IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トプコンの特許一覧

<>
  • 特開-眼科装置 図1
  • 特開-眼科装置 図2
  • 特開-眼科装置 図3
  • 特開-眼科装置 図4
  • 特開-眼科装置 図5
  • 特開-眼科装置 図6
  • 特開-眼科装置 図7
  • 特開-眼科装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139950
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/15 20060101AFI20241003BHJP
   A61B 3/10 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61B3/15
A61B3/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050908
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 優一
(72)【発明者】
【氏名】大原 龍一
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AB02
4C316AB11
4C316FA06
4C316FA09
4C316FC01
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】各部の位置調整に要する時間を、より短くして、眼情報の取得を効率的に行うことができる眼科装置を提供する。
【解決手段】眼科装置1は、取得光学系50と、駆動部70と、取得光学系50の位置が目標位置になるように駆動部70を駆動制御する制御部60と、目標位置の履歴情報が被検者IDと紐づけられて記憶される記憶部61と、を備える。制御部60は、被検者IDに基づいて記憶部61から履歴情報を取得し、履歴情報に基づいて目標位置を探索するための探索範囲を決定し、探索範囲に基づいて、取得光学系50の位置が目標位置になるように駆動部70を駆動制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の被検眼の眼情報を取得する取得光学系と、
前記被検眼に対して前記取得光学系を所定の可動範囲内で移動させる駆動部と、
前記取得光学系の位置が目標位置になるように前記駆動部を駆動制御する制御部と、
前記目標位置の履歴情報が被検者IDと紐づけられて記憶される記憶部と、を備え、
前記制御部は、前記被検者IDを取得し、取得した前記被検者IDに基づいて前記記憶部から前記履歴情報を取得し、
前記履歴情報に基づいて前記目標位置を探索するための探索範囲を決定し、
前記探索範囲に基づいて、前記取得光学系の位置が前記目標位置になるように前記駆動部を駆動制御する
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
前記探索範囲は、前記可動範囲よりも短い
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記駆動部は、前記被検眼に対して前記取得光学系を、水平方向への移動、垂直方向への移動及び所定の回転軸回りでの回転の少なくとも何れかを実行する光学系駆動部を備え、前記制御部は、前記履歴情報に基づいて前記取得光学系の前記目標位置を探索するための探索範囲を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記駆動部は、前記取得光学系が有する光学部材の何れかを所定の可動範囲内で移動させる光学部材駆動部を備え、前記制御部は、前記履歴情報に基づいて前記光学部材の前記目標位置を探索するための探索範囲を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記取得光学系は、光源と、前記光源からの光を測定光と参照光とに分割する分割部と、所定の可動範囲内を移動することで前記測定光の測定光路及び前記参照光の参照光路の少なくとも何れかの光路長を変更する光路長変更部と、前記測定光路を経由した前記測定光を前記被検眼に照射する測定光学系と、前記被検眼からの戻り光と前記参照光路を経由した前記参照光との干渉光を検出する検出部と、を有する干渉光学系を含み、
前記光学部材駆動部は、前記光路長変更部を移動させる構成であり、
前記制御部は、前記履歴情報に基づいて前記光学部材の前記目標位置を探索するための探索範囲を決定する
ことを特徴とする請求項4に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記被検者又は前記取得光学系に対して移動可能に設けられた移動部材を備え、前記駆動部は、前記移動部材を所定の可動範囲で移動させる移動部材駆動部を備え、前記制御部は、前記履歴情報に基づいて前記移動部材の前記目標位置を探索するための探索範囲を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記探索範囲は、所定の探索間隔で区切られており、前記制御部は、前記探索間隔ずつ前記駆動部の移動量を変更しつつ、前記目標位置を探索する
ことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検眼の測定手段、撮影手段又は治療手段、顎受台を有する眼科装置本体と、光学台、椅子等の周辺機器とを備え、被検者の前回の測定時の位置情報に基づいて、顎受台、光学台又は椅子の高さ調整を行ったり、合焦レンズのピントが合うように、合焦レンズを移動したりする眼科システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-13472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前回の測定から期間が空いた場合等は、視力の変化、病気の進行、被検者の成長又は老化等により、前回の位置に各部を移動しても、適切であるとは限らなかった。この結果、各部の位置が適切な位置になるように、調整し直す必要があり、眼情報の取得までに時間が掛かっていた。
【0005】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、眼科装置の各部の位置調整に要する時間を、より短くして、眼情報の取得を効率的に行うことができる眼科装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の眼科装置は、被検者の被検眼の眼情報を取得する取得光学系と、前記被検眼に対して前記取得光学系を所定の可動範囲内で移動させる駆動部と、前記取得光学系の位置が目標位置になるように前記駆動部を駆動制御する制御部と、前記目標位置の履歴情報が被検者IDと紐づけられて記憶される記憶部と、を備える。前記制御部は、前記被検者IDを取得し、取得した前記被検者IDに基づいて前記記憶部から前記履歴情報を取得し、前記履歴情報に基づいて前記目標位置を探索するための探索範囲を決定し、前記探索範囲に基づいて、前記取得光学系の位置が前記目標位置になるように前記駆動部を駆動制御する。
【発明の効果】
【0007】
このように構成された眼科装置では、眼科装置の各部の位置調整に要する時間を、より短くして、眼情報の取得を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1に係る眼科装置の全体構成を示す斜視図である。
図2】実施例1に係る眼科装置の制御構成を示すブロック図である。
図3】実施例1に係る眼科装置の取得光学系の詳細構成を示す図である。
図4】実施例1に係る眼科装置のOCTユニットの詳細構成を示す図である。
図5】実施例1に係る眼科装置の表示画面に表示される画面の一例を示す図である。
図6】可動範囲と探索範囲との関係を説明するための図である。
図7】実施例1に係る眼科装置の表示画面に表示される画面の他の例を示す図である。
図8】実施例1に係る眼科装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施例1)
本開示の実施例1に係る眼科装置は、図1図4を参照して、以下のように説明される。実施例1の眼科装置1は、片眼ずつ被検眼の眼情報を取得する眼科装置であるが、これに限定されることはなく、本開示は、左右の被検眼に対応して一対の取得光学系を備え、被検者が左右の両眼を開放した状態で眼情報を取得したり、片眼の遮蔽や固視標の消灯により、片眼ずつ眼情報を取得したりする眼科装置にも適用することができる。
【0010】
本開示の眼科装置は、任意の自覚検査又は他覚検査を行うことが可能な眼科装置とすることができる。自覚検査は、被検者に所定の提示位置で視標等を提示し、この視標等に対する被検者の応答に基づいて検査結果を取得する検査である。この自覚検査は、遠用検査、中用検査、近用検査、コントラスト検査、夜間検査、グレア検査、ピンホール検査、立体視検査等の自覚屈折測定や、視野検査等がある。また、他覚検査は、被検眼Eに光を照射し、その戻り光の検出結果に基づいて被検眼Eに関する眼情報(眼特性)を取得する検査である。この他覚検査は、被検眼の眼特性を取得するための測定と、被検眼の画像(例えば前眼部画像)を取得するための撮影とが含まれる。さらに、他覚検査は、他覚屈折測定(レフ測定)、角膜形状測定(ケラト測定)、眼圧測定、眼底撮影、光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:以下、「OCT」という)を用いた眼底断層像撮影(OCT撮影)、OCTを用いた計測等がある。
【0011】
実施例1では、図1に示されるように、被検者に対峙する側から見て、矢印Xで示される左右方向がX軸方向とされ、矢印Yで示される上下方向(鉛直方向)がY軸方向とされ、左右方向及び上下方向と直交し矢印Zで示される方向が前後方向とされ、この前後方向がZ軸方向とされる。また、左右方向(X軸方向)において、被検者に対峙する側を基準にして左側が左方向、右側が右方向とされる。さらに、前後方向(Z軸方向)において、被検者側が前側(前方)、反対側が後側(後方)とされる。
【0012】
実施例1の眼科装置1は、3次元眼底画像撮影装置であり、被検眼Eの眼底画像を取得する眼底カメラ(眼底カメラユニット100)と、被検眼Eの眼底断層像を取得するOCT(OCTユニット200)と、を含む。ここで、「眼底カメラ」は、被検眼E(図3等参照)の奥にある網膜や視神経、毛細血管などの眼底状態を画像化し、眼底画像を撮影するカメラをいう。「OCT」は、光の干渉を利用して被検眼Eの眼底に存在する網膜の断層を画像化し、眼底断層像を撮影する光干渉断層計をいう。実施例1の眼科装置1は、被検眼の前眼部画像、眼底画像、眼底断層像等を観察、撮影及び記録し、電子画像として提供する眼科装置である。
【0013】
実施例1の眼科装置1は、図1に示すように、架台部10、測定ヘッド20、顔支持部30、コントロールパネル40、取得光学系50、制御部60、及び駆動部70を有する眼科装置本体Hを備える。また、眼科装置1は、眼科装置本体Hと共同して作用する周辺機器(移動部材)として、光学台T、図示しない椅子等を備える。取得光学系50は、測定ヘッド20の筐体21内に収容され、コントロールパネル40は、筐体21上部に取り付けられている。
【0014】
実施例1の眼科装置1は、上記した構成の他に、測定完了信号や検者等からの指示に応じて測定結果を印字するプリンタ、測定結果を外部メモリやサーバ等に出力する出力部や、動作の状況等を報知する音声出力部等が適宜設けられてもよい。
【0015】
光学台Tは、天板T1、天板T1を上下動可能に支持する図示しない支柱、天板T1を上下に移動させる光学台駆動部74、及び光学台駆動部74を動作させるための図示しないスイッチ等を有する。
【0016】
架台部10は、上面に測定ヘッド20がX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能に設けられている。架台部10は、光学台Tに載置される。架台部10は、制御部60、駆動部70等を内蔵する。さらに、架台部10は、外部メモリやパーソナルコンピュータに接続するための外部入出力端子11、電源ケーブルを差し込むための図示しない電源インレット、眼科装置1の起動又は停止のための図示しない電源スイッチ等を備えている。
【0017】
駆動部70は、駆動対象の部材を、所定の可動範囲内で移動させる。実施例1の駆動部70は、眼科装置本体Hに備えられるXYZ駆動部71、顎受駆動部72及び光学部材駆動部73と、光学台Tに備えられる前述の光学台駆動部74と等を有する。XYZ駆動部71、顎受駆動部72、光学部材駆動部73及び光学台駆動部74は、電動式の公知の移動機構であり、例えば、モータ及びモータ駆動回路を有するモータアクチュエータから構成される。すなわち、「可動範囲」は、これらモータによって各部材を最大限移動可能な範囲である。この「可動範囲」は、移動される部材やモータ等の性能によって、それぞれ決められている。
【0018】
XYZ駆動部71は、架台部10に内蔵され、制御部60の制御の下、架台部10に対して測定ヘッド20をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向(以下「XYZ方向」ということがある。)へ移動させる。このため、XYZ駆動部71は、測定ヘッド20に収容された取得光学系50を、所定の可動範囲内でXYZ方向へ移動させる光学系駆動部として機能する。顎受駆動部72は、顔支持部30に設けられ、制御部60の制御の下、架台部10に対して後述する顎受部32を上下方向(Y軸方向)へ移動させる。このため、顎受駆動部72は、移動部材である顎受部32を所定の可動範囲内で移動させる移動部材駆動部として機能する。
【0019】
光学部材駆動部73は、測定ヘッド20に内蔵され、制御部60の制御の下、取得光学系50内の、移動可能に配置された光学部材を光軸に沿って所定方向へ移動させ、又は所定の回転軸回りに回転移動させる。このため、光学部材駆動部73は、光学部材を所定の可動範囲内で移動させる光学部材駆動部として機能する。実施例1の光学部材駆動部73は、移動対象の複数の光学部材を、各々個別に移動させる複数の駆動機構により構成される。
【0020】
光学台駆動部74は、光学台Tに設けられ、制御部60の制御の下、光学台Tの天板T1を上下方向(Y軸方向)へ移動させる。このため、光学台駆動部74は、移動部材である天板T1を所定の可動範囲内で移動させる移動部材駆動部として機能する。なお、光学台駆動部74は、天板T1を左右方向(X軸方向)又は前後方向(Z軸方向)へも移動可能な構成とすることもできる。
【0021】
測定ヘッド20は、XYZ駆動部71によりXYZ軸方向へ、所定の可動範囲内で移動される。これにより、測定ヘッド20に収容される取得光学系50は、被検眼Eに対して前後、左右及び上下に移動し、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置が変更される。すなわち、被検眼Eと取得光学系50との位置関係は、XYZ駆動部71により相対的に変更される。
【0022】
測定ヘッド20は、被検者に対向する側(前側)の一面に、後述する対物レンズ122が嵌め込まれた円形の観察窓22を有している。取得光学系50は、観察窓22を介して被検眼に対峙可能に筐体21内に収容されている。取得光学系50は、その光路が観察窓22の中心を通るように筐体21内に設置されている。また、観察窓22の周囲には、複数(実施例1では二台)の前眼部カメラ23が設けられている。これら前眼部カメラ23も、取得光学系50に含まれる。
【0023】
複数の前眼部カメラ23は、被検眼の前眼部を異なる方向から実質的に同時に撮影し、被検眼の前眼部カメラ画像(前眼部画像、図5等参照)を取得するカメラである。各前眼部カメラ23は、それぞれ取得光学系50の光路から外れた位置に設けられている。実施例1では、前眼部カメラ23は、観察窓22を挟んで左右方向に並んで二台配置されているが、前眼部カメラ23の数や配置位置等は任意に設定可能である。しかしながら、前眼部カメラ23は、演算処理を考慮すると、異なる二方向から実質的に同時に前眼部を撮影可能な構成であれば十分である。なお、「実質的に同時」とは、複数の前眼部カメラ23による撮影において、眼球運動を無視できる程度の撮影タイミングのズレを許容することを示す。これにより、被検眼が実質的に同じ位置(向き)にあるときの前眼部カメラ画像を複数の前眼部カメラ23によって取得することができる。
【0024】
また、複数の前眼部カメラ23による撮影は動画撮影でも静止画撮影でもよい。動画撮影の場合、撮影開始タイミングを合わせるよう制御したり、フレームレートや各フレームの撮影タイミングを制御したりすることにより、上記した実質的に同時の前眼部撮影を実現することができる。一方、静止画撮影の場合、撮影タイミングを合わせるよう制御することにより、これを実現することができる。複数の前眼部カメラ23によって撮影された前眼部画像Ga(図5参照)は、制御部60の制御によってコントロールパネル40の表示画面41に表示される。
【0025】
顔支持部30は、架台部10の前方に固定されている。顔支持部30は、架台部10から起立しY軸方向に延びる支柱31と、この支柱31にY軸方向に移動可能に設けられた顎受部32と、支柱31の上部に固定された額当部33とを有する。また、顔支持部30は、図示しない外部固視灯を保持するための固視灯保持部34を有する。
【0026】
顎受部32及び額当部33は、被検眼の眼情報を取得する際、測定ヘッド20(取得光学系50)に対峙する被検者の顔を支持することで、被検眼Eの位置を固定する。顎受部32は、被検者が顎を載せる箇所である。顎受部32は、顎受駆動部72によって架台部10に対してY軸方向に移動される。額当部33は、被検者が額を宛がう箇所である。
【0027】
固視灯保持部34に保持される外部固視灯は、図示しないフレキシブルなアーム先端に、固視光を出射する光源を有し、外部固視に用いられる。外部固視灯の光源は、位置及び出射方向を任意に調整可能である。外部固視灯の光源の位置等を調整することで、眼科装置1は、被検眼を任意の方向に回旋させたり、内部固視時よりも大きく回旋させたりできる。また、眼科装置1は、内部固視が行えない場合、外部固視を用いて被検眼又は僚眼の視線を誘導し、被検眼の向きを調整することができる。
【0028】
実施例1の眼科装置1は、被検者が顎受部32に顎を載せるとともに額当部33に額を宛がい、測定ヘッド20に対峙した状態で、外部固視灯又は内部固視標を適宜点灯させ、被検眼の検査、観察、撮影等を行う。
【0029】
コントロールパネル40は、表示画面41を有する。表示画面41は、前眼部カメラ23で取得した前眼部画像Ga(図5等参照)、取得光学系50で取得した眼情報(例えば、測定結果、前眼部観察像等)が表示される。実施例1の表示画面41は、カラー液晶パネルの表面にタッチセンサが積層されたタッチパネル式の表示画面である。眼科装置1の操作者である検者は、表示画面41に表示されたボタン像や画像等を指でタッチ操作することで、制御部60への入力操作を行うことができる。つまり、表示画面41は、操作部42としても機能する。なお、操作部42は、架台部10や測定ヘッド20に設けられた各種のボタン、測定ヘッド20に接続されたキーボード、マウス等の入力装置、カードリーダ、パーソナルコンピュータ等で構成されてもよい。
【0030】
コントロールパネル40は、測定ヘッド20の筐体21の後方上部に、連結支持部43を介して回転可能に取り付けられている。連結支持部43は、表示画面41を測定ヘッド20に対して全周方向の何れの位置にも設定可能な回転支持部と、表示画面41の測定ヘッド20に対する傾斜角度を自由に設定可能な折れ曲げ支持部と、を組み合わせた支持構造とされる。このため、検者は、自身が眼科装置1の周囲のどこの位置にいても、自身が表示画面41を操作しやすい位置に、コントロールパネル40を配置することができる。この結果、検者は、被検者に対峙した位置だけでなく、被検者の傍に寄り添える位置等においても、操作部42の操作や表示画面41の視認を適切に行うことができる。
【0031】
図5は、表示画面41に表示される画面の一例である。この図5に示されるように、表示画面41は、第1表示領域41a、第2表示領域41b、第3表示領域41c、被検者ID表示領域41dを有する。第1表示領域41aは、例えば前眼部カメラ23によって撮影された前眼部画像Gaが表示される。第2表示領域41bは、例えば撮影光学系102によって取得された眼底画像Gf、OCTユニット200により生成されたプロジェクション画像(正面画像)等が表示される。第3表示領域41cは、例えばOCTユニット200により生成された眼底断層像Gt等が表示される。第1表示領域41a、第2表示領域41b、第3表示領域41cの大きさや配置は任意に設定可能である。被検者ID表示領域41dは、操作部42から入力された被検者ID(患者ID)が表示される。
【0032】
また、表示画面41は、第1表示領域41aの右側に、顎受部32を上下動させるための操作部42となる顎受上下動ボタン41eが表示される。また、表示画面41は、顎受上下動ボタン41e以外の必要な操作ボタン41fが表示され、さらに文字情報、操作方法等が適宜表示される。
【0033】
また、眼科装置1は、被検者や眼科装置本体Hから離れた位置から、検者が遠隔操作により眼科装置1の操作等を行えるように、遠隔操作用コントローラを備えることもできる。遠隔操作用コントローラは、コントロールパネル40と同等の入力操作機能を備えるとともに眼科装置本体Hとの通信機能を備える。遠隔操作用コントローラは、タブレット端末、スマートフォンなどの携帯端末(情報処理装置)、パーソナルコンピュータ、専用コントローラ等を用いることができる。遠隔操作用コントローラは、ケーブルにより有線で、又はWi-Fi(登録商標)等の近距離無線を介して、若しくはインターネット等の通信ネットワークを介して制御部60と通信可能に接続される。
【0034】
取得光学系50は、被検眼の眼情報として、被検眼Eの前眼部画像Ga、眼底画像Gf、眼底断層像Gt等を取得する光学系である。取得光学系50は、図3に示されるように、眼底カメラユニット100と、OCTユニット200とを有する。なお、取得光学系50の構成は、図3に示される構成に限定されない。
【0035】
眼底カメラユニット100の構成及び機能は、図3を参照して以下のように説明される。眼底カメラユニット100は、被検眼Eの眼底Efを撮影して眼底画像を取得する。取得される眼底画像Gfは、例えば、近赤外光を用いた動画撮影で得られる観察画像、フラッシュ光を用いた静止画像である撮影画像等の正面画像である。また、眼底カメラユニット100は、被検眼Eの前眼部Eaを撮影して正面画像(前眼部画像Ga)を取得することができる。
【0036】
眼底カメラユニット100は、被検眼Eに照明光を照射する照明光学系101と、被検眼Eからの照明光の戻り光を検出する撮影光学系102とを有する。また、OCTユニット200からの測定光は、眼底カメラユニット100内の光路を通じて被検眼Eに導かれ、その戻り光は、同じ光路を通じてOCTユニット200に導かれる。
【0037】
照明光学系101の観察光源111から出力された光(観察照明光)は、曲面状の反射面を有する反射ミラー112により反射され、第1集光レンズ113を経由し、可視カットフィルタ114を透過して近赤外光となる。さらに、観察照明光は、撮影光源115の近傍にて一旦集束し、第1ミラー116により反射され、第1リレーレンズ117、第2リレーレンズ118、第1絞り119及び第3リレーレンズ120を経由する。そして、観察照明光は、孔開きミラー121の周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、第1ダイクロイックミラー146を透過し、対物レンズ122により屈折されて被検眼E(眼底Ef又は前眼部Ea)を照明する。被検眼Eからの観察照明光の戻り光は、対物レンズ122により屈折され、第1ダイクロイックミラー146を透過し、孔開きミラー121の中心領域に形成された孔部を通過し、第2ダイクロイックミラー155を透過する。第2ダイクロイックミラー155を透過した戻り光は、撮影合焦レンズ131を経由し、第2ミラー132により反射される。さらに、この戻り光は、ハーフミラー133Aを透過し、第3ダイクロイックミラー133により反射され、第2集光レンズ134により第1イメージセンサ135の受光面に結像される。第1イメージセンサ135は、所定のフレームレートで戻り光を検出する。なお、撮影光学系102のフォーカスは、眼底Ef又は前眼部Eaに合致するように調整される。フォーカスは、撮影合焦レンズ131が、光学部材駆動部73によって、図3に示される矢印の方向に、所定の可動範囲内を移動されることにより行われる。
【0038】
撮影光源115から出力された光(撮影照明光)は、観察照明光と同様の経路を通って眼底Efに照射される。被検眼Eからの撮影照明光の戻り光は、観察照明光の戻り光と同じ経路を通って第3ダイクロイックミラー133まで導かれ、第3ダイクロイックミラー133を透過し、第3ミラー136により反射され、第3集光レンズ137により第2イメージセンサ138の受光面に結像される。
【0039】
LCD(Liquid Crystal Display)139は固視標や視力測定用視標を表示する。LCD139から出力された光束は、その一部がハーフミラー133Aにて反射され、第2ミラー132に反射され、撮影合焦レンズ131及び第2ダイクロイックミラー155を経由し、孔開きミラー121の孔部を通過する。孔開きミラー121の孔部を通過した光束は、第1ダイクロイックミラー146を透過し、対物レンズ122により屈折されて眼底Efに投射される。
【0040】
被検眼Eの固視位置は、LCD139の画面上における固視標の表示位置を変更することにより変更可能である。固視位置は、例えば、黄斑を中心とする画像を取得するための固視位置、視神経乳頭を中心とする画像を取得するための固視位置、黄斑と視神経乳頭との間の眼底中心を中心とする画像を取得するための固視位置、黄斑から大きく離れた部位(眼底周辺部)の画像を取得するための固視位置等がある。実施例1の眼科装置1は、このような固視位置の少なくとも1つを指定するためのGUI(Graphical User Interface)等を有する。実施例1の眼科装置1は、固視位置(固視標の表示位置)をマニュアルで移動するためのGUI等を有する。
【0041】
移動可能な固視標を被検眼Eに提示するための構成はLCD等の表示装置に限定されない。例えば、移動可能な固視標は、光源アレイ(発光ダイオード(LED)アレイ等)における複数の光源を選択的に点灯させることにより生成されることができる。また、移移動可能な固視標は、移動可能な1以上の光源により生成されることができる。
【0042】
また、固視標は、固視灯保持部34に保持された1以上の外部固視灯とすることもできる。1以上の外部固視灯の1つは、被検眼Eの僚眼に固視光を投射することが可能である。僚眼における固視光の投射位置は、変更可能である。僚眼に対する固視光の投射位置を変更することにより、被検眼Eの固視位置は変更されることができる。外部固視灯による固視位置は、LCD139を用いた被検眼Eの固視位置と同様であってよい。例えば、移動可能な固視標は、複数の外部固視灯が選択的に点灯されることにより生成されることができる。また、移動可能な固視標は、移動可能な1以上の外部固視灯により生成されることができる。
【0043】
アライメント光学系150は、被検眼Eに対する光学系のアライメントに用いられるアライメント指標を生成する。第1LED151から出力されたアライメント光は、第2絞り152及び153並びに第4リレーレンズ154を経由し、第2ダイクロイックミラー155により反射され、孔開きミラー121の孔部を通過する。孔開きミラー121の孔部を通過した光は、第1ダイクロイックミラー146を透過し、対物レンズ122により被検眼Eに投射される。アライメント光の角膜反射光は、観察照明光の戻り光と同じ経路を通って第1イメージセンサ135に導かれる。その受光像(アライメント指標像)に基づいてマニュアルアライメントやオートアライメントが実行される。
【0044】
フォーカス光学系160は、被検眼Eに対するフォーカス調整に用いられるスプリット指標を生成する。フォーカス光学系160は、光学部材駆動部73によって、撮影光学系102の光路(撮影光路)に沿った撮影合焦レンズ131の移動に連動して、照明光学系101の光路(照明光路)に沿って図3に示される矢印方向に、所定の可動範囲内を、移動される。反射棒167は、光学部材駆動部73によって照明光路に対して挿脱可能である。フォーカス調整を行う際には、反射棒167の反射面が照明光路に傾斜配置される。第2LED161から出力されたフォーカス光は、第5リレーレンズ162を通過し、スプリット指標板163により2つの光束に分離され、二孔絞り164を通過し、第4ミラー165により反射され、第4集光レンズ166により反射棒167の反射面に一旦結像されて反射される。さらに、フォーカス光は、第3リレーレンズ120を経由し、孔開きミラー121に反射され、第1ダイクロイックミラー146を透過し、対物レンズ122により屈折されて眼底Efに投射される。フォーカス光の眼底反射光は、アライメント光の角膜反射光と同じ経路を通って第1イメージセンサ135に導かれる。その受光像(スプリット指標像)に基づいてマニュアルフォーカスやオートフォーカスが実行される。
【0045】
第1ダイクロイックミラー146は、眼底撮影用光路とOCT用光路とを合成する。第1ダイクロイックミラー146は、OCTに用いられる波長帯の光を反射し、眼底撮影用の光を透過させる。OCT用光路(測定光の光路)には、OCTユニット200側から第1ダイクロイックミラー146側に向かって順に、コリメータレンズユニット140、光路長変更部141、光スキャナ142、OCT合焦レンズ143、第5ミラー144、及び第6リレーレンズ145が設けられている。
【0046】
光路長変更部141は、第1コーナーキューブ141aを含む。光路長変更部141(第1コーナーキューブ141a)は、光学部材駆動部73によって、所定の可動範囲内を図3に示される矢印の方向に移動可能とされ、OCT用光路の長さを変更する。この光路長の変更は、眼軸長に応じた光路長補正や、干渉状態の調整などに利用される。
【0047】
光スキャナ142は、被検眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置に配置される。光スキャナ142は、OCT用光路を通過する測定光LS(図4参照)を偏向する。光スキャナ142は、例えば、2次元走査が可能なガルバノスキャナである。光スキャナ142は、互いに直交する方向にスキャン部位を測定光LSでスキャンするように構成されているので、測定光LSでX軸方向及びY軸方向にそれぞれ独立にスキャンできる。さらに、光スキャナ142に含まれる2つのガルバノミラーの向きを同時に制御することで、XY面上の任意の軌跡に沿って測定光LSでスキャンすることが可能である。ガルバノミラーの向き(スキャン位置)は、光学部材駆動部73によって、所定の可動範囲内で変更される。
【0048】
OCT合焦レンズ143は、OCT用の光学系のフォーカス調整を行うために、光学部材駆動部73によって測定光LS(図4参照)の光路に沿って、所定の可動範囲内を、図3に示される矢印の方向に移動される。制御部60は、撮影合焦レンズ131の移動、フォーカス光学系160の移動、及びOCT合焦レンズ143の移動を、光学部材駆動部73を制御することによって連係的に制御することができる。
【0049】
OCTユニット200の構成及び機能は、図4を参照して以下のように説明される。OCTユニット200は、図4に例示されるような、スウェプトソースOCTを実行するための光学系を備えている。この光学系は、干渉光学系を含む。この干渉光学系は、波長可変光源(波長掃引型光源)からの光を測定光と参照光とに分割する機能(分割部)と、被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光とを重ね合わせて干渉光を生成する機能(干渉光生成部)と、この干渉光を検出する機能(検出部)とを備える。干渉光学系により得られた干渉光の検出結果(検出信号)は、干渉光のスペクトルを示す信号であり、制御部60に送られる。
【0050】
光源ユニット201は、例えば、出射光の波長を高速で変化させる近赤外波長可変レーザを含む。光源ユニット201から出力された光L0は、第1光ファイバ202により第1偏波コントローラ203に導かれてその偏光状態が調整される。偏光状態が調整された光L0は、第2光ファイバ204により第1ファイバカプラ205に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。
【0051】
参照光LRは、第3光ファイバ210により第1コリメータ211に導かれて平行光束に変換され、光路長補正部材212及び分散補償部材213を経由し、第2コーナーキューブ(参照ミラー)214に導かれる。光路長補正部材212は、参照光LRの光路長と測定光LSの光路長とを合わせるよう作用する。分散補償部材213は、参照光LRと測定光LSとの間の分散特性を合わせるよう作用する。第2コーナーキューブ214は、光学部材駆動部73によって、参照光LRの光路に沿って、所定の可動範囲内を、図4に示される矢印の方向に移動される。第2コーナーキューブ214の移動により、参照光LRの光路長が変更される。
【0052】
第2コーナーキューブ214を経由した参照光LRは、分散補償部材213及び光路長補正部材212を経由し、第2コリメータ216によって平行光束から集束光束に変換され、第4光ファイバ217に入射する。第4光ファイバ217に入射した参照光LRは、第2偏波コントローラ218に導かれてその偏光状態が調整され、第5光ファイバ219によりアッテネータ220に導かれて光量が調整され、第6光ファイバ221により第2ファイバカプラ222に導かれる。
【0053】
一方、第1ファイバカプラ205により生成された測定光LSは、第7光ファイバ227により導かれてコリメータレンズユニット140により平行光束に変換され、図3に示される光路長変更部141、光スキャナ142、OCT合焦レンズ143、第5ミラー144及び第6リレーレンズ145を経由する。第6リレーレンズ145を経由した測定光LSは、第1ダイクロイックミラー146により反射され、対物レンズ122により屈折されて被検眼Eに入射する。測定光LSは、被検眼Eの様々な深さ位置において散乱・反射される。被検眼Eからの測定光LSの戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行して第1ファイバカプラ205に導かれ、第8光ファイバ228を経由して第2ファイバカプラ222に到達する。
【0054】
第2ファイバカプラ222は、第8光ファイバ228を介して入射された測定光LSと、第6光ファイバ221を介して入射された参照光LRとを合成して(干渉させて)干渉光を生成する。第2ファイバカプラ222は、所定の分岐比(例えば1:1)で干渉光を分岐することにより、一対の干渉光LCを生成する。一対の干渉光LCは、それぞれ第9光ファイバ223及び第10光ファイバ224を通じて検出器225に導かれる。
【0055】
検出器225は、例えばバランスドフォトダイオードである。バランスドフォトダイオードは、一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを含み、これらフォトディテクタにより得られた一対の検出結果の差分を出力する。検出器225は、この出力(検出信号)をDAQ(Data Acquisition System)230に送る。
【0056】
DAQ230には、光源ユニット201からクロックKCが供給される。クロックKCは、光源ユニット201において、波長可変光源により所定の波長範囲内で掃引される各波長の出力タイミングに同期して生成される。光源ユニット201は、例えば、各出力波長の光L0を分岐することにより得られた2つの分岐光の一方を光学的に遅延させた後、これらの合成光を検出した結果に基づいてクロックKCを生成する。DAQ230は、検出器225から入力される検出信号をクロックKCに基づきサンプリングする。DAQ230は、検出器225からの検出信号のサンプリング結果を制御部60に送る。
【0057】
実施例1の眼科装置1は、前述のように光路長を変更して光路長差を調整する光学部材として、測定光LSの光路(測定光路、測定アーム)の長さを変更する光路長変更部141(第1コーナーキューブ141a)と、参照光LRの光路(参照光路、参照アーム)の長さを変更する第2コーナーキューブ214の双方が設けられている。しかしながら、光路長変更部141と第2コーナーキューブ214の何れか一方のみが設けられもよい。また、眼科装置1は、これら以外の光学部材を用いて、測定光路長と参照光路長との差を変更する構成とすることもできる。
【0058】
なお、眼底カメラユニット100及びOCTユニット200の動作は、特開2020-25719号公報等に記載の動作と同様であるため、詳細な記載は省略する。
【0059】
制御部60は、記憶部61又は内蔵する内部メモリ62に記憶されているプログラムを、例えばRAM(Random Access Memory)上に展開することにより、操作部42に対する操作等に応じて、眼科装置1の動作を統括的に制御する。実施例1では、記憶部61は、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等で構成され、内部メモリ62は、RAM等で構成される。
【0060】
記憶部61は、コンピュータプログラムの他、眼情報取得のための各種パラメータ、取得結果等を記憶する。また、記憶部61は、被検者IDに紐づけられて、被検者が当該眼科装置1で眼情報を取得したときの各部の目標位置の履歴情報が記憶される。ここで、「目標位置」は、眼科装置1で眼情報を取得するべく、取得光学系50、取得光学系50に含まれる光学部材、顎受部32、光学台T等の各部が移動されて、眼情報の取得に適切(最適)な位置になったときの、各部の位置情報である。「目標位置の履歴情報」は、被検者が過去(例えば、前回)に眼情報を取得したときの、各部の目標位置、つまり過去の目標位置である。
【0061】
履歴情報に含まれる過去の目標位置は、例えば、アライメント時等に測定ヘッド20をXYZ方向へ移動したときの測定ヘッド20の三次元の位置情報(以下「XYZ位置」という。)、フォーカス時に撮影合焦レンズ131等を光軸に沿って移動したときの撮影合焦レンズ131等の位置情報(以下「フォーカス位置」という。)、光路長差調整時に第1コーナーキューブ141a及び第2コーナーキューブ214の少なくとも一方を移動させたときのこれらの光学部材の位置情報(以下「参照ミラー位置」という。)、顎受部32をY軸方向へ移動したときの顎受部32の位置情報(以下「顎受位置」という。)、光学台TをY軸方向へ移動したときの光学台Tの位置情報(以下「光学台位置」という。)等が挙げられる。なお、目標位置が、これらに限定されず、光スキャナ142、その他の駆動部70によって移動や回転がされる部材の位置情報等を含むこともできる。なお、履歴情報は、眼情報を取得するたびに、取得時の各部の目標位置によって更新されてもよい。また、複数の眼情報の取得時の履歴情報が、時系列で記憶部61に記憶されてもよい。
【0062】
制御部60は、前眼部カメラ23の動作を制御して、前眼部カメラ画像を取得させ、顎受駆動部72、光学台駆動部74を駆動制御して顎受部32、光学台Tを所定の可動範囲内で移動させる。制御部60は、コントロールパネル40を制御して表示画面41に画像を表示させる。制御部60は、XYZ駆動部71を駆動して、測定ヘッド20(取得光学系50)を所定の可動範囲内でXYZへ移動させ、アライメントやトラッキングを実行する。
【0063】
また、制御部60は、眼底カメラユニット100及びOCTユニット200を制御する。例えば、制御部60は、LCD139を制御して画面上に固視標を表示したり、固視標の表示位置を連続的に又は段階的に変更したりさせる。制御部60は、光学部材駆動部73を駆動制御して、撮影光学系102の光軸方向に沿って所定の可動範囲内で撮影合焦レンズ131を移動させるとともに、照明光学系101の光軸方向に沿って所定の可動範囲内でフォーカス光学系160を移動させる。これにより、撮影光学系102の合焦位置が変更される。
【0064】
また、制御部60は、光学部材駆動部73を駆動制御して、測定光路の光軸方向に沿って所定の可動範囲内でOCT合焦レンズ143を移動させる。これにより、測定光LSの合焦位置が変更される。測定光LSの合焦位置は、測定光LSのビームウェストの深さ位置(z位置)に相当する。
【0065】
また、制御部60は、眼底カメラユニット100における照明光学系101の観察光源111、撮影光源115、第1LED151、第2LED161、第1イメージセンサ135、及び第2イメージセンサ138等を制御して動作させる。制御部60は、光学部材駆動部73を駆動制御して、光スキャナ142、反射棒167を所定の可動範囲内で移動させる。制御部60は、OCTユニット200の光源ユニット201、アッテネータ220、第1偏波コントローラ203、第2偏波コントローラ218、検出器225、DAQ230等を制御して動作させる。
【0066】
また、制御部60は、眼底カメラユニット100等を制御することにより眼底撮影を実行させる。制御部60は、眼底カメラユニット100及びOCTユニット200等を制御することによりOCT計測を実行させる。制御部60は、OCT計測を行う前に複数の予備的な動作を実行させることができる。予備的な動作としては、アライメント、フォーカス粗調整、フォーカス微調整、偏光調整、光路長差調整等が挙げられる。
【0067】
フォーカス粗調整は、前述のスプリット指標を用いて実行される。フォーカス微調整は、OCT計測の干渉感度に基づいて実行される。例えば、制御部60は、被検眼EのOCT計測を行って干渉信号を取得して干渉強度(干渉感度)をモニタすることにより、干渉強度が最大となるようなOCT合焦レンズ143の位置を求め、光学部材駆動部73を駆動制御して、その位置にOCT合焦レンズ143を移動させることにより、フォーカス微調整を実行することができる。偏光調整は、測定光LSと参照光LRとの干渉効率を最適化するために参照光LRの偏光状態が調整されることにより行われる。
【0068】
光路長差調整は、被検眼Eの対象部位がOCT画像のフレーム内における所定のz位置に描出されるように、制御部60が光学部材駆動部73を駆動制御して、光路長変更部141及び/又は第2コーナーキューブ214を移動させることで行われる。これにより、測定光路と参照光路との間の光路長差が調整される。光路長差調整の基準となる対象部位は、OCT画像において特徴的な輝度を呈する部位(或いは、反射強度プロファイルにおいて特徴的な反射強度を呈する部位)があらかじめ設定される。具体例として、眼底のOCT計測においては網膜色素上皮層を基準として設定することができ、前眼部のOCT計測においては角膜表面を基準として設定することができる。このように好適な光路長差を探索する自動処理はオートZと呼ばれる。
【0069】
なお、光路長差調整はオートZには限定されない。例えば、制御部60は、オートZにより達成された好適な画像描出位置を維持する自動処理を実行することが可能である。このような処理はZロックと呼ばれる。Zロックにおいては、制御部60は、例えば、光路長差調整の基準となる対象部位がフレーム内の所定のz位置に描出されている状態が維持されるように、光学部材駆動部73を駆動制御して光路長変更部141及び/又は第2コーナーキューブ214を移動させる。
【0070】
また、実施例1では、制御部60は、Zロックの基準位置(z位置)を指定できる。すなわち、指定された基準位置(又は当該基準位置に基づいて特定されたZロック位置)に被検眼Eの対象部位が描出されている状態が維持されるように光路長差調整が行われる。なお、Zロックの基準位置の設定は、上記に限定されない。
【0071】
また、制御部60は、操作部42から入力される被検者IDを取得する。被検者IDは、例えば、操作部42である表示画面41のタッチパネルやキーボードからの入力、カードリーダでの診察券等の読み取り等により入力される。なお、被検者IDは、操作部42から入力されるものに限定されず、例えば、ケーブル、通信ネットワーク等を介して眼科装置1と接続される他の眼科装置、管理者端末等から入力されるものでもよい。
【0072】
制御部60は、取得した被検者IDに基づいて、記憶部61から当該被検者の履歴情報を取得する。履歴情報は、被検者が過去に眼特性を取得したときの眼科装置1の各部の目標位置を含む情報である。被検者IDに対応する履歴情報が取得できた場合は、被検者が過去に当該眼科装置1で眼情報を取得したことがあることを示す。この場合、制御部60は、取得した履歴情報に基づいて、眼科装置1の各部を動作させる適切な目標位置を探索するための探索範囲を決定する。制御部60は、決定した探索範囲に基づいて、眼科装置1の各部の設定を変更しつつ、各部を制御する。そして、各部の位置が適切な位置(つまり、今回の目標位置)になったところで取得光学系50を制御して、眼情報を取得させる。制御部60は、今回の眼情報の取得時の各部の目標位置を被検者IDと紐づけて記憶部61に記憶し、当該被検者の履歴情報を更新する。
【0073】
より具体的には、例えば、制御部60は、測定ヘッド20の過去のXYZ位置(履歴情報)を取得する。この過去のXYZ位置に基づいて、制御部60は、今回の眼情報取得における測定ヘッド20の適切なXYZ位置を探索するための探索範囲を決定する。つまり、制御部60は、制御部60は、取得した過去のXYZ位置を基準として、その周辺部(例えば、X、Y、Z軸方向それぞれにおいてXYZ位置±数mm)の範囲を探索範囲とする。制御部60は、この探索範囲内において、XYZ駆動部71を駆動制御することで、測定ヘッド20を移動させてアライメントを実行する。制御部60は、アライメントが完了したときの測定ヘッド20のXYZ位置を記憶部61に記憶し、XYZ位置の履歴情報を更新する。
【0074】
また、制御部60は、第1コーナーキューブ141a及び/又は第2コーナーキューブ214の過去の参照ミラー位置(履歴情報)を取得する。制御部60は、取得した参照ミラー位置を基準として、その周辺部の範囲を探索範囲として決定する。制御部60は、この探索範囲に基づき、光学部材駆動部73を駆動制御することで、光路長変更部141及び/又は第2コーナーキューブ214を移動させ、測定光LS及び/又は参照光LRの光路長を変更し、光路長差を調整する。制御部60は、適切な光路長長差となったときの第1コーナーキューブ141a及び/又は第2コーナーキューブの参照ミラー位置を記憶部61に記憶し、参照ミラー位置の履歴情報を更新する。
【0075】
一方、被検者IDに対応する履歴情報が取得できない(記憶されていない)場合は、初めての眼情報の取得であるため、眼科装置1は、例えば、各部の所定の可動範囲を探索範囲とし、この探索範囲に基づいて、各部が目標位置になるように各部を制御する。そして、各部の位置が目標位置になったところで取得光学系50を制御して、眼情報を取得させる。制御部60は、今回の眼情報の取得時の各部の目標位置を被検者IDと紐づけて記憶部61に記憶し、当該被検者の履歴情報を新規に登録する。
【0076】
また、制御部60は、OCTユニット200の検出器225からの検出信号をDAQ230でサンプリングすることにより得られたサンプリングデータに基づいて、被検眼EのOCT画像を生成する。制御部60により生成されるOCT画像は、Aスキャン画像、Bスキャン画像(眼底断層像)、Cスキャン画像等がある。また、制御部60は、OCT画像に基づいて、眼底Efの三次元画像等を生成する。これらの画像形成のための演算処理は、従来のスウェプトソースタイプのOCT装置で実行される演算処理と同様である。制御部60は、生成したOCT画像、三次元画像、眼底カメラユニット100により得られた画像(眼底画像、前眼部画像等)に対して各種の画像処理や解析処理を施したり、コントロールパネル40を制御して、これらの画像を表示画面41に表示させたりする。
【0077】
実施例1の眼科装置1における動作の一例は、図8に示されるフローチャートに基づいて以下のように説明されるが、この動作に限定されない。なお、図8に示される動作は、眼科装置1の電源が投入された状態で、被検者が顎受部32に顎を載せ、額当部33に額を宛がうことで顔(被検眼)の位置を固定したときに開始される。一方、検者は、操作部42の操作によって、眼科装置1に対して被検者IDを入力する。
【0078】
ステップS1で、制御部60は、操作部42から入力された被検者IDを取得する。次のステップS2で、制御部60は、被検者IDに基づいて、記憶部61から目標位置の履歴情報を取得する。当該被験者が、過去に当該眼科装置1で眼情報を取得したことがある場合(以下、「検査歴がある」という。)は、被検者IDに対応する履歴情報が取得される。これに対して、当該被験者が、過去に当該眼科装置1で眼情報を取得したことがない場合(以下、「検査歴がない」という。)は、被検者IDに対応する履歴情報は取得されない。履歴情報は、例えば、過去(前回)のXYZ位置、フォーカス位置、参照ミラー位置、顎受位置、光学台位置等が挙げられる。
【0079】
なお、ステップS2で履歴情報を取得した後、制御部60は、取得した過去の顎受位置、光学台位置に基づいて、顎受駆動部72、光学台駆動部74を駆動制御し、顎受部32、光学台Tの高さの粗調整を行ってもよい。
【0080】
ステップS3で、制御部60は、複数の前眼部カメラ23及び眼底カメラユニット100の撮影光学系102を制御し、例えば、被検眼Eの前眼部画像及び眼底画像を取得させる。次いで、制御部60は、コントロールパネル40を制御して、取得した前眼部画像Ga及び眼底画像Gfを、表示画面41の第1表示領域41a、第2表示領域41bに各々表示させ、被検者ID表示領域41dに被検者IDを表示させる(図5参照)。
【0081】
検者は、顎受部32の高さ調整をすべく、表示画面41を視認しつつ、顎受上下動ボタン41eをタッチ操作する。ステップS4で、制御部60は、顎受上下動ボタン41eに対するタッチ操作に応じて顎受駆動部72を駆動制御し、顎受部32を上下方向に移動させて高さ調整する。このとき、検者は、光学台Tのスイッチ等を操作して眼科装置本体Hとともに天板T1をY軸方向に移動させて光学台T(眼科装置本体H)の高さ調整をしてもよい。なお、顎受部32及び光学台Tの高さ調整、さらには椅子の高さ調整は、検者の操作によるものに限定されず、制御部60が、過去の顎受位置、光学台位置、椅子位置に基づいて各々の探索範囲を決定し、この探索範囲に基づき顎受駆動部72や光学台駆動部74を駆動制御し、前眼部カメラ23等で取得した前眼部画像が所定の位置に入るように、顎受部32や光学台TをY軸方向に移動させる構成とすることもできる。
【0082】
次に、検者は、操作部42に対して所定の操作を行うことにより、第2表示領域41bに表示された眼底画像Gfにおける所望の位置にスキャンエリアを指定する。この操作部42の操作入力を受けて、ステップS5で、制御部60は被検眼Eに対してスキャンエリアを設定する。スキャンエリアは、測定光LSの走査対象となる被検眼E上の領域、つまりOCT計測の対象となる被検眼E上の領域である。
【0083】
ステップS6で、制御部60は、測定ヘッド20の過去のXYZ位置に基づいて今回のXYZ位置を探索するための探索範囲を決定する。この場合、例えば、検査歴がない被検者の場合(初回検査時)、制御部60は、図6の(1)に示されるように、可動範囲と同じ範囲、又は可動範囲よりやや狭い範囲を探索範囲(探索範囲1)とする。一方、検査歴がある被検者の場合(再検査時)、制御部60は、過去の位置XYZ位置を基準として、例えば、XYZ位置±数mmの範囲を探索範囲(探索範囲2)とする。つまり、探索範囲2は、測定ヘッド20の可動範囲よりも狭く、かつ、探索範囲1よりも狭くできる。
【0084】
ステップS7では、制御部60は、上記ステップS6で決定されたXYZ位置の探索範囲に基づいて、アライメントを実行する。例えば、制御部60は、アライメント光学系150を制御して、被検眼Eにアライメント指標を投影させる。このとき、アライメント光学系150は、被検眼Eに、LCD139による固視標も投影する。制御部60は、探索範囲内において、例えば第1イメージセンサ135により取得された受光像に基づいて特定された測定ヘッド20の移動量に基づいて、XYZ駆動部71を駆動制御し、被検眼Eに対して測定ヘッド20(取得光学系50)を当該移動量だけ相対的に移動させる。制御部60は、探索範囲内で移動量を変更しながら、この処理を繰り返し実行することで、測定ヘッド20が、目標のXYZ位置になるように移動させる。これにより、アライメントが終了する。なお、制御部60は、複数の前眼部カメラ23で撮影された前眼部画像Gaに基づいてアライメントを行うこともでき、より高精度なアライメントが可能となる。
【0085】
ここで、初回検査時は、図6の(1)に示されるように、探索範囲1内で移動量が変更されながら、目標位置になるようにアライメントが行われる。これに対して、再検査時は、過去のXYZ位置に基づいて、可動範囲及び探索範囲1よりも狭い探索範囲2内で移動量が変更されながら、目標のXYZ位置になるようにアライメントが行われる。このため、実施例1の眼科装置1は、再検査時のアライメントに要する時間をより短くできる。
【0086】
アライメントが終了すると、次のステップS8で、制御部60は、オートZ(光路長差調整)を実行すべく、過去の参照ミラー位置に基づいて、今回の参照ミラー位置を探索するための探索範囲を決定する。この探索範囲も、再検査時は、第1コーナーキューブ141a及び/又は第2コーナーキューブ214の可動範囲及び初回検査時の探索範囲よりも狭い範囲が設定される。
【0087】
次のステップS9で、制御部60は、上記ステップS8で決定された参照ミラー位置の探索範囲に基づいて、オートZを実行する。すなわち、制御部60は、OCT計測を開始させる。このOCT計測においては、被検眼E(例えば、眼底Ef)の実質的に同じ断面が所定の周波数で反復的にスキャンされる。続いて、制御部60は、特開2016-041221号公報で開示された手法と同様に、取得されたOCT画像(又は反射強度プロファイルなど)に基づいてオートZを実行する。ここで、制御部60は、コントロールパネル40を制御して、取得したOCT画像を表示画面41にライブ表示させる。
【0088】
この場合も、再検査時の参照ミラー位置の探索範囲は、第1コーナーキューブ141a及び/又は第2コーナーキューブ214の可動範囲よりも狭く、かつ初回検査時の探索時間より短くできる。このため、眼科装置1は、オートZに要する時間をより短くできる。なお、制御部60は、光学部材駆動部73を制御して過去のフォーカス位置に撮影合焦レンズ131を移動させてからオートZを実行してもよく、オートZをより適切かつ迅速に行える。
【0089】
次のステップS10で、制御部60は、過去のフォーカス位置に基づいて、今回のフォーカス位置(撮影合焦レンズ131の位置)を探索するための探索範囲を決定する。この探索範囲も、再検査時は、撮影合焦レンズ131等の可動範囲及び初回検査時の探索範囲よりも狭い範囲が設定される。
【0090】
なお、図6の(2)に示されるように、探索範囲が所定の探索間隔で区切られ、フォーカス位置の探索は、所定の探索間隔で、間欠的に移動量(移動位置)が設定され、この移動量に基づいて撮影合焦レンズ131が移動されることで行われる構成とすることもできる。この場合、再検査時の探索範囲2は、初回検査時の探索範囲1よりも狭くできるだけでなく、探索間隔2を初回検査時の探索間隔1よりも狭くすることもできる。
【0091】
ステップS11では、制御部60は、上記ステップS10で決定したフォーカス位置の探索範囲に基づいて、フォーカス位置の探索によるフォーカス調整を開始する。例えば、制御部60は、眼底カメラユニット100に眼底Efの正面画像の取得を開始させ、フォーカス光学系160を制御して眼底Efにスプリット指標を投影させる。制御部60は、例えば第1イメージセンサ135により取得された受光像に基づいて特定された光学系の移動量に基づいて光学部材駆動部73を駆動制御し、撮影合焦レンズ131を当該移動量だけ移動させる。ここで、制御部60は、光学部材駆動部73を駆動制御し、OCT合焦レンズ143を当該移動量だけ移動させる。制御部60は、探索範囲内で移動量を変更しながら、この処理を繰り返し実行することで、撮影合焦レンズ131及びOCT合焦レンズ143を目的のフォーカス位置になるように移動させる。これによりフォーカスが終了する。
【0092】
この場合も、再検査時のフォーカス位置の探索範囲2は、撮影合焦レンズ131及びOCT合焦レンズ243の可動範囲よりも狭く、かつ、初回の検査時のフォーカス位置の探索範囲1より短くできる。このため、眼科装置1は、フォーカスに要する時間をより短くできる。さらに、再検査時の探索間隔を狭くした場合は、眼科装置1は、より高精度、かつより短い時間でフォーカス位置を探索でき、より適切にフォーカスを行える。
【0093】
なお、制御部60は、ステップS7のアライメント又はステップS11のフォーカスにおいて、複数の予備的な動作を実行してもよい。予備的な動作としては、アライメント、フォーカス粗調整、光路長差調整、偏光調整、フォーカス微調整等が挙げられる。
【0094】
ステップS12で、制御部60は、OCTユニット200等を制御することによりOCT仮計測を実行する。続いて、制御部60は、被検眼Eのプロジェクション画像を形成する。
【0095】
ステップS13で、制御部60は、Zロックの基準位置を指定する(アーチファクト特定)。すなわち、制御部60は、上記ステップS12において形成されたプロジェクション画像に基づいて折り返しに起因したアーチファクトを特定し、特定されたアーチファクトの描出位置に対応したZロックの基準位置を所定のBスキャンに対して設定する。なお、このステップS13においてアーチファクトが特定されない場合、Zロックの基準位置は、所定のBスキャンに対して予め決められた値が設定される。
【0096】
ステップS14で、制御部60は、Zロック位置を取得する。すなわち、制御部60は、ステップS13において指定されたZロックの基準位置に基づいて、他のBスキャンに対するZロック位置を取得する。
【0097】
ステップS15で、制御部60は、順次にBスキャンを実行するべく、例えば、上記ステップS14において取得されたZロック位置に基づいて、光路長差の変更量を取得する。その後、制御部60は、取得された光路長差の変更量に基づいて光学部材駆動部73を駆動制御して、第1コーナーキューブ141a及び第2コーナーキューブ214の少なくとも一方を移動させる。
【0098】
ステップS16で、制御部60は、光学部材駆動部73を駆動制御して、光スキャナ142を制御することで、測定光LSを偏向し、被検眼Eに対してBスキャンを実行する。
【0099】
ステップS17で、制御部60は、上記ステップS16で得られたスキャン結果に基づいて眼底断層像Gtを生成する。次のステップS18で、制御部60は、コントロールパネル40を制御して、上記ステップS17で生成した眼底断層像Gtを表示画面41の第3表示領域41cに表示させる(図5参照)。
【0100】
ステップS19で、制御部60は、次のBスキャンを実行するか否かを判定する。すなわち、制御部60は、上記ステップS5で設定されたスキャンエリア、又は操作部42に対する操作内容に基づいて、次のBスキャンを実行するか否かを判別する。
【0101】
次のBスキャンを実行すると判別されたとき(S19の判定:YES)、眼科装置1の動作は、上記ステップS15に移行し、ステップS15~S18の処理が繰り返される。これに対して、次のBスキャンを実行しないと判別されたとき(S19の判定:NO)、眼科装置1の動作は、ステップS20に移行する。
【0102】
ステップS20で、制御部60は、上記ステップS5で設定されたスキャンエリアのスキャンデータに基づいて、プロジェクション画像(正面画像)生成する。次のステップS21で、制御部60は、コントロールパネル40を制御して、上記ステップS20で生成したプロジェクション画像を、表示画面41の第2表示領域41bの眼底画像Gfに上書きして表示させる。
【0103】
ステップS22で、制御部60は、上記ステップS7で取得されたXYZ位置、上記ステップS9で取得されたフォーカス位置、上記ステップS11で取得された参照ミラー位置、さらには顎受位置、光学台位置等の目標位置を、被検者IDに紐づけて記憶部61に記憶し、履歴情報を更新する。なお、初回の検査時は、制御部60は、これらの目標位置を、被検者IDに紐づけて記憶部61に記憶し、履歴情報を新規に登録する。以上により、眼科装置1の動作は終了する(エンド)。
【0104】
以上説明したように、実施例1に係る眼科装置1は、被検者の被検眼Eの眼情報を取得する取得光学系50と、被検眼Eに対して取得光学系50を所定の可動範囲内で移動させる駆動部70(XYZ駆動部71)と、取得光学系50の位置が目標位置になるように駆動部70を駆動制御する制御部60と、目標位置の履歴情報が被検者IDと紐づけられて記憶される記憶部61と、を備える。制御部60は、被検者IDを取得し、取得した被検者IDに基づいて記憶部61から履歴情報を取得し、履歴情報に基づいて目標位置を探索するための探索範囲を決定し、探索範囲に基づいて、取得光学系50の位置が目標位置になるように駆動部70を駆動制御する。
【0105】
この構成により、実施例1の眼科装置1は、取得光学系50を移動させて、その位置を適切な目標位置(XYZ位置)にするべく、過去のXYZ位置の履歴情報に基づいて、XYZ位置の探索範囲を適切に決定することができ、探索時間をより短くできる。この結果、実施例1の眼科装置1は、各部の位置調整に要する時間を、より短くして、眼情報の取得を効率的に行うことができる。
【0106】
また、このように実施例1の眼科装置1は、過去の目標位置に部材を移動させるのではなく、履歴情報を基準として決定した探索範囲内で部材を移動させて今回の目的位置を決定する。このため、視力の変化、病気の進行、被検者の成長又は老化等により、当該被検者の適切なXYZ位置、フォーカス位置、参照ミラー位置、顎受位置、光学台位置等が変化したとしても、これらの適切な目標位置を探索できるとともに、探索に要する時間をより短くできる。この結果、実施例1の眼科装置1は、眼情報の取得をより適切、かつより効率的に行うことができる。
【0107】
また、実施例1の眼科装置1において、探索範囲は、可動範囲よりも短い。このため、眼科装置1は、取得光学系50の目標位置の探索に要する時間を、より短くでき、眼情報の取得を、より効率的に行える。
【0108】
また、実施例1の眼科装置1において、駆動部70は、被検眼Eに対して取得光学系50を、水平方向(X軸方向及びZ軸方向)への移動、垂直方向(Y軸方向)への移動実行する光学系駆動部(XYZ駆動部71)を備える。制御部60は、履歴情報に基づいて取得光学系50の目標位置(XYZ位置)を探索するための探索範囲を決定する構成である。このため、眼科装置1は、取得光学系50のXYZ方向への移動に要する時間をより短くでき、この結果、アライメントに要する時間を、より短くできる。このように取得光学系50の探索範囲を決定することは、アライメント時に、第1イメージセンサ135により取得された受光像に基づいて取得光学系50の移動量を特定できないとき(例えば、第1イメージセンサ135で被検眼の像を取得できないため特定できない)に有効である。
【0109】
また、実施例1の眼科装置1において、駆動部70は、取得光学系50が有する光学部材(例えば、撮影合焦レンズ131、フォーカス光学系160、OCT合焦レンズ143、第1コーナーキューブ141a、第2コーナーキューブ214、光スキャナ142等)の何れかを所定の可動範囲内で移動させる光学部材駆動部73を備える。制御部60は、履歴情報に基づいて光学部材の目標位置(フォーカス位置、参照ミラー位置、スキャン位置)を探索するための探索範囲を決定する。このため、眼科装置1は、光学部材の移動に要する時間をより短くでき、この結果、フォーカス、光路長差の調整、スキャン等に要する時間を、より短くできる。
【0110】
また、実施例1の眼科装置1において、取得光学系50は、光源(光源ユニット201)と、光源からの光を測定光と参照光とに分割する分割部(第1ファイバカプラ205)と、所定の可動範囲内を移動することで測定光LSの測定光路及び参照光LRの参照光路の少なくとも何れかの光路長を変更する光路長変更部(第1コーナーキューブ141a、第2コーナーキューブ214)と、測定光路を経由した測定光LSを被検眼Eに照射する測定光学系(OCTユニット200)と、被検眼Eからの戻り光と参照光路を経由した参照光LRとの干渉光LCを検出する検出部(検出器225等)と、を有する干渉光学系(OCTユニット200)を含む。光学部材駆動部73は、光路長変更部を移動させる構成である。制御部60は、履歴情報に基づいて光学部材の目標位置(参照ミラー位置)を探索するための探索範囲を決定する。このため、眼科装置1は、干渉光学系の光学部材の移動に要する時間をより短くでき、この結果、光路長差の調整等に要する時間を、より短くできる。
【0111】
また、実施例1の眼科装置1は、被検者又は眼科装置本体Hに対して移動可能に設けられた移動部材(例えば、顎受部32、光学台T、椅子等)を備える。駆動部70は、移動部材を所定の可動範囲で移動させる移動部材駆動部(例えば、顎受駆動部72、光学台駆動部74)を備える。制御部60は、履歴情報に基づいて移動部材の目標位置(例えば、顎受位置、光学台位置)を探索するための探索範囲を決定する。このため、眼科装置1は、移動部材の移動に要する時間をより短くでき、この結果、顎受部32、光学台T等の高さ調整に要する時間を、より短くできる。
【0112】
また、実施例1の眼科装置1において、探索範囲は、所定の探索間隔で区切られており、制御部60は、探索間隔ずつ駆動部70の移動量を変更しつつ、目標位置を探索する構成とすれば、各部材の目標位置の探索時間、特に撮影合焦レンズ131のフォーカス位置の目標位置の探索時間を、より短くできる。この探索間隔を適切な間隔とすることで、探索時間がより短くでき、かつ目標位置がより精度よく決定される。また、この探索間隔は、取得光学系50による被検者の初回の眼情報の取得時の探索間隔よりも短く設定することで、探索時間をより短くできる。
【0113】
以上、本開示の眼科装置を実施例に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0114】
実施例1の眼科装置1は、取得光学系50(測定ヘッド20)がX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能であるが、さらに、X軸回り、Y軸回り、Z軸回り、若しくは他の軸回りに回転可能とされてもよい。この構成とすることで、眼科装置は、履歴情報に基づいて、左右それぞれの取得光学系50の移動又は回転を行うための探索範囲を決定することができる。この結果、眼科装置は、左右の取得光学系50のアライメント、フォーカス、光路長差の調整等に要する時間を、より短くでき、かつ眼情報の取得までの時間をより短くして、眼情報の取得を、より効率的に行える。
【0115】
また、制御部60は、複数の前眼部カメラ23で撮影した画像を合成した前眼部画像Gaを画像解析して、被検眼Eの目頭と目尻の三次元位置情報を取得し、被検者の顔の傾きを検出する構成とすることもできる。制御部60は、検出した顔の傾きに基づいて、傾きによるずれ量を補正することで、顔が傾いていた場合でも、アライメント等をより正確に行うことができる。このとき、制御部60は、図7に示されるように、合成した前眼部画像Gaを第1表示領域41aに表示させるとともに、前眼部画像Gaの上下の輪郭に対応して水平な2本の線Lを重畳して表示させる。この画像を視認することで、検者は被検眼Eの傾き、つまり被検者の顔(頭部)の傾きを認識でき、顔支持部30によって適切な姿勢で被検者の顔が固定されていないことを認識できる。このため、検者は、被検者に、適切に顔支持部30で顔を固定し直すことを促したり、検者が被検者の頭部を適切な位置に移動させたりすることができる。この結果、眼情報の取得が、より適切かつ、より効率的に実行される。
【0116】
また、制御部60は、被検者の顔が、過度に傾いて補正が適切に行えないときは、表示画面41にエラーメッセージを表示したり、音声等を出力したりする構成とすれば、検者及び被検者に、顔の傾きがあることを的確に知らせることができる。この結果、顔の位置の是正が適切に行われ、眼情報の取得が、より適切かつ、より効率的に実行される。特に、遠隔で眼科装置1が操作される場合に、エラーメッセージや音声の出力は有効である。
【0117】
また、変形例として、制御部60は、当該眼科装置1における目標位置の履歴情報を、他の眼科装置や、サーバに出力する構成とすることもできる。他の眼科装置は、当該眼科装置1から直接に又はサーバを介して取得した履歴情報に基づいて、各部の目標位置の探索範囲を決定してもよい。これにより、例えば、被検者が、他の眼科装置で初めて検査する場合でも、各部の目標位置の探索に要する時間を、より短くでき、眼情報の取得をより効率的に行える。また、目標位置の探索範囲は、履歴情報に加えて、被検眼や被検者の種別(例えば、身長、年齢、性別等)に応じて決定されてもよい。
【符号の説明】
【0118】
1 :眼科装置 32 :顎受部(移動部材)
50 :取得光学系 60 :制御部
61 :記憶部 70 :駆動部
71 :XYZ駆動部(光学系駆動部)
72 :顎受駆動部(移動部材駆動部)
73 :光学部材駆動部 74 :光学台駆動部(移動部材駆動部)
100 :眼底カメラユニット 141 :光路長変更部
141a :第1コーナーキューブ(光路長変更部)
200 :OCTユニット 201 :光源ユニット(光源)
205 :第1ファイバカプラ(分割部)
214 :第2コーナーキューブ(光路長変更部)
E :被検眼 L0 :光
LC :干渉光 LR :参照光
LS :測定光 T :光学台(移動部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8