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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139938
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/10 20060101AFI20241003BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F25B1/10 B
F25B1/00 304H
F25B1/00 396G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050891
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼岡 亮
(57)【要約】
【課題】二段圧縮運転で利用される2つの圧縮機のうちの低段側圧縮機の信頼性の低下を抑制する。
【解決手段】冷凍サイクル装置は、低段側圧縮機と高段側圧縮機と水冷媒熱交換器と膨張弁と室外熱交換器とが順に接続されている冷媒回路と、低段側圧縮機と高段側圧縮機との両方が駆動される二段圧縮運転と、高段側圧縮機が駆動されて低段側圧縮機が停止する単段圧縮運転とを切り替える切替部と、二段圧縮運転が実行されているとき、低段側圧縮機が吐出する冷媒の過熱度を示す低段側吐出過熱度を算出する吐出過熱度算出部とを備えている。切替部は、予め定められた下限値より低段側吐出過熱度が小さいときに、単段圧縮運転に切り替える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低段側圧縮機と高段側圧縮機と凝縮器と膨張弁と蒸発器とが順に接続される冷媒回路と、
前記低段側圧縮機と前記高段側圧縮機との両方が駆動される二段圧縮運転と、前記低段側圧縮機と前記高段側圧縮機との何れか一方が駆動されて他方が停止する単段圧縮運転とを切り替える切替部と、
前記二段圧縮運転が実行されているとき、前記低段側圧縮機が吐出する冷媒の過熱度を示す吐出過熱度を算出する吐出過熱度算出部とを備え、
前記切替部は、予め定められた下限値より前記吐出過熱度が小さいときに、前記単段圧縮運転に切り替える
冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記切替部は、前記吐出過熱度が前記下限値より大きいときで、かつ、前記二段圧縮運転の圧縮効率が前記単段圧縮運転の圧縮効率より良好であるときに、前記二段圧縮運転に切り替える
請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記膨張弁の開度を調整する膨張弁制御部をさらに備え、
前記膨張弁制御部は、前記吐出過熱度が前記下限値より小さいときに、前記開度を絞り、
前記切替部は、前記吐出過熱度が前記下限値より小さいときで、かつ、前記開度が予め定められた閾値以下のときに、前記単段圧縮運転に切り替える
請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記低段側圧縮機から吐出される吐出冷媒の温度を検出する吐出温度センサと、
前記吐出冷媒の圧力を検出する吐出圧力センサとをさらに備え、
前記吐出過熱度算出部は、前記二段圧縮運転が実行されているときに、前記吐出温度センサが検出した吐出温度と、前記吐出圧力センサが検出した吐出圧力とに基づいて、前記吐出過熱度を算出する
請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記低段側圧縮機から吐出される吐出冷媒の温度を検出する吐出温度センサと、
前記低段側圧縮機に吸入される吸入冷媒の温度を検出する吸入温度センサと、
前記蒸発器に供給される冷媒の温度を検出する蒸発器入り口温度センサとをさらに備え、
前記吐出過熱度算出部は、前記二段圧縮運転が実行されているときに、前記吐出温度センサが検出した吐出温度と、前記吸入温度センサが検出した吸入温度と、前記蒸発器入り口温度センサが検出した蒸発器入り口温度とに基づいて、前記吐出過熱度を算出する
請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記冷媒の比熱比は、1.3以下である
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記冷媒は、HC冷媒を含む
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低段側圧縮機、高段側圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器が順に接続される冷媒回路を備える冷凍サイクル装置が知られている(特許文献1)。このような冷凍サイクル装置は、低段側圧縮機および高段側圧縮機のうち一方の圧縮機が駆動されて他方の圧縮機が停止する単段圧縮運転と、低段側圧縮機および高段側圧縮機が共に駆動される二段圧縮運転とに適宜切り替えることにより、圧縮効率を改善し、省エネ性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-165647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような冷凍サイクル装置で二段圧縮運転を行う際は、低段側圧縮機から吐出された冷媒を高段側圧縮機でさらに圧縮することで、低圧力から高圧力までの圧力上昇が実現される。このとき、高段側圧縮機から吐出される冷媒の過熱度よりも低段側圧縮機から吐出される冷媒の過熱度の方が小さい値となる。そのため、低圧と高圧の圧力差が小さい場合等において低段側圧縮機から吐出される冷媒の過熱度が、低段側圧縮機の仕様で設定された下限値を下回ることがある。冷媒の過熱度が下限値を下回ると、冷媒が冷凍機油に溶解する量が増加し、冷凍機油の粘度低下を発生させ、低段側圧縮機の信頼性を低下させるおそれがある。
【0005】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、二段圧縮運転で利用される2つの圧縮機のうちの低段側圧縮機の信頼性の低下を抑制する冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による冷凍サイクル装置は、低段側圧縮機と高段側圧縮機と凝縮器と膨張弁と蒸発器とが順に接続される冷媒回路と、前記低段側圧縮機と前記高段側圧縮機との両方が駆動される二段圧縮運転と、前記低段側圧縮機と前記高段側圧縮機との何れか一方が駆動され他方が停止する単段圧縮運転とを切り替える切替部と、前記二段圧縮運転が実行されているとき、前記低段側圧縮機が吐出する冷媒の過熱度を示す吐出過熱度を算出する吐出過熱度算出部とを備え、前記切替部は、予め定められた下限値より前記吐出過熱度が小さいときに、前記単段圧縮運転に切り替える。
【発明の効果】
【0007】
開示の冷凍サイクル装置は、二段圧縮運転で利用される2つの圧縮機のうちの低段側圧縮機の信頼性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1の冷凍サイクル装置が設けられている空気調和機を示す冷媒回路図である。
図2図2は、制御装置を示すブロック図である。
図3図3は、必要能力と単段圧縮運転効率との関係の一例を示し、必要能力と二段圧縮運転効率との関係の一例を示すグラフである。
図4図4は、圧縮運転切替動作を示すフローチャートである。
図5図5は、二段圧縮運転が実行されているときに冷媒回路における冷媒の状態変化の一例を示すモリエル線図である。
図6図6は、実施例2の冷凍サイクル装置が設けられている空気調和機を示す冷媒回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願が開示する実施形態にかかる冷凍サイクル装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の記載により本開示の技術が限定されるものではない。また、以下の記載においては、同一の構成要素に同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【実施例0010】
実施例1の冷凍サイクル装置は、図1に示されているように、空気調和機1に設けられている。図1は、実施例1の冷凍サイクル装置が設けられている空気調和機1を示す冷媒回路図である。空気調和機1は、室外機2と室内機3とを備えている。室外機2は、屋外に設置されている。室内機3は、屋内に設置されている。空気調和機1は、冷媒回路5をさらに備えている。冷媒回路5は、室外機2の内部に配置されている。冷媒回路5には、冷媒が循環する。冷媒は、比熱比が1.3以下である。例えば、炭化水素から形成されるHC冷媒を含み、具体的にはR290冷媒が用いられる。冷媒回路5は、低段側圧縮機11と高段側圧縮機12と四方弁14と水冷媒熱交換器15と膨張弁16と室外熱交換器17とアキュムレータ18とを備えている。
【0011】
低段側圧縮機11は、低段側吸入管21と低段側吐出管22とを備えている。低段側圧縮機11は、本体と回転体とを備え、回転体が本体に対して回転することにより、低段側吸入管21を介して低段側圧縮機11に供給される冷媒を圧縮し、圧縮された冷媒を低段側吐出管22に吐出する。低段側圧縮機11には、冷凍機油が貯留されている。冷凍機油は、本体と回転体との間の隙間に供給され、本体と回転体とを潤滑し、本体と回転体との間に働く摩擦力を低減し、隙間を介して冷媒が漏洩することを抑制する。低段側圧縮機11が単位時間あたりに冷媒を吐出する量は、回転体が単位時間あたりに回転する回転数が大きいほど大きい。低段側圧縮機11が冷媒を圧縮する圧縮比は、回転体が単位時間あたりに回転する回転数が大きいほど大きい。圧縮比は、低段側圧縮機11から吐出される冷媒の圧力を低段側圧縮機11に吸入される冷媒の圧力で除算した値を示している。
【0012】
高段側圧縮機12は、高段側吸入管23と高段側吐出管24とを備えている。高段側吸入管23は、低段側吐出管22に接続されている。高段側圧縮機12は、本体と回転体とを備え、回転体が本体に対して回転することにより、高段側吸入管23を介して高段側圧縮機12に供給される気相冷媒を圧縮し、圧縮された気相冷媒を高段側吐出管24に吐出する。高段側圧縮機12には、冷凍機油が貯留されている。冷凍機油は、本体と回転体との間の隙間に供給され、本体と回転体とを潤滑し、本体と回転体との間に働く摩擦力を低減し、隙間を介して冷媒が漏洩することを抑制する。高段側圧縮機12が単位時間あたりに冷媒を吐出する量は、回転体が単位時間あたりに回転する回転数が大きいほど大きい。高段側圧縮機12が冷媒を圧縮する圧縮比は、回転体が単位時間あたりに回転する回転数が大きいほど大きい。
【0013】
四方弁14は、高段側吐出管24を介して高段側圧縮機12に接続され、アキュムレータ18に接続され、室外熱交換器17に接続され、水冷媒熱交換器15に接続されている。四方弁14は、弁体を備え、弁体が暖房位置に配置されることにより冷媒回路5を暖房サイクルに切り替え、弁体が冷房位置に配置されることにより冷媒回路5を冷房サイクルに切り替える。冷媒回路5が暖房サイクルに切り替えられているときに、高段側吐出管24は、四方弁14を介して水冷媒熱交換器15に接続され、室外熱交換器17は、四方弁14を介してアキュムレータ18に接続される。冷媒回路5が冷房サイクルに切り替えられているときに、高段側吐出管24は、四方弁14を介して室外熱交換器17に接続され、水冷媒熱交換器15は、四方弁14を介してアキュムレータ18に接続される。
【0014】
水冷媒熱交換器15は、膨張弁16に接続されている。膨張弁16は、室外熱交換器17に接続されている。アキュムレータ18は、低段側吸入管21に接続され、低段側吸入管21を介して低段側圧縮機11に接続されている。
【0015】
冷媒回路5は、バイパス路25とバイパス開閉弁26とをさらに備えている。バイパス路25の一端は、低段側吸入管21に接続され、バイパス路25の他端は、高段側吸入管23に接続されている。バイパス開閉弁26は、バイパス路25の途中に設けられている。バイパス路25は、バイパス開閉弁26を開くことにより、低段側吸入管21に流れる冷媒を高段側吸入管23に合流させる。バイパス開閉弁26を閉じることにより、低段側吸入管21からバイパス路25を介して高段側吸入管23に冷媒が流れないように、バイパス路25が遮断される。
【0016】
空気調和機1は、水回路31をさらに備えている。水回路31は、ポンプ32と室内熱交換器33とを備え、ポンプ32と室内熱交換器33と水冷媒熱交換器15とを接続している。室内熱交換器33は、室内機3の内部に配置されている。ポンプ32は、室外機2の内部に配置されている。ポンプ32は、水回路31に水を循環させる。
【0017】
空気調和機1は、低段側吸入温度センサ41と低段側吐出温度センサ42と低段側吐出圧力センサ43と水冷媒熱交換器温度センサ44(蒸発器入り口温度センサ)と室外熱交換器温度センサ45(蒸発器入り口温度センサ)と高段側吐出温度センサ47と制御装置46とをさらに備えている。低段側吸入温度センサ41は、低段側吸入管21を流れ低段側圧縮機11に吸入される冷媒の温度を検出する。低段側吐出温度センサ42は、低段側吐出管22を流れ低段側圧縮機11から吐出される冷媒の温度を検出する。低段側吐出圧力センサ43は、低段側吐出管22を流れ低段側圧縮機11から吐出される冷媒の圧力を検出する。水冷媒熱交換器温度センサ44は、冷媒回路5が冷房サイクルに切り替えられているときに膨張弁16から水冷媒熱交換器15に供給される冷媒の温度を検出する。室外熱交換器温度センサ45は、冷媒回路5が暖房サイクルに切り替えられているときに膨張弁16から室外熱交換器17に供給される冷媒の温度を検出する。高段側吐出温度センサ47は、高段側圧縮機12から吐出され高段側吐出管24を流れる冷媒の温度を検出する。
【0018】
制御装置46は、室外機2の内部に配置されている。図2は、制御装置46を示すブロック図である。制御装置46は、コンピュータであり、記憶装置51とCPU52(Central Processing Unit)とを備えている。記憶装置51は、制御装置46にインストールされるコンピュータプログラムを記憶し、CPU52により利用される情報を記憶する。CPU52は、制御装置46にインストールされるコンピュータプログラムを実行し、低段側吸入温度センサ41と低段側吐出温度センサ42と低段側吐出圧力センサ43と水冷媒熱交換器温度センサ44と室外熱交換器温度センサ45と高段側吐出温度センサ47とから情報を取得し、低段側圧縮機11と高段側圧縮機12と四方弁14と膨張弁16とバイパス開閉弁26とポンプ32とを制御する。
【0019】
制御装置46は、コンピュータプログラムに従って、複数の機能を実行する。制御装置46は、複数の機能として、四方弁制御部53と圧縮効率算出部54と吐出過熱度算出部55と切替部56と膨張弁制御部57とを備えている。四方弁制御部53は、空気調和機1がユーザに操作されることに応じて冷媒回路5が暖房サイクルまたは冷房サイクルに切り替わるように、四方弁14を制御する。
【0020】
圧縮効率算出部54は、必要能力と圧力差とに基づいて単段圧縮効率と二段圧縮効率とを算出する。必要能力は、室内機3が設置されている部屋を空気調和機1が冷暖房するときに、空気調和機1に必要とされる能力を示している。圧力差は、室内機3が設置されている部屋を空気調和機1が冷暖房するときに、水冷媒熱交換器15を流れる冷媒の圧力から、室外熱交換器17を流れる冷媒の圧力を減算した値の絶対値を示している。単段圧縮効率は、単段圧縮運転が実行されたときの圧縮効率を示している。二段圧縮効率は、二段圧縮運転が実行されたときの圧縮効率を示している。このような単段圧縮効率と二段圧縮効率との算出方法は、公知であり、たとえば、特開2020-165647号公報に記載されている。
【0021】
吐出過熱度算出部55は、低段側吸入温度を低段側吸入温度センサ41から取得し、低段側吐出圧力を低段側吐出圧力センサ43から取得する。吐出過熱度算出部55は、低段側吸入温度と低段側吐出圧力とに基づいて低段側吐出過熱度を算出する。低段側吐出過熱度は、低段側圧縮機11から吐出された冷媒の過熱度である。
【0022】
切替部56は、圧縮効率算出部54により算出された単段圧縮効率と二段圧縮効率と、吐出過熱度算出部55により算出された低段側吐出過熱度と、下限値とに基づいて単段圧縮運転または二段圧縮運転のいずれかを実行するように、低段側圧縮機11と高段側圧縮機12とバイパス開閉弁26とを制御する。下限値は、低段側圧縮機11に固有の過熱度の下限値である。たとえば、低段側圧縮機11内で冷媒が冷凍機油に溶解する量が増加したり、低段側圧縮機11内の冷凍機油の粘度低下を発生させたりする過熱度よりも2~3℃大きい値が過熱度として設定される。
【0023】
膨張弁制御部57は、吐出過熱度算出部55により算出された低段側吐出過熱度に基づいて膨張弁16の開度が調整されるように、膨張弁16を制御する。
【0024】
図3は、必要能力Qと単段圧縮運転効率η1との関係の一例を示し、必要能力Qと二段圧縮運転効率η2との関係の一例を示すグラフである。図3のグラフは、必要能力Qが境界必要能力Qkより小さいときに、単段圧縮運転効率η1が二段圧縮運転効率η2より大きいことを示し、必要能力Qが境界必要能力Qkより大きいときに、二段圧縮運転効率η2が単段圧縮運転効率η1より大きいことを示している。このとき、切替部56は、必要能力Qが境界必要能力Qkより小さいときに単段圧縮運転が実行されるように、必要能力Qが境界必要能力Qkより大きいときに二段圧縮運転が実行されるように、低段側圧縮機11と高段側圧縮機12とバイパス開閉弁26とを制御する。
【0025】
空気調和機1が実行する動作は、冷房運転と暖房運転と圧縮運転切替動作とを含んでいる。
[冷房運転]
冷房運転は、たとえば、空気調和機1がユーザにより冷房運転を実行するように操作されたときに実行される。制御装置46は、空気調和機1が冷房運転を実行するときに、バイパス開閉弁26を閉じ、バイパス路25を介して低段側吸入管21から高段側吸入管23に冷媒が流れないようにバイパス路25を遮断する。
制御装置46は、空気調和機1が冷房運転を実行するときに、さらに、四方弁14を制御し、冷媒回路5を冷房サイクルに切り替える。
【0026】
制御装置46は、低段側圧縮機11を制御し、低段側吸入管21を介して低段側圧縮機11に供給されたガス冷媒を圧縮する。ガス冷媒は、低段側圧縮機11により圧縮され、中間圧気相冷媒になる。低段側圧縮機11は、中間圧気相冷媒を低段側吐出管22に吐出する。低段側吐出管22に吐出された中間圧気相冷媒は、高段側吸入管23に供給され、高段側吸入管23を介して高段側圧縮機12に供給される。
【0027】
制御装置46は、高段側圧縮機12を制御し、高段側吸入管23を介して高段側圧縮機12に供給された中間圧気相冷媒を圧縮する。中間圧気相冷媒は、高段側圧縮機12により圧縮され、高圧気相冷媒になる。高段側圧縮機12は、高圧気相冷媒を高段側吐出管24に吐出する。高段側吐出管24に吐出された高圧気相冷媒は、冷媒回路5が冷房サイクルに切り替えられていることにより、室外熱交換器17に供給される。
【0028】
室外熱交換器17は、四方弁14から供給された高圧気相冷媒と外気とを熱交換する。高圧気相冷媒は、室外熱交換器17で外気に放熱して凝縮し、過冷却状態の高圧液相冷媒になる。すなわち、室外熱交換器17は、空気調和機1が冷房運転を実行するときに、凝縮器として機能する。室外熱交換器17から流出した高圧液相冷媒は、膨張弁16に供給される。
【0029】
膨張弁16は、室外熱交換器17から水冷媒熱交換器15に流れる冷媒の流量を調節し、室外熱交換器17から供給された高圧液相冷媒を減圧する。高圧液相冷媒は、膨張弁16により減圧され、低圧気液二相冷媒になる。膨張弁16から流出した低圧気液二相冷媒は、水冷媒熱交換器15に供給される。
【0030】
水冷媒熱交換器15は、膨張弁16から供給された低圧気液二相冷媒と、水回路31を循環する水とを熱交換する。低圧気液二相冷媒は、水冷媒熱交換器15で加熱されて蒸発し、低圧気相冷媒になる。すなわち、水冷媒熱交換器15は、空気調和機1が冷房運転を実行するときに、蒸発器として機能する。水冷媒熱交換器15から流出した低圧気相冷媒は、四方弁14に供給される。四方弁14に供給された低圧気相冷媒は、冷媒回路5が冷房サイクルに切り替えられていることにより、アキュムレータ18に供給される。
【0031】
アキュムレータ18は、四方弁14から供給された冷媒を液冷媒とガス冷媒とに分離する。アキュムレータ18は、ガス冷媒を低段側吸入管21に供給し、低段側吸入管21を介してガス冷媒を低段側圧縮機11に供給する。
【0032】
制御装置46は、さらに、ポンプ32を制御し、水冷媒熱交換器15から供給される水を室内熱交換器33に供給し、水を水回路31に循環させる。水冷媒熱交換器15は、膨張弁16から供給された低圧気液二相冷媒と、水回路31を循環する水とが熱交換されることにより、室内熱交換器33から供給された水を冷却する。室内熱交換器33により冷却された水は、ポンプ32を介して室内熱交換器33に供給される。
【0033】
室内熱交換器33は、水冷媒熱交換器15により冷却された水と、室内機3が設置されている部屋の空気とを熱交換し、水を加熱し、室内機3が設置されている部屋の空気を冷却する。室内熱交換器33により加熱された水は、水冷媒熱交換器15に供給される。室内機3は、室内熱交換器33により冷却された空気を、室内機3が設置されている部屋に吹き出し、その部屋を冷房する。
【0034】
[暖房運転]
暖房運転は、たとえば、空気調和機1がユーザにより暖房運転を実行するように操作されたときに実行される。制御装置46は、空気調和機1が暖房運転を実行するときに、バイパス開閉弁26を閉じ、バイパス路25を介して低段側吸入管21から高段側吸入管23に冷媒が流れないようにバイパス路25を遮断する。制御装置46は、空気調和機1が暖房運転を実行するときに、さらに、四方弁14を制御し、冷媒回路5を暖房サイクルに切り替える。
【0035】
制御装置46は、低段側圧縮機11を制御し、低段側吸入管21を介して低段側圧縮機11に供給されたガス冷媒を圧縮する。ガス冷媒は、低段側圧縮機11により圧縮され、中間圧気相冷媒になる。低段側圧縮機11は、中間圧気相冷媒を低段側吐出管22に吐出する。低段側吐出管22に吐出された中間圧気相冷媒は、高段側吸入管23に供給され、高段側吸入管23を介して高段側圧縮機12に供給される。
【0036】
制御装置46は、高段側圧縮機12を制御し、高段側吸入管23を介して高段側圧縮機12に供給された中間圧気相冷媒を圧縮する。中間圧気相冷媒は、高段側圧縮機12により圧縮され、高圧気相冷媒になる。高段側圧縮機12は、高圧気相冷媒を高段側吐出管24に吐出する。高段側吐出管24に吐出された高圧気相冷媒は、冷媒回路5が暖房サイクルに切り替えられていることにより、水冷媒熱交換器15に供給される。
【0037】
水冷媒熱交換器15は、四方弁14から供給された高圧気相冷媒と、水回路31を循環する水とを熱交換する。高圧気相冷媒は、水冷媒熱交換器15で水に放熱して凝縮し、過冷却状態の高圧液相冷媒になる。すなわち、水冷媒熱交換器15は、空気調和機1が暖房運転を実行するときに、凝縮器として機能する。水冷媒熱交換器15から流出した高圧液相冷媒は、膨張弁16に供給される。
【0038】
膨張弁16は、水冷媒熱交換器15から室外熱交換器17に流れる冷媒の流量を調節し、水冷媒熱交換器15から供給された高圧液相冷媒を減圧する。高圧液相冷媒は、膨張弁16により減圧され、低圧気液二相冷媒になる。膨張弁16から流出した低圧気液二相冷媒は、室外熱交換器17に供給される。
【0039】
室外熱交換器17は、膨張弁16から供給された低圧気液二相冷媒と外気とを熱交換する。低圧気液二相冷媒は、室外熱交換器17で加熱されて蒸発し、低圧気相冷媒になる。すなわち、室外熱交換器17は、空気調和機1が暖房運転を実行するときに、蒸発器として機能する。室外熱交換器17から流出した低圧気相冷媒は、四方弁14に供給される。四方弁14に供給された低圧気相冷媒は、冷媒回路5が暖房サイクルに切り替えられていることにより、アキュムレータ18に供給される。
【0040】
アキュムレータ18は、四方弁14から供給された低圧気相冷媒を液冷媒とガス冷媒とに分離する。アキュムレータ18は、ガス冷媒を低段側吸入管21に供給し、低段側吸入管21を介してガス冷媒を低段側圧縮機11に供給する。
【0041】
制御装置46は、さらに、ポンプ32を制御し、水冷媒熱交換器15から供給される水を室内熱交換器33に供給し、水を水回路31に循環させる。水冷媒熱交換器15は、膨張弁16から供給された低圧気液二相冷媒と、水回路31を循環する水とが熱交換されることにより、室内熱交換器33から供給された水を加熱する。室内熱交換器33により加熱された水は、ポンプ32を介して室内熱交換器33に供給される。
【0042】
室内熱交換器33は、水冷媒熱交換器15により加熱された水と、室内機3が設置されている部屋の空気とを熱交換し、水を冷却し、室内機3が設置されている部屋の空気を加熱する。室内熱交換器33により冷却された水は、水冷媒熱交換器15に供給される。室内機3は、室内熱交換器33により加熱された空気を、室内機3が設置されている部屋に吹き出し、その部屋を暖房する。
【0043】
[圧縮運転切替動作]
圧縮運転切替動作は、暖房運転または冷房運転が実行されているときに実行される。図4は、圧縮運転切替動作を示すフローチャートである。制御装置46は、暖房運転または冷房運転が実行されているときに、単段圧縮運転効率η1と二段圧縮運転効率η2とを算出する(ステップS1)。制御装置46は、二段圧縮運転効率η2が単段圧縮運転効率η1より大きいときに(ステップS2、Yes)、もし単段圧縮運転をしている場合は二段圧縮運転に切り替え、二段圧縮運転をしている場合はそれを維持する(ステップS3)。すなわち、制御装置46は、バイパス開閉弁26を閉じ、バイパス路25に冷媒が流れないようにバイパス路25を遮断し、低段側圧縮機11を駆動し、高段側圧縮機12を駆動する。
【0044】
二段圧縮運転が実行されているときに、低段側圧縮機11は、低段側吸入管21を介して低段側圧縮機11に供給されたガス冷媒を圧縮する。ガス冷媒は、低段側圧縮機11により圧縮され、中間圧気相冷媒になる。低段側圧縮機11は、中間圧気相冷媒を低段側吐出管22に吐出する。低段側吐出管22に吐出された中間圧気相冷媒は、高段側吸入管23に供給され、高段側吸入管23を介して高段側圧縮機12に供給される。高段側圧縮機12は、高段側吸入管23を介して高段側圧縮機12に供給された中間圧気相冷媒を圧縮する。中間圧気相冷媒は、高段側圧縮機12により圧縮され、高圧気相冷媒になる。高段側圧縮機12は、高圧気相冷媒を高段側吐出管24に吐出する。
【0045】
制御装置46は、二段圧縮運転が実行されているときに、低段側圧縮機11および高段側圧縮機12の回転数制御を実行する。高段側圧縮機12の回転数制御では、制御装置46は、室内機3が設置されている部屋の室温と、ユーザの操作により設定されている設定温度とに基づいて温度差を算出する。温度差は、室温から設定温度を減算した値の絶対値を示している。制御装置46は、温度差が大きいほど高段側圧縮機12の回転数が大きくなるように、高段側圧縮機12を制御する。
【0046】
制御装置46は、二段圧縮運転が実行されているときに、さらに、低段側吐出温度センサ42により検出された低段側吐出温度と、低段側吐出圧力センサ43により検出された低段側吐出圧力とに基づいて低段側吐出過熱度を算出する(ステップS4)。低段側吐出過熱度は、低段側圧縮機11から吐出される冷媒の過熱度を示し、低段側吐出管22を流れる冷媒の過熱度を示している。制御装置46は、下限値より低段側吐出過熱度が小さいときに(ステップS5、Yes)、膨張弁16の開度を所定量だけ絞る(ステップS6)。
【0047】
制御装置46は、膨張弁16の開度が絞られた後に膨張弁16の開度と閾値との大小関係を判定する(ステップS7)。閾値は、膨張弁16の最小開度、若しくはそれに近い開度が設定される。制御装置46は、単段圧縮運転効率η1が二段圧縮運転効率η2より大きいときに(ステップS2、No)単段圧縮運転に切り替える(ステップS8)。また、膨張弁16の開度が閾値に等しいか閾値より小さいとき(ステップS7、No)、二段圧縮運転を継続しながら低段側圧縮機11から吐出される冷媒の過熱度を下限値以上に上昇させることが困難であるため、単段圧縮運転に切り替える(ステップS8)。すなわち、制御装置46は、バイパス開閉弁26を開き、バイパス路25を介して低段側吸入管21を高段側吸入管23に接続し、低段側圧縮機11を停止する。
【0048】
単段圧縮運転が実行されているときに、バイパス開閉弁26が開いていることにより、かつ、低段側圧縮機11が停止していることにより、低段側吸入管21に供給されたガス冷媒は、バイパス路25を介して高段側吸入管23に供給され、高段側吸入管23を介して高段側圧縮機12に供給される。高段側圧縮機12は、高段側圧縮機12に供給された低圧気相冷媒を圧縮する。低圧気相冷媒は、高段側圧縮機12により圧縮され、高圧気相冷媒になる。高段側圧縮機12は、高圧気相冷媒を高段側吐出管24に吐出する。
【0049】
制御装置46は、単段圧縮運転が実行されているときに、高段側圧縮機12の回転数制御と膨張弁16の開度制御とを実行する。高段側圧縮機12の回転数制御では、制御装置46は、室内機3が設置されている部屋の室温と、ユーザの操作により設定されている設定温度とに基づいて温度差を算出する。制御装置46は、温度差が大きいほど高段側圧縮機12の回転数が大きくなるように、高段側圧縮機12を制御する。
【0050】
膨張弁16の開度制御では、制御装置46は、高段側吐出温度センサ47の検出値が目標吐出温度に等しくなるように、膨張弁16を制御する。すなわち、制御装置46は、高段側吐出管24を流れる冷媒の温度を示す吐出温度が、予め定められた目標吐出温度より低いときに膨張弁16開度が大きくなるように、吐出温度が目標吐出温度より高いときに膨張弁16開度が小さくなるように、膨張弁16を制御する。目標吐出温度は、凝縮圧力、蒸発圧力、低段側圧縮機11の回転数等から算出され、圧縮機の吸入冷媒が最適な状態となる吐出温度の目標値である。
【0051】
制御装置46は、低段側過熱度が下限値より大きいときに(ステップS5、No)、または、膨張弁16の開度が閾値より大きいときに(ステップS7、Yes)、または、単段圧縮運転に切り替られた後に、予め定められた制御間隔(マスク時間=n分)だけ待機する(ステップS9)。制御間隔は、膨張弁16の開度が変化してから低段側吐出過熱度が変化するまでの時間に等しく、たとえば、1分である。制御装置46は、制御間隔待機した後に、ステップS1~S9の処理を繰り返し実行する。
【0052】
図5は、二段圧縮運転が実行されているときに冷媒回路5における冷媒の状態変化の一例を示すモリエル線図である。低段側吐出過熱度ΔT2は、低段側圧縮機11が吐出する冷媒61の過熱度を示し、モリエル線図上の冷媒61の圧力に対応する温度を、冷媒61の温度から減算した差である。低段側吐出過熱度ΔT2は、低段側吐出温度センサ42により検出された低段側吐出温度と、低段側吐出圧力センサ43により検出された低段側吐出圧力とに基づいて算出することができる。
【0053】
高段側吐出過熱度ΔT1は、高段側圧縮機12が吐出する冷媒62の過熱度を示している。冷媒62は、高段側圧縮機12により冷媒61が圧縮されることにより、冷媒61から状態変化したものである。このため、低段側吐出過熱度ΔT2は、高段側吐出過熱度ΔT1より小さい。低段側吐出過熱度ΔT2は、さらに、低段側圧縮機11に設定された下限値より小さくなることがある。低段側吐出過熱度ΔT2が下限値より小さいときに、低段側圧縮機11に貯留される冷凍機油に冷媒61が溶解する量が増加し、冷凍機油の粘度低下を発生させ、低段側圧縮機11の信頼性を低下させるおそれがある。
【0054】
空気調和機1は、二段圧縮運転が実行されているときで、かつ、低段側吐出過熱度ΔT2が下限値より小さいときに、膨張弁16の開度が絞られたり、単段圧縮運転に切り替えられたりしている。低段側吐出過熱度ΔT2は、膨張弁16の開度が絞られることにより、上昇する。このため、空気調和機1は、低段側吐出過熱度ΔT2が下限値より小さくなることを防止することができる。また、低段側圧縮機11は、単段圧縮運転に切り替えられることにより、停止する。このため、空気調和機1は、下限値より小さい過熱度の冷媒を低段側圧縮機11が吐出することを防止することができる。この結果、空気調和機1は、低段側圧縮機11の信頼性が低下することを抑制することができる。
【0055】
HC冷媒に例示される比熱比が小さい冷媒は、冷媒回路5を循環するときに、比熱比が大きい他の冷媒に比較して、低段側吐出過熱度ΔT2が小さくなる傾向がある。空気調和機1は、低段側吐出過熱度ΔT2が小さくならないように単段圧縮運転と二段圧縮運転とを切り替えることにより、HC冷媒に例示される比熱比が1.3以下である冷媒が用いられたときでも、低段側吐出過熱度ΔT2を下限値より大きくすることができ、低段側圧縮機11の信頼性が低下することを抑制することができる。比熱比が1.3以下の冷媒としてはR1234yf、R454C、R290が例示され、HC冷媒としてはR290が例示される。
【0056】
[実施例1の冷凍サイクル装置の効果]
実施例1の冷凍サイクル装置は、冷媒回路5と切替部56と吐出過熱度算出部55とを備えている。冷媒回路5が冷房サイクルに切り替えられているときに、冷媒回路5は、低段側圧縮機11と高段側圧縮機12と水冷媒熱交換器15と膨張弁16と室外熱交換器17とが順に接続されている。冷媒回路5が暖房サイクルに切り替えられているときに、冷媒回路5は、低段側圧縮機11と高段側圧縮機12と室外熱交換器17と膨張弁16と水冷媒熱交換器15とが順に接続されている。切替部56は、低段側圧縮機11と高段側圧縮機12との両方が駆動される二段圧縮運転と、高段側圧縮機12が駆動されて低段側圧縮機11が停止する単段圧縮運転とを切り替える。吐出過熱度算出部55は、二段圧縮運転が実行されているとき、低段側圧縮機11が吐出する冷媒の過熱度を示す低段側吐出過熱度ΔT2を算出する。切替部56は、予め定められた下限値より低段側吐出過熱度ΔT2が小さいときに、単段圧縮運転に切り替える。実施例1の冷凍サイクル装置は、二段圧縮運転効率η2が単段圧縮運転効率η1より高いときであっても、低段側圧縮機11の低段側吐出過熱度ΔT2が下限値より小さいときに単段圧縮運転に切り替えることにより、信頼性が低下することを抑制することができる。
【0057】
また、実施例1の冷凍サイクル装置の切替部56は、低段側吐出過熱度ΔT2が下限値より大きいときで、かつ、二段圧縮運転効率η2が単段圧縮運転効率η1よりときに、二段圧縮運転に切り替える。このとき、実施例1の冷凍サイクル装置は、信頼性低下を抑制しつつ、圧縮効率を向上させることができる。
【0058】
また、実施例1の冷凍サイクル装置は、膨張弁16の開度を調整する膨張弁制御部57をさらに備えている。膨張弁制御部57は、低段側吐出過熱度ΔT2が下限値より小さいときに、膨張弁16の開度を絞る。切替部56は、低段側吐出過熱度ΔT2が下限値より小さいときで、かつ、開度が予め定められた閾値以下のときに、単段圧縮運転に切り替える。実施例1の冷凍サイクル装置は、二段圧縮運転時において低段側吐出過熱度ΔT2が下限値を下回ることによる低段側圧縮機11の信頼性低下を抑制することができる。
【0059】
また、実施例1の冷凍サイクル装置の冷媒回路5を循環する冷媒は、HC冷媒を含んでいる。また、実施例1の冷凍サイクル装置の冷媒回路5を循環する冷媒は、比熱比が1.3以下である。このような冷媒は、低段側吐出過熱度ΔT2が小さくなる傾向がある。実施例1の冷凍サイクル装置は、このような冷媒が用いられたときでも、低段側吐出過熱度ΔT2が下限値を下回ることを抑制でき、低段側圧縮機11の信頼性が低下することを抑制することができる。ところで、既述の実施例1の冷凍サイクル装置では、冷媒回路5にHC冷媒を循環させているが、HC冷媒と異なる他の冷媒を冷媒回路5に循環させてもよい。また、既述の実施例1の冷凍サイクル装置では、冷媒回路5に比熱比が1.3以下である冷媒を循環させているが、比熱比が1.3より大きい冷媒を冷媒回路5に循環させてもよい。このような冷媒が冷媒回路5を循環する場合でも、冷凍サイクル装置は、低段側吐出過熱度ΔT2が下限値より低くなることを抑制し、低段側圧縮機11信頼性が低下することを抑制することができる。
【0060】
また、実施例1の冷凍サイクル装置は、低段側圧縮機11から吐出される吐出冷媒の温度を検出する低段側吐出温度センサ42と、吐出冷媒の圧力を検出する低段側吐出圧力センサ43とをさらに備えている。吐出過熱度算出部55は、二段圧縮運転が実行されているときに、低段側吐出温度センサ42が検出した低段側吐出温度と、低段側吐出圧力センサ43が検出した低段側吐出圧力とに基づいて、低段側吐出過熱度ΔT2を算出する。このとき、実施例1の冷凍サイクル装置は、低段側吐出過熱度ΔT2を適切に算出することができ、低段側吐出過熱度ΔT2が下限値より小さいときに、単段圧縮運転に確実に切り替えたり、膨張弁16の開度を確実に絞ったりすることができる。
【0061】
ところで、既述の実施例1の冷凍サイクル装置の吐出過熱度算出部55は、二段圧縮運転が実行されているときに、低段側吐出圧力に基づいて低段側吐出過熱度ΔT2を算出しているが、低段側吐出圧力を用いないで低段側吐出過熱度ΔT2を算出してもよい。低段側吐出圧力は、図5に示されているように、低段側圧縮機11に吸入される冷媒63の温度と、蒸発器入り口温度とに基づいて算出することができる。蒸発器入り口温度は、冷媒回路5のうちの低段側圧縮機11の前段の蒸発器を流れる冷媒の温度を示し、冷媒回路5が冷房サイクルに切り替えられているときに水冷媒熱交換器15を流れる冷媒の温度を示し、冷媒回路5が暖房サイクルに切り替えられているときに室外熱交換器17を流れる冷媒の温度を示している。
【0062】
このため、吐出過熱度算出部55は、二段圧縮運転が実行されているときに、低段側吐出温度センサ42が検出した低段側吐出温度と、低段側吐出圧力センサ43が検出した低段側吐出圧力と、冷媒回路5が冷房サイクルに切り替えられているときに水冷媒熱交換器温度センサ44が検出した蒸発器入り口温度とに基づいて、低段側吐出過熱度ΔT2を算出する。吐出過熱度算出部55は、二段圧縮運転が実行されているときに低段側吐出温度センサ42が検出した吐出温度と、低段側吐出圧力センサ43が検出した吐出圧力と、冷媒回路5が暖房サイクルに切り替えられているときに室外熱交換器温度センサ45が検出した蒸発器入り口温度とに基づいて、低段側吐出過熱度ΔT2を算出する。このとき、実施例1の冷凍サイクル装置は、低段側吐出圧力センサ43を用いないで、低段側吐出過熱度ΔT2を適切に算出することができる。このため、実施例1の冷凍サイクル装置は、低段側吐出圧力センサ43を省略することができ、低段側吐出圧力センサ43が省略されることにより、製造コストを低減することができる。
【0063】
ところで、既述の実施例1の冷凍サイクル装置のバイパス開閉弁26は、制御装置46に制御されて開いたり閉じたりするが、制御装置46に制御されないチェック弁に置換されてもよい。このチェック弁は、低段側吸入管21を流れる冷媒の圧力が、高段側吸入管23を流れる冷媒の圧力より高いときに、開き、低段側吸入管21を流れる冷媒の圧力が、高段側吸入管23を流れる冷媒の圧力より高くないときに、閉じる。このため、バイパス路25は、低段側圧縮機11が駆動されているときに、高段側吸入管23から低段側吸入管21に冷媒が流れないように、遮断され、低段側圧縮機11が停止しているときに、低段側吸入管21に流れる冷媒を高段側吸入管23に合流させる。このようなチェック弁が設けられた冷凍サイクルは、低段側圧縮機11が駆動されたり停止したりすることにより、既述の実施例1の冷凍サイクル装置と同様に、単段圧縮運転と二段圧縮運転とを切り替えることができる。このため、このようなチェック弁が設けられた冷凍サイクルは、既述の実施例1の冷凍サイクル装置と同様に、低段側圧縮機11の信頼性が低下することを抑制することができる。
【実施例0064】
ところで、既述の実施例1の冷凍サイクル装置は、単段圧縮運転に切り替えられたときに、高段側圧縮機12が駆動されて低段側圧縮機11が停止しているが、高段側圧縮機12が停止して低段側圧縮機11が駆動されてもよい。実施例2の冷凍サイクル装置は、図6に示されているように、既述の実施例1の冷凍サイクル装置のバイパス路25とバイパス開閉弁26とが他のバイパス路71と他のバイパス開閉弁72とに置換され、他の部分は、既述の実施例1の冷凍サイクル装置と同じである。図6は、実施例2の冷凍サイクル装置が設けられている空気調和機を示す冷媒回路図である。
【0065】
バイパス路71の一端は、高段側吸入管23に接続され、バイパス路71の他端は、高段側吐出管24に接続されている。バイパス開閉弁72は、バイパス路71の途中に設けられている。バイパス路71は、バイパス開閉弁72が開放されることにより、高段側吸入管23に流れる冷媒を高段側吐出管24に合流させる。バイパス路71は、バイパス開閉弁72を閉じることにより、高段側吸入管23から高段側吐出管24にバイパス路71を介して冷媒が流れないように、遮断される。
【0066】
実施例2の冷凍サイクル装置の動作は、既述の実施例1の冷凍サイクル装置の圧縮運転切替動作のうちのステップS3の処理とステップS8の処理とが他の処理に置換され、他の動作は、既述の実施例1の冷凍サイクル装置の動作と同じである。すなわち、二段圧縮運転に切り替えられたときに、制御装置46は、バイパス開閉弁72を閉じ、バイパス路71に冷媒が流れないようにバイパス路71を遮断し、低段側圧縮機11を駆動し、高段側圧縮機12を駆動する。このとき、低段側圧縮機11は、低段側吸入管21を介して低段側圧縮機11に供給されたガス冷媒を圧縮する。ガス冷媒は、低段側圧縮機11により圧縮され、中間圧気相冷媒になる。低段側圧縮機11は、中間圧気相冷媒を低段側吐出管22に吐出する。低段側吐出管22に吐出された中間圧気相冷媒は、高段側吸入管23に供給され、高段側吸入管23を介して高段側圧縮機12に供給される。高段側圧縮機12は、高段側吸入管23を介して高段側圧縮機12に供給された中間圧気相冷媒を圧縮する。中間圧気相冷媒は、高段側圧縮機12により圧縮され、高圧気相冷媒になる。高段側圧縮機12は、高圧気相冷媒を高段側吐出管24に吐出する。
【0067】
単段圧縮運転に切り替えられたときに、制御装置46は、バイパス開閉弁72を開き、バイパス路71を介して高段側吸入管23を高段側吐出管24に接続し、低段側圧縮機11を駆動し、高段側圧縮機12を停止する。このとき、低段側圧縮機11は、低段側吸入管21を介して低段側圧縮機11に供給されたガス冷媒を圧縮する。ガス冷媒は、低段側圧縮機11により圧縮され、高圧気相冷媒になる。低段側圧縮機11は、高圧気相冷媒を低段側吐出管22に吐出する。低段側吐出管22に吐出された高圧気相冷媒は、高段側吸入管23に供給される。バイパス開閉弁72を開くことにより、かつ、高段側圧縮機12が停止していることにより、高段側吸入管23に供給されたガス冷媒は、バイパス路71を介して高段側吐出管24に供給される。
【0068】
実施例2の冷凍サイクル装置は、既述の実施例1の冷凍サイクル装置と同様に単段圧縮運転と二段圧縮運転とが切り替わることにより、既述の実施例1の冷凍サイクル装置と同様に信頼性が低下することを抑制することができる。
【0069】
ところで、既述の実施例2の冷凍サイクル装置のバイパス開閉弁72は、制御装置46に制御されて開いたり閉じたりするが、制御装置46に制御されないチェック弁に置換されてもよい。チェック弁は、高段側吸入管23を流れる冷媒の圧力が、高段側吐出管24を流れる冷媒の圧力より高いときに、開き、高段側吸入管23を流れる冷媒の圧力が、高段側吐出管24を流れる冷媒の圧力より高くないときに、閉じる。このため、バイパス路25は、高段側圧縮機12が停止しているときに、高段側吸入管23に流れる冷媒を高段側吐出管24に合流させ、高段側圧縮機12が駆動されているときに、高段側吐出管24から高段側吸入管23に冷媒が流れないように、遮断される。このようなチェック弁が設けられた冷凍サイクルは、高段側圧縮機12が駆動されたり停止したりすることにより、既述の実施例2の冷凍サイクル装置と同様に、単段圧縮運転と二段圧縮運転とを切り替えることができる。このため、このようなチェック弁が設けられた冷凍サイクルは、既述の実施例2の冷凍サイクル装置と同様に、低段側圧縮機11の信頼性が低下することを抑制することができる。
【0070】
ところで、既述の実施例の冷凍サイクル装置の冷媒回路は、冷房サイクルまたは暖房サイクルに切り替わるが、冷房専用、若しくは、暖房専用であってもよい。冷凍サイクル装置は、冷媒回路5が冷房専用又は暖房専用のときでも、単段圧縮運転と二段圧縮運転とが切り替わることにより、既述の実施例1の冷凍サイクル装置と同様に、低段側圧縮機11の信頼性が低下することを抑制することができる。
【0071】
ところで、既述の実施例の冷凍サイクル装置の水回路31には、水が循環しているが、水と異なる熱媒体が循環してもよい。その熱媒体としては、不凍液が例示される。冷凍サイクル装置は、水と異なる熱媒体が水回路31に循環するときでも、既述の実施例の冷凍サイクル装置と同様に、低段側圧縮機11の信頼性が低下することを抑制することができる。
【0072】
ところで、既述の実施例の冷凍サイクル装置は、水冷媒熱交換器15が設けられているが、水冷媒熱交換器15が他の室内熱交換器に置換されてもよい。この室内熱交換器は、室内機3の内部に配置され、冷媒回路5を循環する冷媒と、室内機3が設置されている部屋の空気とを熱交換する。室内機3は、室内熱交換器により熱交換された空気を、室内機3が設置されている部屋に吹き出し、その部屋を冷暖房する。このようなときでも、冷凍サイクル装置は、既述の実施例の冷凍サイクル装置と同様に単段圧縮運転と二段圧縮運転とが切り替わることにより、低段側圧縮機11の信頼性が低下することを抑制することができる。
【0073】
以上、実施例を説明したが、前述した内容により実施例が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施例の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。
【符号の説明】
【0074】
1 :空気調和機
2 :室外機
3 :室内機
5 :冷媒回路
11:低段側圧縮機
12:高段側圧縮機
15:水冷媒熱交換器
16:膨張弁
17:室外熱交換器
21:低段側吸入管
22:低段側吐出管
23:高段側吸入管
24:高段側吐出管
41:低段側吸入温度センサ
42:低段側吐出温度センサ
43:低段側吐出圧力センサ
44:水冷媒熱交換器温度センサ
45:室外熱交換器温度センサ
54:圧縮効率算出部
55:吐出過熱度算出部
56:切替部
図1
図2
図3
図4
図5
図6