(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013991
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】光導波路評価方法
(51)【国際特許分類】
G01M 11/02 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
G01M11/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116501
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】兼田 幹也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 啓
(57)【要約】
【課題】開口数を精度よく容易に測定可能な光導波路評価方法を提供すること。
【解決手段】本発明の光導波路評価方法は、曲線を含む線状のコア部および前記コア部に隣接するクラッド部を有する光導波路を測定対象として準備する工程と、前記光導波路に対し、前記コア部の構成材料および前記クラッド部の構成材料から計算される開口数よりも大きい開口数を持つ発光部から光を入射させる工程と、前記光導波路から出射する光の遠視野像を取得し、前記遠視野像から最大広がり角を求める工程と、前記最大広がり角に基づいて、前記光導波路の開口数を算出する工程と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲線を含む線状のコア部および前記コア部に隣接するクラッド部を有する光導波路を測定対象として準備する工程と、
前記光導波路に対し、前記コア部の構成材料および前記クラッド部の構成材料から計算される開口数よりも大きい開口数を持つ発光部から光を入射させる工程と、
前記光導波路から出射する光の遠視野像を取得し、前記遠視野像から最大広がり角を求める工程と、
前記最大広がり角に基づいて、前記光導波路の開口数を算出する工程と、
を有することを特徴とする光導波路評価方法。
【請求項2】
前記光導波路は、前記クラッド部に設けられ、外部に開放されている開放面を有する請求項1に記載の光導波路評価方法。
【請求項3】
前記コア部は、直線の形状をなす直線部、および、前記曲線の形状をなす曲線部を含み、
前記開放面は、前記曲線部に隣接する前記クラッド部に設けられ、前記直線部を延長した延長線と交差している請求項2に記載の光導波路評価方法。
【請求項4】
前記曲線の最小曲げ半径は、5mm超50mm以下である請求項1または2に記載の光導波路評価方法。
【請求項5】
前記光導波路は、
シート状をなし、前記コア部を有するコア層と、
前記コア層を介して積層されている第1クラッド層および第2クラッド層と、
を備え、
前記クラッド部は、前記第1クラッド層および前記第2クラッド層を有する請求項1または2に記載の光導波路評価方法。
【請求項6】
前記コア層のうち、外部に開放されている外表面に粗面化処理が施されている請求項5に記載の光導波路評価方法。
【請求項7】
前記光導波路は、
前記第1クラッド層の前記コア層とは反対側に積層され、前記第1クラッド層より屈折率が高い第1カバー層と、
前記第2クラッド層の前記コア層とは反対側に積層され、前記第2クラッド層より屈折率が高い第2カバー層と、
を備える請求項5に記載の光導波路評価方法。
【請求項8】
前記第1カバー層の外部に開放されている外表面および前記第2カバー層の外部に開放されている外表面の少なくとも一方に粗面化処理が施されている請求項7に記載の光導波路評価方法。
【請求項9】
前記光導波路は、樹脂製である請求項1または2に記載の光導波路評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光源から光ファイバを介して出射した光を、開口部を有するアパーチャー形成部材を通過させ、検出器で検出することにより、光ファイバの開口数を測定する方法が開示されている。具体的には、まず、アパーチャー形成部材の開口部中心、光ファイバの光軸、および検出器が、一直線上になるように配置する。次に、光ファイバとアパーチャー形成部材との距離を可変にし、光ファイバの出射端の中心点から開口部を通る光の広がり角度を変えながら、検出器で検出される光量を測定する。次に、開口部を通る光の広がり角度の1/2を角度θとしたとき、sinθが増加するにつれて検出器で検出される光量が飽和し始める点を特定する。そして、この点に対応するsinθを、光ファイバの最大理論開口数とする。このような方法によれば、光ファイバの最大理論開口数を容易に測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の開口数測定方法は、光ファイバーに適用される方法であるが、この方法を光導波路に適用した場合、次のような課題が生じる。前述したように、光ファイバーの光軸を一直線上に配置するのと同様、測定対象の光導波路に形成されるコア部のパターンを、直線に沿ったパターンにする。このような光導波路に光を入射させると、一部の光がコア部から漏れ出ることがある。漏れ出た光(漏れ光)は、直線状をなすコア部に沿って出射端まで伝搬しやすくなる。そうすると、漏れ光が検出器に到達し、光量の検出精度が低下する。このような検出精度の低下は、開口数の算出精度を低下させる原因となる。
【0005】
本発明の目的は、開口数を精度よく容易に測定可能な光導波路評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記(1)~(9)の本発明により達成される。
(1) 曲線を含む線状のコア部および前記コア部に隣接するクラッド部を有する光導波路を測定対象として準備する工程と、
前記光導波路に対し、前記コア部の構成材料および前記クラッド部の構成材料から計算される開口数よりも大きい開口数を持つ発光部から光を入射させる工程と、
前記光導波路から出射する光の遠視野像を取得し、前記遠視野像から最大広がり角を求める工程と、
前記最大広がり角に基づいて、前記光導波路の開口数を算出する工程と、
を有することを特徴とする光導波路評価方法。
【0007】
(2) 前記光導波路は、前記クラッド部に設けられ、外部に開放されている開放面を有する上記(1)に記載の光導波路評価方法。
【0008】
(3) 前記コア部は、直線の形状をなす直線部、および、前記曲線の形状をなす曲線部を含み、
前記開放面は、前記曲線部に隣接する前記クラッド部に設けられ、前記直線部を延長した延長線と交差している上記(2)に記載の光導波路評価方法。
【0009】
(4) 前記曲線の最小曲げ半径は、5mm超50mm以下である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の光導波路評価方法。
【0010】
(5) 前記光導波路は、
シート状をなし、前記コア部を有するコア層と、
前記コア層を介して積層されている第1クラッド層および第2クラッド層と、
を備え、
前記クラッド部は、前記第1クラッド層および前記第2クラッド層を有する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の光導波路評価方法。
【0011】
(6) 前記コア層のうち、外部に開放されている外表面に粗面化処理が施されている上記(5)に記載の光導波路評価方法。
【0012】
(7) 前記光導波路は、
前記第1クラッド層の前記コア層とは反対側に積層され、前記第1クラッド層より屈折率が高い第1カバー層と、
前記第2クラッド層の前記コア層とは反対側に積層され、前記第2クラッド層より屈折率が高い第2カバー層と、
を備える上記(5)に記載の光導波路評価方法。
【0013】
(8) 前記第1カバー層の外部に開放されている外表面および前記第2カバー層の外部に開放されている外表面の少なくとも一方に粗面化処理が施されている上記(7)に記載の光導波路評価方法。
【0014】
(9) 前記光導波路は、樹脂製である上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の光導波路評価方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、光導波路の開口数を精度よく容易に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る光導波路評価方法を説明するための工程図である。
【
図2】
図1に示す測定対象準備工程で準備する測定対象としての光導波路の一例を示す平面図である。
【
図4】
図3に示す光導波路の部分拡大斜視図である。
【
図5】実施形態に係る光導波路評価方法を行うための評価装置の一例を示す概略図である。
【
図6】光導波路の入射端面と光ファイバーの出射端面とを光学的に接続している状態、および、光導波路の出射端面と受光部とを光学的に接続している状態、を示す模式図である。
【
図7】光導波路に設けられた曲線部の作用を説明するための模式図である。
【
図8A】光導波路に設けられた開放面の作用を説明するための模式図である。
【
図8B】光導波路に設けられた開放面の作用を説明するための模式図である。
【
図9】光導波路が備える第1カバー層および第2カバー層の作用を説明するための模式図である。
【
図10】
図5の受光部で取得した遠視野像の一例と、解析部で取得した出射光の角度分布曲線を表すグラフと、を示す図である。
【
図11】
図2の曲線部の最小曲げ半径Rを変えたときの、X軸方向の開口数NAおよびZ軸方向の開口数NAの変化を比較した表である。
【
図12】
図11に示す表に記載したデータを取得するのに用いた光導波路を示す平面図である。
【
図13】最小曲げ半径Rが異なる4つのコアアレイについて求めたX軸方向の角度分布曲線CXを示すグラフである。
【
図14】
図2の曲線部の有無および
図8Bの開放面の有無を変えたときの、X軸方向およびZ軸方向の開口数NAを比較したグラフである。
【
図15】
図14に示すグラフに記載したデータを取得するのに用いた光導波路を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の光導波路評価方法について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は、実施形態に係る光導波路評価方法を説明するための工程図である。
実施形態に係る光導波路評価方法は、光導波路の開口数(NA:Numerical Aperture)を求めることにより、光導波路の特性を評価する方法である。光導波路の開口数は、光導波路と光学部品との結合損失、曲げ損失、伝搬モード数等を評価可能なパラメーターである。光導波路の開口数を求めることは、光導波路の性能を的確に評価できる点で有用である。
【0019】
図1に示す光導波路評価方法は、測定対象準備工程S102と、光入射工程S104と、遠視野像取得工程S106と、開口数算出工程S108と、を有する。
【0020】
測定対象準備工程S102では、曲線を含む線状のコア部およびコア部に隣接するクラッド部を有する光導波路を測定対象として準備する。光入射工程S104では、光導波路に対し、コア部の構成材料およびクラッド部の構成材料から計算される開口数よりも大きい開口数を持つ発光部から光を入射させる。遠視野像取得工程S106では、光導波路から出射する光の遠視野像を取得し、遠視野像から最大広がり角を求める。開口数算出工程S108では、最大広がり角に基づいて、光導波路の開口数を算出する。以下、各工程について順次説明する。
【0021】
1.測定対象準備工程
図2は、
図1に示す測定対象準備工程S102で準備する測定対象としての光導波路1の一例を示す平面図である。
図3は、
図2に示す光導波路1のA部拡大図である。
図4は、
図3に示す光導波路1の部分拡大斜視図である。なお、本願の各図では、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸およびZ軸を設定し、矢印で示している。また、矢印の先端側を「プラス側」といい、基端側を「マイナス側」という。さらに、X軸方向を「幅方向」、Z軸方向を「厚さ方向」ともいう。また、Z軸を表す矢印の先端側を「上」といい、基端側を「下」という。
【0022】
光導波路1は、
図2に示すように、互いに表裏の関係を持つ2つの主面を有するシート状をなしている。また、光導波路1の主面を平面視したとき、主面の平面視形状は、Y軸に沿う長軸と、X軸に沿う短軸と、を有する帯状をなしている。
【0023】
図2に示す光導波路1は、内部に設けられたコアアレイ140を透視している。コアアレイ140は、
図3に示すように、Y軸に沿って線状に延びる複数のコア部14を含む。これらの複数のコア部14は、側面クラッド部15を介してX軸方向に並んでいる。なお、光導波路1のうち、Y軸マイナス側の端面を入射端面101とし、Y軸プラス側の端面を出射端面102とする。また、
図2に示すコア部14は、分離することなく描かれた1本のコア部14を指している。
【0024】
X軸方向に隣り合うコア部14のピッチは、特に限定されないが、
図3の例では62.5μmである。また、コア部14のX軸方向の幅は、特に限定されないが、
図3の例では45μmである。
【0025】
また、
図2に示す光導波路1は、
図4に示すように、下方から、第1カバー層18、第1クラッド層11、コア層13、第2クラッド層12および第2カバー層19がこの順で積層されてなる積層体16で構成されている。
【0026】
コア層13は、前述したコアアレイ140を有する。すなわち、前述した複数のコア部14および側面クラッド部15は、それぞれコア層13中に形成されている。また、コア層13は、第1クラッド層11および第2クラッド層12に挟まれている。これにより、コア部14のうち、X軸に交差する面は、側面クラッド部15に隣接し、Z軸に交差する面は、第1クラッド層11および第2クラッド層12に隣接することになる。したがって、これらの側面クラッド部15、第1クラッド層11および第2クラッド層12で構成されるクラッド部は、コア部14に隣接し、コア部14の側方を囲んでいる。クラッド部は、コア部14よりも屈折率が低い部位であるため、コア部14に光を閉じ込めるように作用する。
【0027】
コア部14は、Z軸上から見たとき、
図2に示すように、曲線を含む線状をなしている。具体的には、コア部14は、直線の形状をなす直線部141、142と、曲線の形状をなす曲線部143と、を含んでいる。これらは、Y軸に沿って、直線部141、曲線部143および直線部142の順に並んでいる。コア部14がこのような形状をなしていることで、例えば入射端面101から1本のコア部14に光を入射させたとき、コア部14から側面クラッド部15に漏れ出た漏れ光が、そのまま側面クラッド部15を伝搬する確率を下げることができる。これにより、漏れ光がコア部14から出射する光に混在してしまうのを抑制することができる。
【0028】
なお、コア部14では、直線部141、142が省略されていてもよい。すなわち、コア部14は、その全体が曲線に沿っていてもよい。また、コア層13には、少なくとも1本のコア部14があればよく、コア部14の本数は特に限定されない。
【0029】
コア層13において、コア部14の光路に直交する面内における屈折率分布は、いかなる分布であってもよく、例えば屈折率が不連続的に変化した、いわゆるステップインデックス(SI)型の分布であってもよく、屈折率が連続的に変化した、いわゆるグレーデッドインデックス(GI)型の分布であってもよい。
【0030】
また、光導波路1は、1つの導波モードを有するシングルモード型の光導波路であってもよいし、複数の導波モードを有するマルチモード型の光導波路であってもよい。後者は、複数の導波モードを有するため、光導波路1に光を入射させるとき、その入射角が結合効率を左右する。このため、光導波路1の開口数を求め、それに基づいて光導波路1の性能を評価することが特に重要となる。
【0031】
X-Z面によるコア部14の断面形状、つまり、コア部14の横断面形状は、特に限定されないが、例えば、真円、楕円形、長円形等の円形、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形、その他の異形状が挙げられる。
【0032】
コア層13の平均厚さは、特に限定されないが、1~200μm程度であるのが好ましく、5~100μm程度であるのがより好ましく、10~70μm程度であるのがさらに好ましい。
【0033】
コア層13の主材料としては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料の他、ガラス材料等が挙げられる。なお、樹脂材料には、異なる組成のものを組み合わせた複合材料も用いられる。また、本明細書において「主材料」とは、構成材料の50質量%以上を占める材料のことをいい、好ましくは70質量%以上を占める材料のことをいう。
【0034】
第1クラッド層11および第2クラッド層12の平均厚さは、それぞれ1~200μm程度であるのが好ましく、3~100μm程度であるのがより好ましく、5~60μm程度であるのがさらに好ましい。
【0035】
また、第1クラッド層11および第2クラッド層12の主材料は、例えば、前述したコア層13の構成材料として挙げた材料から適宜選択して用いられる。
なお、第1クラッド層11および第2クラッド層12の少なくとも一方は、必要に応じて設けられればよく、省略されていてもよい。
【0036】
第1カバー層18は、第1クラッド層11の下面に設けられている。第2カバー層19は、第2クラッド層12の上面に設けられている。
【0037】
第1カバー層18および第2カバー層19の平均厚さは、特に限定されないが、1~200μm程度であるのが好ましく、3~100μm程度であるのがより好ましく、5~50μm程度であるのがさらに好ましい。なお、第1カバー層18および第2カバー層19の平均厚さとは、各層の厚さを10か所以上で測定したときの平均値である。
【0038】
第1カバー層18および第2カバー層19の主材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー等の各種樹脂を含む材料が挙げられる。
【0039】
このうち、第1カバー層18および第2カバー層19の主材料は、それぞれポリイミド系樹脂であるのが好ましい。ポリイミド系樹脂は、コア部14や第1クラッド層11および第2クラッド層12に比べて、光の吸収率が高い。このため、コア部14から漏れ出た漏れ光を、第1カバー層18および第2カバー層19で吸収することができる。これにより、漏れ光が再びコア部14に戻ったり、第1クラッド層11および第2クラッド層12を伝搬したりするのを抑制することができる。
【0040】
第1カバー層18および第2カバー層19の主材料は、互いに異なっていてもよいが、互いに同じであるのが好ましい。これにより、主材料の違いに伴う光導波路1の反りを抑制することができる。
【0041】
なお、第1カバー層18および第2カバー層19には、必要に応じて、フィラー、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、劣化防止剤、帯電防止剤、難燃剤等が添加されていてもよい。このうち、着色剤等を添加することにより、光吸収効率を高めることができる。
【0042】
また、第1カバー層18および第2カバー層19は、必要に応じて設けられればよく、省略されていてもよい。
なお、光導波路1の構成は、
図2および
図3に示すものに限定されない。
【0043】
以上、光導波路1について説明したが、光導波路1の構造は、上記の構造に限定されない。例えば、側面クラッド部15と第1クラッド層11または第2クラッド層12とが一体になっていてもよい。また、側面クラッド部15は、必要に応じて設けられればよく、省略されていてもよい。つまり、コア層13全体がコア部になっていてもよい。この場合、前述したクラッド部は、第1クラッド層11および第2クラッド層12で構成される。
【0044】
一方、上述したように、光導波路1が、シート状をなすコア層13、第1クラッド層11および第2クラッド層12を備える積層体構造である場合、製造が容易であるという利点を持つ。また、このような光導波路1では、開口数を、例えばX軸方向の成分とZ軸方向の成分とに分けて評価することが求められる場合もある。本実施形態に係る光導波路評価方法では、光導波路1の開口数を、このように異なる成分ごとに算出することができるため、より精度が高く、かつ、より有用な評価が可能になる。
【0045】
また、光導波路1は、樹脂製であることが好ましい。つまり、各層の主材料は、いずれも樹脂材料であることが好ましい。これにより、可撓性を有し、取り扱い性が容易であるとともに、耐衝撃性、製造容易性に優れた光導波路1が実現される。そして、本実施形態に係る光導波路評価方法では、そのような光導波路1の特性を的確に評価可能である。
【0046】
2.光入射工程
光入射工程S104では、光導波路1に対し、発光部から光を入射させる。
【0047】
図5は、実施形態に係る光導波路評価方法を行うための評価装置2の一例を示す概略図である。
【0048】
図5に示す評価装置2は、発光部3と、受光部4と、解析部5と、を備える。発光部3は、光導波路1に対し、光を入射させる機能を有する。受光部4は、光導波路1から出射した光を受光し、光強度の分布を検出する機能を有する。解析部5は、受光部4が検出した光強度の分布を解析し、光導波路1の開口数を算出する機能を有する。
【0049】
発光部3は、光源32と、光ファイバー34と、を有する。光源32としては、例えば、発光ダイオード、レーザーダイオード、ガスレーザー発振器等が挙げられる。光ファイバー34は、光源32と光導波路1とを光学的に接続する機能を有する。光ファイバー34としては、例えば、プラスチック製光ファイバー、ガラス製光ファイバー等が挙げられる。
【0050】
発光部3の開口数は、光導波路1の理論開口数よりも大きくなるように設定される。ここでは、理論開口数を、光導波路1のコア部14の構成材料およびクラッド部の構成材料から計算される開口数とする。このように構成することで、光導波路1の最大受光角に対し、それと等しい入射角の光を入射させることができる蓋然性が高くなる。
【0051】
本実施形態に係る光導波路評価方法では、後述する工程において、光導波路1から出射する光の広がり角の最大値(最大広がり角)を求めた後、この最大広がり角から光導波路1の開口数を算出する。最大広がり角は、最大受光角と等しいので、最大受光角と開口数との関係に基づいて開口数を算出できる。したがって、最大受光角と等しい入射角の光を入射させるためには、光導波路1の理論開口数より発光部3の開口数を大きく設定することが必要となる。
【0052】
図6は、光導波路1の入射端面101と光ファイバー34の出射端面342とを光学的に接続している状態、および、光導波路1の出射端面102と受光部4とを光学的に接続している状態、を示す模式図である。
【0053】
発光部3では、光ファイバー34の開口数が、光導波路1の理論開口数よりも大きくなっている。このため、光ファイバー34を伝搬する光は、光ファイバー34に対する光の入射角を十分に大きくすることで、光導波路1の最大受光角θin_maxと等しい入射角で入射端面101に入射する導波モードの光Linを含む蓋然性が高い。これにより、光導波路1の出射端面102から受光部4に向かって出射する光は、最大広がり角θout_maxで出射する光Loutを含むことになる。したがって、後述する工程で、光導波路1から出射する光の最大広がり角θout_maxを求めることにより、最大受光角θin_maxと開口数NAとの関係に基づいて、光導波路1の開口数NAを算出することが可能になる。
【0054】
なお、光源32の開口数も、光ファイバー34の開口数より大きくなるように設定される。これにより、光ファイバー34に入射する光は、前述した導波モードの光Linを含むものとなる。
【0055】
また、光ファイバー34の開口数は、光導波路1の理論開口数よりも大きければよいが、好ましくは0.02以上大きいことが好ましく、0.05以上大きいことがより好ましい。これにより、後述する工程で最大広がり角θout_maxをより正確に求めることができる。その結果、光導波路1の開口数をより正確に求めることができる。
【0056】
入射端面101に入射された光のうち、最大受光角θin_max以下の入射角で入射した光Linは、コア部14を伝搬し、出射端面102から出射する。一方、最大受光角θin_maxを超える入射角で入射した入射光L1は、コア部14から例えば側面クラッド部15に漏れ出す。この漏れ光L2は、前述したクラッドモード光となったり、隣り合う別のコア部14に入射し、ノイズになったりする。このため、漏れ光L2は、出射端面102まで到達した場合、最大広がり角θout_maxの測定誤差の原因となる。
【0057】
そこで、
図7に示す光導波路1には、曲線部143が設けられている。この
図7は、光導波路1に設けられた曲線部143の作用を説明するための模式図である。曲線部143の最小曲げ半径をRとするとき、
図7には、R=20mmの曲線部143を含むコア部14と、R=∞で曲線部143がないコア部14’と、を図示している。なお、
図7に示すコア部14、14’は、分離することなく描かれた各1本のコア部を指している。つまり、
図7に示す2本の帯は、それぞれ、X軸方向に並んだ複数のコア部14、14’の集合体である。
図7に示す入射端面101のうち、コア部14’に光を入射させた場合、コア部14’が曲線部143を含まないため、漏れ光L2を十分に抑制することができない。これに対し、コア部14に光を入射させた場合、曲線部143において漏れ光L2の伝搬が妨げられる。これにより、漏れ光L2が出射端面102に到達する確率を下げることができる。
【0058】
最小曲げ半径Rは、特に限定されないが、5mm超50mm以下であるのが好ましく、8mm以上30mm以下であるのがより好ましい。これにより、曲線部143における曲げ損失を抑えつつ、曲線部143による光の伝送特性への影響を最小限に抑えることができる。つまり、コア部14における光の伝送品質を下げることなく、曲げ損失を抑えることができる。その結果、出射端面102から出射する光のS/N比(信号対雑音比)を高めることができ、光導波路1の開口数をより正確に求めることができる。
【0059】
なお、曲線部143の最小曲げ半径Rが前記下限値を下回ると、コア部14と側面クラッド部15との屈折率差によっては、曲げ損失が増大するおそれがある。一方、曲線部143の最小曲げ半径Rが前記上限値を上回ってもよいが、光導波路1の全長が必要以上に長くなり、漏れ光L2が発生しやすくなるおそれがある。また、漏れ光L2の伝搬を抑制する作用が小さくなるおそれがある。
【0060】
また、曲線部143の最小曲げ半径Rは、光導波路1の全長(Y軸方向における最大長さ)の10%以上50%以下であるのが好ましく、20%以上35%以下であるのがより好ましい。これにより、全長に対して最小曲げ半径Rを最適化することができるので、漏れ光L2の発生を抑えつつ、漏れ光L2の伝搬を抑制する作用を十分に得ることができる。
【0061】
また、曲線部143では、曲げ損失に伴い、漏れ光L3が発生する場合がある。この漏れ光L3も、出射端面102まで到達した場合、最大広がり角θout_maxの測定誤差の原因となる。
【0062】
そこで、
図8Aおよび
図8Bに示す光導波路1には、開放面17が設けられている。この
図8Aおよび
図8Bは、光導波路1に設けられた開放面17の作用を説明するための模式図である。
【0063】
図8Aおよび
図8Bに示す開放面17は、光導波路1を厚さ方向(Z軸方向)に切断するように設けられた切れ込みである。切れ込みによって、側面クラッド部15が外部に開放される。これにより、開放面17において漏れ光L3を散乱等させ、散逸させることができる。したがって、開放面17は、クラッド部に設けられていればよい。また、開放面17は、漏れ光L3の経路に応じて適宜配置されればよい。つまり、開放面17は、側面クラッド部15、第1クラッド層11および第2クラッド層12のうちの1つ以上に設けられていればよい。なお、開放面17は、必要に応じて設けられればよく、省略されていてもよい。
【0064】
図8Aおよび
図8Bに示す開放面17は、光導波路1をZ軸上から平面視したとき、光導波路1のX軸マイナス側の端面からX軸プラス側に向かって延びている。開放面17は、直線部141、142に隣接するクラッド部に設けられていてもよいが、本実施形態では、曲線部143に隣接するクラッド部に設けられている。これにより、曲線部143の起点部143a(曲線部143のY軸マイナス側の端部)から発生した漏れ光L3を、効果的に散逸させることができる。この起点部143aからは、特に漏れ光L3が発生しやすいため、開放面17をこの位置に設けることが有効である。なお、開放面17は、漏れ光L3ではなく、漏れ光L2を散逸してもよく、双方を散逸してもよい。
【0065】
また、
図8Aおよび
図8Bに示す曲線部143は、起点部143aから終点部143b(曲線部143のY軸プラス側の端部)に向かうとき、X軸プラス側に向かって徐々に変位し、頂点143cを通過した後、今度は、X軸マイナス側に向かって徐々に変位している。つまり、直線部141を起点部143aから延長するように延長線ELを引くと、頂点143cは、この延長線ELよりもX軸プラス側に位置している。
【0066】
光導波路1を平面視したとき、
図8Aおよび
図8Bに示す開放面17は、この延長線ELと交差している。これにより、漏れ光L3をより効果的に散逸させることができる。具体的には、起点部143aから発生する漏れ光L3は、延長線ELに沿って、または延長線ELから広がりながら伝搬すると考えられる。このため、延長線ELを横切るように開放面17を設けることで、漏れ光L3の伝搬を阻止できる確率が高まる。これにより、漏れ光L3が出射端面102に到達する確率をより下げることができる。
【0067】
また、
図8Aおよび
図8Bに示す開放面17は、光導波路1をZ軸方向に切断するとともに、X軸方向に延在している。
【0068】
開放面17が鏡面のように滑らかな場合、漏れ光L3は、
図8Aに示すように、開放面17で正反射しやすい。漏れ光L2も同様である。このため、光導波路1をZ軸上から見たとき、開放面17とX軸とのなす角度αは、30°以上であるのが好ましく、45°以上であるのがより好ましい。これにより、漏れ光L2、L3の反射光が出射端面102により到達しにくくなる。鏡面のような滑らかな開放面17を形成するためには、例えば、ダイシングソーのような切断装置を用いればよい。
【0069】
一方、鋏のような簡易な器具を用いて開放面17を形成すると、開放面17は相対的に粗面になりやすい。この場合、漏れ光L2、L3は、
図8Bに示すように、開放面17で正反射するのではなく、乱反射または乱透過する。したがって、この場合には、角度αは特に問わないが、45°以下であるのが好ましく、30°以下であるのがより好ましい。
【0070】
なお、光導波路1には、Y軸方向に並ぶ複数の開放面17が設けられていてもよい。開放面17を複数設けることにより、上記効果がより顕著になる。
【0071】
また、
図4に示す光導波路1のコア層13のうち、外部に開放されている外表面132は、平坦面であってもよいが、粗面化処理が施されているのが好ましい。
図4に示す外表面132は、X軸と交差する面である。外表面132に粗面化処理を施すことにより、外表面132における漏れ光L2、L3の反射率を下げることができる。これにより、漏れ光L2、L3がクラッドモード光となり、出射端面102に向かって伝搬するのを抑制することができる。
【0072】
粗面化処理としては、例えば、外表面132を機械的に荒らす処理、外表面132にレーザー光を照射して荒らす処理等が挙げられる。
【0073】
また、光導波路1は、第1カバー層18および第2カバー層19を備えている。第1カバー層18の屈折率は、第1クラッド層11より高いことが好ましい。同様に、第2カバー層19の屈折率は、第2クラッド層12より高いことが好ましい。
【0074】
図9は、光導波路1が備える第1カバー層18および第2カバー層19の作用を説明するための模式図である。
【0075】
入射端面101に対し、最大受光角θin_maxを超える入射角で入射した入射光L1は、例えばコア部14から第1クラッド層11や第2クラッド層12に漏れ出し、漏れ光L4となる場合がある。漏れ光L4が第1クラッド層11や第2クラッド層12を伝搬した場合、クラッドモード光になるおそれがある。このとき、第1カバー層18および第2カバー層19の屈折率が、第1クラッド層11や第2クラッド層12の屈折率よりも高ければ、第1カバー層18および第2カバー層19に侵入した漏れ光L4を吸収することができる。この作用により、漏れ光L4が出射端面102に到達する確率を下げることができる。
【0076】
第1カバー層18と第1クラッド層11との比屈折率差、および、第2カバー層19と第2クラッド層12との比屈折率差は、それぞれ特に限定されないが、一例として、0.05%以上2.0%以下程度とされ、好ましくは0.1%以上1.5%以下程度とされる。
【0077】
また、
図9に示す第1カバー層18の外部に開放されている外表面182(下面)、および、第2カバー層19の外部に開放されている外表面192(上面)は、平坦面であってもよいが、それぞれ粗面化処理が施されているのが好ましい。
図9に示す外表面182、192は、それぞれZ軸と交差する面である。外表面182、192に粗面化処理を施すことにより、外表面182、192における漏れ光L4の反射率を下げることができる。これにより、漏れ光L4がクラッドモード光となるのを抑制し、出射端面102に向かって伝搬するのを抑制することができる。
【0078】
粗面化処理としては、例えば、外表面182、192を機械的に荒らす処理、外表面182、192にレーザー光を照射して荒らす処理等が挙げられる。なお、粗面化処理は、外表面182、192のいずれか一方のみに施されていてもよい。
【0079】
3.遠視野像取得工程
遠視野像取得工程S106では、光導波路1から出射する光を
図5に示す受光部4で受光し、遠視野像を取得する。そして、取得した遠視野像を解析部5で解析し、最大広がり角θ
out_maxを求める。
【0080】
図5に示す受光部4は、ファーフィールドパターン光学系42と、カメラ44と、を有する。ファーフィールドパターン光学系42としては、例えば、入射角を結像位置に変換するfθレンズを含む光学系が挙げられる。このようなファーフィールドパターン光学系42を用いることにより、出射光の2次元の角度分布を画像化することができる。また、カメラ44は、2次元の撮像素子を有し、各画素の光強度を検出する機能を有する。これにより、出射光の2次元の光強度分布を画像化することができる。その結果、出射端面102に平行な面内で、任意の方向の最大広がり角θ
out_maxを求めることができる。
【0081】
遠視野像は、出射端面102から十分な距離、例えば3~10mm程度離れた位置において、出射光の2次元の角度分布を結像位置に変換するとともに、各画素に光強度を対応させた画像のことをいう。この遠視野像が持つ光強度分布を任意の方向で切り出すことにより、各方向における光強度分布を表す曲線を得ることができる。本明細書では、この曲線を「角度分布曲線」という。
【0082】
図10は、
図5の受光部4で取得した遠視野像の一例と、解析部5で取得した出射光の角度分布曲線を表すグラフと、を示す図である。なお、
図10では、X軸方向における出射光の角度分布曲線CXを表すグラフと、Z軸方向における出射光の角度分布曲線CZを示すグラフと、を併記している。
【0083】
図10に示す遠視野像では、濃色の背景に淡色の出射光が写っている。淡色が淡いほど、光強度が大きいことを表しており、遠視野像の中央部から周辺部に向かって光強度が小さくなっている分布がわかる。また、
図10に示す角度分布曲線CX、CZは、それぞれ上に凸の曲線(正規分布状曲線に近い曲線)である。そこで、上に凸の部分の幅から最大広がり角θ
out_maxを見積もる。具体的には、まず、ピーク強度の1/(e
2)となる曲線の幅を最大角度幅θwとして求める。次に、この最大角度幅θwの半分を、X軸方向およびZ軸方向の最大広がり角θ
out_maxとする。なお、角度分布曲線CX、CZから最大角度幅θ
wを求める方法は、上記の方法に限定されない。最大角度幅θ
wは、例えばレイリービーム幅であってもよいし、半値全幅であってもよい。また、X軸方向およびZ軸方向の双方に対して傾いた方向の最大広がり角θ
out_maxを求めるようにしてもよい。
【0084】
図5に示す解析部5は、パーソナルコンピューター52を有する。パーソナルコンピューター52は、カメラ44から出力された信号から、2次元の遠視野像を生成する機能、および、遠視野像から角度分布曲線を生成する機能を有する。なお、パーソナルコンピューター52は、同様の機能を有するその他の演算機器で代替可能である。
【0085】
4.開口数算出工程
開口数算出工程S108では、最大広がり角θout_maxに基づいて、光導波路1の開口数NAを算出する。前述したように、最大広がり角θout_maxは、最大受光角θin_maxに等しいと考えられる。そこで、求めた最大広がり角θout_maxを最大受光角θin_maxとする。
最大受光角θin_maxと開口数NAとの間には、下記式で表される関係がある。
【0086】
【0087】
この関係に基づいて、最大受光角θin_maxから光導波路1の開口数NAを算出する。これにより、X軸方向およびZ軸方向の開口数NAが算出される。なお、nは、媒質の屈折率であり、ここでは、媒質を空気としてよいので、n=1である。
【0088】
以上のような方法では、光導波路1で発生する漏れ光L2、L3、L4が及ぼす影響を抑えつつ、最大広がり角θout_maxを求めることができる。これにより、開口数NAを精度よく測定することができる。その結果、光導波路1の特性をより的確に評価することができる。
【0089】
また、遠視野像から最大広がり角θout_maxを求める操作を有しているので、任意の方向について最大広がり角θout_maxを求めることができ、任意の方向について開口数NAを求めることができる。これらの開口数NAは、X軸方向とZ軸方向とで異なっている構造を反映すると考えられる。このため、各方向についての開口数NAを、光導波路1の品質や性能をより的確に評価する評価基準にすることも可能になる。
【0090】
なお、光導波路1は、前述したように、複数のコア部14を含むコアアレイ140を有している。したがって、上記の評価は、コア部14ごとに行うことができる。その場合、複数のコア部14で得られた評価結果を総合して、光導波路1の評価としてもよい。具体的には、複数のコア部14で求められた開口数の測定値に対し、任意の演算、例えば平均値を求める演算を行い、得られた平均値を光導波路1の開口数NAとしてもよい。これにより、コア部14が持つ個体差が開口数NAに反映されにくくなり、光導波路1についてより的確な評価が可能になる。
【0091】
複数の測定値に演算を行う場合、測定値の数は、3以上であるのが好ましく、5以上であるのがより好ましい。これにより、個体差の影響を特に抑えることができる。
【0092】
図11は、
図2の曲線部143の最小曲げ半径Rを変えたときの、X軸方向の開口数NAおよびZ軸方向の開口数NAの変化を比較した表である。
図12は、
図11に示す表に記載したデータを取得するのに用いた光導波路1Aを示す平面図である。
図12に示す光導波路1Aは、最小曲げ半径Rが異なる4つのコアアレイ140を有している。最小曲げ半径Rは、20mm、10mm、5mmおよび無限大∞である。最小曲げ半径Rが無限大∞とは、曲線部143がなく、コアアレイ140が直線に沿って延在していることを指す。
図13は、最小曲げ半径Rが異なる4つのコアアレイ140について求めたX軸方向の角度分布曲線CXを示すグラフである。
【0093】
図11に示すように、最小曲げ半径Rを20mmとしたとき、X軸方向の開口数NAが最小になっており、Z軸方向の開口数NAも比較的小さな値になっている。また、
図13に示す角度分布曲線CXも、正規分布曲線に近いことから、コアアレイ140の伝送特性は適正であると考えられる。
【0094】
一方、最小曲げ半径Rを10mmとした場合、および、最小曲げ半径Rを無限大∞にした場合(コアアレイ140が直線に沿って延在している場合)は、開口数NAが相対的に大きい。この結果は、漏れ光L2、L3、L4が最大広がり角θ
out_maxに影響を及ぼしたためと考えられる。なお、これらの場合も、
図13に示す角度分布曲線CXは正規分布曲線に近いので、コアアレイ140の伝送特性は適正であると考えられる。
【0095】
これに対し、最小曲げ半径Rを5mmとした場合、
図13に示す角度分布曲線CXは、2つのピークを含む等していて、正規分布曲線から大きく外れている。この結果は、5mmという小さな最小曲げ半径Rがコアアレイ140の伝送特性に影響を及ぼしたためと考えられる。
【0096】
図14は、
図2の曲線部143の有無および
図8Bの開放面17の有無を変えたときの、X軸方向およびZ軸方向の開口数NAを比較したグラフである。
図15は、
図14に示すグラフに記載したデータを取得するのに用いた光導波路1Bを示す平面図である。
図15に示す光導波路1Bでは、3つの切れ込みを入れることにより、3つの開放面17が形成されている。
図15に示す開放面17は、直線部141の延長線ELと交差するように設けられている。
【0097】
図14に示すように、X軸方向およびZ軸方向のいずれにおいても、光導波路1Bに曲線部143を設けることで、開口数NAが低下している。また、曲線部143に隣接するクラッド部に開放面17を設けることで、開口数NAのさらなる低下が認められる。開口数NAが小さいということは、ノイズとなる光の検出が少ないことを表している。したがって、開放面17を設けることで、開口数NAをより精度よく測定可能であるといえる。
【0098】
5.実施形態が奏する効果
以上のように、本実施形態に係る光導波路評価方法は、測定対象準備工程S102と、光入射工程S104と、遠視野像取得工程S106と、開口数算出工程S108と、を有する。測定対象準備工程S102では、曲線を含む線状のコア部14およびコア部14に隣接するクラッド部を有する光導波路1を測定対象として準備する。光入射工程S104では、光導波路1に対し、コア部14の構成材料およびクラッド部の構成材料から計算される開口数よりも大きい開口数を持つ発光部3から光を入射させる。遠視野像取得工程S106では、光導波路1から出射する光の遠視野像を取得し、遠視野像から最大広がり角θout_maxを求める。開口数算出工程S108では、最大広がり角θout_maxに基づいて、光導波路1の開口数を算出する。
【0099】
このような光導波路評価方法によれば、光導波路1で発生する漏れ光L2、L3、L4が及ぼす影響を抑えつつ、最大広がり角θout_maxを求めることができる。これにより、開口数NAを精度よく測定することができる。その結果、光導波路1の特性をより的確に評価することができる。
【0100】
また、任意の方向について開口数NAを求めることができる。これにより、光導波路1の構造に起因した品質や性能をより的確に評価することも可能になる。
【0101】
また、本実施形態では、光導波路1が開放面17を有する。開放面17は、クラッド部に設けられ、外部に開放されている面である。
【0102】
光導波路1がこのような開放面17を有することにより、光導波路1で発生する漏れ光L2、L3を開放面17で散逸させ、出射端面102に到達するのを抑制することができる。これにより、開口数NAをより精度よく測定することができる。
【0103】
また、本実施形態では、コア部14が、直線の形状をなす直線部141、142、および、曲線の形状をなす曲線部143を含んでいる。開放面17は、曲線部143に隣接するクラッド部に設けられ、直線部141を延長した延長線ELと交差している。
【0104】
このような構成によれば、曲線部143で発生した漏れ光L3が開放面17で散逸される確率が高くなる。このため、漏れ光L3が出射端面102に到達する確率をより下げることができる。
【0105】
また、本実施形態では、曲線部143の曲線の最小曲げ半径Rが、5mm超50mm以下であるのが好ましい。
【0106】
これにより、曲線部143における曲げ損失を抑えつつ、曲線部143による光の伝送特性への影響を最小限に抑えることができる。つまり、コア部14における光の伝送品質を下げることなく、曲げ損失を抑えることができる。その結果、出射端面102から出射する光のS/N比を高めることができ、光導波路1の開口数NAをより正確に求めることができる。
【0107】
また、本実施形態では、光導波路1が、コア層13と、第1クラッド層11および第2クラッド層12と、を備える。前述したクラッド部は、これらの第1クラッド層11および第2クラッド層12を有する。コア層13は、シート状をなし、コア部14を有する。第1クラッド層11および第2クラッド層12は、コア層13を介して積層されている。
【0108】
このような光導波路1は、製造が容易であるという利点を持つ。また、このような光導波路1は、X軸方向とZ軸方向とで構造が異なるが、本実施形態に係る評価方法は、構造に起因した品質や性能を評価することもできるため、有用である。
【0109】
また、本実施形態では、コア層13のうち、外部に開放されている外表面132に粗面化処理が施されていてもよい。
【0110】
これにより、外表面132における漏れ光L2、L3の反射率を下げることができる。その結果、漏れ光L2、L3が出射端面102に向かって伝搬するのを抑制することができる。
【0111】
また、本実施形態では、光導波路1が、第1カバー層18と、第2カバー層19と、を備える。第1カバー層18は、第1クラッド層11のコア層13とは反対側に積層され、第1クラッド層11より屈折率が高い。第2カバー層19は、第2クラッド層12のコア層13とは反対側に積層され、第2クラッド層12より屈折率が高い。
【0112】
これにより、第1カバー層18および第2カバー層19に侵入した漏れ光L4を吸収することができる。この作用により、漏れ光L4が出射端面102に到達する確率を下げることができる。
【0113】
また、本実施形態では、第1カバー層18の外部に開放されている外表面182、および、第2カバー層19の外部に開放されている外表面192の少なくとも一方に粗面化処理が施されていてもよい。
【0114】
これにより、外表面182、192における漏れ光L4の反射率を下げることができる。その結果、漏れ光L4が出射端面102に向かって伝搬するのを抑制することができる。
【0115】
また、本実施形態では、光導波路1が樹脂製である。これにより、可撓性を有し、取り扱い性が容易であるとともに、耐衝撃性、製造容易性に優れた光導波路1が実現される。そして、本実施形態に係る光導波路評価方法では、そのような光導波路1の特性を的確に評価可能である。
【0116】
以上、本発明の光導波路評価方法を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0117】
例えば、本発明の光導波路評価方法は、前記実施形態に任意の目的の工程が付加されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0118】
1 光導波路
1A 光導波路
1B 光導波路
2 評価装置
3 発光部
4 受光部
5 解析部
11 第1クラッド層
12 第2クラッド層
13 コア層
14 コア部
14’ コア部
15 側面クラッド部
16 積層体
17 開放面
18 第1カバー層
19 第2カバー層
32 光源
34 光ファイバー
42 ファーフィールドパターン光学系
44 カメラ
52 パーソナルコンピューター
101 入射端面
102 出射端面
132 外表面
140 コアアレイ
141 直線部
142 直線部
143 曲線部
143a 起点部
143b 終点部
143c 頂点
182 外表面
192 外表面
342 出射端面
CX 角度分布曲線
CZ 角度分布曲線
EL 延長線
L1 入射光
L2 漏れ光
L3 漏れ光
L4 漏れ光
Lin 光
Lout 光
S102 測定対象準備工程
S104 光入射工程
S106 遠視野像取得工程
S108 開口数算出工程
α 角度
θ 角度
θin_max 最大受光角
θout_max 最大広がり角
θw 最大角度幅