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特開2024-139931自動車用サイレンサーの成形装置及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139931
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】自動車用サイレンサーの成形装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/20 20060101AFI20241003BHJP
   B29C 43/32 20060101ALI20241003BHJP
   B29C 43/10 20060101ALI20241003BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20241003BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20241003BHJP
   G10K 11/168 20060101ALI20241003BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B29C43/20
B29C43/32
B29C43/10
B32B5/24
B32B7/02
G10K11/168
G10K11/16 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050882
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】509069892
【氏名又は名称】株式会社HOWA
(74)【代理人】
【識別番号】100117503
【弁理士】
【氏名又は名称】間瀬 ▲けい▼一郎
(72)【発明者】
【氏名】富川 正隆
(72)【発明者】
【氏名】折野 明宏
【テーマコード(参考)】
4F100
4F204
5D061
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100BA03
4F100DG01A
4F100DJ00A
4F100GB32
4F100JB16B
4F100JH01B
4F100JK12C
4F204AA29
4F204AC03
4F204AD16
4F204AE06
4F204AG03
4F204AG20
4F204AH17
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB11
4F204FN11
4F204FN15
4F204FQ02
5D061AA07
5D061AA23
5D061BB21
5D061DD06
5D061DD11
(57)【要約】
【課題】本発明は、繊維空隙構造のソフト層及び偏肉仕様からなるハード層を有する積層構造体を、単一の成形処理のみの成形でもって製造するに適した自動車用サイレンサーの成型装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】金型の上型50の中空部は、両隔壁50b、50cにより、左側、中側及び右側の各中空部Ha、Hb及びHcに区画されている。上型50の下壁53の左側、中側及び右側の各下壁部53a、53b及び53cには、それぞれ、各複数の貫通孔部i、j及びkが形成されている。3つの圧空カプラN1、N2及びN3が、上型50の周壁52の各中空部Ha、Hb及びHcに対応する各部位に嵌着されて、圧空を各中空部Ha、Hb及びHc並びに各複数の貫通孔部i,j及びkを通して金型Mの下型に向けて流出する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空隙を分散状に形成してなる繊維空隙構造からなるソフト層と、熱可塑性樹脂材料からなる遮音シートと、遮音材料でもって薄肉部及び厚肉部を有するように形成されて前記遮音シートを介し前記ソフト層に対向するように前記遮音シートに積層してなるハード層とを備える自動車用サイレンサーを成形するための成形装置において、
固定型及び当該固定型に係合可能な可動型を備える金型と、複数のカップラとを備えており、
前記金型において、
前記固定型は、前記サイレンサーの前記ハード層の前記ソフト層とは反対側の面と同様の面形状を有するように形成してなる成形面を設けてなり、
当該固定型の前記成形面は、前記ハード層の前記薄肉部及び前記厚肉部にそれぞれ対応する薄肉成形面部及び厚肉成形面部でもって形成されており、
前記可動型は、
前記固定型の前記成形面に対向可能に形成してなる成形面を有する成形壁、当該成形壁に前記固定型とは反対側から対向する対向壁及び当該対向壁と前記成形壁との間に介在する周壁でもって形成してなる中空型と、
当該中空型の内部を、前記固定型の前記成形面のうち前記薄肉成形面部及び前記厚肉成形面部にそれぞれ対応する薄肉成形中空部及び厚肉成形中空部に区画するように、前記中空型の内部に設けてなる複数の隔壁とを具備してなり、
前記可動型の前記成形壁は、前記薄肉成形中空部に対応する薄肉成形壁部にて、複数の薄肉成形貫通孔部を分散状に形成するとともに、前記厚肉成形中空部に対応する厚肉成形壁部にて、複数の厚肉成形貫通孔部を分散状に形成してなり、
前記薄肉成形貫通孔部の数及び開口径の少なくとも一方は。前記ハード層の前記薄肉部の厚さ及び面積に応じて設定されているとともに、前記厚肉成形貫通孔部の数及び開口径の少なくとも一方は、前記ハード層の前記厚肉部の厚さ及び面積に応じて設定されており、
前記複数のカップラは、それぞれ、前記薄肉成形中空部及び前記厚肉成形中空部のいずれかの中空部内に開口するように、前記中空型の前記周壁及び前記対向壁の双方からなる双方壁のうち前記薄肉成形中空部及び前記厚肉成形中空部にそれぞれ対応する各双方壁部に嵌着されていることを特徴とする自動車用サイレンサーの成形装置。
【請求項2】
前記金型は、前記可動型の前記中空型の周壁から前記固定型の前記成形面の外周部に向けて延出する環状の仕切り壁を設けてなり、
前記可動型が前記仕切り壁にて前記固定型の前記成形面の外周部に係合したとき前記中空型の前記成形面と前記固定型の前記成形面との間に形成される間隔であって前記サイレンサーの厚さに相当する間隔に等しい長さでもって、前記仕切り壁の延出長さが設定されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用サイレンサーの成形装置。
【請求項3】
自動車に搭載するに適したサイレンサーを成形装置でもって製造するようにした自動車用サイレンサーの製造方法において、
前記成形装置として、請求項1に記載の自動車用サイレンサーの成形装置を用いて、
前記サイレンサーの製造にあたり、前記サイレンサーの前記ソフト層の形成材料である前記繊維空隙構造を有するソフト層形成部材、前記遮音シートの形成材料である遮音シート形成部材及び前記ハード層の形成材料であるハード層形成部材を準備し、
前記成形装置の前記金型の開型状態において、前記ハード層形成部材を前記固定型の前記成形面上に投入し、前記遮音シート形成部材を前記ハード層形成部材上に投入し、かつ、前記ソフト層形成部材を前記遮音シート形成部材上に投入する投入工程と、
前記ソフト層形成部材、前記遮音シート形成部材及び前記ハード層形成部材からなる3層積層形成部材をその厚さにて前記サイレンサーの厚さになるように前記可動型でもって前記固定型の前記成形面上に圧縮した状態にて、前記3層積層形成部材を加熱しながら圧縮空気流を前記複数のカップラの各々により前記薄肉成形中空部及び前記厚肉成形中空部、前記各複数の薄肉成形貫通孔部及び厚肉成形貫通孔部及び前記ソフト層形成部材の前記繊維空隙構造を通して、前記遮音シート形成部材を介し前記ハード層形成部材のうちの前記中空型の成形面の前記薄肉成形面部及び前記厚肉成形面部にそれぞれ対応する薄肉形成部材部及び厚肉形成部材部に向けて流出する圧縮・加熱・流出工程とを備えて、
前記圧縮空気流のうち前記複数の薄肉成形貫通孔部を通る圧縮空気流により、その圧力でもって、前記薄肉形成部材部を、前記ハード層の前記薄肉部となるように圧縮し、かつ、前記圧縮空気流のうち前記複数の厚肉成形貫通孔部を通る圧縮空気流により、その圧力でもって、前記厚肉形成部材部を、前記ハード層の前記厚肉部となるように圧縮するように成形して、前記サイレンサーを製造するようにしたことを特徴とする自動車用サイレンサーの製造方法。
【請求項4】
前記金型は、前記可動型の前記中空型の前記周壁から前記固定型の前記成形面の外周部に向けて延出する環状の仕切り壁を設けてなり、
前記可動型が前記仕切り壁にて前記固定型の前記成形面の外周部に係合したとき前記中空型の前記成形面と前記固定型の前記成形面との間に形成される間隔であって前記サイレンサーの厚さに相当する間隔に等しい長さでもって、前記仕切り壁の延出長さが設定されており、
前記サイレンサーの製造にあたり、前記圧縮・加熱・流出工程において、前記3層積層形成部材を前記中空型でもってその成形面により前記固定型の前記成形面上に圧縮する際、前記中空型が前記仕切り壁にて前記固定型の前記成形面の外周部に係合するまでなされることを特徴とする請求項3に記載の自動車用サイレンサーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用サイレンサーの成形装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用ダッシュサイレンサーのノイズや振動に対する性能(所謂、NV性能)の向上に対する要請が高まっている。これに伴い、近年では、ダッシュサイレンサーとしては、例えば、異なる厚さを有する仕様、つまり、偏肉仕様からなるハード層を備えたダッシュサイレンサーの提供が望まれている。
【0003】
当該ダッシュサイレンサーが、例えば、偏肉仕様からなるハード層、遮音シート及びソフト層の3層積層構造体からなる場合に、当該ダッシュサイレンサーの製造は、通常、次のように、第1及び第2の工程を経てなされる。
【0004】
第1工程においては、ハード層の形成材料を金型(以下、第1金型という)の下型の型面上に載置するとともに、遮音シートの形成材料を、上記ハード層の形成材料上に載置する。ここで、第1金型を閉じたとき、第1金型の両型面の間において、ダッシュサイレンサーの遮音シート及びハード層からなる2層積層形成材料の外形形状に対する対応形状を有するキャビティを形成するように、第1金型の上下両型の型面の形状が形成されている。
【0005】
上述のように2層積層形成材料を第1金型の下型上に載置した後、第1金型を閉じて、遮音シートの形成材料をハード層の形成材料に加熱圧着する。このことは、2層積層形成材料が、その外形形状にて、ダッシュサイレンサーのうちの遮音シートと偏肉仕様のハード層との2層積層体の外形形状となるように成形されることを意味する。
【0006】
然る後、第2工程において、第2金型の下型の型面上に、上述した2層積層体を載置するとともに、ソフト層の形成材料を当該2層積層体上に載置する。ここで、第2金型の下型の型面の形状は、第1金型の下型の型面の形状と同一である。また、第2金型の上型の型面は、ソフト層の遮音シートとは反対側の外面の形状と同様の形状を有するように形成されている。
【0007】
上述のように、ソフト層の形成材料を2層積層体上に載置した後、第2金型を閉じて、ソフト層の形成材料を、2層積層体に対し、第2金型の下型の型面上にて圧着する。これにより、偏肉仕様を有するハード層、遮音シート及びソフト層の3層積層体からなるダッシュサイレンサーが製造される。
【0008】
しかしながら、このような製造方法によると、上述した偏肉仕様からなるハード層を備えたダッシュサイレンサーの提供は可能とはなるものの、上述のごとく、製造工程が第1及び第2の工程からなるため、工程数の増加を招くという不具合がある。また、第1金型に加え、第2金型が必要となり、型費が増大するという不具合もあり、コストの悪化を招く。
【0009】
これに対しては、例えば、下記特許文献1に記載のインシュレータダッシュの製造方法を採用することも考えられる。当該製造方法においては、予熱軟化状態の熱可塑性樹脂シート及び熱成形フェルトをコールドプレス成形用下型の型面上に順次セットした後、コールドプレス成形用上型を下降させて、コールドプレス成形用上下型間で遮音シートに対応する熱可塑性樹脂シート及びソフト層に対応する熱成形フェルトのプレス成形を行うと同時に、上型から圧縮された冷却用エアを熱成形フェルト内に吹き付けることで、熱可塑性樹脂シートにエア圧を印加して、圧空兼プレス成形を行った後、冷却用エアにより熱成形フェルトを強制冷却するようにして、インシュレータダッシュを製造するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6-328479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述したインシュレータダッシュの製造方法を適用するにしても、当該インシュレータダッシュは、遮音シートとソフト層との2層積層体からなるにすぎない。
【0012】
従って、例えば、上述したインシュレータダッシュを、偏肉仕様のハード層を付加的に遮音シートに積層してなる3層積層体として製造する場合には、偏肉仕様のハード層を成形した後に、当該ハード層上に上述した2層積層体を載置した上で、当該2層積層体を、その遮音シートの形成材料である熱可塑性樹脂シートに載置した後、上述した第2工程と同様の処理を行うこととなり、上述した各不具合が生ずることに変わりはない。
【0013】
また、上述した偏肉仕様からなるハード層を備えたダッシュサイレンサーの製造にあたり、当該製造に役立つ成形装置の提供が要請されている。なお、以上説明したことは、ダッシュサイレンサーに限らず、自動車に搭載される各種のサイレンサーについても同様に成立する。
【0014】
そこで、本発明は、以上のようなことに対処するため、繊維空隙構造のソフト層、遮音シート及び偏肉仕様からなるハード層を有する積層構造体を、単一の成形処理のみの成形でもって製造するに適した自動車用サイレンサーの成型装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題の解決にあたり、本発明に係る自動車用サイレンサーの成形装置は、請求項1の記載によれば、
複数の空隙を分散状に形成してなる繊維空隙構造からなるソフト層(10)と、熱可塑性樹脂材料からなる遮音シート(20)と、遮音材料でもって薄肉部(30a、30c)及び厚肉部(30b)を有するように形成されて遮音シートを介しソフト層に対向するように遮音シートに積層してなるハード層(30)とを備える自動車用サイレンサーを成形するためのものである。
【0016】
当該成形装置において、
固定型(40)及び当該固定型に係合可能な可動型(50)を備える金型(M)と、複数のカップラ(N1、N2、N3)とを備えている。
【0017】
上述した金型において、
固定型は、サイレンサーのハード層のソフト層とは反対側の面と同様の面形状を有するように形成してなる成形面(P)を設けてなり、
当該固定型の上記成形面は、ハード層の上記薄肉部及び上記厚肉部にそれぞれ対応する薄肉成形面部(Pa、Pc)及び厚肉成形面部(Pb)でもって形成されており、
上述した可動型は、
固定型の上記成形面に対向可能に形成してなる成形面(Q)を有する成形壁(53)、当該成形壁に固定型とは反対側から対向する対向壁(51)及び当該対向壁と上記成形壁との間に介在する周壁(52)でもって形成してなる中空型(50a)と、
当該中空型の内部を、固定型の上記成形面のうち上記薄肉成形面部及び上記厚肉成形面部にそれぞれ対応する薄肉成形中空部及び厚肉成形中空部に区画するように、中空型の内部に設けてなる複数の隔壁(50b、50c)とを具備してなり、
可動型の成形壁は、上記薄肉成形中空部に対応する薄肉成形壁部(53a、53c)にて、複数の薄肉成形貫通孔部(i、k)を分散状に形成するとともに、上記厚肉成形中空部に対応する厚肉成形壁部(53b)にて、複数の厚肉成形貫通孔部(j)を分散状に形成してなり、
上記薄肉成形貫通孔部の数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層の上記薄肉部の厚さ及び面積に応じて設定されているとともに、上記厚肉成形貫通孔部の数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層の上記厚肉部の厚さ及び面積に応じて設定されており、
複数のカップラは、それぞれ、上記薄肉成形中空部及び上記厚肉成形中空部のいずれかの中空部内に開口するように、中空型の周壁及び対向壁の双方からなる双方壁のうち上記薄肉成形中空部及び上記厚肉成形中空部にそれぞれ対応する各双方壁部に嵌着されていることを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、上述のように構成してなる金型と複数のカプラを備えている。当該金型において、可動型は、その中空型の内部にて、複数の隔壁でもって、固定型の薄肉成形面部及び厚肉成形面部にそれぞれ対応する薄肉成形中空部及び厚肉成形中空部に区画されている。また、当該可動型の成形壁は、薄肉成形中空部に対応する薄肉成形壁部にて、複数の薄肉成形貫通孔部を分散状に形成するとともに、厚肉成形中空部に対応する厚肉成形壁部にて、複数の厚肉成形貫通孔部を分散状に形成している。
【0019】
ここで、薄肉成形貫通孔部の数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層の薄肉部の厚さ及び面積に応じて設定されているとともに、厚肉成形貫通孔部の数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層の厚肉部の厚さ及び面積に応じて設定されている。
【0020】
従って、ソフト層の形成材料であるソフト層形成部材、遮音シートの形成材料である遮音シート形成部材及びハード層の形成材料であるハード層形成部材からなる3層積層形成部材を、ハード層形成部材側から固定型の成形面上に載置して、当該3層積層形成部材を、その厚さにて、サイレンサーの厚さとなるように、可動型により、その成形面にて、固定型の成形面上に圧縮した状態において、当該3層積層形成部材の加熱のもと、圧縮空気流を、薄肉成形中空部に対応するカプラから当該薄肉成形中空部及び複数の薄肉成形貫通孔部及びソフト層形成部材の薄型成形壁部に対する対応部位を通して当該対応部位に対する遮音シート形成部材の対応部位に流出するとともに、圧縮空気流を、厚肉成形中空部に対応するカプラから当該厚肉成形中空部及び複数の厚肉成形貫通孔部及びソフト層形成部材の厚型成形壁部に対する対応部位を通して当該対応部位に対する遮音シート形成部材の対応部位に流出すれば、ハード層形成部材のソフト層形成部材の薄型成形壁部に対する対応部位は、ソフト層形成部材の薄肉成形壁部に対する対応部位から流出する圧縮空気流によりその圧力でもって圧縮されるとともに、ハード層形成部材のソフト層形成部材の厚肉成形壁部に対する対応部位は、ソフト層形成部材の厚肉成形壁部に対する対応部位から流出する圧縮空気流によりその圧力でもって圧縮される。
【0021】
ここで、上述のように、薄肉成形貫通孔部の数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層の薄肉部の厚さ及び面積に応じて設定されているとともに、上記厚肉成形貫通孔部の数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層の厚肉部の厚さ及び面積に応じて設定されている。換言すれば、薄肉成形貫通孔部の数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層形成部材のうち薄肉成形壁部に対する対応形成部材部分をハード層の薄肉部の厚さまで圧縮するように設定されているとともに、厚肉成形貫通孔部の数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層形成部材のうち厚肉成形壁部に対する対応形成部材部分をハード層の厚さまで圧縮するように設定されている。
【0022】
これにより、上述のような3層積層形成部材に対する圧縮、加熱下における圧縮空気流の流出という単一の成形処理でもって上述のような構成を有する自動車用サイレンサーの成形に適した成形装置の提供が可能となる。
【0023】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載の自動車用サイレンサーの成形装置において、
金型は、可動型の中空型の周壁から固定型の上記成形面の外周部に向けて延出する環状の仕切り壁(54)を設けてなり、
可動型が仕切り壁にて固定型の上記成形面の外周部に係合したとき中空型の上記成形面と固定型の上記成形面との間に形成される間隔であってサイレンサーの厚さに相当する間隔に等しい長さでもって、仕切り壁の延出長さが設定されていることを特徴とする。
【0024】
これによれば、請求項1に記載の発明にいうように圧縮空気流が複数の薄肉成形貫通孔部及び複数の厚肉成形貫通孔部を通り可動型及び固定型の各成形面の間に流出しても、当該流出圧縮空気流は、可動型が仕切り壁にて固定型の上記成形面の外周部に係合した状態においては、当該仕切り壁により、可動型及び固定型の各成形面の間に密封される。従って、請求項1に記載の発明にいう3層積層形成部材のハード層形成部材の圧縮に要する圧縮空気流の不足を招くことなく、請求項1に記載の発明の作用効果をより一層良好に達成することができる。
【0025】
また、本発明に係る自動車用サイレンサーの製造方法は、請求項3の記載によれば、自動車に搭載するに適したサイレンサーを成形装置でもって製造するようにしたものである、
当該自動車用サイレンサーの製造方法は、
成形装置として、請求項1に記載の自動車用サイレンサーの成形装置を用いて、
サイレンサーの製造にあたり、サイレンサーのソフト層の形成材料である上記繊維空隙構造を有するソフト層形成部材(x)、遮音シートの形成材料である遮音シート形成部材(y)及びハード層の形成材料であるハード層形成部材(z)を準備し、
成形装置の金型の開型状態において、ハード層形成部材を固定型の上記成形面上に投入し、遮音シート形成部材をハード層形成部材上に投入し、かつ、ソフト層形成部材を遮音シート形成部材上に投入する投入工程(S2)と、
ソフト層形成部材、遮音シート形成部材及びハード層形成部材からなる3層積層形成部材をその厚さにてサイレンサーの厚さになるように可動型でもって固定型の上記成形面上に圧縮した状態にて、3層積層形成部材を加熱しながら圧縮空気流を複数のカップラの各々により上記薄肉成形中空部及び上記厚肉成形中空部、上記各複数の薄肉成形貫通孔部及び厚肉成形貫通孔部及びソフト層形成部材の上記繊維空隙構造を通して、遮音シート形成部材を介しハード層形成部材のうちの中空型の成形面の上記薄肉成形面部及び上記厚肉成形面部にそれぞれ対応する薄肉形成部材部及び厚肉形成部材部に向けて流出する圧縮・加熱・流出工程(S4)とを備えて、
上記圧縮空気流のうち上記複数の薄肉成形貫通孔部を通る圧縮空気流により、その圧力でもって、上記薄肉形成部材部を、ハード層の上記薄肉部となるように圧縮し、かつ、上記圧縮空気流のうち上記複数の厚肉成形貫通孔部を通る圧縮空気流により、その圧力でもって、上記厚肉形成部材部を、ハード層の上記厚肉部となるように圧縮するように成形して、サイレンサーを製造するようにしたことを特徴とする。
【0026】
このような構成によれば、圧縮・加熱・流出工程において、3層積層形成部材をその厚さにてサイレンサーの厚さになるように可動型でもって固定型の上記成形面上に圧縮した状態にて、3層積層形成部材を加熱しながら圧縮空気流を複数のカップラの各々により薄肉成形中空部及び厚肉成形中空部、各複数の薄肉成形貫通孔部及び厚肉成形貫通孔部及びソフト層形成部材の繊維空隙構造を通して、遮音シート形成部材を介しハード層形成部材のうちの中空型の成形面の上記薄肉成形面部及び上記厚肉成形面部にそれぞれ対応する薄肉形成部材部及び厚肉形成部材部に向けて流出することで、圧縮空気流のうち複数の薄肉成形貫通孔部を通る圧縮空気流により、その圧力でもって、薄肉形成部材部を、ハード層の薄肉部となるように圧縮し、かつ、圧縮空気流のうち複数の厚肉成形貫通孔部を通る圧縮空気流により、その圧力でもって、厚肉形成部材部を、ハード層の厚肉部となるように圧縮するように成形して、サイレンサーを製造するようにした。
【0027】
ここで、薄肉成形貫通孔部の数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層の薄肉部の厚さ及び面積に応じて設定されているとともに、上記厚肉成形貫通孔部の数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層の厚肉部の厚さ及び面積に応じて設定されている。換言すれば、薄肉成形貫通孔部の数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層形成部材のうち薄肉成形壁部に対する対応形成部材部分をハード層の薄肉部の厚さまで圧縮するように設定されているとともに、厚肉成形貫通孔部の数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層形成部材のうち厚肉成形壁部に対する対応形成部材部分をハード層の厚の厚さまで圧縮するように設定されている。
【0028】
これにより、上述のような3層積層形成部材に対する圧縮、加熱下における圧縮空気流の流出という単一の成形処理でもって上述のような構成を有する自動車用サイレンサーの製造が可能となる。
【0029】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項3に記載の自動車用サイレンサーの製造方法において、
金型は、可動型の中空型の周壁から固定型の上記成形面の外周部に向けて延出する環状の仕切り壁(54)を設けてなり、
可動型が仕切り壁にて固定型の上記成形面の外周部に係合したとき中空型の上記成形面と固定型の上記成形面との間に形成される間隔であってサイレンサーの厚さに相当する間隔に等しい長さでもって、仕切り壁の延出長さが設定されており、
サイレンサーの製造にあたり、圧縮・加熱・流出工程において、3層積層形成部材を中空型でもってその成形面により固定型の上記成形面上に圧縮する際、中空型が仕切り壁にて固定型の上記成形面の外周部に係合するまでなされることを特徴とする。
【0030】
これによれば、3層積層形成部材をサイレンサーの厚さに圧縮するに要する可動型及び固定型の各成形面の間隔を仕切り壁でもって確保し得るのは勿論のこと、請求項3に記載の発明にいうように圧縮空気流が複数の薄肉成形貫通孔部及び複数の厚肉成形貫通孔部を通り可動型及び固定型の各成形面の間に流出しても、当該流出圧縮空気流は、可動型が仕切り壁にて固定型の成形面の外周部に係合した状態において、当該仕切り壁により、可動型及び固定型の各成形面の間に密封される。従って、請求項3に記載の発明にいう3層積層形成部材のハード層形成部材の圧縮に要する圧縮空気流の不足を招くことなく、請求項3に記載の発明の作用効果をより一層良好に達成することができる。
【0031】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態における適用対象である自動車用サイレンサーの一例であるダッシュサイレンサーを示す図2の1-1線に沿う概略断面図である。
図2図1のダッシュサイレンサーの正面図である。
図3】本発明に係る自動車用サイレンサーの一例であるダッシュサイレンサーの成形装置を示す図4の3―3線に沿う縦断面図である。
図4図3の4-4線に沿う金型の断面図である。
図5】本発明に係る自動車用サイレンサーの製造工程を示す工程図である。
図6図5の投入工程を説明するための金型の断面図である。
図7図5の圧縮・加熱・流出工程を説明するための金型の断面図である。
図8図5の圧縮・加熱・流出工程を説明するための金型の断面図である。
図9図5の開型工程を説明するための金型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態を図面により説明する。図1は、本発明が適用される自動車用サイレンサーの一例であるダッシュサイレンサー(以下、DSにより示すものとする)を示している。当該ダッシュサイレンサーDSは、ソフト層10、遮音シート20及びハード層30でもって、3層積層構造体として形成されている。なお、図1にて図示上側、下側、左側及び右側は、ダッシュサイレンサーDSの右側、左側、前側及び後側に対応する。
【0034】
ソフト層10は、吸音材料(例えば、低密度フェルト)からなるもので、当該ソフト層10は、ノイズに対し吸音層としての役割を果たす。本実施形態では、ソフト層10を形成する低密度フェルトが、複数の繊維でもって複数の空隙を有するように形成してなる繊維空隙構造からなるように形成されている。このことは、ソフト層10が繊維空隙構造でもって形成されていることを意味する。
【0035】
なお、ソフト層10は、フェルトに限ることなく、複数の空隙を有する繊維空隙構造を形成するに適した吸音材料で形成されていてもよい。
【0036】
遮音シート20は、熱可塑性樹脂材料(例えば、ナイロン)でもって、シート状に形成されており、当該遮音シート20は、ソフト層10と相俟ってノイズに対する遮音性能を発揮する。
【0037】
また、ハード層30は、遮音シート20を介しソフト層10に対向するように遮音シート20に積層されており、当該ハード層30は、遮音材料(例えば、高密度フェルト)でもって、図1及び図2にて示すような厚さの分布を有するように形成されている。なお、当該ハード層30は、その遮音性能に基づき、遮音シート20の遮音性能を助長する役割を果たす。
【0038】
ここで、図2にて図示左側、右側、上側及び下側は、それぞれ、ダッシュサイレンサーDSの上側、下側、左側及び右側に対応する。従って、ハード層30の上側、下側、左側及び右側は、それぞれ、ダッシュサイレンサーDSの上側、下側、左側及び右側に対応する。
【0039】
しかして、当該ハード層30は、図2にて示すごとく、左側薄肉部30a、中側厚肉部30b及び右側薄肉部30cからなる厚肉分布構成にて形成されている。このことは、ハード層30が、図1及び図2にて示すような偏肉仕様でもって、形成されていることを意味する。
【0040】
具体的には、左右両側薄肉部30a、30cは、共に、近似した薄さを有するように形成されており、右側薄肉部30cの面積は、左側薄肉部30aの面積の倍或いは当該倍以上に広い。また、中側厚肉部30bは、図2にて示すごとく、左右両側薄肉部30a、30bの間に形成されており、当該中側厚肉部30bは、左右両側薄肉部30a、30bの各厚さよりも倍或いは当該倍以上の厚さを有するように形成されている(図1参照)。
【0041】
本実施形態において、ダッシュサイレンサーDSは、ソフト層10にて、その前側から自動車のダッシュパネル(図示しない)に沿うように、当該自動車の車室(図示しない)側から配設されるものである。なお、上記ダッシュパネルは、当該自動車のエンジンルーム(図示しない)と上記車室との間に配設されて、上記車室を上記エンジンルームから区画する。
【0042】
以下、本発明に係る自動車用サイレンサーの一例であるダッシュサイレンサーDSの成形装置の構成について説明する。当該成形装置は、金型Mを備えており、当該金型Mは、図3にて示すごとく、下型40及び上型50を備えるように、金型材料(例えば、鉄)でもって形成されている。下型40は、図3にて示すごとく、矩形状底壁41、横断面矩形環状の周壁42及び矩形状上壁43でもって、一体的に形成されている。本実施形態において、下型40は、固定型40ともいい、上型50は、可動型50ともいう。なお、金型Mにおいて、上型50は、昇降機構(図示しない)により昇降可能となっている。
【0043】
下型40において、周壁42は、底壁41の外周部から上方へ延出されている。上壁43は、その外周部にて、周壁42の延出端部に接続されて、底壁41に対向している。また、当該上壁43は、その上面(外面)にて、型面P(成形面Pともいう)を形成しており、当該型面Pは、ダッシュサイレンサーDSのハード層30の外表面湾曲形状と同様の湾曲面形状を有するように形成されている。
【0044】
一方、上型50は、図3にて示すごとく、上型本体である中空型50aを備えており、当該中空型50aは、矩形状の上壁51、横断面矩形環状の周壁52及び矩形状下壁53でもって、中空状に形成されている。周壁52は、上壁51の外周部から下方へ延出されている。
【0045】
下壁53は、その外周部にて、周壁52の延出端部に接続されている。当該下型53は、その下面にて、下型40の型面Pに対向する型面Q(成形面Qともいう)を形成してなるもので、当該型面Qは、ダッシュサイレンサーDSのソフト層10の外表面(遮音シート20とは反対側の面)の湾曲面形状と同様の湾曲面形状を有するように形成されている。
【0046】
ここで、下壁53の型面Qは、ソフト層10及び遮音シート20を介しハード層30の左側薄肉部30a、中側厚肉部30b及び右側薄肉部30cに対応する左側型面部Qa、中側型面部Qb及び右側型面部Qcを有するように形成されている。これに伴い、下壁53は、左側型面部Qaを有する左側下壁部53a、中側型面部Qbを有する中側下壁部53b、及び右側型面部Qcを有する右側下壁部53cでもって、形成されている。
【0047】
また、当該上型50は、図3或いは図4にて示すごとく、両隔壁50b、50cを有しており、当該両隔壁50b、50cは、中空型50a内にて、上壁51、周壁52及び下壁53により形成される中空部を左側中空部Ha、中側中空部Hb及び右側中空部Hcに区画するように配設されている。
【0048】
本実施形態において、隔壁50bは、ハード層30の左側薄肉部30aと中側厚肉部30bとの境界形状(図2参照)に対応する横断面形状を有するように形成されており、一方、隔壁50cは、ハード層30の中側厚肉部30bと右側薄肉部30cとの境界形状(図2参照)に対応する横断面形状を有するように形成されている。
【0049】
上述した両隔壁50b、50cの配設においては、隔壁50bは、左側中空部Haと中側中空部Hbとを相互に隔離するように左側下壁部53aと中側下壁部53bとの境界部に配設されており、隔壁50cは、中側中空部Hbと右側中空部Hcとを相互に隔離するように中側下壁部53bと右側下壁部53cとの境界部に配設されている。
【0050】
ここで、左側中空部Haは、図3及び図4のいずれかにて示すごとく、周壁52の左側周壁部52a、下壁53の左側下壁部53a、隔壁50b、上壁51の左側上壁部51a及び周壁52の前後左側両周壁部52bでもって形成されている。中側中空部Hbは、隔壁50b、周壁52の前後中側周壁部52c、隔壁50c、下壁53の中側下壁部53b及び上壁51の中側上壁部51bでもって形成されている。また、左側中空部Hcは、隔壁50c、周壁52の前後右側周壁部52d、下壁53の右側下壁部53c及び上壁51の右側上壁部51cでもって形成されている。
【0051】
また、当該金型Mは、図3にて示すごとく、矩形環状の仕切り壁54を備えており、当該仕切り壁54は、上型50の矩形環状周壁52の下端部から下型40に向けて延出されている。金型Mを閉じた際、つまり、当該金型Mの閉型の際に、当該仕切り壁54は、その延出下端部にて、下型40の矩形環状周壁42の上端部に係合するようになっている。ここで、仕切り壁54は、その延出長さにて、ダッシュサイレンサーDSの外周部の厚さと一致するように形成されている。
【0052】
このように形成してなる仕切り壁54は、後述のように下型40の型面Pと上型50の型面Qとの間に圧空(後述する)が上型50からその下壁53の各開口部i、j、k(後述する)を介し流出されたとき、仕切り壁54は、その外側への当該圧空の漏れを防止する役割を果たす。また、仕切り壁54は、その延出下端部にて、下型40の矩形環状周壁42の上端部に係合した状態において、当該仕切り壁54は、その内側にて両型面P、Q間に形成される空間形状を、ダッシュサイレンサーDSの外形形状に一致させる役割をも果たす。
【0053】
また、上記成形装置は、図3及び図4にて示すごとく、3つの圧空カプラN1、N2及びN3を備えており、当該3つの圧空カプラN1、N2及びN3は、共に、同一の構成を有するように形成されている。従って、各圧空カプラN1、N2及びN3は、共に、ノズルから、その同一の開孔径を有する開口部にて、同一の流量の圧空を流出するようになっている。
【0054】
3つの圧空カプラN1、N2及びN3のうち、圧空カプラN1は、上型50の周壁52の後左側周壁部52b(図4にて図示上側周壁部52b)の中間部位に嵌着されている。圧空カップラN1は、圧縮空気供給源ASから圧縮空気を圧縮空気流(以下、圧空ともいう)として供給されるようになっており、当該圧空カップラN1は、そのノズルから圧空を上型50の左側中空部Ha内に流出する。
【0055】
ここで、上型50の下壁53のうち左側下壁部53aには、複数(例えば、12個)の開口部iが、2つずつ、前左側周壁部52b(図4にて図示下側周壁部52b)側から後左側周壁部52b(図4にて図示上側周壁部52b)側へ、所定の間隔をおいて、貫通状に形成されている。本実施形態では、複数の開口部iは、ダッシュサイレンサーDSの左側部DSa(ハード層30の左側薄肉部30aに対応)の全体に対応するように、均一に分散して、左側下壁部53aのうち隔壁50b側部位に形成されている(図1及び図4参照)。
【0056】
このような構成のもと、圧空カプラN1によりそのノズルから左側中空部Ha内に流出された圧空は、複数の開口部iを通り下型40の上壁43のうちの左側下壁部53aに対する対応壁部に向けて流出する。
【0057】
圧空カプラN2は、上型50の周壁52の後中側周壁部52c(図4にて図示上側の中側周壁部52c)の中間部位に嵌着されている。圧空カップラN2は、圧縮空気供給源ASから圧縮空気を圧空として供給されるようになっており、当該圧空カップラN2は、そのノズルから、圧空を上型50の中側中空部Hb内に流出する。
【0058】
ここで、上型50の下壁53のうち中側下壁部53bには、複数(例えば、38個)の開口部jが、前中側周壁部52c側から後中側周壁部52c側へ、所定の間隔をおいて、貫通状に分散して形成されている。本実施形態では、複数の開口部jは、ダッシュサイレンサーDSの中側部DSb(ハード層30の中側厚肉部30bに対応)の全体に対応するように、均一に分散して、左側下壁部53aのうち隔壁50b側部位に形成されている(図1及び図4参照)。
【0059】
このような構成のもと、圧空カプラN2により中側中空部Hb内に流出された圧空は、複数の開口部jを通り下型40の上壁43のうちの中側下壁部53bに対する対応部に向けて流出する。
【0060】
また、圧空カプラN3は、上型50の周壁52の後右側周壁部52dの中間部位に嵌着されている。圧空カップラN3は、圧縮空気供給源ASから圧縮空気を圧空として供給されるようになっており、当該圧空カップラN3は、そのノズルから圧空を上型50の右側中空部Hc内に流出する。
【0061】
ここで、上型50の下壁53のうち右側下壁部53cには、複数(例えば、26個)の開口部kが、前右側周壁部52d側から後右側周壁部52d側へ、所定の間隔をおいて、貫通状に分散して形成されている。本実施形態では、複数の開口部kは、ダッシュサイレンサーDSの右側部DSc(ハード層30の右側薄肉部30cに対応)の全体に対応するように、均一に分散して、左側下壁部53aのうち隔壁50b側部位に形成されている(図4参照)。
【0062】
このような構成のもと、圧空カプラN3により右側中空部Hc内に流出された圧空は、複数の開口部kを通り下型40の上壁43のうちの右側下壁部53cに対する対応部に向けて流出する。
【0063】
以上説明したように、上述のように構成してなる金型Mと3つの圧空カプラN1~N3を備える成形装置では、金型Mにおいて、可動型50は、その中空型50aの内部にて、両隔壁50b、50cでもって、固定型40の左側薄肉成形面部Pa、中側厚肉成形面部Pb及び右側薄肉成形面部Pcにそれぞれ対応する左側中空部Ha、中側中空部Hb及び左側中空部Hcに区画されている。また、当該可動型Mの下壁53(成形壁53)は、左側中空部Haに対応する左側下壁部53a(左側成形壁部53a)にて、複数の貫通孔部iを分散状に形成し、中側中空部Hbに対応する中側下壁部53b(中側成形壁部53b)にて、複数の貫通孔部jを分散状に形成し、かつ、右側中空部Hcに対応する右側下壁部53c(右側成形壁部53c)にて、複数の貫通孔部kを分散状に形成している。
【0064】
ここで、貫通孔部iの数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層30の左側薄肉部30aの厚さ及び面積に応じて設定され、貫通孔部jの数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層30の厚肉部30aの厚さ及び面積に応じて設定され、かつ、貫通孔部kの数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層30の右側薄肉部30cの厚さ及び面積に応じて設定されている。
【0065】
このような構成によれば、ハード層30の形成材料であるハード層形成部材zの圧縮にあたっては、ソフト層10の形成材料であるソフト層形成部材x、遮音シート20の形成材料である遮音シート形成部材y及びハード層形成部材zからなる3層積層形成部材(図6参照)を、ハード層形成部材z側から固定型40の成形面P上に載置して、当該3層積層形成部材を、その厚さにて、ダッシュサイレンサーDSの厚さとなるように、可動型50により、その成形面Qにて、固定型40の成形面P上に圧縮した状態におく。
【0066】
このような状態において、当該3層積層形成部材の加熱のもと、圧縮空気流供給源ASからの圧空を、圧空カプラN1から左側中空部Ha及び複数の貫通孔部i及びソフト層形成部材xの左側成形壁部53aに対する対応部位を通して当該対応部位に対する遮音シート形成部材yの対応部位に流出し、上記圧空を、圧空カプラN2から中側中空部Hb及び複数の貫通孔部j及びソフト層形成部材xの中側成形壁部53bに対する対応部位を通して当該対応部位に対する遮音シート形成部材yの対応部位に流出する。
【0067】
このように流出すれば、ハード層形成部材zのソフト層形成部材xの左側成形壁部53aに対する対応部位は、ソフト層形成部材xの左側成形壁部53aに対する対応部位から流出する圧空によりその圧力でもって圧縮され、ハード層形成部材zのソフト層形成部材xの中側成形壁部53bに対する対応部位は、ソフト層形成部材xの中側成形壁部53bに対する対応部位から流出する圧空によりその圧力でもって圧縮され、かつ、ハード層形成部材zのソフト層形成部材xの右側成形壁部53cに対する対応部位は、ソフト層形成部材xの右側成形壁部53cに対する対応部位から流出する圧空によりその圧力でもって圧縮されるようになっている。
【0068】
ここで、貫通孔部iの数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層30の左側薄肉部30aの厚さ及び面積に応じて設定され、貫通孔部kの数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層30の中側厚肉部30bの厚さ及び面積に応じて設定され、かつ、貫通孔部kの数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層30の右側薄肉部30cの厚さ及び面積に応じて設定されている。
【0069】
換言すれば、貫通孔部iの数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層形成部材zのうち左側成形壁部53aに対する対応形成部材部分をハード層30の左側薄肉部30aの厚さまで圧縮するように設定され、貫通孔部jの数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層形成部材zのうち中側成形壁部53bに対する対応形成部材部分をハード層30の厚さまで圧縮するように設定され、かつ、貫通孔部kの数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層形成部材zのうち右側成形壁部53cに対する対応形成部材部分をハード層30の右側薄肉部30cの厚さまで圧縮するように設定されている。
【0070】
これにより、上述のような3層積層形成部材に対する圧縮、加熱下における圧空の流出という単一の成形処理でもって上述のような構成を有する自動車用ダッシュサイレンサーの成形に適した成形装置の提供が可能となる。
【0071】
次に、本発明に係る自動車用サイレンサーの製造方法について、図5に基づき説明する。本実施形態では、自動車用サイレンサーの一例であるダッシュサイレンサーを、上記成形装置を用いて製造する方法について、図5を参照して説明する。
【0072】
まず、ソフト層10の形成材料(例えば、フェルト)からなるソフト層形成部材x、遮音シート20の形成材料からなる遮音シート形成部材y、及びハード層30の形成材料からなるハード層形成部材zを準備する。
【0073】
このような前提のもと、図5の開型工程S1において、金型Mを、その上型50にて、上記昇降機能でもって下型40から上昇させる(図6参照)。これにより、金型Mは、開型状態におかれる。然る後、投入工程S2において、ハード層形成部材zを下型40の型面P上に載置する(図6参照)。ついで、遮音シート形成部材yを、図6にて示すごとく、ハード層形成部材z上に積層状に載置するとともに、ソフト層形成部材xを遮音シート形成部材y上に積層状に載置する。このことは、ソフト層形成部材x、遮音シート形成部材y及びハード層形成部材zが、下型40の型面P上にて3層積層形成部材を構成することを意味する。
【0074】
なお、図6においては、ハード層形成部材z、遮音シート形成部材y及びソフト層形成部材xは、型面Pの上方に間隔をおいて記載されているが、このような記載は、便宜上なされたものにすぎない。
【0075】
上述のような投入工程S2における投入後、圧縮・加熱・流出工程S3において、上型50を、上記昇降機構でもって、下型40に向けて下動させる。これに伴い、金型Mは、図7にて示すごとく、上型50の型面Qにて、上記3層積層形成部材を、ダッシュサイレンサーDSの縦断面形状に相当する縦断面形状となるまで、下型40の型面Pに向けて圧縮する。このとき、上型50は、仕切り壁54にて、下型40の周壁42の上端部に係合する(図7参照)。このため、後述のように圧空が上型50を通りその下型53の各貫通孔部i、j、kから当該下型53と下型40の上壁43との間に流出しても、当該圧空は、仕切り壁54の外側に漏れることなく、下壁53と上壁43との間にて当該仕切り壁54の内側に密封される。
【0076】
このような3層積層形成部材の圧縮状態において、当該3層積層形成部材の加熱のもと、圧空が圧縮空気供給源ASから各圧空カップラN1、N2及びN3に供給される。これに伴い、当該圧空は、各圧空カップラN1、N2及びN3により、上型50内の左側、中側及び右側の各中空部Ha、Hb及びHc、各複数の貫通孔部i、j及びk、ソフト層形成部材xを通り遮音シート形成部材yに向けて流出される。なお、このように流出される圧空は、仕切り壁54により下壁53と上壁43との間に密封されるので、圧空不足を招くことはない。
【0077】
当該流出にあたり、ソフト層10は、上述のごとく、繊維空隙構造でもって形成されていることから、各圧空カップラN1、N2及びN3からの圧空は、ソフト層10の繊維空隙構造を容易に通り遮音シート形成部材yに達する。
【0078】
これに伴い、ハード層形成部材zは、遮音シート形成部材yを介し各圧空カップラN1、N2及びN3からの圧空の圧力を受けて、容易に押圧され得る。
【0079】
この押圧にあたり、本実施形態では、上型50の下壁53の左側下壁部53aに形成してなる貫通孔部iの数及び開孔径の少なくとも一方は、圧縮空気供給源ASからの圧空の圧力及び圧空カプラN1の開孔径を考慮して、ハード層30の左側薄肉部30aの厚さ及び面積に応じて、ハード層形成部材zのうちの左側薄肉部30aに対応する部位の厚さを左側薄肉部30aの厚さまで圧縮し得るように設定されている。
【0080】
また、下壁53の中側下壁部53bに形成してなる貫通孔部jの数及び開孔径の少なくとも一方は、圧縮空気供給源ASからの圧空の圧力及び圧空カプラN2の開孔径を考慮して、ハード層30の中側厚肉部30bの厚さ及び面積に応じて、ハード層形成部材zのうちの中側厚肉部30bに対応する部位の厚さを中側厚肉部30bの厚さまで圧縮し得るように設定されている。
【0081】
さらに、下壁53の右側下壁部53cに形成してなる貫通孔部kの数及び開孔径の少なくとも一方は、圧縮空気供給源ASからの圧空の圧力及び圧空カプラN3の開孔径を考慮して、ハード層30の右側薄肉部30cの厚さ及び面積に応じて、ハード層形成部材zのうちの右側薄肉部30cに対応する部位の厚さを右側薄肉部30cの厚さまで圧縮し得るように設定されている。
【0082】
従って、ハード層形成部材zが、上述のように、圧空により押圧されると、当該ハード層形成部材zは、そのハード層30の左側薄肉部30a、中側厚肉部30b及び右側薄肉部30cに対する各対応部位にて、左側薄肉部30a、中側厚肉部30b及び右側薄肉部30cとなるように圧縮される。これに伴い、ソフト層形成部材x、遮音シート形成部材y及びハード層形成部材zからなる3層形成部材積層構造体が、ソフト層10、遮音シート20及びハード層30からなる積層構造体として成形される。なお、遮音シート形成部材yは、上記加熱のもと、ハード層形成部材zに溶着される。
【0083】
然る後、開型工程S5において、上型50を、上記昇降機構でもって下型40から上昇させて、金型Mを開く(図9参照)。このような金型Mの開型状態において、上述した圧縮成形済みの3層形成部材積層構造体が、ダッシュサイレンサーとして金型Mから取り出される。これにより、ダッシュサイレンサーの製造が完了する。なお、金型Mの開型状態では、仕切り壁54は、図9にて示すごとく、圧縮成形済みの3層形成部材積層構造体よりも上方に位置しているので、当該3層形成部材積層構造体の金型Mからの取り出しにあたり、仕切り壁54が妨げになることはない。
【0084】
以上説明したように、本発明に係る自動車用サイレンサーの製造方法によれば、サイレンサーの1例であるダッシュサイレンサーDSの製造にあたり、圧縮・加熱・流出工程S3において、3層積層形成部材をその厚さにてダッシュサイレンサーDSの厚さになるように可動型50でもって固定型40の成形面P上に圧縮した状態にて、3層積層形成部材を加熱しながら圧空を各圧空カップラN1~N3により左側、中側及び右側の中空部Ha~Hc、各複数の貫通孔部i、j及びk及びソフト層形成部材xの繊維空隙構造を通して、遮音シート形成部材yを介しハード層形成部材zのうちの中空型50aの成形面Qの左側、中側及び右側の成形面部Pa~Pcにそれぞれ対応する左側形成部材部、中側形成部材部及び右側形成部材部に向けて流出することで、圧空のうち複数の貫通孔部iを通る圧空により、その圧力でもって、左側形成部材部を、ハード層30の左側薄肉部30aとなるように圧縮し、圧空のうち複数の貫通孔部jを通る圧空により、その圧力でもって、中側形成部材部を、ハード層30の中側厚肉部30bとなるように圧縮し、かつ、圧空のうち複数の貫通孔部kを通る圧空により、その圧力でもって、右側形成部材部を、ハード層30の右側薄肉部30cとなるように圧縮すべく成形して、ダッシュサイレンサーDSを製造するようにした。
【0085】
ここで、貫通孔部iの数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層30の左側薄肉部30aの厚さ及び面積に応じて設定され、貫通孔部jの数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層30の中側厚肉部30bの厚さ及び面積に応じて設定され、かつ、貫通孔部kの数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層30の右側薄肉部30cの厚さ及び面積に応じて設定されている。
【0086】
換言すれば、貫通孔部iの数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層形成部材zのうち左側成形壁部53aに対する対応形成部材部分をハード層30の左側薄肉部30aの厚さに圧縮するように、かつ、当該左側薄肉部30aの各部位の異なる厚さに対応して異なるように、設定され、貫通孔部jの数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層形成部材zのうち中側成形壁部53bに対する対応形成部材部分をハード層30の中側厚肉部30bの厚さに圧縮するように、かつ、当該中側厚肉部30bの各部位の異なる厚さに対応して異なるように、設定され、かつ、貫通孔部kの数及び開口径の少なくとも一方は、ハード層形成部材zのうち右側成形壁部53cに対する対応形成部材部分をハード層30の右側薄肉部30cの厚さに圧縮するように、かつ、当該右側薄肉部30cの各部位の異なる厚さに対応して異なるように、設定されている。
【0087】
これにより、単一の金型Mを用いて、上述のような3層積層形成部材に対する圧縮、加熱下における圧空の流出という圧縮・加熱・流出工程による単一の成形処理でもって、本明細書の冒頭にて述べた従来技術の不具合を伴うことなく、上述のような構成を有する自動車用ダッシュサイレンサーDSの製造が可能となる。
【0088】
なお、本発明の実施にあたり、上記実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)本発明の実施にあたり、ダッシュサイレンサーにおける薄肉部及び厚肉部の厚さ分布構造は、上記実施形態に説明した厚さ分布に限ることなく、適宜変更して実施してもよい。この場合、圧空カプラの数及び上型50内に配設する隔壁の数、下壁53の分割数(貫通孔の数も含む)も、上述した薄肉部及び厚肉部の厚さ分布構造にあわせて変更すればよい。
(2)本発明の実施にあたり、各圧空カプラN1~N3は、上型50の周壁52に代えて、上壁51の左側、中側及び右側の各中空部Ha~Hcに対する各対応部位に嵌着するようにしてもよい。
(3)本発明の実施にあたり、上記実施形態にて述べたダッシュサイレンサーに限ることなく、偏肉仕様のハード層を有するサイレンサーとして自動車に搭載されるサイレンサーであれば、どのようなサイレンサーであっても、本発明を適用して実施してもよい。
【符号の説明】
【0089】
DS…ダッシュサイレンサー、i、j、k…貫通孔部、
N1~N3…圧空カプラ、P、Q…成形面、
Pa、Pc、Qa、Qc…薄肉成形面部、Pb、Qb…厚肉成形面部、
S2…投入工程、S3…圧縮工程、S4…流出工程、10…ソフト層、
30…ハード層、30a、30b…薄肉部、30c…厚肉部、40…下型、
50…上型、50a…中空型、50b、50c…隔壁、51…上壁、52…周壁、
53…下壁、54…仕切り壁。
図1
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図9