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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013994
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】流路チップ
(51)【国際特許分類】
   B03C 5/00 20060101AFI20240125BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20240125BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20240125BHJP
【FI】
B03C5/00 Z
G01N37/00 101
C12M1/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116506
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】浦川 哲
(72)【発明者】
【氏名】真田 雅和
【テーマコード(参考)】
4B029
4D054
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA08
4B029BB11
4B029CC01
4B029FA04
4B029FA05
4B029HA06
4D054FA06
4D054FB09
4D054FB20
(57)【要約】
【課題】試料液をより多く処理することが可能な流路チップを提供する。
【解決手段】流路チップ1は、複数のフィルタ層40と、第1共通供給路5と、共通流路7と、誘電泳動層50とを備える。複数のフィルタ層40は、各々がHDF3を有する。第1共通供給路5は、複数のフィルタ層40のHDF3に試料液L1を供給する。共通流路7には、複数のHDF3を通過した液が通過する。誘電泳動層50は、共通流路7を通過する液に含有される誘電体粒子を誘電泳動させる電極51および電極53を有する。複数のフィルタ層40および誘電泳動層50は、積層される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が流体力学的フィルタを有する複数のフィルタ層と、
前記複数のフィルタ層の前記流体力学的フィルタに試料液を供給する共通供給路と、
前記複数の流体力学的フィルタを通過した液が通過する共通流路と、
前記共通流路を通過する液に含有される誘電体粒子を誘電泳動させる電極を有する誘電泳動層と
を備え、
前記複数のフィルタ層および前記誘電泳動層は、積層される、流路チップ。
【請求項2】
前記複数のフィルタ層は、
前記誘電泳動層に積層される第1フィルタ層と、
前記第1フィルタ層に積層される1つ以上の第2フィルタ層と
を含み、
前記共通流路は、前記第1フィルタ層に配置される、請求項1に記載の流路チップ。
【請求項3】
前記複数のフィルタ層は、前記第2フィルタ層を複数含み、
前記流路チップは、複数の前記第2フィルタ層の前記流体力学的フィルタの出口と前記共通流路とを接続する複数の出口側接続流路を備え、
前記複数の出口側接続流路は、前記第2フィルタ層において互いに合流することなく、前記第1フィルタ層まで延びて前記共通流路に接続する、請求項2に記載の流路チップ。
【請求項4】
前記フィルタ層の各々は、複数の前記流体力学的フィルタを有する、請求項1に記載の流路チップ。
【請求項5】
前記各フィルタ層の前記複数の流体力学的フィルタは、前記共通流路に対して対称に配置される、請求項4に記載の流路チップ。
【請求項6】
前記各フィルタ層において、前記共通供給路と前記複数の流体力学的フィルタの入口とを接続する複数の入口側接続流路を備え、
前記各フィルタ層において、前記複数の入口側接続流路の流路長は、略同じである、請求項4または請求項5に記載の流路チップ。
【請求項7】
前記共通流路の下流部に接続される第1回収路および一対の第2回収路を備え、
前記一対の第2回収路は、前記第1回収路を挟むように配置され、
前記第1回収路には、前記流体力学的フィルタを通過した液から分離された前記誘電体粒子が流れる、請求項4または請求項5に記載の流路チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路チップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料液である血液から特定の細胞を分離する流路チップが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、血液から所定サイズ以上の細胞を抽出する置換部と、置換部を通過した数種類の細胞から誘電泳動力によってがん細胞を分離する分離部とを備えた流路チップが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-134020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、通常、特許文献1に記載のような流路チップでは、処理能力は、数十~数百μL/分と低い。このため、より多くの試料液を処理することが可能な流路チップが望まれている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、試料液をより多く処理することが可能な流路チップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面による流路チップは、複数のフィルタ層と、共通供給路と、共通流路と、誘電泳動層とを備える。前記複数のフィルタ層は、各々が流体力学的フィルタを有する。前記共通供給路は、前記複数のフィルタ層の前記流体力学的フィルタに試料液を供給する。前記共通流路には、前記複数の流体力学的フィルタを通過した液が通過する。前記誘電泳動層は、前記共通流路を通過する液に含有される誘電体粒子を誘電泳動させる電極を有する。前記複数のフィルタ層および前記誘電泳動層は、積層される。
【0007】
本発明の一態様において、前記複数のフィルタ層は、前記誘電泳動層に積層される第1フィルタ層と、前記第1フィルタ層に積層される1つ以上の第2フィルタ層とを含んでもよい。前記共通流路は、前記第1フィルタ層に配置されてもよい。
【0008】
本発明の一態様において、前記複数のフィルタ層は、前記第2フィルタ層を複数含んでもよい。前記流路チップは、複数の前記第2フィルタ層の前記流体力学的フィルタの出口と前記共通流路とを接続する複数の出口側接続流路を備えてもよい。前記複数の出口側接続流路は、前記第2フィルタ層において互いに合流することなく、前記第1フィルタ層まで延びて前記共通流路に接続してもよい。
【0009】
本発明の一態様において、前記フィルタ層の各々は、複数の前記流体力学的フィルタを有してもよい。
【0010】
本発明の一態様において、前記各フィルタ層の前記複数の流体力学的フィルタは、前記共通流路に対して対称に配置されてもよい。
【0011】
本発明の一態様において、流路チップは、前記各フィルタ層において、前記共通供給路と前記複数の流体力学的フィルタの入口とを接続する複数の入口側接続流路を備えてもよい。前記各フィルタ層において、前記複数の入口側接続流路の流路長は、略同じであってもよい。
【0012】
本発明の一態様において、流路チップは、前記共通流路の下流部に接続される第1回収路および一対の第2回収路を備えてもよい。前記一対の第2回収路は、前記第1回収路を挟むように配置されてもよい。前記第1回収路には、前記流体力学的フィルタを通過した液から分離された前記誘電体粒子が流れてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、試料液をより多く処理することが可能な流路チップを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による流路チップを備える分離装置の構造を模式的に示す断面図である。
図2】流路チップを複数のフィルタ層および誘電泳動層に分解した構造を模式的に示す斜視図である。
図3】第1フィルタ層の構造を模式的に示す平面図である。
図4】第2フィルタ層の構造を模式的に示す平面図である。
図5】流体力学的フィルタの構造を模式的に示す平面図である。
図6】共通流路周辺の構造を模式的に示す平面図である。
図7】誘電泳動層の構造を模式的に示す平面図である。
図8】共通流路および電極の構造を模式的に示す平面図である。
図9】流路チップの構造を模式的に示す平面図である。
図10】共通流路の分岐部周辺の構造を模式的に示す平面図である。
図11】分離装置の構成を示すブロック図である。
図12】本発明の第1変形例による流路チップを備える分離装置の構造を模式的に示す断面図である。
図13】本発明の第2変形例による流路チップの第1フィルタ層の構造を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0016】
図1図11を参照して、本発明の一実施形態による流路チップ1を備える分離装置100を説明する。図1は、本発明の一実施形態による流路チップ1を備える分離装置100の構造を模式的に示す断面図である。図2は、流路チップ1を複数のフィルタ層40および誘電泳動層50に分解した構造を模式的に示す斜視図である。
【0017】
図1および図2に示すように、本実施形態の分離装置100は、流路チップ1を備える。流路チップ1は、複数のフィルタ層40と、誘電泳動層50とを備える。複数のフィルタ層40の各々は、流体力学的フィルタ3(Hydrodynamic filtration:HDF)(以下、HDF3と記載する)を有する。図1では、図面簡略化のため、HDF3を矩形状の破線で描いている。例えば、流路チップ1は、微粒子の分離・濃縮を目的としたマイクロ流路チップである。例えば、流路チップ1は、後述するように血液から特定の細胞を分離することが可能である。
【0018】
本実施形態では、複数のフィルタ層40および誘電泳動層50は、積層される。従って、1つの流路チップ1に対して複数のHDF3が配置されるため、後述する試料液L1をより多く処理することができる。また、複数のHDF3の各々に対して誘電泳動層50を設ける必要がない。つまり、HDF3と同じ数の誘電泳動層50を設ける必要がない。よって、流路チップ1が大型化したり、分離装置100が大型化したりすることを抑制できる。
【0019】
HDF3は、通過する試料液L1(図5参照)から所定の粒径よりも大きい粒子を分離する。なお、HDF3の詳細構造については、後述する。
【0020】
誘電泳動層50は、電極51および電極53を有する。電極51および電極53は、後述する共通流路7を通過する液に含有される誘電体粒子を誘電泳動(DEP:Dielectrophoresis)させるための電極である。なお、誘電泳動層50の詳細構造については、後述する。
【0021】
また、複数のフィルタ層40は、誘電泳動層50に積層される第1フィルタ層41と、第1フィルタ層41に積層される1つ以上の第2フィルタ層42とを含む。なお、本実施形態では、後述する共通流路7は、第1フィルタ層41に配置される。従って、誘電泳動層50を共通流路7の近傍に配置できるため、共通流路7を通過する液に含有される誘電体粒子に対して誘電泳動力を容易に作用させることができる。また、第1フィルタ層41を誘電泳動層50の一方面に配置し、第2フィルタ層42を誘電泳動層50の他方面に配置する場合に比べて、第2フィルタ層42を容易に積層できる。言い換えると、誘電泳動層50を挟むように複数のフィルタ層40を配置する場合に比べて、容易に流路チップ1を製造できる。
【0022】
流路チップ1は、第1共通供給路5と、共通流路7とをさらに備える。なお、第1共通供給路5は、本発明の「共通供給路」の一例である。第1共通供給路5は、フィルタ層40および誘電泳動層50の積層方向に延びる。第1共通供給路5は、複数のフィルタ層40のHDF3に試料液L1を供給する。なお、図1では、理解を容易にするために第1共通供給路5を2つ描いているが、図2に示すように第1共通供給路5は、1つだけ設けられてもよい。以下では、第1共通供給路5が1つだけ設けられる例について説明する。また、複数のフィルタ層40のHDF3の出口3bは、共通流路7に接続される。共通流路7には、複数のHDF3を通過した液が流れる。
【0023】
本実施形態では、フィルタ層40の各々は、複数(ここでは、2つ)のHDF3を有する。従って、フィルタ層40の各々がHDF3を1つだけ有する場合に比べて、1つの流路チップ1によって、より多くの試料液L1を処理できる。
【0024】
各フィルタ層40の複数のHDF3は、共通流路7に対して対称に配置される。従って、各フィルタ層40の設計を簡素化できる。また、各フィルタ層40の複数のHDF3間において、HDF3を構成する流路(後述する主流路31および副流路33)の寸法(長さ、幅および深さ)は、互いに同じ大きさに形成される。本実施形態では、全てのフィルタ層40において、HDF3を構成する流路の寸法は、互いに同じ大きさに形成される。
【0025】
図3は、第1フィルタ層41の構造を模式的に示す平面図である。図4は、第2フィルタ層42の構造を模式的に示す平面図である。図3および図4に示すように、流路チップ1は、第1接続流路9と、第2接続流路11とをさらに備える。なお、第1接続流路9は、本発明の「入口側接続流路」の一例である。また、第2接続流路11は、本発明の「出口側接続流路」の一例である。
【0026】
第1接続流路9は、第1共通供給路5とHDF3の入口3aとを接続する。具体的には、流路チップ1は、各フィルタ層40において、複数の第1接続流路9を備える。各フィルタ層40において、第1共通供給路5から複数のHDF3の入口3aまでの流路長は、略同じである。つまり、各フィルタ層40において、複数(ここでは、2つ)の第1接続流路9の流路長は、略同じである。従って、第1共通供給路5に試料液L1を供給した場合に、各フィルタ層40において試料液L1が複数のHDF3を略同時に流れる。よって、複数のHDF3に対して試料液L1が略同じ条件で流れるため、HDF3による分離性能がばらつくことを抑制できる。
【0027】
なお、複数の第1接続流路9の流路長を略同じにするために、少なくとも1つの第1接続流路9は、迂回部9aを有するが、図面簡略化のため、迂回部9aを3つのドットで描いている。また、各フィルタ層40において、複数の第1接続流路9の幅および深さ等の断面寸法は、略同じである。なお、複数のフィルタ層40の間において、第1接続流路9の流路長および断面寸法は、略同じであってもよいし、流路抵抗等を考慮して異ならせていてもよい。
【0028】
第2接続流路11は、HDF3の出口3bと共通流路7とを接続する。具体的には、第1フィルタ層41のHDF3の出口3bと共通流路7とを接続する第2接続流路11は、HDF3の出口3bから面方向(積層方向と直交する方向)に延びる第1部分11aによって構成される。第2フィルタ層42のHDF3の出口3bと共通流路7とを接続する第2接続流路11は、HDF3の出口3bから面方向に延びる第1部分11aと、第1部分11aから積層方向に延びる第2部分11bと、第2部分11bから面方向に延びて共通流路7に接続される第3部分11cとによって構成される。なお、図1では、図面簡略化のため、第1フィルタ層41において、第1部分11aと第3部分11cとを共通部分として描いている。
【0029】
流路チップ1は、第2共通供給路13と、第3接続流路15とをさらに備える。なお、図1では、図面簡略化のため、第2共通供給路13および第3接続流路15を省略している。図2図4に示すように、第2共通供給路13は、フィルタ層40および誘電泳動層50の積層方向に延びる。第2共通供給路13は、複数のフィルタ層40のHDF3に輸送液L2(図5参照)を供給する。第3接続流路15は、第2共通供給路13とHDF3の入口3aとを接続する。
【0030】
各フィルタ層40において、第2共通供給路13から複数のHDF3の入口3aまでの流路長は、略同じである。つまり、各フィルタ層40において、複数(ここでは、2つ)の第3接続流路15の流路長は、略同じである。なお、複数の第3接続流路15の流路長を略同じにするために、少なくとも1つの第3接続流路15は、迂回部15aを有するが、図面簡略化のため、迂回部15aを3つのドットで描いている。また、各フィルタ層40において、複数の第3接続流路15の幅および深さ等の断面寸法は、略同じである。なお、複数のフィルタ層40の間において、第3接続流路15の流路長および断面寸法は、略同じであってもよいし、流路抵抗等を考慮して異ならせていてもよい。
【0031】
流路チップ1は、回収液供給路17と、第4接続流路19とをさらに備える。なお、図1では、図面簡略化のため、回収液供給路17および第4接続流路19を省略している。回収液供給路17は、共通流路7に回収液L3(図10参照)を供給する。回収液L3は、特に限定されるものではないが、例えば、輸送液L2と同じ成分である。なお、回収液L3は、輸送液L2と異なる成分であってもよい。第4接続流路19は、第1フィルタ層41に配置される。第4接続流路19は、回収液供給路17と共通流路7とを接続する。
【0032】
次に、図1を参照して、流路チップ1の断面構造について説明する。図1に示すように、誘電泳動層50は、電極51および電極53に加え、基板55および絶縁保護膜57をさらに有する。基板55は、特に限定されるものではないが、例えば、ガラス製である。本実施形態では、基板55は、石英ガラス製である。また、基板55は、例えば、略矩形の平板である。
【0033】
電極51および電極53は、基板55の一方面上に配置される。電極51および電極53は、例えば、アルミニウムまたは銅等からなる金属である。電極51および電極53は、例えば、真空蒸着法、フォトリソグラフィ法およびエッチング法によって所定の形状に形成される。
【0034】
絶縁保護膜57は、電極51、電極53および基板55を覆う。絶縁保護膜57は、特に限定されるものではないが、例えば、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜等の酸化膜である。絶縁保護膜57は、例えば、水分による電極51および電極53の経時劣化を抑制する。
【0035】
フィルタ層40は、絶縁層45をさらに有する。絶縁層45は、例えば、樹脂製である。本実施形態では、絶縁層45は、透明である。絶縁層45は、例えば、PDMS(ジメチルポリシロキサン)により形成される。絶縁層45には、HDF3および各種流路が形成される。複数のフィルタ層40は、例えば、HDF3および各種流路が形成された複数の絶縁層45を誘電泳動層50上に順に積層して形成される。なお、フィルタ層40は、例えば、誘電泳動層50上に未硬化の樹脂を積層して硬化させることによって、形成されてもよい。
【0036】
次に、図5を参照して、HDF3の構造について詳細に説明する。図5は、HDF3の構造を模式的に示す平面図である。図5に示すように、HDF3は、主流路31と、複数の副流路33とを有する。
【0037】
主流路31は、例えば、所定方向に向かって一直線状に延びる。主流路31には、試料液L1が流れる。本実施形態では、主流路31には、試料液L1および輸送液L2が流れる。試料液L1は、微粒子を含有した液である。試料液L1は、特に限定されるものではないが、例えば、血液である。輸送液L2は、例えば、微粒子を含有しない液である。輸送液L2は、特に限定されるものではないが、例えば、液状の培地である。
【0038】
複数の副流路33は、主流路31から分岐する。具体的には、複数の副流路33は、例えば、主流路31の延びる方向に沿って略等ピッチで配置される。複数の副流路33は、例えば、同じ長さを有する。複数の副流路33は、主流路31に対して交差する方向に延びる。本実施形態では、複数の副流路33は、主流路31に対して直交する方向に延びる。
【0039】
また、複数の副流路33は、主流路31の上流側から下流側に向かって流路抵抗が徐々に小さくなるように形成される。具体的には、本実施形態では、各副流路33の基端側(主流路31に近い側)の部分は、第1の幅に形成される。一方、各副流路33の末端側(主流路31から遠い側)の部分は、第1の幅よりも大きい第2の幅に形成される。そして、下流側の副流路33ほど、第1の幅から第2の幅に変化する位置は、基端側に配置される。第1の幅は、特に限定されるものではないが、例えば、10μmから数10μm程度である。第2の幅は、特に限定されるものではないが、例えば、数10μmから100μm程度である。なお、全ての副流路33が同じ一定の幅に形成されてもよい。この場合、例えば、下流側の副流路33ほど、短く形成されてもよい。
【0040】
複数の副流路33には、主流路31を流れる液の一部が流れ込む。また、複数の副流路33には、主流路31を流れる液に含有される粒子の一部が流れ込む。粒子が複数の副流路33に流れ込むか否かは、例えば、粒径に起因する。粒径の小さな粒子ほど副流路33に流れ込みやすく、粒径の大きな粒子ほど副流路33に流れ込みにくい。例えば、試料液L1として血液を用いる場合、血液の液体成分である血漿(プラズマともいう)と赤血球および血小板とを副流路33に流し、血液に含有されるがん細胞および白血球を副流路33に流さないようにすることが可能である。つまり、血液からがん細胞および白血球等の粒径の大きな粒子を分離することが可能である。
【0041】
引き続き図3図5を参照して、HDF3の動作原理について説明する。図3および図4に示すように、第1共通供給路5に試料液L1が供給され、第2共通供給路13に輸送液L2が供給されると、試料液L1および輸送液L2は、第1接続流路9および第3接続流路15をそれぞれ介して主流路31を流れる。図5に示すように、試料液L1は、副流路33側の内壁31aに沿って流れ、輸送液L2は、副流路33とは反対側の内壁31bに沿って流れる。このとき、各種粒子の中心は、主流路31の内壁31aから粒子の半径以上離隔した位置を通過する。
【0042】
ここで、主流路31の幅方向の位置に応じて、流速が変化する。具体的には、主流路31のうち内壁31aおよび内壁31bの近傍では、流速が小さくなる。一方、主流路31のうち内壁31aおよび内壁31bから遠い位置(主流路31の幅方向中央)では、流速が最も大きくなる。
【0043】
このため、粒径が小さく内壁31aの近傍を通過する粒子は、流速が小さいので、副流路33に流れ込みやすい。その一方、粒径が大きく内壁31aから遠い位置を通過する粒子は、流速が大きいので、副流路33に流れ込まず、主流路31を直進する。つまり、所定サイズよりも大きい粒子は、主流路31から副流路33に排出されない一方、所定サイズ以下の粒子は、主流路31から副流路33に排出される。主流路31から副流路33への排出は、複数の副流路33によって繰り返されるため、所定サイズ以下の粒子は、主流路31の下流端(HDF3の出口3b)に到達しない。なお、液体成分である血漿も、主流路31の下流端に到達しない。従って、流路チップ1によって、例えば、血液からがん細胞および白血球等の粒径の大きな粒子を分離することが可能である。
【0044】
次に、図6を参照して、第1フィルタ層41についてさらに説明する。図6は、共通流路7周辺の構造を模式的に示す平面図である。図6に示すように、第1フィルタ層41には、共通流路7が配置される。共通流路7は、所定方向に向かって一直線状に延びる。共通流路7は、合流部7aと分岐部7bとを有する。合流部7aは、共通流路7の上流側端部に配置される。分岐部7bは、共通流路7の下流側端部に配置される。
【0045】
共通流路7の上流端には、第2接続流路11が接続される。本実施形態では、共通流路7の上流端には、4つの第2接続流路11が接続される。また、共通流路7の上流端には、第4接続流路19が接続される。本実施形態では、第4接続流路19は、2つの第2接続流路11と2つの第2接続流路11との間に配置される。なお、4つの第2接続流路11は、第4接続流路19に対して対称に配置される。第2接続流路11および第4接続流路19は、共通流路7の合流部7aで合流する。
【0046】
流路チップ1は、共通流路7の下流部に接続される第1回収路21および第2回収路23をさらに備える。本実施形態では、流路チップ1は、共通流路7の下流部に接続される第1回収路21と、一対の第2回収路23とを備える。第1回収路21および一対の第2回収路23は、共通流路7の下流端に接続される。共通流路7は、分岐部7bで第1回収路21および一対の第2回収路23に分岐する。一対の第2回収路23は、第1回収路21を挟むように配置される。従って、後述するように、目的の回収物(ここでは、がん細胞)を第1回収路21から回収する場合、1つの第1回収路21から目的の回収物を回収できる。よって、第1回収路21が一対設けられる場合に比べて、目的の回収物を容易に回収できる。
【0047】
図2に示すように、第1回収路21および第2回収路23は、共通流路7から面方向に引き出された後、積層方向に延びる。また、第1回収路21および第2回収路23は、出口21aおよび出口23aをそれぞれ有する。出口21aおよび出口23aは、第2フィルタ層42に配置される。第1回収路21を通過した液は、出口21aを介して、図示しない第1回収部に回収される。第1回収部は、例えば、回収容器を含む。第2回収路23を通過した液は、出口23aを介して、図示しない第2回収部に回収される。第2回収部は、例えば、回収容器を含む。なお、本実施形態では、後述するように、第1回収路21には、HDF3を通過した液から分離された誘電体粒子(ここでは、がん細胞)が流れる。
【0048】
次に、図7図10を参照して、誘電泳動層50および誘電泳動による分離について説明する。図7は、誘電泳動層50の構造を模式的に示す平面図である。図7に示すように、誘電泳動層50は、電極51および電極53に加え、引出配線52および引出配線54をさらに有する。引出配線52の一端は、電極51に接続される。引出配線52は、端子部52aを有する。端子部52aは、引出配線52の他端に配置される。分離装置100は、交流電源110を備え、引出配線52の端子部52aは、交流電源110に電気的に接続される。引出配線54の一端は、電極53に接続される。引出配線54は、端子部54aを有する。端子部54aは、引出配線54の他端に配置される。引出配線54の端子部54aは、交流電源110に電気的に接続される。交流電源110によって、端子部52aおよび端子部54aの間に交流電圧が印加される。
【0049】
図8は、共通流路7、電極51および電極53の構造を模式的に示す平面図である。図9は、流路チップ1の構造を模式的に示す平面図である。なお、図9では、理解を容易にするために、第1フィルタ層41および第2フィルタ層42を実線で示し、誘電泳動層50を破線で示している。誘電泳動層50は、誘電泳動によって、共通流路7を流れる粒子をさらに分離することが可能である。具体的には、図8および図9に示すように、電極51および電極53は、共通流路7に対して重なるように配置される。つまり、電極51および電極53は、共通流路7に対して積層方向に対向する。電極51および電極53は、互いに対向する櫛歯状の電極である。電極51および電極53の歯部は、共通流路7に対して例えば10°以上60°以下傾斜する。本実施形態では、電極51および電極53の歯部は、共通流路7の幅方向において対称に配置される。具体的には、電極51および電極53の歯部は、上流側から下流側に向かって、共通流路7の幅方向外側から幅方向中央に向かって延びる。
【0050】
交流電源110により電極51と電極53との間に交流電圧を印加することによって、共通流路7を通過する粒子を誘電泳動させることが可能である。そして、印加する交流電圧の周波数を調整することによって、共通流路7を通過する複数種類の粒子から所望の粒子を誘電泳動させて分離回収することが可能である。
【0051】
具体的には、共通流路7を通過する複数種類の粒子が誘電体粒子を含む場合、誘電泳動によって複数種類の粒子から特定の誘電体粒子を分離することが可能である。例えば、がん細胞および白血球は、誘電体粒子である。共通流路7を通過する複数種類の粒子が、がん細胞と、がん細胞以外の所定サイズよりも大きい粒子(白血球等)とを含む場合、例えば、がん細胞に誘電泳動力が作用しやすくなるように、特定の周波数の交流電圧を電極51と電極53との間に印加する。これにより、図8に示すように、がん細胞を電極51および電極53に沿って移動させることが可能であるため、がん細胞のみを誘電泳動により第1回収路21に誘導することが可能である。よって、がん細胞と、その他の粒子(白血球等)とを分離することが可能である。なお、図8では、がん細胞の流れを矢印Aで示し、その他の粒子の流れを矢印Bで示している。
【0052】
図10は、共通流路7の分岐部7b周辺の構造を模式的に示す平面図である。より具体的には、図10に示すように、第1回収路21には、輸送液L2は流れず、回収液L3のみが流れる。本実施形態では、輸送液L2は、第1回収路21に流れず、第2回収路23に流れる。回収液L3は、第1回収路21および第2回収路23に流れる。よって、誘電泳動力を作用させない場合、第1回収路21に粒子は流れない。その一方、本実施形態では、誘電泳動力を作用させることによって、例えば、がん細胞を共通流路7の幅方向外側から幅方向内側に移動させることが可能である。従って、複数種類の粒子のうちがん細胞のみを第1回収路21に誘導することが可能である。
【0053】
次に、図4を参照して、分離装置100についてさらに説明する。図4に示すように、分離装置100は、試料液送液部61と、輸送液送液部63と、回収液送液部65とをさらに備える。分離装置100は、試料液送液部61と、輸送液送液部63と、回収液送液部65とを駆動させる制御部を備えてもよい。本実施形態では、後述する制御部131は、試料液送液部61と、輸送液送液部63と、回収液送液部65とを駆動させる。試料液送液部61、輸送液送液部63および回収液送液部65は、特に限定されるものではないが、例えば、マイクロポンプである。マイクロポンプは、機械式ポンプであってもよいし、非機械式ポンプであってもよい。
【0054】
試料液送液部61は、第1共通供給路5に繋がっており、第1共通供給路5に試料液L1を流す。試料液送液部61が第1共通供給路5に試料液L1を供給することによって、試料液L1は、各フィルタ層40の第1接続流路9およびHDF3に流れる。
【0055】
輸送液送液部63は、第2共通供給路13に繋がっており、第2共通供給路13に輸送液L2を流す。輸送液送液部63が第2共通供給路13に輸送液L2を供給することによって、輸送液L2は、各フィルタ層40の第3接続流路15およびHDF3に流れる。
【0056】
回収液送液部65は、回収液供給路17に繋がっており、回収液供給路17に回収液L3を流す。回収液送液部65が回収液供給路17に回収液L3を供給することによって、回収液L3は、第4接続流路19および共通流路7を流れる。
【0057】
本実施形態では、試料液送液部61は、試料液L1が層流になるように試料液L1を供給する。輸送液送液部63は、輸送液L2が層流になるように輸送液L2を供給する。回収液送液部65は、回収液L3が層流になるように回収液L3を供給する。従って、本実施形態では、流路チップ1において、各液は層流になる。
【0058】
次に、図11を参照して、分離装置100についてさらに説明する。図11は、分離装置100の構成を示すブロック図である。図11に示すように、分離装置100は、撮像部120と、制御装置130とをさらに備える。撮像部120は、流路チップ1の所定領域の画像を取得する。撮像部120は、撮像した画像データを制御装置130の後述する制御部131に送信する。撮像部120は、例えば、CCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサ等の撮像素子を有するカメラと、光学顕微鏡モジュールとを含む。撮像部120は、その他のカメラを含んでもよいし、その他の顕微鏡を含んでもよい。なお、分離装置100は、撮像部120が撮像した画像を表示する表示部をさらに備えてもよい。
【0059】
撮像部120は、流路チップ1の動作を確認するために用いられる。例えば、本実施形態では、撮像部120は、HDF3によって所定の粒径よりも大きい粒子と所定の粒径以下の粒子とに分離されているか否かを確認するために用いられる。また、本実施形態では、撮像部120は、誘電泳動によってがん細胞とその他の粒子とが分離されているか否かを確認するために用いられる。
【0060】
ここで、本実施形態では、図10に示すように、撮像部120の撮像領域R120内には、第1回収路21および一対の第2回収路23が配置される。具体的には、撮像領域R120内には、第1回収路21の幅方向全域と、一対の第2回収路23の幅方向全域とが配置される。このため、撮像部120は、第1回収路21を通過する全ての粒子、および、一対の第2回収路23を通過する全ての粒子を撮像可能である。従って、各回収路(第1回収路21、一対の第2回収路23)に対して1つずつ撮像部120を設ける場合に比べて、分離装置100の構成を簡素化できる。
【0061】
制御装置130は、制御部131および記憶部132を含む。制御部131は、プロセッサを有する。制御部131は、例えば、中央処理演算機(Central Processing Unit:CPU)を有する。
【0062】
記憶部132は、データおよびコンピュータプログラムを記憶する。記憶部132は、主記憶装置と、補助記憶装置とを含む。主記憶装置は、例えば、半導体メモリである。補助記憶装置は、例えば、半導体メモリおよび/またはハードディスクドライブである。記憶部132はリムーバブルメディアを含んでいてもよい。
【0063】
制御部131は、記憶部132の記憶しているコンピュータプログラムを実行して、分離装置100の動作を実行する。制御部131は、撮像部120からの画像データを受信する。
【0064】
例えば、制御部131は、撮像部120からの画像データに基づいて、所定の粒径以下の粒子が第1回収路21または第2回収路23を通過したか否かを判定する。所定の粒径以下の粒子が第1回収路21または第2回収路23を通過した場合、HDF3による分離が正常に行われなかった可能性が高い。従って、制御部131は、所定の粒径以下の粒子が第1回収路21または第2回収路23を通過したと判定した場合、試料液送液部61、輸送液送液部63および回収液送液部65の駆動を停止する。
【0065】
また、制御部131は、撮像部120からの画像データに基づいて、粒子が第2回収路23を通過したか否かを判定する。粒子が第2回収路23を通過しない場合、HDF3による分離、または、誘電泳動による分離が正常に行われなかった可能性が高い。従って、制御部131は、粒子が第2回収路23を通過していないと判定した場合、試料液送液部61、輸送液送液部63および回収液送液部65の駆動を停止する。なお、制御部131は、撮像部120からの画像データに基づいて、粒子が第1回収路21を通過したか否かを判定してもよい。そして、制御部131は、粒子が第1回収路21を通過していないと判定した場合、試料液送液部61、輸送液送液部63および回収液送液部65の駆動を停止してもよい。
【0066】
次に、図12を参照して、本発明の第1変形例による分離装置100を説明する。図12は、本発明の第1変形例による流路チップ1を備える分離装置100の構造を模式的に示す断面図である。第1変形例では、図1図11を用いて説明した上記実施形態とは異なり、複数のフィルタ層40が2つ以上の第2フィルタ層42を含む例について説明する。
【0067】
図12に示すように、本発明の第1変形例による分離装置100では、複数のフィルタ層40は、第1フィルタ層41と、第1フィルタ層41に積層される2つ以上の第2フィルタ層42とを含む。第1変形例では、複数のフィルタ層40は、第1フィルタ層41と、3つの第2フィルタ層42とを含む。従って、第1変形例の流路チップ1は、図1図11を用いて説明した上記実施形態の流路チップ1に比べて、試料液L1をさらに多く処理することができる。なお、複数のフィルタ層40は、2つの第2フィルタ層42、または、4つ以上の第2フィルタ層42を含んでもよい。
【0068】
また、流路チップ1は、複数(ここでは、3つ)の第2フィルタ層42のHDF3の出口3bと共通流路7とを接続する複数の第2接続流路11を備える。第1変形例では、複数の第2接続流路11は、第2フィルタ層42において互いに合流することなく、第1フィルタ層41まで延びて共通流路7に接続する。ここで、第2フィルタ層42において第2接続流路11同士を合流させる場合、第2フィルタ層42を積層する際に高い位置決め精度が必要となる。しかしながら、第1変形例では、第2フィルタ層42において第2接続流路11同士を合流させないため、第2フィルタ層42を積層する際に高い位置決め精度が必要となることを抑制できる。つまり、流路チップ1の製造が煩雑になることを抑制できる。なお、複数の第2接続流路11は、第2フィルタ層42において互いに合流した後、第1フィルタ層41において共通流路7に接続してもよい。
【0069】
第1変形例のその他の構造および効果は、上記実施形態と同様である。
【0070】
次に、図13を参照して、本発明の第2変形例による分離装置100を説明する。図13は、本発明の第2変形例による流路チップ1の第1フィルタ層41の構造を模式的に示す平面図である。第2変形例では、図1図11を用いて説明した上記実施形態とは異なり、第1接続流路9および第3接続流路15が合流した後にHDF3に接続される例について説明する。
【0071】
図13に示すように、本発明の第2変形例による流路チップ1では、第1接続流路9および第3接続流路15は、互いに合流した後に、HDF3の入口3aに接続される。従って、第1接続流路9および第3接続流路15が通過する経路を簡素化できるため、流路チップ1の設計を簡素化できる。
【0072】
また、第2変形例による流路チップ1では、第2接続流路11は、共通流路7に対して交差するように接続される。具体的には、第2接続流路11は、共通流路7に対して略垂直に接続される。第2接続流路11を、例えば、共通流路7に対して略垂直に接続する場合も、共通流路7に対して傾斜するように接続する場合も、上記実施形態と同様に、誘電泳動により特定の粒子を分離することが可能である。なお、図示しないが、複数の第2接続流路11は、第1接続流路9および第3接続流路15と同様、互いに合流した後に、共通流路7に接続されてもよい。
【0073】
第2変形例のその他の構造および効果は、上記実施形態と同様である。
【0074】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0075】
例えば、上記の実施形態では、複数のフィルタ層40が、誘電泳動層50の一方面に配置される第1フィルタ層41と、第1フィルタ層41に配置される第2フィルタ層42とを含む例について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、複数のフィルタ層40は、誘電泳動層50の一方面に配置されるフィルタ層40と、誘電泳動層50の他方面に配置されるフィルタ層40とを含んでもよい。
【0076】
また、上記の実施形態では、複数のフィルタ層40のうち誘電泳動層50の一方面に配置される第1フィルタ層41に共通流路7を配置する例について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、第1フィルタ層41に積層される1つ以上の第2フィルタ層42のいずれかに共通流路7を配置してもよい。
【0077】
また、上記の実施形態では、HDF3を有するフィルタ層40に共通流路7を配置する例について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、HDF3を有しない層を別途設け、HDF3を有しない層に共通流路7を配置してもよい。
【0078】
また、上記の実施形態では、各フィルタ層40がHDF3を複数有する例について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、各フィルタ層40は、HDF3を1つだけ有してもよい。
【0079】
また、上記の実施形態では、各フィルタ層40において、HDF3を共通流路7に対して対称に配置する例について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、各フィルタ層40において、HDF3を非対称に配置してもよい。
【0080】
また、上記の実施形態では、例えば、各フィルタ層40において、複数の第1接続流路9の流路長が略同じで、かつ、複数の第3接続流路15の流路長が略同じである例について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、各フィルタ層40において、複数の第1接続流路9の流路長は、異なっていてもよい。また、各フィルタ層40において、複数の第3接続流路15の流路長は、異なっていてもよい。
【0081】
また、上記の実施形態では、説明しなかったが、回収液送液部65は、回収液供給路17に供給する回収液L3の量を調整可能であってもよい。つまり、回収液送液部65は、共通流路7を流れる回収液L3の量を調整可能であってもよい。この場合、共通流路7を流れる回収液L3の量を変化させることにより、共通流路7を流れる試料液L1および輸送液L2の量が変化する。つまり、共通流路7に対する試料液L1および輸送液L2の流れやすさが変化する。従って、共通流路7に繋がるHDF3において、主流路31から副流路33への流れやすさが変化する。よって、例えば、製造ばらつきによってHDF3の各位置における流路の幅および深さ等の寸法が、設定値からずれた場合であっても、回収液供給路17に流す回収液L3の量を調整することによって、所定の粒径よりも大きい粒子(例えば、がん細胞および白血球)が副流路33に流れたり、所定の粒径以下の粒子(例えば、赤血球および血小板)が主流路31を通過して共通流路7に流れたりすることを抑制できる。よって、流路の寸法が設定値からずれた場合であっても、所定の粒径の粒子を分離することができる。
【0082】
また、上記の実施形態では、制御部131は、所定の粒径以下の粒子が第1回収路21または第2回収路23を通過したと判定した場合、粒子が第2回収路23を通過していないと判定した場合、または、粒子が第1回収路21を通過していないと判定した場合、試料液送液部61、輸送液送液部63および回収液送液部65の駆動を停止する例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限らない。
【0083】
例えば、制御部131は、所定の粒径以下の粒子が第1回収路21または第2回収路23を通過したと判定した場合、所定の粒径以下の粒子が第1回収路21または第2回収路23を通過しないように、共通流路7を流れる回収液L3の量を調整してもよい。また、例えば、制御部131は、粒子が第2回収路23を通過していないと判定した場合、粒子が第2回収路23を通過するように、共通流路7を流れる回収液L3の量を調整してもよい。また、例えば、制御部131は、粒子が第1回収路21を通過していないと判定した場合、粒子が第1回収路21を通過するように、共通流路7を流れる回収液L3の量を調整してもよい。
【0084】
また、上記の実施形態では、試料液L1として血液を用い、輸送液L2として液状の培地を用いる例について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、試料液L1として血液以外の液を用い、輸送液L2として培地以外の液を用いてもよい。
【0085】
また、上記の実施形態では、目的の回収物として、出口21aから回収される粒子(例えば、がん細胞)を例に挙げたが、本発明はこれに限らない。例えば、出口23aから回収される粒子または液体成分を目的の回収物としてもよい。
【0086】
また、上記の実施形態では、輸送液L2および回収液L3が粒子を含有しない例について説明したが、本発明はこれに限らない。輸送液L2および回収液L3は、粒子を含有してもよい。ただし、誘電泳動によって、輸送液L2および回収液L3が含有する粒子と、試料液L1が含有していた粒子とを分離することが好ましい。
【0087】
また、上記の実施形態では、輸送液L2を用いる例について説明した。つまり、試料液L1に加えて輸送液L2をHDF3に流す例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限らない。例えば、試料液L1のみをHDF3に流してもよい。例えば、試料液L1として、粒子を含有する海水を用い、海水から粒子を分離してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、流路チップの分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 :流路チップ
3 :HDF(流体力学的フィルタ)
3a :入口
3b :出口
5 :第1共通供給路(共通供給路)
7 :共通流路
9 :第1接続流路(入口側接続流路)
11 :第2接続流路(出口側接続流路)
21 :第1回収路
23 :第2回収路
40 :フィルタ層
41 :第1フィルタ層
42 :第2フィルタ層
50 :誘電泳動層
51、53 :電極
L1 :試料液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13