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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140006
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/02 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A47C7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050987
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 泰崇
(72)【発明者】
【氏名】渡部 英一
(57)【要約】
【課題】上下反転姿勢をなす椅子が天板に対して揺れ動く現象が好適に抑制された椅子を提供する。
【解決手段】脚体Aと、脚体Aに支持された座Bと、背支持フレームDを介して脚体Aに支持された背板Eとを備えた椅子であって、椅子全体を上下反転させることにより、反転された座Bを机Pの天板pt上に載せ置いた上下反転姿勢(X)を採り得るものであり、座Bが、三次元曲面状をなす座面bmを有した合成樹脂製のものであり、座面bmの周端縁部に、上下反転姿勢(X)をなす座Bの天板ptに対する揺れ動きを抑制するための揺れ動き抑制手段である突起Yが設けられている。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚体と、この脚体に支持された座と、前記背支持フレームを介して前記脚体に支持された前記背板とを備えた椅子であって、
椅子全体を上下反転させることにより、反転された前記座を机の天板上に載せ置いた上下反転姿勢を採り得るものであり、
前記座が、三次元曲面状をなす座面を有した合成樹脂製のものであり、
前記座面の周端縁部に、前記上下反転姿勢をなす前記座の前記天板に対する揺れ動きを抑制するための揺れ動き抑制手段が設けられている椅子。
【請求項2】
前記揺れ動き抑制手段が、前記座面とは面一にならない形状部分によって構成されている請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記揺れ動き抑制手段が、前記座面よりも上方に突出した突起である請求項1記載の椅子。
【請求項4】
前記突起が合成樹脂製のものであり、前記座と一体に形成されたものである請求項3記載の椅子。
【請求項5】
前記座が、平面視において、全体として略四角形状をなしたものであり、且つ、四つの角部がそれぞれ丸く形成された角端縁を備えたものであり、
前記突起が、後部に配された二つの前記角部における前記角端縁の近傍に設けられている請求項4記載の椅子。
【請求項6】
前記揺れ動き抑制手段が、前記座面における基本的な使用者の臀部接触位置よりも外側に設けられている請求項1記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、学校等の教育施設において好適に使用される種々の椅子が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この種の椅子においては、座として、三次元曲面状をなす座面を有した合成樹脂製のものを適用することにより、使用者に対して良好な座り心地を提供しようとする試みが行われはじめている。
【0004】
ところが、本件椅子の発明者らは、椅子全体を上下反転させることにより、反転された座を机の天板上に載せ置いた上下反転姿勢を採るようにした場合に、椅子全体が天板に対して振り子のように長時間継続して揺れ動いてしまうという問題点を発見した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3114910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、少なくとも、上下反転姿勢をなす椅子が天板に対して揺れ動くという現象が好適に抑制された椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
【0008】
請求項1に記載の発明は、脚体と、この脚体に支持された座と、前記背支持フレームを介して前記脚体に支持された前記背板とを備えた椅子であって、椅子全体を上下反転させることにより、反転された前記座を机の天板上に載せ置いた上下反転姿勢を採り得るものであり、前記座が、三次元曲面状をなす座面を有した合成樹脂製のものであり、前記座面の周端縁部に、前記上下反転姿勢をなす前記座の前記天板に対する揺れ動きを抑制するための揺れ動き抑制手段が設けられている椅子である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記揺れ動き抑制手段が、前記座面とは面一にならない形状部分によって構成されている請求項1記載の椅子である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記揺れ動き抑制手段が、前記座面よりも上方に突出した突起である請求項1記載の椅子である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記突起が合成樹脂製のものであり、前記座と一体に形成されたものである請求項3記載の椅子である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記座が、平面視において、全体として略四角形状をなしたものであり、且つ、四つの角部がそれぞれ丸く形成された角端縁を備えたものであり、前記突起が、後部に配された二つの前記角部における前記角端縁の近傍に設けられている請求項4記載の椅子である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記揺れ動き抑制手段が、前記座面における基本的な使用者の臀部接触位置よりも外側に設けられている請求項1記載の椅子である。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明によれば、少なくとも、上下反転姿勢をなす椅子が天板に対して揺れ動くという現象が好適に抑制された椅子を提供することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態を示す斜視図。
図2】同実施形態における斜視図。
図3】同実施形態における正面図。
図4】同実施形態における背面図。
図5】同実施形態における右側面図。
図6】同実施形態における平面図。
図7】同実施形態における底面図。
図8図3におけるA-A線断面図。
図9図8におけるB部分の拡大図。
図10図8におけるC部分の拡大図。
図11図4におけるD-D線断面図。
図12図11におけるE部分の拡大図。
図13】同実施形態における分解斜視図。
図14】同実施形態における上下反転姿勢の一例を説明するための側面図。
図15】同実施形態における上下反転姿勢の一例を説明するための説明図。
図16】同実施形態における座の左側面図。
図17図16におけるF-F線断面図。
図18図16におけるG-G線断面図。
図19図16におけるH-H線断面図。
図20】同実施形態における分解斜視図。
図21】同実施形態における分解底面図。
図22】同実施形態における斜視図。
図23】同実施形態における接地部材の斜視図。
図24】同実施形態における接地部材の平面図
図25】同実施形態における接地部材の背面図。
図26】同実施形態における接地部材の右側面図。
図27図27におけるI-I線断面図。
図28図26におけるJ-J線断面図。
図29】同実施形態における上下反転姿勢の一例を説明するための側面図。
図30】同実施形態における上下反転姿勢の一例を説明するための側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を、図1~30を参照して説明する。
【0017】
この実施形態は、本発明を、椅子に適用したものである。椅子は、例えば、学校やその他の教育施設等において好適に使用されるものである。
【0018】
椅子は、脚体Aと、脚体Aに支持された座Bと、背支持フレームDを介して脚体Aに支持された背板Eとを備えてなるものである。
【0019】
椅子は、椅子全体を上下反転させることにより、当該反転された椅子における座Bを机Pにおける天板ptの水平面の上に載せ置いた上下反転姿勢(X)を採り得るものである。
【0020】
以下、椅子の各構成について詳述する。
【0021】
<<脚体A>>
脚体Aは、前後方向に延びてなり左右に対をなして配設された左右の脚ベース1と、左右の脚ベース1における前後方向中間部から上方に延設された左右の脚柱2と、左右方向に水平に延びてなり左右の脚柱2における下部間を繋ぐ連結フレームFとを備えたものである。
【0022】
<脚ベース1>
脚ベース1は、前後方向に延びてなる脚ベース本体11と、脚ベース本体11の前後両端部に装着された接地部材Jとを備えたものである。
【0023】
なお、接地部材Jを含んでなる脚ベース1は、椅子だけでなく、図15及び図16に示されたような机Pにも適用できるものとなっている。なお、机Pに関して、接地部材Jを含んだ脚ベース1の構成は、椅子の脚ベース1と同じ構成のものであるため説明を省略する。
【0024】
[脚ベース本体11]
脚ベース本体11は、円筒状をなす金属製のパイプ材により形成されたものである。
【0025】
脚ベース本体11は、側面視において非対称形状をなしている。脚ベース本体11は、側面視においてへの字状をなしている。
【0026】
脚ベース本体11における脚柱2との接続部分よりも前の部分(以下、「前脚ベース本体部分11f」という。)の長手寸法は、脚ベース本体11における脚柱2との接続部分よりも後の部分(以下、「後脚ベース本体部分11r」という。)の長手寸法よりも短く設定されている。
【0027】
前脚ベース本体部分11fは、前方に向かって漸次下方に位置するように傾斜した姿勢をなしている。後脚ベース本体部分11rは、後方に向かって漸次下方に位置するように傾斜した姿勢をなしている。
【0028】
前脚ベース本体部分11fの方が、後脚ベース本体部分11rと比較して、傾斜度合いが高くなっている。
【0029】
脚ベース本体11の前後両端部における下面側部分には、接地部材Jの装着に用いられる切欠部Iが形成されている。
【0030】
切欠部Iは、脚ベース本体11における前後両端部の中空部と当該中空部の下に位置する外部空間との間を上下方向に連通させるためのものである。切欠部Iは、接地部材Jを構成する連結部j4の通過を許容するとともに接地部材Jを構成する爪部ntが係合し得るものとなっている。
【0031】
切欠部Iは、脚ベース本体11における前端部及び後端部の各下面側部分に形成されている。切欠部Iは、底面視において略十字状をなしている。
【0032】
切欠部Iは、脚ベース本体11の長手方向すなわち前後方向に延びるように設けられた第一の切欠部形成部分i1と、第一の切欠部形成部分i1の前後方向中間部から脚ベース本体11の長手方向に直交する方向すなわち左右方向に延びるように設けられ接地部材Jに設けられた爪部ntが係合し得る部位である第二の切欠部形成部分i2とを備えている。
【0033】
第一の切欠部形成部分i1は、前後方向に延びたスリット状をなしている。第一の切欠部形成部分i1には、接地部材Jの連結部j4が配設されるようになっている。第一の切欠部形成部分i1は、接地部材Jにおける連結部j4の両側部と係わり合うことにより、接地部材Jが脚ベース本体11の軸心回りに回転しないように規制し得るものとなっている。
【0034】
第二の切欠部形成部分i2には、接地部材Jの爪部ntが係合し得るものとなっている。すなわち、第二の切欠部形成部分i2は、接地部材Jを脚ベース本体11に対して抜け止めするための抜け止め機構を構成するものである。
【0035】
[接地部材J]
接地部材Jは、合成樹脂製のものである。接地部材Jは、底面視において環状をなし床面Lに対して直接的に当接し得る下向面Mを有している。
【0036】
接地部材Jは、中空部を有した円筒状の脚ベース本体11に内嵌される内嵌部j1と、内嵌部j1に連設され脚ベース本体11の端部をカバーするヘッド部j2と、内嵌部j1及びヘッド部j2の下に配設された接地基部j3と、内嵌部j1と接地基部j3との間を連結する連結部j4と、連結部j4の左右に隣り合うように配設され内嵌部j1の下部に設けられた爪部ntとを備えたものである。
【0037】
内嵌部j1は、脚ベース本体11に内嵌されるものである。内嵌部j1は、全体として略円筒状をなしている。内嵌部j1の内部には補強用のリブjrが設けられている。内嵌部j1の外周面には周方向に一定の間隔を空けて前後方向に延びた突起jtが設けられている。内嵌部j1は、円筒状をなす脚ベース本体11の中空部に挿入されるものである。
【0038】
ヘッド部j2は、内嵌部j1の先端側に連設されている。ヘッド部j2は、脚ベース本体11の端面tmを覆い隠すものである。つまり、ヘッド部j2と内嵌部j1との間には、脚ベース本体11の端面tmを覆い隠す段部jdが設けられている。ヘッド部j2の外周面は、脚ベース本体11の外周面と略面一をなすように設定されている。ヘッド部j2の下部は接地基部j3の前部に連設されている。
【0039】
接地基部j3は、床面Lに対して直接的に当接する主要部を構成するものである。接地基部j3は、前後方向に長い略矩形枠状をなしている。接地基部j3は、底面視において略矩形環状をなし床面Lに対して直接的に当接し得る下向面Mを有している。接地基部j3の下向面Mは、底面視において略矩形環状をなすように配設されている。
【0040】
接地基部j3には、下方に開放され上方に凹んでなる凹部Hが形成されている。すなわち、接地基部j3は、底面視において下向面Mに囲われた領域に、矩形空間が設けられるように凹ませた凹部Hを形成したものである。
【0041】
凹部Hには、床面Lを傷つけやすい砂利等の硬質異物が嵌り込み難い大きさに設定されている。
【0042】
なお、この実施形態では、凹部Hの開口幅wh(短手方向の開口幅wh)は、最大幅寸法が15mmよりも短い寸法である砂利等の硬質異物を挟み込まないように、当該硬質異物の最大幅寸法より長い寸法である15mmに設定されている。
【0043】
凹部Hの開口幅whは、適宜の寸法に設定されるものであり、本実施形態に例示されたものに限られないのは言うまでもない。
【0044】
凹部Hの長手方向の開口幅は約25mmに設定されており、凹部Hの深さ寸法は約5mmに設定されている。
【0045】
また、接地基部j3は、下向面Mを側面視において下方に向かって凸をなすように湾曲させたものとなっている。接地基部j3の下向面Mが側面視において湾曲しているため、脚ベース本体11が側面視において非対称形状のものであっても、床面Lに対して好適に当接し得るものとなっている。つまり、脚ベース本体11が側面視において非対称形状のものであっても、その前後両端部に同一形状の接地部材Jを無理なく適用できるものとなっている。
【0046】
なお、接地部材Jは、椅子の脚ベース1だけでなく机Pの脚ベース1としても同一構造のものを適用できるものとなっている。接地部材Jは、椅子における脚ベース本体11の床面に対する傾斜度合いと机Pにおける脚ベース本体11の床面に対する傾斜度合いが異なるものであっても、同一構造のものを無理なく適用できるものとなっている。
【0047】
連結部j4は、上に位置する内嵌部j1と下に位置する接地基部j3との間を左右方向中間部において繋ぐものである。連結部j4は、脚ベース本体11に設けられた切欠部Iにおける第一の切欠部形成部分i1に配設されるようになっている。
【0048】
連結部j4を除く内嵌部j1と接地基部j3との間には、脚ベース本体11における下部分が挿入される隙間skが設けられている。
【0049】
爪部ntは、接地部材Jを脚ベース本体11に対して抜け止めするための抜け止め機構を構成するものである。爪部ntは、脚ベース本体11に設けられた切欠部Iにおける第二の切欠部形成部分i2に係合するものとなっている。 なお、この実施形態の爪部ntは、片持ち状に設けられていない構成のものである。爪部ntは、その両側部に位置するように内嵌部j1に設けられたスリットjsのみによって厚み方向(上下方向)の一時的な弾性変形が許容されている。
【0050】
つまり、爪部ntは、脚ベース本体11に対する装着時において、第二の切欠部形成部分i2に対して係合するための一時的な弾性変形は比較的円滑にできるものの、第二の切欠部形成部分i2に係合した後は、円滑に係合状態を解くことが難しい構成のもの(いわゆる嵌め殺しタイプのもの)となっている。
【0051】
<脚柱2>
左右の脚柱2は、上下方向に伸縮可能に構成されたものである。
【0052】
左右の脚柱2は、筒状をなし下端部が脚ベース本体11に剛結された下脚柱部21と、下脚柱部21に対して昇降動作可能に構成された上脚柱部22とを備えている。
【0053】
下脚柱部21と上脚柱部22との間には、操作部Sを回転操作することにより脚柱2の長さ、すなわち、上脚柱部22の下脚柱部21に対する突出度合いを調整し得る調整機構Kが設けられている。
【0054】
左右の脚柱2における上端部すなわち上脚柱部22の上端部は、背支持フレームDを構成する前後方向に延びたベースフレーム部3における前後方向中間部に対して剛結されている。
【0055】
ここで、ベースフレーム部3は、座Bを受ける矩形枠状の座受フレームCの構成部分を兼ねたものである。座受フレームCは、前後方向に延びてなり座Bの左右両側部の下面側に配設されたベースフレーム部3と、ベースフレーム部3の前端部間を繋ぐものであり座Bにおける前部の下面側に配設された左右方向に延びてなる前横架フレーム部2と、ベースフレーム部3の後端部間を繋ぐものであり座Bにおける後部の下面側に配設された左右方向に延びてなる後横架フレーム部9とを備えたものである。
【0056】
<<座B>>
座Bは、着座者の臀部に対する好適なホールド感を与えるために前後方向及び左右方向の中間部が下方に凹んだ座面bmを有したものである。すなわち、座Bは、三次元曲面状をなす座面bmを有した合成樹脂製のものである。
【0057】
座Bは、平面視において、全体として略四角形状をなしたものである。座Bは、平面視において、四つの角部がそれぞれ丸く形成された角端縁bcを備えたものである。
【0058】
座Bは、正面視において、左右側端縁部が最も高い位置になるように形成されている。座Bは、側面視において、前後方向中央部分が最も高い位置になるように形成されている。つまり、座Bは、座面bmにおける左右側端縁部の前後方向中央部分が最も高い位置に設定されている。
【0059】
この実施形態では、座Bは、矩形枠状をなす座受フレームCを介して脚体Aに支持されている。
【0060】
座面bmの周端縁部には、上下反転姿勢(X)をなす座Bの天板ptに対する揺れ動きを抑制するための揺れ動き抑制手段である突起Yが設けられている。すなわち、揺れ動き抑制手段は、座面bmとは面一にならない形状部分によって構成されている。
【0061】
この実施形態において示された揺れ動き抑制手段である突起Yは、座面bmよりも上方に突出した構成をなしている。
【0062】
突起Yは合成樹脂製のものであり、座Bと一体に形成されたものである。
【0063】
突起Yは、後部に配された二つの角部における角端縁bcの近傍に設けられている。換言すれば、揺れ動き抑制手段は、着座者に対する座り心地を損ね難いように座面bmにおける基本的な使用者の臀部接触位置よりも外側に設けられている。
【0064】
突起Yは、側面視において、椅子の重心点Qよりも後に位置するように配設されている。突起Yは、座Bの座面bm、すなわち、座Bにおける滑らかに連続する三次元曲面状をなす座面bmに対して突設されたものである。
【0065】
突起Yは、上下反転姿勢(X)をなす椅子全体が、机Pの天板pt上において揺れ動いた場合には、その揺れ動きを抑制するために天板ptに対して当接し得るものである。
【0066】
なお、机Pの天板pt上において、上下反転姿勢(X)をなす椅子全体が揺れ動いていない場合の座面bmにおける天板ptとの接地点R(椅子全体が安定している場合における前の接地点R)は、側面視において、椅子の重心点Qよりも前に位置するように配設されている。
【0067】
突起Yは、天板ptとの接地点(椅子全体が安定している場合における後の接地点)となっている。突起Yは、側面視において、椅子の重心点Qよりも後に位置するように配設されている。すなわち、突起Yは、机Pの天板pt上において安定している場合(殆ど揺れ動いていない場合)には、前の接地点である座面bmの接地点Rとともに天板ptに対して当接するように構成されている。換言すれば、突起Yは、上下反転姿勢(X)をなす椅子全体が、机Pの天板pt上において安定している場合には、天板ptに対して当接する位置に設けられている。
【0068】
つまり、座Bに設けられた突起Yは、仮想曲面状をなす座面bmの天板当接部分と当該天板当接部分が接する水平な天板面との係わり合いによって天板ptに対して椅子全体が前方及び後方に交互に一定の規則性で転動しようとする動き(振り子的な動き)を、積極的に邪魔するものとなっている。
【0069】
なお、図29は、前の接地点Rよりも前に位置する座面bmの接触点Wだけが、天板ptに接している状態のものを例示したものである。この状態で使用者等が上下反転姿勢(X)の椅子から手を離した場合には、仮想曲面状をなす座面bmを有する座Bが重心点Qのある後方に転動することになる。
【0070】
しかしながら、この実施形態では、図30に示すように、重心点Qよりも後に配設された突起Yが、座Bの後方への転動を速やかに邪魔するため、比較的短時間で、接地点R及び突起Yの前後二点が天板ptに対して接することになる。この結果、図29の状態の椅子から、使用者が手を離した場合であっても、座Bの振り子的な動きは、突起Yの存在に基づいて速やかに抑制されるものとなっている。
【0071】
座Bの下面には、前後方向及び左右方向に延びるようにして補強用のリブbrが配設されている。
【0072】
また、座Bの下面における後端縁近傍には、座Bの後端縁に沿うようにして、椅子全体の移動時において使用者によって好適に用いられる指掛用の突起Tが下方に向かって突設されている。
【0073】
<<背支持フレームD>>
背支持フレームDは、背板Eを支持するものである。
【0074】
背支持フレームDは、前後方向に延びてなり座Bの下面側に配設された左右一対のベースフレーム部3と、ベースフレーム部3の後端部に連設され上下方向に延びてなる左右一対の起立フレーム部4と、起立フレーム部4の上部間を繋ぐ横延フレーム部5とを備えたものである。
【0075】
ベースフレーム部3、起立フレーム部4、及び、横延フレーム部5は、円筒状をなす金属製のパイプ材により一体に形成されたものである。換言すれば、ベースフレーム部3、起立フレーム部4、及び、横延フレーム部5を有してなる背支持フレームDは、一本の金属製円筒パイプ材を曲げ加工することにより作られたものである。
【0076】
<ベースフレーム部3>
ベースフレーム部3は、前後方向に水平且つ略直線状に延びてなるものである。ベースフレーム部3は、四角枠状をなす座受フレームCの構成部分を兼ねたものである。ベースフレーム部3は、その前後方向中間部が脚柱2の上端部に連結されている。
【0077】
<起立フレーム部4>
起立フレーム部4は、ベースフレーム部3の後端部と横延フレーム部5の側端部との間を繋ぐものである。上下方向に延びた起立フレーム部4の上部分は、背板Eの側端縁esよりも内側方に位置するように当該背板Eの背面側に添設されている。つまり、背板Eの左右両側部分は、起立フレーム部4よりも外側方に大きく出っ張ったものとなっている。
【0078】
背板Eの側端縁esと起立フレーム部4との左右方向の離間距離w2は、少なくとも、起立フレーム部4における左右幅寸法w4の二倍よりも長く設定されている。
【0079】
<横延フレーム部5>
横延フレーム部5は、背板Eの上端縁euよりも下方に位置するように当該背板Eの背面に添設されている。つまり、背板Eの上部分は、起立フレーム部4よりも上方に大きく出っ張ったものとなっている。
【0080】
横延フレーム部5の下部には、使用者の手指を掛けるための凹部Uが設けられている。横延フレーム部5の凹部Uは、金属製パイプ材の下部を上方に凹をなすように凹み変形させることにより形成されている。
【0081】
この実施形態では、横延フレーム部5の凹部Uは、金属製パイプ材における下部の前半部分を斜め上後方に凹をなすように凹み変形させることにより形成されている。換言すれば、凹部Uは、斜め下前方に向かって開放された形状をなしている。
【0082】
横延フレーム部5における左右方向中間部の上部には、単一の係合孔51が形成されている。係合孔51には、背板Eに設けられた庇部7に突設された突起7tが挿入されるようになっている。この実施形態の係合孔51は、丸孔状をなしている。
【0083】
背支持フレームDは、少なくとも、起立フレーム部4と横延フレーム部5が円筒状をなす金属製のパイプ材により一体に連続するように形成されている。背支持フレームDは、起立フレーム部4と横延フレーム部5との間に、部分円弧状をなす湾曲形状部分Gが設けられている。
【0084】
<<背板E>>
背板Eは、着座者の背部が添接し得る合成樹脂製のものである。
【0085】
背板Eは、板状をなし前面を背凭れ面6mとした背板本体6と、背板本体6の上下方向中間部から後方に突設され横延フレーム部5の上側及び湾曲形状部分Gの上側を覆う庇部7と、起立フレーム部4の内側部に対して添接又は近接するように背板本体6から後方に突設された連結壁部8とを備えたものである。
【0086】
連結壁部8及び庇部7は、互いに離間するように背板本体6に設けられている。
【0087】
<背板本体6>
背板本体6は、背支持フレームDに取り付けるための貫通孔が形成されていない構成のものとなっている。
【0088】
背板本体6は、平面視において後方に向かって凸をなすように湾曲した形状をなしている。また、背板本体6は、側面視において前方に凸をなすように湾曲した形状をなしている。背板本体6の上端部61は、後方に反った形状をなしている。
【0089】
背凭れ面6mである背板本体6の前面には、背板Eを背支持フレームDに対して取り付けるための止着具(リベットやねじ等)が露出しないものとなっている。
【0090】
背板本体6の上部は、横延フレーム部5よりも上方に迫り出したものとなっている。背板本体6の上端縁euと横延フレーム部5との上下方向の離間距離w1は、少なくとも、横延フレーム部5の上下幅寸法w3よりも長く設定されている。
【0091】
背板本体6の左右両側部は、起立フレーム部4よりも外側方に迫り出したものとなっている。背板本体6の側端縁esと起立フレーム部4との左右方向の離間距離w2は、少なくとも、起立フレーム部4における左右幅寸法w4の二倍よりも長く設定されている。
【0092】
<庇部7>
庇部7は、背板本体6から後方に庇状に突設されたものである。庇部7は、少なくとも横延フレーム部5の上側を覆うように背板本体6の背面側から後方に突設されている。
【0093】
この実施形態では、庇部7は、横延フレーム部5の上側及び湾曲形状部分Gの上側を覆うものとなっている。
【0094】
庇部7の下面と背板本体6との間には、左右方向に間隔をあけて補強リブ7tが設けられている。補強リブ7tの露出端縁reは横延フレーム部5及び湾曲形状部分Gに沿う形態をなしている。
【0095】
すなわち、庇部7は、左右方向中央部が左右方向に直線状に延びてなるものであり、左右方向両端部が外方に向かって漸次下方に位置するように湾曲した形状をなしている。
【0096】
庇部7には、横延フレーム部5に設けられた係合孔51に対して挿入される突起7tが設けられている。突起7tは、略円筒状をなしている。突起7tは、庇部7における左右方向中央部の一箇所のみに突設されている。突起7tは、庇部7の左右方向中央部における前後方向中間部から下方に突設されている。
【0097】
庇部7は、連結壁部8に対して離間するように背板本体6に設けられている。
【0098】
<連結壁部8>
連結壁部8は、上下方向に延びた起立壁状のものである。連結壁部8には、止着具であるねじv1を横方向から挿通し得る止着具挿通孔たるねじ挿通孔h1が設けられている。連結壁部8は、ねじ挿通孔h1に挿通されたねじv1により、起立フレーム部4に対して固定されている。
【0099】
連結壁部8は、上下方向に延びた起立フレーム部4の内側部に対して添接するように背板本体6から後方に突設されている。
【0100】
連結壁部8は、当該連結壁部8の先端側部分が起立フレーム部4に沿うように湾曲したものとなっている。換言すれば、連結壁部8の先端部には起立フレーム部4に沿うように曲がった沿曲部分81が設けられている。
【0101】
連結壁部8は、庇部7に対して離間するように背板本体6に設けられている。
【0102】
ねじv1による背板Eと背支持フレームDとの連結は、連結壁部8と起立フレーム部4との間でのみ、行われるものとなっている。
【0103】
<背支持フレームDに対する背板Eの装着について>
背板Eを背支持フレームDに対する装着は、例えば、次のような手順で行われる。
【0104】
背支持フレームDにおける左右一対の起立フレーム部4の内側部に対して、左右一対の連結壁部8が嵌り込むように、背板Eを背支持フレームDに対して近接させていく。このとき、庇部7及び当該庇部7に突設された突起7tが横延フレーム部5に干渉しないように、背板Eを最終的な装着位置よりも上方にずらした状態で、背支持フレームDに対して近接させていく。
【0105】
この状態で、背板Eを背支持フレームDに近接させると、左右一対の連結壁部8を構成する先端部の沿曲部分81は、左右一対の起立フレーム部4に押圧されることにより一時的に背板Eの左右方向中心部方向に弾性変位する。
【0106】
続いて、背板本体6の背面側に当接する位置にまで起立フレーム部4が到達すると、一時的に弾性変位された連結壁部8の沿曲部分81は元の位置に弾性復帰し、連結壁部8は、起立フレーム部4の内側部に対して緊密に係合することになる。
【0107】
次に、背板Eを背支持フレームDに対して降下させ、庇部7の突起7tを横延フレーム部5の係合孔51に挿入させる。
【0108】
しかる後に、連結壁部8のねじ挿通孔h1に挿通されたねじv1を起立フレーム部5に設けたナット部n1に螺着することにより、背板Eを背支持フレームDに対して固定する。
【0109】
以上の手順を経て、背板Eが背支持フレームDに対して装着される。
【0110】
上述した椅子であれば、使用者の手指を掛けやすい位置に配設された横延フレーム部5に凹部Uが設けられたものとなっている。このため、凹部Uの存在により、椅子全体を移動させる場合に、使用者の手指を掛けやすい好適な構成を有したものとなっている。
【0111】
また、上述した椅子であれば、一定の撓み変形が許容された合成樹脂製の背板Eに庇部7が設けられているため、背支持フレームDと背板Eとの間に、背板Eの一時的な弾性変形に伴って髪の毛やその他の物品が挟まれないようにするための好適な構成を備えたものとなっている。
【0112】
また、上述した椅子であれば、背板Eに後方に突出するように上下方向に延びた連結壁部8を設けているため、背支持フレームDに対して背板Eを支持させる好適な構成を有した椅子を提供することができる。
【0113】
また、上述した椅子であれば、座Bに揺れ動き抑制手段である突起Yを設けたものであるため、上下反転姿勢(X)をなす椅子が水平面を有する天板ptに対して揺れ動く現象が好適に抑制されたものとなる。
【0114】
また、上述した椅子であれば、少なくとも、四角枠状をなす接地基部j3を有した接地部材Jを設けたものであるため、床面Lを傷つける砂利等の硬質異物の嵌り込みが好適に抑制されたものとなっている。
【0115】
また、上述した椅子であれば、接地基部j3の下向面Mが側面視において下方に凸をなすように湾曲したものとなっているため、脚ベース本体11が側面視において非対称形状であっても、複数箇所に用いられる接地部材Jの形状を共通化させる設計の自由度に優れたものとなる。
【0116】
以上説明したように、本実施形態に係る椅子は、脚体Aと、脚体Aに支持された座Bと、背支持フレームDを介して脚体Aに支持された背板Eとを備えたものである。そして、椅子全体を上下反転させることにより、反転された座Bを机Pの天板pt上に載せ置いた上下反転姿勢(X)を採り得るものである。
【0117】
座Bが、三次元曲面状をなす座面bmを有した合成樹脂製のものであり、座面bmの周端縁部に、上下反転姿勢(X)をなす座Bの天板ptに対する揺れ動きを抑制するための揺れ動き抑制手段である突起Yが設けられている。
【0118】
このため、上下反転姿勢(X)をなす椅子が机Pの天板ptに対して比較的長時間に亘って揺れ動くという現象が好適に抑制された椅子を提供することができるものとなる。
【0119】
揺れ動き抑制手段である突起Yは、座面bmとは面一にならない形状部分によって構成されている。
【0120】
このため、下向きの座面bmと天板ptにおける上向きの載置面との係わり合いによって生じる上下反転姿勢(X)の椅子の揺れ動き現象が、突起Yが天板ptに当たることによって好適に抑制されるものとなる。
【0121】
揺れ動き抑制手段である突起Yが、座面bmよりも上方に突出したものである。
【0122】
このため、下向きの座面bmと天板ptにおける上向きの載置面との係わり合いによって生じる上下反転姿勢(X)の椅子の揺れ動き現象が、座面bmよりも上方に突出した突起Y(すなわち、上下反転姿勢(X)において、座面bmよりも下方に突出した突起Y)が天板ptに当たることによって好適に抑制されるものとなる。
【0123】
突起Yが合成樹脂製のものであり、座Bと一体に形成されたものである。
【0124】
このため、突起Yは、製造工数が抑制された態様で座Bに設けられたものであるとともに、強度すなわち壊れにくさに優れた設計の自由度に優れたものとなっている。
【0125】
座Bが、平面視において、全体として略四角形状をなしたものであり、且つ、四つの角部がそれぞれ丸く形成された角端縁bcを備えたものである。そして、突起Yが、後部に配された二つの角部における角端縁bcの近傍に設けられている。
【0126】
このため、突起Yは、机Pの天板ptに当接することにより、上下反転姿勢(X)の椅子の揺れ動き現象が抑制される好適な箇所に設けられたものとなっている。
【0127】
揺れ動き抑制手段である突起Yが、座面bmにおける基本的な使用者の臀部接触位置よりも外側に設けられている。
【0128】
このため、使用者に対して突起Yが干渉しないものとなるため、使用者の座り心地を損ねたり使用者の被服を傷つけたりし難いものとなっている。
【0129】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0130】
脚体や、背支持フレームや、背板の構成は、上述した実施形態に示されたものに限られるものではなく、適宜の構成のものを採用し得るものである。
【0131】
揺れ動き抑制手段は、上述した実施形態に示された構成のものに限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜の構成を採り得るものである。例えば、揺れ動き抑制手段としては、座面とは面一にならない形状部分によって構成されたものを挙げることができる。
【0132】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0133】
A…脚体
B…座
D…背支持フレーム
E…背板
bm…座面
Y…突起(揺れ動き抑制手段)
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