(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140015
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H01G4/30 516
H01G4/30 513
H01G4/30 201G
H01G4/30 201F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050999
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100206829
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100140198
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 保子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】奥井 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199691
【弁理士】
【氏名又は名称】吉水 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100145089
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】浅井 尚
(72)【発明者】
【氏名】大島 道生
(72)【発明者】
【氏名】柴田 好規
(72)【発明者】
【氏名】福田 隼也
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】回路基板への実装時及び使用時のクラックの発生が抑制され、かつ、外部電極経由の劣化因子の浸入が抑制された積層セラミックコンデンサを提供する。
【解決手段】積層セラミックコンデンサは、誘電体磁器で形成された誘電体層21と、金属を主成分とする内部電極22とが、交互に積層された積層体及び積層体の表面を覆う保護部を有する素体並びに素体の表面に配置され、内部電極と電気的に接続され、かつ、銅を主成分元素とする金属で形成された導体部41と、前記誘電体磁器と同様の組成を有するセラミック材料で形成されたセラミック部42とを有する外部電極を備える。前記セラミック部には、前記導体部における前記素体に接する面と該面に対向する面との間を貫通して配置されると共に、前記貫通する経路が曲折している曲折セラミック部421が含まれる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体磁器で形成された誘電体層と金属を主成分とする内部電極とが積層された積層体、及び
前記積層体の表面を覆う保護部
を有する素体、並びに
前記素体の表面に配置され、
前記内部電極と電気的に接続され、かつ
銅を主成分元素とする金属で形成された導体部と、前記誘電体磁器と同様の組成を有するセラミック材料で形成されたセラミック部とを有する
外部電極
を備え、
前記セラミック部には、前記導体部における前記素体に接する面と該面に対向する面との間を貫通して配置されると共に、前記貫通する経路が曲折している曲折セラミック部が含まれる
積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記曲折セラミック部の、前記導体部を貫通する経路の曲路率が、1.1以上7.0以下である、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記内部電極中の金属が、銅を主成分元素とするものである、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
誘電体磁器組成物の粉末を準備すること、
前記誘電体磁器組成物の粉末をバインダと混合し、シート状に成形して生シートを得ること、
前記生シート上に、金属を含む内部電極パターンを形成すること、
前記内部パターンが形成された生シートを所定の枚数積層し、積層方向両端部にカバー層用生シートを配置した後、圧着して生積層体を得ること、
前記生積層体を個片化し、焼成前素体を得ること、
前記焼成前素体からバインダを除去すること、
バインダ除去後の前記焼成前素体の表面に、銅を主成分元素とする金属粒子、及び前記誘電体磁器組成物と同様の組成を有するセラミック粒子を含む外部電極用ペーストを付着させること、並びに
前記外部電極用ペーストが付着した前記焼成前素体を焼成して焼結体を得ること
を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサは、誘電体セラミックと内部電極との積層体を含む素体の表面に形成された外部電極を、回路基板上のランド電極に半田付けすることで、回路基板に実装される。外部電極には、回路基板への半田付け時に加わる熱や、回路基板が置かれる環境の温度変化等により、熱応力が発生し、この熱応力により、外部電極の端部から素体内部へとクラックが生じることがある。
【0003】
外部電極の端部から素体内部へと進展したクラックは、水分等の劣化因子の浸入経路となって電気的絶縁性の低下を引き起こしたり、内部電極まで達してその連続性を低下させ、静電容量の低下を引き起こしたりする。このため、クラックの原因となる熱応力を低減するための対策が講じられている。
【0004】
一例として、特許文献1には、外部電極を、導体層の厚さ方向に連なる柱状のセラミック部が散在したものとすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された構造を有する積層セラミックコンデンサでは、外部電極における導体層とセラミック部との界面が、導体層の厚さ方向に略直線状に形成されている。このため、焼成時や回路基板実装時の温度変化に伴って、導体層とセラミック部との収縮挙動の相違により、両者の間に隙間が生じると、該隙間を通じて水分等の劣化因子が浸入し、素体まで容易に到達してしまうことが問題であった。
【0007】
そこで、本発明は、回路基板への実装時及び使用時のクラックの発生が抑制され、かつ外部電極経由の劣化因子の浸入が抑制された積層セラミックコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前述の問題を解決するために種々の検討を行ったところ、素体と外部電極とを同時焼成して積層セラミックコンデンサを得る際に、外部電極用ペーストとして、素体に含まれるセラミック材料と同様の組成を有するセラミック粒子、及び銅を主成分元素とする金属粒子を含むものを用いると共に、焼成条件を、前記金属粒子が球状化する温度にて、比較的長時間保持するものとすることで、曲折したセラミック部が導体部中を貫通する構造の外部電極が形成され、これにより上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、前記課題を解決するための本発明の第1の側面は、誘電体磁器で形成された誘電体層と金属を主成分とする内部電極とが交互に積層された積層体、及び前記積層体の表面を覆う保護部を有する素体、並びに前記素体の表面に配置され、前記内部電極と電気的に接続され、かつ銅を主成分元素とする金属で形成された導体部と、前記誘電体磁器と同様の組成を有するセラミック材料で形成されたセラミック部とを有する外部電極を備え、前記セラミック部には、前記導体部における前記素体に接する面と該面に対向する面との間を貫通して配置されると共に、前記貫通する経路が曲折している曲折セラミック部が含まれる積層セラミックコンデンサである。
【0010】
また、前記課題を解決するための本発明の第2の側面は、誘電体磁器組成物の粉末を準備すること、前記誘電体磁器組成物の粉末をバインダと混合し、シート状に成形して生シートを得ること、前記生シート上に、金属を含む内部電極パターンを形成すること、前記内部パターンが形成された生シートを所定の枚数積層し、積層方向両端部にカバー層用生シートを配置した後、圧着して生積層体を得ること、前記生積層体を個片化し、焼成前素体を得ること、前記焼成前素体からバインダを除去すること、バインダ除去後の前記焼成前素体の表面に、銅を主成分元素とする金属粒子、及び前記誘電体磁器組成物と同様の組成を有するセラミック粒子を含む外部電極用ペーストを付着させること、並びに前記外部電極用ペーストが付着した前記焼成前素体を焼成して焼結体を得ることを含む、前記第1の側面に係る積層セラミックコンデンサの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回路基板への実装時及び使用時のクラックの発生が抑制され、かつ外部電極経由の劣化因子の浸入が抑制された積層セラミックコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る積層セラミックコンデンサの構造を示す模式図(長さ方向断面図)である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る積層セラミックコンデンサの構造を示す模式図(幅方向断面図)である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る積層セラミックコンデンサの外部電極の構造を示す模式図(長さ方向断面図)である。
【
図4】曲折セラミック部の定義を示す説明図である。
【
図5a】曲折セラミック部の曲路率を決定する際の、曲折セラミック部の長さの求め方を示す説明図である。
【
図5b】曲折セラミック部の曲路率を決定する際の、導体部の厚さの求め方を示す説明図である。
【
図6】本発明の第1の側面に係る積層セラミックコンデンサの第1の変形例の構造を示す模式図(長さ方向断面図)である。
【
図7】本発明の第1の側面に係る積層セラミックコンデンサの第2の変形例の構造を示す模式図(長さ方向断面図)である。
【
図8】第1の側面に係る積層セラミックコンデンサの第3の変形例の構造を示す模式図(全体斜視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の構成及び作用効果について、技術的思想を交えて説明する。但し、作用機構については推定を含んでおり、その正否は、本発明を制限するものではない。
【0014】
[積層セラミックコンデンサ]
本発明の第1の側面に係る積層セラミックコンデンサの実施形態を、第1の実施形態として
図1に示す。第1の実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100は、直方体の形状で、互いに直交する3つの軸、すなわち、長さ方向であるL軸、幅方向であるW軸、及び高さ方向であるT軸に対してそれぞれ直交する面を1対ずつ備える。直方体は、数学的に定義される直方体に限られず、全体形状を観察した際に直方体と認識される形状であればよい。このため、稜部や角部が丸みを帯びているもの、稜部が曲線であるもの、及び構成する面が曲率の小さい曲面となっているものも、本開示における直方体に該当する。セラミックコンデンサ100の長さ(L)方向の寸法、幅(W)方向の寸法、高さ(T)方向の寸法は、それぞれ独立して任意の値を取り得るものであり、その大小関係も限定されない。例えば、(L方向の寸法)>(W方向の寸法)≧(T方向の寸法)となっていてもよく、また(W方向の寸法)>(L方向の寸法)となっていてもよく、(T方向の寸法)>(W方向の寸法)となっていてもよい。
【0015】
第1の実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100は、
図1(LT断面)及び
図2(WT断面)にその断面図を模式的に示すように、誘電体磁器で形成された誘電体層21と、金属を主成分とする内部電極22とが、T方向に交互に積層された積層体20、及び積層体20の表面を覆う保護部30を有する素体10を備える。
【0016】
素体10は、積層方向(T方向)に平行な面上に、内部電極22(22a、22b)が1層おきに引き出される引出部11(11a、11b)を有する。すなわち、素体10は、内部電極22aがL方向に引き出される引出部11aと、内部電極22bがL方向に引き出される引出部11bとを有する。なお、
図1に示される積層セラミックコンデンサ100では、素体10のL方向に垂直な、互いに対向する面の略全域に、一対の引出部11a及び11bがそれぞれ形成されているが、本発明の第1の側面に係る積層セラミックコンデンサにおける引出部の配置は、これに限定されない。引出部は、積層方向に平行な面内の一部にのみ形成されていてもよく、1つの面内にのみ形成されていてもよく、また複数対形成されていてもよい。さらに、引出部は、内部電極が直接引き出されるものだけでなく、後述する第2の変形例のように、同じ極性の内部電極同士を電気的に接続する接続導体が引き出されるものであってもよい。
【0017】
素体10の引出部以外の表面には、積層体20の表面を覆って保護部30が配置される。保護部30は、T方向に垂直な面に配置されたカバー部31と、W方向に垂直な面に配置されたサイドマージン部32とを含む。
【0018】
第1の実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100は、素体10の表面に配置され、引出部11a及び11bに引き出された内部電極22a同士及び22b同士をそれぞれ電気的に接続する外部電極40a及び40bを備える。
【0019】
以下、第1の実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100を構成する各部について詳述する。
【0020】
(誘電体層)
誘電体層21は、誘電体磁器で形成される。誘電体磁器の組成は、後述する電極(内部電極22及び外部電極40)との同時焼成により、緻密な誘電体磁器を形成するものであれば特に限定されず、積層セラミックコンデンサに要求される特性に応じて適宜選択すればよい。誘電体磁器の組成例としては、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)を主成分とするもの、チタン酸カルシウム(CaTiO3)を主成分とするもの、チタン酸バリウム(BaTiO3)を主成分とするもの、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)を主成分とするもの、及びペロブスカイト型構造を有するBa1-x-yCaxSryTi1-zZrzO3を主成分とするもの等が挙げられる。これらのうち、比較的低温での焼成で緻密な誘電体磁器が得られる点で、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)を主成分とするものが好ましい。誘電体磁器は、前記主成分と共に添加元素を含むものであってもよい。添加元素としては、Mo、Nb、Ta、W、Mg、Mn、V、Cr、及び希土類元素(Y、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYb)、並びにCo、Ni、Li、B、Na、K、及びSiから選択される少なくとも1種が例示される。添加元素は、元素単体で含まれていてもよく、酸化物、窒化物、炭化物をはじめとする化合物の形態で含まれていてもよい。また、添加元素は、前記主成分に固溶した状態で存在してもよく、前記主成分を構成する元素又は他の添加元素と、異相を形成していてもよい。
【0021】
(内部電極)
内部電極22(22a、22b)は、金属を主成分とする。金属の種類は特に限定されないが、誘電体層21との同時焼成が可能で、かつ安価であることから、銅(Cu)又はニッケル(Ni)を主成分元素とするものが好ましい。中でも、積層セラミックコンデンサ100が、等価直列抵抗(ESR)の低いものとなる点で、Cuを主成分元素とするものがより好ましい。Cuを主成分元素とする金属としては、Cu及びCu合金が例示される。ここで、本開示における「主成分元素」とは、原子百分率(原子%)で表した含有量が最も多い元素を意味する。
【0022】
内部電極22は、金属の他に、誘電体層21を構成する誘電体磁器と同様の組成を有する誘電体粒子や、ガラス成分を含有してもよい。
【0023】
(保護部)
保護部30は、積層体20のT方向に垂直な面に配置されたカバー部31と、W方向に垂直な面に配置されたサイドマージン部32とを含み、誘電体層21及び内部電極22を保護する機能を有する。
【0024】
保護部30は、電気的絶縁性が高く、水分等の劣化因子の透過性が低いものであれば、その材質は限定されない。積層セラミックコンデンサ100を製造する際に焼成中の収縮を均一にすることや、積層セラミックコンデンサ100内における内部応力を緩和すること等の観点からは、保護部30の主成分を、誘電体層21を形成する誘電体磁器と同じものとすることが好ましい。
【0025】
(外部電極)
外部電極40(40a、40b)は、素体10の表面に配置され、引出部11(11a、11b)に引き出された内部電極22(22a、22b)と電気的に接続される。なお、第1の側面に係る積層セラミックコンデンサでは、上述の通り、引出部の配置が
図1に示されるものに限定されないことから、外部電極の配置についても、これに限定されないことは言うまでもない。
【0026】
外部電極40(40a、40b)は、銅(Cu)を主成分元素とする金属で形成された導体部41を有する。導体部41を形成する金属が、導電性の高いCuを主成分元素とするものであることで、積層セラミックコンデンサ100が、等価直列抵抗(ESR)の低いものとなる。Cuを主成分元素とする金属としては、Cu及びCu合金が例示される。
【0027】
外部電極40(40a、40b)は、誘電体層21を形成する誘電体磁器と同様の組成を有するセラミック材料で形成されたセラミック部42を有する。セラミック部42は、含有する元素の種類が、誘電体層21を形成する誘電体磁器の主成分と一致するものであればよい。後述する曲折セラミック部421と素体10との接合強度を高めて、素体10に加わる熱応力の抑制作用を向上させる点からは、セラミック部42は、含有する元素の種類が、誘電体層21を形成する誘電体磁器組成物に含まれる全元素と一致するものであることが好ましく、含有する各元素の割合まで前記誘電体磁器組成物と一致するものであることが、より好ましい。
【0028】
セラミック部42には、
図3に示すように、導体部41における素体10に接する面と該面に対向する面との間を貫通して配置されると共に、導体部41中を貫通する経路が曲折している曲折セラミック部421が含まれる。導体部41における素体10に接する面と該面に対向する面との間を貫通して配置されるセラミック部42は、その一端が、これと同様の組成を有する素体10の表面に接合されて固定される。セラミック部42は、導体部41に比べて熱膨張係数が小さいため、素体10に対して一端が固定され、かつ導体部41を貫通して配置されることで、回路基板への半田付け時に加わる熱や、回路基板が置かれる環境の温度変化等に起因する導体部41の変形を抑制するアンカーとして機能する。このため、セラミック部42が導体部41における素体10に接する面と該面に対向する面との間を貫通して配置されたものを含むことで、外部電極40(40a、40b)から素体10に加わる熱応力が抑制され、素体10へのクラックの発生が抑制される。
【0029】
また、セラミック部42が導体部41を貫通して配置されることで、これが導体部41中に分散配置される場合に比べて、セラミック部42の体積割合が等しいときの素体10との接触面積、及び導体部41の表面に露出する面積が小さくなる。このため、導体部41と内部電極22との接触面積を増大させて、導電性を保持することができる。加えて、
図1及び
図2に示すように、導体部41及びセラミック部42を下地層43として、積層構造の外部電極を形成する場合には、表面に形成される金属層と導体部41との接触面積も増大することとなるため、層間の付着強度を高めることもできる。
【0030】
さらに、導体部41における素体10に接する面と該面に対向する面との間を貫通して配置されるセラミック部42が、その貫通する経路が曲折している曲折セラミック部421であることにより、略直線状の経路を有する場合に比べて、導体部41とセラミック部42との間に隙間が生じにくくなると共に、隙間が生じた場合でも、該隙間が曲折したものとなるため、水分等の劣化因子の素体10への到達が抑制される。ここで、本開示における「曲折セラミック部」とは、
図4に示すように、導体部41を貫通するセラミック部42を、その全体が視野中に入る倍率にて観察した光学顕微鏡像において、セラミック部42の一端から他端までを、その内部を通る線分のみで繋ぐ際に、3本以上の線分を要するものをいう。
【0031】
曲折セラミック部421は、導体部41を貫通する経路の曲路率が、1.1以上7.0以下であることが好ましい。曲路率が1.1以上であることで、導体部41との間の隙間の発生が顕著に抑制されるとともに、隙間が発生した場合の劣化因子の素体10への到達が顕著に抑制される。前記各作用をより高める点からは、前記曲路率は、1.3以上がより好ましく、1.5以上がさらに好ましく、1.8以上が特に好ましい。他方、曲路率が7.0以下であることで、外部電極40(40a、40b)の導電性を十分なものとして、ESRを顕著に低減することができる。前記作用をより高める点からは、前記曲路率は、6.8以下がより好ましく、6.6以下がさらに好ましく、6.4以下が特に好ましい。以上から、前記曲路率は、1.3以上6.8以下がより好ましく、1.5以上6.6以下がさらに好ましく、1.8以上6.4以下が特に好ましい。
【0032】
ここで、本開示における曲折セラミック部421の曲路率は、以下の手順で決定する。まず、積層セラミックコンデンサ100を、幅方向(W方向)中央部付近を通る積層方向(T方向)に平行な面にて切断し、切断面が露出するように樹脂中に埋設した後、切断面を鏡面研磨して研磨面を形成する。次いで、研磨面の外部電極40部分を、光学顕微鏡を用いて、曲折セラミック部421全体が視野中に入る倍率にて観察し、光学顕微鏡像を取得する。次いで、
図5aに示すように、得られた光学顕微鏡像中に観察される、曲折セラミック部421の輪郭、すなわち導体部41と曲折セラミック部421との境界部、に沿って、当該像中で1μmに相当する長さの直径を有する複数の円を、該輪郭上で互いに接するように、曲折セラミック部421の一端から他端まで配置する。このとき、最初に配置する円は、その内部に含まれる前記輪郭の長さ、すなわち当該円によって切り取られる前記輪郭の長さ、が最大となる位置に置く。次いで、配置された円の総数を計数し、「(配置された円の総数)×1μm」を、曲折セラミック部421の長さf(μm)とする。次いで、
図5bに示すように、得られた光学顕微鏡像中に、導体部41に内接し、かつ曲折セラミック部421の少なくとも一部を内包する円を、互いに異なる位置に3つ作図し、各円の直径の平均値を算出する。次いで、得られた平均値を光学顕微鏡像の観察倍率で割り、得られた値を導体部41の厚さs(μm)とする。最後に、得られたfの値をsの値で割って算出したf/sを、曲折セラミック部421の曲路率とする。
【0033】
外部電極40(40a、40b)は、導電部41及びセラミック部42の表面に、導電性を有する複数の材質が積層されたものであってもよい。
図1に示す第1の実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100では、外部電極40全体が、導電部41及びセラミック部42を含む下地層43の表面に、Ni層44、及びSn層45を、この順で形成した積層構造となっている。
【0034】
<変形例(1)>
第1の側面に係る積層セラミックコンデンサの第1の変形例としては、
図6に示すような、外部電極40(40a、40b)が、素体10の表面に、断面視L字型に配置された積層セラミックコンデンサ200が挙げられる。このような構造の積層セラミックコンデンサ200は、上部のカバー層への外部電極40の回り込みがないことから、低背化が可能である利点を有する。
【0035】
<変形例(2)>
第1の側面に係る積層セラミックコンデンサの第2の変形例としては、
図7に示すような、素体10の内部に形成された、同じ極性の内部電極22(22a、22b)同士を電気的に接続する接続導体23(23a、23b)が、一方のカバー部31に引き出されて引出部11(11a、11b)とされた積層セラミックコンデンサ300が挙げられる。このような構造の積層セラミックコンデンサ300は、L方向及びW方向に外部電極40(40a、40b)が存在しないことから、小型化が可能である利点を有する。
【0036】
<変形例(3)>
第1の側面に係る積層セラミックコンデンサの第3の変形例としては、
図8に示すような、外部電極40が4箇所に配置された積層セラミックコンデンサ400が挙げられる。このような構造の積層セラミックコンデンサにおいても、外部からの応力の集中に起因するカバー層へのクラックの発生を抑制できると共に、端子電極同士の短絡も抑制することができるという本発明の効果が得られる。
【0037】
[積層セラミックコンデンサの製造方法]
<第2の実施形態>
本発明の第2の側面に係る積層セラミックコンデンサの製造方法の実施形態を、第2の実施形態として以下に説明する。
【0038】
第2の実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法は、上述した第1の実施形態に係る積層セラミックコンデンサを製造するもので、誘電体磁器組成物の粉末を準備すること、前記誘電体磁器組成物の粉末をバインダと混合し、シート状に成形して生シートを得ること、前記生シート上に、金属を含む内部電極パターンを形成すること、前記内部パターンが形成された生シートを所定の枚数積層し、積層方向両端部にカバー層用生シートを配置した後、圧着して生積層体を得ること、前記生積層体を個片化し、焼成前素体を得ること、前記焼成前素体からバインダを除去すること、バインダ除去後の前記焼成前素体の表面に、銅を主成分元素とする金属粒子、及び前記誘電体磁器組成物と同様の組成を有するセラミック粒子を含む外部電極用ペーストを付着させること、並びに前記外部電極用ペーストが付着した前記焼成前素体を焼成して焼結体を得ることを含む。以下、各操作について詳述する。
【0039】
(誘電体磁器組成物粉末の準備)
誘電体磁器組成物の粉末は、市販されているものを適宜利用することができる。誘電体磁器組成物を自製する場合には、その構成元素を含む各種原料粉末を所定の比率で混合し、予備焼成(仮焼成)すればよい。各種原料粉末を所定の比率で混合する際に、上述した添加元素や焼結助剤等の各種添加物をさらに添加してもよく、仮焼成後の粉末に、これらの各種添加物をさらに添加してもよい。
【0040】
(生シートの作製)
生シートは、前述した誘電体磁器組成物の粉末を、バインダ及び分散媒と混合してスラリーを調製し、該スラリーをシート状に成形することで得られる。
【0041】
バインダとしては、生シートの形状を保持できると共に、焼成に先立つバインダ除去処理により、炭素等を残存させることなく揮発するものを用いる。使用できるバインダの例としては、ポリビニルアルコール系、ポリビニルブチラール系、セルロース系、ウレタン系及び酢酸ビニル系のものが挙げられる。バインダの使用量も特に限定されないが、後工程で除去されるものであるため、所期の成形性・保形性が得られる範囲内で極力少なくすることが、原料コストを低減する点で好ましい。
【0042】
分散媒としては、仮焼粉末及びバインダの凝集を生じることがなく、後述する生シート成形後に揮発等により容易に除去できるものを用いる。使用できる分散媒の例としては、水及びアルコール系溶媒等が挙げられる。
【0043】
スラリーには、分散剤、可塑剤及び増粘剤等のスラリーの性状を調節する成分を添加してもよい。
【0044】
上記混合粉末を、バインダ及び分散媒と混合する方法は、不純物の混入を防ぎつつ各成分が均一に混合されるものであれば特に限定されない。一例として、ボールミル混合が挙げられる。
【0045】
調製されたスラリーをシート状に成形して生シートを得る方法としては、ドクターブレード法やダイコート法等の慣用されている方法を採用できる。
【0046】
(内部電極パターンの形成)
前述した生シート上への金属を含む内部電極パターンの形成は、内部電極用ペーストを、所定のパターンで生シート上に印刷ないし塗布する方法や、金属膜を、蒸着ないしスパッタリングにより、所定のパターンで生シート上に形成する方法により行うことができる。
【0047】
内部電極用ペーストを用いて内部電極パターンを形成する場合、使用する内部電極用ペーストは、内部電極を形成する金属の粒子とビヒクルとを、三本ロールミルにて混合することで得られる。内部電極用ペーストは、前述した各成分の他に、ガラスフリットや誘電体磁器組成物粉末を含むものであってもよい。
【0048】
使用するビヒクルに含まれるバインダ及び溶剤の種類及び量も限定されず、内部電極用ペーストの粘度、取扱いのしやすさ及び生シートとの相性等を考慮して適宜選択すればよい。
【0049】
生シート上への内部電極用ペーストの印刷は、例えば、所定の内部電極パターンが形成されたスクリーンマスクを用いて実施できる。印刷の際には、積層セラミックコンデンサとした際にサイドマージン部となるスペースを空けて印刷してもよい。
【0050】
(生積層体の作製)
生積層体は、内部電極パターンを形成した生シートを所定の枚数積層し、該生シート同士を圧着して得られる。積層及び圧着は、慣用されている方法で行えばよく、積層した生シート同士を加熱しながら積層方向にプレスし、バインダの作用で熱圧着する方法等を採用できる。
【0051】
積層及び圧着に際しては、積層方向の両端部に、積層セラミックコンデンサとした際にカバー部となる生シートを追加する。この場合、追加する生シートは、内部電極パターンを印刷した生シートと同一の組成であっても、これとは異なる組成であってもよい。焼成時の収縮率を揃える観点からは、追加する生シートの組成は、前述の内部電極前駆体を配置した生シートと同一又は類似の組成であることが好ましい。
【0052】
(焼成前素体の作製)
焼成前素体は、生積層体を、個々の素体の形状に分割する個片化によって得られる。個片化には、ダイシングソーやレーザー切断機等の慣用されている手段を採用できる。生積層体を個片化して内部電極前駆体が露出する面を形成した後、当該面をサイドマージン部形成用の材料で被覆して焼成前素体としてもよい。
【0053】
(バインダの除去)
得られた焼成前素体は、加熱によりバインダが揮発除去される。加熱条件は、バインダの揮発温度及び含有量を考慮して適宜設定すればよい。一例として、窒素(N2)雰囲気中、200℃から500℃の温度で5時間から20時間保持することが挙げられる。
【0054】
(外部電極用ペーストの付着)
バインダが除去された焼成前素体は、その表面に、引出部を覆うように、銅を主成分元素とする金属粒子、及び焼成前素体に含まれる誘電体磁器組成物と同様の組成を有するセラミック粒子を含む外部電極用ペーストが付着される。
【0055】
使用する外部電極用ペーストは、銅を主成分元素とする金属粒子、及び焼成前素体に含まれる誘電体磁器組成物と同様の組成を有するセラミック粒子を、ビヒクルと共に三本ロールミルにて混合することで得られる。外部電極用ペーストは、前述した各成分の他に、ガラスフリットを含むものであってもよい。外部電極用ペースト中の各成分の含有量は特に限定されないが、外部電極中に十分な量の曲折セラミック部を形成する点からは、固形分に対するセラミック粒子の含有割合を5質量%以上とすることが好ましく、10質量%以上とすることがより好ましい。他方、外部電極を導電性に優れるものとする点からは、固形分に対するセラミック粒子の含有割合を30質量%以下とすることが好ましく、25質量%以下とすることがより好ましい。
【0056】
使用するセラミック粒子は、含有する元素の種類が、生シートの作製に用いた誘電体磁器組成物の主成分と一致するものであればよい。焼成時に発生する熱応力を低減する点や、得られた積層セラミックコンデンサにおける曲折セラミック部と素体との接合強度を高めて、素体に加わる熱応力の抑制作用を向上させる点からは、使用するセラミック粒子は、含有する元素の種類が、生シートの作製に用いた誘電体磁器組成物に含まれる全元素と一致するものであることが好ましく、含有する各元素の割合まで前記誘電体磁器組成物と一致するものであることが、より好ましい。
【0057】
使用するビヒクルに含まれるバインダ及び溶剤の種類及び量は限定されず、外部電極用ペーストの粘度、取扱いのしやすさ等を考慮して適宜選択すればよい。
【0058】
外部電極用ペーストの付着方法としては、例えば、焼成前素体の一部を、外部電極用ペースト浴に浸す(ディップする)ことや、焼成前素体の表面に外部電極用ペーストを塗布すること等が挙げられる。
【0059】
(焼成前素体の焼成)
焼成前素体の焼成は、外部電極用ペーストを付着させた焼成前素体を、所定の温度に加熱することで行う。焼成の条件は、外部電極ペーストに含まれる金属粒子及びセラミック粒子の焼結性を考慮して設定する。これは、外部電極中の曲折セラミック部が、焼成中に、外部電極用ペーストに含まれる金属粒子の球状化と、これに伴うセラミック粒子の再配置が生じた後、該セラミック粒子が焼結することで形成されると想定されるためである。焼成条件の設定にあたっては、誘電体磁器組成物の焼結性、及び内部電極用ペーストに含まれる金属の、耐熱性及び耐酸化性等も考慮することが好ましい。焼成条件の例としては、窒素(N2)と水素(H2)と水蒸気(H2O)とを混合した還元性雰囲気中で、Cuの融点である1084℃よりも低温で、1時間から20時間保持することが挙げられる。焼成後に、窒素(N2)ガス雰囲気中又は低酸素雰囲気中で、500℃から900℃に保持する再酸化処理を行ってもよい。焼成により、誘電体磁器組成物粉末を構成する粒子が焼結して誘電体層及び保護部となり、内部電極パターンが焼結して内部電極となり、外部電極用ペーストが焼結して外部電極となる。また、このとき、外部電極中に曲折セラミック部が形成される。
【0060】
焼成により得られた焼結体は、そのまま積層セラミックコンデンサとされてもよく、外部電極の表面に、めっきや蒸着等の手段により、導電性の層を形成した後、積層セラミックコンデンサとされてもよい。このようにして得られた積層セラミックコンデンサは、
図1及び
図2、
図6又は
図8に示される構造を有するものとなる。
【0061】
<第2の実施形態の変形例(1)>
第2の実施形態では、素体内部に接続導体パターンを形成するために、内部電極パターンの形成に先立って、生シートに貫通孔を形成してもよい。生シートへの貫通孔の形成方法としては、パンチングやレーザー加工等が採用できる。貫通孔が形成された生シート上に、内部電極パターンを形成することで、又は内部電極パターンとは別に貫通孔に導体を充填することで、厚み方向に導体が貫通する生シートが得られる。
【0062】
厚み方向に導体が貫通する生シートを積層して生積層体とした場合、貫通孔中の導体同士が積層方向につながり、積層方向に隣接する生シート上に形成された内部電極パターンと接続されることで、接続導体の前駆体を形成する。その際、カバー層用生シートの一方にも導体を充填した貫通孔を形成しておくことで、接続導体の前駆体の一部がカバー層の表面に露出することとなる。
【0063】
<第2の実施形態の変形例(2)>
第2の実施形態では、生シートを積層・圧着して得た生積層体の厚さ方向(積層方向)に、壁面に対して内部電極パターンが引き出される穴を形成し、これに導体を充填して接続導体の前駆体を形成してもよい。
【0064】
第2の実施形態の各変形例により得られた積層セラミックコンデンサは、
図7に示される構造を有するものとなる。
【実施例0065】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は該実施例に限定されるものではない。
【0066】
[実施例]
誘電体磁器組成物の粉末として、仮焼成済みのジルコン酸カルシウム(CaZrO3)粉末(平均粒径0.5μm)を準備した。この粉末に対し、ポリビニルブチラール系のバインダ及びアルコール系の溶媒を添加して、湿式ボールミル混合した。得られた混合スラリーをドクターブレードにて成形し、生シートを得た。内部電極用ペーストとして、生シートに用いたものと同種のCaZrO3粉末を固形分中に10質量%含むCuペーストを調製した。生シート上に、Cuペーストをスクリーン印刷して内部電極パターンを形成した後、該生シートを16層積層し、さらにその上下面に、カバー層用生シートを各10枚重ねた後、加熱しながら100MPa程度の圧力で加圧することで圧着して生積層体を得た。この生積層体を個片化して、積層方向に平行な、互いに対向する面に、内部電極パターンが1層おきに引き出された焼成前素体を得た後、該焼成前素体を、窒素雰囲気中で300℃まで加熱して脱バインダ処理を行った。外部電極用ペーストとして、生シートに用いたものと同種のCaZrO3粉末を固形分中に15質量%含むCuペーストを調製した。脱バインダ処理後の焼成前素体の、内部電極パターンが引き出された面を、それぞれ外部電極用ペースト浴にディップして、該各面の全面及びこれらに隣接する面の一部に外部電極用ペーストを付着させた。外部電極用ペーストが付着した焼成前素体を、窒素中に水素を含む還元ガスに水蒸気を導入した、いわゆる還元-水蒸気雰囲気中にて、1000℃で2時間30分保持して焼成し、室温付近まで降温して、焼結体を得た。得られた焼結体の外部電極の表面に、めっきによりNi層及びSn層を、この順で形成し、実施例1に係る積層セラミックコンデンサを得た。得られた積層セラミックコンデンサは、長さ(L方向寸法)0.4mm、幅(W方向寸法)0.2mm、高さ(T方向寸法)0.2mmであった。
【0067】
[比較例]
焼成時の温度を900℃とした以外は実施例と同様の方法で、比較例に係る積層セラミックコンデンサを作製した。
【0068】
[積層セラミックコンデンサの評価]
(外部電極中の曲折セラミック部の有無の確認)
得られた各積層セラミックコンデンサを、幅方向(W方向)中央部付近を通る積層方向(T方向)に平行な面にて切断し、切断面が露出するように樹脂中に埋設した後、切断面を鏡面研磨して研磨面を形成した。研磨面の外部電極部分を、光学顕微鏡を用いて観察し、曲折セラミック部の有無を確認した。その結果、実施例に係る積層セラミックコンデンサでは、
図3に示すように、導体部中を貫通するセラミック部の存在が確認され、そのいずれもが、曲折セラミック部であった。他方、比較例に係る積層セラミックコンデンサでは、導体部中を貫通するセラミック部の存在は確認されたものの、そのいずれもが、柱状となっており、曲折セラミック部に該当するものは存在しなかった。
【0069】
(曲折セラミック部の曲路率の測定)
実施例に係る積層セラミックコンデンサについて、上述した方法で曲折セラミック部の曲路率を測定したところ、その分布の範囲は1.39から4.44であった。
【0070】
以上の結果から、導体部中を貫通するセラミック部が曲折セラミック部である実施例に係る積層セラミックコンデンサは、該セラミック部が柱状である比較例に係る積層セラミックコンデンサに比べて、導体部と曲折セラミック部との間に隙間が生じた場合でも、水分等の劣化因子の浸入が抑制されるものであることが、幾何学的に理解できる。
【0071】
本明細書では、以下の技術も開示される。
【0072】
(付記1)
誘電体磁器で形成された誘電体層と金属を主成分とする内部電極とが交互に積層された積層体、及び
前記積層体の表面を覆う保護部
を有する素体、並びに
前記素体の表面に配置され、
前記内部電極と電気的に接続され、かつ
銅を主成分元素とする金属で形成された導体部と、前記誘電体磁器と同様の組成を有するセラミック材料で形成されたセラミック部とを有する
外部電極
を備え、
前記セラミック部には、前記導体部における前記素体に接する面と該面に対向する面との間を貫通して配置されると共に、前記貫通する経路が曲折している曲折セラミック部が含まれる
積層セラミックコンデンサ。
【0073】
(付記2)
前記曲折セラミック部の、前記導体部を貫通する経路の曲路率が、1.1以上7.0以下である、(付記1)に記載の積層セラミックコンデンサ。
【0074】
(付記3)
前記内部電極中の金属が、銅を主成分元素とするものである、(付記1)又は(付記2)に記載の積層セラミックコンデンサ。
【0075】
(付記4)
誘電体磁器組成物の粉末を準備すること、
前記誘電体磁器組成物の粉末をバインダと混合し、シート状に成形して生シートを得ること、
前記生シート上に、金属を含む内部電極パターンを形成すること、
前記内部パターンが形成された生シートを所定の枚数積層し、積層方向両端部にカバー層用生シートを配置した後、圧着して生積層体を得ること、
前記生積層体を個片化し、焼成前素体を得ること、
前記焼成前素体からバインダを除去すること、
バインダ除去後の前記焼成前素体の表面に、銅を主成分元素とする金属粒子、及び前記誘電体磁器組成物と同様の組成を有するセラミック粒子を含む外部電極用ペーストを付着させること、並びに
前記外部電極用ペーストが付着した前記焼成前素体を焼成して焼結体を得ること
を含む、(付記1)から(付記3)のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
本発明によれば、回路基板への実装時及び使用時のクラックの発生が抑制され、かつ外部電極経由の劣化因子の浸入が抑制された積層セラミックコンデンサを提供することができる。このような積層セラミックコンデンサは、信頼性及び耐久性が高く、長寿命である点で有用である。