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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139967
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】位置検出装置及び位置検出方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241003BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G08G1/09 F
G08G1/09 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050932
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】坂谷 芳紀
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB05
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL01
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】複数の周囲情報検出器が設けられることを利用して、各周囲情報検出器による周囲の物体部分の検出位置の信頼性を判定できる位置検出装置及び位置検出方法を提供する。
【解決手段】相対位置が相互に対応する第1の相対位置及び第2の相対位置のセットのそれぞれについて、第1の相対位置と第2の相対位置との間の差分量を演算し、複数の差分量に基づいて、同一の物体について演算された複数の差分量のまとまりを判定し、同一の物体の複数の差分量に基づいて、当該同一の物体の複数の差分量に対応する第1の相対位置及び第2の相対位置の信頼性が高いか否かを判定する位置検出装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周囲情報検出器のそれぞれについて、前記周囲情報検出器の検出情報に基づいて、自車両の周囲に存在する複数の物体部分の自車両に対する相対位置を検出する周囲情報取得部と、
前記複数の周囲情報検出器から判定を行う第1の周囲情報検出器及び第2の周囲情報検出器を設定し、前記第1の周囲情報検出器の検出情報に基づいて検出された複数の物体部分の相対位置を複数の第1の相対位置として設定し、前記第2の周囲情報検出器の検出情報に基づいて検出された複数の物体部分の相対位置を複数の第2の相対位置として設定し、相対位置が相互に対応する前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置のセットのそれぞれについて、前記第1の相対位置と前記第2の相対位置との間の差分量を演算する差分量演算部と、
複数の前記差分量に基づいて、同一の物体について演算された複数の前記差分量のまとまりを判定し、当該同一の物体について演算されたと判定された1つのまとまりの複数の前記差分量である同一の物体の複数の差分量に基づいて、当該同一の物体の複数の差分量に対応する前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置の信頼性が高いか否かを判定する信頼度判定部と、を備えた位置検出装置。
【請求項2】
前記差分量演算部は、相対位置が相互に対応する前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置のセットのそれぞれについて、自車両又は自車両の走行中道路の縦方向の相対位置が相互に一致するように前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置の一方を補正し、自車両又は自車両の走行中道路の横方向における、補正後の前記第1の相対位置と前記第2の相対位置との間の差分量を、前記差分量として演算する請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記差分量演算部は、前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置の内、補正する方を補正対象の相対位置とし、補正しない方を非補正対象の相対位置とし、
前記非補正対象の相対位置に近接する2つの前記補正対象の相対位置を通る近似線を演算し、前記縦方向の相対位置が、前記縦方向における前記非補正対象の相対位置と一致する前記近似線上の相対位置を、補正後の前記補正対象の相対位置として演算する請求項2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記差分量演算部は、前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置の内、相対位置の検出数が多い方を、前記補正対象の相対位置として設定し、相対位置の検出数が少ない方を、前記非補正対象の相対位置として設定する請求項3に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記信頼度判定部は、複数の前記差分量から、相対位置が相互に近接する複数の前記差分量の間の偏差が、偏差判定値以下である場合は、前記近接する複数の差分量は、同一の物体について演算された前記差分量であると判定する請求項1から4のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記信頼度判定部は、複数の前記差分量から、相対位置が相互に近接する2つの前記差分量のセットを、相対位置を重複させながら連続的に設定し、前記2つの差分量のセットのそれぞれについて、前記2つの差分量の間の偏差が、偏差判定値以下である場合は、前記2つの前記差分量は、同一の物体について演算された前記差分量であると判定し、相対位置が連続的に重複した複数の前記2つの差分量のセットの間で、同一の物体について演算されたと判定された複数の前記差分量のまとまりを判定する請求項1から4のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記信頼度判定部は、前記同一の物体の複数の差分量に基づいて、許容範囲を設定し、当該同一の物体の複数の差分量と前記許容範囲との比較結果に基づいて、当該同一の物体の複数の差分量に対応する前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置の信頼性が高いか否かを判定する請求項1から4のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項8】
前記信頼度判定部は、前記同一の物体の複数の差分量のばらつき度合いを演算し、当該同一の物体の複数の差分量と、前記ばらつき度合いとに基づいて、前記許容範囲を設定する請求項7に記載の位置検出装置。
【請求項9】
前記信頼度判定部は、前記第1の周囲情報検出器による前記第1の相対位置の検出特性及び前記第2の周囲情報検出器による前記第2の相対位置の検出特性に基づいて上限制限値及び下限制限値を設定し、前記許容範囲を前記上限制限値及び前記下限制限値で上下限制限する請求項7に記載の位置検出装置。
【請求項10】
前記信頼度判定部は、前記同一の物体の複数の差分量が、同一の物体の前記差分量として正常な値であるか否かを判定し、正常な値でないと判定した場合は、前記許容範囲を、予め設定された規定範囲に設定する請求項7に記載の位置検出装置。
【請求項11】
前記信頼度判定部は、今回の演算周期で演算された前記同一の物体の複数の差分量に基づいて設定した前記許容範囲である今回の差分量による許容範囲を、当該同一の物体について過去の演算周期で演算した前記許容範囲により補正して、最終的な前記許容範囲を演算する請求項7に記載の位置検出装置。
【請求項12】
前記信頼度判定部は、同一の物体について過去の演算周期で演算した前記許容範囲からの前記最終的な同一の物体の許容範囲の変化を抑制するように、前記今回の差分量による許容範囲を補正して、最終的な前記許容範囲を演算する請求項11に記載の位置検出装置。
【請求項13】
前記信頼度判定部は、前記同一の物体の複数の差分量の総数に対する、許容範囲の範囲内になった前記差分量の数の比率に基づいて、当該同一の物体の複数の差分量に対応する前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置の信頼性が高いか否かを判定する請求項1から4のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項14】
前記複数の周囲情報検出器は、自車両の現在位置を検出する位置検出装置、自車両の周辺を監視する単数又は複数種類の周辺監視装置、道路を監視する路側機、及び自車両の周囲に存在する周囲車両のいずれか2つ以上を含む請求項1から4のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項15】
信頼性が高いと判定された前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置を用いて、車両の走行を制御する車両制御部を更に備えた請求項1から4のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項16】
3つ以上の前記周囲情報検出器が存在し、
前記差分量演算部は、3つ以上の前記周囲情報検出器から、前記第1の周囲情報検出器及び前記第2の周囲情報検出器の組み合せを複数設定し、各前記組み合せについて、複数の前記差分量を演算し、
前記信頼度判定部は、各前記組み合せについて、複数の前記差分量に基づいて、前記同一の物体の複数の差分量に対応する前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置の信頼性が高いか否かを判定し、
前記車両制御部は、いずれかの前記組み合せにおいて、信頼性が高いと判定された前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置を用いて、車両の走行を制御する請求項15に記載の位置検出装置。
【請求項17】
以下の各ステップを演算処理装置に実行させる位置検出方法であって、
複数の周囲情報検出器のそれぞれについて、前記周囲情報検出器の検出情報に基づいて、自車両の周囲に存在する複数の物体部分の自車両に対する相対位置を検出する周囲情報取得ステップと、
前記複数の周囲情報検出器から判定を行う第1の周囲情報検出器及び第2の周囲情報検出器を設定し、前記第1の周囲情報検出器の検出情報に基づいて検出された複数の物体部分の相対位置を複数の第1の相対位置として設定し、前記第2の周囲情報検出器の検出情報に基づいて検出された複数の物体部分の相対位置を複数の第2の相対位置として設定し、相対位置が相互に対応する前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置のセットのそれぞれについて、前記第1の相対位置と前記第2の相対位置との間の差分量を演算する差分量演算ステップと、
複数の前記差分量に基づいて、同一の物体について演算された複数の前記差分量のまとまりを判定し、当該同一の物体について演算されたと判定された1つのまとまりの複数の前記差分量である同一の物体の複数の差分量に基づいて、当該同一の物体の複数の差分量に対応する前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置の信頼性が高いか否かを判定する信頼度判定ステップと、を備えた位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この本願は、位置検出装置及び位置検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の技術では、自車両の位置を測定し、自車両の測定位置、及び自車両の測定位置に対応する地図情報に基づいて、地図上の第1の自車両位置を検出し、第1の自車両位置と地図情報に基づいて、自車両の走行シーンを特定し、カメラ又はレーダセンサの検出結果等に基づいて、走行シーンに予め関連付けられた位置検出処理により、第2の自車両位置を検出し、第1の自車両位置と第2の自車両位置との差に基づいて、いずれの自車両位置を自動運転に用いるかを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-138282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自車両の制御を行う上で、自車両位置だけでなく、自車両の周囲に存在する物体の位置を精度よく検出する必要がある。しかしながら、特許文献1の技術では、複数の自車両位置の判定を行っているだけであり、周囲の物体の位置を精度よく検出する技術は開示されていない。また、特許文献1の技術では、走行シーンの特定が必要であり、特定する走行シーンが限られている。
【0005】
また、特許文献1の技術において、各方法により検出された自車両位置は、1つだけであり、相互比較は比較的に容易である。一方、周囲情報検出器により、自車両の周囲に存在する不特定多数の物体部分の位置が検出される。そのため、複数の周囲情報検出器のそれぞれにより検出された自車両の周囲物体の複数の位置の信頼性を判定することは容易でない。
【0006】
そこで、本願は、複数の周囲情報検出器のそれぞれの検出情報に基づいて、自車両の周囲に存在する複数の物体部分の位置が検出された場合に、複数の周囲情報検出器が設けられることを利用して、各周囲情報検出器による周囲の物体部分の検出位置の信頼性を判定できる位置検出装置及び位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に係る位置検出装置は、
複数の周囲情報検出器のそれぞれについて、前記周囲情報検出器の検出情報に基づいて、自車両の周囲に存在する複数の物体部分の自車両に対する相対位置を検出する周囲情報取得部と、
前記複数の周囲情報検出器から判定を行う第1の周囲情報検出器及び第2の周囲情報検出器を設定し、前記第1の周囲情報検出器の検出情報に基づいて検出された複数の物体部分の相対位置を複数の第1の相対位置として設定し、前記第2の周囲情報検出器の検出情報に基づいて検出された複数の物体部分の相対位置を複数の第2の相対位置として設定し、相対位置が相互に対応する前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置のセットのそれぞれについて、前記第1の相対位置と前記第2の相対位置との間の差分量を演算する差分量演算部と、
複数の前記差分量に基づいて、同一の物体について演算された複数の前記差分量のまとまりを判定し、当該同一の物体について演算されたと判定された1つのまとまりの複数の前記差分量である同一の物体の複数の差分量に基づいて、当該同一の物体の複数の差分量に対応する前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置の信頼性が高いか否かを判定する信頼度判定部と、を備えたものである。
【0008】
本願に係る位置検出方法は、以下の各ステップを演算処理装置に実行させる位置検出方法であって、
複数の周囲情報検出器のそれぞれについて、前記周囲情報検出器の検出情報に基づいて、自車両の周囲に存在する複数の物体部分の自車両に対する相対位置を検出する周囲情報取得ステップと、
前記複数の周囲情報検出器から判定を行う第1の周囲情報検出器及び第2の周囲情報検出器を設定し、前記第1の周囲情報検出器の検出情報に基づいて検出された複数の物体部分の相対位置を複数の第1の相対位置として設定し、前記第2の周囲情報検出器の検出情報に基づいて検出された複数の物体部分の相対位置を複数の第2の相対位置として設定し、相対位置が相互に対応する前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置のセットのそれぞれについて、前記第1の相対位置と前記第2の相対位置との間の差分量を演算する差分量演算ステップと、
複数の前記差分量に基づいて、同一の物体について演算された複数の前記差分量のまとまりを判定し、当該同一の物体について演算されたと判定された1つのまとまりの複数の前記差分量である同一の物体の複数の差分量に基づいて、当該同一の物体の複数の差分量に対応する前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置の信頼性が高いか否かを判定する信頼度判定ステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本願に係る位置検出装置及び位置検出方法によれば、複数の周囲情報検出器から判定を行う第1の周囲情報検出器及び第2の周囲情報検出器が設定され、相対位置が相互に対応する第1の相対位置及び第2の相対位置のセットのそれぞれについて、第1の相対位置と第2の相対位置との間の差分量が演算される。相対位置が相互に対応する第1の相対位置と第2の相対位置との間の差分量であっても、同一でない物体について演算された差分量は、大きくなったり、変動量が大きくなったりするため、同一でない物体の差分量を用いて第1及び第2の相対位置の信頼性を判定すると、信頼性が低いと誤って判定される可能性がある。複数の差分量に基づいて、同一の物体について演算された複数の差分量のまとまりが判定され、同一の物体について演算されたと判定された1つのまとまりの複数の差分量に基づいて、同一の物体の複数の差分量に対応する第1の相対位置及び第2の相対位置の信頼性が判定されるので、信頼性を精度よく判定することができる。よって、複数の周囲情報検出器が設けられることを利用して、各周囲情報検出器による周囲の物体部分の検出位置の信頼性を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る位置検出装置及び車両制御装置の概略ブロック図である。
図2】実施の形態1に係る位置検出装置及び車両制御装置の概略ハードウェア構成図である。
図3】実施の形態1に係る位置検出装置及び車両制御装置の概略ハードウェア構成図である。
図4】実施の形態1に係る自車両の座標系を説明する図である。
図5】実施の形態1に係る第1の相対位置及び第2の相対位置の例を説明する図である。
図6】実施の形態1に係る相対位置の補正及び差分量の算出を説明するための図である。
図7】実施の形態1に係る退避スペースがある場合の相対位置の補正及び差分量の算出を説明するための図である。
図8】実施の形態1に係る同一の物体の複数の差分量のまとまりの判定を説明するための図である。
図9】実施の形態1に係る同一の物体の複数の差分量のまとまりの判定を説明するための図である。
図10】実施の形態1に係る信頼性の判定を説明するための図である。
図11】実施の形態1に係る信頼性の判定を説明するための図である。
図12】実施の形態1に係る位置検出装置及び車両制御装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.実施の形態1
実施の形態1に係る位置検出装置1について図面を参照して説明する。本実施の形態では、位置検出装置1は、車両制御装置30に組み込まれている。
【0012】
図1に示すように、自車両は、2つ以上の周囲情報検出器31、車両状態検出装置32、地図情報データベース33、無線通信装置34、車両制御装置30、駆動制御装置35、動力機8、電動操舵装置7、電動ブレーキ装置9、及びヒューマンインターフェイス装置36等を備えている。
【0013】
周囲情報検出器31として、自車両の周辺を監視するレーダ、カメラなどの周辺監視装置31aが備えられる。レーダには、ミリ波レーダ、レーザレーダ(LiDAR(Light Detection and Ranging))、超音波レーダ等が用いられる。本実施の形態では、複数種類の周辺監視装置31aが備えられるものとする。
【0014】
周囲情報検出器31として、自車両の現在位置(緯度、経度、高度)を検出する位置検出装置31bが備えられている。位置検出装置31bとして、GNSS(Global Navigation Satellite System)等の人工衛星から出力される信号を受信するGNSSアンテナ等が用いられる。なお、自車両の現在位置の検出には、自車両の走行車線番号を用いた方法、マップマッチング法、デッドレコニング法、自車両の周辺の検出情報を用いた方法等の各種の方法が併用されてもよい。
【0015】
無線通信装置34は、4G、5G等のセルラー方式の無線通信の規格を用いて、基地局等と無線通信を行う。無線通信装置34は、無線通信により、自車両の周囲に存在する周囲車両31c、及び道路を監視する路側機31dなどと通信を行って、各種の情報を取得する。
【0016】
地図情報データベース33には、道路及び道路周辺の地物の位置及び形状が記憶されている。例えば、各車線及び道路の位置及び形状(例えば、区画線、道路端)、及び路側に設けられた路側物の位置及び形状(例えば、路肩、路側壁、建物の壁、塀、ガードレール、中央分離帯の構造物、車線分離標(ラバーポール等)、視線誘導標(デリニエーター)、衝突衝撃緩衝具(クッションドラム等)、電柱、信号機、道路標識、街路樹、退避ペース)等が記憶されている。また、地図情報データベース33には、道路情報(車線数、道路種別、制限速度等)等の各種の情報も記憶されている。地図情報データベース33は、記憶装置を主体として構成されている。なお、地図情報データベース33は、ネットワーク網に接続された車外のサーバに設けられてもよく、車両制御装置30は、情報を、無線通信装置34を介して車外のサーバから取得してもよい。
【0017】
駆動制御装置35として、動力制御装置、ブレーキ制御装置、自動操舵制御装置、及びライト制御装置等が備えられている。動力制御装置は、内燃機関、モータ等の動力機8の出力を制御する。ブレーキ制御装置は、電動ブレーキ装置9のブレーキ動作を制御する。自動操舵制御装置は、電動操舵装置7を制御する。ライト制御装置は、方向指示器、ハザードランプ等を制御する。
【0018】
車両状態検出装置32は、自車両の運転状態及び走行状態である自車両状態を検出する検出装置である。本実施の形態では、車両状態検出装置32は、自車両の走行状態として、自車両の速度、加速度、ヨーレート、操舵角、横加速度などを検出する。例えば、車両状態検出装置32として、車輪の回転速度を検出する速度センサ、加速度センサ、角速度センサ、及び操舵角センサ等が設けられる。
【0019】
自車両の運転状態として、運転者による加減速操作、舵角操作、及び車線変更操作が検出される。例えば、車両状態検出装置32として、アクセルポジションセンサ、ブレーキポジションセンサ、操舵角センサ(ハンドル角センサ)、操舵トルクセンサ、及び方向指示器ポジションスイッチ等が設けられる。
【0020】
ヒューマンインターフェイス装置36は、スピーカ、表示画面、及び入力装置等の運転者の入力を受け付けたり、運転者に情報を伝達したりする装置である。
【0021】
1-1.車両制御装置30
車両制御装置30は、自車両状態取得部51、周囲情報取得部52、差分量演算部53、信頼度判定部54、及び車両制御部55等の機能部を備えている。車両制御装置30の各機能は、車両制御装置30が備えた処理回路により実現される。具体的には、図2に示すように、車両制御装置30は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置90、記憶装置91、演算処理装置90に外部の信号を入出力する入出力装置92等を備えている。
【0022】
演算処理装置90として、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、IC(Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、AI(Artificial Intelligence)チップ、各種の論理回路、及び各種の信号処理回路等が備えられてもよい。また、演算処理装置90として、同じ種類のもの又は異なる種類のものが複数備えられ、各処理が分担して実行されてもよい。記憶装置91として、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ハードディスク等の各種の記憶装置が用いられる。
【0023】
入出力装置92には、通信装置、A/D変換器、入出力ポート、駆動回路等が備えられる。入出力装置92は、周囲情報検出器31(周辺監視装置31a、位置検出装置31b)、車両状態検出装置32、地図情報データベース33、無線通信装置34、駆動制御装置35、及びヒューマンインターフェイス装置36等に接続され、これらの装置と通信を行う。
【0024】
そして、車両制御装置30が備える各機能部51から55等の各機能は、演算処理装置90が、記憶装置91に記憶されたソフトウェア(プログラム)を実行し、記憶装置91及び入出力装置92等の車両制御装置30の他のハードウェアと協働することにより実現される。なお、各機能部51から55等が用いる各種の設定データは、EEPROM等の記憶装置91に記憶されている。
【0025】
或いは、車両制御装置30は、処理回路として、図3に示すように、専用のハードウェア93、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、並列プログラム化されたプロセッサ、ASIC、FPGA、GPU、AIチップ、又はこれらを組み合せた回路等が備えられてもよい。以下、車両制御装置30の各機能について詳細に説明する。
【0026】
1-1-1.自車両状態取得部51
自車両状態取得部51は、自車両の走行状態を取得する。自車両状態取得部51は、位置検出装置31bから取得した自車両の位置座標、及び車両状態検出装置32から取得した自車両状態に基づいて、自車両の位置座標、移動方向(移動方向の方位)、速度、及び加速度などを取得する。
【0027】
1-1-2.周囲情報取得部52
周囲情報取得部52は、複数の周囲情報検出器31のそれぞれについて、周囲情報検出器31の検出情報に基づいて、自車両の周囲に存在する複数の物体部分の自車両に対する相対位置RPを検出する。
【0028】
本実施の形態では、相対位置RPは、自車両の座標系において演算される。図4に示すように、自車両の座標系は、自車両の縦方向X及び横方向Yを2つの座標軸とした座標系である。自車両の座標系の原点は、ニュートラルステアポイント等の自車両の代表位置に設定される。なお、相対位置RPは、自車両の走行中道路の縦方向X及び横方向Yを2つの座標軸とした座標系において演算されてもよい。
【0029】
<位置検出装置31bによる周囲物体の相対位置RPの検出>
周囲情報取得部52は、周囲情報検出器31としての位置検出装置31bの検出情報に基づいて、自車両の位置座標を検出する。本実施の形態では、位置検出装置31bとして、GPS、QZSS等の人工衛星から出力されるGNSS(Global Navigation Satellite System)信号を受信するGNSSアンテナが備えられている。周囲情報取得部52は、GNSSアンテナが受信したGNSS信号に基づいて自車両の位置座標を検出する。位置座標は、緯度、経度、高度などである。また、周囲情報取得部52は、GNSS信号を検出できない場合などに、車両状態検出装置32の検出情報に基づいて位置座標を更新してもよい。
【0030】
周囲情報取得部52は、地図情報データベース33から自車両の位置座標に対応する地図情報を取得する。本実施の形態では、周囲情報取得部52は、取得した地図情報から、自車両の周囲に存在する複数の物体部分の位置座標を取得する。上述したように、例えば、自車両の周囲に存在する物体として、車線、道路、及び路側物等が設定される。周囲情報取得部52は、レーダ及びカメラ等の周辺監視装置31aによっても、自車両の現在位置から観測できる車線及び路側物の各位置の位置座標を取得する。
【0031】
周囲情報取得部52は、自車両の位置座標、及び移動方向(移動方向の方位)に基づいて、地図情報から取得した自車両の周囲に存在する各物体部分の位置座標を、自車両に対する相対位置に変換する。本実施の形態では、自車両の座標系における相対位置が演算される。
【0032】
<周辺監視装置31aによる周囲物体の相対位置の検出>
周囲情報取得部52は、周囲情報検出器31としての周辺監視装置31aの検出情報に基づいて、自車両の周囲に存在する複数の物体部分の自車両に対する相対位置を検出する。
【0033】
周辺監視装置31aとしてミリ波レーダが用いられる場合を説明する。ミリ波レーダは、自車両の周囲の所定角度範囲にミリ波を照射し、物体に反射した反射波を受信する。そして、ミリ波レーダは、受信した反射波に基づいて、反射波の入射角度(ミリ波を反射した物体が存在する角度)と、ミリ波を反射した物体部分までの距離を検出する。ミリ波レーダには、各種の方式が用いられる。
【0034】
周囲情報取得部52は、自車両を基準にした予め設定されたミリ波の照射角度範囲、及びミリ波レーダにより検出された各物体部分の照射角度及び距離に基づいて、各物体部分の自車両に対する相対位置を演算する。
【0035】
周辺監視装置31aとしてLiDARが用いられる場合を説明する。LiDARは、レーザの照射角度を、所定角度範囲において走査し、物体に反射した反射光を受光する。そして、LiDARは、受光した反射光に基づいて、照射角度における、レーザを反射した物体部分までの距離を検出する。LiDARには、各種の方式が用いられる。
【0036】
周囲情報取得部52は、自車両を基準にした予め設定されたレーザの照射角度範囲、及びLiDARにより検出された各物体部分の照射角度及び距離に基づいて、各物体部分の自車両に対する相対位置を演算する。
【0037】
周辺監視装置31aとしてカメラが用いられる場合を説明する。周囲情報取得部52は、カメラの撮像画像に対して公知の画像処理を行って、カメラの画像に含まれる複数の物体部分の角度及び距離を検出する。ステレオカメラが用いられるとよいが、距離を検出可能であれば単眼カメラが用いられてもよい。
【0038】
周囲情報取得部52は、自車両を基準にした予め設定されたカメラの撮像角度範囲、及び画像処理により検出された各物体部分の角度及び距離に基づいて、各物体部分の自車両に対する相対位置を演算する。
【0039】
<周囲車両31cによる周囲物体の相対位置の検出>
周囲情報取得部52は、周囲情報検出器31としての周囲車両31cの検出情報に基づいて、自車両の周囲に存在する複数の物体部分の自車両に対する相対位置を検出する。例えば、周囲情報取得部52は、周囲車両31cから、無線通信を介して、周囲車両31cの位置座標、周囲車両31cが検出した、周囲車両31cの周囲に存在する複数の物体部分の位置情報を取得する。そして、周囲情報取得部52は、自車両の位置座標及び移動方向に基づいて、周囲車両31c、及び周囲車両31cの周囲に存在する複数の物体部分の自車両に対する相対位置を演算する。
【0040】
周囲情報取得部52は、周囲情報検出器31としての路側機31dの検出情報に基づいて、自車両の周囲に存在する複数の物体部分の自車両に対する相対位置を検出する。路側機31dは、路側に設けられ、道路の状況などを監視するカメラ等を有しており、監視範囲に存在する車両、道路、路側物等の複数の物体部分の位置情報を検出する。そして、路側機31dは、検出した複数の物体部分の位置情報を、無線通信等を介して、路側機31dの周囲に存在する車両に送信する。
【0041】
周囲情報取得部52は、自車両の周囲に存在する路側機31dから、無線通信を介して、路側機31dが検出した、路側機31dの監視範囲に存在する複数の物体部分の位置情報(位置座標など)を取得する。そして、周囲情報取得部52は、自車両の位置座標及び移動方向に基づいて、路側機31dの監視範囲に存在する複数の物体部分の自車両に対する相対位置を演算する。
【0042】
1-1-3.差分量演算部53
差分量演算部53は、複数の周囲情報検出器31から、判定を行う第1の周囲情報検出器311及び第2の周囲情報検出器312を設定する。そして、差分量演算部53は、第1の周囲情報検出器311の検出情報に基づいて検出された複数の物体部分の相対位置を複数の第1の相対位置RP1として設定し、第2の周囲情報検出器312の検出情報に基づいて検出された複数の物体部分の相対位置を複数の第2の相対位置RP2として設定する。
【0043】
そして、差分量演算部53は、相対位置が相互に対応する第1の相対位置RP1及び第2の相対位置RP2のセットのそれぞれについて、第1の相対位置RP1と第2の相対位置RP2との間の差分量ΔRPを演算する。
【0044】
差分量演算部53は、複数の周囲情報検出器31から、判定を行う第1の周囲情報検出器311及び第2の周囲情報検出器312を順番に設定し、信頼度判定部54は、設定された第1の相対位置RP1及び第2の相対位置RP2の信頼性を順番に判定する。例えば、差分量演算部53は、位置検出装置31b、カメラ、ミリ波レーダ、LiDAR、路側機31d、及び周囲車両31cなどの利用可能な複数の周囲情報検出器31から、順番に、相互比較を行いたい任意の2つの周囲情報検出器31を選択し、第1の周囲情報検出器311及び第2の周囲情報検出器312として設定する。
【0045】
例えば、位置検出装置31b、LiDAR、及びカメラの3つの周囲情報検出器31がある場合は、位置検出装置31b及びLiDARが、第1及び第2の周囲情報検出器311、312に設定され、位置検出装置31bによる第1の相対位置RP1及びLiDARによる第2の相対位置RP2の信頼性が判定される。次に、LiDAR及びカメラが、第1及び第2の周囲情報検出器311、312に設定され、LiDARによる第1の相対位置RP1及びカメラによる第2の相対位置RP2の信頼性が判定される。次に、カメラ及び位置検出装置31bが、第1及び第2の周囲情報検出器311、312に設定され、カメラによる第1の相対位置RP1及び位置検出装置31bによる第2の相対位置RP2の信頼性が判定される。
【0046】
<横方向Yの差分量ΔRPyの演算>
車両制御を行う上で、自車両又は自車両の走行中道路の横方向Yの相対位置の検出精度は、縦方向Xの相対位置の検出精度よりも重要になる。これは、車両と周辺物体との間の横方向Yの間隔は、車両と周辺物体との間の縦方向Xの間隔よりも狭くなるため、車両の安全性に対する影響が大きいためである。
【0047】
図5に示すように、各周囲情報検出器31の検出情報により検出される複数の物体部分の相対位置RPは、離散的な相対位置になる。各周囲情報検出器31の方式に応じて、離散的な相対位置RPの間隔の分解能が異なり、また、相対位置RPが検出される物体部分が不規則に異なる。
【0048】
そのため、第1の相対位置RP1及び第2の相対位置RP2のセットのそれぞれにおいて、縦方向Xにおける第1の相対位置RP1xと、縦方向Xにおける第2の相対位置RP2xとがずれる。よって、単に、横方向Yにおける第1の相対位置RP1yと第2の相対位置RP2yとの間の差分量ΔRPyを演算すると、縦方向Xのずれにより演算精度が悪くなる。
【0049】
そこで、本実施の形態では、図6に示すように、差分量演算部53は、相対位置が相互に対応する第1の相対位置RP1及び第2の相対位置RP2のセットのそれぞれについて、自車両又は自車両の走行中道路の縦方向Xの相対位置が相互に一致するように第1の相対位置RP1及び第2の相対位置RP2の一方を補正し、自車両又は自車両の走行中道路の横方向Yにおける、補正後の第1の相対位置RP1yと第2の相対位置RP2yとの間の差分量ΔRPyを、差分量ΔRPとして演算する。図6の例では、差分量ΔRPは、横方向Yの第2の相対位置RP2yから横方向Yの第1の相対位置RP1yを減算して演算される。
【0050】
この構成によれば、縦方向Xにおける第1の相対位置RP1xと、縦方向Xにおける第2の相対位置RP2xとがずれている場合でも、縦方向Xのずれによる、横方向Yの差分量ΔRPyの演算精度の悪化を抑制し、演算精度を高めることができる。
【0051】
差分量演算部53は、第1の相対位置RP1及び第2の相対位置RP2の内、補正する方を補正対象の相対位置とし、補正しない方を非補正対象の相対位置とし、非補正対象の相対位置に近接する2つの補正対象の相対位置を通る近似線を演算し、縦方向Xの相対位置が、縦方向Xにおける非補正対象の相対位置と一致する近似線上の相対位置を、補正後の補正対象の相対位置RPcrとして演算する。
【0052】
この場合は、1つの非補正対象の相対位置と、非補正対象の相対位置に近接する2つの補正対象の相対位置とが、差分量ΔRPが演算される第1の相対位置RP1及び第2の相対位置RP2の1つのセットとなる。
【0053】
この構成によれば、非補正対象の相対位置に近接する2つの補正対象の相対位置を通る近似線を用いて、補正後の補正対象の縦方向Xの相対位置を、非補正対象の相対位置の縦方向Xに一致させることができ、横方向の差分量ΔRPyを精度よく演算することができる。
【0054】
差分量演算部53は、第1の相対位置RP1及び第2の相対位置RP2の内、相対位置の検出数が多い方を、補正対象の相対位置として設定し、相対位置の検出数が少ない方を、非補正対象の相対位置として設定する。
【0055】
この構成によれば、補正対象の相対位置が、相対位置の検出数が多い方に設定されるので、近似線を用いた補正精度を向上することができる。
【0056】
図6に補正処理の例を示す。第1の相対位置RP1は、位置検出装置31bにより検出された自車両の位置座標及び地図情報を用いて演算された道路端の複数の部分の相対位置であり、第2の相対位置RP2は、周辺監視装置31aとしてのミリ波レーダ又はLiDARにより検出された道路端の複数の部分の相対位置である。
【0057】
図6に示すように、位置検出装置31bによる第1の相対位置RP1の検出数は、ミリ波レーダ又はLiDARによる第2の相対位置RP2の検出数よりも多くなっており、第1の相対位置RP1が補正対象の相対位置として設定されており、第2の相対位置RP2が非補正対象の相対位置として設定されている。
【0058】
各第2の相対位置RP2に近接する2つの第1の相対位置RP1を通る近似線(本例では、直線)が演算され、縦方向Xの相対位置が、縦方向Xにおける第2の相対位置RP2xと一致する近似線上の相対位置が、補正後の第1の相対位置RP1crとして演算されている。なお、近似線は、道路端の線と一致しているため、図示されていない。そして、各第2の相対位置RP2について、横方向Yにおける、第2の相対位置RP2yと補正後の第1の相対位置RP1cryの差分量ΔRPyが、差分量ΔRPとして演算されている。本例では、ΔRP=ΔRPy=RP2y-RP1cryにより演算されている。
【0059】
図7に示すように、道路の退避ペースでは、道路端の延出方向が、縦方向Xに対して傾いており、縦方向Xの相対位置の変化に対して、横方向Yの相対位置の変化が大きくなっている。そのため、縦方向Xの相対位置が相互にずれた補正前の第1及び第2の相対位置を比較すると、差分量ΔRPの誤差が大きくなる。一方、補正後の第1及び第2の相対位置は、縦方向Xの相対位置が相互に一致されているので、差分量ΔRPの誤差を低減できている。
【0060】
1-1-4.信頼度判定部54
信頼度判定部54は、複数の差分量ΔRPに基づいて、同一の物体について演算された複数の差分量ΔRPのまとまりを判定し、当該同一の物体について演算されたと判定された1つのまとまりの複数の差分量ΔRPである同一の物体の複数の差分量ΔRPに基づいて、当該同一の物体の複数の差分量ΔRPに対応する第1の相対位置RP1及び第2の相対位置RP2の信頼性が高いか否かを判定する。なお、同一の物体は、同一種類の物体などと言い換えることができる。
【0061】
同一でない物体について演算された差分量ΔRPは、大きくなったり、変動量が大きくなったりするため、同一でない物体の差分量ΔRPを用いて第1及び第2の相対位置の信頼性を判定すると、信頼性が低いと誤って判定される可能性がある。上記の構成によれば、同一の物体について演算されたと判定された複数の差分量ΔRPに基づいて、信頼性が判定されるので、信頼性を精度よく判定することができる。
【0062】
<同一の物体の判定>
図8に示すように、信頼度判定部54は、相対位置が相互に近接する複数の差分量ΔRPの間の偏差Dif(本例では、偏差の絶対値|Dif|)が、偏差判定値Thdif以下である場合は、近接する複数の差分量ΔRPは、同一の物体について演算された差分量ΔRPであると判定する。
【0063】
この構成によれば、相対位置が相互に近接する複数の差分量ΔRPを、相互に比較することにより、同一の物体について演算されたか否かを判定することができる。
【0064】
本実施の形態では、信頼度判定部54は、複数の差分量ΔRPから、相対位置が相互に近接する2つの差分量ΔRPのセットを、相対位置を重複させながら連続的に設定し、2つの差分量ΔRPのセットのそれぞれについて、2つの差分量ΔRPの間の偏差の絶対値|Dif|が、偏差判定値Thdif以下である場合は、2つの差分量ΔRPは、同一の物体について演算された差分量であると判定し、相対位置が連続的に重複した複数の2つの差分量ΔRPのセットの間で、同一の物体について演算されたと判定された複数の差分量ΔRPのまとまりを判定する。
【0065】
この構成によれば、相対位置が相互に近接する2つの差分量ΔRPのセットを、連続的に設定し、2つの差分量ΔRPを比較することにより、同一の物体について演算されたか否かを連続的に判定し、同一の物体のまとまりを判定することができる。
【0066】
図8に判定例を示す。図6と同様に、第1の相対位置RP1は、位置検出装置31bにより検出された道路端の複数の部分の相対位置であり、第2の相対位置RP2は、ミリ波レーダ又はLiDARにより検出された道路端の複数の部分の相対位置である。図8の例では、2つの差分量ΔRPのセットの全てについて、2つの差分量ΔRPの偏差の絶対値|Dif|は、偏差判定値Thdif以下であり、同一の物体について演算されたと判定されており、図8に示した複数の差分量ΔRPの全てが、同一の物体について演算されたまとまりと判定されている。
【0067】
図9に別の判定例を示す。図8の例とは異なり、道路端に複数の車両が停車している。そのため、位置検出装置31bにより検出された第1の相対位置RP1は、地図情報の位置であるため、停止車両が無い状態での道路端の相対位置になっている。一方、ミリ波レーダ又はLiDARにより検出された第2の相対位置RP2は、道路端の手前に位置する停止車両の相対位置になっている。そのため、停止車両の位置で、差分量ΔRPが負方向に大きくなっている。よって、停止車両が無い道路端の区間においては、差分量ΔRPが比較的に小さい状態で連続しており、2つの差分量ΔRPの偏差の絶対値|Dif|は、偏差判定値Thdif以下になり、同一の物体について演算されたと判定されている。
【0068】
一方、停止車両が無い道路端と停止車両が有る道路端との境界では、差分量ΔRPが変動しており、2つの差分量ΔRPの偏差の絶対値|Dif|が、偏差判定値Thdifよりも大きくなっており、同一の物体について演算されていないと判定されている。また、停止車両が有る道路端の区間においては、差分量ΔRPが負方向に大きい状態で連続しており、2つの差分量ΔRPの偏差の絶対値|Dif|は、偏差判定値Thdif以下になり、同一の物体について演算されたと判定されている。その結果、停止車両が無い連続した道路端の区間に対応する複数の差分量ΔRPの全てが、同一の物体について演算されたまとまりと判定されている。停止車両が有る連続した道路端の区間に対応する複数の差分量ΔRPの全てが、実際には道路端と停止車両とで同一でないが、同一の物体について演算されたまとまりと判定されている。
【0069】
<信頼性の判定>
上述したように、信頼度判定部54は、同一の物体の複数の差分量ΔRPに基づいて、当該同一の物体の複数の差分量ΔRPに対応する第1の相対位置RP1及び第2の相対位置RP2の信頼性が高いか否かを判定する。
【0070】
本実施の形態では、信頼度判定部54は、同一の物体の複数の差分量ΔRPと許容範囲Raとの比較結果に基づいて、当該同一の物体の複数の差分量ΔRPに対応する第1の相対位置RP1及び第2の相対位置RP2の信頼性が高いか否かを判定する。
【0071】
信頼度判定部54は、同一の物体の複数の差分量ΔRPに基づいて、許容範囲Raを設定する。
【0072】
実際に、同一の物体について差分量ΔRPが演算され、第1の及び第2の相対位置の信頼性が高いにもかかわらず、物体の種類、周囲情報検出器31の方式の差異、及び検出条件などによって、差分量ΔRPが増減したり、差分量ΔRPのばらつき度合いが増減したりする。上記の構成によれば、許容範囲Raが、同一の物体の複数の差分量ΔRPに基づいて設定されるので、差分量ΔRPの大小及びばらつき度合い等に応じて、適切に許容範囲Raを設定することができる。よって、同一の物体の複数の差分量ΔRPと許容範囲Raとの比較結果に基づいて、対応する第1の及び第2の相対位置の信頼性を精度よく判定できる。
【0073】
信頼度判定部54は、同一の物体の複数の差分量ΔRPのばらつき度合いを演算し、当該同一の物体の複数の差分量ΔRPと、ばらつき度合いとに基づいて、許容範囲Raを設定する。
【0074】
同一の物体の複数の差分量ΔRPの大小及びばらつき度合い等に基づいて、適切に許容範囲Raを設定することができ、信頼性の判定精度を向上できる。
【0075】
本実施の形態では、信頼度判定部54は、許容範囲Raとして、許容範囲の上限値RaH及び許容範囲の下限値RaLを設定する。
【0076】
本実施の形態では、ばらつき度合いとして、同一の物体の複数の差分量ΔRPの標準偏差σが用いられる。例えば、次式に示すように、信頼度判定部54は、同一の物体の複数の差分量ΔRPの平均値ΔRPaveに、標準偏差σに係数Kを乗算した値を加算した値を、許容範囲の上限値RaHとして設定し、同一の物体の複数の差分量ΔRPの平均値ΔRPaveに、標準偏差σに係数Kを乗算した値を減算した値を、許容範囲の下限値RaLとして設定する。例えば、係数Kは、3に設定されるが、3以外の正値に設定されてもよい。なお、ばらつき度合いとして、標準偏差σ以外の指標が用いられてもよい。
RaH=ΔRPave+K×σ
RaL=ΔRPave-K×σ ・・・(1)
【0077】
なお、差分量ΔRPの絶対値が判定に用いられてもよい。この場合も、平均値ΔRPaveとして、同一の物体の複数の差分量ΔRPの絶対値の平均値が用いられ、標準偏差σとして、同一の物体の複数の差分量ΔRPの絶対値の標準偏差が用いられるとよい。この場合は、許容範囲の下限値RaLが0に設定され、許容範囲の上限値RaHのみが設定されてもよい。
【0078】
信頼度判定部54は、同一の物体の複数の差分量ΔRPのそれぞれが、許容範囲の上限値RaHから許容範囲の下限値RaLまでの許容範囲Ra内にあるか否かを判定する。そして、信頼度判定部54は、同一の物体の複数の差分量の総数Nallに対する、許容範囲Ra内になった差分量の数Ninの比率RN(=Nin/Nall)に基づいて、同一の物体の複数の差分量に対応する第1の相対位置及び第2の相対位置の信頼性が高いか否かを判定する。例えば、信頼度判定部54は、比率RNが、比率閾値以上である場合は、信頼性が高いと判定し、比率RNが、比率閾値未満である場合は、信頼性が低いと判定する。
【0079】
この構成によれば、差分量ΔRPのばらつきを考慮して、確率的に信頼性を判定することができる。
【0080】
図6及び図8に対応する図10の例では、同一の物体の複数の差分量ΔRPが全て、許容範囲の上限値RaHから許容範囲の下限値RaLまでの許容範囲Ra内にあるので、比率RNが100%になり、信頼性が高いと判定されている。
【0081】
信頼度判定部54は、許容範囲Raを上限制限値LmtH及び下限制限値LmtLで上下限制限する。
【0082】
例えば、信頼度判定部54は、許容範囲の上限値RaHが上限制限値LmtHよりも大きくなった場合は、上限制限値LmtHを制限後の許容範囲の上限値RaHとして設定する。また、信頼度判定部54は、許容範囲の下限値RaLが下限制限値LmtLよりも小さくなった場合は、下限制限値LmtLを制限後の許容範囲の下限値RaLとして設定する。
【0083】
或いは、信頼度判定部54は、許容範囲の上限値RaH及び許容範囲の下限値RaLの中心値(本例では、平均値ΔRPave)、及び許容範囲の上限値RaHと許容範囲の下限値RaLとの幅(本例では、2×K×σ)を個別に上下限制限してもよい。
【0084】
本実施の形態では、信頼度判定部54は、第1の周囲情報検出器311による第1の相対位置RP1の検出特性及び第2の周囲情報検出器312による第2の相対位置RP2の検出特性に基づいて上限制限値LmtH及び下限制限値LmtLを設定する。
【0085】
図10の例に示すように、位置検出装置31bによる地図情報の左側の道路端の第1の相対位置RP1が、縁石の相対位置であり、ミリ波レーダ又はLiDARにより検出された第2の相対位置RP2が、縁石の左側に位置する路側壁又はガードレールなどの相対位置である場合は、横方向Yの第2の相対位置RP2yが、横方向Yの第1の相対位置RP1yよりもオフセット的に大きくなり、横方向Yの第2の相対位置RP2yから横方向Yの第1の相対位置RP1yを減算した差分量ΔRPが、0よりもオフセット的に大きくなる。このような検出特性の場合は、上限制限値LmtH及び下限制限値LmtLが、正の方向にオフセットされるとよい。逆に、右側の道路端についての上限制限値LmtH及び下限制限値LmtLは、負の方向にオフセットされるとよい。
【0086】
別の例として、カメラにより検出された白線等の区画線の相対位置と位置検出装置31bによる地図情報の白線等の区画線の相対位置とが相互に比較される場合は、上限制限値LmtH及び下限制限値LmtLはオフセットされずに、0を中心に設定されるとよい。
【0087】
例えば、信頼度判定部54は、第1の相対位置RP1が検出された物体部分の種類及び第2の相対位置RP2が検出された物体部分の種類の少なくとも一方、第1の周囲情報検出器311の種類、第2の周囲情報検出器312の種類、及び自車両に対する物体部分の位置関係に基づいて、上限制限値LmtH及び下限制限値LmtLを設定する。これらの情報により、各周囲情報検出器による各相対位置の検出特性を判定でき、上限制限値LmtH及び下限制限値LmtLのオフセット方向及びオフセット量を判定できる。
【0088】
信頼度判定部54は、同一の物体の複数の差分量ΔRPが、同一の物体の差分量ΔRPとして正常な値であるか否かを判定し、正常な値でないと判定した場合は、許容範囲Raを、予め設定された規定範囲に設定する。
【0089】
例えば、信頼度判定部54は、同一の物体の複数の差分量ΔRPが、規定範囲を超えているか否かを判定し、規定範囲を超えている差分量ΔRPの比率が、判定値以上である場合は、同一の物体の複数の差分量ΔRPとして正常な値でないと判定し、規定範囲を超えている差分量ΔRPの比率が、判定値未満である場合は、同一の物体の複数の差分量ΔRPとして正常な値であると判定する。例えば、規定範囲は、上限制限値LmtHから下限制限値LmtLの範囲に設定される。そして、信頼度判定部54は、正常な値でないと判定した場合は、規定範囲(本例では、上限制限値LmtH及び下限制限値LmtL)を、許容範囲の上限値RaH及び許容範囲の下限値RaLとして設定する。この場合の上限制限値LmtH及び下限制限値LmtLは、上記のように、各周囲情報検出器による各相対位置の検出特性に基づいて設定されてもよい。
【0090】
このように、同一の物体の複数の差分量ΔRPとして正常な値でないと判定した場合に、許容範囲Raを、予め設定された規定範囲に設定することにより、正常な値でないと判定された場合に、相対位置の信頼性を精度よく判定することができる。
【0091】
図9に対応する図11の例では、停止車両が存在しない区間Aでは、同一の物体の複数の差分量ΔRPとして正常な値であると判定されており、同一の物体の複数の差分量ΔRPに基づいて許容範囲の上限値RaH及び許容範囲の下限値RaLが設定されている。そして、区間Aにおいて、許容範囲の上限値RaHから許容範囲の下限値RaLの許容範囲Ra内にある差分量ΔRPの比率が、比率閾値以上であるので、区間Aの第1の相対位置RP1及び第2の相対位置RP2の信頼性が高いと判定されている。停止車両が存在しない区間Cも、区間Aと同様になっているので、同様に信頼性が高いと判定されている。
【0092】
一方、停止車両が存在する区間Bでは、同一の物体の複数の差分量ΔRPとして正常な値でないと判定されており、上限制限値LmtH及び下限制限値LmtLが、許容範囲の上限値RaH及び許容範囲の下限値RaLとして設定されている。そして、区間Bにおいて、許容範囲の上限値RaHから許容範囲の下限値RaLまでの許容範囲Ra内にある差分量ΔRPの比率が、比率閾値未満であるので、区間Bの第1の相対位置RP1及び第2の相対位置RP2の信頼性が低いと判定されている。
【0093】
なお、信頼度判定部54は、今回の演算周期で演算された同一の物体の複数の差分量ΔRPに基づいて設定した許容範囲である今回の差分量による許容範囲Ra_newを、当該同一の物体について過去の演算周期で演算した許容範囲Ra_old(過去演算の許容範囲Ra_oldと称す)により補正して、最終的な許容範囲Raを演算してもよい。今回の差分量による許容範囲Ra_newは、式(1)等により演算された許容範囲Raである。
【0094】
ノイズ成分等により、今回の差分量による許容範囲Ra_newが、過去演算の許容範囲Ra_oldから急変した場合に、信頼性の判定精度が悪化する可能性がある。上記の構成によれば、今回の差分量による許容範囲Ra_newが急変した場合でも、過去演算の許容範囲Ra_oldにより補正して、最終的な許容範囲Raを演算するので、最終的な許容範囲Raの設定精度を高めることができる。
【0095】
信頼度判定部54は、同一の物体について過去の演算周期で演算した許容範囲Ra_oldからの最終的な同一の物体の許容範囲Raの変化を抑制するように、今回の差分量による許容範囲Ra_newを補正して、最終的な許容範囲Raを演算する。
【0096】
例えば、信頼度判定部54は、今回の演算周期及び過去の複数の演算周期で演算された複数の今回の差分量による許容範囲Ra_newに対して平滑化処理を行って、最終的な許容範囲Raを演算する。平滑化処理として、例えば、一次遅れフィルタ処理、移動平均処理、又は加重平均処理が行われる。加重平均処理が行われる場合は、今回の演算周期、及び今回の演算周期に近い過去の演算周期の重みが大きくされてもよい。
【0097】
許容範囲Raとして、許容範囲の上限値RaH及び許容範囲の下限値RaLが演算される場合は、今回の差分量による許容範囲の上限値RaH_new及び許容範囲の下限値RaL_newが、それぞれ、過去演算の許容範囲の上限値RaH_old及び許容範囲の下限値RaL_oldにより補正されればよい。また、平滑化処理が行われる場合は、今回の演算周期及び過去の複数の演算周期で演算された許容範囲の上限値RaH_new及び許容範囲の下限値RaL_newのそれぞれに対して、平滑化処理が行われ、最終的な許容範囲の上限値RaH及び許容範囲の下限値RaLが演算されればよい。
【0098】
なお、今回の演算周期で演算された今回の差分量による許容範囲Ra_newと、過去の複数の演算周期で演算された今回の差分量による許容範囲Ra_newとが、同一の物体についてのものであるか否かは、各演算周期の間の自車両の移動量と、各演算周期において今回の差分量による許容範囲Ra_newの演算に用いられた第1及び第2の相対位置との対応関係に基づいて判定される。
【0099】
1-1-5.車両制御部55
車両制御部55は、信頼性が高いと判定された第1の相対位置RP1及び第2の相対位置RP2を用いて、車両の走行を制御する。
【0100】
3つ以上の周囲情報検出器31が存在し、3つ以上の周囲情報検出器31から第1の周囲情報検出器311及び第2の周囲情報検出器312の組み合せが複数設定された場合は、車両制御部55は、いずれかの組み合せにおいて、信頼性が高いと判定された第1の相対位置RP1及び第2の相対位置RP2を用いて、車両の走行を制御する。
【0101】
例えば、位置検出装置31b、LiDAR、及びカメラの3つの周囲情報検出器31が存在する場合は、位置検出装置31b及びLiDARの組み合せ、LiDAR及びカメラの組み合せ、カメラ及び位置検出装置31bの組み合せが、順番に第1及び第2の周囲情報検出器311、312に設定され、第1及び第2の相対位置RP1、RP2の信頼性が判定される。例えば、上述した図の例のように、停車車両が存在する区間において、位置検出装置31bによる相対位置及びLiDARによる相対位置の信頼性が低いと判定されても、LiDARによる相対位置及びカメラによる相対位置の信頼性が高いと判定されていれば、LiDARによる相対位置及びカメラによる相対位置を用いて、車両の走行が制御されればよい。
【0102】
或いは、車両制御部55は、信頼性が高いと判定された組み合せが存在しない場合は、安全性を優先させるため、リアルタイム性が低い地図情報を用いた位置検出装置31bによる相対位置を用いずに、リアルタイム性が高いミリ波レーダ、LiDAR、カメラ等の周辺監視装置31aによる相対位置を用いて、車両の走行を制御してもよい。
【0103】
自動運転を行う場合は、車両制御部55は、信頼性が高いと判定された第1の相対位置RP1又は第2の相対位置RP2に合わせた、目標走行軌道を決定する。この際、周辺監視装置31aにより取得された周囲車両31c、障害物、歩行者、道路形状が考慮される。目標走行軌道は、将来の各時点における自車両の位置、自車両の進行方向、自車両の速度、走行車線、及び車線変更を行う位置等の時系列の走行計画である。
【0104】
車両制御部55は、自車両の目標走行軌道に追従走行するように車両を制御する。例えば、車両制御部55は、目標速度、目標操舵角、方向指示器の操作指令等を決定し、決定した各指令値を、動力制御装置、ブレーキ制御装置、自動操舵制御装置、ライト制御装置等の駆動制御装置35に伝達する。
【0105】
動力制御装置は、自車両の速度が目標速度に追従するように、内燃機関、モータ等の動力機8の出力を制御する。ブレーキ制御装置は、自車両の速度が目標速度に追従するように、電動ブレーキ装置9のブレーキ動作を制御する。自動操舵制御装置は、操舵角が目標操舵角に追従するように、電動操舵装置7を制御する。ライト制御装置は、方向指示器の操作指令に従って、方向指示器を制御する。
【0106】
或いは、運転者の運転補助を行っている場合は、車両制御部55は、信頼性が高いと判定された第1の相対位置RP1又は第2の相対位置RP2に基づいて、運転者の運転補助を行う指令を、動力制御装置、ブレーキ制御装置、及び自動操舵制御装置のいずれか一つ以上に伝達し、動力機8の出力、電動ブレーキ装置9のブレーキ動作、及び電動操舵装置7の操舵動作のいずれか一つ以上を制御する。例えば、車両の制御として、車線維持制御、障害物回避制御、車線変更制御、クルーズコントロール、車間距離制御、先行車両追従制御等が行われる。
【0107】
或いは、運転者によるマニュアル運転を行っている場合は、車両制御部55は、信頼性が高いと判定された第1の相対位置RP1又は第2の相対位置RP2に基づいて、運転のための各種の案内を、ヒューマンインターフェイス装置36を介して運転者に報知する。例えば、各種の案内として、経路案内、周囲情報の案内、接触の危険性の案内等が行われる。
【0108】
<フローチャート>
図12は、本実施の形態に係る位置検出装置1及び車両制御装置30の処理(位置検出方法及び車両制御方法)を説明する概略的なフローチャートである。図12の処理は、演算処理装置90が記憶装置91に記憶されたソフトウェア(プログラム)を実行することにより、例えば、所定の演算周期ごとに実行される。
【0109】
ステップS01で、上述したように、自車両状態取得部51は、自車両の走行状態を取得する自車両状態取得処理を実行する。自車両状態取得部51は、位置検出装置31bから取得した自車両の位置座標、及び車両状態検出装置32から取得した自車両状態に基づいて、自車両の位置座標、移動方向、速度、及び加速度などを取得する。
【0110】
ステップS02で、上述したように、周囲情報取得部52は、複数の周囲情報検出器31のそれぞれについて、周囲情報検出器31の検出情報に基づいて、自車両の周囲に存在する複数の物体部分の自車両に対する相対位置を検出する周囲情報取得処理を実行する。
【0111】
ステップS03で、上述したように、差分量演算部53は、差分量演算処理を実行する。具体的には、差分量演算部53は、複数の周囲情報検出器31から、判定を行う第1の周囲情報検出器311及び第2の周囲情報検出器312を設定する。差分量演算部53は、第1の周囲情報検出器311の検出情報に基づいて検出された複数の物体部分の相対位置を複数の第1の相対位置RP1として設定し、第2の周囲情報検出器312の検出情報に基づいて検出された複数の物体部分の相対位置を複数の第2の相対位置RP2として設定する。そして、差分量演算部53は、相対位置が相互に対応する第1の相対位置RP1及び第2の相対位置RP2のセットのそれぞれについて、第1の相対位置RP1と第2の相対位置RP2との間の差分量ΔRPを演算する。
【0112】
ステップS04で、上述したように、信頼度判定部54は、複数の差分量ΔRPに基づいて、同一の物体について演算された複数の差分量ΔRPのまとまりを判定し、当該同一の物体について演算されたと判定された1つのまとまりの複数の差分量ΔRPである同一の物体の複数の差分量ΔRPに基づいて、当該同一の物体の複数の差分量ΔRPに対応する第1の相対位置RP1及び第2の相対位置RP2の信頼性が高いか否かを判定する信頼度判定処理を実行する。
【0113】
ステップS05で、上述したように、車両制御部55は、信頼性が高いと判定された第1の相対位置RP1及び第2の相対位置RP2を用いて、車両の走行を制御する車両制御処理を実行する。
【0114】
<本願の諸態様のまとめ>
以下、本願の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
複数の周囲情報検出器のそれぞれについて、前記周囲情報検出器の検出情報に基づいて、自車両の周囲に存在する複数の物体部分の自車両に対する相対位置を検出する周囲情報取得部と、
前記複数の周囲情報検出器から判定を行う第1の周囲情報検出器及び第2の周囲情報検出器を設定し、前記第1の周囲情報検出器の検出情報に基づいて検出された複数の物体部分の相対位置を複数の第1の相対位置として設定し、前記第2の周囲情報検出器の検出情報に基づいて検出された複数の物体部分の相対位置を複数の第2の相対位置として設定し、相対位置が相互に対応する前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置のセットのそれぞれについて、前記第1の相対位置と前記第2の相対位置との間の差分量を演算する差分量演算部と、
複数の前記差分量に基づいて、同一の物体について演算された複数の前記差分量のまとまりを判定し、当該同一の物体について演算されたと判定された1つのまとまりの複数の前記差分量である同一の物体の複数の差分量に基づいて、当該同一の物体の複数の差分量に対応する前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置の信頼性が高いか否かを判定する信頼度判定部と、を備えた位置検出装置。
【0115】
(付記2)
前記差分量演算部は、相対位置が相互に対応する前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置のセットのそれぞれについて、自車両又は自車両の走行中道路の縦方向の相対位置が相互に一致するように前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置の一方を補正し、自車両又は自車両の走行中道路の横方向における、補正後の前記第1の相対位置と前記第2の相対位置との間の差分量を、前記差分量として演算する付記1に記載の位置検出装置。
【0116】
(付記3)
前記差分量演算部は、前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置の内、補正する方を補正対象の相対位置とし、補正しない方を非補正対象の相対位置とし、
前記非補正対象の相対位置に近接する2つの前記補正対象の相対位置を通る近似線を演算し、前記縦方向の相対位置が、前記縦方向における前記非補正対象の相対位置と一致する前記近似線上の相対位置を、補正後の前記補正対象の相対位置として演算する付記2に記載の位置検出装置。
【0117】
(付記4)
前記差分量演算部は、前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置の内、相対位置の検出数が多い方を、前記補正対象の相対位置として設定し、相対位置の検出数が少ない方を、前記非補正対象の相対位置として設定する付記3に記載の位置検出装置。
【0118】
(付記5)
前記信頼度判定部は、複数の前記差分量から、相対位置が相互に近接する複数の前記差分量の間の偏差が、偏差判定値以下である場合は、前記近接する複数の差分量は、同一の物体について演算された前記差分量であると判定する付記1から4のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【0119】
(付記6)
前記信頼度判定部は、複数の前記差分量から、相対位置が相互に近接する2つの前記差分量のセットを、相対位置を重複させながら連続的に設定し、前記2つの差分量のセットのそれぞれについて、前記2つの差分量の間の偏差が、偏差判定値以下である場合は、前記2つの前記差分量は、同一の物体について演算された前記差分量であると判定し、相対位置が連続的に重複した複数の前記2つの差分量のセットの間で、同一の物体について演算されたと判定された複数の前記差分量のまとまりを判定する付記1から4のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【0120】
(付記7)
前記信頼度判定部は、前記同一の物体の複数の差分量に基づいて、許容範囲を設定し、当該同一の物体の複数の差分量と前記許容範囲との比較結果に基づいて、当該同一の物体の複数の差分量に対応する前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置の信頼性が高いか否かを判定する付記1から6のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【0121】
(付記8)
前記信頼度判定部は、前記同一の物体の複数の差分量のばらつき度合いを演算し、当該同一の物体の複数の差分量と、前記ばらつき度合いとに基づいて、前記許容範囲を設定する付記7に記載の位置検出装置。
【0122】
(付記9)
前記信頼度判定部は、前記第1の周囲情報検出器による前記第1の相対位置の検出特性及び前記第2の周囲情報検出器による前記第2の相対位置の検出特性に基づいて上限制限値及び下限制限値を設定し、前記許容範囲を前記上限制限値及び前記下限制限値で上下限制限する付記7又は8に記載の位置検出装置。
【0123】
(付記10)
前記信頼度判定部は、前記同一の物体の複数の差分量が、同一の物体の前記差分量として正常な値であるか否かを判定し、正常な値でないと判定した場合は、前記許容範囲を、予め設定された規定範囲に設定する付記7から9のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【0124】
(付記11)
前記信頼度判定部は、今回の演算周期で演算された前記同一の物体の複数の差分量に基づいて設定した前記許容範囲である今回の差分量による許容範囲を、当該同一の物体について過去の演算周期で演算した前記許容範囲により補正して、最終的な前記許容範囲を演算する付記7から10のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【0125】
(付記12)
前記信頼度判定部は、同一の物体について過去の演算周期で演算した前記許容範囲からの前記最終的な同一の物体の許容範囲の変化を抑制するように、前記今回の差分量による許容範囲を補正して、最終的な前記許容範囲を演算する付記11に記載の位置検出装置。
【0126】
(付記13)
前記信頼度判定部は、前記同一の物体の複数の差分量の総数に対する、許容範囲の範囲内になった前記差分量の数の比率に基づいて、当該同一の物体の複数の差分量に対応する前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置の信頼性が高いか否かを判定する付記1から12のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【0127】
(付記14)
前記複数の周囲情報検出器は、自車両の現在位置を検出する位置検出装置、自車両の周辺を監視する単数又は複数種類の周辺監視装置、道路を監視する路側機、及び自車両の周囲に存在する周囲車両のいずれか2つ以上を含む付記1から13のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【0128】
(付記15)
信頼性が高いと判定された前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置を用いて、車両の走行を制御する車両制御部を更に備えた付記1から14のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【0129】
(付記16)
3つ以上の前記周囲情報検出器が存在し、
前記差分量演算部は、3つ以上の前記周囲情報検出器から、前記第1の周囲情報検出器及び前記第2の周囲情報検出器の組み合せを複数設定し、各前記組み合せについて、複数の前記差分量を演算し、
前記信頼度判定部は、各前記組み合せについて、複数の前記差分量に基づいて、前記同一の物体の複数の差分量に対応する前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置の信頼性が高いか否かを判定し、
前記車両制御部は、いずれかの前記組み合せにおいて、信頼性が高いと判定された前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置を用いて、車両の走行を制御する付記15に記載の位置検出装置。
【0130】
(付記17)
以下の各ステップを演算処理装置に実行させる位置検出方法であって、
複数の周囲情報検出器のそれぞれについて、前記周囲情報検出器の検出情報に基づいて、自車両の周囲に存在する複数の物体部分の自車両に対する相対位置を検出する周囲情報取得ステップと、
前記複数の周囲情報検出器から判定を行う第1の周囲情報検出器及び第2の周囲情報検出器を設定し、前記第1の周囲情報検出器の検出情報に基づいて検出された複数の物体部分の相対位置を複数の第1の相対位置として設定し、前記第2の周囲情報検出器の検出情報に基づいて検出された複数の物体部分の相対位置を複数の第2の相対位置として設定し、相対位置が相互に対応する前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置のセットのそれぞれについて、前記第1の相対位置と前記第2の相対位置との間の差分量を演算する差分量演算ステップと、
複数の前記差分量に基づいて、同一の物体について演算された複数の前記差分量のまとまりを判定し、当該同一の物体について演算されたと判定された1つのまとまりの複数の前記差分量である同一の物体の複数の差分量に基づいて、当該同一の物体の複数の差分量に対応する前記第1の相対位置及び前記第2の相対位置の信頼性が高いか否かを判定する信頼度判定ステップと、を備えた位置検出方法。
【0131】
本願は、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合せで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0132】
1:位置検出装置、31:周囲情報検出器、31a:周辺監視装置、31b:位置検出装置、31c:周囲車両、31d:路側機、51:自車両状態取得部、52:周囲情報取得部、53:差分量演算部、54:信頼度判定部、55:車両制御部、311:第1の周囲情報検出器、312:第2の周囲情報検出器、LmtH:上限制限値、LmtL:下限制限値、Nall:同一の物体の複数の差分量の総数、RN:比率、RP1:第1の相対位置、RP2:第2の相対位置、Ra:許容範囲、RaH:許容範囲の上限値、RaL:許容範囲の下限値、Dif:偏差、Thdif:偏差判定値、X:縦方向、Y:横方向、ΔRP:差分量、ΔRPave:同一の物体の複数の差分量の平均値、ΔRPy:横方向の差分量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12