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特開2024-13998外輪案内保持器付き玉軸受および偏心回転装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013998
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】外輪案内保持器付き玉軸受および偏心回転装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/41 20060101AFI20240125BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20240125BHJP
   F04C 18/02 20060101ALN20240125BHJP
【FI】
F16C33/41
F16C19/06
F04C18/02 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116513
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】中尾 吾朗
【テーマコード(参考)】
3H039
3J701
【Fターム(参考)】
3H039AA03
3H039AA04
3H039BB05
3H039CC10
3H039CC19
3J701AA03
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA25
3J701BA44
3J701BA49
3J701FA01
3J701FA33
3J701FA41
3J701GA24
3J701GA29
3J701XB03
3J701XB13
3J701XB14
3J701XB19
3J701XB23
3J701XB26
(57)【要約】
【課題】偏心回転に伴う遠心力が発生したときに、保持器が一部の玉にのみ高い面圧で接触したり、保持器の傾きによって偏心方向に位置する柱部の外周が外輪溝肩部と外輪軌道溝の交差稜にエッジ当たりしたりするのを防止することが可能な玉軸受を提供する。
【解決手段】冠形樹脂保持器4は、一方の外輪溝肩部9の径方向内側に対向して配置される円環部11と、円環部11から軸方向に延びる片持ち梁状の複数の柱部12とを有し、円環部11の外周に、一方の外輪溝肩部9にしゅう接する外輪案内面17が設けられている外輪案内保持器付き玉軸受において、各柱部12が、他方の外輪溝肩部10にしゅう接する外輪案内突起15を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪(1)と、
前記内輪(1)の径方向外側に同軸に設けられた外輪(2)と、
前記内輪(1)と前記外輪(2)の間に組み込まれた複数の玉(3)と、
前記複数の玉(3)を保持する冠形樹脂保持器(4)と、を有し、
前記外輪(2)の内周には、前記玉(3)が転がり接触する外輪軌道溝(8)と、前記外輪軌道溝(8)の軸方向両側に位置する一対の外輪溝肩部(9,10)とが設けられ、
前記冠形樹脂保持器(4)は、前記一対の外輪溝肩部(9,10)のうちの一方の外輪溝肩部(9)の径方向内側に対向して配置される円環部(11)と、前記円環部(11)から周方向に間隔をおいて軸方向に延びる片持ち梁状の複数の柱部(12)とを有し、
前記円環部(11)の外周に、前記一方の外輪溝肩部(9)にしゅう接する外輪案内面(17)が設けられている外輪案内保持器付き玉軸受において、
前記各柱部(12)が、前記一対の外輪溝肩部(9,10)のうちの他方の外輪溝肩部(10)にしゅう接する外輪案内突起(15)を有することを特徴とする外輪案内保持器付き玉軸受。
【請求項2】
前記各柱部(12)が、周方向に間隔をおいて軸方向に延びる各一対の玉保持爪(16)と、前記一対の玉保持爪(16)が前記外輪案内突起(15)から独立して周方向に変形することができるように前記一対の玉保持爪(16)と前記外輪案内突起(15)とを隔てる分離溝(21)とを更に有する請求項1に記載の外輪案内保持器付き玉軸受。
【請求項3】
前記一対の玉保持爪(16)は、前記外輪案内突起(15)の径方向内側に対向して配置され、
前記分離溝(21)は、前記一対の玉保持爪(16)と前記外輪案内突起(15)を径方向に隔てるように、前記一対の玉保持爪(16)と前記外輪案内突起(15)の間を周方向に延びて形成されている請求項2に記載の外輪案内保持器付き玉軸受。
【請求項4】
前記外輪案内突起(15)の外周に、前記他方の外輪溝肩部(10)にしゅう接する第2の外輪案内面(18)が設けられ、
前記第2の外輪案内面(18)の周方向両端に、前記第2の外輪案内面(18)に滑らかに接続する断面円弧状のR面取り部(20)または前記第2の外輪案内面(18)と鈍角に交差するC面取り部が設けられている請求項1から3のいずれかに記載の外輪案内保持器付き玉軸受。
【請求項5】
周方向に隣り合う前記柱部(12)の間に、前記複数の玉(3)をそれぞれ収容するポケット(13)が形成され、
前記ポケット(13)の内面が、径方向に延びる円筒状に形成されている請求項1から3のいずれかに記載の外輪案内保持器付き玉軸受。
【請求項6】
前記玉(3)を挟んで周方向両側に位置する前記外輪案内突起(15)の先端同士の間隔(a)が、前記ポケット(13)の内面の内径と同じかそれよりも大きく設定されている請求項5に記載の外輪案内保持器付き玉軸受。
【請求項7】
周方向に隣り合う前記柱部(12)の間に、前記複数の玉(3)をそれぞれ収容するポケット(13)が形成され、
前記ポケット(13)の内面は、前記玉(3)の表面に沿った球状に形成され、
前記冠形樹脂保持器(4)の外周への前記ポケット(13)の開口は、軸方向に開放する半円状の円弧縁部(22)を有し、
前記玉(3)を挟んで周方向両側に位置する前記外輪案内突起(15)の先端同士の間隔(a)が、前記円弧縁部(22)の円弧直径(b)と同じかそれよりも大きく設定されている請求項1から3のいずれかに記載の外輪案内保持器付き玉軸受。
【請求項8】
前記玉(3)を挟んで周方向に対向する前記玉保持爪(16)の先端同士の間隔(c)が、前記玉(3)の直径の80%以上92%以下に設定されている請求項2または3に記載の外輪案内保持器付き玉軸受。
【請求項9】
定位置で回転する回転軸(30)と、
前記回転軸(30)の回転中心(C0)から偏心した位置に中心(C1)をもつ円筒状の外周を有し、前記回転軸(30)の回転中心(C0)まわりに偏心回転する偏心軸部(32)と、
前記偏心軸部(32)の外周に装着された請求項1から3のいずれかに記載の外輪案内保持器付き玉軸受と、を有する偏心回転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外輪案内保持器付き玉軸受、およびその玉軸受を使用した偏心回転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転軸を支持する軸受として、玉軸受が多く用いられる。玉軸受は、内輪と、内輪の径方向外側に同軸に設けられた外輪と、内輪と外輪の間に組み込まれた複数の玉と、その複数の玉を保持する保持器とを有する。外輪の内周には、玉が転がり接触する外輪軌道溝と、外輪軌道溝の軸方向両側に位置する一対の外輪溝肩部とが設けられている(例えば、特許文献1~5)。
【0003】
この玉軸受に使用される保持器として、冠形樹脂保持器が知られている(特許文献1~4)。冠形樹脂保持器は、外輪の内周の一対の外輪溝肩部のうちの一方の外輪溝肩部の径方向内側に対向して配置される円環部と、円環部から周方向に間隔をおいて軸方向に延びる片持ち梁状の複数の柱部とを有する。周方向に隣り合う柱部の間には、複数の玉をそれぞれ収容するポケットが形成されている。冠形樹脂保持器を使用した玉軸受は、金属製の保持器を使用した玉軸受に比べて、軽量、低トルク、低ノイズといった利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-295480号公報
【特許文献2】特開2007-056930号公報
【特許文献3】特開2007-292093号公報
【特許文献4】特開2017-116008号公報
【特許文献5】特表2007-506059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の発明者は、偏心回転装置の偏心軸部に玉軸受を取り付け、その玉軸受の保持器として冠形樹脂保持器を採用することを検討した。その結果、偏心軸部に取り付ける玉軸受の冠形樹脂保持器(以下、単に「保持器」という)の案内方式として玉案内方式を採用した場合、保持器が一部の玉にのみ高い面圧で接触することで、玉の表面の油膜切れや保持器の破損が発生するおそれがあり、一方、保持器の案内方式として外輪案内方式を採用した場合、偏心回転に伴う遠心力により生じる保持器の傾きによって、偏心方向に位置する柱部の外周が外輪溝肩部と外輪軌道溝の交差稜にエッジ当たりするおそれがあることが分かった。以下説明する。
【0006】
図13に、偏心回転装置の一例を示す。この偏心回転装置は、電動モータの回転軸30と、回転軸30と一体に設けられた主軸部31および偏心軸部32とを有する。主軸部31は、回転軸30の回転中心C0と同じ位置に中心をもつ円筒状の外周を有する。主軸部31の外周には、主軸部31を定位置に回転可能に支持する主軸受33が装着されている。偏心軸部32は、回転軸30の回転中心C0から所定の偏心量eをもって偏心した位置に中心C1をもつ円筒状の外周を有する。偏心軸部32の外周には、玉軸受34が装着されている。玉軸受34の外周には、図示しない偏心回転部材(例えば、スクロールコンプレッサの旋回スクロール)が取り付けられる。
【0007】
玉軸受34は、内輪35と、内輪35の径方向外側に同軸に設けられた外輪36と、内輪35と外輪36の間に組み込まれた複数の玉37と、その複数の玉37を保持する保持器38とを有する。外輪36の内周には、玉37が転がり接触する外輪軌道溝39と、外輪軌道溝39の軸方向両側に位置する一対の外輪溝肩部40,41とが設けられている。保持器38は、外輪36の内周の一対の外輪溝肩部40,41のうちの一方の外輪溝肩部40の径方向内側に対向して配置される円環部42と、円環部42から周方向に間隔をおいて軸方向に延びる片持ち梁状の複数の柱部43とを有する。
【0008】
この偏心回転装置は、電動モータの回転軸30が回転すると、主軸部31が定位置で回転し、偏心軸部32が、回転軸30の回転中心C0まわりに偏心量eの半径で偏心回転する。このとき、玉軸受34の保持器38は、回転軸30の回転中心C0まわりに偏心量eの半径で偏心回転するので、定位置で回転する主軸受33の保持器44とは異なり、保持器38には、偏心回転による偏心方向(回転中心C0に対して偏心軸部32の中心C1の位置する方向。図13図14では上方向)の遠心力が発生する。また、玉軸受34の各玉37にも偏心方向の遠心力が発生するので、保持器38は、それらの玉37からも偏心方向の力を受けることとなる。
【0009】
そのため、保持器38の案内方式として、一般的な方式である玉案内方式(保持器38のポケットの内面を玉37の表面に接触させることで保持器38を径方向に位置決めする方式)を採用したのでは、保持器38が一部の玉37にのみ高い面圧で接触し、その接触により玉37の表面の潤滑剤が掻き取られ、玉37の表面の油膜切れが発生し、潤滑不良によるピーリングや焼き付きが生じるおそれがある。また、玉案内方式を採用したのでは、保持器38が一部の玉37にのみ高い面圧で接触することで、保持器38に高い応力が発生し、保持器38が破損するおそれもある。
【0010】
そこで、本願の発明者は、偏心軸部32に取り付ける玉軸受34の保持器38の案内方式として、図13図15に示すように、特許文献1~4のような外輪案内方式(保持器38の外周を外輪溝肩部40の内周に接触させることで保持器38を径方向に位置決めする方式)を採用することを検討した。外輪案内方式を採用すると、保持器38が、玉37の表面に対する接触ではなく、外輪溝肩部40の内周に対する接触で位置決めされるので、保持器38および玉37に偏心方向の遠心力が発生したときに、保持器38が一部の玉37にのみ高い面圧で接触する事態を防ぐことが可能となる。
【0011】
ところが、偏心軸部32に取り付ける玉軸受34の保持器38の案内方式として、外輪案内方式を採用した場合、偏心回転に伴う遠心力により生じる保持器38の傾きによって、偏心方向に位置する柱部43の外周が外輪溝肩部40と外輪軌道溝39の交差稜にエッジ当たりするおそれがあることが分かった。
【0012】
すなわち、図16に示すように、保持器38の外周を外輪溝肩部40の内周に接触させることで保持器38を径方向に位置決めする外輪案内方式を採用した場合、保持器38が偏心回転すると、その偏心回転に伴い保持器38および玉37に発生する遠心力によって、保持器38が偏心方向(図14では上方向、図16では下方向)に径方向移動し、その保持器38が、一対の外輪溝肩部40,41のうちの一方の外輪溝肩部40のみで支持される(つまり、保持器38が片持ち支持となる)ため、保持器38が傾く。そして、この保持器38の傾きによって、偏心方向に位置する柱部43の外周が、外輪溝肩部40と外輪軌道溝39の交差する交差稜にエッジ当たりし、そのエッジ当たりが原因で、保持器38が摩耗して強度低下を生じたり、軸受の摩擦トルクが上昇したりするおそれがあることが分かった。
【0013】
この発明が解決しようとする課題は、偏心回転に伴う遠心力が発生したときに、保持器が一部の玉にのみ高い面圧で接触したり、保持器の傾きによって偏心方向に位置する柱部の外周が外輪溝肩部と外輪軌道溝の交差稜にエッジ当たりしたりするのを防止することが可能な玉軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、この発明では、以下の構成の外輪案内保持器付き玉軸受を提供する。
[構成1]
内輪と、
前記内輪の径方向外側に同軸に設けられた外輪と、
前記内輪と前記外輪の間に組み込まれた複数の玉と、
前記複数の玉を保持する冠形樹脂保持器と、を有し、
前記外輪の内周には、前記玉が転がり接触する外輪軌道溝と、前記外輪軌道溝の軸方向両側に位置する一対の外輪溝肩部とが設けられ、
前記冠形樹脂保持器は、前記一対の外輪溝肩部のうちの一方の外輪溝肩部の径方向内側に対向して配置される円環部と、前記円環部から周方向に間隔をおいて軸方向に延びる片持ち梁状の複数の柱部とを有し、
前記円環部の外周に、前記一方の外輪溝肩部にしゅう接する外輪案内面が設けられている外輪案内保持器付き玉軸受において、
前記各柱部が、前記一対の外輪溝肩部のうちの他方の外輪溝肩部にしゅう接する外輪案内突起を有することを特徴とする外輪案内保持器付き玉軸受。
【0015】
このようにすると、冠形樹脂保持器の案内方式として外輪案内方式を採用しているので、偏心回転に伴う遠心力が冠形樹脂保持器および玉に発生したときに、冠形樹脂保持器が一部の玉にのみ高い面圧で接触する事態を防止することができる。また、冠形樹脂保持器の円環部の外周に、外輪軌道溝の軸方向両側に位置する一対の外輪溝肩部のうちの一方の外輪溝肩部にしゅう接する外輪案内面が設けられ、各柱部に、他方の外輪溝肩部にしゅう接する外輪案内突起が設けられているので、偏心回転に伴い冠形樹脂保持器および玉に発生する遠心力によって冠形樹脂保持器が偏心方向に径方向移動したときに、その冠形樹脂保持器が、外輪軌道溝の軸方向両側の一対の外輪溝肩部の両方で支持された状態になる。そのため、偏心回転に伴う遠心力が冠形樹脂保持器および玉に発生したときにも冠形樹脂保持器が傾きにくく、偏心方向に位置する柱部の外周が外輪溝肩部と外輪軌道溝の交差稜にエッジ当たりするのを防止することが可能である。
【0016】
[構成2]
前記各柱部が、周方向に間隔をおいて軸方向に延びる各一対の玉保持爪と、前記一対の玉保持爪が前記外輪案内突起から独立して周方向に変形することができるように前記一対の玉保持爪と前記外輪案内突起とを隔てる分離溝とを更に有する構成1に記載の外輪案内保持器付き玉軸受。
【0017】
このようにすると、一対の玉保持爪と外輪案内突起とを隔てる分離溝が設けられているので、周方向に隣り合う柱部の間のポケットに玉を挿入するときに、円滑に玉保持爪が弾性変形する。そのため、玉軸受の組み立て作業が容易である。
【0018】
[構成3]
前記一対の玉保持爪は、前記外輪案内突起の径方向内側に対向して配置され、
前記分離溝は、前記一対の玉保持爪と前記外輪案内突起を径方向に隔てるように、前記一対の玉保持爪と前記外輪案内突起の間を周方向に延びて形成されている構成2に記載の外輪案内保持器付き玉軸受。
【0019】
このようにすると、一対の玉保持爪が、外輪案内突起の径方向内側に対向して配置されているので、外輪案内突起の周方向幅を大きく設定することができる。そのため、冠形樹脂保持器と外輪の接触面積を大きくして冠形樹脂保持器の耐久性を効果的に向上させることが可能となる。
【0020】
[構成4]
前記外輪案内突起の外周に、前記他方の外輪溝肩部にしゅう接する第2の外輪案内面が設けられ、
前記第2の外輪案内面の周方向両端に、前記第2の外輪案内面に滑らかに接続する断面円弧状のR面取り部または前記第2の外輪案内面と鈍角に交差するC面取り部が設けられている構成1から3のいずれかに記載の外輪案内保持器付き玉軸受。
【0021】
このようにすると、外輪案内突起の外周の第2の外輪案内面の周方向両端に、第2の外輪案内面に滑らかに接続する断面円弧状のR面取り部または第2の外輪案内面と鈍角に交差するC面取り部が設けられているので、偏心回転に伴う遠心力によって冠形樹脂保持器が偏心方向に移動し、外輪案内突起の外周の第2の外輪案内面が外輪溝肩部にしゅう接したときにも、第2の外輪案内面の周方向端縁で、外輪溝肩部の内周の潤滑剤が掻き取られにくい。そのため、外輪案内突起の外周の第2の外輪案内面と外輪溝肩部の内周との間の潤滑性を良好に保つことができる。
【0022】
[構成5]
周方向に隣り合う前記柱部の間に、前記複数の玉をそれぞれ収容するポケットが形成され、
前記ポケットの内面が、径方向に延びる円筒状に形成されている構成1から4のいずれかに記載の外輪案内保持器付き玉軸受。
【0023】
このようにすると、偏心回転に伴う遠心力によって冠形樹脂保持器が偏心方向に移動したときに、冠形樹脂保持器のポケットの内面が玉に干渉するのを確実に防止することが可能となる。
【0024】
[構成6]
前記玉を挟んで周方向両側に位置する前記外輪案内突起の先端同士の間隔が、前記ポケットの内面の内径と同じかそれよりも大きく設定されている構成5に記載の外輪案内保持器付き玉軸受。
【0025】
このようにすると、外輪案内突起の先端同士の間隔が、ポケットの内面の内径と同じかそれよりも大きく設定されているので、ポケットに玉を挿入するときに、玉が外輪案内突起に干渉するのを確実に防止することができる。
【0026】
[構成7]
周方向に隣り合う前記柱部の間に、前記複数の玉をそれぞれ収容するポケットが形成され、
前記ポケットの内面は、前記玉の表面に沿った球状に形成され、
前記冠形樹脂保持器の外周への前記ポケットの開口は、軸方向に開放する半円状の円弧縁部を有し、
前記玉を挟んで周方向両側に位置する前記外輪案内突起の先端同士の間隔が、前記円弧縁部の円弧直径と同じかそれよりも大きく設定されている構成1から4のいずれかに記載の外輪案内保持器付き玉軸受。
【0027】
このようにすると、外輪案内突起の先端同士の間隔が、冠形樹脂保持器の外周へのポケットの開口の円弧縁部の円弧直径と同じかそれよりも大きく設定されているので、ポケットに玉を挿入するときに、玉が外輪案内突起に干渉するのを確実に防止することができる。
【0028】
[構成8]
前記玉を挟んで周方向に対向する前記玉保持爪の先端同士の間隔が、前記玉の直径の80%以上92%以下に設定されている構成2または3に記載の外輪案内保持器付き玉軸受。
【0029】
また、この発明では、上記構成の外輪案内保持器付き玉軸受を使用した偏心回転装置として、次の構成のものを併せて提供する。
定位置で回転する回転軸と、
前記回転軸の回転中心から偏心した位置に中心をもつ円筒状の外周を有し、前記回転軸の回転中心まわりに偏心回転する偏心軸部と、
前記偏心軸部の外周に装着された構成1から8のいずれかに記載の外輪案内保持器付き玉軸受と、を有する偏心回転装置。
【発明の効果】
【0030】
この発明の外輪案内保持器付き玉軸受は、冠形樹脂保持器の案内方式として外輪案内方式を採用しているので、偏心回転に伴う遠心力が冠形樹脂保持器および玉に発生したときに、冠形樹脂保持器が一部の玉にのみ高い面圧で接触する事態を防止することができる。また、冠形樹脂保持器の円環部の外周に、外輪軌道溝の軸方向両側に位置する一対の外輪溝肩部のうちの一方の外輪溝肩部にしゅう接する外輪案内面が設けられ、各柱部に、他方の外輪溝肩部にしゅう接する外輪案内突起が設けられているので、偏心回転に伴い冠形樹脂保持器および玉に発生する遠心力によって冠形樹脂保持器が偏心方向に径方向移動したときに、その冠形樹脂保持器が、外輪軌道溝の軸方向両側の一対の外輪溝肩部の両方で支持された状態になる。そのため、偏心回転に伴う遠心力が冠形樹脂保持器および玉に発生したときにも冠形樹脂保持器が傾きにくく、偏心方向に位置する柱部の外周が外輪溝肩部と外輪軌道溝の交差稜にエッジ当たりするのを防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】この発明の第1実施形態にかかる外輪案内保持器付き玉軸受を示す断面図
図2図1の玉軸受を軸方向他方側(図では右側)から見た部分断面図
図3図2の冠形樹脂保持器の一部および玉の近傍を拡大して示す図
図4図1の玉軸受を偏心回転させ、その偏心回転に伴う遠心力によって冠形樹脂保持器が偏心方向(図では下方)に径方向移動し、冠形樹脂保持器の外周が一対の外輪溝肩部にしゅう接した状態を示す断面図
図5図4のV-V線に沿った断面図
図6図2の冠形樹脂保持器を示す図
図7図6のVII-VII線に沿った断面図
図8図6の冠形樹脂保持器を径方向外側から見た図
図9図6の冠形樹脂保持器の斜視図
図10】この発明の第2実施形態を図2に対応して示す図
図11図10の冠形樹脂保持器の一部および玉の近傍を拡大して示す図
図12図10の冠形樹脂保持器の斜視図
図13】偏心回転装置を示す断面図
図14図13のXIV-XIV線に沿った断面図
図15図14の偏心方向(図では上方)の玉の近傍を拡大して示す図
図16図13に示す比較例の冠形樹脂保持器が、偏心回転に伴う遠心力によって偏心方向(図16では下方)に径方向移動し、冠形樹脂保持器の外周が軸方向一方の外輪溝肩部にしゅう接した状態を図4に対応して示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1に、この発明の第1実施形態にかかる外輪案内保持器付き玉軸受を示す。この玉軸受は、内輪1と、内輪1の径方向外側に同軸に設けられた外輪2と、内輪1と外輪2の間に周方向に間隔をおいて組み込まれた複数の玉3と、複数の玉3を保持する冠形樹脂保持器4(以下、単に「保持器4」という)とを有する。この玉軸受は、潤滑油またはグリースによる潤滑環境下で使用される。
【0033】
内輪1の外周には、玉3が転がり接触する内輪軌道溝5と、内輪軌道溝5の軸方向外側に位置する一対の内輪溝肩部6,7とが形成されている。内輪軌道溝5は、内輪1の外周の軸方向中央を周方向に延びて形成されている。一対の内輪溝肩部6,7は、内輪軌道溝5の軸方向両側を周方向に延びて形成されている。
【0034】
外輪2の内周には、玉3が転がり接触する外輪軌道溝8と、外輪軌道溝8の軸方向外側に位置する一対の外輪溝肩部9,10とが形成されている。外輪軌道溝8は、外輪2の内周の軸方向中央を周方向に延びて形成されている。一対の外輪溝肩部9,10は、外輪軌道溝8の軸方向両側を周方向に延びて形成されている。一対の外輪溝肩部9,10の内周は、いずれも軸方向に沿って内径が変化せず一定の円筒面である。外輪溝肩部9の内径と外輪溝肩部10の内径は同一である。
【0035】
玉3は、内輪軌道溝5と外輪軌道溝8との間で径方向に挟み込まれている。この玉軸受は、深溝玉軸受である。すなわち、内輪軌道溝5は、軸方向に対称の凹円弧状の断面をもつ円弧溝であり、外輪軌道溝8も、軸方向に対称の凹円弧状の断面をもつ円弧溝である。
【0036】
保持器4は、外輪溝肩部9の径方向内側に対向して配置される円環部11と、円環部11から周方向に隣り合う玉3の間を軸方向に延びる柱部12とを有する。柱部12は、軸方向の一端を円環部11に固定された固定端とし、軸方向の他端を自由端とする片持ち梁状に形成されている。柱部12は、周方向に間隔をおいて複数設けられている。周方向に隣り合う柱部12の間には、玉3を収容するポケット13が形成されている。
【0037】
図6図7図9に示すように、各柱部12は、円環部11から軸方向に延びる柱基部14と、柱基部14の先端から3つに分岐して軸方向に延びる外輪案内突起15および一対の玉保持爪16とを有する三股状に形成されている。図1に示すように、外輪案内突起15は、外輪溝肩部10の内周にしゅう接する軸方向の突起である。玉保持爪16は、玉3がポケット13から軸方向に抜け出ないように玉3を保持する爪である。
【0038】
円環部11と各柱部12は、樹脂材に繊維強化材を添加した樹脂組成物によって継ぎ目の無い一体に形成されている。樹脂組成物のベースとなる樹脂材としては、ポリアミド(PA)またはスーパーエンジニアリングプラスチックを採用することができる。ポリアミドとしては、ポリアミド46(PA46)、ポリアミド66(PA66)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(PA9T)等を使用することができる。また、スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を採用することができる。樹脂材に添加する繊維強化材としては、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維等を採用することができる。繊維強化材は、保持器4を形成する樹脂組成物の10~50重量%を占める割合で配合されている。
【0039】
図1に示すように、円環部11は、玉3の軸方向一方側を周方向に延びる円環状の部分である。円環部11の外周には、外輪溝肩部9にしゅう接する外輪案内面17が設けられている。外輪案内面17は、軸方向に沿って外径が変化せず一定の円筒面である。外輪案内面17は、外輪溝肩部9の径方向内側に微小隙間(例えば、半径で0.5mm以下の大きさの隙間)を介して対向している。
【0040】
柱基部14の玉3との対向面と、玉保持爪16の玉3との対向面は、玉3を収容するポケット13の内面を形成している。ポケット13の内面は、図1では、径方向に延びる円筒状の面である。柱基部14の軸方向長さ(ポケット13の底から、柱基部14と玉保持爪16の境界までの軸方向距離)は、玉3の半径よりも大きく設定されている。
【0041】
外輪案内突起15の円環部11から遠い側の軸方向端部の外周には、外輪溝肩部10にしゅう接する第2の外輪案内面18が設けられている。第2の外輪案内面18は、軸方向に沿って外径が変化せず一定の円筒面である。第2の外輪案内面18は、外輪溝肩部10の径方向内側に微小隙間(例えば、半径で0.5mm以下の大きさの隙間)を介して対向している。第2の外輪案内面18の外径は、円環部11の外周の外輪案内面17の外径と同一である。図3図8に示すように、外輪案内突起15の軸方向両側の側面19は、ポケット13の円筒状の内面に接続する平面状に形成されている。
【0042】
図6図8に示すように、第2の外輪案内面18の周方向両端(第2の外輪案内面18と外輪案内突起15の軸方向両側の側面19との間の交差稜)には、第2の外輪案内面18に滑らかに接続する断面円弧状のR面取り部20が設けられている。R面取り部20に代えて、第2の外輪案内面18と鈍角に交差するC面取り部を設けてもよい。図8図9に示すように、R面取り部20は、保持器4の外周へのポケット13の開口縁全体に形成されている。
【0043】
図2図3に示すように、各柱部12は、周方向に間隔をおいて一対の玉保持爪16を有する。図3に示すように、玉3を挟んで周方向両側に位置する一対の柱部12のうち、玉3の周方向一方側(図では左側)に位置する柱部12の周方向他方側(図では右側)の玉保持爪16と、玉3の周方向他方側(図では右側)に位置する柱部12の周方向一方側(図では左側)の玉保持爪16は、玉3を間に挟んで周方向に対向し、玉3を周方向両側から抱え込んでいる。
【0044】
図6図7に示すように、各柱部12において、一対の玉保持爪16は、外輪案内突起15の径方向内側に対向して配置されている。各玉保持爪16と外輪案内突起15の間には、玉保持爪16と外輪案内突起15を隔てる分離溝21が形成されている。この分離溝21を設けることで、玉保持爪16が外輪案内突起15から切り離され、玉保持爪16が外輪案内突起15から独立して周方向に弾性変形することができるようになっている。図では、分離溝21は、一対の玉保持爪16と外輪案内突起15を径方向に隔てるように、一対の玉保持爪16と外輪案内突起15の間を周方向に延びる周方向溝である。
【0045】
図8に示すように、保持器4の外周へのポケット13の開口は、軸方向に開放する半円状の円弧縁部22を有する。玉3(図3参照)を挟んで周方向両側に位置する外輪案内突起15の先端同士の間隔aは、円弧縁部22の円弧直径b(この実施形態では、円弧縁部22の円弧直径bはポケット13の円筒状の内面の内径と同一である)と同じかそれよりも大きく設定されている。また、玉3を間に挟んで周方向に対向する玉保持爪16の先端同士の間隔cは、玉3(図3参照)の直径の80%以上92%以下に設定されている。図5に示すように、玉3とポケット13の内面との間の周方向隙間δの大きさは、0.2mm以上0.5mm以下に設定されている。
【0046】
この玉軸受は、次のようにして組み立てることができる。まず、図1に示す内輪1と外輪2と複数の玉3とを準備し、内輪1と外輪2の間に複数の玉3を組み込む。次に、その複数の玉3が周方向に等間隔となるように玉3の周方向位置を調整する。その後、内輪1と外輪2の間に保持器4を軸方向に押し込む。このとき、玉保持爪16が玉3に押圧されて一時的に周方向に弾性変形し、その弾性変形によって広がった玉保持爪16の先端間を玉3が通過することで、玉3がポケット13に挿入される。
【0047】
この玉軸受は、図13図14に示すような偏心回転装置の偏心軸部32の外周に装着して使用する。すなわち、上記実施形態の玉軸受は、図13図14に示す玉軸受34に置き換えて使用することができる。図13図14に示す偏心回転装置は、定位置で回転する電動モータの回転軸30と、回転軸30の回転中心C0と同じ位置に中心をもつ円筒状の外周を有する主軸部31と、回転軸30の回転中心C0から偏心した位置に中心C1をもつ円筒状の外周を有する偏心軸部32と、主軸部31の外周に装着された主軸受33と、偏心軸部32の外周に装着された玉軸受34とを有し、回転軸30の回転駆動力によって、偏心軸部32が回転軸30の回転中心C0まわりに偏心量eの半径で偏心回転するものである。
【0048】
この実施形態の玉軸受は、図1に示すように、保持器4の案内方式として外輪案内方式(保持器4の外周を外輪2の内周に接触させることで保持器4を径方向に位置決めする方式)を採用しているので、図13図14に示すような偏心回転装置の偏心軸部32の外周に装着して使用したときに、図4に示すように、偏心回転に伴う遠心力を、保持器4の外周と外輪2の内周の接触部分で支持することができる。そのため、玉案内方式(保持器4のポケット13の内面を玉3の表面に接触させることで保持器4を径方向に位置決めする方式)を採用した場合のように、偏心回転に伴う遠心力が発生したときに保持器4が一部の玉3にのみ高い面圧で接触するのを防止することができる。
【0049】
また、この玉軸受は、図1に示すように、保持器4の円環部11の外周に、外輪軌道溝8の軸方向両側に位置する一対の外輪溝肩部9,10のうちの一方の外輪溝肩部9にしゅう接する外輪案内面17が設けられ、各柱部12に、他方の外輪溝肩部10にしゅう接する外輪案内突起15が設けられているので、図4に示すように、偏心回転に伴い保持器4および玉3に発生する遠心力によって保持器4が偏心方向(図13の回転中心C0に対して偏心軸部32の中心C1の位置する方向。図4では下方)に径方向移動したときに、その保持器4が、外輪軌道溝8の軸方向両側の一対の外輪溝肩部9,10の両方で支持された状態になる。そのため、偏心回転に伴う遠心力が保持器4および玉3に発生したときにも保持器4が傾きにくく、偏心方向に位置する柱部12の外周が外輪溝肩部9と外輪軌道溝8の交差稜にエッジ当たりするのを防止することができる。
【0050】
また、この玉軸受は、図7に示すように、一対の玉保持爪16と外輪案内突起15とを隔てる分離溝21が設けられているので、周方向に隣り合う柱部12の間のポケット13に玉3を挿入するときに、円滑に玉保持爪16が弾性変形する。そのため、玉軸受の組み立て作業が容易である。
【0051】
また、この玉軸受は、図6に示すように、一対の玉保持爪16が、外輪案内突起15の径方向内側に対向して配置されているので、外輪案内突起15の周方向幅を大きく設定することができる。そのため、保持器4と外輪2の接触面積を大きくして保持器4の耐久性を効果的に向上させることが可能となっている。
【0052】
また、この玉軸受は、図8図9に示すように、外輪案内突起15の外周の第2の外輪案内面18の周方向両端に、第2の外輪案内面18に滑らかに接続する断面円弧状のR面取り部20が設けられているので、図4図5に示すように、偏心回転に伴う遠心力によって保持器4が偏心方向に移動し、外輪案内突起15の外周の第2の外輪案内面18が外輪溝肩部10にしゅう接したときにも、第2の外輪案内面18の周方向端縁で、外輪溝肩部10の内周の潤滑剤が掻き取られにくい。そのため、外輪案内突起15の外周の第2の外輪案内面18と外輪溝肩部10の内周との間の潤滑性を良好に保つことができる。外輪案内突起15の外周の第2の外輪案内面18の周方向両端に、R面取り部20に代えて、第2の外輪案内面18と鈍角に交差するC面取り部を設けた場合にも同様の作用効果を得ることができる。
【0053】
また、この玉軸受は、図5に示すように、ポケット13の内面が、径方向に延びる円筒状に形成されているので、偏心回転に伴う遠心力によって保持器4が偏心方向に移動したときに、保持器4のポケット13の内面が玉3に干渉するのを確実の防止することが可能である。
【0054】
また、この玉軸受は、図8に示すように、外輪案内突起15の先端同士の間隔aが、ポケット13の内面の内径bと同じかそれよりも大きく設定されているので、ポケット13に玉3を挿入するときに、玉3が外輪案内突起15に干渉するのを確実に防止することができる。また、保持器4を樹脂成形するときに、金型からの無理抜きにならないようにすることができる。
【0055】
また、この玉軸受は、保持器4が樹脂組成物で形成されているので、希薄潤滑条件で使用しても自己潤滑性を有する。また、保持器4が樹脂組成物で形成されているので、偏心回転の用途に使用したときにも静粛性に優れ、低ノイズである。
【0056】
図10図12に、この発明の第2実施形態を示す。第2実施形態は、第1実施形態と比べて、保持器4のポケット13の形状のみが異なり、他の構成は第1実施形態と基本的に同一である。そのため、第1実施形態と同一の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
柱基部14の玉3との対向面と、玉保持爪16の玉3との対向面は、玉3を収容するポケット13の内面を形成している。ポケット13の内面は、玉3の表面に沿った球状の面である。図11に示すように、外輪案内突起15の軸方向両側の側面19は、ポケット13の球状の内面に接続する円筒面状(軸方向と平行に延びる円筒面状)に形成されている。この実施形態の玉軸受も、第1実施形態と同様に、図13図14に示すような偏心回転装置の偏心軸部32の外周に装着して使用することができる。
【0058】
この実施形態の玉軸受も、第1実施形態と同様に、保持器4の案内方式として外輪案内方式を採用しているので、偏心回転に伴う遠心力が保持器4および玉3に発生したときに、保持器4が一部の玉3にのみ高い面圧で接触する事態を防止することができる。また、保持器4の円環部11の外周に、一方の外輪溝肩部9にしゅう接する外輪案内面17が設けられ、各柱部12に、他方の外輪溝肩部10(図4参照)にしゅう接する外輪案内突起15が設けられているので、偏心回転に伴い冠形樹脂保持器4および玉3に発生する遠心力によって保持器4が偏心方向に径方向移動したときに、その保持器4が、外輪軌道溝8の軸方向両側の一対の外輪溝肩部9,10の両方で支持された状態になる。そのため、偏心回転に伴う遠心力が保持器4および玉3に発生したときにも保持器4が傾きにくく、偏心方向に位置する柱部12の外周が外輪溝肩部9と外輪軌道溝8の交差稜にエッジ当たりするのを防止することが可能である。その他の作用効果も第1実施形態と同様である。
【0059】
上記実施形態では、内輪1として、内輪軌道溝5が外周に形成された中空の環状部材を例に挙げて説明したが、内輪1は、必ずしも中空の環状部材である必要はなく、内輪1として、例えば、玉3が転がり接触する内輪軌道溝5が外周に直接形成された中実の部材(軸体)を採用することも可能である。要するに、内輪(inner race)は、玉3が転がり接触する環状の内輪軌道溝5を外周に有する内方部材であればよい。
【0060】
また、上記各実施形態では、外輪2として、外輪軌道溝8が内周に形成された中空の環状部材を例に挙げて説明したが、外輪2は、必ずしも中空の環状部材である必要はなく、外輪2として、例えば、玉3が転がり接触する外輪軌道溝8を内周に直接形成した軸受箱を採用することも可能である。要するに、外輪(outer race)は、玉3が転がり接触する環状の外輪軌道溝8を内周に有する外方部材であればよい。
【0061】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0062】
1 内輪
2 外輪
3 玉
4 冠形樹脂保持器
8 外輪軌道溝
9,10 外輪溝肩部
11 円環部
12 柱部
13 ポケット
15 外輪案内突起
16 玉保持爪
17 外輪案内面
18 第2の外輪案内面
20 R面取り部
21 分離溝
22 円弧縁部
30 回転軸
32 偏心軸部
a 外輪案内突起の先端同士の間隔
b ポケットの内面の内径(円弧縁部の円弧直径)
c 玉保持爪の先端同士の間隔
C0 回転軸の回転中心
C1 偏心軸部の外周の中心
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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