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特開2024-139963チェインコンベア及びその停止位置制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139963
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】チェインコンベア及びその停止位置制御方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 43/04 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B65G43/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050924
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 泰嗣
【テーマコード(参考)】
3F027
【Fターム(参考)】
3F027AA04
3F027CA01
3F027DA04
3F027DA24
3F027EA01
3F027FA04
(57)【要約】
【課題】チェインに摩耗による伸びが発生した場合にも、ピッチ送りチェインコンベアの停止位置を正確に制御することができる技術を提供する。
【解決手段】搬入装置17と搬出装置19との間で搬送物7をピッチ送りするチェインコンベアであり、駆動側チェインホイール10の回転角度を検出するエンコーダ21と、緊張装置16による従動側チェインホイール14の移動量ΔLを検出するリニアスケール24とを備える。検出された従動側チェインホイールの移動量ΔLから、伸びた状態にあるチェイン1リンク当たりの長さLxを算出し、搬入装置と前記搬出装置との間の移動距離LTを移動させるに必要なリンク数を算出し、それに応じて駆動側チェインホイール10の回転角度θを制御する制御手段30とを備えることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動側チェインホイールと緊張装置を備えた従動側チェインホイールとの間に張設され、搬入装置と搬出装置との間で搬送物を間欠移動するチェインコンベアであって、
前記駆動側チェインホイールの回転角度θを検出するエンコーダと、
前記緊張装置により引かれた前記従動側チェインホイールの移動量ΔLを検出するリニアスケールと、
を備えることを特徴とするチェインコンベア。
【請求項2】
前記従動側チェインホイールの移動量ΔLから、伸びた状態にあるチェイン1リンク当たりの長さを算出し、前記搬入装置と前記搬出装置との間の移動距離LTを移動させるに必要なリンク数を算出し、それに応じて前記駆動側チェインホイールの回転角度θを算出して停止位置を制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のチェインコンベア。
【請求項3】
前記制御手段は、前記移動距離LTとして任意の値を入力できる入力手段を備えることを特徴とする請求項2に記載のチェインコンベア。
【請求項4】
前記制御手段は、チェインコンベアを運転し、前記搬入装置から前記搬出装置までの移動に対応するエンコーダのパルス数から移動距離LTの原物寸法を求めることを特徴とする請求項2に記載のチェインコンベア。
【請求項5】
前記制御手段は、前記移動距離LTを入力した時の前記従動側チェインホイールの位置を原位置とすることを特徴とする請求項2に記載のチェインコンベア。
【請求項6】
前記制御手段は、前記移動量ΔLと前記移動距離LTのうちいずれか一方又は両方の値を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項2に記載のチェインコンベア。
【請求項7】
駆動側チェインホイールと緊張装置を備えた従動側チェインホイールとの間に張設され、搬入装置と搬出装置との間で搬送物を間欠移動するチェインコンベアの停止位置制御方法であって、
前記駆動側チェインホイールと前記従動側チェインホイールとの間の距離をLO、
前記搬入装置と前記搬出装置との間の移動距離をLT、
コンベアチェインの1リンクの長さをLr、
前記緊張装置により引かれた前記従動側チェインホイールの移動量をΔL、
前記駆動側チェインホイールと前記従動側チェインホイールとの間のリンク数をLO/Lr、
コンベアチェインの1リンク当たりの伸び量をΔL/(LO/Lr)、
前記移動距離LT間のリンク数をLT/Lr、
前記移動距離LT間のリンク全体の伸び量を(LT/Lr)×(ΔL/(LO/Lr))、
前記従動側チェインホイールの移動量がΔLであるときの前記搬入装置と前記搬出装置との間のリンク数をLT/(Lr+ΔL/(LO/Lr))、
1リンク当たりの前記駆動側チェインホイールの回転角度θrを、360°/チェインホイールの歯数tとし、
前記従動側チェインホイールの移動量がΔLであるときの前記搬入装置と前記搬出装置との間の前記駆動側チェインホイールの回転角度θを、
θ=LT/(Lr+(ΔL/(LO/Lr)))×θrの式により演算し、前記駆動側チェインホイールの回転角度θを制御する、
ことを特徴とするチェインコンベアの停止位置制御方法。
【請求項8】
駆動側チェインホイールと緊張装置を備えた従動側チェインホイールとの間に張設され、搬入装置と搬出装置との間で搬送物を間欠移動するチェインコンベアの停止位置制御方法であって、
前記緊張装置により引かれた前記従動側チェインホイールの移動量ΔLを検出するリニアスケールを設け、
前記駆動側チェインホイールと前記従動側チェインホイールとの間の距離をLO、
前記搬入装置と前記搬出装置との間の移動距離をLT、
コンベアチェインの1リンクの長さをLr、
前記緊張装置により引かれた前記従動側チェインホイールの移動量をΔL、
前記駆動側チェインホイールと前記従動側チェインホイールとの間のリンク数をLO/Lr、
コンベアチェインの1リンク当たりの伸び量をΔL/(LO/Lr)、
前記移動距離LT間のリンク数をLT/Lr、
前記移動距離LT間のリンク全体の伸び量を(LT/Lr)×(ΔL/(LO/Lr))、
前記従動側チェインホイールの移動量がΔLであるときの前記搬入装置と前記搬出装置との間のリンク数をLT/(Lr+ΔL/(LO/Lr))、
1リンク当たりの前記駆動側チェインホイールの回転角度θrを、360°/チェインホイールの歯数tとし、
前記従動側チェインホイールの移動量がΔLであるときの前記搬入装置と前記搬出装置との間の前記駆動側チェインホイールの回転角度を示すθ=LT/(Lr+(ΔL/(LO/Lr)))×θrの式と、事前に入力しておいた搬送速度vの値を使用して、搬送時間TをT=((θ/360°)×(t×Lr))/vの式により算出し、
この搬送時間Tをタイマーで制御する、
ことを特徴とするチェインコンベアの停止位置制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エプロンコンベア等の搬送物を間欠移動するチェインコンベア及びその停止位置制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば鋳造工場の連続鋳造ラインにおいては、高温の素材を冷却するために注湯済み鋳型をコンベアに搭載して冷却搬送している。このコンベアは間欠運転により搬送物をピッチ送りする必要があるため、タイマー制御による間欠運転でも移動距離が大きく変わらないベルトコンベア(特許文献1)が多用されてきた。しかし鋳型の移し替え時や搬送時に鋳型が割れ、高温の素材がベルト表面に接触すると、幅が広く長いために高価であるベルトを損傷するリスクがあった。
【0003】
そこでベルトコンベアの代わりに、鉄製のエプロンの上に鋳型を載せて搬送するエプロンコンベアも検討されている。エプロンコンベアは高温の素材が接触してもエプロンを損傷することがなく、上面に凹凸のないエプロンを用いることにより、鋳型の移し替え時や搬送時における鋳型の割れを削減できる利点もある。しかし、エプロンコンベア等のピッチ送りチェインコンベアは、長期間使用するとコンベアチェインを構成するリンク間に摩耗による不可避的な伸びが発生し、チェインホイールの回転数とチェインの移動距離が合致しなくなるという問題があった。そのためチェインコンベアの停止位置を精度よく制御することが必要な注湯済み鋳型の冷却搬送などには、使用困難であった。
【0004】
また、ベルトコンベアの場合、ベルトが伸びてもプーリの外径が一定であるため、プーリの回転数とベルトの移動距離の関係は変わらない。従ってベルトコンベアの場合には、上記した通りタイマー制御による間欠運転でも移動距離が大きく変わらない。これに対してエプロンコンベア等のピッチ送りチェインコンベアでは、リンク間に伸びが発生するとチェインホイールの回転数とチェインの移動距離が合致しなくなるため、エプロンコンベアの間欠運転には、タイマー制御も適用できないという問題があった。
【0005】
チェインコンベアに不可避的に発生する伸びの問題については、特許文献2から特許文献5にも記載がある。
特許文献2は、チェインの軌道を変更する2個のスプロケット間にロータリーエンコーダを備えたスプロケットを設け、その回転速度からチェインの送り量(移動量)を算出し、伸びのない正常なチェインの送り量と比較して、チェインの伸び量を検出することが開示されている。しかしこの発明は、チェインが全体的に延びた場合にも、一部が伸びた場合にもチェインの微小な伸びを検出することを目的としており、チェイン全長についての大きな伸び量の算出には適していない。また伸び量を検出する技術であって、ピッチ送りチェインコンベアの停止位置を制御する技術ではない。
【0006】
特許文献3には、従動スプロケットとチェインが噛み合っている部分に噛み合い高さ測定装置を設け、チェインが伸びると噛み合い位置がスプロケットの歯底から歯先に移動することを利用してチェインの伸び量を検出することが開示されている。しかしこの発明も特許文献2と同様、チェイン全長についての大きな伸び量の算出には適していない。また伸び量を検出する技術であって、ピッチ送りチェインコンベアの停止位置を制御する技術ではない。
【0007】
特許文献4には、エスカレータのような無限軌道において、チェインの単位長さ当たりに標識を設け、この標識を検出装置で検出してチェインの単位長さ当たりの伸び量を検出することが開示されている。また特許文献5には、エスカレータのハンドレールチェインの伸び量を検出する装置が開示されている。しかしこれらの発明も上記したものと同様、チェイン全長についての大きな伸び量の算出には適していない。また、伸び量を検出する技術であって、ピッチ送りチェインコンベアの停止位置を制御する技術を開示するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6098511号公報
【特許文献2】特開2004-177196号公報
【特許文献3】国際公開WO2018/096615号公報
【特許文献4】特開平7-137976号公報
【特許文献5】特開平11-199168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、チェインに摩耗による伸びが発生した場合にも、間欠移動される搬送物の停止位置を正確に制御することができるチェインコンベア及びその停止位置制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、駆動側チェインホイールと緊張装置を備えた従動側チェインホイールとの間に張設され、搬入装置と搬出装置との間で搬送物を間欠移動するチェインコンベアであって、前記駆動側チェインホイールの回転角度θを検出するエンコーダと、前記緊張装置により引かれた前記従動側チェインホイールの移動量ΔLを検出するリニアスケールと、を備えることを特徴とするものである。また本発明のチェインコンベアは、前記従動側チェインホイールの移動量ΔLから、伸びた状態にあるチェイン1リンク当たりの長さを算出し、前記搬入装置と前記搬出装置との間の移動距離LTを移動させるに必要なリンク数を算出し、それに応じて前記駆動側チェインホイールの回転角度θを算出して停止位置を制御する制御手段を備えることが好ましい。
【0011】
前記制御手段は、前記移動距離LTとして任意の値を入力できる入力手段を備えることができる。
【0012】
また前記制御手段は、チェインコンベアを運転し、前記搬入装置から前記搬出装置までの移動に対応するエンコーダのパルス数から移動距離LTの原物寸法を求めることができる。
【0013】
また前記制御手段は、前記移動距離LTを入力した時の前記従動側チェインホイールの位置を原位置とすることができる。
【0014】
また前記制御手段は、前記移動量ΔLと前記移動距離LTのうちいずれか一方又は両方の値を表示する表示手段を備えることができ、これによって従動軸の移動量ΔLと移動距離LTの値を随時確認することが可能となる。
【0015】
さらに本発明のピッチ送りチェインコンベアの停止位置制御方法は、駆動側チェインホイールと緊張装置を備えた従動側チェインホイールとの間に張設され、搬入装置と搬出装置との間で搬送物を間欠移動するチェインコンベアの停止位置制御方法であって、前記駆動側チェインホイールと前記従動側チェインホイールとの間の距離をLO、前記搬入装置と前記搬出装置との間の移動距離をLT、コンベアチェインの1リンクの長さをLr、前記緊張装置により引かれた前記従動側チェインホイールの移動量をΔL、前記駆動側チェインホイールと前記従動側チェインホイールとの間のリンク数をLO/Lr、コンベアチェインの1リンク当たりの伸び量をΔL/(LO/Lr)、前記移動距離LT間のリンク数をLT/Lr、前記移動距離LT間のリンク全体の伸び量を(LT/Lr)×(ΔL/(LO/Lr))、前記従動側チェインホイールの移動量がΔLであるときの前記搬入装置と前記搬出装置との間のリンク数をLT/(Lr+ΔL/(LO/Lr))、1リンク当たりの前記駆動側チェインホイールの回転角度θrを、360°/チェインホイールの歯数tとし、前記従動側チェインホイールの移動量がΔLであるときの前記搬入装置と前記搬出装置との間の前記駆動側チェインホイールの回転角度θを、θ=LT/(Lr+(ΔL/(LO/Lr)))×θrの式により演算し、前記駆動側チェインホイールの回転角度θを制御する、ことを特徴とするものである。
【0016】
さらにタイマー制御による本発明のピッチ送りチェインコンベアの停止位置制御方法は、駆動側チェインホイールと緊張装置を備えた従動側チェインホイールとの間に張設され、搬入装置と搬出装置との間で搬送物を間欠移動するチェインコンベアの停止位置制御方法であって、前記緊張装置により引かれた前記従動側チェインホイールの移動量ΔLを検出するリニアスケールを設け、前記駆動側チェインホイールと前記従動側チェインホイールとの間の距離をLO、前記搬入装置と前記搬出装置との間の移動距離をLT、コンベアチェインの1リンクの長さをLr、前記緊張装置により引かれた前記従動側チェインホイールの移動量をΔL、前記駆動側チェインホイールと前記従動側チェインホイールとの間のリンク数をLO/Lr、コンベアチェインの1リンク当たりの伸び量をΔL/(LO/Lr)、前記移動距離LT間のリンク数をLT/Lr、前記移動距離LT間のリンク全体の伸び量を(LT/Lr)×(ΔL/(LO/Lr))、前記従動側チェインホイールの移動量がΔLであるときの前記搬入装置と前記搬出装置との間のリンク数をLT/(Lr+ΔL/(LO/Lr))、1リンク当たりの前記駆動側チェインホイールの回転角度θrを、360°/チェインホイールの歯数tとし、前記従動側チェインホイールの移動量がΔLであるときの前記搬入装置と前記搬出装置との間の前記駆動側チェインホイールの回転角度を示すθ=LT/(Lr+(ΔL/(LO/Lr)))×θrの式と、事前に入力しておいた搬送速度vの値を使用して、搬送時間TをT=((θ/360°)×(t×Lr))/vの式により算出し、この搬送時間Tをタイマーで制御する、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、チェインに伸びが発生した場合にも、それに応じて駆動側チェインホイールの回転角度θを制御することができ、ピッチ送りチェインコンベアの停止位置を正確に制御することができる。このためチェインに伸びが発生しても、搬送物を常に正確な位置で取り出すことができ、注湯済み鋳型の冷却搬送などに使用することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ピッチ送りエプロンコンベアの正面図である。
図2】ピッチ送りエプロンコンベアの平面図である。
図3】駆動部を示す図1のA-A矢視図である。
図4】従動部を示す図1のB-B矢視図である。
図5】チェイン伸び量とリンク数の関係を示す従動部の側面図である。
図6a】駆動軸へのエンコーダ取付部の詳細を示す正面図である。
図6b】駆動軸へのエンコーダ取付部の詳細を示す平面図である。
図6c】駆動軸へのエンコーダ取付部の詳細を示す側面図である。
図7a】従動軸へのリニアスケール取付部の詳細を示す正面図である。
図7b】従動軸へのリニアスケール取付部の詳細を示す他の正面図である。
図7c】従動軸へのリニアスケール取付部の詳細を示す側面図である。
図7d図7aのC-C矢視図である。
図7e図7aのD-D矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この実施形態ではチェインコンベアは、注湯済み鋳型を冷却搬送するエプロンコンベアである。先ずその全体構造を説明する。
図1図2に示すように、エプロンコンベア1は駆動部2と、従動部3と、コンベアチェイン4に取付けたエプロン5で構成される搬送部6で構成される。一般的に、搬送物7の搬出側8に駆動部2を配置し、搬入側9に従動部3を配置する。
【0020】
駆動部2は、駆動側チェインホイール10を取り付けた駆動軸11を、ローラチェイン12を介して減速モータ13で回転させる構造である。従動部3は、従動側チェインホイール14を取り付けた従動軸15を緊張装置16で引張り、駆動側チェインホイール10と従動側チェインホイール14との間に張設されたコンベアチェイン4が伸びた場合にも、緩みを取る構造である。図5に示すように本実施形態の緊張装置16は、従動軸15の軸受15aを外枠27に取付けた長尺ボルト27aにより引張る構造である。このためコンベアチェイン4に緩みが生じないように手動で管理することとなるが、自動的に一定の張力が維持できるように、シリンダやウエイトを用いた構造としてもよい。
【0021】
図1図2図4に示すように、搬入側9には搬入装置17を設け、エプロンコンベア1の搬送方向に対して直角方向から押出し板18にて、搬送物7をエプロン5上に搬入する。また図1図2図3に示すように、搬出側8には搬出装置19を設け、エプロンコンベア1の搬送方向に対して直角方向から押出し板20にて、搬送物7を搬出する。本実施形態では搬送物7は注湯済み鋳型であるが、これに限定されるものではない。
【0022】
駆動側では図6a~図6cに示すように、ピローブロック22で保持された駆動軸11にカップリング23を介してエンコーダ21を接続し、エンコーダ21から出力されるパルスをカウントすることにより、駆動軸11の回転角度を正確に算出する。本実施形態では駆動軸11に取付けた駆動側チェインホイール10は8枚歯(歯数t=8)であるため、360°/t=360°/8=45°が1リンク当たりの駆動側チェインホイール10の回転角度に相当する。
【0023】
従動側では図7a~図7eに示すように、従動軸15を保持した軸受15aにブラケット25を介してポインタ26を取付ける。また固定側の外枠27にリニアスケール24を取り付ける。これによって緊張装置16により引張られた従動軸15の移動量ΔLを検出することができる。従動軸15には従動側チェインホイール14が取り付けられているので、従動軸15の移動量ΔL=従動側チェインホイール14の移動量である。
【0024】
なお、各リンクのブッシュとピンの摩耗に起因するコンベアチェイン4の伸び量の限界は基準長さの2%とされているため、本実施形態のエプロンコンベア1の場合にも従動軸15の移動量の最大値を、基準長さの2%としておくものとする。本実施形態では、駆動側チェインホイール10と従動側チェインホイール14との間の距離LO=13600mmであるため、その2%に相当する272mmを緊張装置16の横移動可能な最大長さとしている。コンベアチェイン4の伸びがない初期状態におけるポインタ26の原位置を図7aに示す左側の位置とし、ポインタ26が図7bに示す右側の位置に来たときには、コンベアチェイン4の伸び量の限界に達したとして、コンベアチェイン4を一式交換する。これは従動側チェインホイール14の移動量に基づいて停止位置を制御する本発明において、必要な条件となる。
【0025】
本発明では、駆動側チェインホイール10の回転角度θを検出するエンコーダ21と、緊張装置16により緊張された状態にある従動側チェインホイール14の移動量ΔLを検出するリニアスケール24とを用い、エプロンコンベア1のコンベアチェイン4が伸びた場合にも、制御手段30によってその停止位置を正確に制御することができる。以下にその詳細を説明する。
【0026】
最初に、エプロンコンベア1の駆動側チェインホイール10と従動側チェインホイール14との間の距離LOと、搬入装置17と搬出装置19との間の移動距離LTを、図1に示す制御手段30に入力する。チェインホイール間の距離LOは、実測値を入力手段31から手動で入力する。また搬入装置17と搬出装置19との間の移動距離LTは、高度な位置決め精度が不要な場合には、入力手段31から設計寸法等の任意の値を手動で入力する。しかしコンベアチェイン4の初期伸びや、搬入装置17と搬出装置19の据付公差の影響を受けて移動距離LTに誤差が生ずる可能性があるため、高度な位置決め精度が必要な場合には、エプロンコンベア1を実際に運転し、搬入装置17から搬出装置19までの移動に対応するエンコーダ21のパルス数から移動距離LTの原物寸法を求め、入力手段31から制御手段30に入力することができる。
【0027】
また、移動距離LTを入力した時の従動側チェインホイール14の位置を原位置として、入力手段から制御手段30に入力する。これらの移動距離LTとしての任意の値、移動距離LTの原物寸法、従動側チェインホイール14の原位置については、手動で入力する値として表示する表示手段32を制御手段30に設けておくことが好ましい。なお、エプロンコンベア1を実際に運転して得た、搬入装置17から搬出装置19までの移動に対応するエンコーダ21のパルス数の入力は手動に限られるものではなく、自動入力としてもよい。表示手段32は、従動軸15の移動量ΔLと移動距離LTのうち、いずれか一方又は両方の値を表示するものとすることができる。このような表示手段32を設ければ、駆動側チェインホイール10の回転角度θを制御する際に必要となる、従動軸15の移動量ΔLと移動距離LTの値を随時確認することができる。
【0028】
図5に示すように、本実施形態では駆動側チェインホイール10と従動側チェインホイール14との間の距離LO=13600mmであり、搬入装置17と搬出装置19との間の移動距離LT=11400mmである。また、コンベアチェイン4のリンク長さLr=200mmである。よって駆動側チェインホイール10と従動側チェインホイール14との間のリンク数は、LO/Lr=13600/200=68リンクである。ここで従動軸15の移動量ΔL=従動側チェインホイール14の原位置からの移動量ΔLが250mmであるとすると、1リンク当たりの伸び量はΔLをリンク数(LO/Lr)割って、ΔL/(LO/Lr)=250/68≒3.7mmとなる。
【0029】
搬入装置17と搬出装置19との間のリンク数は、伸びがない状態ではLT/Lr=11400/200=57リンクである。1リンク当たりΔL/(LO/Lr)の伸びが発生した状態では、搬入装置17と搬出装置19との間の伸び量は、このリンク数に1リンク当たりの伸びを掛けて、(LT/Lr)×(ΔL/(LO/Lr))=57×3.7=211mmとなる。すなわち、伸びを無視した制御の場合には、搬入装置17と搬出装置19との間で停止位置が211mmずれることとなる。
【0030】
そこで本発明では、従動軸15の移動量がΔLとなった状態、すなわち1リンク当たりの伸び量がΔL/(LO/Lr)であるときの、搬入装置17と搬出装置19との間のリンク数を演算する。伸びた状態にある1リンクの長さは、Lx=(Lr+ΔL/(LO/Lr))=200+3.7=203,7mmであるから、搬入装置17と搬出装置19との間の移動距離LTをこの1リンクの長さで割って、LT/(Lr+ΔL/(LO/Lr))=11400/203,7≒56リンクとなる。
【0031】
前記した通り、1リンク当たりの駆動側チェインホイール10の回転角度をθrとすると、θ=LT/(Lr+ΔL/(LO/Lr))×θrだけ駆動側チェインホイール10を回転させる制御を行えば、停止位置の誤差が略ゼロになる。具体的には、本実施形態ではθr=45°であるから、θ=56×45=2520°=7回転となり、制御手段30により駆動側チェインホイール10を7回転させればよい。この結果、コンベアチェイン4に伸びが生じても、搬入装置17から搬入された搬送物7を搬出装置19の位置で正確に停止させることができることとなる。上記の説明ではΔLを250mmとしたが、ΔLの値が変化してもそれに応じて駆動側チェインホイール10の回転角度θを制御することにより、常に正確に停止位置を制御することができる。
【0032】
以上に説明したとおり、本発明によれば、リニアスケールにより検出された従動軸15(従動側チェインホイール14)の移動量ΔLから、伸びた状態にあるチェイン1リンク当たりの長さを算出し、搬入装置17と搬出装置19との間の移動距離LTを移動させるに必要なリンク数を算出し、それに応じて駆動側チェインホイール10の回転角度θを制御することにより、チェインリンクの伸びによる停止位置のずれを解消し、ピッチ送りチェインコンベアの停止位置を正確に制御することができる。
【0033】
また、従動側チェインホイールの移動量がΔLであるときの、搬入装置と搬出装置との間の駆動側チェインホイールの回転角度をθとしたとき、搬送速度v(mm/sec)=回転数n(rps)×歯数t×1リンクの長さLr(mm)の関係から、回転数n(rps)=搬送速度v(mm/sec)/(歯数t×1リンクの長さLr(mm))となる。そして搬送に必要な回転数N=θ/360°であり、搬送に必要な回転数N=単位時間当たりの回転数n(rps)×必要搬送時間T(sec)であるため、必要搬送時間T(sec)=N/n=(θ/360°)/(搬送速度v(mm/sec)/歯数t×1リンクの長さLr(mm))、すなわち、必要搬送時間T(sec)=((θ/360°)×(歯数t×1リンクの長さLr(mm)))/搬送速度v(mm/sec)が算出できる。
【0034】
そのため、駆動側チェインホイールと緊張装置を備えた従動側チェインホイールとの間に張設され、搬入装置と搬出装置との間で搬送物を間欠移動するチェインコンベアであって、緊張装置により引かれた従動側チェインホイールの移動量ΔLを検出するリニアスケールのみを設け、駆動側チェインホイールの回転角度θを検出するエンコーダを省略したチェインコンベアにて、従動側チェインホイールの移動量がΔLであるときの搬入装置と搬出装置との間の駆動側チェインホイールの回転角度を示すθ=LT/(Lr+(ΔL/(LO/Lr)))×θrの式と、事前に入力しておいた搬送速度vの値を使用して、搬送時間TをT=(必要回転数(θ/360°)×(歯数t×1リンクの長さLr))/搬送速度vの式により算出し、この搬送時間Tをタイマーで制御することにより、タイマー制御によりチェインリンクの伸びによる停止位置のずれを解消し、ピッチ送りチェインコンベアの停止位置を正確に制御することもできる。
【0035】
上記したタイマー制御方式によれば、エンコーダを設けず、リニアスケールのみを設けた装置構成、制御方法を用いることにより、エンコーダとエンコーダ配線のコストを抑えることができるうえ、エンコーダ故障による不具合の発生も防止することができる。このようにシンプルな装置構成で、チェインコンベアの停止位置を正確に制御できる利点がある。
【0036】
以上に説明したとおり、本発明によれば、搬送物を精度良くピッチ送りすることが可能となり、これまではチェインホイールの回転数とチェインの移動距離が合致しないため注湯済み鋳型の冷却搬送には使用できなかったエプロンコンベアを、冷却搬送に使用することが可能となった。これにより高温の素材が接触するとベルトを損傷するリスクのあったベルトコンベアに代えて、高温の素材が接触しても損傷のおそれのないエプロンコンベアを使用することができ、その実用的価値は極めて大きいものである。
【符号の説明】
【0037】
1 エプロンコンベア
2 駆動部
3 従動部
4 コンベアチェイン
5 エプロン
6 搬送部
7 搬送物
8 搬出側
9 搬入側
10 駆動側チェインホイール
11 駆動軸
12 ローラチェイン
13 減速モータ
14 従動側チェインホイール
15 従動軸
15a 軸受
16 緊張装置
17 搬入装置
18 押出し板
19 搬出装置
20 押出し板
21 エンコーダ
22 ピローブロック
23 カップリング
24 リニアスケール
25 ブラケット
26 ポインタ
27 外枠
27a 長尺ボルト
30 制御手段
31 入力手段
32 表示手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図7c
図7d
図7e