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特開2024-139968自車位置推定装置、車両制御システム及び自車位置推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139968
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】自車位置推定装置、車両制御システム及び自車位置推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/28 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G01C21/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050933
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 匠
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雄史
(72)【発明者】
【氏名】春日 隆文
【テーマコード(参考)】
2F129
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB33
2F129BB53
2F129BB56
2F129BB66
2F129EE78
2F129GG17
(57)【要約】
【課題】高精度な自車位置推定が継続的に可能な自車位置推定装置を得る。
【解決手段】本開示の自車位置推定装置は、車両10に搭載された撮像素子によって検出された第1左側道路区画線情報及び第1右側道路区画線情報からなる第1道路区画線情報を取得する第1道路区画線情報取得部101と、ロケータ91及び地図情報に基づく第2左側道路区画線情報及び第2右側道路区画線情報からなる第2道路区画線情報を取得する第2道路区画線情報取得部102と、第1道路区画線情報及び第2道路区画線情報に基づき、自車位置の推定に用いる道路区画線情報の組み合わせを判定する道路区画線情報判定部103と、道路区画線情報判定部103が判定した道路区画線情報の組み合わせを用いて、第2道路区画線情報を補正することにより自車位置を推定する自車位置推定部104と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左側道路区画線及び右側道路区画線によって規定された道路を走行する車両の自車位置を推定する自車位置推定装置であって、
前記車両に搭載された撮像素子によって検出された前記左側道路区画線を表す第1左側道路区画線情報及び前記右側道路区画線を表す第1右側道路区画線情報からなる第1道路区画線情報を取得する第1道路区画線情報取得部と、
前記撮像素子による検出方法とは異なる方法によって取得された前記左側道路区画線を表す第2左側道路区画線情報及び前記右側道路区画線を表す第2右側道路区画線情報からなる第2道路区画線情報を取得する第2道路区画線情報取得部と、
前記第1道路区画線情報及び前記第2道路区画線情報に基づき、前記自車位置の推定に用いる道路区画線情報の組み合わせを判定する道路区画線情報判定部と、
前記道路区画線情報判定部が判定した道路区画線情報の組み合わせを用いて、前記第2道路区画線情報を補正することにより前記自車位置を推定する自車位置推定部と、
を備える自車位置推定装置。
【請求項2】
前記道路区画線情報判定部は、左側道路区画線情報に関する前記第1左側道路区画線情報と前記第2左側道路区画線情報との乖離度と、及び右側道路区画線情報に関する前記第1右側道路区画線情報と前記第2右側道路区画線情報との乖離度との少なくとも一方の乖離度に基づき、前記自車位置の推定に用いる道路区画線情報の組み合わせを判定することを特徴とする請求項1に記載の自車位置推定装置。
【請求項3】
前記第1道路区画線情報取得部は、前記第1道路区画線情報として、第1左側点群データ及び第1右側点群データからなる第1点群データを取得し、
前記第2道路区画線情報取得部は、前記第2道路区画線情報として、第2左側点群データ及び第2右側点群データからなる第2点群データを取得し、
前記第1左側点群データの各点と前記第2左側点群データの各点との中で互いに対応する各点の点間距離と、前記第1右側点群データの各点と前記第2右側点群データの各点の中で互いに対応する各点の点間距離との少なくとも一方を用いて前記乖離度を算出することを特徴とする請求項2に記載の自車位置推定装置。
【請求項4】
前記第1道路区画線情報取得部は、前記第1道路区画線情報として、第1左側点群データ及び第1右側点群データからなる第1点群データを取得し、
前記第2道路区画線情報取得部は、前記第2道路区画線情報として、第2左側点群データ及び第2右側点群データからなる第2点群データを取得し、
前記第1左側点群データの各点の重心位置と前記第2左側点群データの各点の重心位置とを一致させた場合における前記第1左側点群データの各点と前記第2左側点群データの各点の中で互いに対応する各点の点間距離と、前記第1右側点群データの各点の重心位置と前記第2右側点群データの各点の重心位置とを一致させた場合における前記第1右側点群データの各点と前記第2右側点群データの各点の中で互いに対応する各点の点間距離との少なくとも一方を用いて前記乖離度を算出することを特徴とする請求項2に記載の自車位置推定装置。
【請求項5】
前記第1左側道路区画線情報、前記第1右側道路区画線情報、前記第2左側道路区画線情報及び前記第2右側道路区画線情報の組み合わせを用いた場合に算出される第1補正量と、前記第1左側道路区画線情報及び前記第2左側道路区画線情報の組み合わせを用いた場合に算出される第2補正量と、前記第1右側道路区画線情報及び前記第2右側道路区画線情報の組み合わせを用いた場合に算出される第3補正量のうち、少なくとも2つ以上の補正量を算出する補正量計算部をさらに備え、
前記道路区画線情報判定部は、前記補正量計算部によって算出された2つ以上の補正量に基づき、前記自車位置の推定に用いる道路区画線情報の組み合わせを判定することを特徴とする請求項1に記載の自車位置推定装置。
【請求項6】
前記補正量計算部は、前記第1補正量、前記第2補正量、及び前記第3補正量として、回転処理の際の補正角度及び平行移動処理の際の平行移動量のうち少なくとも1つ以上を計算し、
前記自車位置推定部は、前記第2道路区画線情報取得部によって取得された第2道路区画線情報に含まれる第2点群データに関して、前記回転処理及び前記平行移動処理を行うことにより補正して前記自車位置を推定することを特徴とする請求項5に記載の自車位置推定装置。
【請求項7】
前記第1道路区画線情報取得部は、前記第1道路区画線情報の信頼度の指標となる第1道路区画線情報信頼度をさらに取得し、
前記第2道路区画線情報取得部は、前記第2道路区画線情報の信頼度の指標となる第2道路区画線情報信頼度をさらに取得し、
前記道路区画線情報判定部は、前記第1道路区画線情報信頼度及び前記第2道路区画線情報信頼度の少なくとも1つを用いて、前記自車位置の推定に用いる道路区画線情報の組み合わせを判定することを特徴とする請求項1に記載の自車位置推定装置。
【請求項8】
前記第2道路区画線情報とは、地図情報に基づく道路区画線情報であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の自車位置推定装置。
【請求項9】
道路区画線情報に基づき自車位置を推定する請求項1から7のいずれか1項に記載の自車位置推定装置と、
前記自車位置推定装置から出力される前記自車位置を用いて、前記車両が前記自車位置に基づき目標地点に至る走行経路を生成する走行経路生成装置と、
前記生成された走行経路上での前記車両の車両制御を実行する際に用いる目標軌跡及び目標車速を設定する車両制御装置と、
を備える車両制御システム。
【請求項10】
自車位置推定装置を用いて、左側道路区画線及び右側道路区画線によって規定された道路を走行する車両の自車位置を推定する自車位置推定方法であって、
前記車両に搭載された撮像素子によって検出された前記左側道路区画線を表す第1左側道路区画線情報及び前記右側道路区画線を表す第1右側道路区画線情報からなる第1道路区画線情報を取得するステップと、
前記撮像素子による検出方法とは異なる方法によって取得された前記左側道路区画線を表す第2左側道路区画線情報及び前記右側道路区画線を表す第2右側道路区画線情報からなる第2道路区画線情報を取得するステップと、
前記第1道路区画線情報及び前記第2道路区画線情報に基づき、前記自車位置の推定に用いる道路区画線情報の組み合わせを判定するステップと、
判定された前記道路区画線情報の組み合わせを用いて、前記第2道路区画線情報を補正することにより前記自車位置を推定するステップと、
を備える自車位置推定方法。
【請求項11】
前記第2道路区画線情報とは、地図情報に基づく道路区画線情報であることを特徴とする請求項10に記載の自車位置推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、自車位置推定装置、車両制御システム及び自車位置推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の自動走行の実現を目的として、車両に搭載されたカメラなどのセンサによって取得した道路区画線情報と、高精度地図による道路区画線情報とを用いて、地図上の自車位置を高精度に推定する技術が開発されている。
【0003】
しかしながら、カメラによる道路区画線の認識は、道路上の白線の消失、白線のかすれ、白線省略などにより、道路区画線を自動運転に必要な精度で認識できない場合が生じるといった問題がある。また、カメラのレンズ汚れ、フレア、オクルージョンなどのカメラ側の問題などにより、道路区画線が自動運転に必要な精度で認識できない、あるいは、道路区画線ではない物体などを道路区画線と誤認識するような不具合が発生する場合がある。つまり、上述の自車位置推定技術では、カメラによる道路区画線の誤認識が発生した場合、自車位置の推定を正しく実施できなくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7184951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の車両制御装置及び車両制御方法では、2通りの手段で取得した道路区画線について、2つの道路区画線を比較することにより、どちらか一方の道路区画線情報が誤認識されているか否かを判定する判定部を含んだ車両制御技術が開示されている。
【0006】
特許文献1に記載の車両制御装置及び車両制御方法では、道路区画線の認識結果の誤認識判定を行う方法が開示されている。しかしながら、道路区画線の誤認識が発生した場合に、車両制御処理を継続できる構成及び方法までは考慮されていない。
【0007】
本開示は上記のような課題を解決するためになされたものであり、自車位置推定に用いる道路区画線情報が最適な情報の組み合わせとなるように動的に変更することにより、高精度な自車位置推定が継続的に可能な自車位置推定装置、車両制御システム及び自車位置推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に開示される自車位置推定装置は、
左側道路区画線及び右側道路区画線によって規定された道路を走行する車両の自車位置を推定する自車位置推定装置であって、
前記車両に搭載された撮像素子によって検出された前記左側道路区画線を表す第1左側道路区画線情報及び前記右側道路区画線を表す第1右側道路区画線情報からなる第1道路区画線情報を取得する第1道路区画線情報取得部と、
前記撮像素子による検出方法とは異なる方法によって取得された前記左側道路区画線を表す第2左側道路区画線情報及び前記右側道路区画線を表す第2右側道路区画線情報からなる第2道路区画線情報を取得する第2道路区画線情報取得部と、
前記第1道路区画線情報及び前記第2道路区画線情報に基づき、前記自車位置の推定に用いる道路区画線情報の組み合わせを判定する道路区画線情報判定部と、
前記道路区画線情報判定部が判定した道路区画線情報の組み合わせを用いて、前記第2道路区画線情報を補正することにより前記自車位置を推定する自車位置推定部と、
を備える。
【0009】
本願に開示される車両制御システムは、
上述の道路区画線情報に基づき自車位置を推定する自車位置推定装置と、
前記自車位置推定装置から出力される前記自車位置を用いて、前記車両が前記自車位置に基づき目標地点に至る走行経路を生成する走行経路生成装置と、
前記生成された走行経路上での前記車両の車両制御を実行する際に用いる目標軌跡及び目標車速を設定する車両制御装置と、を備える。
【0010】
本願に開示される自車位置推定方法は、
自車位置推定装置を用いて、左側道路区画線及び右側道路区画線によって規定された道路を走行する車両の自車位置を推定する自車位置推定方法であって、
前記車両に搭載された撮像素子によって検出された前記左側道路区画線を表す第1左側道路区画線情報及び前記右側道路区画線を表す第1右側道路区画線情報からなる第1道路区画線情報を取得するステップと、
前記撮像素子による検出方法とは異なる方法によって取得された前記左側道路区画線を表す第2左側道路区画線情報及び前記右側道路区画線を表す第2右側道路区画線情報からなる第2道路区画線情報を取得するステップと、
前記第1道路区画線情報及び前記第2道路区画線情報に基づき、前記自車位置の推定に用いる道路区画線情報の組み合わせを判定するステップと、
判定された前記道路区画線情報の組み合わせを用いて、前記第2道路区画線情報を補正することにより前記自車位置を推定するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本願に開示される自車位置推定装置、車両制御システム及び自車位置推定方法によれば、自車位置推定に用いる道路区画線情報を最適な情報の組み合わせとなるように動的に変更するため、高精度な自車位置推定が継続的に可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係る自車位置推定装置の構成を表すブロック図である。
図2】実施の形態1に係る自車位置推定装置を搭載した車両の模式図である。
図3】実施の形態1に係る自車位置推定装置を搭載した車両が走行車線を走行している状況を示す模式図である。
図4】実施の形態1に係る自車位置推定装置の構成の一部である第1道路区画線情報取得部の動作を説明するための模式図である。
図5】実施の形態1に係る自車位置推定装置の動作を説明するための模式図である。
図6】実施の形態1に係る自車位置推定装置の動作を説明するための模式図である。
図7】実施の形態1に係る自車位置推定装置の動作を説明するための模式図である。
図8】実施の形態1に係る自車位置推定装置の動作を説明するための模式図である。
図9】実施の形態1に係る自車位置推定装置の動作を説明するための模式図である。
図10】実施の形態1に係る自車位置推定方法を説明するためのフローチャート図である。
図11】実施の形態2に係る自車位置推定装置の構成を表すブロック図である。
図12】実施の形態2に係る自車位置推定装置の動作を説明するための模式図である。
図13】実施の形態2に係る自車位置推定装置の動作を説明するための模式図である。
図14】実施の形態2に係る自車位置推定装置の動作を説明するための模式図である。
図15】実施の形態2に係る自車位置推定装置の動作を説明するための模式図である。
図16】実施の形態2に係る自車位置推定方法を説明するためのフローチャート図である。
図17】実施の形態4に係る車両制御システムの構成を表すブロック図である。
図18】実施の形態1及び2に係る自車位置推定装置並びに実施の形態4に係る車両制御システムを実現するハードウェア構成を示すブロック図である。
図19】実施の形態1及び2に係る自車位置推定装置並びに実施の形態4に係る車両制御システムを実現するハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
<実施の形態1に係る自車位置推定装置の構成>
図1は実施の形態1に係る自車位置推定装置100の構成を表すブロック図である。実施の形態1に係る自車位置推定装置100は、第1道路区画線情報取得部101と、第2道路区画線情報取得部102と、道路区画線情報判定部103と、自車位置推定部104と、を備える。自車位置推定装置100は自車位置推定結果を走行経路生成装置200に出力し、走行経路生成装置200は自車位置推定結果に基づき生成した走行経路を車両制御装置300に出力する。
【0014】
車両10に搭載されたカメラ90は、車両10の前方の道路の状況を撮影した映像を、第1道路区画線情報取得部101に出力する。また、車両10に搭載されたロケータ91は、取得した自車位置情報を第2道路区画線情報取得部102に出力する。
【0015】
図2に示すように、実施の形態1に係る自車位置推定装置100、走行経路生成装置200及び車両制御装置300は車両10に組み込まれている。走行経路生成装置200は自車位置推定装置100から出力された自車位置推定結果を用いて走行経路を生成し、車両制御装置300は、生成された走行経路上における車両10の自動運転制御などに必要となる、例えば目標操舵量及び目標加減速度といった目標制御量を生成し、車両10内に設置されたアクチュエータ530に出力することにより、車両10の車両制御が実行される。
【0016】
第1道路区画線情報取得部101は、車両10の周辺をカメラ90によって撮影し、車両10が走行している車線20の左右の道路区画線の位置情報を取得及び出力する。以下では、カメラ90によって撮影された車両10の進行方向に向かって左側の道路区画線の位置情報を第1左側道路区画線情報と呼び、車両10の進行方向に向かって右側の道路区画線の位置情報を第1右側道路区画線情報と呼ぶ。さらに、第1左側道路区画線情報及び第1右側道路区画線情報を総称して、第1道路区画線情報と呼ぶ。
【0017】
図3は、車両10が車線20を走行している際の車線の状況を示す模式図である。車線には、道路区画線として白線が設けられている場合が一般的である。車線20で、車両10の進行方向に向かって左側には、例えば白線で表される第1左側道路区画線21が設けられている。また、車線20で、車両10の進行方向に向かって右側には、例えば白線で表される第1右側道路区画線22が設けられている。
【0018】
図4は、第1道路区画線情報取得部101の動作を説明するための模式図である。図4中の左側の図は、車両10に搭載されたカメラ90によって撮影された、車線20の映像の模式図である。車両10の左側では、第1左側道路区画線情報の元となる白線が撮影される。また、車両10の右側には、第1右側道路区画線情報の元となる白線が撮影される。
【0019】
第1道路区画線情報取得部101は、上述の車線20の左右に道路区画線として設けられた白線を、第1点群データ25に変換する。第1左側道路区画線21に対応する第1点群データ25を第1左側点群データ25aと呼び、第1右側道路区画線22に対応する第1点群データ25を第1右側点群データ25bと呼ぶ。すなわち、第1左側道路区画線情報は第1左側点群データ25aの各点によって構成され、第1右側道路区画線情報は第1右側点群データ25bの各点によって構成される。図4中の右側の図は、白線を第1点群データ25に変換後した後の状態を示している。なお、点群データとは、道路区画線が存在する位置を車両10の前後方向に一定間隔の距離で示した点の集合を意味する。
【0020】
第2道路区画線情報取得部102は、地図情報を保持し、ロケータ91が取得した自車位置情報及びこの地図情報に基づき、車両10が走行している車線20の左右の道路区画線の位置情報を取得及び出力する。以下では、自車位置情報及び地図情報に基づく車両10の進行方向に向かって左側の道路区画線の位置情報を第2左側道路区画線情報と呼び、車両10の進行方向に向かって右側の道路区画線の位置情報を第2右側道路区画線情報と呼ぶ。さらに、第2左側道路区画線情報と第2右側道路区画線情報を総称して、第2道路区画線情報と呼ぶ。図5は地図上の車線20の状況を表す模式図であり、車線20の左側には、地図情報に基づく第2左側道路区画線23が表示され、車線20の右側には、地図情報に基づく第2右側道路区画線24が表示される。
【0021】
第2道路区画線情報取得部102は、ロケータ91が取得した自車位置情報及び地図情報に基づき、上述の車線20の左右の道路区画線を第2点群データ26に変換する。第2左側道路区画線23に対応する第2点群データ26を第2左側点群データ26aと呼び、第2右側道路区画線24に対応する第2点群データ26を、第2右側点群データ26bと呼ぶ。すなわち、第2左側道路区画線情報は第2左側点群データ26aの各点によって構成され、第2右側道路区画線情報は第2右側点群データ26bの各点によって構成される。地図情報に基づく道路区画線を第2点群データ26に変換後した後の状態を図6に示す。
【0022】
ここで、点群データについて図7を用いて説明する。図7は、道路区画線情報から抽出された点群データを説明するための模式図である。例えば、道路区画線情報が白線に基づく情報である場合、車両10の進行方向に向かって左側の道路区画線は第1左側道路区画線情報である第1左側点群データ25aの各点で表される。図7では、第1左側点群データ25aは合計6個の点からなる点群データで構成されている。つまり、車両10の進行方向に向かって左側の白線は、白線から抽出された6個の点からなる点群データである第1左側点群データ25aで表される。すなわち、第1左側点群データ25aは、車両10が走行中に取得した第1左側道路区画線情報となる。なお、図7に示す一例では、第1左側点群データ25aの個々の点の間の間隔は10mに設定されている。ただし、点群データの間隔は10mに限定されるわけではなく、道路の状況、車両10の車両速度などに対応して、適宜、設定すれば良い。
【0023】
第1道路区画線情報及び第2道路区画線情報では、車両10の前後方向におけるそれぞれの点群データの各点間の間隔はほぼ一致している。一方、第1道路区画線情報及び第2道路区画線情報において、点群データで表現できる範囲は必ずしも両者の間で一致しない。例えば、第1道路区画線情報は車両10の前方100mから後方50mの範囲内に設定する一方、第2道路区画線情報は車両10の前方300mから後方100mの範囲内に設定しても良い。なお、かかる設定方法は一例に過ぎず、道路の状況、車両10の車両速度などに対応して、適宜、設定すれば良い。
【0024】
道路区画線情報判定部103は、例えば車線20の左側に設けられている白線から抽出した第1左側点群データ25aからなる第1左側道路区画線情報及び車線20の右側に設けられている白線から抽出した第1右側点群データ25bからなる第1右側道路区画線情報、つまり、第1点群データ25からなる第1道路区画線情報と、ロケータ91が取得した自車位置情報及び地図情報から取得された車線の左側道路区画線を表す第2左側点群データ26aからなる第2左側道路区画線情報及び車線20の右側道路区画線を表す第2右側点群データ26bからなる第2右側道路区画線情報、つまり、第2点群データ26からなる第2道路区画線情報に基づき、左側道路区画線を用いた自車位置推定と、右側道路区画線を用いた自車位置推定と、左側道路区画線及び右側道路区画線を用いた自車位置推定の中で、最適な自車位置推定結果が得られる道路区画線情報を選択する。道路区画線情報判定部103は、選択された道路区画線情報を、最良道路区画線情報として出力する。
【0025】
一方、左側道路区画線情報及び右側道路区画線情報のいずれの道路区画線情報も、自車位置推定に使用不可である場合は、道路区画線情報判定部103は、自車位置推定は不可と判定し、最良道路区画線情報として「無効」を出力する。
【0026】
自車位置推定部104は、道路区画線情報判定部103が出力した最良道路区画線情報が有効である場合は、最良道路区画線情報にしたがって、第1道路区画線情報及び第2道路区画線情報の中から、左側及び右側の少なくとも一方の側の道路区画線情報を用いて、第2道路区画線情報の位置を適切に補正することにより、自車位置を推定する。
以上が、実施の形態1に係る自車位置推定装置100の構成の概要である。
【0027】
次に、自車位置推定装置100に接続されるカメラ90及びロケータ91について、以下に説明する。
カメラ90は、車両10の前方で、例えば白線のような道路区画線が映像として検出できる位置に設置される。カメラ90は、撮影した映像を第1道路区画線情報取得部101に出力する。なお、カメラ90は撮像素子の一例に過ぎず、道路区画線が映像として検出できる撮像素子であれば良く、カメラ90に限定されるわけではない。
【0028】
ロケータ91は、車両10の位置情報を取得するための装置であり、例えばGPS(Global Positioning System)受信機などで構成される。あるいは、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機を用いて自車位置を測位しても良い。さらに、車両10に搭載される各種センサを利用する慣性航法装置などの装置によって自車位置を検出しても良い。ロケータ91は、取得した自車位置情報を、第2道路区画線情報取得部102に出力する。
【0029】
図1に示されるように、自車位置推定装置100は、車両10の自車位置を推定して、自車位置推定結果として走行経路生成装置200に出力する。走行経路生成装置200は、自車位置推定結果に基づき走行経路を生成し、車両制御装置300に出力する。車両制御装置300は、生成された走行経路に基づき、車両10の例えば自動運転といった車両制御を最適に制御する。
【0030】
実施の形態1に係る自車位置推定装置100の構成において特徴的である道路区画線情報判定部103及び自車位置推定部104の各動作について、以下にさらに詳しく説明する。
【0031】
<道路区画線情報判定部103の動作>
道路区画線情報判定部103では、以下の処理を実施する。
(1)左側道路区画線に関して、第1左側道路区画線情報と第2左側道路区画線情報との乖離度を表す左側乖離度LDvを計算する。以下に、乖離度の計算方法を示す。
(2)第1左側道路区画線情報である第1左側点群データ25aと第2左側道路区画線情報である第2左側点群データ26aに関して、車両10の前後方向の点群データの各点の点間距離が同一である点どうしで、車両10の左右方向のずれ量Δdを計算する処理を、第1左側道路区画線情報と第2左側道路区画線情報の双方で表現されている距離の範囲内に含まれる全ての点群データに対して実施する。
(3)第1左側道路区画線情報における車両10の前後方向の距離0mの点と、第2左側道路区画線情報における車両10の前後方向の距離0mの点の間で、車両10の左右方向のずれ量Δdを計算する。つまり、車両10の前後方向の距離0mにおけるずれ量Δdが計算される。同様に、前後方向の距離10m、20mと、双方の同一距離の範囲内の各点に対して、左右方向のずれ量Δdを順次計算する。
(4)車両10の左右方向のずれ量Δdの絶対値の総和Δdsumを、左側道路区画線情報の左側乖離度LDvとする。
【0032】
上述のように左側乖離度LDvを算出することにより、第1左側道路区画線情報と第2左側道路区画線情報によってそれぞれ表現される左側道路区画線情報に関して、両者の間でどの程度乖離しているかを定量化することができる。なお以下の説明では、左右方向のずれ量を単にずれ量と呼ぶ。
【0033】
図8に、上述の左側乖離度LDvの算出方法の一例を示す。図8中の左側の図には、白線で表された第1左側道路区画線をカメラ90で撮影することによって取得された映像から抽出された4点からなる第1左側点群データ25aで表される第1左側道路区画線情報が示されている。図8中の中央の図には、ロケータ91が取得した自車位置情報及び地図情報に基づく第2左側道路区画線から抽出された6点からなる第2左側点群データ26aで表される第2左側道路区画線情報が示されている。
【0034】
図8中の右側の図に示すように、第1左側道路区画線情報である第1左側点群データ25aと、第2左側道路区画線情報である第2左側点群データ26aの間で、車両10の前後方向の距離が一致する点どうしを同一面上にプロットして、両者の間の距離、すなわちずれ量Δdを各点ごとに算出している。
【0035】
図8に示す一例では、車両10の前後方向の距離Lが-10mの場合は、ずれ量Δdは-30cm、距離Lが0mの場合は、ずれ量Δdは+5cm、距離Lが10mの場合は、ずれ量Δdは+50cm、距離Lが20mの場合は、ずれ量Δdは+100cmと、それぞれの位置でのずれ量Δdが算出される。
【0036】
ずれ量Δdの絶対値の総和Δdsumは、全ての点におけるずれ量Δdの絶対値の総和となる。ちなみに、図8に示す一例の場合は、ずれ量Δdの絶対値の総和Δdsumは、185cmとなる。なお、左側乖離度LDvは、Δdsumで表される。
【0037】
左側乖離度LDvの定量化には、ずれ量Δdの絶対値の総和Δdsum以外の方法を用いてもよい。左側乖離度LDvとして、点群データの各点におけるずれ量Δdの絶対値の最大値を用いても良いし、あるいは、ずれ量Δdの平均二乗誤差を算出して左側乖離度LDvとしても良い。
【0038】
上述の左側乖離度LDvの計算方法以外にも、例えば、ずれ量Δdを計算する前に、第1道路区画線情報と第2道路区画線情報の両方で表現されている車両10の前後方向の距離の範囲内に含まれる全ての点に対して、第1道路区画線情報である第1点群データ25と第2道路区画線情報である第2点群データ26の両方の重心位置が一致するように、第2点群データ26を平行移動しても良い。かかる平行移動処理の適用により、道路区画線情報の左右方向のずれ量を重視した左側乖離度LDvを計算することが可能となる。
【0039】
図9に、点群データの重心位置を考慮した乖離度の算出の一例を示す。図9中の左側の図には、白線で表された第1左側道路区画線をカメラ90で撮影することによって取得された映像から抽出された4点からなる第1左側点群データ25aで表される第1左側道路区画線情報及び4点からなる第1左側点群データ25aの重心位置30aが示されている。図9中の中央の図には、地図情報に基づく第2左側道路区画線から抽出された6点からなる第2左側点群データ26aで表される第2左側道路区画線情報及び6点からなる第2左側点群データ26aの重心位置31aが示されている。
【0040】
図9中の右側の図に示すように、第1左側道路区画線情報である第1左側点群データ25aの重心位置30aと、第2左側道路区画線情報である第2左側点群データ26aの重心位置31aが互いに一致するように、第2左側点群データ26aを平行移動し、さらに、車両10の前後方向の距離が一致する点どうしを同一面上にプロットして、両者の間の距離、すなわちずれ量Δdを各点ごとに算出している。
【0041】
図9に示す一例では、車両10の前後方向の距離Lが-10mの場合は、ずれ量Δdは-50cm、距離Lが0mの場合は、ずれ量Δdは-25cm、距離Lが10mの場合は、ずれ量Δdは+25cm、距離Lが20mの場合は、ずれ量Δdは+50cmと、それぞれの位置でのずれ量Δdが算出される。
【0042】
図9に示す一例では、ずれ量Δdの絶対値の総和Δdsumは、150cmとなる。つまり、左側乖離度LDvは、150cmとなる。
【0043】
右側道路区画線情報に関しても、左側道路区画線情報の場合と同様な方法を用いて、右側乖離度RDvを計算する。
【0044】
道路区画線情報判定部103は、第1左側道路区画線に対する第2左側道路区画線情報の誤認識の有無を判定する。具体的には、左側乖離度LDvが予め設定された閾値Dth以上であれば、道路区画線情報判定部103は、第2左側道路区画線情報には誤認識があると判定する。一方、左側乖離度LDvが予め設定された閾値Dth未満であれば、道路区画線情報判定部103は、第2左側道路区画線情報には誤認識が無いと判定する。
【0045】
道路区画線情報判定部103は、さらに、第1右側道路区画線に対する第2右側道路区画線情報の誤認識の有無を判定する。具体的には、右側乖離度RDvが予め設定された閾値Dth以上であれば、道路区画線情報判定部103は、第2右側道路区画線情報には誤認識があると判定する。一方、右側乖離度RDvが予め設定された閾値Dth未満であれば、道路区画線情報判定部103は、第2右側道路区画線情報には誤認識が無いと判定する。
【0046】
道路区画線情報判定部103は、上述の判定結果に基づき、以下のように出力する。
(1)第2左側道路区画線情報及び第2右側道路区画線情報の両方に誤認識が無い場合
道路区画線情報判定部103は、最良道路区画線情報として、第2左側道路区画線情報及び第2右側道路区画線情報の両方を出力する。
(2)第2左側道路区画線情報に誤認識が無く、第2右側道路区画線情報に誤認識が有る場合
道路区画線情報判定部103は、最良道路区画線情報として、第2左側道路区画線情報のみを出力する。
(3)第2左側道路区画線情報に誤認識が有り、第2右側道路区画線情報に誤認識が無い場合
道路区画線情報判定部103は、最良道路区画線情報として、第2右側道路区画線情報のみを出力する。
(4)第2左側道路区画線情報及び第2右側道路区画線情報の両方に誤認識が有る場合
道路区画線情報判定部103は、最良道路区画線情報として、「無効」を出力する。
以上が、道路区画線情報判定部103の動作の概要である。
【0047】
<自車位置推定部104の動作>
自車位置推定部104は、第2道路区画線情報のうち、車両10の近傍の数個の点を対象として、第2道路区画線情報の点が第1道路区画線情報の点の位置と可能な限り合致するような、第2道路区画線情報の各点の回転角及び平行移動量を算出する。自車位置推定部104は、算出された回転角及び平行移動量を用いて、第2道路区画線全体を回転処理及び平行移動処理することにより、自車位置を推定する。なお、算出された回転角とは、補正量の一つである補正角度を意味する。
【0048】
自車位置推定部104は、道路区画線情報判定部103における判定結果として出力される最良道路区画線情報に基づき、下記のように処理する。
(1)最良道路区画線情報が「第2左側道路区画線情報及び第2右側道路区画線情報の両方」である場合
自車位置推定部104は、第2左側道路区画線情報及び第2右側道路区画線情報の両方に基づき、回転角及び平行移動量、つまり補正量を算出する。
(2)最良道路区画線情報が「第2左側道路区画線情報のみ」である場合
自車位置推定部104は、第2左側道路区画線情報のみに基づき、回転角及び平行移動量、つまり補正量を算出する。
(3)最良道路区画線情報が「第2右側道路区画線情報のみ」である場合
自車位置推定部104は、第2右側道路区画線情報のみに基づき、回転角及び平行移動量、つまり補正量を算出する。
(4)最良道路区画線情報が「無効」である場合
自車位置推定部104は、自車位置の推定結果を出力しない。
【0049】
最良道路区画線情報が「第2左側道路区画線情報及び第2右側道路区画線情報の両方」である場合は、いずれかのみである場合と比較して、2倍の個数の点を用いて回転角及び平行移動量を算出することとなる。
【0050】
上述のように処理する理由は、以下のとおりである。
地図情報に基づく第2道路区画線情報は、地図情報の正確性から道路区画線の形状は正確であるものの、ロケータ91が取得する自車位置情報に測定誤差が含まれているため、自車位置情報に基づく地図情報は、車両10に対する道路区画線の位置が不正確となるという性質がある。一方、カメラ90が撮影した映像に基づく第1道路区画線情報は、車両10の近傍の点については車両10に対する位置は正確であるものの、車両10から遠方の点については測定誤差が大きくなるという性質がある。よって、上述のように第1道路区画線情報及び第2道路区画線情報を処理することによって、両者のデメリットが打ち消され、かつ両者のメリットが相乗的に活用されるので、より正確な道路区画線情報が得られるからである。
【0051】
<実施の形態1に係る自車位置推定方法>
実施の形態1に係る自車位置推定装置100を用いた自車位置推定方法について、図10のフローチャートを参照しながら、以下に説明する。なお、最後のステップであるステップS112は、自車位置推定装置100の出力に基づく走行経路生成装置200及び車両制御装置300の動作に対応している。
【0052】
まず、ステップS101において、第1道路区画線情報取得部101は、車両10の周辺をカメラ90によって撮影し、車両10が走行している車線20の左右の道路区画線の位置情報である第1左側道路区画線情報及び第1右側道路区画線情報からなる第1道路区画線情報を出力して、ステップS102の処理に進む。
【0053】
ステップS102において、第2道路区画線情報取得部102は、ロケータ91が取得した自車位置情報及び地図情報に基づき、車両10が走行している車線20の左右の道路区画線の位置情報である第2左側道路区画線情報及び第2右側道路区画線情報からなる第2道路区画線情報を出力して、ステップS103の処理に進む。
【0054】
ステップS103において、道路区画線情報判定部103は、左側道路区画線について、第1左側道路区画線情報と第2左側道路区画線情報との乖離度(左側乖離度LDv)を計算して、ステップS104の処理に進む。
【0055】
ステップS104において、道路区画線情報判定部103は、右側道路区画線について、第1右側道路区画線情報と第2右側道路区画線情報との乖離度(右側乖離度RDv)を計算して、ステップS105の処理に進む。
【0056】
ステップS105において、道路区画線情報判定部103は、左側道路区画線情報の乖離度(左側乖離度LDv)が閾値Dth以上であるか否かを判定する。乖離度が閾値Dth以上の場合は、ステップS106の処理に進み、乖離度が閾値Dth未満の場合はステップS110の処理に進む。
【0057】
ステップS106において、道路区画線情報判定部103は、右側道路区画線情報の乖離度(右側乖離度RDv)が閾値Dth以上であるか否かを判定する。乖離度が閾値Dth以上の場合は、第2左側道路区画線情報及び第2右側道路区画線情報の両方に誤認識が有る場合に該当するので、道路区画線情報判定部103は、最良道路区画線情報として「無効」を出力して、ステップS107の処理に進む。一方、乖離度が閾値Dth未満の場合は、第2左側道路区画線情報に誤認識が有る一方、第2右側道路区画線情報に誤認識が無い場合に該当するので、道路区画線情報判定部103は、最良道路区画線情報として第2右側道路区画線情報のみを出力して、ステップS108の処理に進む。
【0058】
ステップS107において、道路区画線情報判定部103から最良道路区画線情報として「無効」が出力された結果に基づき、自車位置推定部104は、自車位置の推定は不可であるとして、自車位置の推定結果を出力しない。
【0059】
ステップS106で右側道路区画線情報の乖離度(右側乖離度RDv)が閾値Dth未満であると判定された場合は、ステップS108において、自車位置推定部104は、最良道路区画線情報である第2右側道路区画線情報のみを使用して自車位置を推定して、ステップS112の処理に進む。
【0060】
次に、ステップS105において、乖離度が閾値Dth未満である場合の処理を説明する。
ステップS110において、道路区画線情報判定部103は、右側道路区画線情報の乖離度(右側乖離度RDv)が閾値Dth以上であるか否かを判定する。乖離度が閾値Dth以上の場合は、第2左側道路区画線情報に誤認識が無い一方、第2右側道路区画線情報に誤認識が有る場合に該当するので、道路区画線情報判定部103は、最良道路区画線情報として第2左側道路区画線情報のみを出力して、ステップS109の処理に進む。一方、乖離度が閾値Dth未満の場合は、第2左側道路区画線情報及び第2右側道路区画線情報の両方に誤認識が無い場合に該当するので、道路区画線情報判定部103は、最良道路区画線情報として、第2左側道路区画線情報及び第2右側道路区画線情報の両方を出力して、ステップS111の処理に進む。
【0061】
ステップS110で右側道路区画線情報の乖離度(右側乖離度RDv)が閾値Dth以上であると判定された場合は、ステップS109において、自車位置推定部104は、最良道路区画線情報である第2左側道路区画線情報のみを使用して自車位置を推定して、ステップS112の処理に進む。
【0062】
ステップS110で右側道路区画線情報の乖離度(右側乖離度RDv)が閾値Dth未満であると判定された場合は、ステップS111において、自車位置推定部104は、最良道路区画線情報である第2左側道路区画線情報及び第2右側道路区画線情報の両方を使用して自車位置を推定して、ステップS112の処理に進む。
【0063】
最後に、走行経路生成装置200及び車両制御装置300は、ステップS112において、ステップS108、ステップS109、及びステップS111のいずれかのステップにおいて自車位置推定部104から出力された自車位置推定結果である最良道路区画線情報に対応した車両制御を実施する。
以上が、実施の形態1に係る自車位置推定装置100を用いた自車位置推定方法の概要である。
【0064】
第1道路区画線情報において誤認識が発生する場合は第2道路区画線情報と大きく乖離するため、上述のように処理することによって、例えばカメラ90から取得された第1道路区画線情報と、ロケータ91から取得された自車位置情報及び地図情報に基づく第2道路区画線情報との間で認識結果が大きく乖離するような道路区画線情報を自車位置推定に使用しないように道路区画線情報を選択することが可能となる。この結果、道路区画線情報の認識状況が動的に変化するような場合であっても、高精度な自車位置推定を継続することができる。
【0065】
すなわち、実施の形態1に係る自車位置推定装置では、誤認識の発生状態に応じて自車位置推定に用いる道路区画線情報を動的に変更することで、少なくとも1つの道路区画線情報が正常に認識できている限り、高精度な自車位置推定が継続的に可能となる。
【0066】
実施の形態1に係る自車位置推定装置100を用いれば、走行車線において特に分合流が発生するような箇所で、車両を分流路または合流路へと誘導する際の目印となる白線が省略されている状態であったとしても、または白線がかすれているような状態であったとしても、分合流路において自車位置推定を継続できる可能性が高まる。
【0067】
<実施の形態1の効果>
実施の形態1に係る自車位置推定装置及び自車位置推定方法によると、第1左側道路区画線情報と第2左側道路区画線情報の間の乖離度、及び第1右側道路区画線情報と第2右側道路区画線情報の間の乖離度をそれぞれ計算し、乖離度が閾値未満の場合のみ第2道路区画線情報を自車位置推定に用いるので、高精度な自車位置推定が継続的に可能な自車位置推定装置及び自車位置推定方法が得られるという効果を奏する。
【0068】
実施の形態2.
<実施の形態2に係る自車位置推定装置の構成>
図11は、実施の形態2に係る自車位置推定装置150の構成を表すブロック図である。実施の形態2に係る自車位置推定装置150は、実施の形態1に係る自車位置推定装置100の構成に加えて、さらに補正量計算部110が設けられている。自車位置推定装置150は自車位置推定結果を走行経路生成装置200に出力し、走行経路生成装置200は生成された走行経路を車両制御装置300に出力する。以下、実施の形態1に係る自車位置推定装置100の構成とは異なる補正量計算部110についてのみ説明する。
【0069】
補正量計算部110は、例えば車両10の周辺をカメラ90によって撮影した映像に基づく第1道路区画線情報及びロケータ91から取得された自車位置情報及び地図情報に基づく第2道路区画線情報に関して、以下の自車位置推定処理における3種類の補正量の計算を実施し、道路区画線情報判定部103に出力する。
(1)左右両側の道路区画線情報を用いる自車位置推定のための第1補正量
(2)左側道路区画線情報のみを用いる自車位置推定のための第2補正量
(3)右側道路区画線情報のみを用いる自車位置推定のための第3補正量
以上の3種類の補正量に関して、(1)の場合については図12を用いて説明し、(2)の場合については図13を用いて説明し、(3)の場合については図14を用いて説明する。
【0070】
<(1)左右両側の道路区画線情報を用いる自車位置推定のための第1補正量>
図12は、左右両側の道路区画線情報を用いる自車位置推定のための第1補正量を説明する模式図である。
【0071】
図12中の左側の図及び中央の図に示されるように、第1左側道路区画線情報である第1左側点群データ25aと第2左側道路区画線情報である第2左側点群データ26aに関して、車両10の前後方向の点群データの各点の距離が同一である点どうしで、ずれ量Δdを計算する処理を、第1左側道路区画線情報と第2左側道路区画線情報の双方で表現されている距離の範囲内に含まれる全ての点群データに対して実施する。具体的には、双方の同一距離の範囲内の各点に対して、ずれ量Δdを順次計算する。そして、ずれ量Δdの絶対値の総和Δdsum、つまり、左側道路区画線情報の左側乖離度LDvが得られる。
【0072】
第1右側道路区画線情報である第1右側点群データ25bと第2右側道路区画線情報である第2右側点群データ26bに関しても、左側道路区画線情報と同様の処理を実施する。この結果、右側道路区画線情報の右側乖離度RDvが得られる。
【0073】
左側乖離度LDv及び右側乖離度RDvの両方を用いて、第1補正量を算出する。補正量は、具体的には回転角で表される。第1補正量である回転角を適用して、第2道路区画線情報である第2左側点群データ26a及び第2右側点群データ26bを変換して、第1補正量を適用後の第2左側補正点群データ27a及び第2右側補正点群データ27bとする。図12中の右側の図に、一例として第1補正量を回転角7°とした場合における第2左側補正点群データ27a及び第2右側補正点群データ27bを示している。
【0074】
<(2)左側道路区画線情報のみを用いる自車位置推定のための第2補正量>
図13は、左側道路区画線情報のみを用いる自車位置推定のための第2補正量を説明する模式図である。
【0075】
図13中の左側の図及び中央の図に示されるように、第1左側道路区画線情報である第1左側点群データ25aと第2左側道路区画線情報である第2左側点群データ26aに関して、車両10の前後方向の点群データの各点の距離が同一である点どうしで、ずれ量Δdを計算する処理を、第1左側道路区画線情報と第2左側道路区画線情報の双方で表現されている距離の範囲内に含まれる全ての点群データに対して実施する。具体的には、双方の同一距離の範囲内の各点に対して、ずれ量Δdを順次計算する。そして、ずれ量Δdの絶対値の総和Δdsum、つまり、左側道路区画線情報の左側乖離度LDvが得られる。
【0076】
左側乖離度LDvを用いて、第2補正量を算出する。第2補正量である回転角を適用して、第2道路区画線情報である第2左側点群データ26aを変換して、第2補正量を適用後の第2左側補正点群データ27aとする。図13中の右側の図に、一例として第2補正量を回転角-15°とした場合における第2左側補正点群データ27aを示している。
【0077】
<(3)右側道路区画線情報のみを用いる自車位置推定のための第3補正量>
図14は、右側道路区画線情報のみを用いる自車位置推定のための第3補正量を説明する模式図である。
【0078】
図14中の左側の図及び中央の図に示されるように、第1右側道路区画線情報である第1右側点群データ25bと第2右側道路区画線情報である第2右側点群データ26bに関して、車両10の前後方向の点群データの各点の距離が同一である点どうしで、ずれ量Δdを計算する処理を、第1右側道路区画線情報と、第2右側道路区画線情報の双方で表現されている距離の範囲内に含まれる全ての点群データに対して実施する。具体的には、双方の同一距離の範囲内の各点に対して、ずれ量Δdを順次計算する。そして、ずれ量Δdの絶対値の総和Δdsum、つまり、右側道路区画線情報の右側乖離度RDvが得られる。
【0079】
右側乖離度RDvを用いて、第3補正量を算出する。第3補正量である回転角を適用して、第2道路区画線情報である第2右側点群データ26bを変換して、第3補正量を適用後の第2右側補正点群データ27bとする。図12中の右側の図に、一例として第3補正量を回転角0.5°とした場合における第2右側補正点群データ27bを示している。
【0080】
以上の各処理を実行することにより、3種類の補正量、すなわち、左側道路区画線情報及び右側道路区画線情報の両方を用いた第1補正量と、左側道路区画線情報のみを用いた第2補正量と、右側道路区画線情報のみを用いた第3補正量がそれぞれ得られる。上述の事例では各補正量の中で最小の回転角である第3補正量がずれ量が最も小さいと評価できる。すなわち、第2右側道路区画線情報が、最良道路区画線情報として出力される。上述の一連の流れを、図15に示す。
要するに、補正量計算部110は、第1補正量、第2補正量、及び第3補正量として、回転処理の際の補正角度及び平行移動処理の際の平行移動量のうち少なくとも1つ以上を計算する。
【0081】
<実施の形態2に係る自車位置推定方法>
実施の形態2に係る自車位置推定装置150を用いた自車位置推定方法について、図16のフローチャートを参照しながら、以下に説明する。なお、最後のステップであるステップS210は、自車位置推定装置150の出力に基づく走行経路生成装置200及び車両制御装置300の動作に対応している。
【0082】
まず、ステップS201において、第1道路区画線情報取得部101は、車両10の周辺をカメラ90によって撮影し、車両10が走行している車線20の左右の道路区画線の位置情報である第1左側道路区画線情報及び第1右側道路区画線情報からなる第1道路区画線情報を出力して、ステップS202の処理に進む。
【0083】
ステップS202において、第2道路区画線情報取得部102は、ロケータ91が取得した自車位置情報及び地図情報に基づき、車両10が走行している車線20の左右の道路区画線の位置情報である第2左側道路区画線情報及び第2右側道路区画線情報からなる第2道路区画線情報を出力して、ステップS203の処理に進む。
【0084】
ステップS203において、補正量計算部110は左右両側の道路区画線情報を用いて自車位置推定処理を実施した場合の第1補正量を計算して、ステップS204の処理に進む。
【0085】
ステップS204において、補正量計算部110は左側道路区画線情報のみを用いて自車位置推定処理を実施した場合の第2補正量を計算して、ステップS205の処理に進む。
【0086】
ステップS205において、補正量計算部110は右側道路区画線情報のみを用いて自車位置推定処理を実施した場合の第3補正量を計算して、ステップS206の処理に進む。
【0087】
ステップS206において、道路区画線情報判定部103は、補正量計算部110が計算した3種類の補正量の中の最小値である最小補正量が閾値(閾値補正量DAth)以上か否かを判定する。最小補正量が閾値補正量DAth以上の場合は、ステップS211の処理に進み、最小補正量が閾値補正量DAth未満の場合はステップS207の処理に進む。
【0088】
ステップS207において、道路区画線情報判定部103は、補正量計算部110が計算した3種類の補正量の中で、左右両側の道路区画線情報を用いた第1補正量が最小か否かを判定する。第1補正量が最小である場合は、ステップS213の処理に進み、第1補正量が最小ではない場合は、ステップS208の処理に進む。
【0089】
ステップS208において、道路区画線情報判定部103は、補正量計算部110が計算した3種類の補正量の中で、右側道路区画線情報を用いた第3補正量が最小か否かを判定する。第3補正量が最小である場合は、ステップS212の処理に進み、第3補正量が最小ではない場合はステップS209の処理に進む。
【0090】
ステップS211において、道路区画線情報判定部103から最良道路区画線情報として「無効」が出力された結果に基づき、自車位置推定部104は、自車位置の推定は不可であるとして、自車位置の推定結果を出力しない。ステップS206において、道路区画線情報判定部103は、補正量計算部110が計算した3種類の補正量の中の最小値である最小補正量が閾値補正量DAth以上の場合は、道路区画線情報判定部103は最良道路区画線情報として「無効」を出力するからである。
【0091】
ステップS207で左右両側の道路区画線情報を用いた第1補正量が最小であると判定された場合は、ステップS213において、自車位置推定部104は、最良道路区画線情報である第1左側道路区画線情報及び第2右側道路区画線情報の両方を使用して自車位置を推定して、ステップS210の処理に進む。
【0092】
ステップS208で右側道路区画線情報を用いた第3補正量が最小ではないと判定された場合は、ステップS209において、自車位置推定部104は、最良道路区画線情報である第2左側道路区画線情報のみを使用して自車位置を推定して、ステップS210の処理に進む。
【0093】
ステップS208で右側道路区画線情報を用いた第3補正量が最小であると判定された場合は、ステップS212において、自車位置推定部104は、最良道路区画線情報である第2右側道路区画線情報のみを使用して自車位置を推定して、ステップS210の処理に進む。
【0094】
最後に、走行経路生成装置200及び車両制御装置300は、ステップS210において、ステップS209、ステップS212、及びステップS213のいずれかのステップにおいて自車位置推定部104から出力された自車位置推定結果である最良道路区画線情報に対応した車両制御を実施する。
以上が、実施の形態2に係る自車位置推定装置150を用いた自車位置推定方法の概要である。
【0095】
なお、補正量計算部110を設けずに、自車位置推定部104に上述の補正量の計算及び出力機能を持たせて、補正量の計算を自車位置推定部104で実施しても良い。
【0096】
第1道路区画線情報において誤認識が生じる場合、第1道路区画線情報は地図情報に基づく第2道路区画線情報と大きく乖離する、つまり乖離度が大きくなる。したがって、誤認識が生じている道路区画線情報を用いた場合には、補正量が増大する。そこで、上述のように処理することによって、補正量が増大する、すなわち誤認識を生じている道路区画線情報を自車位置推定に使用しないように道路区画線情報を選択することができるので、道路区画線情報の認識状況が動的に変化する場合でも、高精度な自車位置推定処理を継続することが可能となる。
【0097】
<実施の形態2の効果>
実施の形態2に係る自車位置推定装置及び自車位置推定方法によると、3種類の補正量を計算し、補正量が最小となる道路区画線情報の組み合わせを選択して自車位置推定に用いるため、高精度な自車位置推定が継続的に可能な自車位置推定装置及び自車位置推定方法が得られるという効果を奏する。
【0098】
実施の形態3.
実施の形態3に係る自車位置推定装置及び自車位置推定方法では、第1道路区画線情報取得部101は、カメラ90によって撮影された車線の映像に基づき、第1道路区画線情報の信頼度の指標となる第1道路区画線情報信頼度を取得する。また、第2道路区画線情報取得部102は、ロケータ91によって取得された自車位置情報及び地図情報に基づき、第2道路区画線情報の信頼度の指標となる第2道路区画線情報信頼度を取得する。
【0099】
第1道路区画線情報信頼度とは、第1左側道路区画線の位置情報である第1左側道路区画線情報及び第1右側道路区画線の位置情報である第1右側道路区画線情報における情報としての信頼度を指す。同様に、第2道路区画線情報信頼度とは、第2左側道路区画線の位置情報である第2左側道路区画線情報及び第2右側道路区画線の位置情報である第2右側道路区画線情報における情報としての信頼度を指す。
【0100】
道路区画線情報判定部103は、第1道路区画線情報信頼度及び第2道路区画線情報信頼度を用いて、第1左側道路区画線情報及び第1左側道路区画線情報信頼度並びに第1右側道路区画線情報及び第1右側道路区画線情報信頼度と、第2左側道路区画線情報及び第2左側道路区画線情報信頼度並びに第2右側道路区画線情報及び第2右側道路区画線情報信頼度に基づき、左側道路区画線を用いた自車位置推定と、右側道路区画線を用いた自車位置推定と、左側道路区画線及び右側道路区画線を用いた自車位置推定の中で、最適な自車位置推定結果が得られる道路区画線情報の組み合わせを選択する。選択の結果、得られた道路区画線情報を、最良道路区画線情報として出力する。
【0101】
例えば、第1左側道路区画線である白線がかすれているような場合は、第1左側道路区画線情報信頼度は低くなるため、自車位置推定の際、左側道路区画線を用いた自車位置推定は最適ではない。つまり、最良道路区画線情報ではないと判定される。
【0102】
なお、第1道路区画線情報信頼度及び第2道路区画線情報信頼度が両方とも低く、自車位置推定に使用不可である場合は、道路区画線情報判定部103は、自車位置推定は不可と判定し、最良道路区画線情報として「無効」を出力する。
【0103】
自車位置推定部104は、道路区画線情報判定部103が出力した最良道路区画線情報が有効である場合は、最良道路区画線情報にしたがって、第1道路区画線情報及び第2道路区画線情報の中から、左側及び右側の少なくとも一方の側の道路区画線情報を用いて、第2道路区画線情報の位置を適切に補正することにより、自車位置を推定する。
【0104】
<実施の形態3の効果>
実施の形態3に係る自車位置推定装置及び自車位置推定方法によると、第1道路区画線情報信頼度及び第2道路区画線情報信頼度に基づき最良道路区画線情報を取得するため、高精度な自車位置推定が継続的に可能な自車位置推定装置及び自車位置推定方法が得られるという効果を奏する。
【0105】
実施の形態4.
<実施の形態4に係る車両制御システムの構成>
図17は、実施の形態4に係る車両制御システム500の構成を示すブロック図である。車両制御システム500は、実施の形態1に係る自車位置推定装置100、走行経路生成装置200及び車両制御装置300を備える。
【0106】
自車位置推定装置100は、車両10の自車位置推定結果を走行経路生成装置200に出力する。なお、実施の形態1に係る自車位置推定装置100の代りに、実施の形態2に係る自車位置推定装置150を使用しても良い。
【0107】
走行経路生成装置200は、自車位置推定装置100から出力された車両10の自車位置推定結果を用いて、車両10が目標地点に至る走行経路を生成する。なお、走行経路の生成は、公知の方法が適用可能である。
【0108】
車両制御装置300は、走行経路生成装置200によって生成された走行経路上を車両10が走行するために必要な目標制御量である目標軌跡及び目標車速を設定し、さらに、目標軌跡及び目標車速に追従するために必要な目標操舵量及び目標加減速度を演算する。なお、目標操舵量及び目標加減速度の演算は、公知の演算方法が適用可能である。
以上が、車両制御システム500の構成の説明である。
【0109】
以下、車両制御システム500による車両10の車両制御について説明する。
車両制御システム500の車両制御装置300において演算された目標制御量である目標操舵量及び目標加減速度は、アクチュエータ530に出力され、車両10の自動運転制御が実行される。
【0110】
アクチュエータ530は、電動パワーステアリング(Electronic Power Steering:EPS)コントローラ531、パワートレインコントローラ532、ブレーキコントローラ533、EPSユニット535、パワートレインユニット536及びブレーキユニット537を備える。
【0111】
アクチュエータ530は、目標操舵量及び目標加減速度に対して車両10を追従させるように、EPS、ブレーキ及びアクセルを制御する。
【0112】
EPSコントローラ531は、車両制御システム500から出力された目標操舵量に基づき、EPSユニット535を制御する。EPSコントローラ531によって、例えば、車両10が目標軌跡に沿って走行するための操舵角を制御することができる。
【0113】
パワートレインコントローラ532は、車両制御システム500から出力された目標加減速度を実現するようにパワートレインユニット536を制御する。また、自動運転制御に代わって運転者が速度制御を行う場合は、アクセルペダル踏み込み量に基づき、パワートレインユニット536が制御される。
【0114】
ブレーキコントローラ533は、車両制御システム500から出力された目標加減速度を実現するように、ブレーキユニット537を制御する。また、自動運転制御に代わって運転者が速度制御を行う場合は、ブレーキペダル踏み込み量に基づき、ブレーキユニット537を制御する。
【0115】
<実施の形態4の効果>
以上、実施の形態4に係る車両制御システムによると、実施の形態1あるいは2に係る自車位置推定装置によって自車位置情報を高精度に算出するので、精度の高い自車位置情報に基づき、安定性に優れた車両制御を実現できるという効果を奏する。
【0116】
以上、実施の形態1から4に係る自車位置推定装置100及び150並びに車両制御システム500の各構成要素の機能が、ハードウェア及びソフトウェア等のいずれか一方で実現される構成について説明した。しかしながら、これに限られたものではなく、自車位置推定装置100及び150並びに車両制御システム500の一部の構成要素を専用のハードウェアで実現し、別の一部の構成要素をソフトウェア等で実現する構成であっても良い。
【0117】
たとえば、図18及び図19に示すように、一部の構成要素については専用のハードウェアとしての処理回路800でその機能を実現し、他の一部の構成要素についてはプロセッサ801としての処理回路800が、メモリ802に格納された実施の形態1から3に係る自車位置推定方法をコンピュータ等で実行させるためのプログラムを読み出して実行することによってその機能を実現することが可能である。
【0118】
さらに、図19に示すように、自車位置推定装置100及び150の各機能部等が用いる設定データは、ソフトウェアの一部、すなわち、実施の形態1から3に係る自車位置推定方法をコンピュータ等で実行させるためのプログラム804が記憶されている記録媒体803からメモリ802にインストールされても良い。
【0119】
以上のように、実施の形態1から4に係る自車位置推定装置100及び150並びに車両制御システム500は、ハードウェア、ソフトウェア等、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0120】
<本願の諸態様のまとめ>
以下、本願の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0121】
(付記1)
左側道路区画線及び右側道路区画線によって規定された道路を走行する車両の自車位置を推定する自車位置推定装置であって、
前記車両に搭載された撮像素子によって検出された前記左側道路区画線を表す第1左側道路区画線情報及び前記右側道路区画線を表す第1右側道路区画線情報からなる第1道路区画線情報を取得する第1道路区画線情報取得部と、
前記撮像素子による検出方法とは異なる方法によって取得された前記左側道路区画線を表す第2左側道路区画線情報及び前記右側道路区画線を表す第2右側道路区画線情報からなる第2道路区画線情報を取得する第2道路区画線情報取得部と、
前記第1道路区画線情報及び前記第2道路区画線情報に基づき、前記自車位置の推定に用いる道路区画線情報の組み合わせを判定する道路区画線情報判定部と、
前記道路区画線情報判定部が判定した道路区画線情報の組み合わせを用いて、前記第2道路区画線情報を補正することにより前記自車位置を推定する自車位置推定部と、
を備える自車位置推定装置。
【0122】
(付記2)
前記道路区画線情報判定部は、左側道路区画線情報に関する前記第1左側道路区画線情報と前記第2左側道路区画線情報との乖離度と、及び右側道路区画線情報に関する前記第1右側道路区画線情報と前記第2右側道路区画線情報との乖離度との少なくとも一方の乖離度に基づき、前記自車位置の推定に用いる道路区画線情報の組み合わせを判定することを特徴とする付記1に記載の自車位置推定装置。
【0123】
(付記3)
前記第1道路区画線情報取得部は、前記第1道路区画線情報として、第1左側点群データ及び第1右側点群データからなる第1点群データを取得し、
前記第2道路区画線情報取得部は、前記第2道路区画線情報として、第2左側点群データ及び第2右側点群データからなる第2点群データを取得し、
前記第1左側点群データの各点と前記第2左側点群データの各点との中で互いに対応する各点の点間距離と、前記第1右側点群データの各点と前記第2右側点群データの各点の中で互いに対応する各点の点間距離との少なくとも一方を用いて前記乖離度を算出することを特徴とする付記2に記載の自車位置推定装置。
【0124】
(付記4)
前記第1道路区画線情報取得部は、前記第1道路区画線情報として、第1左側点群データ及び第1右側点群データからなる第1点群データを取得し、
前記第2道路区画線情報取得部は、前記第2道路区画線情報として、第2左側点群データ及び第2右側点群データからなる第2点群データを取得し、
前記第1左側点群データの各点の重心位置と前記第2左側点群データの各点の重心位置とを一致させた場合における前記第1左側点群データの各点と前記第2左側点群データの各点の中で互いに対応する各点の点間距離と、前記第1右側点群データの各点の重心位置と前記第2右側点群データの各点の重心位置とを一致させた場合における前記第1右側点群データの各点と前記第2右側点群データの各点の中で互いに対応する各点の点間距離との少なくとも一方を用いて前記乖離度を算出することを特徴とする付記2に記載の自車位置推定装置。
【0125】
(付記5)
前記第1左側道路区画線情報、前記第1右側道路区画線情報、前記第2左側道路区画線情報及び前記第2右側道路区画線情報の組み合わせを用いた場合に算出される第1補正量と、前記第1左側道路区画線情報及び前記第2左側道路区画線情報の組み合わせを用いた場合に算出される第2補正量と、前記第1右側道路区画線情報及び前記第2右側道路区画線情報の組み合わせを用いた場合に算出される第3補正量のうち、少なくとも2つ以上の補正量を算出する補正量計算部をさらに備え、
前記道路区画線情報判定部は、前記補正量計算部によって算出された2つ以上の補正量に基づき、前記自車位置の推定に用いる道路区画線情報の組み合わせを判定することを特徴とする付記1に記載の自車位置推定装置。
【0126】
(付記6)
前記補正量計算部は、前記第1補正量、前記第2補正量、及び前記第3補正量として、回転処理の際の補正角度及び平行移動処理の際の平行移動量のうち少なくとも1つ以上を計算し、
前記自車位置推定部は、前記第2道路区画線情報取得部によって取得された第2道路区画線情報に含まれる第2点群データに関して、前記回転処理及び前記平行移動処理を行うことにより補正して前記自車位置を推定することを特徴とする付記5に記載の自車位置推定装置。
【0127】
(付記7)
前記第1道路区画線情報取得部は、前記第1道路区画線情報の信頼度の指標となる第1道路区画線情報信頼度をさらに取得し、
前記第2道路区画線情報取得部は、前記第2道路区画線情報の信頼度の指標となる第2道路区画線情報信頼度をさらに取得し、
前記道路区画線情報判定部は、前記第1道路区画線情報信頼度及び前記第2道路区画線情報信頼度の少なくとも1つを用いて、前記自車位置の推定に用いる道路区画線情報の組み合わせを判定することを特徴とする付記1に記載の自車位置推定装置。
【0128】
(付記8)
前記第2道路区画線情報とは、地図情報に基づく道路区画線情報であることを特徴とする付記1から7のいずれか1項に記載の自車位置推定装置。
【0129】
(付記9)
道路区画線情報に基づき自車位置を推定する付記1から8のいずれか1項に記載の自車位置推定装置と、
前記自車位置推定装置から出力される前記自車位置を用いて、前記車両が前記自車位置に基づき目標地点に至る走行経路を生成する走行経路生成装置と、
前記生成された走行経路上での前記車両の車両制御を実行する際に用いる目標軌跡及び目標車速を設定する車両制御装置と、
を備える車両制御システム。
【0130】
(付記10)
自車位置推定装置を用いて、左側道路区画線及び右側道路区画線によって規定された道路を走行する車両の自車位置を推定する自車位置推定方法であって、
前記車両に搭載された撮像素子によって検出された前記左側道路区画線を表す第1左側道路区画線情報及び前記右側道路区画線を表す第1右側道路区画線情報からなる第1道路区画線情報を取得するステップと、
前記撮像素子による検出方法とは異なる方法によって取得された前記左側道路区画線を表す第2左側道路区画線情報及び前記右側道路区画線を表す第2右側道路区画線情報からなる第2道路区画線情報を取得するステップと、
前記第1道路区画線情報及び前記第2道路区画線情報に基づき、前記自車位置の推定に用いる道路区画線情報の組み合わせを判定するステップと、
判定された前記道路区画線情報の組み合わせを用いて、前記第2道路区画線情報を補正することにより前記自車位置を推定するステップと、
を備える自車位置推定方法。
【0131】
(付記11)
前記第2道路区画線情報とは、地図情報に基づく道路区画線情報であることを特徴とする付記10に記載の自車位置推定方法。
【0132】
本開示は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
【0133】
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0134】
10 車両、20 車線、21 第1左側道路区画線、22 第1右側道路区画線、23 第2左側道路区画線、24 第2右側道路区画線、25 第1点群データ、25a 第1左側点群データ、25b 第1右側点群データ、26 第2点群データ、26a 第2左側点群データ、26b 第2右側点群データ、27a 第2左側補正点群データ、27b 第2右側補正点群データ、30a、31a 重心位置、90 カメラ、91 ロケータ、100、150 自車位置推定装置、101 第1道路区画線情報取得部、102 第2道路区画線情報取得部、103 道路区画線情報判定部、104 自車位置推定部、110 補正量計算部、200 走行経路生成装置、300 車両制御装置、500 車両制御システム、530 アクチュエータ、530 アクチュエータ、531 EPSコントローラ、532 パワートレインコントローラ、533 ブレーキコントローラ、535 EPSユニット、536 パワートレインユニット、537 ブレーキユニット、800 処理回路、801 プロセッサ、802 メモリ、803 記録媒体、804 プログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図17
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