(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139935
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】半導体装置および電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/28 20060101AFI20241003BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L23/28 J
H01L23/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050888
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】高田 周平
(72)【発明者】
【氏名】藤野 純司
(72)【発明者】
【氏名】坂元 創一
【テーマコード(参考)】
4M109
5F136
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109BA02
4M109CA21
4M109DA07
4M109DB03
4M109GA05
5F136BA30
5F136BB18
5F136BC01
5F136EA03
(57)【要約】
【課題】半導体装置において、絶縁性を保ちながら、放熱性を向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【解決手段】半導体装置100は、ダイパッド5を含むリードフレーム3と、ダイパッド5における表面に搭載された半導体素子1と、ダイパッド5における表面とは反対側の裏面を露出させた状態で、半導体素子1およびリードフレーム3を封止するモールド樹脂6と、モールド樹脂6におけるダイパッド5の裏面が露出する底面にグリス8を介して配置されたヒートシンク9とを備えている。モールド樹脂6におけるダイパッド5の裏面が露出する底面には、先端がヒートシンク9と当接する突起部7が設けられ、突起部7は、上面視において、ダイパッド5と重ならないようにダイパッド5よりも外側に設けられ、ダイパッド5と突起部7との距離はグリス8の厚みよりも大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイパッドを含むリードフレームと、
前記ダイパッドにおける一方面に搭載された半導体素子と、
前記ダイパッドにおける一方面とは反対側の他方面を露出させた状態で、前記半導体素子および前記リードフレームを封止するモールド樹脂と、
前記モールド樹脂における前記ダイパッドの前記他方面が露出する一方面にグリスを介して配置されたヒートシンクと、を備え、
前記モールド樹脂における前記ダイパッドの前記他方面が露出する前記一方面には、先端が前記ヒートシンクと当接する突起部が設けられ、
前記突起部は、上面視において、前記ダイパッドと重ならないように前記ダイパッドよりも外側に設けられ、
前記ダイパッドと前記突起部との距離は前記グリスの厚みよりも大きい、半導体装置。
【請求項2】
前記ヒートシンクには、前記突起部と嵌合する凹部が設けられた、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
ダイパッドを含むリードフレームと、
前記ダイパッドにおける一方面に搭載された半導体素子と、
前記ダイパッドにおける一方面とは反対側の他方面を露出させた状態で、前記半導体素子および前記リードフレームを封止するモールド樹脂と、
前記モールド樹脂における前記ダイパッドの前記他方面が露出する一方面にグリスを介して配置されたヒートシンクと、を備え、
前記モールド樹脂における前記ダイパッドの前記他方面が露出する前記一方面には、先端が前記ヒートシンクと当接し、かつ、前記ダイパッドの周囲を囲む段差部が設けられ、
前記段差部は、上面視において、前記ダイパッドと重ならないように前記ダイパッドよりも外側に設けられ、
前記ダイパッドと前記段差部との距離は前記グリスの厚みよりも大きい、半導体装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置を有し、入力される電力を変換して出力する主変換回路と、
前記主変換回路を制御する制御信号を前記主変換回路に出力する制御回路と、
を備えた、電力変換装置。
【請求項5】
請求項3に記載の半導体装置を有し、入力される電力を変換して出力する主変換回路と、
前記主変換回路を制御する制御信号を前記主変換回路に出力する制御回路と、
を備えた、電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置および電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フルモールド型の半導体装置では、半導体素子は、リードフレームから延伸したダイパッドに接合材によって接合されている。そして半導体素子とリードフレームは、ワイヤボンドによって電気的に接続されている。半導体装置内の各部品が短絡を生じないように、モールド樹脂によって封止されることで絶縁されている。
【0003】
基板に実装された半導体装置は、放熱のためにグリスを介してヒートシンクと接続されている。そのため、半導体素子から発生した熱は、半導体素子から接合材、ダイパッド、モールド樹脂、グリスを通り、ヒートシンクから外部へ放熱される。この放熱経路において、モールド樹脂は熱伝導率が他の部材と比べて低いため、半導体素子からヒートシンクまでの熱抵抗に影響しやすい。
【0004】
例えば、特許文献1には、ダイパッドの裏面をモールド樹脂から露出させることで放熱性を高めた装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、上面視において、ダイパッドと重なる位置、つまり、ダイパッドの内側に、モールド樹脂とグリスとの界面が位置するため、絶縁距離を確保することができないという問題があった。
【0007】
そこで、本開示は、半導体装置において、絶縁性を保ちながら、放熱性を向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る半導体装置は、ダイパッドを含むリードフレームと、前記ダイパッドにおける一方面に搭載された半導体素子と、前記ダイパッドにおける一方面とは反対側の他方面を露出させた状態で、前記半導体素子および前記リードフレームを封止するモールド樹脂と、前記モールド樹脂における前記ダイパッドの前記他方面が露出する一方面にグリスを介して配置されたヒートシンクとを備え、前記モールド樹脂における前記ダイパッドの前記他方面が露出する前記一方面には、先端が前記ヒートシンクと当接する突起部が設けられ、前記突起部は、上面視において、前記ダイパッドと重ならないように前記ダイパッドよりも外側に設けられ、前記ダイパッドと前記突起部との距離は前記グリスの厚みよりも大きい。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ダイパッドをモールド樹脂から露出させ、突起部により必要な厚みが確保されたグリスを介してダイパッドとヒートシンクとを接続することができるため、放熱性を向上させることができる。さらに、上面視において、モールド樹脂とグリスとの界面がダイパッドよりも外側に位置するため、絶縁距離を確保することができる。
【0010】
以上より、半導体装置において、絶縁性を保ちながら、放熱性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1に係る半導体装置の断面図である。
【
図2】実施の形態1に係る半導体装置のモールド時におけるモールド用金型の断面図である。
【
図3】実施の形態1に係る半導体装置の底面図である。
【
図4】実施の形態2に係る半導体装置の底面図である。
【
図5】実施の形態3に係る半導体装置の断面図である。
【
図6】実施の形態4に係る半導体装置の断面図である。
【
図7】実施の形態4に係る半導体装置の底面図である。
【
図8】実施の形態4に係る半導体装置のモールド時におけるモールド用金型の断面図である。
【
図9】実施の形態5に係る電力変換装置を適用した電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【
図10】関連技術に係る半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態1>
<半導体装置の構成>
実施の形態1について、図面を用いて以下に説明する。
図1は、実施の形態1に係る半導体装置100の断面図である。
【0013】
図1に示すように、半導体装置100は、リードフレーム3と、半導体素子1と、モールド樹脂6と、ヒートシンク9とを備えている。
【0014】
リードフレーム3は、ダイパッド5と、第1リード3bと、第2リード3aとを含んでいる。
【0015】
ダイパッド5は板状に形成されている。ダイパッド5は、上面視において、矩形状に形成されている。ダイパッド5は、第1リード3bと接続されている。
【0016】
第2リード3aは、ダイパッド5に対して第1リード3bとは反対側に配置されている。具体的には、
図1において、第1リード3bは、ダイパッド5に対して右側に配置され、第2リード3aは、ダイパッド5に対して左側に配置されている。リードフレーム3の材料として、例えば、銅(Cu)が採用される。
【0017】
ダイパッド5の一方面である表面には、接合材2によって半導体素子1が接合されている。接合材2として、導電性を有し、かつ、175℃付近の高温下において、材料が溶融しないように、鉛フリーはんだ、または銀(Ag)を含んだ焼結ペースト等、高温信頼性の高い接合材が採用される。
【0018】
また、リードフレーム3の材料は銅(Cu)であり、接合材2との接合強度を高めるために銀(Ag)等でめっき処理されているが、
図1では図示を省略している。
【0019】
半導体素子1は、例えばスイッチング素子または整流素子として機能する素子である。スイッチング素子は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、またはMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等である。整流素子は、ダイオード素子である。
【0020】
半導体素子1を構成する材料は、例えばシリコン(Si)である。なお、半導体素子1を構成する材料は、シリコンに限定されず、例えば、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、またはダイヤモンド(C)等のワイドバンドギャップ半導体材料であってもよい。ワイドバンドギャップ半導体材料は、シリコンのバンドギャップよりも広いバンドギャップを有する材料である。ワイドバンドギャップ半導体材料で構成される半導体素子1は、大電流を使用した動作、および高温環境下における動作等を行うことが可能になる。そのため、半導体素子1を構成する材料は、ワイドバンドギャップ半導体材料であることが好ましい。
【0021】
半導体素子1と、第2リード3aおよび第1リード3bとは、それぞれワイヤ4a,4bにより電気的に接続されている。
【0022】
ワイヤ4a,4bを構成する材料は、電気伝導率の高い銅(Cu)またはアルミニウム(Al)である。ワイヤ4a,4bの接続には、超音波接合が用いられる。
【0023】
モールド樹脂6は、ダイパッド5における表面とは反対側の他方面である裏面と、第2リード3aの先端側と、第1リード3bの先端側とを露出させた状態で、半導体素子1およびリードフレーム3を封止している。
【0024】
ヒートシンク9は、モールド樹脂6におけるダイパッド5の裏面が露出する一方面である底面にグリス8を介して配置されている。
【0025】
また、モールド樹脂6におけるダイパッド5の裏面が露出する底面には、先端がヒートシンク9と当接する6つの突起部7が設けられている。
【0026】
ここで、突起部7の形成方法について簡単に説明する。
図2は、実施の形態1に係る半導体装置100のモールド時におけるモールド用金型10の断面図である。
【0027】
リードフレーム3のダイパッド5に半導体素子1が接合され、ワイヤボンドされた後、
図2に示すように、熱硬化性を有するモールド樹脂6によりモールド用金型10の中で絶縁封止される。モールド用金型10は、上金型10aと下金型10bとで構成され、下金型10bの底面には6つの溝部11が設けられている。6つの溝部11にモールド樹脂6が注入されることによって6つの突起部7が形成される。各溝部11は、モールド後に取り出しやすいように円錐台の形状をしている。モールド樹脂6をモールド用金型10に注入する際、ダイパッド5は下金型10bの底面に押し付けられている。
【0028】
次に、突起部7について説明する。
図3は、実施の形態1に係る半導体装置100の底面図である。
【0029】
図3に示すように、6つの突起部7は、上面視において、ダイパッド5と重ならないように、ダイパッド5よりも外側に設けられている。具体的には、突起部7は、ダイパッド5の左右両側に3つずつ配置され、前後方向に間隔をあけて並んでいる。
【0030】
また、
図1に示すように、グリス8は、半導体装置100とヒートシンク9との隙間を埋めるために、半導体装置100とヒートシンク9との間に塗布されている。グリス8は、モールド樹脂6の底面から各突起部7の先端までの距離と同じ厚さに塗布されている。
【0031】
各突起部7の先端がヒートシンク9と当接するように、モールド樹脂6とヒートシンク9が接続されている。このように接続されたことで、グリス8の厚みを一定に保つことができる。モールド樹脂6とヒートシンク9との接続方法には、ねじ止め方式が採用されている。モールド樹脂6の前後側部に設けられた上下方向に延びるねじ穴12a,12bからねじ(図示しない)を挿通することで、モールド樹脂6とヒートシンク9がねじ止めされている。
【0032】
<関連技術との比較>
次に、実施の形態1と関連技術との比較について説明する。
図10は、関連技術に係る半導体装置101の断面図である。
【0033】
図10に示すように、関連技術に係る半導体装置101は、フルモールド型半導体装置であり、実施の形態1に係る半導体装置100との相違点は、突起部7が設けられていない点と、ダイパッド5の裏面がモールド樹脂6から露出していない点である。
【0034】
図示しないが、関連技術では、ダイパッド5を下金型10b内で浮かせた状態でモールド樹脂6が注入されている。この場合、モールド樹脂6の流動によって、ダイパッド5が上下方向に変形する。ダイパッド5が変形することにより、半導体素子1からヒートシンク9までの距離がバラつくため、放熱性が安定しなかった。
【0035】
一方、実施の形態1では、ダイパッド5を下金型10bの底面に押し付けた状態でモールド樹脂6が注入されるため、モールド樹脂6の流動によって、ダイパッド5が上下方向に変形しない。そのため、半導体素子1からヒートシンク9までの距離が一定であり、放熱性が安定する。
【0036】
加えて、関連技術では、半導体素子1からヒートシンク9までの放熱経路は、半導体素子1、接合材2、ダイパッド5、モールド樹脂6、グリス8、ヒートシンク9となる。
【0037】
これに対して、実施の形態1では、半導体素子1からヒートシンク9までの放熱経路は、関連技術の場合と比較してモールド樹脂6の層がない。モールド樹脂6は放熱経路における材料の中でも最も熱伝導率が低いため、放熱経路においてモールド樹脂6の層がなくなることにより、放熱性は格段に向上する。
【0038】
通常、モールド樹脂6からダイパッド5を露出させると、半導体素子1が通電したとき、半導体素子1とヒートシンク9との間の絶縁の役割を担っていたモールド樹脂6が存在しないため、短絡の原因となる。
【0039】
実施の形態1では、モールド樹脂6が担っていた絶縁の役割をグリス8によって代替している。グリス8も絶縁性を有しているが、関連技術では、モールド樹脂6をヒートシンク9にねじ止めした際に、グリス8の厚さが薄くなるため、絶縁性が低下する。また、実施の形態1では、ねじ止めの際に、突起部7がスペーサーとして機能することにより、モールド樹脂6とヒートシンク9の平行度を保つことが可能である。
【0040】
さらに、関連技術において、ねじ止めの際にグリス8の厚みを確保していたとしても、半導体装置が動作している間に薄くなってしまうことも考えられる。また、ダイパッド5をモールド樹脂6から露出させ、グリス8の代わりに絶縁シートを配置する場合もある。絶縁シートを用いた場合も、ねじ止めによって、絶縁シートの厚さが不均一になったり、薄くなることが想定され、放熱性と絶縁性が不安定になる。これに対して、実施の形態1では、上記のように、グリス8の厚みを一定に保つ効果がある。
【0041】
<効果>
以上のように、実施の形態1では、半導体装置100は、ダイパッド5を含むリードフレーム3と、ダイパッド5における裏面に搭載された半導体素子1と、ダイパッド5における表面とは反対側の裏面を露出させた状態で、半導体素子1およびリードフレーム3を封止するモールド樹脂6と、モールド樹脂6におけるダイパッド5の裏面が露出する底面にグリス8を介して配置されたヒートシンク9とを備えている。モールド樹脂6におけるダイパッド5の裏面が露出する底面には、先端がヒートシンク9と当接する突起部7が設けられ、突起部7は、上面視において、ダイパッド5と重ならないようにダイパッド5よりも外側に設けられ、ダイパッド5と突起部7との距離はグリス8の厚みよりも大きい。
【0042】
したがって、ダイパッド5をモールド樹脂6から露出させ、突起部7により必要な厚みが確保されたグリス8を介してダイパッド5とヒートシンク9とを接続することができるため、放熱性を向上させることができる。さらに、上面視において、モールド樹脂6とグリス8との界面がダイパッド5よりも外側に位置するため、絶縁距離を確保することができる。
【0043】
以上より、半導体装置100において、絶縁性を保ちながら、放熱性を向上させることができる。
【0044】
<実施の形態2>
次に、実施の形態2に係る半導体装置100について説明する。
図4は、実施の形態2に係る半導体装置100の底面図である。なお、実施の形態2において、実施の形態1で説明したものと同一の構成要素については同一符号を付して説明は省略する。
【0045】
実施の形態1では、突起部7は6つ設けられていたのに対して、
図4に示すように、実施の形態2では、突起部7は4つ設けられている。具体的には、突起部7は、ダイパッド5の左右両側に2つずつ配置され、前後方向に間隔をあけて並んでいる。
【0046】
実施の形態1では、モールド樹脂6をヒートシンク9にねじ止めした際の撓みを抑制するために突起部7が6つ設けられていた。しかし、モールド樹脂6のサイズまたは形状によっては、ねじ止めした際の撓みが小さい場合がある。この場合、突起部7の個数を4つに減らすことができる。
【0047】
以上のように、実施の形態2では、突起部7を4つに減らしたことで、実施の形態1の場合よりも、モールド樹脂6の削減、および製造工程の簡略化を実現することができる。
【0048】
<実施の形態3>
次に、実施の形態3に係る半導体装置100について説明する。
図5は、実施の形態3に係る半導体装置100の断面図である。なお、実施の形態3において、実施の形態1,2で説明したものと同一の構成要素については同一符号を付して説明は省略する。
【0049】
図5に示すように、実施の形態3では、実施の形態1に対して、ヒートシンク9には、それぞれ6つの突起部7と嵌合する6つの凹部13が設けられている点が異なる。
【0050】
6つの凹部13は、ヒートシンク9における6つの突起部に対向する箇所にそれぞれ設けられている。各凹部13は、各突起部7と嵌合したとき、グリス8の厚みが実施の形態1の場合よりも薄くならないような深さに設定されている。モールド樹脂6をヒートシンク9に取り付ける際、それぞれ6つの凹部13に6つの突起部7を嵌合させた状態でねじ止めを行う。なお、凹部13の個数は、突起部7の個数に合わせて変更可能である。例えば、実施の形態2のヒートシンク9に凹部13を設ける場合、凹部13は4つ設けられる。
【0051】
以上のように、実施の形態3では、ヒートシンク9には、突起部7と嵌合する凹部13が設けられている。したがって、モールド樹脂6とヒートシンク9との位置決めを簡易かつ精度よく行うことができる。
【0052】
さらに、突起部7と凹部13とを嵌合させることで、位置ずれを抑制できる。位置ずれを抑制できるため、実施の形態1の場合と比べて、モールド樹脂6をヒートシンク9に取り付ける際のねじ止めのトルクを小さくすることができる。半導体装置100では、モールド樹脂6とリードフレーム3との線膨張係数の違いにより反りが発生し、ねじ止めの際に加わる曲げ荷重により、モールド樹脂6およびその内部に封止されている部品が破壊する可能性がある。実施の形態3の場合、ねじ止めのトルクを小さくすることができるため、上記の曲げ破壊が発生しにくくなる。
【0053】
加えて、半導体装置100が高温下で動作する場合、モールド樹脂6とリードフレーム3との間で熱応力も発生する。熱応力によりモールド樹脂6とリードフレーム3との間に剥離が発生し、その部分から吸湿することで、短絡の原因になる。実施の形態3では、上記のように、ねじ止めのトルクを小さくすることができるため、短絡のリスクを軽減することができる。
【0054】
<実施の形態4>
次に、実施の形態4に係る半導体装置100について説明する。
図6は、実施の形態4に係る半導体装置100の断面図である。
図7は、実施の形態4に係る半導体装置100の底面図である。
図8は、実施の形態4に係る半導体装置100のモールド時におけるモールド用金型10の断面図である。なお、実施の形態4において、実施の形態1~3で説明したものと同一の構成要素については同一符号を付して説明は省略する。
【0055】
図6と
図7に示すように、実施の形態4では、実施の形態1に対して、6つの突起部7に代えて、先端がヒートシンク9と当接する段差部14が設けられている点が異なる。
【0056】
段差部14は、モールド樹脂6におけるダイパッド5の裏面が露出する底面に、ダイパッド5の周囲を囲み、かつ、上面視において、ダイパッド5と重ならないようにダイパッド5よりも外側に設けられている。具体的には、段差部14は、モールド樹脂6におけるダイパッド5の裏面が露出する底面の外縁部に渡って設けられている。また、ダイパッド5と段差部14との距離はグリス8の厚みよりも大きい。
【0057】
図8に示すように、下金型10bの底面には、上面視において矩形枠状の溝部15が設けられている。溝部15にモールド樹脂6が注入することによって段差部14が形成される。モールド樹脂6をモールド用金型10に注入する際、ダイパッド5は下金型10bの底面に押し付けられている。
【0058】
図6に示すように、実施の形態1の場合と同様に、モールド樹脂6とヒートシンク9との間にグリス8が塗布され、モールド樹脂6がヒートシンク9にねじ止めされる。このとき、モールド樹脂6によって形成された段差部14により、グリス8の厚みを一定に保つことができる。
【0059】
以上のように、実施の形態4では、半導体装置100は、ダイパッド5を含むリードフレーム3と、ダイパッド5における表面に搭載された半導体素子1と、ダイパッド5における表面とは反対側の裏面を露出させた状態で、半導体素子1およびリードフレーム3を封止するモールド樹脂6と、モールド樹脂6におけるダイパッド5の裏面が露出する底面にグリス8を介して配置されたヒートシンク9とを備えている。モールド樹脂6におけるダイパッド5の裏面が露出する底面には、先端がヒートシンク9と当接し、かつ、ダイパッド5の周囲を囲む段差部14が設けられ、段差部14は、上面視において、ダイパッド5と重ならないようにダイパッド5よりも外側に設けられ、ダイパッド5と段差部14との距離はグリス8の厚みよりも大きい。
【0060】
したがって、実施の形態1の場合と同様の効果が得られる。さらに段差部14は、ダイパッド5の周囲を囲んでいるため、ダイパッド5とヒートシンク9とが接続された後、グリス8が上面視において段差部14の外側へ漏れ広がることを抑制できる。
【0061】
半導体装置100は、振動を発生する機械または装置に使用される場合がある。グリス8が振動によって外部に濡れ広がると、実施の形態1では、モールド樹脂6とヒートシンク9との間に空隙ができる。その空隙により半導体素子1から発生する熱をヒートシンク9へ効率的に伝えることができず、放熱性が低下する可能性がある。さらに、実施の形態1では、グリス8は絶縁の役割を担っているため、空隙ができるとそこで部分放電が起こる可能性がある。これに対して、実施の形態4では、上記のように、ダイパッド5とヒートシンク9とが接続された後、段差部14によってグリス8が上面視において段差部14の外側へ漏れ広がることを抑制できるため、放熱性の低下および部分放電の発生を抑制することが可能となる。
【0062】
<実施の形態5>
本実施の形態は、上述した実施の形態1~4に係る半導体装置100を電力変換装置200に適用したものである。実施の形態1~4に係る半導体装置100の適用は特定の電力変換装置に限定されるものではないが、以下、実施の形態5として、三相のインバータに実施の形態1~4に係る半導体装置100を適用した場合について説明する。
【0063】
図9は、実施の形態5に係る電力変換装置200を適用した電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【0064】
図9に示す電力変換システムは、電源400、電力変換装置200、負荷300から構成される。電源400は、直流電源であり、電力変換装置200に直流電力を供給する。電源400は種々のもので構成することが可能であり、例えば、直流系統、太陽電池、蓄電池で構成することができるし、交流系統に接続された整流回路やAC/DCコンバータで構成することとしてもよい。また、電源400を、直流系統から出力される直流電力を所定の電力に変換するDC/DCコンバータによって構成することとしてもよい。
【0065】
電力変換装置200は、電源400と負荷300の間に接続された三相のインバータであり、電源400から供給された直流電力を交流電力に変換し、負荷300に交流電力を供給する。電力変換装置200は、
図9に示すように、直流電力を交流電力に変換して出力する主変換回路201と、主変換回路201を制御する制御信号を主変換回路201に出力する制御回路203とを備えている。
【0066】
負荷300は、電力変換装置200から供給された交流電力によって駆動される三相の電動機である。なお、負荷300は特定の用途に限られるものではなく、各種電気機器に搭載された電動機であり、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車、鉄道車両、エレベーター、もしくは、空調機器向けの電動機として用いられる。
【0067】
以下、電力変換装置200の詳細を説明する。主変換回路201は、スイッチング素子(図示せず)と還流ダイオード(図示せず)を備えており、スイッチング素子がスイッチングすることによって、電源400から供給される直流電力を交流電力に変換し、負荷300に供給する。主変換回路201の具体的な回路構成は種々のものがあるが、本実施の形態に係る主変換回路201は2レベルの三相フルブリッジ回路であり、6つのスイッチング素子とそれぞれのスイッチング素子に逆並列された6つの還流ダイオードから構成することができる。
【0068】
主変換回路201の各スイッチング素子と各還流ダイオードの少なくともいずれかについて、上述した実施の形態1,2のいずれかに相当する半導体装置100によって構成する。実施の形態5においては、一例として、主変換回路201は、実施の形態1に係る半導体装置100を備えている。6つのスイッチング素子は2つのスイッチング素子ごとに直列接続され上下アームを構成し、各上下アームはフルブリッジ回路の各相(U相、V相、W相)を構成する。そして、各上下アームの出力端子、すなわち主変換回路201の3つの出力端子は、負荷300に接続される。
【0069】
また、主変換回路201は、各スイッチング素子を駆動する駆動回路(図示せず)を備えているが、駆動回路は半導体装置100に内蔵されていてもよいし、半導体装置100とは別に駆動回路を備える構成であってもよい。駆動回路は、主変換回路201のスイッチング素子を駆動する駆動信号を生成し、主変換回路201のスイッチング素子の制御電極に供給する。具体的には、後述する制御回路203からの制御信号に従い、スイッチング素子をオン状態にする駆動信号とスイッチング素子をオフ状態にする駆動信号とを各スイッチング素子の制御電極に出力する。スイッチング素子をオン状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以上の電圧信号(オン信号)であり、スイッチング素子をオフ状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以下の電圧信号(オフ信号)となる。
【0070】
制御回路203は、負荷300に所望の電力が供給されるよう主変換回路201のスイッチング素子を制御する。具体的には、負荷300に供給すべき電力に基づいて主変換回路201の各スイッチング素子がオン状態となるべき時間(オン時間)を算出する。例えば、出力すべき電圧に応じてスイッチング素子のオン時間を変調するPWM制御によって主変換回路201を制御することができる。そして、各時点においてオン状態となるべきスイッチング素子にはオン信号を、オフ状態となるべきスイッチング素子にはオフ信号が出力されるよう、主変換回路201が備える駆動回路に制御指令(制御信号)を出力する。駆動回路は、この制御信号に従い、各スイッチング素子の制御電極にオン信号又はオフ信号を駆動信号として出力する。
【0071】
本実施の形態に係る電力変換装置200では、主変換回路201のスイッチング素子と還流ダイオードとして半導体装置100を適用するため、絶縁性の確保および放熱性の向上を実現することができる。
【0072】
本実施の形態では、2レベルの三相インバータに実施の形態1~4に係る半導体装置100を適用する例を説明したが、実施の形態1~4に係る半導体装置100の適用は、これに限られるものではなく、種々の電力変換装置に適用することができる。本実施の形態では、2レベルの電力変換装置としたが3レベルやマルチレベルの電力変換装置であっても構わないし、単相負荷に電力を供給する場合には単相のインバータに実施の形態1~4に係る半導体装置100を適用しても構わない。また、直流負荷等に電力を供給する場合にはDC/DCコンバータやAC/DCコンバータに実施の形態1~4に係る半導体装置100を適用することも可能である。
【0073】
また、実施の形態1~4に係る半導体装置100を適用した電力変換装置200は、上述した負荷が電動機の場合に限定されるものではなく、例えば、放電加工機やレーザー加工機、又は誘導加熱調理器や非接触給電システムの電源装置として用いることもでき、さらには太陽光発電システムや蓄電システム等のパワーコンディショナーとして用いることも可能である。
【0074】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【0075】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0076】
(付記1)
ダイパッドを含むリードフレームと、
前記ダイパッドにおける一方面に搭載された半導体素子と、
前記ダイパッドにおける一方面とは反対側の他方面を露出させた状態で、前記半導体素子および前記リードフレームを封止するモールド樹脂と、
前記モールド樹脂における前記ダイパッドの前記他方面が露出する一方面にグリスを介して配置されたヒートシンクと、を備え、
前記モールド樹脂における前記ダイパッドの前記他方面が露出する前記一方面には、先端が前記ヒートシンクと当接する突起部が設けられ、
前記突起部は、上面視において、前記ダイパッドと重ならないように前記ダイパッドよりも外側に設けられ、
前記ダイパッドと前記突起部との距離は前記グリスの厚みよりも大きい、半導体装置。
【0077】
(付記2)
前記ヒートシンクには、前記突起部と嵌合する凹部が設けられた、付記1に記載の半導体装置。
【0078】
(付記3)
ダイパッドを含むリードフレームと、
前記ダイパッドにおける一方面に搭載された半導体素子と、
前記ダイパッドにおける一方面とは反対側の他方面を露出させた状態で、前記半導体素子および前記リードフレームを封止するモールド樹脂と、
前記モールド樹脂における前記ダイパッドの前記他方面が露出する一方面にグリスを介して配置されたヒートシンクと、を備え、
前記モールド樹脂における前記ダイパッドの前記他方面が露出する前記一方面には、先端が前記ヒートシンクと当接し、かつ、前記ダイパッドの周囲を囲む段差部が設けられ、
前記段差部は、上面視において、前記ダイパッドと重ならないように前記ダイパッドよりも外側に設けられ、
前記ダイパッドと前記段差部との距離は前記グリスの厚みよりも大きい、半導体装置。
【0079】
(付記4)
付記1に記載の半導体装置を有し、入力される電力を変換して出力する主変換回路と、
前記主変換回路を制御する制御信号を前記主変換回路に出力する制御回路と、
を備えた、電力変換装置。
【0080】
(付記5)
付記3に記載の半導体装置を有し、入力される電力を変換して出力する主変換回路と、
前記主変換回路を制御する制御信号を前記主変換回路に出力する制御回路と、
を備えた、電力変換装置。
【符号の説明】
【0081】
1 半導体素子、3 リードフレーム、5 ダイパッド、6 モールド樹脂、7 突起部、8 グリス、9 ヒートシンク、14 段差部、100 半導体装置、200 電力変換装置、201 主変換回路、203 制御回路。