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  • 特開-板状緩み止めナットの取り付け具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139985
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】板状緩み止めナットの取り付け具
(51)【国際特許分類】
   F16B 41/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
F16B41/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050959
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】591045541
【氏名又は名称】岳南建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078950
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 忠
(72)【発明者】
【氏名】坂井 善洋
(72)【発明者】
【氏名】川崎 伯晃
(57)【要約】
【課題】板状ナットの取り付け作業の効率化と、作業中の板状ナットの落下防止をはかる。
【解決手段】取り付け具1は、作業者の装着物に係止されるリール2と、これに接続されるガイドワイヤ3と、作業者の装着物に係止される支持ワイヤ4とを具備する。ガイドワイヤ3は、先端側に磁気吸着部材5を有し、中間が集積ナット群Sに挿通される。支持ワイヤ4は、先端側に摩擦係止部6とリング部7とを具備し、中間が集積ナット群Sに挿通される。摩擦係止部6は、集積ナット群Sの先端側に摩擦係合して、それの自然通過を阻害する一方、作業者による個別板状ナットRの人為的通過を許容する。個別板状ナットRはリング部7で、ガイドワイヤ3へ移送され、ボルトBに吸着した吸着部材5へ導かれ、ボルトBの先端に位置決めされる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナットの緩み止めのためにボルトに螺合される板状ナットの取り付け具であって、
作業者の装着物に接続される自動巻き取り式のリールと、
基端側において当該リールに伸縮自在に巻き回され、先端側に前記ボルトの先端に磁気吸着可能な吸着部材が結合され、中間において多数の前記板状ナットを集積させた集積ナット群に挿通されるガイドワイヤと、
基端側において前記作業者の装着物に係止され、先端側に摩擦係止部と前記ガイドワイヤを自由に挿通させるリング部とを具備し、中間において前記ガイドワイヤと共に前記集積ナット群に挿通される支持ワイヤとを具備し、
前記摩擦係止部は、前記集積ナット群の先端側の少なくとも1個の前記板状ナットの内周に摩擦係合することによって、前記集積ナット群の自然通過を阻害する一方、前記作業者による個別の前記板状ナットの人為的通過を許容するように設けられ、
前記リング部は、前記摩擦係止部を通過した前記板状ナットを前記ガイドワイヤの先端側へ送出可能に設けられ、
前記吸着部材は、前記ボルトへの吸着状態において、前記ガイドワイヤを経て移送された前記板状ナットを前記ボルトの先端に位置決め可能に設けられることを特徴とする板状緩み止めナットの取り付け具。
【請求項2】
前記ガイドワイヤは、柔軟な素材からなり、前記支持ワイヤはばね弾性を有する素材からなることを特徴とする請求項1に記載の板状緩み止めナットの取り付け具。
【請求項3】
前記摩擦係止部は、屈曲したゴムモールド体からなることを特徴とする請求項1に記載の板状緩み止めナットの取り付け具。
【請求項4】
前記リング部は、外径を弾性的に拡縮自在に設けられ、前記板状ナットの、前記ガイドワイヤの先端側への自然通過を阻害する一方、前記作業者による人為的通過を許容するように設けられることを特徴とする請求項1に記載の板状緩み止めナットの取り付け具。
【請求項5】
前記支持ワイヤは、樹脂被覆の金属ワイヤからなり、前記ガイドワイヤは、柔軟な繊維ワイヤからなることを特徴とする請求項1に記載の板状緩み止めナットの取り付け具。
【請求項6】
前記吸着部材は、前記板状ナットの自然通過を阻害する一方、前記ガイドワイヤを経て移送された前記板状ナットの前記作業者による人為的通過を許容するように外周に突出するボールプランジャを具備し、前記ボルトへの吸着状態において、当該ボールプランジャを通過した前記板状ナットを前記ボルトの先端に位置決め可能に設けられることを特徴とする請求項1に記載の板状緩み止めナットの取り付け具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトに螺合されたナットの緩み止めのために当該ボルトに螺合される板状緩み止めナットの取り付け具に関し、送電鉄塔上などの高所における取り付け作業の効率化と、板状ナットの落下防止をはかるものである。
【背景技術】
【0002】
締結対象物に装着されたボルトにナットを取り付ける際に、作業者がナットを誤って落下させることなく、効率的にボルトへ位置決めすることができるナットの脱落防止具が特許文献1に開示されている。
この器具は、複数個のナットが直列して挿通されるナット挿通部材と、そこからのナットの離脱と保持を制御するナットホルダと、ボルトの先端面に吸着する吸着部材と、これとナットホルダとを接続する伸縮自在のコイル状の線材とを具備する。ナットホルダは、係止位置にある時、ナット挿通部材からのナットの抜け出しを阻止する一方で、退避位置にある時、ナット挿通部材から離を許容する係止機構を具備する。コイル状の線材は、ナットホルダから離脱したナットを落下させることなくボルトの先端に吸着された吸着部材へ移行させるガイドとなる。吸着部材は、ナットをボルトの先端の螺合位置に位置決めする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-002530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のナットの脱落防止具においては、作業手袋を装着した作業者にとって、ナットホルダの小さな係止片の押し込み操作、1個ずつのナットの取り出し操作が容易でない。作業中に、ナットホルダに保持された多数のナットの荷重が吸着部材にかかると、吸着部材がボルトの先端から離脱して、ナットを落下させるおそれがある。
従って、本発明は、多数の板状緩み止めナットの集積体を、ボルトに磁気吸着した吸着部材に荷重をかけることなく保持し、小さな係止片の押し込み操作のような細かな作業なしで、板状緩み止めナットを1個ずつ集積体から離脱させて取り出し、ボルトの先端部へ移行させることができる板状緩み止めナットの取り付け具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の説明においては、添付図面の符号を参照するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、本発明の板状緩み止めナットの取り付け具1は、作業者の装着するベルト、工具袋等の装着物に接続される自動巻き取り式のリール2と、これに伸縮自在に接続されるガイドワイヤ3と、作業者の装着物に接続される支持ワイヤ4とを具備する。リール2は、接続具2aを介して作業者の装着物に接続される。ガイドワイヤ3は、基端側においてリール2に伸縮自在に巻き回され、先端側にボルトBの先端に磁気吸着可能な吸着部材5が結合され、中間において多数の板状ナットRを集積させた集積ナット群Sに挿通される。支持ワイヤ4は、基端側において接続具2aに係止され、先端側に摩擦係止部6とリング部7とを具備し、中間においてガイドワイヤ3と共に集積ナット群Sに挿通される。リング部7には、ガイドワイヤ3が挿通される。摩擦係止部6は、集積ナット群Sの先端側の少なくとも1個の板状ナットRの内周に摩擦係合することによって、集積ナット群Sの自然通過を阻害する一方、作業者による個別の板状ナットRの人為的通過を許容する。リング部7は、摩擦係止部6を通過した板状ナットRをガイドワイヤ3の先端側へ送出可能に設けられる。吸着部材5は、ボルトBへの吸着状態において、ガイドワイヤ3に送出された板状ナットRをボルトBの先端に位置決め可能に設けられる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、支持ワイヤ4とガイドワイヤ3が挿通された集積ナット群Sは、支持ワイヤ4の先端側において摩擦係止部6に係止されるから伸縮自在のガイドワイヤ3側には集積ナット群Sの荷重が伝わらない。このため、ボルトBの先端に吸着させた吸着部材5は、自立吸着を維持できるので、作業者は両手が自由になる。集積ナット群Sの先端の1個の板状ナットRを、摩擦係止部6を通過させてガイドワイヤ3へ送り、ガイドワイヤ3上を吸着部材5まで移送する作業は両手で容易に行える。移送作業中、板状ナットRを落下させるおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る緩み止めナットの取り付け具の斜視図である。
図2図1の緩み止めナットの取り付け具の使用状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。
緩み止め用の板状ナットRは、所要箇所に固定されたボルトBに装着されたナットNに重ねてボルトBに螺合されるものである。例えば、ボルトB、ナットNの設置箇所が、送電鉄塔上などの高所であるとき、板状ナットRを作業中に落下させることなく、効率的にボルトBの先端に導いて位置決めするために、本発明の緩み止めナットの取り付け具1が用いられる。
【0009】
図において、緩み止めナットの取り付け具1は、作業者が装着する工具袋等に接続具2aを介して接続される自動巻き取り式のリール2と、このリール2に伸縮自在に接続され、先端に吸着部材5を有するガイドワイヤ3と、リール2と共に作業者の装着物に接続される支持ワイヤ4とを具備する。
【0010】
支持ワイヤ4は、多数の板状ナットRを集積させて保持し、ガイドワイヤ3は、支持ワイヤ4に保持された集積ナット群Sから取り出された先頭の1個の板状ナットRをボルトBに吸着された吸着部材5まで導くためのものである。
【0011】
ガイドワイヤ3は、繊維紐のような柔軟な素材で形成され、基端側においてリール2に伸縮自在に巻き回され、先端側に吸着部材5が結合される。吸着部材5は、ボルトBの先端に磁気吸着可能である。
【0012】
支持ワイヤ4は、ばね弾性を有する樹脂被覆の金属線のような素材で形成され、基端側において接続具2aに係止され、先端側に摩擦係止部6とリング部7とを具備する。
【0013】
ガイドワイヤ3は、中間において支持ワイヤ4のリング部6に挿通される。作業者は、リング部6を通してガイドワイヤ3の先端側を自由に伸縮操作することができる。
【0014】
使用に当たっては、ガイドワイヤ3と支持ワイヤ4の中間部を並行させ、並行部を集積ナット群Sに挿通させる。
【0015】
支持ワイヤ4の摩擦係止部6は、集積ナット群Sの先端側の少なくとも1個の板状ナットRの内周に摩擦係合することによって、集積ナット群Sの自然通過を阻害する一方、作業者による個別の板状ナットRの人為的通過を許容する。図示の実施形態において、摩擦係止部6は、屈曲したゴムモールド体からなり、表面の摩擦力と協働して屈曲部に板状ナットRの内周を係止しやすく構成される。
【0016】
リング部7は、摩擦係止部6を通過した板状ナットRをガイドワイヤ3の先端側へ送出できるように設けられる。図示の実施形態において、リング部7は、支持ワイヤ4の先端部を折り返し摩擦係止部6内で結束して水滴型に形成してなり、外径を弾性的に拡縮自在である。リング部7は、板状ナットRがガイドワイヤ3の先端側へ自然通過するのを阻害する一方、作業者による人為的通過を許容するように設けられる。
【0017】
吸着部材5は、概略円柱状で、先端部内に磁石が埋設され、外周に突出するボールプランジャ8を具備する。ボールプランジャ8は、板状ナットRの自然通過を阻害する一方、ガイドワイヤ3に送出された板状ナットRを作業者が人為的通過させるのを許容し、ボルトBへの吸着状態において、ボールプランジャ8を通過した板状ナットRをボルトBの先端に位置決めする。
【0018】
作業者は、支持ワイヤ4に集積ナット群Sを保持した状態で、ガイドワイヤ3及び支持ワイヤ4をリール2の接続具2aを介して工具袋、安全帯等に接続し、螺合すべきボルトBの近傍まで取り付け具1を携行する。
【0019】
次いで、ガイドワイヤ3を適宜、リール2から引き出して、吸着部材5の先端をボルトBの先端に磁気吸着させる。ガイドワイヤ3は、支持ワイヤ4と並行して集積ナット群Sを貫通しているが、集積ナット群Sの先端に位置する少なくとも1個の板状ナットRの内周が摩擦係止部6の屈曲部に係合し、集積ナット群Sの荷重を支持しているため、ガイドワイヤ3には荷重がかからず、したがって、ガイドワイヤ3は支持ワイヤ4のリング部7を通して自由に引き出すことができる。
【0020】
次いで、手動操作で、集積ナット群Sの先端に位置する1個の板状ナットRを、摩擦係止部6との係合を外して集積ナット群Sから分離し、さらにリング部7を介してガイドワイヤ3へ移行させる。ガイドワイヤ3上へ移行した1個の板状ナットRをさらに吸着部材5まで持ち来して、これに嵌合させ、ボールプランジャ8を越えてその先端まで移行させ、ボルトBに螺合させる。この間も、ガイドワイヤ3には集積ナット群Sの荷重がかからないから、吸着部材5がボルトBから脱落することがない。
【符号の説明】
【0021】
1 緩み止めナットの取り付け具
2 リール
2a 接続具
3 ガイドワイヤ
4 支持ワイヤ
5 吸着部材
6 摩擦係止部
6a 屈曲部
7 リング部
8 ボールプランジャ
B ボルト
N ナット
R 板状ナット
S 集積ナット群
図1
図2