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特開2024-139977セメントクリンカ製造システム及びセメントクリンカ製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139977
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】セメントクリンカ製造システム及びセメントクリンカ製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/44 20060101AFI20241003BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20241003BHJP
   B01D 53/81 20060101ALI20241003BHJP
   B01D 53/74 20060101ALI20241003BHJP
   F25J 1/00 20060101ALI20241003BHJP
   F25J 3/06 20060101ALI20241003BHJP
   C04B 7/43 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C04B7/44 101
B01D53/62 ZAB
B01D53/81
B01D53/74
F25J1/00 D
F25J3/06
C04B7/43
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050946
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【弁理士】
【氏名又は名称】村地 俊弥
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】本間 健一
(72)【発明者】
【氏名】太田 亨
【テーマコード(参考)】
4D002
4D047
4G112
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AA09
4D002AA12
4D002AA19
4D002AC05
4D002BA02
4D002BA04
4D002BA13
4D002BA14
4D002BA20
4D002CA07
4D002CA11
4D002CA20
4D002DA02
4D002DA05
4D002DA06
4D002DA12
4D002DA16
4D002DA41
4D002EA02
4D002FA01
4D047AA07
4D047AB00
4D047DA01
4G112KB01
4G112KB08
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素を高濃度で含む二酸化炭素含有物を得ることができるセメントクリンカ製造システムを提供する。
【解決手段】サイクロン式予熱装置2と、セメントクリンカ原料を焼成するためのロータリーキルン3と、セメントクリンカ原料の脱炭酸を促進するためのか焼炉4と、クリンカクーラー5と、キルン排ガス排出路6a~6eとを含み、空気に比べて酸素濃度を高めた支燃性ガスを供給するための支燃性ガス供給装置7と、支燃性ガス供給路8と、か焼炉で生じた炭酸ガス含有排ガスを圧縮するための排ガス圧縮装置12と、圧縮排ガスを精製するための二酸化炭素精製装置13と、か焼炉から排ガスを排ガス圧縮装置に導くための第一のか焼炉排ガス供給路9と、脱炭酸されたセメントクリンカ原料を返送するためのセメントクリンカ原料回収装置18と、集塵装置14と、酸性ガス除去装置15と、圧縮排ガス供給路16とを含むセメントクリンカ製造システム1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントクリンカ原料を予熱するための、2個以上のサイクロン式熱交換器を含むサイクロン式予熱装置と、
上記サイクロン式予熱装置で予熱された上記セメントクリンカ原料を焼成して、セメントクリンカを得るためのロータリーキルンと、
上記サイクロン式予熱装置と共に上記ロータリーキルンの前流側に配設された、加熱手段を含み、該加熱手段を用いて上記セメントクリンカ原料の脱炭酸を促進するためのか焼炉と、
上記ロータリーキルンの後流側に配設された、上記セメントクリンカを冷却するためのクリンカクーラーと、
上記ロータリーキルンで生じた排ガスを、上記サイクロン式予熱装置を経由した後に排出するためのキルン排ガス排出路と
を含むセメントクリンカ製造システムであって、
空気に比べて酸素濃度を高めた支燃性ガスを供給するための支燃性ガス供給装置と、
上記支燃性ガス供給装置から上記支燃性ガスを上記か焼炉に導くための支燃性ガス供給路と、
上記か焼炉で生じた炭酸ガス含有排ガスを圧縮して、圧縮排ガスを得るための排ガス圧縮装置と、
上記圧縮排ガスを精製し、二酸化炭素濃度を高めた高濃度二酸化炭素含有物を得るための二酸化炭素精製装置と、
上記か焼炉から上記炭酸ガス含有排ガスを上記排ガス圧縮装置に導くための第一のか焼炉排ガス供給路(ただし、上記キルン排ガス排出路と異なるものに限る。)と、
上記第一のか焼炉排ガス供給路の途中に配設された、脱炭酸されたセメントクリンカ原料を回収し、上記サイクロン式予熱装置に返送するための、セメントクリンカ原料回収装置と、
上記第一のか焼炉排ガス供給路の上記セメントクリンカ原料回収装置と上記排ガス圧縮装置の間に配設された、上記炭酸ガス含有排ガスからばいじんを除去するための集塵装置と、
上記第一のか焼炉排ガス供給路の上記セメントクリンカ原料回収装置と上記排ガス圧縮装置の間に配設された、上記炭酸ガス含有排ガスから酸性ガス(ただし、炭酸ガスを除く。)を除去するための酸性ガス除去装置と、
上記排ガス圧縮装置から上記圧縮排ガスを上記二酸化炭素精製装置に導くための圧縮排ガス供給路と、
を含むことを特徴とするセメントクリンカ製造システム。
【請求項2】
上記支燃性ガス供給路が、上記第一のか焼炉排ガス供給路の途中であって、上記集塵装置及び上記酸性ガス除去装置よりも前流側の位置で、上記第一のか焼炉排ガス供給路の中を流通する上記炭酸ガス含有排ガスと上記支燃性ガスを熱交換するように配設され、
上記第一のか焼炉排ガス供給路の途中であって、上記集塵装置及び上記酸性ガス除去装置よりも後流側の位置で、上記第一のか焼炉排ガス供給路と連結し、かつ、上記第一のか焼炉排ガス供給路の中を流通する上記炭酸ガス含有排ガスの一部を、上記支燃性ガス供給路の中を流通する支燃性ガスに合流させるための第二のか焼炉排ガス供給路と、
を含む請求項1に記載のセメントクリンカ製造システム。
【請求項3】
上記二酸化炭素精製装置が、深冷分離法、膜分離法、及び物理吸着法の中から選ばれる1種以上の方法を用いて上記圧縮排ガスを精製するためのものである請求項1又は2に記載のセメントクリンカ製造システム。
【請求項4】
上記ロータリーキルンで生じた排ガスの一部を、上記サイクロン式予熱装置を経由せずに抽気して冷却し、固体分を除いた後に、上記固体分が除かれた上記排ガスを排出すると共に、上記固体分を粗粉と微粉に分級して、上記粗粉を上記セメントクリンカ原料の一部として用い、上記微粉を回収するための塩素バイパス装置を含む請求項1又は2に記載のセメントクリンカ製造システム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のセメントクリンカ製造システムを用いたセメントクリンカ製造方法であって、
上記か焼炉で生じた上記炭酸ガス含有排ガスの炭酸ガス濃度が、水蒸気を除外した体積100体積%に対して、80体積%以上になるように、上記支燃性ガスの酸素濃度を調整することを特徴とするセメントクリンカ製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のセメントクリンカ製造システムを用いたセメントクリンカ製造方法であって、
上記二酸化炭素精製装置において、上記圧縮排ガスに含まれる酸素の沸点及び上記圧縮排ガスに含まれる窒素の沸点以上であり、かつ、上記圧縮排ガスに含まれる二酸化炭素の沸点未満の温度で、深冷分離法を用いて上記圧縮排ガスの精製を行うセメントクリンカ製造方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のセメントクリンカ製造システムを用いたセメントクリンカ製造方法であって、
上記高濃度二酸化炭素含有物を回収して、該含有物中の二酸化炭素を貯蔵するセメントクリンカ製造方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のセメントクリンカ製造システムを用いたセメントクリンカ製造方法であって、
上記高濃度二酸化炭素含有物を回収して、該含有物中の二酸化炭素を利用するセメントクリンカ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントクリンカ製造システム及びセメントクリンカ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の抑制のため、二酸化炭素の排出量の低減が重要な課題になっている。一方、セメント産業は、二酸化炭素の排出量の大きい産業の一つである。
セメントを製造する際に排出される炭酸ガス(気体の二酸化炭素)の全量のうち、セメントの原料として用いられる石灰石の脱炭酸によって排出される炭酸ガスの割合は約60%、製造の際に用いられる燃料の燃焼によって排出される炭酸ガスの割合は約40%である。
燃料の燃焼によって発生する炭酸ガスの低減方法としては、エネルギー効率を改善する方法や、燃料としてバイオマス燃料を使用する方法等が挙げられる。例えば、燃料の燃焼によって発生する炭酸ガス量を低減することができるセメント焼成装置として、特許文献1には、主燃料としての可燃性ガスと、補助燃料としての可燃性廃棄物とをセメントキルン内に吹き込む主バーナーを備えることを特徴とするセメント焼成装置が記載されている。
【0003】
一方、セメントの原料として、炭酸ガスの発生量が多い石灰石に代わる、炭酸ガス発生量の少ないカルシウム含有原料を用いることは難しいため、石灰石の使用量を少なくすることで、石灰石の脱炭酸によって発生する炭酸ガス量を低減することは困難である。
二酸化炭素の排出量を低減する方法として、発生した炭酸ガスを分離して、回収した後、貯留、隔離、又は有効利用する方法が知られている。
発生した炭酸ガスを分離、回収する方法として、例えば、特許文献2には、製鉄所で発生する副生ガスから化学吸収法にて二酸化炭素を分離回収する方法であって、当該ガスから化学吸収液で二酸化炭素を吸収後、化学吸収液を加熱し二酸化炭素を分離させるプロセスに、製鉄所で発生する500℃以下の低品位排熱を利用または活用することを特徴とする二酸化炭素の分離回収方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-52746号公報
【特許文献2】特開2004-292298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セメントクリンカを製造する際に発生する排ガスには、炭酸ガスの他に窒素、酸素等が多く含まれているため、上記排ガスから炭酸ガスを分離、回収するには、アミン化合物による化学吸収法等を用いる必要がある。
上記排ガスに含まれている炭酸ガスの濃度を高くすることができれば、炭酸ガスの分離、回収、及び貯蔵が容易となる。また、上記排ガスに含まれている窒素等の量を少なくすることにより、相対的に発生する排ガスの体積を小さくすることができ、炭酸ガスを分離、回収、及び貯蔵するための設備を小さくすることができる。
本発明の目的は、セメントクリンカを製造する際に、排ガスの一部について、排ガスから二酸化炭素の貯蔵等に利用しやすい二酸化炭素を高濃度で含む二酸化炭素含有物を効率的に得ることができ、かつ、排ガスの排出量を小さくすることができるセメントクリンカ製造システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、サイクロン式予熱装置と、予熱されたセメントクリンカ原料を焼成してセメントクリンカを得るためのロータリーキルンと、セメントクリンカ原料の脱炭酸を促進するためのか焼炉と、セメントクリンカを冷却するためのクリンカクーラーと、ロータリーキルンで生じた排ガスを排出するためのキルン排ガス排出路とを含み、酸素濃度を高めた支燃性ガスを供給するための支燃性ガス供給装置と、支燃性ガスをか焼炉に導くための支燃性ガス供給路と、か焼炉で生じた炭酸ガス含有排ガスを圧縮するための排ガス圧縮装置と、圧縮排ガスを精製し高濃度二酸化炭素含有物を得るための二酸化炭素精製装置と、か焼炉から排ガスを排ガス圧縮装置に導くための第一のか焼炉排ガス供給路と、脱炭酸されたセメントクリンカ原料をサイクロン式予熱装置に返送するためのセメントクリンカ原料回収装置と、炭酸ガス含有排ガスからばいじんを除去するための集塵装置と、炭酸ガス含有排ガスから酸性ガス(ただし、炭酸ガスを除く。)を除去するための酸性ガス除去装置と、排ガス圧縮装置から圧縮排ガスを二酸化炭素精製装置に導くための圧縮排ガス供給路とを含むセメントクリンカ製造システムによれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[8]を提供するものである。
【0007】
[1] セメントクリンカ原料を予熱するための、2個以上のサイクロン式熱交換器を含むサイクロン式予熱装置と、上記サイクロン式予熱装置で予熱された上記セメントクリンカ原料を焼成して、セメントクリンカを得るためのロータリーキルンと、上記サイクロン式予熱装置と共に上記ロータリーキルンの前流側に配設された、加熱手段を含み、該加熱手段を用いて上記セメントクリンカ原料の脱炭酸を促進するためのか焼炉と、上記ロータリーキルンの後流側に配設された、上記セメントクリンカを冷却するためのクリンカクーラーと、上記ロータリーキルンで生じた排ガスを、上記サイクロン式予熱装置を経由した後に排出するためのキルン排ガス排出路とを含むセメントクリンカ製造システムであって、空気に比べて酸素濃度を高めた支燃性ガスを供給するための支燃性ガス供給装置と、上記支燃性ガス供給装置から上記支燃性ガスを上記か焼炉に導くための支燃性ガス供給路と、上記か焼炉で生じた炭酸ガス含有排ガスを圧縮して、圧縮排ガスを得るための排ガス圧縮装置と、上記圧縮排ガスを精製し、二酸化炭素濃度を高めた高濃度二酸化炭素含有物を得るための二酸化炭素精製装置と、上記か焼炉から上記炭酸ガス含有排ガスを上記排ガス圧縮装置に導くための第一のか焼炉排ガス供給路(ただし、上記キルン排ガス排出路と異なるものに限る。)と、上記第一のか焼炉排ガス供給路の途中に配設された、脱炭酸されたセメントクリンカ原料を回収し、上記サイクロン式予熱装置に返送するための、セメントクリンカ原料回収装置と、上記第一のか焼炉排ガス供給路の上記セメントクリンカ原料回収装置と上記排ガス圧縮装置の間に配設された、上記炭酸ガス含有排ガスからばいじんを除去するための集塵装置と、上記第一のか焼炉排ガス供給路の上記セメントクリンカ原料回収装置と上記排ガス圧縮装置の間に配設された、上記炭酸ガス含有排ガスから酸性ガス(ただし、炭酸ガスを除く。)を除去するための酸性ガス除去装置と、上記排ガス圧縮装置から上記圧縮排ガスを上記二酸化炭素精製装置に導くための圧縮排ガス供給路と、を含むことを特徴とするセメントクリンカ製造システム。
【0008】
[2] 上記支燃性ガス供給路が、上記第一のか焼炉排ガス供給路の途中であって、上記集塵装置及び上記酸性ガス除去装置よりも前流側の位置で、上記第一のか焼炉排ガス供給路の中を流通する上記炭酸ガス含有排ガスと上記支燃性ガスを熱交換するように配設され、上記第一のか焼炉排ガス供給路の途中であって、上記集塵装置及び上記酸性ガス除去装置よりも後流側の位置で、上記第一のか焼炉排ガス供給路と連結し、かつ、上記第一のか焼炉排ガス供給路の中を流通する上記炭酸ガス含有排ガスの一部を、上記支燃性ガス供給路の中を流通する支燃性ガスに合流させるための第二のか焼炉排ガス供給路と、を含む前記[1]に記載のセメントクリンカ製造システム。
[3] 上記二酸化炭素精製装置が、深冷分離法、膜分離法、及び物理吸着法の中から選ばれる1種以上の方法を用いて上記圧縮排ガスを精製するためのものである前記[1]又は[2]に記載のセメントクリンカ製造システム。
[4] 上記ロータリーキルンで生じた排ガスの一部を、上記サイクロン式予熱装置を経由せずに抽気して冷却し、固体分を除いた後に、上記固体分が除かれた上記排ガスを排出すると共に、上記固体分を粗粉と微粉に分級して、上記粗粉を上記セメントクリンカ原料の一部として用い、上記微粉を回収するための塩素バイパス装置を含む前記[1]~[3]のいずれかに記載のセメントクリンカ製造システム。
【0009】
[5] 前記[1]~[4]のいずれかに記載のセメントクリンカ製造システムを用いたセメントクリンカ製造方法であって、上記か焼炉で生じた上記炭酸ガス含有排ガスの炭酸ガス濃度が、水蒸気を除外した体積100体積%に対して、80体積%以上になるように、上記支燃性ガスの酸素濃度を調整することを特徴とするセメントクリンカ製造方法。
[6] 前記[1]~[5]のいずれかに記載のセメントクリンカ製造システムを用いたセメントクリンカ製造方法であって、上記二酸化炭素精製装置において、上記圧縮排ガスに含まれる酸素の沸点及び上記圧縮排ガスに含まれる窒素の沸点以上であり、かつ、上記圧縮排ガスに含まれる二酸化炭素の沸点未満の温度で、深冷分離法を用いて上記圧縮排ガスの精製を行うセメントクリンカ製造方法。
[7] 前記[1]~[6]のいずれかに記載のセメントクリンカ製造システムを用いたセメントクリンカ製造方法であって、上記高濃度二酸化炭素含有物を回収して、該含有物中の二酸化炭素を貯蔵するセメントクリンカ製造方法。
[8] 前記[1]~[6]のいずれかに記載のセメントクリンカ製造システムを用いたセメントクリンカ製造方法であって、上記高濃度二酸化炭素含有物を回収して、該含有物中の二酸化炭素を利用するセメントクリンカ製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のセメントクリンカ製造システムによれば、セメントクリンカを製造する際に、排ガスの一部について、排ガスから二酸化炭素の貯蔵等に利用しやすい二酸化炭素を高濃度で含む二酸化炭素含有物を効率的に得ることができ、かつ、排ガスの排出量を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のセメントクリンカ製造システムの一例を模式的に示す図である。
図2】本発明のセメントクリンカ製造システムの一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1~2は、各々、本発明のセメントクリンカ製造システムの実施形態の一例を模式的に表したものである。
以下、図1を参照にしながら、本発明のセメントクリンカ製造システムの一例について詳しく説明する。
図1のセメントクリンカ製造システム1は、セメントクリンカ原料を予熱するための、2個以上のサイクロン式熱交換器2a~2dを含むサイクロン式予熱装置2と、サイクロン式予熱装置2で予熱されたセメントクリンカ原料を焼成して、セメントクリンカを得るためのロータリーキルン3と、サイクロン式予熱装置2と共にロータリーキルン3の前流側に配設された、加熱手段20を含み、加熱手段20を用いてセメントクリンカ原料の脱炭酸を促進するためのか焼炉4と、ロータリーキルン3の後流側に配設された、セメントクリンカを冷却するためのクリンカクーラー5と、ロータリーキルン3で生じた排ガスを、サイクロン式予熱装置2を経由した後に排出するためのキルン排ガス排出路6を含む。セメントクリンカ製造システム1は、さらに、空気に比べて酸素濃度を高めた支燃性ガスを供給するための支燃性ガス供給装置7と、支燃性ガス供給装置7から支燃性ガスをか焼炉4に導くための支燃性ガス供給路8と、か焼炉4で生じた炭酸ガス含有排ガスを圧縮して、圧縮排ガスを得るための排ガス圧縮装置12と、圧縮排ガスを精製し、二酸化炭素濃度を高めた高濃度二酸化炭素含有物を得るための二酸化炭素精製装置13と、か焼炉4から炭酸ガス含有排ガスを排ガス圧縮装置12に導くための第一のか焼炉排ガス供給路9(ただし、キルン排ガス排出路6と異なるものに限る。)と、第一のか焼炉排ガス供給路9の途中に配設された、脱炭酸されたセメントクリンカ原料を回収し、サイクロン式予熱装置2に返送するための、セメントクリンカ原料回収装置18と、第一のか焼炉排ガス供給路9のセメントクリンカ原料回収装置18と排ガス圧縮装置12の間に配設された、炭酸ガス含有排ガスからばいじんを除去するための集塵装置14と、第一のか焼炉排ガス供給路9のセメントクリンカ原料回収装置18と排ガス圧縮装置12の間に配設された、炭酸ガス含有排ガスから酸性ガス(ただし、炭酸ガスを除く。)を除去するための酸性ガス除去装置15と、排ガス圧縮装置12から圧縮排ガスを二酸化炭素精製装置13に導くための圧縮排ガス供給路16を含む。
【0013】
サイクロン式予熱装置2は、2個以上のサイクロン式熱交換器2a~2dからなるものである。複数のサイクロン式熱交換器2a~2dは、セメントクリンカ原料を移動するための流路、及び、ロータリーキルン3で生じた排ガスを、複数のサイクロン式熱交換器2a~2dを経由した後に排出するためのキルン排ガス排出路6a~6eによって連結されている。なお、キルン排ガス排出路6a~6eは、セメントクリンカ原料を移動するための流路を兼ねていてもよい。サイクロン式熱交換器の数は、2個以上、通常、4~5個である。また、複数のサイクロン式熱交換器は、通常、鉛直方向に配設されている。
セメントクリンカ原料は、サイクロン式予熱装置2の最前流に配設されたサイクロン式熱交換器2aに投入され、サイクロン式熱交換器2a内において、キルン排ガスと熱交換しつつ遠心分離されて、サイクロン式熱交換器2aの下部から、後流側に配設されたサイクロン式熱交換器2bに投入された後、再び、上記排ガスと熱交換しつつ遠心分離されて、さらに後流側に配設されたサイクロン式熱交換器2cに投入される。このように、セメントクリンカ原料は、上記排ガスで予熱(加熱)されながら、順次後流側に配設されたサイクロン式熱交換器2b~2cに移動する。
【0014】
サイクロン式予熱装置2内において、セメントクリンカ原料を予熱することで、か焼炉4で脱炭酸を促進するために用いられる燃料の投入量を低減することができる。
サイクロン式予熱装置2内において、セメントクリンカ原料は、好ましくは400~750℃、より好ましくは500~725℃、特に好ましくは600~700℃に予熱される。上記温度が400℃以上であれば、か焼炉4で脱炭酸を促進するために用いられる燃料の投入量を低減することができる。上記温度が750℃以下であれば、サイクロン式予熱装置2内において、セメントクリンカ原料の脱炭酸が促進されにくくなるため、キルン排ガス中の炭酸ガス濃度が大きくなることを防ぐことができる。
【0015】
セメントクリンカ原料としては、特に限定されず、セメントクリンカの原料として一般的なものを用いることができる。具体的には、石灰石、土壌、粘土、珪石、鉄原料等の天然原料や、石炭灰、鉄鋼スラグ、都市ゴミ焼却灰、下水汚泥焼却灰、生コンスラッジ、廃コンクリート微粉等の廃棄物又は副産物等が挙げられる。また、セメントクリンカ原料として、炭酸ガスを吸収したカルシウム含有廃棄物(後述)を用いてもよい。
セメントクリンカ原料は、原料ミルを用いて、各種原料を適切な割合で粉砕、混合した後、サイクロン式予熱装置2に投入される。セメントクリンカ原料の粒度は、セメントクリンカの製造をより容易にする観点から、好ましくは100μm以下である。
また、セメントクリンカ原料の一部(例えば、有機物を多く含む汚染土壌)を、サイクロン式予熱装置2に投入せずに、直接、ロータリーキルン3に投入してもよい。
【0016】
予熱されたセメントクリンカ原料は、サイクロン式予熱装置2を構成する2個以上のサイクロン式熱交換器2a~2dのいずれか一つと連結された予熱原料供給路19からか焼炉4に供給される。
図1において、予熱原料供給路19は、サイクロン式予熱装置2の最後流側から2番目以上に配設されたサイクロン式熱交換器2cと連結しており、サイクロン式熱交換器2a~2cを経由することで予熱されたセメントクリンカ原料は、サイクロン式熱交換器2cから予熱原料供給路19を通ってか焼炉4に投入される。予熱原料供給路19を、最後流側から2番目に位置するサイクロン式熱交換器2cと連結することで、十分に予熱されたセメントクリンカ原料をか焼炉4に投入することができる。また、か焼炉4で脱炭酸されたセメントクリンカ原料を、直接ロータリーキルン3に投入せずに最後流側に位置するサイクロン式熱交換器2dに返送することで、高温のセメントクリンカ原料によってキルン排ガスの温度を上昇させることができる。
【0017】
か焼炉4は、加熱手段20を用いて燃料を燃焼することによって、セメントクリンカ原料の脱炭酸を促進する目的で、サイクロン式予熱装置2と共にロータリーキルン3の前流側に配設される。
ここで、セメントクリンカ原料の脱炭酸とは、セメントクリンカ原料に含まれている石灰石の主成分である炭酸カルシウム(CaCO)を、加熱によって生石灰(CaO)と炭酸ガス(CO)に分解することである。
か焼炉4内で、空気に比べて酸素濃度を高めた支燃性ガスを用いてセメントクリンカ原料を加熱する場合、二酸化炭素分圧が高くなる。このため、脱炭酸を促進するために必要な温度が高くなるため、空気を支燃性ガスとして用いる場合よりも、温度を高くする必要がある。か焼炉4内の加熱は、加熱されたセメントクリンカ原料の温度が、好ましくは850~1,100℃、より好ましくは880~1,080℃、さらに好ましくは900~1,050℃、さらに好ましくは950~1,025℃、特に好ましくは975~1,000℃となるように行われる。上記温度が850℃以上であれば、二酸化炭素分圧が高い雰囲気下においてもセメントクリンカ原料の脱炭酸をより促進することができ、かつ、脱炭酸化されたセメントクリンカ原料が、直接ロータリーキルン3内に投入されても、ロータリーキルン3内の温度が過度に低下することを防ぐことができる。上記温度が1,100℃以下であれば、原料の焼結などにより、配管等が閉塞することを防ぐことができる。
【0018】
セメントクリンカ原料の脱炭酸は、か焼炉4内において、燃料を、加熱手段20及び支燃性ガスを用いて燃焼して、セメントクリンカ原料を直接的に加熱することによって促進される。
加熱手段20の例としては、バーナー等が挙げられる。
か焼炉において用いられる燃料としては、特に限定されるものではなく、例えば、石炭、重油、天然ガス等の化石燃料;やしがら等のバイオマス;バイオマスをガス化してなるバイオガス;炭酸ガスを原料とするメタネーションによって生成されたメタン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、バイオマス等のカーボンフリーの燃料を使用すれば、セメントクリンカ製造における二酸化炭素の排出量を、実質的により低減することができる。
【0019】
か焼炉4内で用いられる支燃性ガスは、空気に比べて酸素濃度を高めたものである。このような支燃性ガスを用いることで、か焼炉排ガスの炭酸ガス濃度をより高くすることができる。また、上記支燃性ガスを用いることで、燃料の燃焼性がより向上するため、細かく粉砕することが困難であるため従来は使用することが難しかった燃料であっても、使用することができる。
上記支燃性ガスの酸素濃度は、か焼炉排ガスの炭酸ガス濃度をより高くする観点からは、水蒸気を含む体積100体積%に対して、好ましくは21体積%以上、より好ましくは25体積%以上、特に好ましくは30体積%以上である。また、上記酸素濃度は、燃焼を制御しやすくする観点からは、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下、特に好ましくは70体積%以下である。
【0020】
か焼炉4内で用いられる支燃性ガスは、支燃性ガス供給装置7から供給され、支燃性ガス供給路8を通って、か焼炉4に導かれる。
図1において、支燃性ガス供給路8は、クリンカクーラー5内のセメントクリンカとの熱交換によって昇温された空気を流通させるための空気流通路23内を流通する空気によって、支燃性ガス供給路8内を通る支燃性ガスが、間接的に加熱されて昇温するように、配設されている。なお、空気流通路23は任意に配設されるものである。
また、セメントクーラーの後流側(クリンカクーラーの出口側)の一部分に、支燃性ガス供給路8を通過させることによって、セメントクリンカの熱によって、支燃性ガスを昇温させてもよい(図示せず)。
支燃性ガスを昇温させることによって、か焼炉4で用いられる燃料の投入量を低減することができる。
【0021】
支燃性ガス供給装置7としては、例えば、酸素タンク、空気から酸素を分離する空気分離装置(Air Separation Unit:ASU)、水の電気分解により酸素を生成させる水電気分解装置等が挙げられる。
空気から酸素を分離する方法としては、深冷分離法、吸着分離法、及び膜分離法等が挙げられる。中でも、多量の酸素を得ることができる観点から、深冷分離法が好ましい。
【0022】
支燃性ガス供給装置7から供給される支燃性ガスは、空気に比べて酸素濃度を高めたものである。上記支燃性ガスは、そのままか焼炉4内で用いてもよいが、か焼炉4内で用いられる前に、その組成を適宜調整してもよい。
例えば、か焼炉4内で用いられる支燃性ガスの酸素濃度が過度に大きくなって、燃焼の制御が困難となることを防ぎ、か焼炉で生じる炭酸ガス含有排ガス(以下、「か焼炉排ガス」
ともいう。)の炭酸ガス濃度をより大きくし、かつ、か焼炉排ガスに残存する酸素の量を小さくする観点から、支燃性ガス供給装置7から供給された支燃性ガスと、炭酸ガスを混合して、得られた混合ガスを、か焼炉4内で用いられる支燃性ガスとしてもよい。
さらに、二酸化炭素分圧を下げることにより、脱炭酸を促進するために必要な温度を下げる目的で、支燃性ガス供給装置7から供給された支燃性ガスと、水蒸気を混合して、得られた混合ガスを、か焼炉4内で用いられる支燃性ガスとしてもよい。
上記混合ガス(支燃性ガス供給装置7から供給された支燃性ガスと、炭酸ガス及び水蒸気の少なくともいずれか一方を混合したもの)の炭酸ガス濃度は、水蒸気を含む体積100体積%に対して、好ましくは10~79体積%、より好ましくは20~75体積%、さらに好ましくは30~70体積%である。
【0023】
さらに、か焼炉排ガスの体積をより小さくし、かつ、か焼炉排ガスの炭酸ガス濃度をより大きくする観点から、か焼炉4内で用いられる支燃性ガスは、酸素、炭酸ガス、及び水蒸気以外の気体(例えば、窒素)を含まないことが好ましい。上記支燃性ガスの、酸素、炭酸ガス、及び水蒸気以外の気体の濃度は、水蒸気を含む体積100体積%に対して、好ましくは10体積%以下、より好ましくは5体積%以下、特に好ましくは2体積%以下である。
【0024】
支燃性ガス供給装置7から供給された支燃性ガスと炭酸ガスを混合する方法の例としては、支燃性ガス供給装置7から供給された支燃性ガスと、か焼炉排ガスを混合する方法が挙げられる。か焼炉4から排出されたか焼炉排ガスの温度は800℃程度の高温であるため、か焼炉排ガスを用いることで、支燃性ガスを昇温させることができる。
か焼炉排ガスを混合する場合、例えば、か焼炉4で生じたか焼炉排ガスを排ガス圧縮装置12に導くための第一のか焼炉排ガス供給路9の中を流通するか焼炉排ガスの一部を、支燃性ガス供給路8の中を流通する支燃性ガス(支燃性ガス供給装置7から供給された支燃性ガス)に合流させるための合流用流通路11を配設することで、支燃性ガス供給路8の中を流通する支燃性ガスとか焼炉排ガスを混合することができる。
合流用流通路11は、より高温のか焼炉排ガスを支燃性ガスと混合することができる等の観点から、第一のか焼炉排ガス供給路9の集塵装置14及び酸性ガス除去装置15の前流側の位置で、第一のか焼炉排ガス供給路9と連結するように配設することが好ましい。
また、支燃性ガス供給路8が、クリンカクーラー5内のセメントクリンカとの熱交換によって昇温された空気によって、支燃性ガス供給路8内を通る支燃性ガスが間接的に加熱されて昇温するように、配設されている場合、合流用流通路11は、上記空気を用いて上記支燃性ガスが、間接的に加熱された位置よりも後流側(支燃性ガス供給装置7よりもより遠い位置)で、上記支燃性ガスとか焼炉排ガスの一部が合流するように配設することが好ましい。
【0025】
か焼炉4内で脱炭酸されたセメントクリンカ原料及びか焼炉で生じた炭酸ガス含有排ガス(か焼炉排ガス)は、第一のか焼炉排ガス供給路9に排出され、第一のか焼炉排ガス供給路9を通って排ガス圧縮装置12(後述)に導かれる。
なお、第一のか焼炉排ガス供給路9は、ロータリーキルン3で生じた排ガスを排出するためのキルン排ガス排出路6a~6eとは異なるものである。第一のか焼炉排ガス供給路9とキルン排ガス排出路6a~6eを完全に分けることによって、炭酸ガス濃度の大きいか焼炉排ガスのみを回収することができる。
【0026】
か焼炉4において脱炭酸されたセメントクリンカ原料は、第一のか焼炉排ガス供給路9の途中に配設された、セメントクリンカ原料回収装置18において回収されて、加熱後の高温を維持したまま脱炭酸原料供給路22を通って、サイクロン式予熱装置2に返送(供給)される。
セメントクリンカ原料回収装置18の例としては、サイクロン、バグフィルター、及び電気集塵機等が挙げられる。
脱炭酸原料供給路22は、通常、予熱原料供給路19と連結しているサイクロン式熱交換器2cよりも後流側に位置するサイクロン式熱交換器2d内に、脱炭酸されたセメントクリンカ原料を投入(供給)するように配設される。また、脱炭酸化されたセメントクリンカ原料の少なくとも一部を、脱炭酸原料供給路22から直接ロータリーキルン3内に投入してもよい。
【0027】
か焼炉排ガスは、炭酸ガス濃度が高いものであるため、か焼炉排ガスから炭酸ガスを分離、回収することが容易である。か焼炉排ガスの炭酸ガス濃度は、水蒸気を除外した体積100体積%に対して、好ましくは80体積%以上、より好ましくは85体積%以上、特に好ましくは90体積%以上である。
上記炭酸ガス濃度は、支燃性ガスの酸素濃度の調整によって、調整することができる。具体的には、支燃性ガスの酸素濃度をより高くすることや、支燃性ガスの酸素、炭酸ガス、及び水蒸気以外の気体(例えば、窒素)の濃度をより低くすることによって、上記炭酸ガス濃度をより高くすることができる。
また、か焼炉排ガスは高温であるため、該排ガスを用いて水を加熱することで水蒸気を発生させ、該水蒸気と水蒸気タービンを用いて発電を行ってもよい。
【0028】
排ガス圧縮装置12において、か焼炉4で生じた炭酸ガス含有排ガスが圧縮され、圧縮排ガス装置12に供給される前よりも加圧(昇圧)された圧縮排ガス(上記炭酸ガス含有排ガスを加圧してなるもの)を得ることができる。炭酸ガス含有排ガスを圧縮することで、二酸化炭素精製装置13(後述)において、効率的に炭酸ガス含有排ガスを精製することができる。
排ガス圧縮装置12の例としては、遠心式圧縮機等のターボ圧縮機、レシプロ式圧縮機等の容積圧縮機等が挙げられる。
得られた圧縮排ガスは、排ガス圧縮装置12から圧縮排ガス供給路16を通って、二酸化炭素精製装置13に導かれる。
また、か焼炉排ガスを圧縮する際に、か焼炉排ガスに含まれている水(水蒸気)を回収してもよい。か焼炉排ガスに含まれている水を回収することで、圧縮排ガスに含まれる二酸化炭素濃度をより高くして、二酸化炭素精製装置13で精製される高濃度二酸化炭素含有物の二酸化炭素濃度をより高くすることができる。
【0029】
二酸化炭素精製装置13において、圧縮排ガスが精製されて、か焼炉排ガスと比較して、二酸化炭素濃度の高い(大きい)二酸化炭素含有物を得ることができる。
二酸化炭素精製装置13において、圧縮排ガスを精製する(圧縮排ガスに含まれる酸素、窒素等を除去することで二酸化炭素濃度をより高める)方法の例としては、深冷分離法、膜分離法、及び物理吸着法等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、二酸化炭素濃度のより高い二酸化炭素含有物を得る観点から、深冷分離法が好ましい。
深冷分離法を用いた精製の例としては、二酸化炭素精製装置12において、圧縮排ガスを、圧縮排ガスに含まれる酸素の沸点及び圧縮排ガスに含まれる窒素の沸点以上であり、かつ、圧縮排ガスに含まれる二酸化炭素の沸点未満の温度にすることで、圧縮排ガスに含まれている酸素及び窒素を除去して、か焼炉排ガスと比較して、二酸化炭素濃度の高い二酸化炭素含有物を得る方法が挙げられる。なお、得られた二酸化炭素含有物は、通常、液体状のものである。
【0030】
膜分離法を用いた精製の例としては、アミン含有高分子膜等の膜に、圧縮排ガスを通過させることによって、二酸化炭素を高い濃度で含む気体と、二酸化炭素を含まないまたは低い濃度で含む気体に分離する方法が挙げられる。
物理吸着法は、二酸化炭素の圧力差及び温度差の少なくともいずれか一方を用いて、二酸化炭素を他の気体と分離させる方法である。例えば、高圧下で二酸化炭素をゼオライトや活性炭等の吸着材に吸着させた後、低圧にすることで二酸化炭素を脱着させて回収する圧力スイング法(PSA:Pressure Swing Adsorption)、低温で二酸化炭素を上記吸着材に吸着させた後、高温にすることで二酸化炭素を脱着させて回収する温度スイング法(TSA:Thermal Swing Adsorption)、圧力スイング法と温度スイング法を組み合わせたPTSA等が挙げられる。
【0031】
第一のか焼炉排ガス供給路9において、セメントクリンカ原料回収装置18と排ガス圧縮装置12の間には、か焼炉排ガスからばいじんを除去するための集塵装置14が配設されている。集塵装置14において、ばいじんを除去する方法としては、湿式処理を用いて除去する方法、電気集塵機を用いて除去する方法、バグフィルターを用いて除去する方法等が挙げられる。中でも、集塵効率の観点からバグフィルターを用いて除去する方法が好ましい。
集塵装置14で除去、回収されたばいじんは、ばいじん排出路21を通って排出される。
集塵装置14で除去、回収されるばいじんは、通常、生石灰を含む微粉である。該微粉を、生石灰含有原料として、セメントクリンカの原料の一部として用いてもよい。集塵装置14で回収された生石灰含有原料(生石灰を含む微粉)は、ロータリーキルン3に直接供給してもよく、サイクロン式予熱装置2に供給してもよい。
【0032】
第一のか焼炉排ガス供給路9において、セメントクリンカ原料回収装置18と排ガス圧縮装置12の間には、か焼炉排ガス(炭酸ガス含有排ガス)から酸性ガス(ただし、炭酸ガスを除く。)を除去するための酸性ガス除去装置15が配設されている。
酸性ガス除去装置15において、か焼炉排ガスから酸性ガスを除去する方法の例としては、湿式スクラバーを使用し、苛性ソーダや水酸化マグネシウム溶液等の溶液に酸性ガスを溶解させて除去する方法や、活性炭等の吸着材を充填した塔にか焼炉排ガスを通過させて酸性ガスを除去する方法等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、酸性ガス(ただし、炭酸ガスを除く)の例としては、二酸化硫黄(SO)、三酸化硫黄(SO)等の硫黄酸化物(SOx)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)等の窒素酸化物(NOx)、塩化水素(HCl)等が挙げられる。
【0033】
集塵装置14と酸性ガス除去装置15の順序は特に限定されず、集塵装置の前流側(よりか焼炉4に近い位置)に酸性ガス除去装置を配設してもよく、集塵装置の後流側(よりか焼炉4から遠い位置)に酸性ガス除去装置を配設してもよい。中でも、より効率的に集塵、及び酸性ガスの除去を行う観点から、集塵装置の後流側に酸性ガス除去装置を配設することが好ましい。
また、集塵装置が酸性ガス除去装置を兼ねていてもよい。例えば、バグフィルターを用いた集塵装置において、集塵装置の前で、か焼炉排ガスに消石灰や重曹等の酸性ガス処理剤を添加することで、か焼炉排ガスに含まれている酸性ガスを酸性ガス処理剤で補足した後、バグフィルターでばいじんと酸性ガスを同時に除去してもよい。
【0034】
また、第一のか焼炉排ガス供給路9の途中であり、かつ、集塵装置14及び酸性ガス除去装置15が配設されている位置よりも前流側に、か焼炉排ガス供給路9の中を流通するか焼炉排ガスの温度を低下するためのか焼炉排ガス温度低下装置(図示せず。)を配設してもよい。か焼炉排ガス温度低下装置としては、か焼炉排ガスの温度を低下することができるものであれば特に限定されない。例えば、空気とか焼炉排ガスを熱交換するための装置や、液体とか焼炉排ガスを熱交換するための装置等が挙げられる。
か焼炉排ガスの温度を、例えば、100~400℃にまで低下させることで、集塵装置14及び酸性ガス除去装置15において、より効率的に集塵及び酸性ガスの除去を行うことができる。また、か焼炉排ガスが高温であることによる、各種装置に対する悪影響を低減することができる。
【0035】
二酸化炭素精製装置13において精製された高濃度二酸化炭素含有物は、高濃度二酸化炭素含有物排出路17を通って排出される。
得られた高濃度二酸化炭素含有物は、精製方法や精製条件によっても異なるが、液体又は気体である。中でも、貯蔵等の取り扱いが容易になる観点から液体が好ましい。
気体の状態である上記高濃度二酸化炭素含有物中、二酸化炭素(CO)の割合は、好ましくは95mol%を超え、より好ましくは98mol%以上である。
気体の状態である上記高濃度二酸化炭素含有物中、窒素(N)の割合は、好ましくは2mol%未満、水素(H)の割合は、好ましくは0.75mol%未満、一酸化炭素(CO)の割合は、好ましくは0.2mol%未満である。
気体の状態である上記高濃度二酸化炭素含有物中、窒素(N)、水素(H)、一酸化炭素(CO)、及び酸素(O)の割合の合計は、好ましくは4mol%未満である。
【0036】
気体の状態である上記高濃度二酸化炭素含有物中、酸素(O)の割合(体積基準)は、好ましくは10ppm未満である。
気体の状態である上記高濃度二酸化炭素含有物中、硫化水素(HS)の割合(体積基準)は、好ましくは200ppm未満である。
気体の状態である上記高濃度二酸化炭素含有物中、二酸化硫黄(SO)の割合(体積基準)は、安全衛生上の観点から、好ましくは100ppm未満、装置の腐食防止の観点から、より好ましくは50ppm未満である。
気体の状態である上記高濃度二酸化炭素含有物中、二酸化窒素(NO)の割合(体積基準)は、安全衛生上の観点から、好ましくは100ppm未満、装置の腐食防止の観点から、より好ましくは50ppm未満である。
気体の状態である上記高濃度二酸化炭素含有物中、二酸化炭素(CO)等の割合が、上述した数値範囲を満たす高濃度二酸化炭素含有物は、貯蔵や、メタン等の原料として用いるのに好適である。
【0037】
得られた高濃度二酸化炭素含有物は、液状の状態のまま貯蔵槽(図示せず。)に搬送して、貯蔵してもよい。
また、得られた高濃度二酸化炭素含有物に含まれる二酸化炭素を利用してもよい。
二酸化炭素の利用の一例としては、水素ガスと、上記排ガスに含まれる炭酸ガスから、触媒を用いてメタンやメタノールを生成する方法が挙げられる。
水素ガスは、水を電気分解すること等によって得ることができる。水を電気分解する際の電気エネルギーとして、水力、風力、地熱、又は太陽光等の再生可能なエネルギー由来のものを用いれば、二酸化炭素の排出量をさらに削減することができる。この際、酸素も生成されるが、該酸素は、上述した支燃性ガスに含まれる酸素として使用してもよい。
【0038】
メタンに変換する触媒の例としては、Rh/Mn系、Rh系、Ni系、Pd系及びPt系等の触媒が挙げられる。また、上記触媒を担持するための担体を用いてもよい。該担体の例としては、CeO、ZrO、Y、Al、MgO、TiO等が挙げられる。これらは適宜選択して用いればよい。
生成されたメタンは、二酸化炭素の排出量をより小さくする観点から、ロータリーキルン3及びか焼炉4の少なくともいずれか一方の燃料として利用することができる。また、生成されたメタンは、別途、発電用の燃料として用いてもよい。
メタノールに変換する触媒の例としては、Re系やPt系、Ir系、Cu系及びZn系等が挙げられる。生成されたメタノールは、さらに固体酸触媒等を用いてオレフィンや芳香族など有価燃料や化学物質に変換することができる。
また、高濃度二酸化炭素含有物と水素等を反応させることで、船舶用燃料、航空燃料(SAF:Sustainable aviation Fuel)を生成してもよい。
【0039】
また、二酸化炭素の利用の他の例としては、カルシウム含有廃棄物の炭酸化が挙げられる。
具体的には、高濃度二酸化炭素含有物とカルシウム含有廃棄物を接触させて、高濃度二酸化炭素含有物に含まれる二酸化炭素(通常、気体状の二酸化炭素:炭酸ガス)をカルシウム含有廃棄物に吸収させる方法である。炭酸ガスを、カルシウム含有廃棄物に吸収させて、固定化することで、大気中への二酸化炭素の排出量を低減することができる。カルシウム含有廃棄物の例としては、廃コンクリート等が挙げられる。
炭酸ガスを吸収したカルシウム含有廃棄物は、上述したセメントクリンカ製造システムにおいて、セメントクリンカ原料として使用してもよい。
また、炭酸ガスを吸収したカルシウム含有廃棄物を、破砕、分級等して、路盤材やコンクリート用骨材等として利用してもよい。さらに、カルシウム含有廃棄物が廃コンクリートである場合、炭酸ガスを吸収した廃コンクリート中のペースト成分のみを分離回収して、セメント原料として利用してもよい。
【0040】
ロータリーキルン3において、セメントクリンカ原料を焼成することで、セメントクリンカを得ることができる。セメントクリンカ原料の焼成温度は、セメントクリンカ製造における一般的な温度でよく、通常、1,400℃以上である。
ロータリーキルン3において、セメントクリンカの原料の焼成に用いられる燃料としては、か焼炉4において用いられる燃料と同様のものを使用することができる。また、有機成分を多く含む汚染土壌や廃タイヤ等の破砕しにくい燃料は、ロータリーキルン3の原料投入口から直接投入してもよい。
また、ロータリーキルン3で生じた排ガスは、該排ガスを、サイクロン式予熱装置2を経由した後に排出するためのキルン排ガス排出路6a~6eの中を流通した後、サイクロン式予熱装置2の上部から排出され、サイクロン、バグフィルター、又は電気集塵機等を用いて除塵された後、煙突から外部へ排出される。
【0041】
二酸化炭素の排出量をより低減する観点から、キルン排ガスから炭酸ガスを分離、回収してもよい。
キルン排ガスから炭酸ガスを分離、回収する方法の例としては、モノエタノールアミン等を二酸化炭素吸収剤として用いた化学吸収法、生石灰を二酸化炭素吸収剤として用いたカルシウムルーピング、固体吸着法、膜分離法等が挙げられる。
カルシウムルーピングで用いられる生石灰は、石灰石の脱炭酸により得られたものであってもよい。繰り返し使用した石灰石は、最終的にセメントクリンカ原料として用いることができる。
【0042】
また、キルン排ガスの一部を、サイクロン式予熱装置2を経由せずに抽気して冷却し、固体分を除いた後に、固体分が除かれた排ガスを排出すると共に、固体分を粗粉と微粉に分級して、粗粉をセメントクリンカ原料の一部として用い、微粉を回収するための塩素バイパス装置10を配設してもよい。
なお、「粗粉」は、セメントクリンカ原料成分が多く、かつ、塩素が少ない傾向があり、「微粉」は、塩素が多くなる傾向がある。
塩基バイパス装置10は、通常、サイクロン式予熱装置2とロータリーキルン3の接続部分に配設される。塩素バイパス装置10を配設することによって、都市ゴミ焼却灰等の塩素を含有する廃棄物を、セメントクリンカ原料やロータリーキルンの燃料としてより大量に使用することができる。
塩素バイパス装置10から排出されるキルン排ガスは、通常、キルン排ガス排出路6aに戻される。
【0043】
ロータリーキルン3で得られたセメントクリンカは、ロータリーキルンの後流側に配設された、セメントクリンカを冷却するためのクリンカクーラー5に投入されて、冷却される。
か焼炉4及びロータリーキルン3における加熱をより効率的に行う観点から、セメントクリンカの冷却に用いられる空気を、クリンカクーラー5の前流側と後流側に分け、セメントクリンカを冷却した後の後流側の空気を、支燃性ガス供給路8内を通る支燃性ガスの間接加熱に用いてもよい。
また、前流側と後流側の冷却に用いられるガスを異なるものにしてもよい。具体的には、クリンカクーラー5の前流側を冷却するガスとして空気を使用し、後流側を冷却するガスとして、支燃性ガス供給路8内を通る支燃性ガスを使用してもよい。
前流側を冷却するガスは、高温のセメントクリンカと熱交換された後、ロータリーキルン3内において燃料を燃焼するための支燃性のガスとして使用される。なお、前流側を冷却するガスは、クリンカクーラー5の入口側で熱交換されるため、後流側を冷却するガスと比較して、熱交換後により高温となる。
【0044】
また、ロータリーキルン内において燃料を燃焼する際に用いられる空気及び支燃性ガスの加熱、並びに、ロータリーキルン及びか焼炉の加熱の補助として、電気エネルギーを用いて加熱してもよい。電気エネルギーを用いた加熱方法としては、プラズマ加熱、抵抗加熱、マイクロ波加熱等が挙げられる。電気エネルギーとして、再生可能なエネルギーを用いれば、二酸化炭素の排出量をさらに低減することができる。
【0045】
以下、図2を参照にしながら、本発明のセメントクリンカ製造システムの他の一例について詳しく説明する。
図2のセメントクリンカ製造システム31は、2個以上のサイクロン式熱交換器32a~32dを含むサイクロン式予熱装置32と、ロータリーキルン33と、加熱手段50を含むか焼炉34と、クリンカクーラー35と、キルン排ガス排出路36、36a~36e、支燃性ガス供給装置37と、第一のか焼炉排ガス供給路39の途中であって、集塵装置44及び酸性ガス除去装置45よりも前流側の位置で、第一のか焼炉排ガス供給路39の中を流通する炭酸ガス含有排ガスと、支燃性ガス供給路38の中を流通する支燃性ガスを熱交換するように配設された支燃性ガス供給路38と、排ガス圧縮装置42と、二酸化炭素精製装置43と、第一のか焼炉排ガス供給路39と、セメントクリンカ原料回収装置48と、集塵装置44と、酸性ガス除去装置45と、圧縮排ガス供給路46と、第一のか焼炉排ガス供給路39の途中であって、集塵装置44及び酸性ガス除去装置45よりも後流側の位置で、第一のか焼炉排ガス供給路39と連結し、かつ、第一のか焼炉排ガス供給路39の中を流通する炭酸ガス含有排ガスの一部を、支燃性ガス供給路38の中を流通する支燃性ガスに合流させるための第二のか焼炉排ガス供給路53を含む。
【0046】
サイクロン式熱交換器32a~32d、サイクロン式予熱装置32、ロータリーキルン33、か焼炉34、クリンカクーラー35、キルン排ガス排出路36、36a~36e、支燃性ガス供給装置37、塩素バイパス装置40、排ガス圧縮装置42、二酸化炭素精製装置43、集塵装置44、酸性ガス除去装置45、圧縮排ガス供給路46、高濃度二酸化炭素排出路47、セメントクリンカ原料回収装置48、予熱原料供給路49、加熱手段50、ばいじん排出路51、及び脱炭酸供給路52は、各々、上述した、サイクロン式熱交換器2a~2d、サイクロン式予熱装置2、ロータリーキルン3、か焼炉4、クリンカクーラー5、キルン排ガス排出路6、6a~6e、支燃性ガス供給装置7、塩素バイパス装置10、排ガス圧縮装置12、二酸化炭素精製装置13、集塵装置14、酸性ガス除去装置15、圧縮排ガス供給路16、高濃度二酸化炭素排出路17、セメントクリンカ原料回収装置18、予熱原料供給路19、加熱手段20、ばいじん排出路21、及び脱炭酸供給路22と同様である。
【0047】
サイクロン式予熱装置32を構成する2個以上のサイクロン式熱交換器32a~32dのうち、予熱原料供給路49が連結しているサイクロン式熱交換器32c内において、セメントクリンカ原料は、好ましくは600~900℃、より好ましくは700~900℃で予熱される。このような温度範囲で予熱することで、キルン排ガスがサイクロン式予熱装置32(特に、予熱原料供給路49が連結しているサイクロン式熱交換器32c)を経由する際に、キルン排ガスに含まれている炭酸ガスを、生石灰含有原料供給路54からサイクロン式予熱装置32に投入された生石灰含有原料(詳しくは後述する)に固定化(炭酸化)させることがより容易となり、キルン排ガス中の炭酸ガスの量を減らすことができ、かつ、か焼炉排ガス中の炭酸ガスの濃度をより高くすることができる。
【0048】
支燃性ガス供給路38は、か焼炉排ガス供給路39の途中であって、集塵装置44が配設されている位置、及び、酸性ガス除去装置45が配設されている位置よりも前流側の位置で、第一のか焼炉排ガス供給路39の中を流通するか焼炉排ガスと支燃性ガスを熱交換するように配設されている。
このように配設されることによって、支燃性ガス供給路38の中を流通する支燃性ガスが、間接的に加熱されて昇温されて、か焼炉34で用いられる燃料の投入量を低減することができる。また、第一のか焼炉排ガス供給路39の中を流通するか焼炉排ガスの温度を低下させて、集塵装置44において、か焼炉排ガスからばいじんを除去する効率、及び、酸性ガス除去装置45において、か焼炉排ガスから酸性ガス除去する効率を向上することができる。
また、支燃性ガス供給路38は、クリンカクーラー35内のセメントクリンカとの熱交換によって昇温された空気によって、支燃性ガス供給路38内を通る支燃性ガスが、間接的に加熱されて昇温するように、配設されていてもよい(図示せず。)。また、セメントクーラー35の後流側(クリンカクーラーの出口側)の一部分に、支燃性ガス供給路38を通過させることによって、セメントクリンカの熱によって、支燃性ガスを昇温させてもよい(図示せず。)。
【0049】
第一のか焼炉排ガス供給路39の途中であって、集塵装置44及び酸性ガス除去装置45よりも後流側の位置で、第一のか焼炉排ガス供給路39と連結し、かつ、第一のか焼炉排ガス供給路39の中を流通するか焼炉排ガスの一部を、支燃性ガス供給路38の中を流通する支燃性ガスに合流させるための第二のか焼炉排ガス供給路53が配設されている。
このように配設されることによって、支燃性ガス供給路38の中を流通する支燃性ガスとか焼炉排ガス(特に炭酸ガス)を混合して、支燃性ガスの酸素濃度等を調整することができる。また、か焼炉34から排出されたか焼炉排ガスの温度は800℃程度と高温であるため、か焼炉排ガスと混合することによって、支燃性ガスを昇温することができる。
また、か焼炉排ガスの一部を、支燃性ガスの一部として使用して循環させることで、第一のか焼炉排ガス供給路39から排出される排ガスの量を低減することができる。支燃性ガスの一部として使用される、第一のか焼炉排ガス供給路39の中を流通するか焼炉排ガスの循環量は、好ましくは50~70体積%である。
さらに、第一のか焼炉排ガス供給路39から、支燃性ガス供給路38の中を流通する支燃性ガスに合流させられるか焼炉排ガスは、集塵装置44及び酸性ガス除去装置45においてばいじん及び酸性ガスを回収した後のものであるため、か焼炉34内における、ダストの滞留や付着、燃料の燃焼への悪影響、第一のか焼炉排ガス供給路39内における、ダストの滞留や付着による、か焼炉排ガスと支燃性ガスとの熱交換への悪影響等を低減することができる。
【0050】
キルン排ガス排出路36の、ロータリーキルン33と連結している部分から、最後流側に位置するサイクロン式熱交換器32dの前流側の部分までの間(図2中、一点鎖線で囲って示す。)の、キルン排ガス排出路36の中を流通する排ガスに、脱硝剤を供給するための脱硝剤供給装置(図示せず。)を配設してもよい。上記排ガスに、尿素等の脱硝剤を噴霧することで、排ガス中のNOxを低減することができる。
【0051】
通常、900℃程度の温度で、排ガスに脱硝剤を噴霧することで、排ガス中のNOxを低減する効果を得ることができる。一般的なセメントクリンカ製造システムでは、ロータリーキルンの窯尻からボトムサイクロン(最後流側に位置するサイクロン式熱交換器)の領域において、排ガスの温度が900℃程度となるが、該領域では、セメントクリンカ原料由来の微粉が大量に存在している。このため、噴霧された脱硝剤が、微粉に吸着されて、上記効果が小さくなるという問題がある。
一方、本発明のセメントクリンカ製造システム31によれば、上記領域(キルン排ガス排出路36の、ロータリーキルン33と連結している部分から、最後流側に位置するサイクロン式熱交換器32dを経過する部分)の排ガス中のセメントクリンカ原料由来の微粉の量を低減することができるため、排ガス中のNOxの量を効率的に低減することができる。
【0052】
また、支燃性ガス供給路38のか焼炉排ガスと支燃性ガスを熱交換させる部分よりも支燃性ガス供給装置37に近い位置、及び、第二のか焼炉排ガス供給路53の途中の位置(第二のか焼炉排ガス供給路53と第一のか焼炉排ガス供給路39の連結部分から、第二のか焼炉排ガス供給路53と支燃性ガス供給路38の連結部分の間)の少なくともいずれか一方の位置において、支燃性ガス供給路38又は第二のか焼炉排ガス供給路53と連結し、かつ、支燃性ガス供給路38の中を流通する支燃性ガスの一部、及び、第二のか焼炉排ガス供給路53の中を流通するか焼炉排ガスの一部の少なくともいずれか一方を、か焼炉34の加熱手段50に供給するための加熱手段用ガス供給路58を配設してもよい。
なお、図2では、加熱手段用ガス供給路58は、支燃性ガス供給路38のか焼炉排ガスと支燃性ガスを熱交換させる部分よりも支燃性ガス供給装置37に近い位置において、支燃性ガス供給路38と連結している。
加熱手段用ガス供給路58を用いて、か焼炉34の加熱手段50にガスを供給することによって、か焼炉34から排出されるか焼炉排ガスの体積をより小さくすることができ、かつ、か焼炉排ガス中の炭酸ガス濃度をより高くすることができる。
【0053】
脱炭酸原料供給路52の途中に、脱炭酸原料供給路52の中を流通する脱炭酸されたセメントクリンカ原料の一部を、生石灰含有原料として回収するための生石灰含有原料回収装置41を配設してもよい。
生石灰含有原料回収装置41で回収された生石灰含有原料は、キルン排ガス中の炭酸ガスを該生石灰含有原料に固定化(炭酸化)させる目的で、生石灰含有原料回収装置41から、生石灰含有原料排出路57を通って、生石灰含有原料供給路54から、サイクロン式予熱装置32に供給される。
なお、生石灰含有原料排出路57は、ばいじん排出路51と連結していてもよい。また、図2中、生石灰含有原料排出路57は、生石灰含有原料供給路54とつながっている。
【0054】
生石灰含有原料回収装置41及び集塵装置44において回収された生石灰含有原料(生石灰を含む微粉、または、生石灰を含む脱炭酸化されたセメントクリンカ原料)は、生石灰含有原料供給路54を通って、サイクロン式予熱装置32を構成する2個以上のサイクロン式熱交換器32a~32dのうち、予熱原料供給路49が連結しているサイクロン式熱交換器32cまたは、該サイクロン式熱交換器の前流側に位置するサイクロン式熱交換器32a~32bのいずれかに供給される。
【0055】
予熱原料供給路49が連結しているサイクロン式熱交換器32cまたは、該サイクロン式熱交換器の前流側に位置するサイクロン式熱交換器32a~32bのいずれかの中に、生石灰含有原料が供給されることによって、キルン排ガス排出路36の中を流通するキルン排ガスが、サイクロン式予熱装置32を経由する際に、キルン排ガスに含まれている炭酸ガスが、生石灰含有原料に固定化(炭酸化)される。これにより、キルン排ガス排出路36から排出されるキルン排ガス中に含まれる炭酸ガス(二酸化炭素)の量を減らすことができる。
生石灰含有原料に固定化された二酸化炭素は、他のセメントクリンカ原料とともにか焼炉34に投入された後、か焼炉34内で脱炭酸され、か焼炉排ガスとして回収することができる。
【0056】
第二の脱炭酸原料供給路59は、脱炭酸原料供給路52と連結され、脱炭酸原料供給路52から、脱炭酸されたセメントクリンカ原料の一部を、サイクロン式予熱装置32を構成する2個以上のサイクロン式熱交換器のうち、最後流側に位置するサイクロン式熱交換器32dに供給するためのものである。
第二の脱炭酸原料供給路59の中を流通する脱炭酸されたセメントクリンカ原料は高温(例えば、950~1,000℃)であり、該原料を、最後流側に位置するサイクロン式熱交換器32dに供給することによって、サイクロン式予熱装置32内の温度をより高温にし、セメントクリンカ原料の予熱や、キルン排ガスに含まれている炭酸ガスの固定化(炭酸化)をより効率的に行うことができる。
サイクロン式熱交換器32dに供給されたセメントクリンカ原料は、サイクロン式熱交換器32dを経由するキルン排ガスと熱交換しつつ遠心分離された後、ロータリーキルン33に投入される。
なお、第二の脱炭酸原料供給路59の一部分が、キルン排ガス排出路36を兼ねていてもよい。
【0057】
脱炭酸原料供給量制御装置55は、第二の脱炭酸原料供給路59から、最後流側に位置するサイクロン式熱交換器32dに供給される脱炭酸されたセメントクリンカ原料の量を調整し、該原料の量の調整によって、サイクロン式熱交換器32d内の温度及びサイクロン式熱交換器32d内を経由するキルン排ガスの温度を調整することによって、予熱原料供給路49と連結しているサイクロン式熱交換器32c内の温度を調整するためのものである。
上記原料の量の調整は、キルン排ガス排出路36中のキルン排ガスが、予熱原料供給路49と連結しているサイクロン式熱交換器32cを経由するときの温度に基づいて行われる。
上記温度は、予熱原料供給路49と連結しているサイクロン式熱交換器32cを経由するキルン排ガス排出路36の入口(キルン排ガスがサイクロン式熱交換器32cに入ってくる位置)付近の温度でもよく、キルン排ガス排出路36の出口(キルン排ガスがサイクロン式熱交換器32cから出ていく位置)付近の温度でもよい。
上記温度は、温度測定装置34によって測定される。温度測定装置34は、予熱原料供給路49と連結しているサイクロン式熱交換器32cに、適宜配設すればよい。
【0058】
予熱原料供給路49と連結しているサイクロン式熱交換器32c内の温度を調整する目的で、キルン排ガス排出路36aの、ロータリーキルン33と連結している部分から、最後流側に位置するサイクロン式熱交換器32dの前流側の部分までの間(図2中、一点鎖線で囲って示す。)の、キルン排ガス排出路36の中を流通する排ガスに、水又は含水廃棄物を供給するための水分供給装置(図示せず。)を配設してもよい。上記排ガスに、水又は含水廃棄物を供給することで、上記温度が調整される。該調整は、温度測定装置34によって測定された温度に基づいて行えばよく、また、脱炭酸原料供給量制御装置55と連動していてもよい。
【0059】
また、クリンカクーラー35からクリンカクーラー35内の空気をキルン排ガス排出路36a内に導くための空気供給路56を配設してもよい。上記空気は、クリンカクーラー35内のセメントクリンカとの熱交換によって昇温されたものである。空気供給路56からキルン排ガス排出路36aに供給される上記空気の量を調整することによって、キルン排ガス排出路36内のキルン排ガスの温度やその量を調整することができ、窯尻部に投入された廃棄物の不完全燃焼を解消することもできる。
上記空気の量は、温度測定装置34によって測定された温度に基づいて調整すればよく、また、脱炭酸原料供給量制御装置55と連動して調整してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1,31 セメントクリンカ製造システム
2,32 サイクロン式予熱装置
2a,2b,2c,2d,32a,32b,32c,32d サイクロン式熱交換器
3,33 ロータリーキルン
4,34 か焼炉
5,35 クリンカクーラー
6,6a,6b,6c,6d,6e,36a,36,36b,36c,36d,36e キルン排ガス排出路
7,37 支燃性ガス供給装置
8,38 支燃性ガス供給路
9,39 第一のか焼炉排ガス供給路
10,40 塩素バイパス装置
11 合流用流通路
12,42 排ガス圧縮装置
13,43 二酸化炭素精製装置
14、44 集塵装置
15,45 酸性ガス除去装置
16,46 圧縮排ガス供給路
17,47 高濃度二酸化炭素含有物排出路
18,48 セメントクリンカ原料回収装置
19,49 予熱原料供給路
20,50 加熱手段
21,51 ばいじん排出路
22,52 脱炭酸原料供給路
23 空気流通路
34 温度測定装置
41 生石灰含有原料回収装置
53 第二のか焼炉排ガス供給路
54 生石灰含有原料供給路
55 脱炭酸原料供給量制御装置
56 空気供給路
57 生石灰含有原料排出路
58 加熱手段用ガス供給路
59 第二の脱炭酸原料供給路
図1
図2