(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139972
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C  13/00        20060101AFI20241003BHJP        
【FI】
B60C13/00 C 
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050939
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO  TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐倉  誠章
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC22
3D131BC47
3D131GA01
3D131GA04
(57)【要約】
【課題】サイドウォールの耐外傷性を確保しつつ、セレーション模様の装飾効果を高められる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤは、一対のサイドウォール2を備え、その一対のサイドウォール2のうち少なくとも一方の外表面には、リッジ31が配列されたセレーション模様30が形成されている。セレーション模様30は、サイドウォール2のプロファイルラインよりもタイヤ軸方向内側に窪んだ窪み70に配置されており、リッジ31の高さが窪み70の深さよりも大きい。
【選択図】
図3
 
【特許請求の範囲】
【請求項1】
  一対のサイドウォールを備え、
  前記一対のサイドウォールのうち少なくとも一方の外表面には、リッジが配列されたセレーション模様が形成されており、
  前記セレーション模様は、前記サイドウォールのプロファイルラインよりもタイヤ軸方向内側に窪んだ窪みに配置され、
  前記リッジの高さが前記窪みの深さよりも大きい、空気入りタイヤ。
【請求項2】
  前記リッジは三角形状に形成されている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
  前記プロファイルラインを基準とした前記リッジの突出高さが前記窪みの深さよりも小さい、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
  前記セレーション模様は、前記サイドウォールの外表面においてタイヤ周方向に延在する帯状領域の少なくとも一部に形成されている、請求項1~3いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
  前記帯状領域は、タイヤ軸方向外側に突出してタイヤ周方向に延在する一対の周方向突起の間に設けられており、
  前記プロファイルラインを基準とした前記リッジの突出高さは前記周方向突起の高さよりも小さい、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
  前記帯状領域では、前記セレーション模様が形成された第1部分と、前記セレーション模様が形成されていない第2部分とが、タイヤ周方向に沿って交互に設けられている、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
  前記帯状領域には、タイヤ軸方向外側に突出して前記プロファイルラインと実質的に平行な頂面を有する隆起部が形成されており、
  前記セレーション模様は、前記隆起部の外側に配置された外側セレーション模様、及び、前記隆起部の内側に配置された内側セレーション模様のうち少なくとも一方を含む、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
  前記セレーション模様は、前記外側セレーション模様及び前記内側セレーション模様の両方を含み、
  前記内側セレーション模様の前記リッジが前記外側セレーション模様の前記リッジとは異なる方向に延在している、請求項7に記載の空気入りタイヤ。
         
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本開示は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
  空気入りタイヤのサイドウォールの外表面には、多数のリッジを配列したセレーション模様が形成されることがある。セレーション模様で陰影を生じることにより、カーカスのジョイント部分に起因した局部的な凹凸を目立たなくさせたり、サイドウォールの美観性を高めたりするなどの装飾効果が奏される。かかる装飾効果は、セレーション模様の陰影が際立つ(陰影が濃い)ほど高められる。
【0003】
  特許文献1には、サイドウォールの外表面にセレーション模様を形成した空気入りタイヤが開示されている。しかしながら、当該タイヤでは、セレーション模様の最深部がタイヤ仮想外表面と同じ位置またはそれよりもタイヤ軸方向外側に位置し、セレーション模様の最浅部がベントラインの頂部よりもタイヤ軸方向内側に位置するため、リッジの高さが小さくなりがちであり、セレーション模様の陰影を際立たせることが難しいと考えられる。
【0004】
  特許文献2には、サイドウォールの外表面にセレーション模様を形成した空気入りタイヤが開示されている。しかしながら、当該タイヤでは、サイドウォールの外表面から凹んだ凹部内にセレーション模様が配置され、その凹部の深さよりもリッジの高さが小さいため、やはりセレーション模様の陰影を際立たせることが難しいと考えられる。加えて、このようなセレーション模様ではプロテクタ効果が望めないため、サイドウォールの耐外傷性の低下が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
               【特許文献1】特開2010-274740号公報
               【特許文献2】特開2021-59255号公報
             
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
  本開示は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、サイドウォールの耐外傷性を確保しつつ、セレーション模様の装飾効果を高められる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
  本開示の空気入りタイヤは、一対のサイドウォールを備え、前記一対のサイドウォールのうち少なくとも一方の外表面には、リッジが配列されたセレーション模様が形成されており、前記セレーション模様は、前記サイドウォールのプロファイルラインよりもタイヤ軸方向内側に窪んだ窪みに配置され、前記リッジの高さが前記窪みの深さよりも大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
            【
図1】本実施形態に係る空気入りタイヤの一例を概略的に示す断面図
 
            
            【
図3】タイヤ軸方向外側から見たサイドウォールの外表面の一部を示す図
 
            
            
            
            
            【
図8】タイヤ軸方向外側から見たサイドウォールの外表面の一部を示す図
 
            
            
            
          
【発明を実施するための形態】
【0009】
  本開示の空気入りタイヤの実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0010】
  図1は、本実施形態の空気入りタイヤTを概略的に示す断面図である。このタイヤTは、一対のビード1と、そのビード1の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール2と、そのサイドウォール2の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド3とを備えた自動車用タイヤである。ビード1には、環状のビードコア1aが埋設されている。ビードコア1aは、鋼線などの収束体をゴムで被覆して形成されている。ビードコア1aのタイヤ径方向外側には、ビードフィラー1bが配置されている。ビードフィラー1bは、ビードコア1aからタイヤ径方向外側に延びた断面三角形状のゴムにより形成されている。
 
【0011】
  ここで、タイヤ径方向は、タイヤTの直径に沿った方向であり、
図1の上下方向に相当する。
図1において上側がタイヤ径方向外側となり、下側がタイヤ径方向内側となる。タイヤ軸方向は、タイヤTの回転軸と平行な方向であり、
図1の左右方向に相当する。タイヤ軸方向内側は、タイヤ赤道線に近付く側であり、
図1の左側に相当する。タイヤ軸方向外側は、タイヤ赤道線から離れる側であり、
図1の右側に相当する。タイヤ赤道線は、タイヤTのタイヤ軸方向中央に位置し、トレッド平面視においてタイヤ回転軸に直交する仮想線である。タイヤ周方向は、タイヤTの回転軸周りの方向である。
 
【0012】
  タイヤTは、一対のビード1の間に跨ってトロイド状に延在したカーカス4を備える。カーカス4は、ビードコア1a及びビードフィラー1bを挟み込むようにしてタイヤ軸方向の内側から外側に巻き上げられている。カーカス4は、カーカスコードをゴム被覆して形成されたカーカスプライにより形成されている。カーカスコードは、タイヤ周方向に対して交差する方向(例えば、タイヤ周方向に対して75~90度の角度となる方向)に引き揃えられている。カーカスコードの材料には、スチールなどの金属や、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、アラミドなどの有機繊維が好ましく用いられる。
【0013】
  タイヤTは、カーカス4のタイヤ径方向外側に積層されたベルト5を備える。ベルト5は、互いに積層された複数(本実施形態では2枚)のベルトプライにより形成されている。ベルトプライは、それぞれベルトコードをゴム被覆して形成されている。ベルトコードは、タイヤ周方向に対して傾斜する方向(例えば、タイヤ周方向に対して20~30度の角度となる方向)に引き揃えられている。ベルトコードの材料には、スチールなどの金属が好ましく用いられる。複数のベルトプライは、それらの間でベルトコードが互いに逆向きに交差するように積層されている。
【0014】
  この例では採用していないが、ベルト5のタイヤ径方向外側にベルト補強材を積層した構造でもよい。ベルト補強材は、ベルト補強コードをゴム被覆して形成されたベルト補強プライにより形成される。ベルト補強コードは、タイヤ周方向に対して実質的に平行に引き揃えられる。ベルト補強プライは、例えば、ゴム被覆された1本又は複数本のベルト補強コードをタイヤ周方向に沿ってスパイラル状に巻回することにより形成される。ベルト補強コードの材料には、上述した有機繊維が好ましく用いられる。ベルト補強材はベルト5を全面的に覆う形態のほか、ベルト5を部分的に(例えば両端のみを)覆う形態でもよい。
【0015】
  タイヤTの内面には、ブチルゴムなどの空気遮蔽性に優れるゴムにより形成されたインナーライナーゴム6が設けられている。ビードコア1a及びビードフィラー1bのタイヤ軸方向外側には、ビード1の外表面を形成するリムストリップゴム7が設けられている。カーカス4のタイヤ軸方向外側には、サイドウォール2の外表面を形成するサイドウォールゴム8が設けられている。ベルト5のタイヤ径方向外側には、トレッド3の外表面を形成するトレッドゴム9が設けられている。トレッドゴム9には、要求されるタイヤ性能や使用条件に応じたトレッドパターンが形成されている。
【0016】
  図2は、
図1の要部を示す拡大図である。
図2では、
図4のC-C矢視に沿った断面を示しており、タイヤTの内部構造の図示は省略している。
図3は、サイドウォール2の外表面の一部を示し、
図2で示した範囲Xをタイヤ軸方向外側から見た図に相当する。
図4は、
図3の部分拡大図である。
図5~7は、それぞれ
図4のA-A,B-B,C-C矢視断面図である。
図2~7に示すように、このタイヤTは、一対のサイドウォール2を備え、その一対のサイドウォール2のうち少なくとも一方の外表面には、リッジ31が配列されたセレーション模様30が形成されている。
 
【0017】
  この例では、セレーション模様30が、サイドウォール2の外表面においてタイヤ周方向に延在する帯状領域10の少なくとも一部に形成されている。帯状領域10は、一定の幅を持ってタイヤ周方向の全周に亘って延びた環状の領域として設けられている。帯状領域10は、モールド割位置Psよりもタイヤ径方向内側に設けられている。帯状領域10の外周縁Ebは、モールド割位置Psからタイヤ径方向内側に離隔している。モールド割位置Psは、トレッド3を成形するトレッドモールドとサイドウォール2を成形するサイドモールドとの境界(分割位置)である。モールド割位置Psは、サイドウォール2の外表面に生じたパーティングラインから識別できる場合もある。
【0018】
  帯状領域10は、タイヤ最大幅位置2Mを含むタイヤ径方向の一定領域に形成されている。帯状領域10の内周縁Eaはタイヤ最大幅位置2Mよりもタイヤ径方向内側に位置し、外周縁Ebはタイヤ最大幅位置2Mよりもタイヤ径方向外側に位置する。但し、これに限られず、例えば内周縁Eaがタイヤ最大幅位置2Mやそれよりもタイヤ径方向外側に位置してもよい。タイヤ最大幅位置2Mは、タイヤ子午断面(タイヤTの回転軸を含む平面に沿った断面)におけるサイドウォール2のプロファイルラインPLがタイヤ軸方向においてタイヤ赤道線から最も離れる位置である。プロファイルラインPLは、リムプロテクタなどの突起物を除いたサイドウォール2の基本的な輪郭である。
【0019】
  本実施形態では、タイヤ周方向と交差する方向に延びるリッジ31がタイヤ周方向に配列されている。このようなリッジ31を配列することにより、サイドウォールゴム8の色(黒色)の陰影をつけやすくなり、セレーション模様30の装飾効果を高められる。タイヤ径方向に対するリッジ31の延在方向の角度は、例えば0~60度に設定され、
図4に示す例では0度である。後述する一対の周方向突起41,42を互いに繋いで支持するリッジ31によりサイドウォール2を補強する観点から、上記角度は0~45度であることが好ましく、0~30度であることがより好ましい。
 
【0020】
  図5,6に示すように、セレーション模様30は、サイドウォール2のプロファイルラインPLよりもタイヤ軸方向内側に窪んだ窪み70に配置されている。窪み70は、プロファイルラインPLを基準とした深さD70を有する。リッジ31は、窪み70の底面からタイヤ軸方向外側に向けて隆起している。リッジ31は、窪み70の底面に接続された底部から頂部までの高さH31を有する。リッジ31の高さH31は窪み70の深さD70よりも大きい(即ち、H31>D70)。したがって、リッジ31はプロファイルラインPLよりもタイヤ軸方向外側に突出している。リッジ31の突出高さPH31は、プロファイルラインPLを基準にして求められる。
 
【0021】
  プロファイルラインPLから突出したリッジ31により構成されたセレーション模様30は、縁石や段差等からサイドウォール2の外表面を保護するプロテクタ効果を奏するため、サイドウォール2の耐外傷性が確保される。また、プロファイルラインPLよりも窪んだ窪み70にセレーション模様30が配置されているため、そうでない場合と比べてリッジ31の高さを確保しやすく、セレーション模様30の陰影を際立たせて装飾効果を高めるうえで都合がよい。よって、サイドウォール2の耐外傷性を確保しつつ、セレーション模様30の装飾効果を高められる。
【0022】
  リッジ31の剛性を確保して耐外傷性を高める観点から、その延在方向に沿って見たリッジ31の形状は、タイヤ軸方向内側に向かって幅が漸増する形状であることが好ましい。特にリッジ31が三角形状に形成されていると、頂部が平坦な台形状に比べて陰影を際立たせやすく、装飾効果を良好に高めることができる。この三角形状には、頂部が丸みを帯びた三角形状(
図5参照)も含まれ、そのような頂部の曲率半径R31は、例えば0.3mm以下である。開き角度θは、例えば90±45度である。リッジ31の本数を確保して耐外傷性を高める観点から、リッジ31の間隔Gは、2≦G/H31≦6の関係を満たすことが好ましい。
 
【0023】
  リッジ31の高さH31を確保する観点から、窪み70の深さD70は0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましい。セレーション模様30によるプロテクタ効果を確保する観点から、リッジ31の突出高さPH31は0.2mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましい。リッジ31の高さH31が過度に大きくなることを避けつつ、リッジ31の本数を確保して耐外傷性を良好に確保する観点から、リッジ31の突出高さPH31は窪み70の深さD70よりも小さい(即ち、PH31<D70)ことが好ましい。
【0024】
  帯状領域10は、タイヤ軸方向外側に突出してタイヤ周方向に延在する一対の周方向突起41,42の間に設けられている。周方向突起41,42は、それぞれプロファイルラインPLに接続された底部から頂部までの高さH41,H42を有する。周方向突起41,42は、それぞれタイヤ周方向の全周に亘って環状に延在している。この例では、周方向突起41が内周縁Eaに位置し、周方向突起42が外周縁Ebに位置する。セレーション模様30は、一対の周方向突起41,42の少なくとも一方に接しており、これによってタイヤ径方向における縁石等との接触に対する保護効果が高められる。この例では、一対の周方向突起41,42を繋ぐようにして延びたリッジ31が含まれている。
【0025】
  本実施形態において、リッジ31の突出高さPH31は周方向突起41,42の高さH41,H42よりも小さい(即ち、PH31<H41,H42)。かかる構成によれば、周方向突起41,42との境界においてセレーション模様30の輪郭が鮮明に視認されるため、セレーション模様30の装飾効果を高めるうえで都合がよい。これに対して、突出高さPH31が高さH41,H42と同じかそれ以上である場合には、複数のリッジ31による鋸刃状の表面形状が目立ちやすくなり、セレーション模様30の輪郭がぼやける傾向にある。この例では、高さH41,H42が窪み70の深さD70よりも大きく、更にはリッジ31の高さH31よりも大きい。
【0026】
  図3に示すように、帯状領域10では、セレーション模様30が形成された第1部分81と、セレーション模様30が形成されていない第2部分82とが、タイヤ周方向に沿って交互に設けられている。帯状領域10の中央位置10cを基準としたときの第1部分81がなす角度θ81は、好ましくは30度以上であり、より好ましくは45度以上であり、更に好ましくは60度以上である。中央位置10cは、内周縁Eaと外周縁Ebとの中央(即ち、一対の周方向突起41,42の中央)となる位置である。
 
【0027】
  第1部分81は、主にセレーション模様30によって占められている。第1部分81の一部には、窪み70の底面からタイヤ軸方向外側に突出した隆起によって標章51が形成されている。標章51は、文字(数字も含む)や記号、図形などにより構成され、タイヤのサイズやメーカー名、品種などの様々な表示情報を含み得る。後述する標章52も同様である。本実施形態において、標章51を形成する隆起の高さは、リッジ31の高さH31と同じかそれ以上に設定されているが、これに限られない。
【0028】
  第2部分82には、タイヤ軸方向外側に突出してプロファイルラインPLと実質的に平行な頂面を有する隆起部90が形成されている。隆起部90は、プロファイルラインPLに接続された底部から頂部までの高さH90を有する(
図7参照)。この例では、リッジ31の突出高さPH31が隆起部90の高さH90よりも小さい(即ち、PH31<H90)。これにより、隆起部90との境界においてセレーション模様30の輪郭が鮮明に視認され、装飾効果を高めるうえで都合がよい。意匠的な一体感を持たせる観点から、隆起部90の高さH90は、後述する隆起部20の突出高さPH20(
図11参照)と実質的に同じであることが好ましい。
 
【0029】
  第2部分82には、隆起部90の頂面からタイヤ軸方向内側に窪んだ窪みによって標章52が形成されている。標章52が窪みにより形成されていることは、第1部分81と第2部分82とのゴム量のバランスを改善し、サイドウォール2の均一性を高めるうえで都合がよい。本実施形態では、標章52を形成する窪みがプロファイルラインPLよりもタイヤ軸方向内側に窪んでおり、その窪みの底面から隆起し且つプロファイルラインPLよりもタイヤ軸方向外側に突出しないリッジによってセレーション模様55が形成されている(
図4参照)。
 
【0030】
  図2,3に示すように、帯状領域10のタイヤ径方向外側には、リッジ61がタイヤ周方向に配列されたセレーション模様60が形成されている。リッジ61は、モールド割位置Psからタイヤ径方向内側に向けて、タイヤ径方向に沿って延びている。この例では、リッジ61の高さが周方向突起42の高さH42よりも小さい。リッジ61のタイヤ径方向内側端は、帯状領域10の外周縁Eb(周方向突起42)に接続されているが、外周縁Ebから離隔していてもよい。セレーション模様60を省略することも可能である。
 
【0031】
  以上に説明したようなセレーション模様30は、一対のサイドウォール2のうち少なくとも一方の外表面に設けられていればよい。したがって、
図3のセレーション模様30に代えて、または
図3のセレーション模様30に加えて(例えば、もう一方のサイドウォール2の外表面に)、
図8に示したセレーション模様30が形成されていても構わない。
図8に示す構成は、第1部分81の一部を後述のように形成したこと以外は、
図3と同様の構成であるため、共通点を省略して主に相違点について説明する。既に説明した構成と同一の構成には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
 
【0032】
  図9は、
図8の部分拡大図である。
図10,11は、それぞれ
図9のD-D,E-E矢視断面図である。
図8~11に示すように、帯状領域10(の第1部分81)には、タイヤ軸方向外側に突出してプロファイルラインPLと実質的に平行な頂面を有する隆起部20が形成されている。かかる構成によれば、隆起部20によりプロテクタ効果を高めて、耐外傷性を良好に確保できる。隆起部20は、窪み70の底面に接続された底部から頂部までの高さH20を有する。高さH20は深さD70よりも大きく(即ち、H20>D70)、隆起部20はプロファイルラインPLよりもタイヤ軸方向外側に突出している。隆起部20の突出高さPH20は、プロファイルラインPLを基準にして求められる。
 
【0033】
  セレーション模様30は、隆起部20の外側に配置された外側セレーション模様30s、及び、隆起部20の内側に配置された内側セレーション模様30uのうち少なくとも一方を含む。本実施形態では、セレーション模様30が、外側セレーション模様30s及び内側セレーション模様30uの両方を含む例を示す。外側セレーション模様30sは、
図3で示したセレーション模様30と同様に構成されているため、
図9のF-F矢視断面図として
図6を参照できる。内側セレーション模様30uは、デザイン性を高めつつ、隆起部20によるゴム量の増加を抑制するうえで有用である。
 
【0034】
  図10,11に示すように、隆起部20の高さH20はリッジ31の高さH31よりも大きく(即ち、H20>H31)、かかる構成はサイドウォール2の耐外傷性を確保するうえで都合がよい。また、リッジ31の突出高さPH31は隆起部20の突出高さPH20よりも小さいため(即ち、PH31<PH20)、隆起部20との境界においてセレーション模様30の輪郭が鮮明に視認され、装飾効果を高めるうえで都合がよい。隆起部20は一対の周方向突起41,42から離隔しており、それらの間には外側セレーション模様30sが配置されている。隆起部20の突出高さPH20は、周方向突起41,42の高さH41,H42よりも小さい(即ち、PH20<H41,H42)。
 
【0035】
  図10,11に示すように、隆起部20の側面は窪み70の底面からの高さを徐々に変化させている。隆起部20の側面は、プロファイルラインPLの法線方向に対して所定の角度θ20で傾斜している。角度θ20は、例えば10~30度である。隆起部20の側面は、タイヤ軸方向内側に凸となる円弧状の湾曲面を介して窪み70の底面と滑らかに接続されており、かかる構成はクラックの発生を抑制するうえで都合がよい。
 
【0036】
  本実施形態では、複数の(
図9に示した範囲では6つの)隆起部20がタイヤ周方向に沿って並べられ、隣り合う隆起部20同士がタイヤ径方向に部分的に重なるように配置されている。内側セレーション模様30uは、隆起部20の各々に一つずつ形成されている。隆起部20及び内側セレーション模様30uは、それぞれ多角形状(例えば三角形状や四角形状)の輪郭を有しているが、これに限られない。内側セレーション模様30uは隆起部20の輪郭から離隔しており、これによって隆起部20の輪郭が鮮明に視認されるためデザイン性が損なわれない。
 
【0037】
  図9に示す例では、内側セレーション模様30uのリッジ31が、外側セレーション模様30sのリッジ31とは異なる方向に延在している。かかる構成によれば、リッジ31によって隆起部20を支持する作用が複数方向で発現されるため、耐外傷性を良好に確保できる。また、外側セレーション模様30sでは、内側セレーション模様30uよりも、タイヤ径方向に対するリッジの31の延在方向の角度が小さく設定されており、かかる構成は、一対の周方向突起41,42を支持する外側セレーション模様30sのリッジ31によってサイドウォール2を補強するうえで都合がよい。
 
【0038】
  [1]
  以上のように、本実施形態の空気入りタイヤTは、一対のサイドウォール2を備え、その一対のサイドウォール2のうち少なくとも一方の外表面には、リッジ31が配列されたセレーション模様30が形成されている。セレーション模様30は、サイドウォール2のプロファイルラインPLよりもタイヤ軸方向内側に窪んだ窪み70に配置され、リッジ31の高さH31が窪み70の深さD70よりも大きい。これにより、サイドウォール2の耐外傷性を確保しつつ、セレーション模様30の装飾効果を高められる。
【0039】
  [2]
  上記[1]の空気入りタイヤにおいて、リッジ31は三角形状に形成されていることが好ましい。かかる構成によれば、リッジ31の剛性を確保して耐外傷性が高められる。しかも、頂部が平坦な台形状に比べて陰影を際立たせやすく、セレーション模様30の装飾効果を良好に高めることができる。
【0040】
  [3]
  上記[1]または[2]の空気入りタイヤにおいて、プロファイルラインPLを基準としたリッジ31の突出高さPH31が窪み70の深さD70よりも小さいことが好ましい。かかる構成によれば、リッジ31の高さH31が過度に大きくなることを避けつつ、リッジ31の本数を確保して耐外傷性を良好に確保できる。
【0041】
  [4]
  上記[1]~[3]いずれか1つの空気入りタイヤにおいて、セレーション模様30は、サイドウォール2の外表面においてタイヤ周方向に延在する帯状領域10の少なくとも一部に形成されていることが好ましい。かかる構成によれば、帯状領域10においてセレーション模様30の装飾効果を高められる。
【0042】
  [5]
  上記[4]の空気入りタイヤにおいて、帯状領域10は、タイヤ軸方向外側に突出してタイヤ周方向に延在する一対の周方向突起41,42の間に設けられており、プロファイルラインPLを基準としたリッジ31の突出高さPH31は周方向突起41,42の高さH41,H42よりも小さいことが好ましい。かかる構成によれば、周方向突起41,42との境界においてセレーション模様30の輪郭が鮮明に視認されるため、セレーション模様30の装飾効果を高めるうえで都合がよい。
【0043】
  [6]
  上記[4]または[5]の空気入りタイヤにおいて、帯状領域10では、セレーション模様30が形成された第1部分81と、セレーション模様30が形成されていない第2部分82とが、タイヤ周方向に沿って交互に設けられているものでもよい。
【0044】
  [7]
  上記[4]~[6]いずれか1つの空気入りタイヤにおいて、帯状領域10には、タイヤ軸方向外側に突出してプロファイルラインPLと実質的に平行な頂面を有する隆起部20が形成されており、セレーション模様30は、隆起部20の外側に配置された外側セレーション模様30s、及び、隆起部20の内側に配置された内側セレーション模様30uのうち少なくとも一方を含むものでもよい。かかる構成によれば、隆起部20によりプロテクタ効果を高めて、耐外傷性がより良好に確保できる。
【0045】
  [8]
  上記[7]の空気入りタイヤにおいて、セレーション模様30は、外側セレーション模様30s及び内側セレーション模様30uの両方を含み、内側セレーション模様30uのリッジ31が外側セレーション模様30sのリッジ31とは異なる方向に延在していることが好ましい。かかる構成によれば、リッジ31によって隆起部20を支持する作用が複数方向で発現されるため、耐外傷性を良好に確保できる。
【0046】
  本開示の空気入りタイヤTは、サイドウォール2を上記の如く構成したこと以外は、通常の空気入りタイヤと同様に構成でき、従来公知の形状や材料などはいずれも採用することが可能である。
【0047】
  本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、この実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、更に、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0048】
  本開示の空気入りタイヤは、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものではない。本開示のタイヤは、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。また、上述した実施形態で採用されている各構成を、任意に組み合わせて採用することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
2      サイドウォール
10    帯状領域
20    隆起部
30    セレーション模様
30s  外側セレーション模様
30u  内側セレーション模様
30    セレーション模様
31    リッジ
41    周方向突起
42    周方向突起
81    第1部分
82    第2部分