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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139978
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】空間状態監視システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/02 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G08B21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050948
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇野 颯人
(72)【発明者】
【氏名】久次 展弘
(72)【発明者】
【氏名】榊原 誠史
【テーマコード(参考)】
5C086
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086AA38
5C086CB01
5C086DA19
5C086EA11
5C086FA01
5C086FA11
(57)【要約】
【課題】被監視空間の状態の把握を安価でかつシンプルに実現する空間状態監視システムを提供する。
【解決手段】換気可能な密閉された被監視空間40の状態を監視する空間状態監視システム41において、被監視空間40の温度を検出する温度センサ1と、被監視空間40の湿度を検出する湿度センサ2と、温度センサ1からの温度データと湿度センサ2からの湿度データとのそれぞれの増減を比較するデータ比較部7と、データ比較部7による比較結果に基づき、被監視空間40の温度および湿度以外の状態変化を推定して被監視空間40の状態を判定する判定処理部9とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
換気可能な密閉された被監視空間の状態を監視する空間状態監視システムにおいて、
前記被監視空間の温度を検出する温度センサと、
前記被監視空間の湿度を検出する湿度センサと、
前記温度センサからの温度データと前記湿度センサからの湿度データとのそれぞれの増減を比較するデータ比較部と、
前記データ比較部による比較結果に基づき、前記被監視空間の温度および湿度以外の状態変化を推定して前記被監視空間の状態を判定する判定処理部とを備えた空間状態監視システム。
【請求項2】
換気可能な密閉された被監視空間の状態を監視する空間状態監視システムにおいて、
前記被監視空間の温度を検出する温度センサと、
前記被監視空間の湿度を検出する湿度センサと、
前記温度センサからの温度データと前記湿度センサからの湿度データとのそれぞれの増減を比較するデータ比較部と、
前記データ比較部による比較結果に基づき、前記被監視空間の二酸化炭素濃度の変化を推定して前記被監視空間の状態を判定する判定処理部とを備えた空間状態監視システム。
【請求項3】
前記温度データおよび前記湿度データをあらかじめ設定された期間蓄積する蓄積部を備えた請求項1または請求項2に記載の空間状態監視システム。
【請求項4】
前記蓄積部に蓄積された前記温度データのあらかじめ設置された期間の正規化を行うとともに、前記蓄積部に蓄積された前記湿度データのあらかじめ設定された期間の正規化を行う正規化処理部と、
前記データ比較部は、正規化された正規化温度データおよび正規化湿度データを用いてそれぞれの増減を比較する請求項3に記載の空間状態監視システム。
【請求項5】
前記データ比較部は、前記温度データと前記湿度データとのそれぞれの増減をリアルタイムで比較する請求項1または請求項2に記載の空間状態監視システム。
【請求項6】
前記判定処理部は、判定処理を行う前に前記被監視空間の二酸化炭素濃度の絶対値と、温度および湿度との関係を事前測定して校正処置を行う請求項1または請求項2に記載の空間状態監視システム。
【請求項7】
前記判定処理部は、前記データ比較部の比較結果から前記被監視空間内の二酸化炭素濃度の絶対値の推定を行う請求項6に記載の空間状態監視システム。
【請求項8】
前記判定処理部は、前記被監視空間内の二酸化炭素濃度の変化から、前記被監視空間内の人の人数の変化を推定する請求項1または請求項2に記載の空間状態監視システム。
【請求項9】
前記判定処理部は、判定処理を行う前に前記被監視空間の人数と、温度および湿度との関係を事前測定して校正処置を行う請求項1または請求項2に記載の空間状態監視システム。
【請求項10】
前記判定処理部は、前記データ比較部の比較結果から前記被監視空間内の人数の推定を行う請求項9に記載の空間状態監視システム。
【請求項11】
前記判定処理部の判定結果は、前記被監視空間の換気の有無を判定する請求項1または請求項2に記載の空間状態監視システム。
【請求項12】
前記判定処理部の判定結果を出力する出力部を備えた請求項1または請求項2に記載の空間状態監視システム。
【請求項13】
前記出力部は、前記判定結果を前記被監視空間に対して音または光の少なくともいずれか一方にて出力する請求項12に記載の空間状態監視システム。
【請求項14】
前記出力部は、前記被監視空間から他の空間に対して前記判定結果を伝送する請求項12に記載の空間状態監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、空間状態監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の空間状態監視システムは、高齢者などの見守りシステムなどの分野において、環境センサの出力より室内の環境を把握するものとして提案されていた。近年、介護施設などに向けた見守りサポート機器への需要が高まり、高度な見守りを実現するためにより細かな室内環境の把握が求められている。さらに、その情報に基づき内外部への注意喚起アラートおよび空調での換気調整を行う装置が増えつつある。
【0003】
このため、これら機器は多種多様なセンサが実装され、室内環境を詳細に把握することで、様々な制御を行う装置が存在する。従来、温度センサと湿度センサとにより室内の詳細な温度と湿度をリアルタイムに把握して空調を行うことで、換気を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、他の従来例では、車両室内の二酸化炭素濃度を測定する目的で二酸化炭素濃度センサが搭載され、数値が高い場合は換気を促すように知らせるものが存在する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-12022号公報
【特許文献2】特開2020-154976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の空間状態監視システムにおいて、一般的で安価な温度センサと湿度センサとによる、温度および湿度の検出だけでは、室内の温度と湿度の調整しかできない。また、他の従来の空間状態監視システムでは、二酸化炭素濃度の測定を行うために、温度センサまたは湿度センサよりも高価な二酸化炭素濃度センサと、その制御回路等の設備が必要となり、部品点数が増えコスト高になるという問題点があった。
【0007】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、被監視空間の状態の把握を安価でかつシンプルに実現できる空間状態監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に開示される空間状態監視システムは、
換気可能な密閉された被監視空間の状態を監視する空間状態監視システムにおいて、
前記被監視空間の温度を検出する温度センサと、
前記被監視空間の湿度を検出する湿度センサと、
前記温度センサからの温度データと前記湿度センサからの湿度データとのそれぞれの増減を比較するデータ比較部と、
前記データ比較部による比較結果に基づき、前記被監視空間の温度および湿度以外の状態変化を推定して前記被監視空間の状態を判定する判定処理部とを備えたものである。
また、本願に開示される空間状態監視システムは、
換気可能な密閉された被監視空間の状態を監視する空間状態監視システムにおいて、
前記被監視空間の温度を検出する温度センサと、
前記被監視空間の湿度を検出する湿度センサと、
前記温度センサからの温度データと前記湿度センサからの湿度データとのそれぞれの増減を比較するデータ比較部と、
前記データ比較部による比較結果に基づき、前記被監視空間の二酸化炭素濃度の変化を推定して前記被監視空間の状態を判定する判定処理部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本願に開示される空間状態監視システムによれば、被監視空間の状態の把握を安価でかつシンプルに実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1による空間状態監視システムの設置状態を示すブロック図である。
図2図1に示した空間状態監視システムの構成を示すブロック図である。
図3図1に示した空間状態監視システムの設置された居室と別居室との関係を示すブロック図である。
図4図1に示した空間状態監視システムの温度データの測定結果を示す図である。
図5図1に示した空間状態監視システムの湿度データの測定結果を示す図である。
図6図4に示した空間状態監視システムの温度データを正規化処理した結果を示す図である。
図7図5に示した空間状態監視システムの湿度データを正規化処理した結果を示す図である。
図8図6に示した空間状態監視システムの正規化温度データを反転処理した結果を示す図である。
図9図5に示した正規化湿度データと図8に示した反転温度データとの比較結果を示す図である。
図10図10Aは、図9に示した比較結果を示し、図10Bは、図10Aに示した比較結果に基づいて判定した判定結果を示す図である。
図11】実施の形態1を検証するための居室の構成を示す図である。
図12図11に示した二酸化炭素濃度センサの測定結果を示す図である。
図13】実施の形態1による他の空間状態監視システムの構成を示すブロック図である。
図14】実施の形態2による空間状態監視システムの構成を示すブロック図である。
図15図15Aは、図9に示した比較結果を示し、図15Bは、図15Aに示した比較結果に基づいて判定した判定結果を示す図である。
図16】各実施の形態に示した空間状態監視システムの信号処理部のハードウエアの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による空間状態監視システムの設置状態を示すブロック図である。図2は、図1に示した空間状態監視システムの構成を示すブロック図である。図3は、図1に示した空間状態監視システムの設置された居室と別居室との関係を示すブロック図である。図4は、図1に示した空間状態監視システムの温度データの測定結果を示す図である。図5は、図1に示した空間状態監視システムの湿度データの測定結果を示す図である。図6は、図4に示した空間状態監視システムの温度データを正規化処理した結果を示す図である。図7は、図5に示した空間状態監視システムの湿度データを正規化処理した結果を示す図である。
【0012】
図8は、図6に示した空間状態監視システムの正規化温度データを反転処理した結果を示す図である。図9は、図5に示した正規化湿度データと図8に示した反転温度データとの比較を示す図である。図10Aは、図9に示した比較結果を示す図である。図10Bは、図10Aに示した比較結果に基づいて判定した判定結果を示す図である。図11は、実施の形態1を検証するための居室の構成を示す図である。図12は、図11に示した二酸化炭素濃度センサの測定結果を示す図である。図13は、実施の形態1による他の空間状態監視システムの構成を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、被監視空間としての居室40の状態を監視する空間状態監視システム41には、居室40内の温度を測定する温度センサ1と、居室40内の湿度を測定する湿度センサ2と、温度センサ1からの温度データおよび湿度センサ2からの湿度データに基づいて居室40内の状態の判定を行う信号処理部11と、信号処理部11の判定結果を出力する出力部10とを備える。
【0014】
図2に示すように、信号処理部11は、温度センサからのあらかじめ設定された期間分の温度データを一時保存する温度データ蓄積部3と、湿度センサ2からのあらかじめ設定された期間分の湿度データを一時保存する湿度データ蓄積部4と、温度データと湿度データとのスケールをあわせるために、あらかじめ設定された期間の温度データの正規化を行う温度データ正規化処理部5とを備える。
【0015】
さらに、温度データと湿度データとのスケールをあわせるために、あらかじめ設定された期間の湿度データの正規化を行う湿度データ正規化処理部6と、正規化された正規化温度データを上下反転する温度データ反転処理部7と、正規化湿度データ、および、反転処理を行った反転温度データとのそれぞれの増減を比較するデータ比較部8と、データ比較部8の比較結果に基づいて居室40の温度および湿度以外の状態変化を推定、具体的には、二酸化炭素濃度の変化を推定して、居室40の状態を判定する判定処理部9とを備える。
【0016】
図3に示すように、空間状態監視システム41が監視する居室40とは他の空間としての別居室50には、居室40の出力部10からのデータが受信可能な端末機51が存在する。端末機51は、空間状態監視システム41の出力部10の結果データは受信する受信部52と、受信部52にて受信した結果データを表示する表示部53とを備える。居室40から別居室50へは、例えば、Wi-Fi(登録商標、以下当該記載を省略する)を用いて結果データが伝送される。
【0017】
なお、図2に示すように、空間状態監視システム41は、温度センサ1および湿度センサ2と、信号処理部11および出力部10との大まかに2つの構造物に分けられる。よって、温度センサ1および湿度センサ2は、居室40内に測定のための設置状況として、例えば、居室40内の机のうえなど、人30の通りが多く、人30の利用頻度の高い環境に設置することで、以下に説明する二酸化炭素濃度の増減の推定がより一層正確となる。
【0018】
図11は、本実施の形態1による空間状態監視システム41の効果を検証するため、居室40に、温度センサ1および湿度センサ2に加えて、二酸化炭素濃度センサ33が設置されている例を示している。
【0019】
上記に示した実施の形態1の空間状態監視システム41の動作について説明する。まず、本願において、温度と湿度との比較により、二酸化炭素濃度の変化の推定をいかにして行うかについて説明する。一般的な、空室状態、すなわち、居室40に人30などが存在せず換気された状態(以下、単に「空室状態」と称す)において、湿度と温度との関係には、温度が高くなると湿度は低下し、温度が低くなると湿度は高くなるという関係がある(なお、本願で示す、「湿度」とは、全て「相対湿度」を指す)。
【0020】
しかし、居室40内の人30の人数が増えると、換気しなければ温度が高くなる。そして、上記に示した空室状態の湿度と温度との関係であれば、ここでは湿度が低下するはずである。しかしながら、実際には、居室40内の人30の人数が増えると、温度が高くなるとともに、人30から排出される呼気または汗などによって湿度および二酸化炭素濃度が通用状態よりも上昇する。このことから、温度が高くなっているが湿度も高くなっている、もしくは、温度の変化量に対して湿度の変化量が比例していない点に着目することで、空室状態と比較すると二酸化炭素濃度が上昇している、または、上昇していない(空室状態である)かを推定できる。
【0021】
以上のことを用いて、空間状態監視システム41は居室40の状態の判定を行う。まず、居室40に設置された、温度センサ1および湿度センサ2にて測定された居室40内の温度データを図4に、湿度データを図5にそれぞれ示す。次に、温度センサ1にて取得された温度データを温度データ蓄積部3にて一時蓄積する。ここで温度データを蓄積する理由として、後ほど正規化を行う際に蓄積した温度データ内の最大値と最小値とを求めるためである。例えば、図6に示したt0からt1の区間で定められた一定区間K12、例えば、7時間程度の温度データが蓄積される。蓄積される一定区間K12の長さは一定であり、新しい温度データが入力されれば古い温度データは消去される。
【0022】
上記温度データと同様に、湿度センサ2にて取得された湿度データを湿度データ蓄積部4にて一時蓄積する。ここで湿度データを蓄積する理由として、後ほど正規化を行う際に蓄積した湿度データ内の最大値と最小値とを求めるためである。例えば、図7に示したt0からt1の区間で定められた一定区間K13、例えば、7時間程度の湿度データが蓄積される。蓄積される一定区間13の長さは一定であり、新しい湿度データが入力されれば古い湿度データは消去される。以上に示した、温度データ蓄積部3にて蓄積される温度データの一定区間K12と、湿度データ蓄積部4にて蓄積される湿度データの一定区間K13とは同一区間である。
【0023】
次に、蓄積された温度データと蓄積された湿度データとのスケールをあわせるために正規化処理を行う。まず、温度データ正規化処理部5が、温度データを正規化する際には、下記の(式1)が用いられる。ただし、温度データの測定値をTi(i=1・・・n)、蓄積した温度データ内の最小値をTmin、蓄積した温度データ内の最大値をTmax、正規化温度データをTTnとする。このように正規化された正規化温度データを、図6に示す。図6に示すように、温度データが正規化されているため、縦軸のスケールは0~100%となる。
【0024】
TTn=(Ti―Tmin)/(Tmax―Tmin) ・・・(式1)
【0025】
次に、湿度データ正規化処理部6が、湿度データを正規化する際には、下記の(式2)が用いられる。ただし、湿度データの測定値をHi(i=1・・・n)、蓄積した湿度データ内の最小値をHmin、蓄積した湿度データ内の最大値をHmax、正規化湿度データをHHnとする。このように正規化された正規化湿度データを、図7に示す。図7に示すように、湿度データが正規化されているため、縦軸のスケールは0~100%となる。
【0026】
HHn=(Hi―Hmin)/(Hmax―Hmin) ・・・(式2)
【0027】
上記に示したように、温度データと湿度データとのスケールをあわせるための正規化処理を行うため、最初、ある程度の期間の温度データおよび湿度データを蓄積する必要があるが、この後は、取得した最新の温度データおよび湿度データをそれぞれ正規化していくことで、常に最新の温度データおよび湿度データでの判定を行うことができる。
【0028】
次に、温度データ反転処理部7では、図6に示す正規化温度データを上下反転する反転処理が行われる。正規化温度データを上下反転する際には、下記の(式3)が用いられる。ただし、正規化温度データをTTn、上下反転したときの反転温度データをTTTrとする。このように反転された反転温度データを、図8に示す。図8に示すように、正規化温度データが反転しているため、縦軸のスケールは0~100%となる。
【0029】
TTTr=100―TTn ・・・(式3)
【0030】
次に、データ比較部8では、図7に示した正規化湿度データと、図8に示した、反転温度データとを、図9に示すように重ねあわせてそれぞれの増減を比較する。図9に示されるように、正規化湿度データが反転温度データを上回っている期間、期間K14および期間K16が存在する。また、反転温度データが正規化湿度データを上回っている期間、期間K15が存在する。このように比較することで、期間K14および期間K16と、期間K15とを分類する比較結果を得ることができる。
【0031】
次に、判定処理部9にて判定を行う前に、本実施の形態1を検証するため、図11に示すように、居室40内に二酸化炭素濃度センサ33を別途設置して二酸化度濃度を測定した結果について説明する。図12に、約9.5時間、二酸化炭素濃度センサ33を用いて居室40内の二酸化炭素濃度を測定した結果を示す。なお、検証のために設定した各区間の状態は、第2区間K46では、居室40内の人30の人数が6人で、窓が閉じられた状態である。第4区間K48では、居室40内の人30の人数が4人で、窓が閉じられた状態である。また、他の第1区間K45、第3区間K47、第5区間K49では、居室40内の人数が0人で、窓が開けられた状態である。なお、第2区間K46は、期間K14と、また、第3区間K47は、期間K15と、また、第4区間K48は、期間K16とはそれぞれ同一の期間を示している。
【0032】
次に、判定処理部9では、図9に示すようにデータ比較部8にて分類された比較結果に基づいて図10に示すように判定処理を行う。なお、図9の期間K14~K16と、図10の期間K14~K16は、同じ期間を示しており、図9図10Aとは同一のグラフを示している。そして、判定処理部19では、正規化湿度データが反転温度データを上回っている期間、期間K14、期間K16では、図10Bに示すように、判定値1を出力する。反転温度データが正規化湿度データを上回っている期間、期間K15では、図10Bに示すように判定値0を出力する。そして、図10Bは、図12の二酸化炭素濃度のグラフと、判定値のグラフとを重ねたものである。
【0033】
判定処理部9は、判定値1の場合には、空室状態よりも居室40の二酸化炭素濃度が上昇している状態であると判定し、居室40の換気の有無を判定している。また、判定値0の場合には、空室状態から居室40の二酸化炭素濃度が上昇していない状態であると判定し、居室40の換気は不要であると判定している。
【0034】
具体的には、判定処理部9の判定値は、下記の式(4)が用いられる。ただし、判定値をJ、正規化湿度データをHHn、反転温度データをTTTrとする。
【0035】
J=IF(HHn>TTTr,1,0) ・・・(式4)
【0036】
図10Bから明らかなように、上記に示した判定結果と、実際に二酸化炭素濃度を測定結果と照らしてみると、判定値1が出力されている場合は、空室状態よりも二酸化炭素濃度が上昇している。また、判定値0を出力されている場合は、空室状態から二酸化炭素濃度が上昇していないことが確認できる。
【0037】
このように、判定値1を出力している場合は、居室40の温度が高くなっているが湿度も高くなっている条件に該当するため、空室状態よりも二酸化炭素濃度が上昇している。なお、図10Aの反転温度データでは温度が下がっているように見えるが、温度データを反転させているため、実際は温度が上昇している。また、判定値0を出力している場合は、空室状態と同様の湿度と温度との関係に該当しているため、空室状態から二酸化炭素濃度は上昇していないままである。以上のことから、温度データと湿度データとを用いて、二酸化炭素濃度の変化を推定できることが確認できる。
【0038】
本実施の形態1では、温度データ蓄積部3と湿度データ蓄積部4により7時間分の蓄積された温度データと湿度データに基づき判定を行っているが、蓄積時間は7時間に限定されるものではなく、例えば1時間程度の短期間を蓄積して、蓄積容量を削減したり、逆にさらに長期間、例えば1週間単位で蓄積して、蓄積容量を増加したりしてもよい。また、蓄積データは捨てずにいずれかに格納してもよく、もしくは、二酸化炭素濃度の増減にあわせて一部の蓄積データを残すなど、過去の蓄積データを確認できるようにしてもよい。
【0039】
次に、出力部10は、判定処理部9での判定結果を出力する。例えば、監視対象の居室40内の人30に対して、判定値1のときには、LED等の光または音での音声ガイドなどにて、空室状態よりも二酸化炭素濃度が上昇している判定結果を伝える。そして、判定結果に基づいて、人30が居室40の窓を開ける、または、換気扇の電源をONして換気を行うことができる。さらに、判定結果と換気扇等とを連動させ、空室状態よりも居室40内の二酸化炭素濃度が上昇した判定結果に基づいて、換気扇の電源を自動的にONし、または、空室状態から居室40内の二酸化炭素濃度が上昇していない判定結果に基づいて、換気扇の電源を自動的にOFFしてもよい。
【0040】
さらに、図3に示すように、出力部10は、Wi-Fiなどを用いたワイヤレス伝送にて判定結果を別居室50へ送信する。別居室50に存在する、端末機51の受信部52にて受信し、表示部53に二酸化炭素濃度の変化を示した判定結果を表示する。別居室50では、例えば、施設管理者32が居室40内の状況のモニタリングを行っており、この空間状態監視システム41によれば、例えば過去7時間分の二酸化炭素濃度の変化傾向を把握できる。
【0041】
具体的には、図3の出力部10からWi-Fiにより伝送された情報は、端末機51の表示部53に表示される。このときの表示方法は、図9の比較結果を表示したり、図10Bのような判定値1の部分だけ目立つ色調または文字などでの特別な表示をしたり、個別の音または音声および光を用いるなど、空室状態よりも二酸化炭素濃度が上昇している異常時の注意喚起を含めた出力の表示を行ったりすることも可能である。さらには、判定結果をクラウド上にあげることで、別の建物または施設などでの遠隔監視に対応することもできる。
【0042】
また、本実施の形態1によれば、人30から排出される呼気および汗などによって、空室状態よりも居室40内の湿度および二酸化炭素濃度が上昇していることを利用しているため、居室40内の二酸化炭素濃度の変化を検知することだけでなく、居室40内に人30が在室しているか否かの在室検知を行うことも可能である。すなわち、判定値1が出力されている場合は、空室状態よりも二酸化炭素濃度が上昇しているため、居室40内に人30が在室していると判定できる。また、判定値0を出力されている場合は、空室状態から二酸化炭素濃度が上昇していないため、居室40内に人30が在室していないか、または、居室40内に人30が在室しているものの換気が十分に行われていることが判定できる。
【0043】
なお、上記実施の形態1においては、温度データおよび湿度データを蓄積して正規化処理、さらには、反転処理を行う例を示したが、これに限られることはなく、例えば、図13に示すように、温度データおよび湿度データをリアルタイムで比較するデータ比較部80を備え、入手される温度データと湿度データとをリアルタイムに比較し、あらかじめ設定された期間、あらかじめ設定されたレベルよりも高くなる方向へ推移する状態を検出した場合において、上記実施の形態1と同様に、二酸化炭素濃度の増減の検出することが可能である。この場合、データの蓄積、正規化、反転化などが必要なくなり、システムをシンプルにできるとともに、データの蓄積の必要がないため、測定開始当初より一定精度にて居室40の状態の監視をリアルタイムに行うことが可能である。
【0044】
また、上記実施の形態1においては、温度データと湿度データとのそれぞれの増減を比較して、居室40の二酸化炭素濃度の変化を推定して居室40の状態を判定する例を示したが、これに限られることはなく、温度データと湿度データとのそれぞれの増減を比較して、居室40の温度および湿度以外の以外、二酸化炭素濃度以外の状態変化を推定して居室40の状態を判定することも考えられる。
【0045】
上記のように構成された実施の形態1の空間状態監視システムによれば、
換気可能な密閉された被監視空間の状態を監視する空間状態監視システムにおいて、
前記被監視空間の温度を検出する温度センサと、
前記被監視空間の湿度を検出する湿度センサと、
前記温度センサからの温度データと前記湿度センサからの湿度データとのそれぞれの増減を比較するデータ比較部と、
前記データ比較部による比較結果に基づき、前記被監視空間の温度および湿度以外の状態変化を推定して前記被監視空間の状態を判定する判定処理部とを備えたので、
被監視空間の状態の把握を安価でかつシンプルに実現できる。
【0046】
また、上記のように構成された実施の形態1の空間状態監視システムによれば、
換気可能な密閉された被監視空間の状態を監視する空間状態監視システムにおいて、
前記被監視空間の温度を検出する温度センサと、
前記被監視空間の湿度を検出する湿度センサと、
前記温度センサからの温度データと前記湿度センサからの湿度データとのそれぞれの増減を比較するデータ比較部と、
前記データ比較部による比較結果に基づき、前記被監視空間の二酸化炭素濃度の変化を推定して前記被監視空間の状態を判定する判定処理部とを備えたので、
被監視空間の二酸化炭素濃度の状態の把握を安価でかつシンプルに実現できる。
【0047】
さらに、上記のように構成された実施の形態1の空間状態監視システムによれば、
前記温度データおよび前記湿度データをあらかじめ設定された期間蓄積する蓄積部を備えたので、
被監視空間の状態の把握を簡便に行うことができる。
【0048】
さらに、上記のように構成された実施の形態1の空間状態監視システムによれば、
前記蓄積部に蓄積された前記温度データのあらかじめ設置された期間の正規化を行うとともに、前記蓄積部に蓄積された前記湿度データのあらかじめ設定された期間の正規化を行う正規化処理部と、
前記データ比較部は、正規化された正規化温度データおよび正規化湿度データを用いてそれぞれの増減を比較するので、
被監視空間の状態の把握を精度よく行うことができる。
【0049】
さらに、上記のように構成された実施の形態1の空間状態監視システムによれば、
前記データ比較部は、前記温度データと前記湿度データとのそれぞれの増減をリアルタイムで比較するので、
被監視空間の状態の把握をさらにシンプルに行うことができる。
【0050】
さらに、上記のように構成された実施の形態1の空間状態監視システムによれば、
前記判定処理部の判定結果は、前記被監視空間の換気の有無を判定するので、
被監視空間の換気を簡便に行うことができる。
【0051】
さらに、上記のように構成された実施の形態1の空間状態監視システムによれば、
前記判定処理部の判定結果を出力する出力部を備えたので、
被監視空間の状態の把握を外部に知らせることができる。
【0052】
さらに、上記のように構成された実施の形態1の空間状態監視システムによれば、
前記出力部は、前記判定結果を前記被監視空間に対して音または光の少なくともいずれか一方にて出力するので、
被監視空間の状態の把握を外部に簡便に知らせることができる。
【0053】
さらに、上記のように構成された実施の形態1の空間状態監視システムによれば、
前記出力部は、前記被監視空間から他の空間に対して前記判定結果を伝送するので、
被監視空間の状態を他の空間にて把握できる。
【0054】
実施の形態2.
図14は、実施の形態2による空間状態監視システムの構成を示すブロック図である。図15Aは、図9に示した比較結果を示し、図15Bは、図15Aに示した比較結果に基づいて判定した判定結果を示す図である。図において、上記実施の形態1と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。また、本実施の形態2では、上記実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。空間状態監視システム41の信号処理部11の判定処理部9は、上記実施の形態1にて示したの判定結果からの追加判定、二酸化炭素濃度の絶対値の推定、および、居室40内の人30の人数の推定を行う追加部90を備える。
【0055】
次に、上記のように構成された実施の形態2の空間状態監視システムについて説明する。なお、上記実施の形態1と同様の部分は適宜省略して説明する。上記実施の形態1では、温度が高くなっているが湿度も高くなっている、もしくは、温度の変化量に対して湿度の変化量が比例していない点に着目することで、二酸化炭素濃度の変化を検出しているが、本実施の形態2においては、これら温度と湿度の変化の傾向をさらに細かく観測することで、二酸化炭素濃度の絶対値Mとともに居室40内の人30の人数を推定する。
【0056】
上記実施の形態1と同様の工程を経て、データ比較部8にて反転温度データと正規化湿度データとの比較を行い、判定処理部9にて上記実施の形態1と同様の判定を行い、判定値1と判定値0との判定結果の処理を行う。次に、判定処理部9の追加部90にて、当該判定結果を用いて二酸化炭素濃度の絶対値Mとともに居室40内の人数の推定を行う。
【0057】
ただし、二酸化炭素濃度の絶対値Mの推定を行う場合、判定処理部9は、判定処理を行う前に居室40の二酸化炭素濃度の絶対値Mと、温度および湿度との関係を事前測定して校正処置を行う必要がある。また、居室40内の人数の推定を行う場合、判定処理部9は、判定処理を行う前に居室40の人数と、温度および湿度との関係を事前測定して校正処置を行う必要がある。よって、本実施の形態2においては、上記実施の形態1の図11および図12にて示した居室40の二酸化炭素濃度の測定値およびその際の居室40内の人数および換気状態を参照に説明する。また、さらなる校正処置についてはそれぞれ後述する。
【0058】
まず、居室40の二酸化炭素濃度の絶対値Mの推定について説明する。なお、図15Bに示す二酸化炭素濃度のグラフは上記実施の形態1と同一の、居室40内の実際の二酸化炭素濃度を測定した結果を示したものである。図15に示すように、判定処理部9にて判定された結果、判定値1の期間K14および期間K16の両期間において、二酸化炭素濃度の絶対値Mの最小値Mminは、図15Bに示すように、800ppmである。そして、判定値1の期間K14における、反転温度データと正規化湿度データと差分値Xの最大値X1maxは、図15Aに示すようにおよそ40%である。そして、それに相当する二酸化炭素濃度の絶対値M1maxは、図15Bに示すようにおよそ1600ppmである。
【0059】
次に、判定値1の期間K16における、反転温度データと正規化湿度データとの差分値Xの最大値X2maxは、図15Aに示すようにおよそ10%である。そして、それに相当する二酸化炭素濃度の絶対値M2maxは、図15Bに示すようにおよそ950ppmである。
【0060】
この関係から明らかなように、判定値1の期間K14および期間K16においては、差分値Xと二酸化炭素濃度の絶対値Mとが比例関係にあることが分かる。これらを利用して、下記の(式5)、(式6)、(式7)を用いて、二酸化炭素濃度の絶対値Mを推定できる。
【0061】
X[%]=(HHn-TTTr) ・・・(式5)
Mmin[ppm]=800 ・・・(式6)
M[ppm]=(X*20)+Mmin ・・・(式7)
【0062】
このように、上記(式7)にて、二酸化炭素濃度の絶対値Mを推定でき、判定値1の期間において、およその数値ながら、二酸化炭素濃度の絶対値Mを温度データと湿度データとを用いて推測できる。ただし、あくまで温度および湿度での推測のため、微妙な環境変化または空調などにより推測誤差が含まれる。また、測定される居室40の環境によっては、図15と同様な傾向が得られるとは限らない。
【0063】
そのため、空間状態監視システム41を測定対象の居室40に設置された状態で初期測定を実施し、判定処理部9は判定処理を行う運用前に、図15に示す各データの全てを採取したうえで、二酸化炭素濃度の絶対値Mと温度データと湿度データとの関係を把握する。そして、その結果より前記演算式に対して係数の追加または修正など、二酸化炭素濃度の絶対値Mの推定算出が可能となるような補正を加える。
【0064】
このように、空間状態監視システム41の運用前に事前調整による校正処置を行うことで、なるべく二酸化炭素濃度の絶対値Mの誤差を抑えるとともに、それぞれの施設または設置場所での異なる環境にあわせた運用を行うことが可能となる。なお、この校正処置は、空間状態監視システム41の設置後に1回のみ行う場合、または、例えば、不定期もしくは季節ごとなどの定期的に複数回行ってもよい。
【0065】
次に、居室40内の人30の人数Zの推定について説明する。なお、図15Bに示す二酸化炭素濃度のグラフおよび人数の推移は上記実施の形態1と同一の、居室40内の実際の二酸化炭素濃度を測定した結果および人数を示したものである。図15に示すように、判定処理部9にて判定された結果、判定値1の期間K14および期間K16の両期間において、居室40内の人30の人数Zが4名を超えており、このときの人数をZminとする。そして、判定値1の期間K14における、反転温度データと正規化湿度データと差分値Xの最大値X1maxは、図15Aに示すようにはおよそ40%である。そして、それに相当する居室40内の人30の人数Z66は6人である。
【0066】
次に、判定値1の期間K16における、反転温度データと正規化湿度データとの差分値Xの最大値X2maxは、図15Aに示すようにおよそ10%である。そして、それに相当する居室40内の人30の人数Z67は4人である。この関係から明らかなように、判定値1の期間K14および期間K16においては、差分値Xと居室40内の人30の人数Zとが比例関係にあることが分かる。これらを利用して、下記の(式8)、(式9)、(式10)を用いて、居室40内の人30の人数Zを推定できる。
【0067】
X[%]=(HHn-TTTr) ・・・(式8)
Zmin[人]=4 ・・・(式9)
Z[人]=(X*1/20)+Zmin ・・・(式10)
【0068】
このように、上記(式10)にて、居室40内の人30の人数Zを推定でき、判定値1の期間において、およその数ながら、居室40内の人30の人数Zを温度データと湿度データとを用いて推測できる。ただし、あくまで温度および湿度での推測のため、微妙な環境変化または空調などにより推測誤差が含まれる。また、測定される居室40の環境によっては、図15と同様な傾向が得られるとは限らない。
【0069】
そのため、空間状態監視システム41を測定対象の居室40に設置された状態で初期測定を実施し、判定処理部9は判定処理を行う運用前に、図15に示す各データの全てを採取したうえで、居室40内の人30の人数Zと温度データと湿度データとの関係を把握する。そして、その結果より前記演算式に対して係数の追加または修正など、居室40内の人30の人数Zの推定算出が可能となるような補正を加える。
【0070】
このように、空間状態監視システム41の運用前に事前調整による校正処置を行うことで、なるべく居室40内の人30の人数Zの誤差を抑えるとともに、それぞれの施設または設置場所での異なる環境にあわせた運用を行うことが可能となる。なお、この校正処置は、空間状態監視システム41の設置後に1回のみ行う場合、または、例えば、不定期もしくは季節ごとなどの定期的に複数回行ってもよい。
【0071】
また、上述のような二酸化炭素濃度の絶対値Mまたは居室40内の人30の人数の絶対値ではなく、相対値を推測してもよい。判定値1の期間K16では、図15Aに示すように、差分値Xの最大値X2maxはおよそ10%であり、このときの二酸化炭素濃度の絶対値M2maxは、図15Bに示すようにおよそ950ppmである。そして、判定値1の期間K14では、図15Aに示すように、最大値X1maxはおよそ40%であり、このときに二酸化炭素濃度の絶対値M1maxは、およそ1600ppmである。
【0072】
このときの差分値Xの相対差が4倍を超える、すなわち、最大値X1maxが最大値X2maxの4倍であることを検出することで、二酸化炭素濃度の絶対値Mがある値まで増加していることを相対的に推測できる。このように、ある値に閾値を設けて検出すれば、相対的な推測を行うことも十分可能である。このときの、相対的な推測としてさほどの精度が必要でない場合、先に述べた空間状態監視システム41の運用前に行う事前調整などの校正処置を行わなくとも対応可能である。
【0073】
上記のように構成された実施の形態2の空間状態監視システムによれば、上記実施の形態1と同様の効果を奏するとともに、
前記判定処理部は、判定処理を行う前に前記被監視空間の二酸化炭素濃度の絶対値と、温度および湿度との関係を事前測定して校正処置を行うので、
被監視空間の状態の把握を精度よく行うことができる。
【0074】
さらに、上記のように構成された実施の形態2の空間状態監視システムによれば、
前記判定処理部は、前記データ比較部の比較結果から前記被監視空間内の二酸化炭素濃度の絶対値の推定を行うので、
被監視空間の状態の把握をさらに精度よく行うことができる。
【0075】
さらに、上記のように構成された実施の形態2の空間状態監視システムによれば、
前記判定処理部は、前記被監視空間内の二酸化炭素濃度の変化から、前記被監視空間内の人の人数の変化を推定するので、
被監視空間の状態の把握を簡便に行うことができる。
【0076】
さらに、上記のように構成された実施の形態2の空間状態監視システムによれば、
前記判定処理部は、判定処理を行う前に前記被監視空間の人数と、温度および湿度との関係を事前測定して校正処置を行うので、
被監視空間の状態の把握を精度よく行うことができる。
【0077】
さらに、上記のように構成された実施の形態2の空間状態監視システムによれば、
前記判定処理部は、前記データ比較部の比較結果から前記被監視空間内の人数の推定を行うので、
被監視空間の状態の把握をさらに精度よく行うことができる。
【0078】
なお、図16に示すように、上記各実施の形態にて示した信号処理部11のハードウエアは、プロセッサ100と記憶装置101から構成される。記憶装置は図示していないが、ランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを備える。また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を備えてもよい。プロセッサ100は、記憶装置101から入力されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ100にプログラムが入力される。また、プロセッサ100は、演算結果等のデータを記憶装置101の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。
【0079】
本願は、様々な例示的な実施の形態および実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0080】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0081】
(付記1)
換気可能な密閉された被監視空間の状態を監視する空間状態監視システムにおいて、
前記被監視空間の温度を検出する温度センサと、
前記被監視空間の湿度を検出する湿度センサと、
前記温度センサからの温度データと前記湿度センサからの湿度データとのそれぞれの増減を比較するデータ比較部と、
前記データ比較部による比較結果に基づき、前記被監視空間の温度および湿度以外の状態変化を推定して前記被監視空間の状態を判定する判定処理部とを備えた空間状態監視システム。
(付記2)
換気可能な密閉された被監視空間の状態を監視する空間状態監視システムにおいて、
前記被監視空間の温度を検出する温度センサと、
前記被監視空間の湿度を検出する湿度センサと、
前記温度センサからの温度データと前記湿度センサからの湿度データとのそれぞれの増減を比較するデータ比較部と、
前記データ比較部による比較結果に基づき、前記被監視空間の二酸化炭素濃度の変化を推定して前記被監視空間の状態を判定する判定処理部とを備えた空間状態監視システム。
(付記3)
前記温度データおよび前記湿度データをあらかじめ設定された期間蓄積する蓄積部を備えた付記1または付記2に記載の空間状態監視システム。
(付記4)
前記蓄積部に蓄積された前記温度データのあらかじめ設置された期間の正規化を行うとともに、前記蓄積部に蓄積された前記湿度データのあらかじめ設定された期間の正規化を行う正規化処理部と、
前記データ比較部は、正規化された正規化温度データおよび正規化湿度データを用いてそれぞれの増減を比較する付記3に記載の空間状態監視システム。
(付記5)
前記データ比較部は、前記温度データと前記湿度データとのそれぞれの増減をリアルタイムで比較する付記1または付記2に記載の空間状態監視システム。
(付記6)
前記判定処理部は、判定処理を行う前に前記被監視空間の二酸化炭素濃度の絶対値と、温度および湿度との関係を事前測定して校正処置を行う付記1から付記5のいずれか1項に記載の空間状態監視システム。
(付記7)
前記判定処理部は、前記データ比較部の比較結果から前記被監視空間内の二酸化炭素濃度の絶対値の推定を行う付記6に記載の空間状態監視システム。
(付記8)
前記判定処理部は、前記被監視空間内の二酸化炭素濃度の変化から、前記被監視空間内の人の人数の変化を推定する付記1から付記7のいずれか1項に記載の空間状態監視システム。
(付記9)
前記判定処理部は、判定処理を行う前に前記被監視空間の人数と、温度および湿度との関係を事前測定して校正処置を行う付記1から付記7のいずれか1項に記載の空間状態監視システム。
(付記10)
前記判定処理部は、前記データ比較部の比較結果から前記被監視空間内の人数の推定を行う付記9に記載の空間状態監視システム。
(付記11)
前記判定処理部の判定結果は、前記被監視空間の換気の有無を判定する付記1から付記10のいずれか1項に記載の空間状態監視システム。
(付記12)
前記判定処理部の判定結果を出力する出力部を備えた付記1から付記11のいずれか1項に記載の空間状態監視システム。
(付記13)
前記出力部は、前記判定結果を前記被監視空間に対して音または光の少なくともいずれか一方にて出力する付記12に記載の空間状態監視システム。
(付記14)
前記出力部は、前記被監視空間から他の空間に対して前記判定結果を伝送する付記12または付記13に記載の空間状態監視システム。
【符号の説明】
【0082】
1 温度センサ、2 湿度センサ、3 温度データ蓄積部、4 湿度データ蓄積部、
5 温度データ正規化処理部、6 湿度データ正規化処理部、
7 温度データ反転処理部、8 データ比較部、9 判定処理部、10 出力部、
11 信号処理部、30 人、32 施設管理者、33 二酸化炭素濃度センサ、
40 居室、50 別居室、51 端末機、52 受信部、53 表示部、
90 追加部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16