(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139918
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ブラケット付き防振装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20241003BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20241003BHJP
F16M 5/00 20060101ALI20241003BHJP
B60K 5/12 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F16F15/02 D
F16F15/08 W
F16M5/00 D
B60K5/12 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050866
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】吉田 宏典
(72)【発明者】
【氏名】安藤 百花
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】水谷 玲
【テーマコード(参考)】
3D235
3J048
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB23
3D235CC01
3D235EE09
3D235EE13
3J048AA01
3J048AD11
3J048BA18
3J048CB05
3J048DA01
3J048EA01
(57)【要約】
【課題】防振連結対象部材へ取り付けるための第一及び第二のブラケットを利用して相対変位量を制限するストッパ機構が構成されたブラケット付き防振装置において、車両装着状態で第一ブラケットが第二ブラケットに対して相対的に傾むいたりした場合であっても、ストッパクリアランスやストッパ荷重入力方向の変化が抑えられて、目的とするストッパ機能が良好に且つ安定して発揮され得る、新規な構造のブラケット付き防振装置を提供すること。
【解決手段】防振装置本体20の第一取付部材12の第一ブラケット22へ非接着状態で装着された緩衝部材80において、第二取付部材14の第二ブラケット24の当接面94に対向する対向当接面98を、従来構造の単純な平面形状とすることなく、直交二方向で湾曲して突出高さが中央部分から周縁部に向けて次第に小さくなる湾曲した表面形状とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ゴム弾性体によって弾性的に連結された第一取付部材と第二取付部材とを備えた防振装置本体と、
前記第一取付部材に装着されて振動伝達系を構成する一方の部材に取り付けられる第一ブラケットと、
前記第二取付部材に装着されて振動伝達系を構成する他方の部材に取り付けられる第二ブラケットと、
前記第一ブラケットに設けられた第一当接部と、
前記第二ブラケットに設けられて、前記第一当接部の両側に位置してそれぞれ外方に所定距離を隔てて対向する当接面を有する第二当接部と、
前記第一ブラケットの前記第一当接部に対して非接着状態で装着されて、前記第二当接部の前記両側の当接面に対向する該第一当接部の両側面を覆う緩衝部材と、
前記緩衝部材において前記第一ブラケット側から前記第二ブラケットの前記当接面に向かって突出する突出先端面によって構成されて、直交二方向で湾曲した表面形状とされることで該第一ブラケット側からの突出高さが中央部分から周縁部に向けて次第に小さくされた対向当接面と
を、有するブラケット付き防振装置。
【請求項2】
前記対向当接面が、前記直交二方向で円弧状に湾曲した表面形状とされている請求項1に記載のブラケット付き防振装置。
【請求項3】
前記第一ブラケットの前記第一当接部の前記両側面と、前記第二ブラケットの前記第二当接部の前記両側の当接面とが、何れも平坦面とされている請求項1又は2に記載のブラケット付き防振装置。
【請求項4】
前記防振装置本体において主たる荷重入力方向となる本体中心軸を挟んだ両側に位置して前記第一ブラケットの前記第一当接部の前記両側面が設けられている請求項1又は2に記載のブラケット付き防振装置。
【請求項5】
前記第二ブラケットが筒状内周面を有する収容部を有していると共に、前記第一ブラケットには該収容部に差し入れられる挿入部を有しており、
前記緩衝部材が該挿入部に対して外挿状態で装着されており、
該第一ブラケットの該挿入部によって前記第一当接部が構成されていると共に、該第二ブラケットの該収容部によって前記第二当接部が構成されている請求項1又は2に記載のブラケット付き防振装置。
【請求項6】
前記第一ブラケットが前記防振装置本体の前記本体ゴム弾性体よりも下方に配されて前記第一取付部材への荷重入力点が該本体ゴム弾性体の弾性中心よりも下方とされる吊り下げタイプの防振マウントを構成しており、
該第一ブラケットの前記第一当接部及び前記緩衝部材と前記第二ブラケットの前記第二当接部を含むストッパ機構が、該防振装置本体の該本体ゴム弾性体よりも下方に位置して設けられている請求項1又は2に記載のブラケット付き防振装置。
【請求項7】
前記防振装置本体において主たる荷重入力方向となる本体中心軸が上下方向に延びており、
該本体中心軸に直交する直交中心軸に対して平行な曲率中心をもって上下方向に広がる凸状の上下方向湾曲面と、
該本体中心軸と平行な平行中心軸に対して平行な曲率中心をもって周方向に広がる凸状の周方向湾曲面とによって、
前記緩衝部材の前記対向当接面における直交二方向で湾曲した表面形状が構成されている請求項1又は2に記載のブラケット付き防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などに用いられるブラケット付き防振装置に係り、防振連結対象部材へ取り付けるためのブラケットを利用して相対変位量を制限するストッパ機構が構成されたブラケット付き防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車用のエンジンマウント等に適用される防振装置として、振動伝達系を構成する各一方の防振連結対象部材に取り付けられる第一取付部材と第二取付部材を本体ゴム弾性体で連結したものがある。このような防振装置では、例えば特開2015-140875号公報(特許文献1)に示されているように、互いに防振連結される両部材の相対的な変位量を緩衝的に制限するストッパ機構が採用されることも少なくない。
【0003】
しかし、上記公報に記載の如き従来構造のストッパ機構では、ストッパ当接時に緩衝作用を発揮する緩衝ゴムが、本体ゴム弾性体と一体形成されて第一取付部材に固着されていた。そのために、緩衝ゴムに要求されるストッパ特性等が、本体ゴム弾性体の要求特性によって制限されると共に、複数の入力方向でストッパ機構を実現しようとすると第一取付部材が大型化して、本体ゴム弾性体の加硫成形型の大型化なども問題になり、対応が難しかった。
【0004】
そこで、本出願人は、特許第6783162号公報(特許文献2)において、第一取付部材及び第二取付部材にそれぞれ装着される第一ブラケット及び第二ブラケットによってストッパ機構を構成すると共に、ストッパ当接時に緩衝作用を発揮する緩衝部材を第一ブラケットに対して非接着で装着せしめた新規なストッパ機構を提案した。かかるストッパ機構によれば、本体ゴム弾性体を備えた防振装置本体の設計変更や大型化等を伴うことなく、防振装置本体とは別部材の第一ブラケットと第二ブラケットによって複数方向のストッパ機構を実現することが可能であり、また、緩衝部材を、本体ゴム弾性体の要求特性から独立してチューニング設計できると共に、防振装置本体や第一及び第二のブラケットとは別体で形成することで成形用型の大型化も回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-140875号公報
【特許文献2】特許第6783162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記の特許文献2で提案したブラケット付き防振装置について、本発明者が更に検討したところ、未だ解決すべき新たな課題を内在することがわかった。
【0007】
すなわち、特許文献2で提案したブラケット付き防振装置では、緩衝部材が防振装置本体の第一取付部材に固着されておらず、第一取付部材に装着される第一ブラケットに対して非接着で組み付けられることから、複数部材の寸法誤差や組付誤差の重畳に加えて緩衝部材そのものの非接着での組付け状態のバラツキが発生して、緩衝部材の当接面の位置ひいてはストッパクリアランスを安定して設定し難いという問題を内在していることがわかった。
【0008】
しかも、防振装置の車両への組付けに際しても、部品寸法誤差や組付け誤差が存在することから、緩衝部材のストッパ当接面が傾むいた状態で車両搭載されることもあり、それによって斜め方向にストッパ荷重が及ぼされると、非接着で装着された緩衝部材が歪つに変形して耐久性が低下したり、緩衝部材がブラケット上でズレ移動して異音が発生したりするおそれもあることがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0010】
第一の態様は、以下のとおりである。
本体ゴム弾性体によって弾性的に連結された第一取付部材と第二取付部材とを備えた防振装置本体と、
前記第一取付部材に装着されて振動伝達系を構成する一方の部材に取り付けられる第一ブラケットと、
前記第二取付部材に装着されて振動伝達系を構成する他方の部材に取り付けられる第二ブラケットと、
前記第一ブラケットに設けられた第一当接部と、
前記第二ブラケットに設けられて、前記第一当接部の両側に位置してそれぞれ外方に所定距離を隔てて対向する当接面を有する第二当接部と、
前記第一ブラケットの前記第一当接部に対して非接着状態で装着されて、前記第二当接部の前記両側の当接面に対向する該第一当接部の両側面を覆う緩衝部材と、
前記緩衝部材において前記第一ブラケット側から前記第二ブラケットの前記当接面に向かって突出する突出先端面によって構成されて、直交二方向で湾曲した表面形状とされることで該第一ブラケット側からの突出高さが中央部分から周縁部に向けて次第に小さくされた対向当接面とを、有するブラケット付き防振装置。
【0011】
本態様に係るブラケット付き防振装置では、ストッパ作用時に第二ブラケットの当接面に当接せしめられる緩衝部材の対向当接面を、従来のような単純な平面ではなく、中央部分から周縁に向かって突出高さが小さくなる直交二軸での湾曲面形状とした。これにより、緩衝部材が装着される第一ブラケットが第二ブラケットに対して相対的に複数方向で傾むいても、ストッパクリアランスの大きな変化が防止されると共に、緩衝部材の対向当接面に対する当接力の入力方向の傾きが過度に大きく変化することも回避される。その結果、本体ゴム弾性体とは別体の緩衝部材を防振装置本体とは別部材の第一ブラケットに対して非接着で装着したストッパ機構であっても、目的とするストッパ性能を良好に且つ安定して得ることが可能になる。
【0012】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係るブラケット付き防振装置であって、前記対向当接面が、前記直交二方向で円弧状に湾曲した表面形状とされているものである。
【0013】
本態様に係るブラケット付き防振装置では、第一ブラケットと第二ブラケットの相対的な傾きに起因して、これら両ブラケットの相対的な対向方向等が異なった場合でも、ストッパクリアランスの大きさの変化や当接力の入力方向の傾きの変化をより効果的に抑えることが可能になる。
【0014】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係るブラケット付き防振装置であって、前記第一ブラケットの前記第一当接部の前記両側面と、前記第二ブラケットの前記第二当接部の前記両側の当接面とが、何れも平坦面とされているものである。
【0015】
本態様に係るブラケット付き防振装置では、第一当接部の前記両側面や第二当接部の前記両側の当接面が平坦面とされても、緩衝部材の対向当接面が湾曲形状とされていることによってストッパクリアランスの大きさの変化や当接力の入力方向の傾きの変化を抑えつつ、第一ブラケット及び第二ブラケットの形状及び構造の簡略化が図られ得る。
【0016】
本発明の第四の態様は、前記第一~三の何れかの態様に係るブラケット付き防振装置であって、前記防振装置本体において主たる荷重入力方向となる本体中心軸を挟んだ両側に位置して前記第一ブラケットの前記第一当接部の前記両側面が設けられているものである。
【0017】
本態様に係るブラケット付き防振装置では、主たる荷重入力方向となる本体中心軸に対して直交する両方向でのストッパ機能を実現することができるのであり、例えば自動車のエンジンマウントにおいて、主たる支持荷重の入力方向が車両上下方向とされる装着状況下で加減速に伴う荷重入力方向となる車両前後方向におけるストッパ機能を第一当接部によって実現することが可能になる。
【0018】
本発明の第五の態様は、前記第一~四の何れかの態様に係るブラケット付き防振装置であって、前記第二ブラケットが筒状内周面を有する収容部を有していると共に、前記第一ブラケットには該収容部に差し入れられる挿入部を有しており、前記緩衝部材が該挿入部に対して外挿状態で装着されており、該第一ブラケットの該挿入部によって前記第一当接部が構成されていると共に、該第二ブラケットの該収容部によって前記第二当接部が構成されているものである。
【0019】
本態様に係るブラケット付き防振装置では、緩衝部材が第一ブラケットに対して外挿状態で装着されることで、緩衝部材を第一ブラケットに対する非接着状態下で脱落等を防止してより確実に装着することができる。また、挿入部と収容部を有するそれぞれ特定構造の第一ブラケットと第二ブラケットを採用することで、各ブラケットの強度を確保しつつ、第一当接部の両側において緩衝部材を介しての第二当接部との当接作用によるストッパ機構をコンパクトに実現することも可能になる。
【0020】
本発明の第六の態様は、前記第一~五の何れかの態様に係るブラケット付き防振装置であって、前記第一ブラケットが前記防振装置本体の前記本体ゴム弾性体よりも下方に配されて前記第一取付部材への荷重入力点が該本体ゴム弾性体の弾性中心よりも下方とされる吊り下げタイプの防振マウントを構成しており、該第一ブラケットの前記第一当接部及び前記緩衝部材と前記第二ブラケットの前記第二当接部を含むストッパ機構が、該防振装置本体の該本体ゴム弾性体よりも下方に位置して設けられているものである。
【0021】
本態様に係るブラケット付き防振装置では、吊り下げタイプの防振マウントにおいて、ストッパ機構を本体ゴム弾性体の弾性中心よりも下方に位置させることで、かかるトッパ機構を荷重入力点に近い位置へ設定することが可能になる。それ故、ストッパ機構の当接反力の作用等による他部材への悪影響を軽減できると共に、振動伝達系を構成する部材間の相対的変位量を荷重入力点に近い位置で効率的に制限することが可能になる。
【0022】
本発明の第七の態様は、前記第一~六の何れかの態様に係るブラケット付き防振装置であって、前記防振装置本体において主たる荷重入力方向となる本体中心軸が上下方向に延びており、該本体中心軸に直交する直交中心軸に対して平行な曲率中心をもって上下方向に広がる凸状の上下方向湾曲面と、該本体中心軸と平行な平行中心軸に対して平行な曲率中心をもって周方向に広がる凸状の周方向湾曲面とによって、前記緩衝部材の前記対向当接面における直交二方向で湾曲した表面形状が構成されているものである。
【0023】
本態様に係るブラケット付き防振装置では、主たる荷重入力方向に対して傾動するこじり方向と、主たる荷重入力方向に対して回動するねじり方向との何れの方向においても、第一ブラケットと第二ブラケットの相対的な傾きに起因するストッパクリアランスの変化や緩衝部材の対向当接面に対する当接力の入力方向の変化が、有効に抑えられることとなる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るブラケット付き防振装置では、緩衝部材の対向当接面を、従来のような単純な平面ではなく、中央部分から周縁に向かって突出高さが小さくなる直交二軸での湾曲面形状としたことにより、車両装着状態において第一ブラケットが第二ブラケットに対して相対的に傾むいていても、ストッパクリアランスやストッパ荷重入力方向の変化が抑えられる。それ故、本体ゴム弾性体とは別体の緩衝部材を防振装置本体とは別部材の第一ブラケットに対して非接着で装着したストッパ機構であっても、目的とするストッパ性能を良好に且つ安定して得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係るブラケット付き防振装置の一実施形態としての自動車用のエンジンマウントを示す縦断面図であって、
図3におけるI-I断面図
【
図2】
図1に示されたエンジンマウントの別の縦断面図であって、
図3におけるII-II断面図
【
図3】
図1におけるIII-III断面に相当する横断面図
【
図4】
図1に示されたエンジンマウントを構成する緩衝部材を単品で示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1~3には、本発明に係るブラケット付き防振装置の一実施形態としての自動車用エンジンマウント10が示されている。かかるエンジンマウント10は、自動車において振動伝達系を構成するパワーユニットと車両ボデーとの間に装着されて、一方の防振連結対象部材であるパワーユニットを他方の防振連結対象部材である車両ボデーに対して防振支持するものである。なお、以下の説明中での上下方向は、原則として、エンジンマウント10が装着される自動車における上下方向をいうものとする。
【0028】
より詳細には、エンジンマウント10は、第一取付部材12と第二取付部材14とが本体ゴム弾性体16で弾性的に連結された防振装置本体20を備えている。また、第一取付部材12には第一ブラケット22が装着されている一方、第二取付部材14には第二ブラケット24が装着されている。そして、第一ブラケット22がパワーユニットに取り付けられることで、第一取付部材12がパワーユニット30へ固定的に取り付けられる一方、第二ブラケット24が車両ボデー32に取り付けられることで、第二取付部材14が車両ボデーへ固定的に取り付けられるようになっている。
【0029】
防振装置本体20を構成する本体ゴム弾性体16は、
図1,2に示されているように略円錐台形状とされている。本体ゴム弾性体16の大径側の外周面は略円筒形状とされていると共に、本体ゴム弾性体16の大径側の下端面の内周側部分は抉られたように下方に向かって凹状に開口しており、肉抜凹所36が形成されている。
【0030】
防振装置本体20を構成する第一取付部材12は、金属等の剛性部材によって構成されている。かかる第一取付部材12は、上下方向にストレートに延びる太軸のロッド状部38を有していると共に、ロッド状部38の上端部分には傘状に広がる大径部40が形成されている。
【0031】
そして、第一取付部材12は、ロッド状部38が本体ゴム弾性体16の中心軸上を上下に貫通して延びると共に、大径部40が本体ゴム弾性体16の小径側の軸方向上端面に重ね合わされている。第一取付部材12は、これらロッド状部38の外周面及び大径部40の下端面と外周面において、本体ゴム弾性体16へ加硫接着されている。
【0032】
なお、ロッド状部38の下側部分は、本体ゴム弾性体16から下方へ突出して延び出している。この延び出したロッド状部38の下側部分には、下方に開口して軸方向に延びるボルト穴42が設けられている。また、本実施形態ではロッド状部38における軸直角方向の横断面形状が、直交2方向で外径が相違する角丸の略矩形状乃至は略オーバル形状とされており、
図1の左右方向で外径が最大となり且つ
図2の左右方向で外径が最小となっている。
【0033】
防振装置本体20を構成する第二取付部材14は、金属等の剛性部材によって構成されており、上下方向にストレートに延びる薄肉円筒形状の筒状部44を有している。かかる筒状部44の上端開口部には、径方向外方に広がる外フランジ状部46が形成されている。また、筒状部44の下端開口部には、径方向内方に広がる内フランジ状部48が形成されている。
【0034】
そして、筒状部44が、本体ゴム弾性体16の大径側の外周面に対して外挿状態で重ね合わされて加硫接着されている。また、外フランジ状部46は、本体ゴム弾性体16の大径側の筒状外周面の上端部から外周側へ突出している。内フランジ状部48は、本体ゴム弾性体16の大径側の端面に対して重ね合わされて加硫接着されている。
【0035】
なお、本実施形態では、第二取付部材14の筒状部44が略円筒形状とされている一方、第一取付部材12のロッド状部38の横断面形状が前述の如き略矩形状等とされていることにより、第一取付部材12と第二取付部材14との径方向対向面間距離ひいては本体ゴム弾性体16の径方向厚さ寸法が、
図1中の左右方向と
図2中の左右方向との直交2方向で相違されている。そして、例えば
図1中の左右方向が車両左右方向で、
図2中の左右方向が車両前後方向とされることで、車両の走行安定性と乗り心地の両立が図られるようになっている。
【0036】
加えて、本実施形態では、本体ゴム弾性体16の肉抜凹所36の大きさも
図1中の左右方向と
図2中の左右方向との直交2方向で相互に異ならされている。このような直交2方向での本体ゴム弾性体16等の形状の相違によって、防振装置本体20における軸直角2方向でのばね特性がチューニングされており、自動車の前後方向と左右方向で互いに異なる弾性支持特性が発揮されるようになっている。
【0037】
かくの如き防振装置本体20は、第一取付部材12が第一ブラケット22を介してパワーユニット30へ固定的に取り付けられると共に、第二取付部材14が第二ブラケット24を介して車両ボデー32へ固定的に取り付けられる。かかる取付状態下、本体ゴム弾性体16は、主たる入力荷重として車両上下方向に入力されるパワーユニット30の分担支持荷重が弾性主軸となる中心軸方向に及ぼされるように、
図1,2中の上下方向が略車両上下方向となる状態で装着されることとなる。
【0038】
第一取付部材12へ装着される第一ブラケット22は、例えば金属の型成形品などからなる剛性のブロック状の部材であって、本実施形態ではパワーユニット30への固定部50から側方へ突出して略水平方向に延びる挿入部52を備えている。
【0039】
かかる挿入部52は、
図1に示されているように略矩形の一定断面形状で延びており、
図2に示されているように防振装置本体20の下方に配されて、本体ゴム弾性体16から下方に離隔した位置において、防振装置本体20の側方から軸直角方向に延びるように配されている。そして、第一ブラケット22は、挿入部52の平坦な上面において、本体ゴム弾性体16から下方に突出した第一取付部材12の下端面に重ね合わされて固着されている。
【0040】
本実施形態では、第一ブラケット22の挿入部52の略中央に位置して、下方に開口する有底の装着穴54が形成されていると共に、この装着穴54の底壁中央に小径のボルト挿通孔56が上下に貫通して形成されている。そして、固定用ボルト58の脚部が、下方からボルト挿通孔56を通じて、第一取付部材12のボルト穴42に螺着されることで、第一ブラケット22が第一取付部材12へボルト固定されている。なお、固定用ボルト58の頭部は、装着穴54に収容されることで、第一ブラケット22の外方への突出が回避されている。
【0041】
第二取付部材14へ装着される第二ブラケット24は、例えば複数の金属のプレス成形品の溶着構造体などからなる剛性の部材であって、本実施形態では車両ボデー32へのボルト固定部を有する底板状部60を有している。底板状部60には、下方に開口する矩形溝形のカバー状部62が重ね合わされており、カバー状部62の両側壁部の下端面が底板状部60の上面に当接状態で溶着されている。これにより、カバー状部62の下方への開口が底板状部60で覆われており、略矩形の筒形状をもって略水平方向に延びる収容部64が形成されている。
【0042】
また、収容部64の上壁部を構成するカバー状部62の上底板部66には、略円筒形状の嵌合筒部68が中心軸を上下に向けて重ね合わされており、嵌合筒部68の下端の開口端面がカバー状部62の上底板部66の上面に当接状態で溶着されている。そして、この嵌合筒部68に対して防振装置本体20の第二取付部材14が圧入固定されることで、第二取付部材14に対して第二ブラケット24が固定的に取り付けられている。なお、かかる取付状態下、防振装置本体20の第二取付部材14の内フランジ状部48は、第二ブラケット24のカバー状部62の上底板部66の上面に略重ね合わされていると共に、第二取付部材14の外フランジ状部46が、第二ブラケット24の嵌合筒部68の上端面に略重ね合わされている。
【0043】
なお、第二ブラケット24のカバー状部62には、上底板部66の中央部分を上下に貫通して開口する透孔70が形成されている。そして、この透孔70を通じて、防振装置本体20における第一取付部材12のロッド状部38の下端部分が、上方から第二ブラケット24の収容部64内へ差し入れられている。
【0044】
かかる透孔70は、ロッド状部38の外周面よりも一回り大きくされており、ロッド状部38と透孔70との間には軸直角方向に適切な隙間が設定されている。特に本実施形態では、透孔70が、角丸の略矩形状とされたロッド状部38の外周面と略相似形状とされており、透孔70において短軸方向(
図2中の左右方向及び
図3中の上下方向)で対向位置して周方向に略直線状に延びる一対の対向辺部には、上方に突出する当接片72,72が、カバー状部62に一体形成されている。
【0045】
かかる当接片72,72は、防振装置本体20の肉抜凹所36に入り込むように突出しており、
図2中の左右方向において、第一取付部材12のロッド状部38の外周面に対して所定距離を隔てて対向位置している。
【0046】
このようにして第一取付部材12に装着された第一ブラケット22と第二取付部材14に装着された第二ブラケット24は、第一ブラケット22の挿入部52の外周面が、第二ブラケット24の収容部64の内周面に対して、全周に亘って所定距離を隔てて対向配置されている。そして、車両ボデー32とパワーユニット30との間への荷重入力に際して、防振装置本体20の本体ゴム弾性体16の弾性変形に伴って挿入部52が収容部64に対して相対移動することで、挿入部52の外周面と収容部64の内周面との対向面間距離が変化することとなる。
【0047】
また、挿入部52には、外周面を覆う緩衝部材80が装着されており、かかる緩衝部材80を介して、挿入部52の外周面と収容部64の内周面とが対向面間において相互に当接することによって、第一ブラケット22と第二ブラケット24ひいては第一取付部材12と第二取付部材14の相対変位量が緩衝的に制限される結果、車両ボデー32とパワーユニット30との相対的変位量が緩衝的に制限されるようになっている。
【0048】
ここにおいて、挿入部52に装着される緩衝部材80は、ゴム弾性体等の弾性材によって形成されており、
図4に単品状態で示されているように、挿入部52の外周面に対応した内周面をもって挿入部52の延び出し方向に延びる略矩形の筒形状を有している。緩衝部材80の底壁部の略中央には、固定用ボルト58にアクセスするためのサービスホール82が形成されている一方、緩衝部材80の上壁部の略中央には、第一取付部材12のロッド状部38の挿通用孔84が形成されている。
【0049】
かかる緩衝部材80は、車両への装着状態下での振動入力に際して、第一ブラケット22の挿入部52と一体的に第二ブラケット24に対して相対移動するものであり、第一ブラケット22に対して組み付けられるものであるが、加硫接着などの特別な接触処理による固着状態とされておらず、挿入部52への外挿により、例えば第一取付部材12のロッド状部38と挿通用孔84との位置決め作用などに基づいて位置合わせされて抜け出し等の脱落不能に装着されている。尤も、製造工程での作業上の理由などから、緩衝部材80を第一ブラケット22に対して部分的に接着等で仮固定等しても良い。
【0050】
また、緩衝部材80の上壁部には、挿通用孔84の内周縁部から上方に向かって突出する一対の竪壁状の前後緩衝部86,86が形成されている。
図2に示されているように、これら前後緩衝部86,86は、第一取付部材12のロッド状部38の外周面に重ね合わされており、一対の当接片72,72に対して離隔して対向している。これにより、
図2中の左右方向(例えば車両前後方向)で防振装置本体20へ大きな荷重が入力された際、ロッド状部38と当接片72,72とが前後緩衝部86,86を介して当接することで、第一取付部材12と第二取付部材14との軸直角方向での相対的な変位量を緩衝的に制限する軸直角方向のストッパ機構が構成されている。
【0051】
更にまた、緩衝部材80の上壁部には、長さ方向(
図2中の左右方向)の両端部分において厚さ寸法が大きくされたリバウンド緩衝部88が形成されている。かかるリバウンド緩衝部88は、挿入部52の上面に重ね合わされて、第二ブラケット24のカバー状部62の上底板部66に対して上下方向で対向している。なお、
図1,2は、エンジンマウント10を車両装着前の状態で示すものであり、車両への装着状態ではパワーユニットの分担支持荷重が第一取付部材12と第二取付部材14との間に上下方向へ及ぼされることで、第一ブラケット22が第二ブラケット24に対して下方へ所定量だけ相対移動し、挿入部52が収容部64内の略中央に位置することとなる。
【0052】
それ故、車両装着状態では、リバウンド緩衝部88は、第二ブラケット24のカバー状部62の上底板部66に対して、上下方向で離れて対向せしめられる。これにより、防振装置本体20へ大きな荷重が入力されて第一取付部材12が第二取付部材14に対して相対的に上方へ大きく変位せしめられた際、挿入部52と収容部64の内面(上底板部66の下面)とがリバウンド緩衝部88を介して当接することで、第一取付部材12と第二取付部材14との相対的な変位量を緩衝的に制限するリバウンド方向のストッパ機構が構成されている。
【0053】
さらに、緩衝部材80の下壁部には、サービスホール82の外周部分において厚さ寸法が大きくされたバウンド緩衝部90が形成されている。かかるバウンド緩衝部90は、挿入部52の下面に重ね合わされており、車両装着状態において、かかるバウンド緩衝部90が、第二ブラケット24の底板状部60に対して、上下方向で離れて対向せしめられることとなる。
【0054】
これにより、防振装置本体20へ大きな荷重が入力されて第一取付部材12が第二取付部材14に対して相対的に下方へ大きく変位せしめられた際、挿入部52と収容部64の内面(底板状部60の上面)とがバウンド緩衝部90を介して当接することで、第一取付部材12と第二取付部材14との相対的な変位量を緩衝的に制限するバウンド方向のストッパ機構が構成されている。
【0055】
一方、緩衝部材80の両側の側壁部は、全体的に厚さ寸法が大きくされた側方緩衝部92,92とされており、かかる側方緩衝部92,92によって挿入部52の両側の表面を略全体に亘って覆うように重ね合わされている。そして、かかる側方緩衝部92,92が、第二ブラケット24のカバー状部62の両側壁部に対して離れて対向せしめられている。
【0056】
これにより、防振装置本体20へ大きな荷重が入力されて第一取付部材12が第二取付部材14に対して相対的に側方へ大きく変位せしめられた際、挿入部52と収容部64の両側内面(カバー状部62の両側壁部)とが側方緩衝部92,92を介して当接することで、第一取付部材12と第二取付部材14との相対的な変位量を緩衝的に制限する側方のストッパ機構が構成されている。
【0057】
なお、このことから明らかなように、本実施形態では、第一ブラケット22の挿入部52によって第一当接部が構成されていると共に、第二ブラケットの収容部64によって第二当接部が構成されている。また、収容部64の両側内面によって、挿入部52の両側面に対向する当接面94,94が構成されている。
【0058】
ここにおいて、側方緩衝部92の突出先端面である対向当接面98は、突出方向に対して直交する平面に対して湾曲した湾曲表面形状を有している。即ち、側方緩衝部92の突出先端面に対向して当接する第二ブラケット24の当接面94は、側方緩衝部92の突出方向である対向方向に対して略直交する平坦面形状とされている。一方、かかる第二ブラケット24の当接面94に対向する側方緩衝部92の突出先端面(対向当接面)98は、突出方向の中央から外周に向かって次第に突出高さが小さくされており、当接面94との対向方向での離隔距離が中央から外周に向かって次第に大きくされている。
【0059】
特に本実施形態では、側方緩衝部92の対向当接面98が、側方緩衝部92の突出方向に対して直交する平面上における直交2方向となる
図1中の上下方向(挿入部52の高さ方向)と
図3中の上下方向(挿入部52の延びだし方向)とにおいて、それぞれ所定の曲率半径が設定されることで、全体として略山形とされて周縁部から中央に向かって次第に突出高さが大きくなる凸状の湾曲表面形状とされている。即ち、かかる対向当接面98は、略中央の頂点から何れの外周方向に向かっても次第に滑らかに突出高さが小さくなるように全体が湾曲した表面形状とされている。
【0060】
なお、本実施形態の側方緩衝部92の対向当接面98では、
図1中の上下方向に延びる上下方向の曲率半径Raが、
図2中の上下方向に延びる水平方向の曲率半径Rbに比して小さくされている。特に
図1に示された上下方向の曲率半径Raは、防振装置本体20の弾性主軸であるマウント中心軸から側方緩衝部92の頂点までの距離rに比して小さくなるように、Ra<rとされている。一方、
図3に示された水平方向の曲率半径Rbは、距離rに比して大きくなるように、Rb>rとされている。
【0061】
このように本実施形態のエンジンマウント10では、側方緩衝部92の対向当接面98が、略中央部分を頂点として外周側の何れの方向に向けても次第に突出高さが小さくなる湾曲表面形状とされていることにより、車両装着状態下での側方ストッパ機構における機能の安定化や耐久性の向上などが達成される。
【0062】
すなわち、上述の如きエンジンマウント10では、バウンド方向やリバンウド方向のストッパ機構に比して、側方のストッパ機構において精度の高い緩衝機能を要求されることが多い。蓋し、バウンド方向やリバウンド方向のストッパ当接荷重が段差乗越えなどに伴う一時的且つ衝撃的な大荷重であることから緩衝部88,90も全体が瞬間的に強く圧縮変形されるに過ぎず荷重入力方向の操縦安定性への影響も小さいが、側方のストッパ当接荷重は緊急回避などの急ハンドル操作などに伴うものであって、操縦安定性への影響が比較的に大きいことが多い。
【0063】
しかし、本実施形態のように緩衝部材80を第一ブラケット22の挿入部52へ非接着で外挿装着したストッパ機構では、側方のストッパ機構において側方緩衝部92の対向当接面98と第二ブラケット24の当接面94との打ち当り部分において安定した当接状態を実現することが難しかった。
【0064】
すなわち、エンジンマウント10を構成する各部材の寸法誤差や、各部材の組付誤差、更にエンジンマウント10が装着される自動車の各部材の寸法誤差及び組付誤差による第一ブラケット22と第二ブラケット24の固定位置のバラツキなどによって、かかる側方のストッパ機構における側方緩衝部92の対向当接面98と第二ブラケット24の当接面94との間には、相対的な傾きが発生しやすい。このような傾きが発生した場合に、例えば従来構造のように側方緩衝部92が単純な矩形ブロック形状とされて対向当接面98が平坦面とされていると、対向当接面98の中央部分では第二ブラケット24の当接面94との離隔距離に大きな変化が無かったとしても、対向当接面98の端縁部では一方が大きく離れ且つ他方が大きく接近してしまう。その結果、側方緩衝部92が第二ブラケット24へ当接するまでのストッパストローク乃至はストッパクリアランスが大きく変化すると共に、当接位置や当接の方向までも大きく異なってしまうこととなり、初期のストッパ機構が安定して発揮され難くなってしまうことが避けられない。
【0065】
しかも、側方緩衝部92の第二ブラケット24への当接位置や当接の方向が大きく変わると、当接荷重が緩衝部材80へ異方向から及ぼされてしまい、挿入部52に対して非接着の緩衝部材80が挿入部52上で移動してしまうことで、側方緩衝部92を含む緩衝部材80によるストッパ機能が全体的に大きく変化してしまい、初期のストッパ機能が損なわれてしまリスクが大きかったのである。
【0066】
これに対して、本実施形態の緩衝部材80では、側方緩衝部92の対向当接面98が略中央部分を頂点として外周側の何れの方向に向けても次第に突出高さが小さくなる湾曲表面形状とされていることから、上述の如き寸法誤差や組付誤差などによって第一ブラケット22と第二ブラケット24とが相対的に傾動した場合であっても、略中央の頂点付近が第二ブラケット24の当接面94と最も接近して対向位置する状態が維持されることとなる。その結果、ストッパクリアランスが安定して維持されると共に、当接面94への当接によるストッパ荷重の入力方向も対向当接面98に対して略直交する方向に安定して維持され得るのである。
【0067】
それ故、目的とするストッパ機能が安定して発揮されるのであり、緩衝部材80が挿入部52に対して非接着であっても挿入部52上での意図しない移動等が抑えられることとなり、それによって目的とする緩衝性能ひいてはストッパ性能を、優れた耐久性をもって安定して享受することが可能になるのである。
【0068】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明は上述の実施形態等における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでない。例えば、前記実施形態では緩衝部材80の側方緩衝部92のみについて湾曲面形状の対向当接面98を設定したが、他の緩衝部に対して湾曲面形状の当接面を設定しても良い。
【0069】
また、対向当接面98に設定される曲率半径は限定されるものでなく、第一ブラケット22と第二ブラケット24において想定されるずれ中心の位置を設計データや過去データなどから求めて、かかるずれ中心からの距離を曲率半径として設定することも可能である。そして、対向当接面98において第二ブラケット24の当接面94に最も接近して対向する頂点位置は、対向当接面98の中央に設定する必要もなく、上述のように想定されるずれ中心等を考慮して対向当接面98の周辺近くに頂点位置を設定しても良い。
【0070】
また、前記実施形態では、緩衝部材80の側方緩衝部92の対向当接面98において複数の小さな凹部が設けられることで、第二ブラケット24の当接面94への当接初期における衝撃や打音の軽減等が図られていたが、かくの如き凹部は本発明において必須でない。また、かかる凹部に代えて又は加えて小さな突起などを設けることも可能である。
【0071】
また、前記実施形態では、第一ブラケット22が本体ゴム弾性体16よりも下方に配されて第一取付部材12への荷重入力点が本体ゴム弾性体16の弾性中心よりも下方とされた吊り下げタイプの防振マウントへ本発明を適用した一態様を例示したが、それに限定されるものでなく、例えば第一取付部材12の上方に第一ブラケットが配されることで、第一取付部材12に対してパワーユニットが載荷されて上方から荷重入力される載荷タイプの防振マウントにも本発明は同様に適用可能である。
【0072】
また、本体ゴム弾性体を含む防振装置本体の具体的構造や、第一及び第二のブラケットの具体的形状及び構造について、前記実施形態はあくまでも例示であって、本発明の適用範囲が制限されるものでない。
【0073】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0074】
10 エンジンマウント
12 第一取付部材
14 第二取付部材
16 本体ゴム弾性体
20 防振装置本体
22 第一ブラケット
24 第二ブラケット
30 パワーユニット
32 車両ボデー
36 肉抜凹所
38 ロッド状部
40 大径部
42 ボルト穴
44 筒状部
46 外フランジ状部
48 内フランジ状部
50 固定部
52 挿入部
54 装着穴
56 ボルト挿通孔
58 固定用ボルト
60 底板状部
62 カバー状部
64 収容部
66 上底板部
68 嵌合筒部
70 透孔
72 当接片
80 緩衝部材
82 サービスホール
84 挿通用孔
86 前後緩衝部
88 リバウンド緩衝部
90 バウンド緩衝部
92 側方緩衝部
94 当接面
98 対向当接面