(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139881
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
G06N 20/00 20190101AFI20241003BHJP
【FI】
G06N20/00 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050815
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福本 剛
(72)【発明者】
【氏名】都野守 智裕
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼原 伸明
(57)【要約】
【課題】学習モデルの再学習を効率的に実施可能な検査装置を提供する。
【解決手段】実施形態の検査装置は、検査対象物に関するセンサデータを入力し、検査対象物が所定の状態であることの確からしさを示す指標値を出力する学習モデルを用いて検査対象物の状態を判定する状態判定部と、学習モデルから出力される指標値と所定の閾値とに基づいて、複数のセンサデータのそれぞれを、検査対象物の状態を示すラベルが付与されたラベル付データと、ラベルが付与されない曖昧データと、に分類する分類部と、ユーザの操作により曖昧データにラベルを付与する手動ラベル付け処理を可能にするラベル付け部と、手動ラベル付け処理により生成されたユーザラベル付データを含む教師データを用いて学習モデルを再学習する再学習部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物に関するセンサデータを入力し、前記検査対象物が所定の状態であることの確からしさを示す指標値を出力する学習モデルを用いて前記検査対象物の状態を判定する状態判定部と、
前記学習モデルから出力される前記指標値と所定の閾値とに基づいて、複数の前記センサデータのそれぞれを、前記検査対象物の状態を示すラベルが付与されたラベル付データと、前記ラベルが付与されない曖昧データと、に分類する分類部と、
ユーザの操作により前記曖昧データに前記ラベルを付与する手動ラベル付け処理を可能にするラベル付け部と、
前記手動ラベル付け処理により生成されたユーザラベル付データを含む教師データを用いて前記学習モデルを再学習する再学習部と、
を備える検査装置。
【請求項2】
前記分類部は、全ての前記曖昧データにおける所定の第1状態側の前記センサデータの割合が前記第1状態以外の状態側の前記センサデータの割合より大きくなるように、前記センサデータを分類する、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記再学習部は、前記検査対象物が所定の第1状態であることを示すラベルが付与された前記ユーザラベル付データを前記教師データに含め、前記第1状態以外の状態であることを示すラベルが付与された前記ユーザラベル付データを前記教師データに含めない、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
前記曖昧データの量が閾値以下である場合には、
前記ラベル付け部は、前記手動ラベル付け処理を禁止し、
前記再学習部は、前記分類部により分類された前記ラベル付データを含む前記教師データを用いて前記学習モデルを再学習する、
請求項1に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品等の検査対象物の異常(例えばバリ、打痕、キズ、変形、汚れ等)を発見する検査を行う際に、検査対象物を撮像した撮像画像から検査対象物の状態(例えば正常状態であるか異常状態であるか等)を推定する学習モデル(学習済みモデル)が利用されている。このような学習モデルは、正常状態にある検査対象物の撮像画像及び異常状態にある検査対象物の撮像画像を含む教師データを用いて事前に行われる機械学習(深層学習)により生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような手法においては、コンセプトドリフト等の要因により学習モデルの推定精度が低下する可能性がある。コンセプトドリフトとは、学習モデルが推定しようとする目的変数の統計学的特性が時間の経過とともに変化することを意味し、その原因としては、例えばカメラレンズの汚れ、照明装置の劣化、気温等の環境の変化、前工程の変化等が考えられる。このようなコンセプトドリフト等により学習モデルの推定精度の低下が生じた場合には、新たな教師データを用いて学習モデルを再学習する必要がある。
【0005】
そこで、本発明の実施形態が解決しようとする課題の一つは、学習モデルの再学習を効率的に実施可能な検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の検査装置は、検査対象物に関するセンサデータを入力し、検査対象物が所定の状態であることの確からしさを示す指標値を出力する学習モデルを用いて検査対象物の状態を判定する状態判定部と、学習モデルから出力される指標値と所定の閾値とに基づいて、複数のセンサデータのそれぞれを、検査対象物の状態を示すラベルが付与されたラベル付データと、ラベルが付与されない曖昧データと、に分類する分類部と、ユーザの操作により曖昧データにラベルを付与する手動ラベル付け処理を可能にするラベル付け部と、手動ラベル付け処理により生成されたユーザラベル付データを含む教師データを用いて学習モデルを再学習する再学習部と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、複数のセンサデータから自動的に曖昧データが分類され、当該曖昧データに対する手動ラベル付け処理によりユーザラベル付データが生成され、当該ユーザラベル付データを含む教師データを用いて学習モデルの再学習が実行される。これにより、学習モデルの再学習に用いられる教師データを簡便且つ高品質に生成することができ、学習モデルの再学習を効率的に実施することが可能となる。
【0008】
また、上記構成において、分類部は、全ての曖昧データにおける所定の第1状態側のセンサデータの割合が第1状態以外の状態側のセンサデータの割合より大きくなるように、センサデータを分類してもよい。
【0009】
上記構成によれば、教師データに第1状態(例えば異常状態等)に対応するデータを多く含めることができ、再学習において第1状態に対する検知精度を優先的に向上させることができる。
【0010】
また、上記構成において、再学習部は、検査対象物が所定の第1状態であることを示すラベルが付与されたユーザラベル付データを教師データに含め、第1状態以外の状態であることを示すラベルが付与されたユーザラベル付データを教師データに含めなくてもよい。
【0011】
上記構成によれば、教師データに第1状態(例えば異常状態等)に対応するデータを多く含めることができ、再学習において第1状態に対する検知精度を優先的に向上させることができる。
【0012】
また、上記構成において、曖昧データの量が閾値以下である場合には、ラベル付け部は、手動ラベル付け処理を禁止し、再学習部は、分類部により分類されたラベル付データを含む教師データを用いて学習モデルを再学習してもよい。
【0013】
上記構成によれば、曖昧データの蓄積量が少ない状況下では手動ラベル付け処理が実行されなくなるため、手動ラベル付け処理の頻度を下げることができる。これにより、ユーザに過度の手間をかけることなく学習モデルの再学習を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1実施形態の検査システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の検査装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態のラベル付画像及び曖昧画像の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態のラベル付画像とユーザラベル付画像と教師データとの関係の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の検査装置における処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2実施形態のラベル付画像及び曖昧画像の第1例を示す図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態のラベル付画像及び曖昧画像の第2例を示す図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態のラベル付画像とユーザラベル付画像と教師データとの関係の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第4実施形態の検査装置における処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、並びに当該構成によってもたらされる作用、結果及び効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によって実現可能であると共に、基本的な構成に基づく種々の効果や派生的な効果のうち少なくとも1つを得ることが可能である。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の検査システムSの構成の一例を示す図である。本実施形態の検査システムSは、所定の検査対象物の異常を検知可能なシステムである。検査対象物は、特に限定されるべきものではないが、例えば、工業製品等であり得る。工業製品とは、例えば、車両の構成部品等であり得る。本実施形態における検査には、検査対象物が正常な状態であるか(品質が所定の基準に達しているか)、異常な状態であるか(品質が所定の基準に達していないか)を判定する処理が含まれる。
【0017】
本実施形態の検査システムSは、検査装置1及び撮像装置2を含む。撮像装置2は、検査対象物を撮像した撮像画像(センサデータの一例)を取得する。検査装置1は、撮像装置2により取得された撮像画像に基づいて、被写体となった検査対象物が正常か異常かを判定する処理を含む検査処理を実行する。
【0018】
本実施形態の検査装置1は、プロセッサ11、メモリ12、通信I/F(Interface)13及びユーザI/F14を有する。プロセッサ11は、メモリ12に記憶されたプログラムに従って検査対象物を検査するための情報処理(演算処理や制御処理等)を実行する。プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を利用して構成され得る。メモリ12は、検査処理の実行に必要なプログラムや各種データを記憶する。メモリ12は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)等を利用して構成され得る。通信I/F13は、所定の通信規約に従って検査装置1と外部機器との通信を確立するデバイスであり、本実施形態においては、撮像装置2から検査対象物の撮像画像(画像データ)を取得するための通信を確立する。ユーザI/F14は、検査装置1とユーザ(検査システムSの管理者、オペレータ等)と間での情報のやり取りを可能にするデバイスであり、例えば、ディスプレイ、キーボード、タッチパネル、スピーカ、マイク等を利用して構成され得る。
【0019】
なお、
図1に示す構成は例示であり、検査システムSの構成は上記に限定されるものではない。例えば、1つの検査装置1に複数の撮像装置2が接続されてもよいし、通信I/F13に撮像装置2以外のセンサや電子機器等が接続されてもよいし、ネットワークを介して接続された複数の検査装置1が協働して稼働するものであってもよい。
【0020】
図2は、第1実施形態の検査装置1の機能構成の一例を示す図である。本実施形態の検査装置1は、取得部101、モデル記憶部102、状態判定部103、分類部104、分類結果記憶部105、ラベル付け部106及び再学習部107を有する。これらの機能部101~107は、
図1に例示したような検査装置1のハードウェア要素及びソフトウェア要素(プログラム等)の協働により実現され得る。また、これらの機能部101~107のうちの少なくとも一部を専用のハードウェア(回路等)により構成してもよい。
【0021】
取得部101は、撮像装置2から検査対象物を撮像した撮像画像を取得する。
【0022】
モデル記憶部102は、所定の教師データを用いた機械学習(深層学習)により生成された学習モデル(学習済みモデル)を記憶する。学習モデルは、撮像画像の入力に対して、当該撮像画像に対応する検査対象物が所定の状態であること(例えば異常状態であること、正常状態であること等)の確からしさ(信頼度)を示す指標値を出力する。指標値は、例えば、尤度等と称することもできる。指標値と検査対象物の状態との対応関係は、検査対象物の種類等に応じて適宜設定されるべきものであるが、例えば、指標値は、-1から1の間で変動し、異常状態である可能性が高いほど1に近い値となり、正常状態である可能性が高いほど-1に近い値となるように設定され得る。この場合、指標値が0に近い(絶対値が小さい)ほど、検査対象物が正常であるか異常であるかの判定が困難となる。
【0023】
状態判定部103は、学習モデルから出力される指標値に基づいて検査対象物の状態、すなわち正常状態であるか、異常状態であるか等を判定する。
【0024】
分類部104は、学習モデルから出力される指標値と所定の閾値とに基づいて、複数の撮像画像のそれぞれをラベル付画像(ラベル付データの一例)と、曖昧画像(曖昧データの一例)と、に分類する。ラベル付画像は、検査対象物の状態を示すラベルが付与された撮像画像である。複数の撮像画像のうち、指標値からある程度明確に正常状態か異常状態かを判定可能な撮像画像がラベル付画像に分類される。本実施形態のラベル付画像には、正常状態であることを示すOKラベルが付与されたOKラベル画像と、異常状態であることを示すNGラベルが付与されたNGラベル画像と、が含まれる。一方、曖昧画像は、検査対象物の状態を示すラベルが付与されない撮像画像である。指標値から正常状態か異常状態かを明確に判定することが困難な撮像画像が曖昧画像に分類される。
【0025】
図3は、第1実施形態のラベル付画像及び曖昧画像の一例を示す図である。
図3において、指標値が-1から1の間で変動し、異常状態である可能性が高いほど1に近い値となり、正常状態である可能性が高いほど-1に近い値となる場合が例示されている。このような場合、指標値が閾値K1(-1<K1<0)以下である撮像画像をOKラベル付画像に分類し、指標値が閾値K2(0<K2<1)以上である撮像画像をNGラベル付画像に分類することができる。また、指標値が閾値Ka1以上且つ閾値Ka2以下である撮像画像を曖昧画像に分類することができる。このとき、K1<Ka1<0、及び0<Ka2<K2の関係が成り立つ。
【0026】
また、本実施形態においては、|Ka1|=|Ka2|が成り立つ。すなわち、全ての曖昧画像における正常状態側の撮像画像の割合と異常状態側の撮像画像の割合とが均等になるように閾値Ka1,Ka2が設定されている。なお、上記のような閾値の設定方法は例示であり、閾値の設定方法は、使用状況等に応じて適宜決定されるべきものである。
【0027】
図2に戻り、分類結果記憶部105は、分類部104により分類されたラベル付画像(本実施形態ではOKラベル付画像及びNGラベル付画像)と、曖昧画像と、を記憶する。
【0028】
ラベル付け部106は、ユーザの操作により、分類結果記憶部105に記憶された(分類部104により分類された)曖昧画像に、検査対象物の状態(正常状態、異常状態等)を示すラベルを付与する手動ラベル付け処理(アノテーション)を可能にする。このような手動ラベル付け処理は、例えば、ディスプレイ、キーボード等のユーザI/F14を介して行われる。以降、手動ラベル付け処理によりラベル付けされた曖昧画像をユーザラベル付画像と称する。
【0029】
再学習部107は、ラベル付け部106(手動ラベル付け処理)により生成されたユーザラベル付画像を含む教師データを用いて、モデル記憶部102に記憶された学習モデルを再学習する。また、当該教師データには、分類結果記憶部105に記憶された(分類部104により分類された)ラベル付画像を含んでもよい。再学習とは、例えば、新たな教師データを用いてモデル内の重みやバイアス等のパラメータを更新する作業等であり得る。再学習の具体的手法は特に限定されるべきものではなく、再学習は学習モデルの構成等に応じて公知又は新規な手法を適宜適用して実施されればよい。
【0030】
図4は、第1実施形態のラベル付画像とユーザラベル付画像と教師データとの関係の一例を示す図である。
図4において、ユーザOKラベル付画像は、
図3に例示した曖昧画像のうち、手動ラベル付け処理によりOKラベル(検査対象物が正常状態であることを示すラベル)が付与された画像である。ユーザNGラベル付画像は、
図3に例示した曖昧画像のうち、手動ラベル付け処理によりNGラベル(検査対象物が異常状態であることを示すラベル)が付与された画像である。
【0031】
なお、
図4においては、指標値がKa1から0の間にある曖昧画像にOKラベルが付与され、指標値が0からKa2の間にある曖昧画像にNGラベルが付与された場合が例示されているが、実際にはこのようにラベル付けされるとは限らない。実際に手動ラベル付け処理を実行する際には、ユーザがディスプレイ等を介して曖昧画像を目視しながら正常か異常かを判断するためである。従って、指標値がKa1から0の間にある曖昧画像にNGラベルが付与され、指標値が0からKa2の間にある曖昧画像にOKラベルが付与される場合もある。
【0032】
ここで例示する教師データは、分類部104により分類された、すなわち再学習前の学習モデルの推定結果(指標値)に基づいて自動的に分類されたOKラベル付画像及びNGラベル付画像、並びに手動ラベル付け処理により生成された、すなわちユーザによる正常か異常かの判断に基づいて分類されたユーザOKラベル付画像及びユーザNGラベル付画像を含む。なお、教師データには、OKラベル付画像及びNGラベル付画像の一方又は両方が含まれなくてもよい。再学習部107は、上記のような教師データを用いて学習モデルを再学習する。
【0033】
図5は、第1実施形態の検査装置1における処理の一例を示すフローチャートである。取得部101は撮像装置2から撮像画像を取得したか否かを判定し(S101)、撮像画像を取得していない場合(S101:No)、ステップS101において撮像画像の取得を待機する。取得部101が撮像画像を取得した場合(S102:Yes)、分類部104は撮像画像を学習モデルに入力し、当該撮像画像に対応する検査対象物の状態を示す指標値を取得する(S102)。その後、分類部104は取得した指標値に基づいて当該撮像画像をラベル付画像又は曖昧画像に分類する(S103)。このように分類されたラベル付画像及び曖昧画像は、分類結果記憶部105に記憶され、蓄積されていく。
【0034】
その後、再学習部107は再学習トリガの有無を判定する(S104)。再学習トリガとは、学習モデルの再学習を実行するための条件が満たされた場合に出力される信号や実行される処理等である。当該条件は、使用状況等に応じて適宜設定されるべきものであるが、例えば、状態判定部103による判定結果における異常判定数又は正常判定数が閾値を超えた場合、過検出数が閾値を超えた場合、曖昧画像数が閾値を超えた場合等であり得る。
【0035】
再学習トリガがない場合(S104:No)、ステップS101以降の処理が再度実行される。再学習トリガがある場合(S104:Yes)、ラベル付け部106は曖昧画像に対して手動ラベル付け処理を実行し、ユーザラベル付け画像を生成する(S105)。その後、再学習部107はラベル付け画像及びユーザラベル付画像を含む教師データ(ラベル付画像は含まれなくてもよい。)を用いて学習モデルを再学習する(S106)。
【0036】
以上のように、本実施形態によれば、複数の撮像画像から検査対象物の状態の判定が困難な曖昧画像が自動的に分類され、当該曖昧画像に対する手動ラベル付け処理によりユーザラベル付画像が生成され、当該ユーザラベル付画像を含む教師データを用いて学習モデルの再学習が実行される。これにより、学習モデルの再学習に用いられる教師データを簡便且つ高品質に生成することができ、学習モデルの再学習を効率的に実施することが可能となる。
【0037】
(第2実施形態)
上記第1実施形態においては、撮像画像から曖昧画像を分類する際に、
図3に例示するように、全ての曖昧画像における正常状態側の撮像画像の割合と異常状態側の撮像画像の割合とが均等となるようになされている(|Ka1|=|Ka2|)。しかしながら、曖昧画像の分類の仕方は、これに限定されるものではない。本実施形態においては、全ての曖昧画像における異常状態(第1状態の一例)側の撮像画像の割合が正常状態側の撮像画像の割合より大きくなるように、撮像画像が分類される。
【0038】
図6は、第2実施形態のラベル付画像及び曖昧画像の第1例を示す図である。本例においては、|Ka1|<|Ka2|が成り立つ。すなわち、全ての曖昧画像における異常状態側の撮像画像(本実施形態では指標値が0より大きい撮像画像)の割合が、正常状態側の撮像画像(本実施形態では指標値が0より小さい撮像画像)の割合より大きくなっている。
【0039】
図7は、第2実施形態のラベル付画像及び曖昧画像の第2例を示す図である。本例においては、指標値が閾値Ka1以上の撮像画像が全て曖昧画像に分類される。このような手法によっても、全ての曖昧画像における異常状態側の撮像画像の割合を正常状態側の撮像画像の割合より大きくすることができる。
【0040】
上記構成によれば、教師データに異常状態に対応する画像を多く含めることができ、再学習において異常検知の精度を優先的に向上させることができる。
【0041】
なお、本実施形態において、異常状態と正常状態との関係を逆にしてもよい。すなわち、全ての曖昧画像における正常状態側の撮像画像の割合を異常状態側の撮像画像の割合より大きくしてもよい。これにより、正常検知の精度を優先的に向上させることができる。
【0042】
(第3実施形態)
上記第1実施形態においては、ユーザラベル付画像のうち、ユーザOKラベル付画像及びユーザNGラベル付画像の両方を教師データに含めたが、教師データの生成の仕方はこれに限定されるものではない。
【0043】
図8は、第3実施形態のラベル付画像とユーザラベル付画像と教師データとの関係の一例を示す図である。
図8に示すように、本実施形態においては、ユーザラベル付画像のうち、ユーザNGラベル付画像のみを教師データに含める。
【0044】
上記構成によれば、教師データに異常状態に対応する画像を多く含めることができ、再学習において異常検知の精度を優先的に向上させることができる。
【0045】
なお、本実施形態において、NGラベルとOKラベルとの関係を逆にしてもよい。すなわち、ユーザラベル付画像のうち、ユーザOKラベル付画像のみを教師データに含めてもよい。これにより、正常検知の精度を優先的に向上させることができる。
【0046】
(第4実施形態)
上記第1実施形態においては、曖昧画像の量に関わらず手動ラベル付け処理が行われ、当該手動ラベル付け処理により生成されたユーザラベル付画像を含む教師データを用いて再学習が行われる。しかしながら、手動ラベル付け処理及び再学習の仕方はこれに限定されるものではない。
【0047】
本実施形態においては、曖昧画像の量(枚数)が閾値以下である場合には、ラベル付け部106は、手動ラベル付け処理を禁止する。そして、再学習部107は、分類部104により分類された、すなわち再学習前の学習モデルから出力された指標値に基づいて自動的にラベル付けされたラベル付画像を含む教師データを用いて学習モデルを再学習する。
【0048】
図9は、第4実施形態の検査装置1における処理の一例を示すフローチャートである。取得部101は撮像装置2から撮像画像を取得したか否かを判定し(S201)、撮像画像を取得していない場合(S201:No)、ステップS201において撮像画像の取得を待機する。取得部101が撮像画像を取得した場合(S202:Yes)、分類部104は撮像画像を学習モデルに入力し、当該撮像画像に対応する検査対象物の状態を示す指標値を取得する(S202)。その後、分類部104は取得した指標値に基づいて当該撮像画像をラベル付画像又は曖昧画像に分類する(S203)。このように分類されたラベル付画像及び曖昧画像は、分類結果記憶部105に記憶され、蓄積されていく。
【0049】
その後、再学習部107は再学習トリガの有無を判定する(S204)。再学習トリガがない場合(S204:No)、ステップS201以降の処理が再度実行される。再学習トリガがある場合(S204:Yes)、ラベル付け部106は分類結果記憶部105に記憶されている曖昧画像の量が閾値以下であるか否かを判定する(S205)。曖昧画像の量が閾値以下でない場合(S204:No)、第1実施形態と同様に、ラベル付け部106は手動ラベル付け処理を実行し、ユーザラベル付け画像を生成する(S206)。その後、再学習部107はラベル付け画像及びユーザラベル付画像を含む教師データを用いて学習モデルを再学習する(S207)。
【0050】
一方、曖昧画像の量が閾値以下である場合(S205:Yes)、ラベル付け部106は手動ラベル付け処理を実行させず、再学習部107はラベル付け画像を含む教師データを用いて学習モデルを再学習する(S208)。
【0051】
上記構成によれば、曖昧画像の蓄積量が少ない状況下では手動ラベル付け処理が実行されなくなるため、手動ラベル付け処理の頻度を下げることができる。これにより、ユーザに過度の手間をかけることなく学習モデルの再学習を実行できる。
【0052】
(変形例)
上記実施形態においては、センサデータが検査対象物の異常検知用の撮影画像である場合について説明したが、センサデータの種類はこれに限定されるものではない。センサデータは、学習モデルの入力値として扱うことが可能なデータであればよく、例えば、物体識別用の撮像画像、物体検知用の超音波データ等であり得る。
【0053】
また、学習モデルは、検査対象物が正常か異常かを推定するものであることに限定されない。例えば、学習モデルは、検査対象物の種類等を推定するものであってもよい。
【0054】
上述したような処理を検査装置1に実行させるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるようにしてもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するようにしてもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0055】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1…検査装置、2…撮像装置、11…プロセッサ、12…メモリ、13…通信I/F、14…ユーザI/F、101…取得部、102…モデル記憶部、103…状態判定部、104…分類部、105…分類結果記憶部、106…ラベル付け部、107…再学習部、S…検査システム