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特開2024-139946画像処理装置、画像処理方法および画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139946
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法および画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06V 20/59 20220101AFI20241003BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241003BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241003BHJP
   B60W 40/08 20120101ALN20241003BHJP
【FI】
G06V20/59
G08G1/16 F
G06T7/00 660A
B60W40/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050902
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊森 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】伏見 文孝
(72)【発明者】
【氏名】大西 康司
(72)【発明者】
【氏名】塩田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】清水 勝也
(72)【発明者】
【氏名】上林 輝彦
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
5L096
【Fターム(参考)】
3D241BA00
3D241CE05
3D241DD02Z
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC27
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL20
5L096AA06
5L096BA04
5L096CA04
5L096FA16
5L096FA64
5L096FA69
5L096GA51
5L096HA11
(57)【要約】
【課題】画像処理による通話運転の検出精度を向上させること。
【解決手段】本発明に係る画像処理装置は、車両の運転者を撮影した画像データから前記運転者が携帯端末を持って通話する通話運転を検出するコントローラを有する画像処理装置であって、コントローラは、画像データから運転者の顔領域を検出し、検出した顔領域の位置と大きさとに応じて、携帯端末の判定領域と、携帯端末の検知サイズとを設定し、設定した判定領域から検知サイズを満たす携帯端末を検知した場合に、通話運転として検出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者を撮影した画像データから前記運転者が携帯端末を持って通話する通話運転を検出するコントローラを有する画像処理装置であって、
前記コントローラは、
前記画像データから前記運転者の顔領域を検出し、
検出した前記顔領域の位置と大きさとに応じて、前記携帯端末の判定領域と、前記携帯端末の検知サイズとを設定し、
設定した前記判定領域から前記検知サイズを満たす前記携帯端末を検知した場合に、前記通話運転として検出する、
画像処理装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記顔領域を縦方向に拡張した領域を前記判定領域として設定する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記顔領域を横方向に拡張した領域を前記判定領域として設定する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記画像データから前記携帯端末を検知した領域のすべてが前記判定領域に含まれる場合に、前記通話運転として検出する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記画像データから前記携帯端末を検知した領域の上端が、前記顔領域の下端よりも画像平面の上下方向において上側にある場合に、前記通話運転として検出する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記顔領域の横幅に対する前記携帯端末を検知した領域の横幅の比率が閾値以下である場合に、前記通話運転として検出する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記コントローラは、
前記顔領域の縦幅に対する前記携帯端末を検知した領域の縦幅の比率が閾値以上である場合に、前記通話運転として検出する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
車両の運転者を撮影した画像データから前記運転者が携帯端末を持って通話する通話運転をコントローラが検出する画像処理方法であって、
前記画像データから前記運転者の顔領域を検出し、
検出した前記顔領域の位置と大きさとに応じて、前記携帯端末の判定領域と、前記携帯端末の検知サイズとを設定し、
設定した前記判定領域から前記検知サイズを満たす前記携帯端末を検知した場合に、前記通話運転として検出する、
画像処理方法。
【請求項9】
車両の運転者を撮影した画像データから前記運転者が携帯端末を持って通話する通話運転を判定する画像処理プログラムであって、
前記画像データから前記運転者の顔領域を検出することと、
検出した前記顔領域の位置と大きさとに応じて、前記携帯端末の判定領域と、前記携帯端末の検知サイズとを設定することと、
設定した前記判定領域から前記検知サイズを満たす前記携帯端末を検知した場合に、前記通話運転として検出することと、
をコンピュータに実行させる画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、画像処理装置、画像処理方法および画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の運転者を撮影した画像データを解析し、運転者が携帯端末で通話しながら運転する通話運転を検出する技術がある。特許文献1には、運転者を撮影した画像データから運転者の手を検出し、検出した手の近傍で携帯端末を検知した場合に、通話運転として検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-249478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、画像処理による通話運転の検出精度を向上させる点において改善の余地があった。具体的には、特許文献1の技術では、運転者の手を検出できない場合には、通話運転を検出することができない。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、画像処理による通話運転の検出精度を向上させることができる画像処理装置、画像処理方法および画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る画像処理装置は、車両の運転者を撮影した画像データから前記運転者が携帯端末を持って通話する通話運転を検出するコントローラを有する画像処理装置であって、前記コントローラは、前記画像データから前記運転者の顔領域を検出し、検出した前記顔領域の位置と大きさとに応じて、前記携帯端末の判定領域と、前記携帯端末の検知サイズとを設定し、設定した前記判定領域から前記検知サイズを満たす前記携帯端末を検知した場合に、前記通話運転として検出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、画像処理による通話運転の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、画像処理装置の搭載例を示す図である。
図2図2は、画像処理装置のブロック図である。
図3図3は、判定領域の一例を示す模式図である。
図4図4は、通話運転の検出条件の一例を示す図である。
図5図5は、通話運転の検出条件の一例を示す図である。
図6図6は、通話運転の検出条件の一例を示す図である。
図7図7は、通話運転の検出条件の一例を示す図である。
図8図8は、検知範囲の一例を示す図である。
図9図9は、画像処理装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する画像処理装置、画像処理方法および画像処理プログラムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
まず、図1を用いて、実施形態に係る画像処理装置10の搭載例について説明する。図1は、画像処理装置10の搭載例を示す図である。図1に示すように、画像処理装置10は、たとえば、車両Vに搭載されるドライブレコーダである。
【0011】
画像処理装置10は、車両Vの室内(運転者)を撮影するカメラによって撮影された画像データを解析する。本実施形態において、画像処理装置10は、車両Vの運転者を撮影した画像データから運転者が携帯端末Tを持って通話する通話運転(以下、単に「通話運転」と記載)を検出する。なお、図1では、携帯端末Tがスマートフォンである場合について例示しているが、携帯端末Tは、タブレット端末、携帯電話など、道路交通法によって運転中の使用が規制された各種機器を含む。
【0012】
ところで、車両の運転者を撮影した画像データから通話運転を検出する技術が提案されている。従来技術では、運転者の顔や手を検出し、検出した顔や手の周辺で携帯端末を検出した場合に、通話運転として検出する。
【0013】
しかしながら、従来技術では、運転者の手を検知できない場合に、通話運転を検出することができない。また、上記従来技術では、運転者の手を検知し、さらに、後部座席で操作中の携帯端末を検知した場合、通話運転として検出するおそれもある。
【0014】
このように、従来技術では、画像処理による通話運転の検出精度を向上させるうえで改善の余地があった。これに対し、実施形態に係る画像処理装置10は、運転者の顔領域を基に通話運転の検出条件を設定する。
【0015】
詳細については後述するが、画像処理装置10は、顔領域を拡張した拡張領域内で携帯端末Tを検知し、検知した携帯端末Tを位置およびサイズに関する複数の条件で絞り込み、各条件を満たす携帯端末Tを検出した場合に通話運転として検出する。なお、検出条件の具体例については、図4~7を用いて後述する。
【0016】
次に、図2を用いて、実施形態に係る画像処理装置10の構成例について説明する。図2は、画像処理装置10のブロック図である。図2に示すように、画像処理装置10は、記憶部11と、制御部12とを備える。また、画像処理装置10は、カメラ21と、車両センサ22と、報知装置23とが接続される。
【0017】
カメラ21は、車両Vに搭載され、車両Vの車内を撮影するカメラである。カメラ21は、運転者を撮影する。なお、カメラ21は、たとえば、ドライブレコーダにおいて車両Vの車内を撮影するカメラであるが、スピードメーター等、運転者の前方に取り付けられ、運転者を撮影可能なカメラであってもよい。
【0018】
車両センサ22は、車両Vに搭載された各種センサである。車両センサ22は、車速センサ、アクセルセンサ、ブレーキセンサ、舵角センサ、Gセンサ等を含み、車両Vの走行状態に関するセンサデータを画像処理装置10に対し出力する。
【0019】
上述のように、画像処理装置10は、通話運転を検出するため、車両センサ22は、車両Vが走行中か停車中かを判別するためのセンサデータを画像処理装置10に対し出力する。
【0020】
報知装置23は、たとえば、車載ディスプレイや、スピーカによって構成される。報知装置23は、画像処理装置10により通話運転が検出された場合に、音あるいは画像にて運転者に対して警告を行う。
【0021】
画像処理装置10は、車両Vに搭載されるコンピュータであり、カメラ21によって撮影された画像データを解析し、通話運転を検出する装置である。
【0022】
記憶部11は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の記憶デバイスによって実現される。記憶部11は、顔認識AI(Artificial Intelligence)、端末認識AI、通話運転の各種検出条件に関する各種パラメータ情報を記憶する。
【0023】
顔認識AIは、画像認識用のAIモデルであり、機械学習のアルゴリズムを用いて学習されたDNNモデル等である。顔認識AIは、画像データから運転者の顔領域を認識するように学習されたモデルである。
【0024】
端末認識AIは、画像認識用のAIモデルであり、機械学習のアルゴリズムを用いて学習されたDNNモデル等である。端末認識AIは、画像データから携帯端末Tを認識するように学習されたモデルである。本実施形態において、端末認識AIは、手で携帯端末Tを持った画像データを学習データとして学習したAIモデルである。
【0025】
各種パラメータ情報は、通話運転を検出する際に利用される各種のパラメータに関する情報である。なお、処理パラメータ情報の具体例については、図3~7等を用いて後述する。
【0026】
制御部12は、コントローラ(controller)であり、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、記憶部11に記憶されている実施形態に係る画像処理プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部12は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現することができる。
【0027】
制御部12は、カメラ21によって撮影された画像データから通話運転を検出するための各種処理を実行する。制御部12は、カメラ21によって撮像されたカメラ画像を取得し、カメラ画像を顔認識AIへ入力し、顔認識AIから出力される運転者の顔領域を取得する。顔領域は、矩形領域として抽出された運転者の顔を含む領域である。
【0028】
つづいて、制御部12は、顔領域の認識結果に基づいて、携帯端末Tの判定領域および携帯端末Tの検知サイズを設定し、設定した判定領域から検知サイズを満たす携帯端末Tを検知した場合に、通話運転として検知する。
【0029】
ここで、図3を用いて、判定領域について説明する。図3は、判定領域の一例を示す模式図である。図3に示すように、判定領域baは、顔領域bbを拡張した領域である。
【0030】
図3に示すように、判定領域baは、顔領域bbの横幅wを基準として、左右方向にそれぞれ横幅wの0.5倍分を拡張した領域であり、顔領域bbの縦幅hを基準として、上方向に縦幅hの0.5倍分、下方向に縦幅hの0.7倍分を拡張した領域である。
【0031】
このように、顔領域bbを基に顔領域bbを拡張した領域を判定領域baとして設定することで、通話運転時の携帯端末Tの検知漏れを抑制することができる。特に、制御部12は、判定領域baを広く下方向に拡張することで、運転者が胸の前で携帯端末Tを持って行う通話、たとえば、運転者がスマートフォンを顔の前方にもってスマートフォンのマイクに向かって喋る通話を検知することができる。
【0032】
制御部12は、判定領域baの設定を終えると、携帯端末Tの検知位置および検知サイズに関する検知条件を設定する。まず制御部12は、判定領域baの画像データを端末認識AIに入力し、端末認識AIから出力される携帯端末Tの認識結果を取得する。
【0033】
そして、制御部12は、端末認識AIから出力される携帯端末Tの認識結果が、以下に示す検出条件を満たす場合に、通話運転として検出する。なお、図4に示す判定領域baと顔領域bbの縮尺関係は一例であり、これに限定されるものではない。
【0034】
次に、図4~7を用いて、通話運転の検出条件の具体例について説明する。図4図7は、通話運転の検出条件の一例を示す図である。まず、図4および図5を用いて、携帯端末Tとして検知された検知領域の検知位置に関する検出条件について説明する。
【0035】
図4には、端末認識AIによって携帯端末Tとして検知された検知領域を端末領域ta1および端末領域ta2として示す。なお、以下では、端末領域ta1および端末領域ta2を区別しない場合、「端末領域ta」と記載する。
【0036】
図4に示す検出条件では、制御部12は、すべてが判定領域baに含まれる端末領域taを抽出する。図4の例では、端末領域ta1はすべて判定領域baに含まれる一方、端末領域ta2はその一部が判定領域baからはみ出している。
【0037】
そのため、制御部12は、端末領域ta1を検出条件に該当する携帯端末Tとして検知し、端末領域ta2を検出条件に該当する携帯端末Tとして検知しない(図中、未検知)。すなわち、制御部12は、この段階で、端末領域ta2を通話運転の検出対象から除外する。
【0038】
このように、制御部12は、すべての領域が判定領域baに含まれる端末領域ta1を検知することによって、顔領域bbから離れた通話に関与しない携帯端末Tを除外することができる。
【0039】
つづいて、図5に示すように、制御部12は、端末領域taの上端と、顔領域bbの下端bbbとを比較する。具体的には、制御部12は、端末領域taの上端が顔領域bbの下端bbbよりも上側にある端末領域taを検出条件に該当する携帯端末Tとして検知する。また、制御部12は、端末領域taの上端が顔領域bbの下端bbbよりも下側にある端末領域taを検出条件に該当する携帯端末Tとして検知しない(図中、未検知)。
【0040】
図5に示す例では、端末領域ta1の上端tap1は、顔領域bbの下端bbbよりも上側にあり、端末領域ta2の上端tap2は、顔領域bbの下端bbbよりも下側にある。
【0041】
そのため、制御部12は、端末領域ta1を検出条件に該当する携帯端末Tとして検知し、端末領域ta2を検出条件に該当する携帯端末Tとして検知しない。これは、たとえばシートベルトを端末領域taとして誤検知しないよう、シートベルトを検出条件によって除外するためである。
【0042】
すなわち、制御部12は、端末領域taの上端と顔領域bbの下端bbbとの比較結果に基づいて、端末領域taを選別することによって、シートベルトを端末領域taとして誤検知した場合における通話運転の誤検出を抑制することができる。
【0043】
次に、図6および図7を用いて、検知サイズに関する通話運転の検出条件について説明する。図6では、検知サイズのうち、端末領域taの横幅に関する検出条件について説明し、図7では、端末領域taの縦幅に関する検出条件について説明する。
【0044】
図6に示すように、制御部12は、顔領域bbの横幅waに対する端末領域taの横幅の割合と閾値とを比較する。なお、ここでの閾値thは、たとえば、50%であるが、これに限定されるものではない。具体的には、制御部12は、顔領域bbの横幅waに対する端末領域taの横幅の比率が閾値thを超えるか否かを判定し、かかる比率が閾値th未満である場合に、検出条件に該当する携帯端末Tとして検知する。
【0045】
図6に示す例では、端末領域ta1の横幅w1、端末領域ta2の横幅w2とした場合に、「wa」、「w1」、「w2」および「th」の関係は、「w1/wa<th」、「w2/wa≧th」である。そのため、制御部12は、端末領域ta1については検出条件を満たす端末領域taとして検知し、端末領域ta2については検出条件を満たす端末領域taとして検知しない。
【0046】
これは、たとえば、窓枠や手などの携帯端末T以外のものが判定領域ba内で端末領域taとして検知された場合に、通話運転の検出対象から除外するためである。そのため、制御部12は、端末領域taの横幅および顔領域bbの横幅waに基づいて、端末領域taを選別することによって、窓枠や手を端末領域taとして誤検知することを抑制できる。
【0047】
次に、図7に示すように、制御部12は、端末領域taの縦幅と、顔領域bbの縦幅haとを比較する。具体的には、制御部12は、顔領域bbの縦幅haに対する端末領域taの縦幅の比率が閾値thを超えるか否かを判定し、かかる比率が閾値th以上である場合に、検出条件に該当する携帯端末Tとして検知する。なお、ここでの閾値thは、たとえば、25%であるが、これに限定されるものではない。
【0048】
図7に示す例では、端末領域ta1の縦幅h1、端末領域ta2の縦幅h2とした場合に、「ha」、「h1」、「h2」および「th」の関係は、「h1/ha≧th」、「h2/ha<th」である。そのため、制御部12は、端末領域ta1については検出条件を満たす端末領域taとして検知し、端末領域ta2については検出条件を満たす端末領域taとして検知しない。
【0049】
これは、たとえば、後部座席の乗員が扱っている携帯端末Tが画像データで運転者の顔の近くに写り込む場合に、検知される端末領域taを通話運転の検出対象から除外するためである。すなわち、カメラ21は、車両Vの前方から車内を撮影するため、後部座席の乗員の携帯端末Tは、運転者が自身で操作している場合の携帯端末Tに比べて小さく写ることになる。
【0050】
そのため、制御部12は、顔領域bbの縦幅haに対する端末領域taの縦幅の割合に基づいて端末領域taの絞り込むことで、後部座席の乗員の携帯端末Tに基づいて、通話運転として検出する誤検出を抑制することができる。
【0051】
そして、制御部12は、上述したすべての検出条件を満たす端末領域taを検出した場合に、通話運転として検出する。具体的には、制御部12は、端末領域taのすべてが判定領域baに含まれ、かつ、端末領域taの上端が顔領域bbの下端よりも上側にある場合に、検知位置に関する検出条件を満たすと判定する。
【0052】
また、制御部12は、顔領域bbの横幅に対する端末領域taの横幅の比率が閾値未満であり、かつ、顔領域bbの縦幅に対する端末領域taの縦幅の比率が閾値以上である場合に、検知サイズに関する検出条件を満たすと判定する。
【0053】
このように、制御部12は、顔領域bbに基づいて設定した検知位置および検知サイズに関する各検出条件を満たす端末領域taを検出した場合に、通話運転として検出する。
【0054】
これにより、制御部12は、誤検知された携帯端末T以外の端末領域taを各検出条件によって除外することができるので、画像処理による通話運転の検出精度を向上させることができる。
【0055】
そして、制御部12は、通話運転を検出した場合に、報知装置23(図2参照)を通じて、運転者に対して警告を行う。これにより、画像処理装置10は、運転者による通話運転を控えさせることができる。
【0056】
ところで、制御部12は、過去の端末領域taの検知結果に基づいて、携帯端末Tの検知範囲を設定することも可能である。ここで、図8を用いて、検知範囲の具体例について説明する。
【0057】
図8は、検知範囲の一例を示す図である。図8に示すように、制御部12は、判定領域baを左右方向に分割し、左領域balおよび右領域barのいずれかの領域を検知範囲として設定する。
【0058】
具体的には、制御部12は、前フレームまでに左領域balで通話運転の検出条件を満たす端末領域taが検知されていた場合、左領域balを検知範囲に設定する。また、制御部12は、前フレームまでに右領域barで通話運転の検出条件を満たす端末領域taが検知されていた場合、右領域barを検知範囲に設定する。
【0059】
たとえば、制御部12は、検知範囲の設定後においては、検知範囲以外の範囲については携帯端末Tの検知対象から除外する。つまり、制御部12は、検知範囲のみについて通話運転の検出に関する各種処理を実行する。
【0060】
このように、制御部12は、検知範囲を半分にすることで、処理時間や処理負荷を低減することができる。なお、ここでは、検知範囲を左右方向に2分割した場合を例示しているが、これに限定されるものではない。たとえば、制御部12は、検知範囲を左右方向に3分割以上にしてもよく、さらに、上下方向に分割するようにしてもよい。
【0061】
次に、図9を用いて、実施形態に係る画像処理装置10が実行する処理手順について説明する。図9は、画像処理装置10が実行する処理手順を示すフローチャートである。なお、以下に示す処理は、車両Vの走行中に制御部12によって繰り返し実行される。
【0062】
図9に示すように、まず、制御部12は、運転者を撮影した画像データを取得すると(ステップS101)、顔認識AIにより画像データから運転者の顔領域bbを検出する(ステップS102)。
【0063】
つづいて、制御部12は、顔領域bbの位置に基づいて判定領域baを設定し(ステップS103)、顔領域bbの大きさに基づいて検知サイズを設定する(ステップS104)。
【0064】
つづいて、制御部12は、端末認識AIにより判定領域baから携帯端末Tを検知する(ステップS105)。つづいて、制御部12は、携帯端末Tが検知されたか否かを判定し(ステップS106)、携帯端末Tが検知された場合(ステップS106;Yes)、ステップS107へ進み、携帯端末Tが検知されなかった場合(ステップS106;No)、処理を終了する。
【0065】
つづいて、制御部12は、端末認識AIにより検知された携帯端末Tの端末領域taが第1条件を満たすか否かを判定する(ステップS107)。ここでの第1条件は、端末領域taの位置に関する検出条件である。具体的には、第1条件は、図5および図6にて説明したように、端末領域taのすべてが判定領域baに含まれるか否かに関する条件、端末領域taの上端が顔領域bbの下端bbbよりも上側か否かに関する条件が含まれる。
【0066】
制御部12は、端末領域taが第1条件を満たすと判定した場合(ステップS107;Yes)、ステップS108へ進み、端末領域taが第1条件を満たさないと判定した場合(ステップS107;No)、処理を終了する。
【0067】
つづいて、制御部12は、端末領域taが第2条件を満たすか否かを判定する(ステップS108)。ここでの第2条件は、検知サイズに関する検出条件である。具体的には、第2条件は、図6および図7にて説明したように、顔領域bbの横幅waに対する端末領域taの横幅の比率、顔領域bbの縦幅haに対する端末領域taの縦幅の比率に関する条件である。
【0068】
制御部12は、端末領域taが第2条件を満たすと判定した場合(ステップS108;Yes)、通話運転として検出し(ステップS109)、処理を終了する。また、制御部12は、端末領域taが第2条件を満たさないと判定した場合(ステップS108;No)、処理を終了する。
【0069】
上述したように、実施形態に係る画像処理装置10は、車両Vの運転者を撮影した画像データから運転者が携帯端末Tを持って通話する通話運転を検出する制御部12(コントローラの一例)を有する画像処理装置であって、制御部12は、画像データから運転者の顔領域bbを検出し、検出した顔領域bbの位置と大きさとに応じて、携帯端末Tの判定領域baと、携帯端末Tの検知サイズとを設定し、設定した判定領域baから検知サイズを満たす携帯端末Tを検知した場合に、通話運転として検出する。
【0070】
このように、実施形態に係る画像処理装置10は、顔領域bbから検知位置および検知サイズに関する検出条件を設定することで、運転者の手が検出されない場合であっても通話運転を検出することができる。
【0071】
また、実施形態に係る画像処理装置10は、シートベルト等を端末領域taとして検出した場合や、後部座席の乗員が扱う携帯端末を端末領域taとして検出した場合であっても、端末領域taを通話運転の検出対象から除外することができる。したがって、実施形態に係る画像処理装置10によれば、画像処理による通話運転の検出精度を向上させることができる。
【0072】
ところで、上述した実施形態では、画像処理装置10が車載装置である場合について説明したが、これに限定されるものではない。画像処理装置10は、たとえば、サーバ装置やクラウドシステムにより構成されていてもよい。
【0073】
この場合、画像処理装置10は、各車両Vのカメラ21から画像データを取得し、画像処理によって通話運転を検出する。たとえば、このように、画像処理装置10をサーバ装置やクラウドシステムとすることで、車載装置のコストダウンを図ることができる。
【0074】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 画像処理装置
11 記憶部
12 制御部
21 カメラ
22 車両センサ
23 報知装置
T 携帯端末
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9