅で端部がずれるように折り畳むようにしてもよい。
【0070】
この点、使用時に最も広げにくのは最初に折り畳まれる第1折り目F1であり、それ以降の折り目(第2折り目F2及び第3折り目F3)については、複数枚重なった状態で折り畳まれており、そもそも広げ易い場合が多いことから、端部にずれがなくても広げ易さの点で問題は生じにくいが、二度目以降に折り畳まれる第2折り畳み工程(ステップS5)でも端部がずれるようにすることで、折り畳む工程の複雑さは増加するものの、第2折り目F2以降の折り目についても、さらに広げ易くすることができる。
【0071】
また、上記製造方法の説明においては、第2折り畳み工程(ステップS5)における折り目については、折り目の一方の側の凸部と折り目の他方の側の凹部とが重なる状態としていない場合について説明したが、第2折り畳み工程(ステップS5)における折り目についても、折り目の一方の側の凸部と折り目の他方の側の凹部とが重なるようにしてもよい。
すなわち、第2折り目F2及び第3折り目F3の位置を、エンボス加工工程(ステップS3)で形成された凸エンボスE1と凹エンボスE2との間の中間点とすることで、折り畳んだ際に、折り目の一方の側の凸部と折り目の他方の側の凹部とが重なり、折り目の一方の側の凸部が折り目の他方の側の凹部に入り込む状態とすることができる。
【0072】
この点、第1折り目F1の一方の側の凸部と第1折り目F1の他方の側の凹部とが重なってさえいれば、シートの凹凸が二重に重なることによって、折り畳まれた状態における凹凸の潰れにくさの向上という効果を得られるものの、これに加えて、二度目以降の折り目についても、折り目の一方の側の凸部と折り目の他方の側の凹部とが重なる状態とすることで、折り畳む工程の複雑さは増加するものの、シートの凹凸が四重以上に重なることとなり、折り畳まれた状態においてさらに凹凸が潰れにくくすることができる。
【0073】
また、上記製造方法の説明においては、家庭用薄葉紙の一例として、トイレの清掃に使用するトイレクリーナーを製造する場合について説明したが、製造する家庭用薄葉紙はトイレクリーナーに限られず、他の用途の家庭用薄葉紙を同様の工程を経て製造することも可能である。
例えば、床面の清掃に使用する床用清掃シート、キッチンの清掃に使用するキッチン清掃シート、肌を拭くための制汗シート等の製造時に、上記と同様の工程を経る製造方法を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0074】
100 トイレクリーナー製造システム
110 原反ロール
120 第1折り畳み装置
130 エンボス加工装置
140 裁断装置
150 第2折り畳み装置
160 薬液含浸装置
170 積層装置
180 包装装置
G、G1、G2、G3、G4 原紙シート
F1 第1折り目
F2 第2折り目
F3 第3折り目
E1 凸エンボス
E2 凹エンボス
M 中間部
L 薬液
B シートブロック