(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139979
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】X線マスク、X線マスクの製造方法、欠陥検出方法、及び積層造形装置
(51)【国際特許分類】
G01T 7/00 20060101AFI20241003BHJP
G01N 23/203 20060101ALI20241003BHJP
G21K 1/00 20060101ALI20241003BHJP
G21K 5/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01T7/00 B
G01N23/203
G01T7/00 A
G21K1/00 X
G21K5/02 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050949
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 顕夫
(72)【発明者】
【氏名】松田 竜一
(72)【発明者】
【氏名】半田 隆信
(72)【発明者】
【氏名】太田 早紀
【テーマコード(参考)】
2G001
2G188
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA15
2G001CA01
2G001DA03
2G001DA08
2G001KA03
2G001LA02
2G001LA20
2G001QA01
2G001SA01
2G001SA04
2G188BB02
2G188CC00
2G188DD04
2G188DD09
2G188DD17
2G188DD18
2G188DD30
2G188EE25
(57)【要約】
【課題】高エネルギー、かつ高線量密度のX線を用いた場合であっても、より高い分解能を発揮することが可能なX線マスク、X線マスクの製造方法、欠陥検出方法、及び積層造形装置を提供する。
【解決手段】X線マスクは、積層造形によって形成された造形物の欠陥を検出する欠陥検出装置に用いられるX線マスクであって、タングステンで形成され、第一ピンホールを有する第一部材と、第一部材に積層され、鉛で形成されるとともに、第一ピンホールと同軸で、かつ第一部材から離間するに従って次第に開口面積が大きくなる第二ピンホールを有する第二部材と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形によって形成された造形物の欠陥を検出する欠陥検出装置に用いられるX線マスクであって、
タングステンで形成され、第一ピンホールを有する第一部材と、
該第一部材に積層され、鉛で形成されるとともに、前記第一ピンホールと同軸で、かつ前記第一部材から離間するに従って次第に開口面積が大きくなる第二ピンホールを有する第二部材と、
を備えるX線マスク。
【請求項2】
前記第二部材は、前記第一部材よりも大きな厚さを有する請求項1に記載のX線マスク。
【請求項3】
前記第二ピンホールにおける前記第一ピンホール側の開口面積は、前記第一ピンホールの開口面積と同等である請求項1又は2に記載のX線マスク。
【請求項4】
前記第一ピンホール、及び前記第二ピンホールが互いに間隔をあけて複数形成されているとともに、前記第二ピンホールを通過したX線の照射領域が互いに重ならない配置である請求項1又は2に記載のX線マスク。
【請求項5】
複数の前記第一ピンホール、及び前記第二ピンホールの中心軸が、前記造形物の表面から放射状に延びるように構成され、前記第一ピンホールは、前記中心軸方向から見て円形をなすとともに、前記第一の部材の法線方向から見て楕円形をなしている請求項1又は2に記載のX線マスク。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のX線マスクの製造方法であって、
タングステンで形成された母材に前記第一ピンホールを形成することで前記第一部材を得るステップと、
前記第一ピンホールに、前記第二ピンホールの形状を有する中子の先端を挿入するステップと、
前記中子の周囲、及び前記第一部材の表面に、溶融した鉛を供給するステップと、
前記溶融した鉛を凝固させることで、前記第二部材を得るステップと、
前記中子を取り除くステップと、
を含むX線マスクの製造方法。
【請求項7】
前記中子は、
中子本体と、
該中子本体の表面に設けられ、酸化膜、及び窒化膜のいずれか一方を有する金属箔と、
を有する請求項6に記載のX線マスクの製造方法。
【請求項8】
積層造形によって形成された造形物の欠陥を、請求項1又は2に記載のX線マスクを用いて検出する欠陥検出方法であって、
前記造形物の表面にX線を照射するステップと、
前記造形物の表面で散乱した前記X線を前記X線マスクの前記第一ピンホールに入射させるステップと、
前記X線マスクを通過したX線を結像させることで前記欠陥の有無を検出するステップと、
を含む欠陥検出方法。
【請求項9】
造形物の造形面に粉末材料を供給し、供給された前記粉末材料に溶融ビームを照射することで前記粉末材料を溶融させ、前記造形物を積層造形する積層造形装置であって、
前記造形面に沿った第一方向に移動しながら、前記造形面上に前記粉末材料を供給しつつ、表面を均すリコータと、
前記リコータに設けられ、電子ビームから変換することによって前記造形面に検査用のX線を照射するX線源と、
前記リコータに設けられ、前記X線源から照射された前記X線が前記造形面で散乱することで生じる前記X線を検出する検出器と、
前記リコータに設けられ、前記検出器と前記造形物との間における前記X線の光路状に配置された請求項1又は2に記載のX線マスクと、
を備える積層造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、X線マスク、X線マスクの製造方法、欠陥検出方法、及び積層造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、Additive Manufacturing造形法(AM造形法)の実用化が進められている。この技術では、粉末材料にレーザーによる入熱を行うことで当該粉末材料を溶融・凝固を複数の層ごとに繰り返すことで、三次元的な造形物を得ることができる。
【0003】
ここで、上記の方法によって得られる造形物の欠陥を検出する技術として、X線を用いたものが知られている(例えば下記特許文献1参照)。この技術では、X線を造形物に照射し、当該造形物の表面で散乱した後方散乱X線を、X線マスクを通じて一部遮蔽した後、ラインセンサ等の検知部で検知して結像させる。当該画像から造形物の欠陥の有無を判断することができるとされている。
【0004】
ところで、欠陥の検出精度を上げるためには、X線の高エネルギー化と高線量密度化が必要となる。高エネルギーのX線を用いることでさらに深い位置の欠陥を特定することができる。また、高線量密度化することで検査時間を短縮することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、高エネルギー、高線量密度のX線を造形物に照射すると、欠陥が存在しない領域で生じる後方散乱X線の成分は、欠陥検出に際してのノイズとなってしまう。その結果、欠陥検出に当たっての分解能が低下してしまう虞があった。
【0007】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、高エネルギー、かつ高線量密度のX線を用いた場合であっても、より高い分解能を発揮することが可能なX線マスク、X線マスクの製造方法、欠陥検出方法、及び積層造形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示に係るX線マスクは、積層造形によって形成された造形物の欠陥を検出する欠陥検出装置に用いられるX線マスクであって、タングステンで形成され、第一ピンホールを有する第一部材と、該第一部材に積層され、鉛で形成されるとともに、前記第一ピンホールと同軸で、かつ前記第一部材から離間するに従って次第に開口面積が大きくなる第二ピンホールを有する第二部材と、を備える。
【0009】
本開示に係るX線マスクの製造方法は、上記のX線マスクの製造方法であって、タングステンで形成された母材に前記第一ピンホールを形成することで前記第一部材を得るステップと、前記第一ピンホールに、前記第二ピンホールの形状を有する中子の先端を挿入するステップと、前記中子の周囲、及び前記第一部材の表面に、溶融した鉛を供給するステップと、前記溶融した鉛を凝固させることで、前記第二部材を得るステップと、前記中子を取り除くステップと、を含む。
【0010】
本開示に係る欠陥検出方法は、積層造形によって形成された造形物の欠陥を、上記のX線マスクを用いて検出する欠陥検出方法であって、前記造形物の表面にX線を照射するステップと、前記造形物の表面で散乱した前記X線を前記X線マスクの前記第一ピンホールに入射させるステップと、前記X線マスクを通過したX線を結像させることで前記欠陥の有無を検出するステップと、を含む。
【0011】
本開示に係る積層造形装置は、造形物の造形面に粉末材料を供給し、供給された前記粉末材料に溶融ビームを照射することで前記粉末材料を溶融させ、前記造形物を積層造形する積層造形装置であって、前記造形面に沿った第一方向に移動しながら、前記造形面上に前記粉末材料を供給しつつ、表面を均すリコータと、前記リコータに設けられ、電子ビームから変換することによって前記造形面に検査用のX線を照射するX線源と、前記リコータに設けられ、前記X線源から照射された前記X線が前記造形面で散乱することで生じる前記X線を検出する検出器と、前記リコータに設けられ、前記検出器と前記造形物との間における前記X線の光路状に配置された上記のX線マスクと、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、高エネルギー、かつ高線量密度のX線を用いた場合であっても、より高い分解能を発揮することが可能なX線マスク、X線マスクの製造方法、欠陥検出方法、及び積層造形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の第一実施形態に係る積層造形装置の構成を示す全体図である。
【
図2】本開示の第一実施形態に係るリコータの構成を示す全体図である。
【
図3】本開示の第一実施形態に係るX線マスクの構成を示す断面図である。
【
図4】本開示の第一実施形態に係るX線マスクの構成を示す平面図である。
【
図5】本開示の第一実施形態に係るX線マスクの製造方法を示すフローチャートである。
【
図6】本開示の第一実施形態に係るX線マスクの製造方法における中子を挿入するステップを示す説明図である。
【
図7】本開示の第一実施形態に係る中子の要部拡大図である。
【
図8】本開示の第一実施形態に係る欠陥検出方法を示すフローチャートである。
【
図9】本開示の第二実施形態に係るX線マスクの構成を示す断面図である。
【
図10】本開示の第三実施形態に係るX線マスクの構成を示す断面図である。
【
図11】本開示の各実施形態に共通するX線マスクの変形例を示す平面図である。
【
図12】本開示の第一実施形態に係る中子の変形例を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第一実施形態>
以下、本開示の第一実施形態に係るX線マスク5、X線マスク5の製造方法、欠陥検出方法、及び積層造形装置1について、
図1から
図8を参照して説明する。
【0015】
(積層造形装置1の構成)
積層造形装置1は、金属等で形成された微細な粉末材料にレーザーによる入熱を加えることで溶融・凝固させて、レーザーの軌跡に沿った形状を得るという工程を複数層にわたって繰り返すことで、三次元的な造形物100を得るための装置である。
【0016】
図1に示すように、積層造形装置1は、造形部11と、検査部12と、を主に備える。造形部11は、造形ステージ21と、リコータ22と、溶融ビーム照射部(不図示)と、を有する。
【0017】
造形ステージ21は、その上面に、水平面に沿った造形物載置面23を有している。造形ステージ21は、上下方向に昇降可能に設けられている。造形ステージ21は、予め定められた寸法ずつ、順次下降する。つまり、この寸法が、造形物100の積層ピッチとなる。
【0018】
リコータ22は、造形ステージ21の上方に配置されている。リコータ22は、材料供給部(図示なし)から供給される粉末材料を、造形物載置面23上、または造形物載置面23上に形成された造形物100上に均しながら供給する。リコータ22は、上下方向に直交する水平面に沿った第一方向D1に移動可能に設けられている。リコータ22は、造形ステージ21の造形物載置面23の上方で、リコータ22駆動機構(図示なし)によって、第一方向D1に沿って往復動する。リコータ22は、水平面に沿い、第一方向D1に直交する第二方向D2に延びている。リコータ22は、第二方向D2において、造形物載置面23の全体を横切るように形成されている。リコータ22の下面は、水平面に沿っている。リコータ22は、粉末材料を供給する際、造形ステージ21の第一方向D1の他方側から一方側に移動する。造形ステージ21の第一方向D1の他方側には、リコータ22に粉末材料を供給する材料供給部(図示なし)が設けられている。リコータ22は、第一方向D1に移動し、造形物100の端まで到達したのちは反対方向に移動して戻ることで、材料供給部から供給される粉末材料を、均しながら供給する。
【0019】
溶融ビーム照射部(図示なし)は、造形物載置面23上に供給された粉末材料に、レーザー光等の溶融ビームを、予め設定された造形物100の形状に合わせたパターンで照射する。造形物載置面23上に供給された粉末材料は、溶融ビームが照射されることで溶融する。造形物載置面23上で、粉末材料が溶融することによって、溶融金属が生成される。溶融金属が凝固すると、造形物載置面23上に、造形物100を形成する金属層が形成される。
【0020】
上記リコータ22による粉末材料の供給と、溶融ビーム照射部(図示なし)による溶融ビームの照射と、造形ステージ21の下降と、を繰り返すことで、造形物載置面23上に、金属層が順次積層される。
【0021】
図2に示すように、検査部12は、X線源31と、検出器32と、X線マスク5と、欠陥検出部33と、を備えている。X線源31、および検出器32は、リコータ22に対して第一方向D1の一方側に設けられている。X線源31は、電子ビーム源41と、照射ターゲット42と、電子ビーム制御部43と、を有している。
【0022】
電子ビーム源41は、造形ステージ21上に形成される造形物100の造形面101に、照射ターゲット42で変換したX線を照射する。造形面101は、造形ステージ21上に順次積層される各金属層の表面である。電子ビーム源41は、いわゆる電子銃であり、真空チャンバ45内に設けられている。真空チャンバ45は、検出器32とともにリコータ22に取り付けられている。真空チャンバ45は、上方から下方に向かうに従って、第一方向D1に傾斜して延びている。真空チャンバ45は、第二方向D2において造形ステージ21の全体を覆うように延びている。真空チャンバ45は中空密閉構造で、その内部が所定の真空度となるように真空引きされている。電子ビーム源41から照射ターゲット42に照射される電子ビームは、電子ビーム制御部43の制御により、偏向電極(図示なし)による電界、または電磁石(図示なし)による磁界が印加されることで第二方向D2に偏向する。電子ビーム制御部43は、リコータ22が第一方向D1に移動している間、電子ビーム源41から照射される電子ビームを真空チャンバ45内で第二方向D2に繰り返し走査させる。
【0023】
電子ビーム源41は、真空チャンバ45内に設けられた照射ターゲット42に向けて電子ビームを照射する。照射ターゲット42は、電子ビーム源41から照射される電子ビームをX線に変換し、造形面101に向けてX線を照射する。照射ターゲット42は、真空チャンバ45内の下部に設けられている。照射ターゲット42は、第一方向D1に交差する面に沿って設けられている。照射ターゲット42は、第二方向D2に連続している。真空チャンバ45の底部には、電子ビーム源41から照射され、照射ターゲット42で変換されたX線が透過する透過窓46が設けられている。照射ターゲット42で変換され、透過窓46を透過したX線は、下方に向かって第一方向D1の他方側に傾斜して進行し、造形面101上に照射される。電子ビーム源41は、照射ターゲット42に対し、第一方向D1から見て例えば矩形状の範囲に電子ビームを照射する。これにより、照射ターゲット42で変換されたX線が造形面101上に照射される照射領域80は、上方から見て角の丸い矩形状となる。
【0024】
検出器32は、中空箱状で、第二方向D2から見ると、矩形状の断面を有している。検出器32は、第二方向D2に延び、第二方向D2において造形ステージ21の全体を覆うように設けられている。検出器32は、リコータ22の第一方向D1の一方側の端部に支持されている。検出器32の一部は、リコータ22の端部から第一方向D1に突出している。
【0025】
検出器32内の上部には、ラインセンサ47が設けられている。ラインセンサ47は、上下方向に直交する面に沿って設けられている。ラインセンサ47は、第一方向D1に所定の幅寸法を有している。ラインセンサ47は、第二方向D2に連続して延びている。ラインセンサ47は、造形面101に対して上方に間隔をあけて配置されている。ラインセンサ47は、第一方向D1、および第二方向D2にそれぞれ配列された複数の検出ピクセル(図示なし)を備えている。ラインセンサ47は、各検出ピクセルで検出されるX線の量(吸収線量、フォトン数)に基づいて、ラインセンサ47に照射されるX線の量(吸収線量、フォトン数)を検出する。
【0026】
(X線マスク5の構成)
検出器32の下面には、X線マスク5が設けられている。X線マスク5は板状をなし、上下方向に直交する面に沿って設けられている。X線マスク5は、検出器32と、造形面101における照射領域80との間に配置されている。X線マスク5は、照射領域80で後方散乱した散乱X線の光路上に配置されている。X線マスク5は、造形面101で後方散乱した散乱X線を遮へいし、一部をピンホール55を通じて透過させる。
【0027】
より具体的には
図3、
図4に示すように、X線マスク5は、第一部材51と、第二部材52と、を有する。第一部材51は、例えばタングステンで形成された板状をなしている。第一部材51には、1つの第一ピンホール53が形成されている。第一ピンホール53は、第一方向D1に延びる軸線Xを中心とする円形の孔である。第一ピンホール53の内径は、第一方向D1における延在寸法の全域で一定である。第一ピンホール53の内径は、例えば0.2mm~0.5mmである。
【0028】
第二部材52は、第一部材51に積層された板状をなしている。第二部材52は鉛で形成されている。第二部材52の厚さは、第一部材51の厚さよりも大きい。第二部材52には、第二ピンホール54が形成されている。第二ピンホール54は、第一部材51の第一ピンホール53と同軸をなしている。さらに、第二ピンホール54は円形をなすとともに、第一部材51から離間するに従って開口面積が次第に大きくなっている。つまり、第二ピンホール54は、円錐曲面によって形成されている。第二ピンホール54を形成する円錐曲面の頂点角は、10°以上80°以下であることが望ましく、より望ましくは、20°以上70°以下である。最も望ましくは、頂点角は、40°以上60°以下である。なお、ここで言う頂点角とは、中心軸を通る同一平面内における円錐曲面の一対の母線同士の間に形成される角度を指す。第二ピンホール54における第一ピンホール53側の開口面積は、第一ピンホール53の開口面積と同等である。なお、ここで言う「同等」とは、実質的な同等を指すものであって、加工による誤差等は許容される。したがって、第一ピンホール53側から見て、第二ピンホール54の内周側の端縁は当該第一ピンホール53内に露呈していない。これら第一ピンホール53と第二ピンホール54とによって、1つのピンホール55が構成されている。
【0029】
(X線マスク5の製造方法)
続いて、上記のX線マスク5の製造方法について、
図5から
図7を参照して説明する。
図5に示すように、この製造方法は、第一ピンホール53を形成するステップS1と、第一ピンホール53に中子6を挿入するステップS2と、溶融した鉛を供給するステップS3と、鉛を凝固させるステップS4と、中子6を取り除くステップS5と、を含む。
【0030】
ステップS1では、タングステンで形成された板状の母材に、第一ピンホール53を形成する。第一ピンホール53を形成するに当たっては、例えば放電加工やレーザー加工が好適に用いられる。これにより、第一部材51が形成される。ステップS2では、第一ピンホール53に対して、中子6の先端を挿入する。具体的には
図6に示すように、中子6は、第二ピンホール54の円錐曲面形状に合わせて構成された円錐状の中子本体61と、中子本体61と一体に設けられた支持部62と、を有する。中子本体61は、一例としてステンレスで形成されている。さらに、
図7に示すように、中子本体61の表面には、金属箔7の層が設けられている。この金属箔7は、例えば中子本体61と同一の材料であるステンレスの箔を酸化、又は窒化させることで形成されている。具体的には、金属箔7は、箔本体71と、この箔本体71の厚さ方向両面、又は中子本体61側の片面のみに層状に設けられた表面層72と、を有する。表面層72は、上述の酸化膜、又は窒化膜である。中子本体61側の片面のみに表面層72が設けられている構成を
図12に示す。
【0031】
このように構成された中子6の先端を、第一ピンホール53の内部に、当該第一ピンホール53と同軸となるように挿入する。その後、ステップS3では、中子6の周囲、及び第一部材51の表面に、溶融した鉛を供給する。ステップS4で鉛を凝固させると、中子6の周囲に鉛が充填された状態となる。その後、ステップS5で中子6を鉛と分離して取り外す。この時、中子6の表面に存在していた金属箔7は、鉛とわずかに固溶して鉛とともに残存する。これにより、第二ピンホール54を有する第二部材52が形成される。以上により、X線マスク5の製造方法の全工程が完了する。
【0032】
(欠陥検出方法)
上記のX線マスク5を透過した散乱X線は、ラインセンサ47に到達する。ラインセンサ47では、このようにして照射された照射領域80における散乱X線の量(吸収線量、フォトン数)を検出する。ラインセンサ47は、照射領域80におけるX線量の情報を、欠陥検出部33に出力する。欠陥検出部33は、ラインセンサ47に照射されたX線の量(吸収線量、フォトン数)を取得する。欠陥検出部33は、取得されたX線量に基づいて、造形面101における欠陥の有無、欠陥の形状を判定する。このとき、周囲の欠陥の無い部分に比較し、欠陥がある部分では、ラインセンサ47で検出されるX線量が低下する。欠陥検出部33では、X線の量(吸収線量、フォトン数)が低下している部分を検出することで、造形面101で欠陥が生じている部位を検出する。欠陥検出部33は、例えば、周囲の欠陥の無い部分に対するX線の量(吸収線量、フォトン数)の差が、予め設定した閾値以上であるときに、欠陥が存在している、と判定する。つまり、
図8に示すように、この欠陥検出方法は、上述したX線を造形物100の表面に照射するステップS11と、後方散乱したX線をX線マスク5の第一ピンホール53に入射させるステップS12と、ラインセンサ47、及び欠陥検出部33による欠陥検出を行うステップS13と、を含む。
【0033】
(作用効果)
ここで、上記のX線による欠陥の検出精度を上げるためには、X線の高エネルギー化と高線量密度化が必要となる。高エネルギーのX線を用いることでさらに深い位置の欠陥を特定することができる。また、高線量密度化することで検査時間を短縮することが可能となる。しかしながら、高エネルギー、高線量密度のX線を造形物100に照射すると、欠陥が存在しない領域で生じる後方散乱X線の成分は、欠陥検出に際してのノイズとなってしまう。その結果、欠陥検出に当たっての分解能が低下してしまう虞があった。そこで、本実施形態では上述の各構成、及び方法を採用している。
【0034】
上記構成によれば、第一部材51が硬度の高いタングステンで形成されていることから、第一ピンホール53の形成するに当たって、高い寸法精度を確保することができる。微小な第一ピンホール53を精度高く形成できることから、X線マスク5の分解能をさらに向上させることができる。反対に、第一部材51が鉛等の硬度の低い金属で形成されている場合、切削や放電等の加工を施した際にバリ等が生じやすく、寸法精度を確保することが難しい。上記の構成によれば、このようなリスクを低減し、高い寸法精度と加工精度を維持することが可能となる。また、第二部材52が鉛で形成されていることから、X線の大部分を当該第二部材52によって遮蔽することが可能となる。さらに、第二ピンホール54の開口面積が第一部材51から離間するに従って次第に大きくなっていることから、第一ピンホール53側から入射するX線の視野角を大きく確保することができる。つまり、第二ピンホール54側のラインセンサ47上で、造形物100の表面のより広い範囲の画像を得ることが可能となる。したがって、造形物100の表面におけるより大きな領域で、欠陥を検出することができる。
【0035】
さらに、上記構成によれば、鉛で形成された第二部材52の厚さが第一部材51の厚さよりも大きいため、より多くのX線を安定的に遮蔽することが可能となる。また、タングステン自体による遮蔽性能も伴うことから、鉛で形成された第二部材52の厚さを必要最小限に抑えることができる。これにより、装置の製造やメンテナンスに要するコストを削減することが可能となる。
【0036】
また、上記構成によれば、第二ピンホール54における第一ピンホール53側の開口面積が当該第一ピンホール53の開口面積と同等である。つまり、第一ピンホール53側から見て、第二ピンホール54の端縁が当該第一ピンホール53の内周側に張り出すことがない。このため、第一ピンホール53側から入射するX線の視野角を大きく確保することができる。反対に、第二ピンホール54の内周側の端縁が第一ピンホール53内に露呈していると、視野角が遮られ、検査が可能な領域の面積が限定的となってしまう可能性がある。上記構成によれば、このような可能性を大きく低減することができる。
【0037】
さらに、上記の製造方法によれば、第一ピンホール53に第二ピンホール54の形状を有する中子6の先端を挿入することで、これら第一ピンホール53と第二ピンホール54とが同軸上に位置するようになる(位置決めされる)。したがって、第一ピンホール53と第二ピンホール54とによって得られる画像の精度と分解能をさらに向上させることが可能となる。一方で、第二部材52に予め第二ピンホール54を形成した上で、第一部材51に積層する方法も考えられる。しかしながら、当該方法では、第一ピンホール53と第二ピンホール54を同軸に位置決めすることに困難を伴う。他方で、上記方法によれば、中子6を挿入した時点で自然に第二ピンホール54と第一ピンホール53の位置決め(芯出し)が完了する。このため、より容易かつ効率的にX線マスク5を製造することが可能となる。
【0038】
また、上記の製造方法によれば、中子本体61の表面に金属箔7を設けることによって、ステンレスで形成された中子本体61に対して溶融した鉛が固溶してしまう可能性を低減することができる。これにより、第二ピンホール54の内面をより平滑に維持することができる。言い換えると、第二ピンホール54の内面に凹凸やヒケ、欠け等が生じる可能性を低減することができる。これにより、結果として、X線マスク5の分解能が向上し、より精度の高い検査を行うことが可能となる。
【0039】
さらに、上記の欠陥検出方法によれば、上述のX線マスク5を用いることで、高エネルギー、かつ高線量密度のX線を用いた場合であっても、より高い分解能を維持した状態で欠陥の有無を検出することができる。
【0040】
加えて、上記の積層造形装置1によれば、高精度のもとでX線マスク5を用いた欠陥検出が行われることで、造形品の寸法精度や形状精度をさらに向上させることができる。これにより、造形品の歩留まりを向上させ、製造コストをさらに低減することが可能となる。
【0041】
以上、本開示の第一実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成・方法に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0042】
<第二実施形態>
次に、本開示の第二実施形態について、
図9を参照して説明する。なお、上記の第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0043】
図9に示すように、本実施形態では、上述したX線マスク205の構成が第一実施形態とは異なっている。具体的には、X線マスク205は、複数の第一ピンホール53、及び複数の第二ピンホール54を有している。例えばこれらピンホール55は、平面視で格子状に間隔をあけて配列されている。また、同図に示すように、互いに隣り合う一対の第二ピンホール54を通過した散乱X線の照射領域80は互いに重なり合わないように配置されている。なお、このような領域の面積の大小は、ラインセンサ47とX線マスク5との離間距離を適正に調節することによって変化させることが可能である。
【0044】
上記構成によれば、複数の第二ピンホール54を通過したX線の照射領域80が互いに重なり合わないように構成されている。これにより、X線マスク205および撮像面(ラインセンサ)47を造形面101に近づけることができ、照射領域80での信号強度が単一のピンホールで同領域を評価する場合と比べて高くなり、さらに短時間のうちに欠陥を検知することが可能となる。
【0045】
以上、本開示の第二実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0046】
<第三実施形態>
続いて、本開示の第三実施形態について、
図10を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0047】
本実施形態に係るX線マスク305では、ピンホール55の形状と姿勢が上記の各実施形態とは異なっている。より具体的には
図10に示すように、第一ピンホール53は第一実施形態と同様に円形かつ直管状の孔である。これに対して、第二ピンホール54は、造形物100の表面における任意の領域(基準領域81)を基準として、当該基準領域81から放射状に散乱X線が生じるように形成されている。つまり、基準領域81の直上にある第二ピンホール54に比べて、基準領域81から離間した位置に行くほど、第二ピンホール54の中心軸は傾斜した方向に延びている。また、第二ピンホール54は、中心軸方向から見て円形である一方で、平面視では、(つまり、第二の部材の法線方向から見ると)楕円形をなしている。また、上記の各実施形態と同様に、第二ピンホール54の開口面積は、第一部材51から離間するに従って次第に大きくなっている。
【0048】
上記構成によれば、複数の第二ピンホール54の中心軸が造形物100の表面から放射状に延びている。これにより、これらピンホール55の視野領域が、造形物100の表面における同一の領域(つまり、上記の基準領域81)の画像となる。したがって、当該領域の画像を立体化して生成することができる。よって、欠陥を視覚的に容易に認知することが可能となり、欠陥検出の精度をさらに向上させることができる。特に欠陥が生じやすい箇所や、欠陥の発生を特に抑えたい箇所等を上記の基準領域81として設定して、上記のX線マスク305を用いることで、欠陥個所をより厳密かつ正確に検出することが可能となり、造形品の品質をさらに向上させることができる。また、画像重ね合わせ等により単一ピンホールで評価する場合と比べ信号強度を高くできる。これにより、造形品の歩留まりが向上し、製造コストをさらに削減することが可能となる。
【0049】
<その他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0050】
上記の各実施形態では、第二ピンホール54が第一ピンホール53と同様に円形の断面形状を有する例について説明した。しかしながら、変形例として
図11に示すように、第二ピンホール54を多角錐状に形成することも可能である。同図の例では、第二ピンホール54が六角錐状をなしている。このような構成によれば、複数のピンホール55を配列する際に、互いの辺部を隣接させるようにすることで、高い配置密度を確保することができる。言い換えると、ピンホール55同士の間の間隔を最小限まで小さくすることが可能となる。これにより、分解能がさらに向上し、さらに精度の高い欠陥検出を行うことが可能となる。
【0051】
また、上記の各実施形態では、第一部材51を構成する金属材料としてタングステンを例に説明した。しかしながら、第一部材51の材料はタングステンに限定されず、相当程度の硬度を有し、加工精度や寸法精度を確保することが可能な材料であれば、いかなるものでも第一部材51の材料として採用することが可能である。このような材料として具体的には、モリブデン、インコネル(登録商標)、ステンレスが挙げられる。
【0052】
また、上記の各実施形態では第二ピンホール54が円形断面を有する例について説明し、変形例では六角錐状をなしている例について説明した。しかしながら、第二ピンホール54の形状はこれらに限定されず、四角錐や五角錐等、他の多角錐形状を第二ピンホール54に適用することが可能である。他方で、加工コストを勘案した場合、第二ピンホール54は円形であることが最も有利である。
【0053】
<付記>
各実施形態に記載のX線マスク5、X線マスク5の製造方法、欠陥検出方法、及び積層造形装置1は、例えば以下のように把握される。
【0054】
(1)第1の態様に係るX線マスク5は、積層造形によって形成された造形物100の欠陥を検出する欠陥検出装置に用いられるX線マスク5であって、タングステンで形成され、第一ピンホール53を有する第一部材51と、該第一部材51に積層され、鉛で形成されるとともに、前記第一ピンホール53と同軸で、かつ前記第一部材51から離間するに従って次第に開口面積が大きくなる第二ピンホール54を有する第二部材52と、を備える。
【0055】
上記構成によれば、第一部材51が硬度の高いタングステンで形成されていることから、第一ピンホール53の形成するに当たって、高い寸法精度を確保することができる。微小な第一ピンホール53を精度高く形成できることから、X線マスク5の分解能をさらに向上させることができる。また、第二部材52が鉛で形成されていることから、X線の大部分を当該第二部材52によって遮蔽することが可能となる。さらに、第二ピンホール54の開口面積が第一部材51から離間するに従って次第に大きくなっていることから、第一ピンホール53側から入射するX線の視野角を大きく確保することができる。したがって、造形物100の表面におけるより大きな領域で、欠陥を検出することができる。
【0056】
(2)第2の態様に係るX線マスク5は、(1)のX線マスク5であって、前記第二部材52は、前記第一部材51よりも大きな厚さを有する。
【0057】
上記構成によれば、鉛で形成された第二部材52の厚さが第一部材51の厚さよりも大きいため、より多くのX線を安定的に遮蔽することが可能となる。
【0058】
(3)第3の態様に係るX線マスク5は、(1)又は(2)のX線マスク5であって、前記第二ピンホール54における前記第一ピンホール53側の開口面積は、前記第一ピンホール53の開口面積と同等である。
【0059】
上記構成によれば、第二ピンホール54における第一ピンホール53側の開口面積が当該第一ピンホール53の開口面積と同等であることから、第一ピンホール53側から見て、第二ピンホール54の端縁が当該第一ピンホール53の内周側に張り出すことがない。このため、第一ピンホール53側から入射するX線の視野角を大きく確保することができる。
【0060】
(4)第4の態様に係るX線マスク5は、(1)から(3)のいずれか一態様に係るX線マスク5であって、前記第一ピンホール53、及び前記第二ピンホール54が互いに間隔をあけて複数形成されているとともに、前記第二ピンホール54を通過したX線の照射領域80が互いに重ならない配置である。
【0061】
上記構成によれば、X線マスク205および撮像面(ラインセンサ)47を造形面101に近づけることができ、照射領域80での信号強度が単一のピンホールで同領域を評価する場合と比べて高くなり、さらに短時間のうちに欠陥を検知することが可能となる。
【0062】
(5)第5の態様に係るX線マスク5は、(1)から(4)のいずれか一態様に係るX線マスク5であって、複数の前記第一ピンホール53、及び前記第二ピンホール54の中心軸が、前記造形物100の表面から放射状に延びるように構成され、前記第一ピンホール53は、前記中心軸方向から見て円形をなすとともに、前記第一の部材の法線方向から見て楕円形をなしている。
【0063】
上記構成によれば、複数の第二ピンホール54の中心軸が造形物100の表面から放射状に延びている。これにより、これらピンホール55の視野領域が、造形物100の表面における同一の領域の画像となる。画像重ね合わせ等により単一ピンホールで評価する場合と比べ信号強度を高くでき、また、当該領域の画像を立体化して生成することができる。よって、欠陥を視覚的に容易に認知することが可能となり、欠陥検出の精度をさらに向上させることができる。
【0064】
(6)第6の態様に係るX線マスク5の製造方法は、(1)から(5)の一態様に係るX線マスク5の製造方法であって、タングステンで形成された母材に前記第一ピンホール53を形成することで前記第一部材51を得るステップと、前記第一ピンホール53に、前記第二ピンホール54の形状を有する中子6の先端を挿入するステップと、前記中子6の周囲、及び前記第一部材51の表面に、溶融した鉛を供給するステップと、前記溶融した鉛を凝固させることで、前記第二部材52を得るステップと、前記中子6を取り除くステップと、を含む。
【0065】
上記方法によれば、第一ピンホール53に第二ピンホール54の形状を有する中子6の先端を挿入することで、これら第一ピンホール53と第二ピンホール54とが同軸上に位置するようになる(位置決めされる)。したがって、第一ピンホール53と第二ピンホール54とによって得られる画像の精度と分解能をさらに向上させることが可能となる。
【0066】
(7)第7の態様に係るX線マスク5の製造方法は、(6)のX線マスク5の製造方法であって、前記中子6は、中子本体61と、該中子本体61の表面に設けられ、酸化膜、及び窒化膜のいずれか一方を有する金属箔7と、を有する。
【0067】
上記方法によれば、中子本体61の表面に金属箔7を設けることによって、中子本体61に対して溶融した鉛が固溶してしまう可能性を低減することができる。これにより、第二ピンホール54の内面をより平滑に維持することができる。
【0068】
(8)第8の態様に係る欠陥検出方法は、積層造形によって形成された造形物100の欠陥を、(1)から(5)のいずれか一態様に係るX線マスク5を用いて検出する欠陥検出方法であって、前記造形物100の表面にX線を照射するステップと、前記造形物100の表面で散乱した前記X線を前記X線マスク5の前記第一ピンホール53に入射させるステップと、前記X線マスク5を通過したX線を結像させることで前記欠陥の有無を検出するステップと、を含む。
【0069】
上記方法によれば、高エネルギー、かつ高線量密度のX線を用いた場合であっても、より高い分解能を維持した状態で欠陥の有無を検出することができる。
【0070】
(9)第9の態様に係る積層造形装置1は、造形物100の造形面101に粉末材料を供給し、供給された前記粉末材料に溶融ビームを照射することで前記粉末材料を溶融させ、前記造形物100を積層造形する積層造形装置1であって、前記造形面101に沿った第一方向D1に移動しながら、前記造形面101上に前記粉末材料を供給しつつ、表面を均すリコータ22と、前記リコータ22に設けられ、電子ビームから変換することによって前記造形面101に検査用のX線を照射するX線源31と、前記リコータ22に設けられ、前記X線源31から照射された前記X線が前記造形面101で散乱することで生じる前記X線を検出する検出器32と、前記リコータ22に設けられ、前記検出器32と前記造形物100との間における前記X線の光路状に配置された(1)から(5)のいずれか一態様に係るX線マスク5と、を備える。
【0071】
上記構成によれば、高精度のもとで欠陥検出が行われることで、造形品の寸法精度や形状精度をさらに向上させることができる。これにより、造形品の歩留まりを向上させ、製造コストをさらに低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0072】
1…積層造形装置 5…X線マスク 6…中子 7…金属箔 11…造形部 12…検査部 21…造形ステージ 22…リコータ 23…造形物載置面 31…X線源 32…検出器 33…欠陥検出部 41…電子ビーム源 42…照射ターゲット 43…電子ビーム制御部 45…真空チャンバ 46…透過窓 47…ラインセンサ 51…第一部材 52…第二部材 53…第一ピンホール 54…第二ピンホール 55…ピンホール 61…中子本体 62…支持部 71…箔本体 72…表面層 80…照射領域 81…基準領域 100…造形物 101…造形面 205…X線マスク 305…X線マスク D1…第一方向 D2…第二方向 X…軸線