(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140021
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】車内検知装置
(51)【国際特許分類】
G08B 21/02 20060101AFI20241003BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20241003BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20241003BHJP
E05B 47/00 20060101ALI20241003BHJP
E05B 77/54 20140101ALI20241003BHJP
B60R 99/00 20090101ALI20241003BHJP
【FI】
G08B21/02
G08B21/00 U
G08B25/04 K
E05B47/00 Z
E05B77/54
B60R99/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051006
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桜木 友喜
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴之
(72)【発明者】
【氏名】村上 雄一
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 由香利
(72)【発明者】
【氏名】関家 清隆
(72)【発明者】
【氏名】石井 基樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 真巳
【テーマコード(参考)】
2E250
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250BB15
2E250BB52
2E250CC28
2E250LL01
2E250UU07
5C086AA22
5C086BA22
5C086CA06
5C086CA25
5C086CA28
5C086CB36
5C086DA15
5C086DA33
5C086FA06
5C087AA37
5C087DD14
5C087EE18
5C087FF04
5C087GG02
5C087GG08
5C087GG59
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG83
(57)【要約】
【課題】車両の室内に残された同乗者の健康と安全を守る車内検知装置を提供すること。
【解決手段】本実施形態に係る車内検知装置10は、車両の室内に向けて電波を発信し、この電波の反射波の解析結果に基づいて、室内に同乗者が存在するか否か、同乗者の身体状態、及び同乗者の室内における着座位置を検知可能な電波センサ11と、車両の運転者が運転席を離れる際に、電波センサ11により車両の室内に同乗者が存在することが検知された場合、運転者の離席後に所定時間ごとに電波センサ11を動作させるセンサ制御部21と、電波センサ11により検知された、同乗者の身体状態の変化、又は同乗者の室内における着座位置の変化に応じて、車両の各部の動作を制御する車両制御部30と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の室内に向けて電波を発信し、この電波の反射波の解析結果に基づいて、前記室内に同乗者が存在するか否か、前記同乗者の身体状態、及び前記同乗者の前記室内における着座位置を検知可能な電波センサと、
前記車両の運転者が運転席を離れる際に、前記電波センサにより前記車両の室内に前記同乗者が存在することが検知された場合、前記運転者の離席後に所定時間ごとに前記電波センサを動作させるセンサ制御部と、
前記電波センサにより検知された、前記同乗者の身体状態の変化、又は前記同乗者の前記室内における着座位置の変化に応じて、前記車両の各部の動作を制御する車両制御部と、を備える車内検知装置。
【請求項2】
前記電波センサは、前記同乗者の身体状態として、前記同乗者の呼吸数、又は心拍数を検知し、前記所定時間ごとに検知された前記呼吸数、又は前記心拍数が、前記運転者の離席時に検知された前記呼吸数、又は前記心拍数と比べて、所定の第1基準値以上変化した場合、
前記車両制御部は、前記車両に設けられた空調機の動作を制御して前記室内の温度を前記運転者の離席時と同じ状態に調整する、請求項1に記載の車内検知装置。
【請求項3】
車両の外部と通信する通信部を有し、
前記所定時間ごとに検知された前記呼吸数、又は前記心拍数が、前記運転者の離席時に検知された前記呼吸数、又は前記心拍数と比べて、前記第1基準値よりも大きい第2基準値以上変化した場合、
前記車両制御部は、前記通信部の動作を制御して警察署又は消防署へ緊急通報を行う、請求項2に記載の車内検知装置。
【請求項4】
前記車両の周囲を撮影するカメラと、前記カメラが撮影した画像に基づき、前記車両の周辺状況を調査する周辺状況調査部と、前記車両の外部に向けて報知する報知部と、を備え、
前記同乗者の着座位置が、前記運転者の離席時における前記着座位置と所定距離以上変化し、かつ前記周辺状況調査部が、前記周辺状況として、前記車両に対する人の接近を確認した場合、
前記車両制御部は、前記報知部を通じて前記車両の外部に対して、前記同乗者の存在を報知するとともに、前記車両のドアを制御して該ドアのロックを解除する、請求項2に記載の車内検知装置。
【請求項5】
前記車両の周囲を撮影するカメラと、前記カメラが撮影した画像に基づき、前記車両の周辺状況を判定する周辺状況調査部と、前記車両の外部に向けて報知する報知部と、前記車両の外気温度を取得する温度取得部と、を備え、
前記同乗者の着座位置が、前記運転者の離席時における前記着座位置と所定距離以上変化し、前記周辺状況調査部が、前記周辺状況として、前記車両の周囲に建物の存在を確認し、かつ前記外気温度が所定温度範囲内にある場合、
前記車両制御部は、前記報知部を通じて、前記同乗者の前記建物への移動を促す報知を実行するとともに、前記車両のドアを制御して該ドアのロックを解除する、請求項2に記載の車内検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車内検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の室内に同乗者(運転者以外の乗員)が放置される事態、いわゆる車両内への置き去りが問題となっている。この種の置き去りは、車両内に同乗者が残っていることに気づかずに運転者が降車してしまったことや、車両内に同乗者が残っていることを運転者が認識していたにも関わらず、運転者が降車してから再乗車するまでになんらかの要因で時間がかかってしまったことに起因するケースが多く、置き去りにされた同乗者の健康への影響も懸念される。このため、従来、車両内への同乗者の置き去りを検知すると、降車した運転者に対して通知する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、降車した運転者に対して通知するものの、車両の室内の同乗者の健康や安全に気遣うものではなく、この点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、車両の室内に残された同乗者の健康と安全を守る車内検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る車内検知装置は、車両の室内に向けて電波を発信し、この電波の反射波の解析結果に基づいて、室内に同乗者が存在するか否か、同乗者の身体状態、及び同乗者の室内における着座位置を検知可能な電波センサと、車両の運転者が運転席を離れる際に、電波センサにより車両の室内に同乗者が存在することが検知された場合、運転者の離席後に所定時間ごとに電波センサを動作させるセンサ制御部と、電波センサにより検知された、同乗者の身体状態の変化、又は同乗者の室内における着座位置の変化に応じて、車両の各部の動作を制御する車両制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車内検知装置によれば、車両の室内に残された同乗者の健康と安全を守ることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第一実施形態に係る車内検知装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第一実施形態に係る車内検知装置の動作の手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、第二実施形態に係る車内検知装置の構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第二実施形態に係る車内検知装置の動作の手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第二実施形態に係る車内検知装置の別の動作の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態に係る車内検知装置の構成例を示すブロック図である。車内検知装置10は、車両に搭載されて、運転者が運転席を離れた(以下、単に離席という)後に車両の室内に同乗者の存在(置き去り)を検知すると、この同乗者の身体状態の変化を監視し、身体状態の変化に応じて、車両の各部の動作を制御することで、同乗者の健康的な体調維持と安全な降車を実現する。本実施形態では、車内検知装置10は、主に車両の室内に同乗者がいることを、運転者が認識した上で、運転者のみが離席して一時的に車両を離れる場合に適用される例を説明するが、運転者が車両内に同乗者がいることに気づかず離席した場合に適用されてもよい。また、離席とは、運転席を離れることをいい、車を降車することを含む。同乗者は、例えば幼児であるが、乳児や高齢者、要介護者などであってもよい。また、車両は、例えば普通自動車であるが、公共機関の路線バスや送迎バスを含む。
【0011】
車内検知装置10は、
図1に示すように、電波センサ11と、室内温度センサ12と、通信部13と、制御部(車内検知制御装置)20とを備える。
【0012】
電波センサ11は、車両の室内に電波を発信し、この室内で反射された反射波を受信する。この電波には、例えばセンチ波が用いられる。センチ波は、例えば波長が1cm以上10cm以下、周波数が3GHz以上30GHz以下の電波である。センチ波は、金属以外の様々な物質(ガラス、プラスチック、布類など)に対する透過性に優れ、障害物の影響を受けにくい特長がある。このため、センチ波を用いることにより、室内において、同乗者が座席の裏側や毛布などに隠れていたとしても検知することができる。また、電波センサの電波として、上記したセンチ波の他に、例えば波長が1mm以上10mm以下、周波数が30GHz以上300GHz以下の電波である、ミリ波を用いることもできる。
【0013】
電波センサ11は、車両の室内に同乗者が存在するか否か、同乗者の着座位置、及び同乗者の身体状況を検知することができる。電波センサ11は、例えば呼吸又は心拍を検知することにより、車両の室内に同乗者が存在するか否かを検知することができる。具体的には、電波センサ11は、受信した反射波に呼吸又は心拍に起因する特有の振動が含まれていれば、車両の室内に同乗者が存在すると検知する。また、電波センサ11は、上記した特有の振動を含む反射波を受信した方向に基づき、同乗者の方向、すなわち着座位置を検知することができる。また、電波センサ11は、反射波に含まれる特有の振動の検知回数を計測し、所定時間(例えば1秒)当たりの検知回数に基づき、単位時間(1分)当たりの同乗者の呼吸数又は心拍数(同乗者の身体状況)として検知することができる。
【0014】
電波センサ11は、車両の室内における前側、例えばダッシュボードなどに設けられ、座席に向けて後方に電波を発信する。電波センサ11は、制御部20のセンサ制御部21によって動作が制御され、所定のタイミングで電波を発信する。電波センサ11は、反射波を受信すると、この反射波を信号に変換して制御部20の判定部23に出力する。
【0015】
室内温度センサ12は、車両の室内の温度を計測する。室内温度センサ12は、車両に設けられたものを使用してもよい。室内温度センサ12は、計測した温度データを制御部20の温度取得部22に出力する。
【0016】
通信部13は、インターネット又は携帯電話回線等の方法で、車両外部の機器との通信を実行する。通信部13は、例えば、運転者が設定した車両に戻る予定時間(予定時刻)に戻ってこない場合に、運転者の携帯電話に対して通知をする。また、通信部13は、例えば、車両の室内にいる同乗者の身体状態が悪化する方向に大きく変化した場合、警察署又は消防署に対して緊急通報を行う。
【0017】
制御部20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などで構成された演算処理装置である。制御部20は、センサ制御部21と、温度取得部22と、判定部23と、戻り予定時間管理部24と、車両制御部30と、を備え、不図示のバスを介してそれぞれ接続されている。制御部20は、不図示の記憶部に記憶されているプログラムを読み出して実行することで、これらの構成を実現して、これらの処理を実行する。制御部20は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、複数のCPUで、これらの処理を並列に実行してもよい。
【0018】
センサ制御部21は、上記した電波センサ11の動作を制御する。具体的には、センサ制御部21は、運転者が離席する際に、室内に向けて電波を発信するとともに反射波を受信して室内の検知を行う。そして、室内に同乗者の存在が検知された場合、センサ制御部21は、所定時間(例えば5分)間隔ごとに、室内に向けて電波の発信及び受信を実行して室内の検知を行う。
【0019】
温度取得部22は、上記した室内温度センサ12が計測した車両の室内の温度データを取得する。本実施形態では、温度取得部22は、運転者が離席する際の室内の温度データを取得するとともに、電波センサ11が室内に同乗者の存在を検知した場合に、電波センサ11と同じ時間間隔(例えば5分)ごとに室内の温度データを取得する。なお、この温度データを取得するタイミングは適宜変更してもよい。
【0020】
判定部23は、電波センサ11の検知した同乗者の身体状態の変化、及び同乗者の着座位置の変化の有無を判定し、この変化の程度を車両制御部30に出力する。具体的には、判定部23は、運転者が離席する際に、室内に同乗者の存在が検知された場合、運転者の離席時に検知された同乗者の呼吸数又は心拍数を記憶する。そして、室内を電波センサ11で検知する度に、判定部23は、電波センサ11で新たに検知された同乗者の呼吸数又は心拍数が、運転者の離席時に検知された同乗者の呼吸数又は心拍数と比べて、所定の基準値以上変化しているか否かを判定する。この基準値は、変化の程度を示すものであり、新たに検知された値と運転者の離席時に検知された値との差分値であっても良いし、運転者の離席時に検知された値に対する上記差分値の割合であってもよい。
【0021】
本実施形態では、判定部23は、2段階の基準値を有し、第1基準値は、この第1基準値以上の変化がみられる場合に、同乗者の不快感を覚える可能性を示す値に設定される。また、第2基準値は、第1基準値よりも大きい値に設定され、この第2基準値以上の変化がみられる場合に、同乗者の健康を害する可能性を示す値に設定される。判定部23は、上記した呼吸数又は心拍数が、運転者の離席時の呼吸数又は心拍数と比べて、所定の基準値以上変化した場合、その事実を車両制御部30に出力する。
【0022】
判定部23は、運転者が離席する際に、室内に同乗者の存在が検知された場合、運転者の離席時に電波センサ11で検知された同乗者の着座位置を記憶する。そして、室内が検知される度に、判定部23は、新たに検知された同乗者の着座位置が、運転者の離席時に検知された同乗者の着座位置と比べて、所定距離以上変化しているか否かを判定する。この所定距離は、着座姿勢の変化では生じない程度の距離に設定されており、同乗者が自分の意思で座席を変更した、すなわち降車の意思があると推定できる距離となっている。判定部23は、上記した着座位置が、運転者の離席時の着座位置と比べて、所定距離以上変化した場合、その事実を車両制御部30に出力する。
【0023】
戻り予定時間管理部24は、運転者が離席(降車)する際に、車両に戻ってくるまでの予定時間を管理する。この予定時間は、車内検知装置1に設けられた不図示の入力部(タッチパネル等)または、運転者の携帯端末から通信部13を経由して、運転者が設定することができる。戻り予定時間管理部24は、例えば、運転者が20分で戻ってくる予定で降車する場合、運転者の操作に基づいて予定時間(20分)を設定し、設定された予定時間の20分が経過しても、運転者が車両に戻ってこない場合には、車両制御部30の通信制御部31に出力する。
【0024】
車両制御部30は、車両の各部の動作を制御する。車両制御部30は、通信制御部31と、エアコン制御部32とを備える。エアコン制御部32は、車両に設けられたエアコン(空調機)40の動作を制御する。具体的には、新たに検知された同乗者の呼吸数又は心拍数が、運転者の離席時に検知された同乗者の呼吸数又は心拍数と比べて、第1基準値以上変化している場合、エアコン制御部32は、エアコン40の動作を制御して室内の温度を運転者の離席時と同じ温度状態に調整する。具体的には、エアコンを停止した状態で、運転者が離席した場合、室内の温度上昇に伴って、同乗者の呼吸数又は心拍数が上昇することが想定される。このため、検知された同乗者の呼吸数又は心拍数が、運転者の離席時に検知された同乗者の呼吸数又は心拍数と比べて、第1基準値以上変化している場合、エアコン制御部32は、エアコン40の動作を制御して室内の温度を運転者の離席時と同じ温度状態に調整する。これにより、室内の温度が快適な温度に保たれるため、同乗者の呼吸数又は心拍数を、運転者の離席時と同程度に安定させることができる。
【0025】
通信制御部31は、通信部13の動作を制御する。具体的には、新たに検知された同乗者の呼吸数又は心拍数が、運転者の離席時に検知された同乗者の呼吸数又は心拍数と比べて、第2基準値以上変化している場合、通信制御部31は、通信部13の動作を制御して警察署又は消防署へ緊急通報を行う。上記したエアコン制御部32がエアコン40の動作を制御したとしても、エアコン40が正常に動作せずに室内の温度がそれほど低下しないことや、エアコン40が正常に動作していても、同乗者の体調が大きく変動することも想定される。このため、検知された同乗者の呼吸数又は心拍数が、運転者の離席時に検知された同乗者の呼吸数又は心拍数と比べて、第1基準値よりも大きい第2基準値以上変化している場合には、通信制御部31は、通信部13の動作を制御して警察署又は消防署へ緊急通報を行う。これにより、同乗者の健康が害されることを防止し、同乗者の安全を守ることができる。なお、通信制御部31は、通信部13の動作を制御して、適宜、運転者の携帯電話にも通知することができる。
【0026】
次に、第一実施形態に係る車内検知装置10の動作について説明する。
図2は、第一実施形態に係る車内検知装置の動作の手順を示すフローチャートである。
【0027】
制御部20は、戻り予定時間を設定する(ステップS1)。本実施形態では、運転者は、車両の室内に同乗者がいる(残っている)ことを認識した上で、一時的に車両を離れる状態を想定している。このため、運転者の操作に基づき、戻り予定時間管理部24は、運転者が車両に戻ってくる戻り予定時間を設定する。この戻り予定時間は、現在から何分後に戻ってくるかという予定時間(例えば20分後)として設定されるが、予定時間経過後の予定時刻(例えば14時)で設定してもよい。
【0028】
次に、制御部20は、運転者が離席すると(ステップS2)、電波センサ11による車両の室内の検知を行う(ステップS3)。運転者の離席の判断は、例えば運転者を監視する不図示のカメラ(運転席の運転者の居眠りや、わき見運転を監視するカメラ)の画像解析、または運転席に設けられて運転者の着座有無を判断する不図示の加圧センサの検出結果に基づいて行うことができる。また、運転者の降車を判断する手法として、エンジン(駆動部)が停止した状態で、運転席のドアが開いた後に再度閉じたことを検知することで行っても良いし、車両の重量を監視する不図示の重量センサを用いて、ドアの開閉に伴い車両重量の軽減を検知することで行ってもよい。制御部20は、センサ制御部21により、電波センサ11を動作させて、室内に向けて電波を発信するとともに、この電波の反射波を受信する。そして、制御部20は、電波センサ11により、この受信した反射波を解析し、反射波に呼吸又は心拍に起因する特有の振動の有無を検知する。
【0029】
次に、制御部20は、室内に同乗者が存在するか否かを判定する(ステップS4)。具体的には、制御部20は、電波センサ11により、受信した反射波に呼吸又は心拍に起因する特有の振動を検知すれは、室内に同乗者が存在すると判定する。一方、制御部20は、電波センサ11により、受信した反射波に呼吸又は心拍に起因する特有の振動を検知しなければ、室内に同乗者が存在しないと判定する。
【0030】
この判定において、室内に同乗者が存在しない場合(ステップS4;No)には、そのまま処理を終了する。一方、室内に同乗者が存在する場合(ステップS4;Yes)には、制御部20は、電波センサ11により、運転者が離席した際の同乗者の着座位置と、同乗者の呼吸数又は心拍数(同乗者の身体状況)を検知し、これらの情報を記憶しておく。次に、制御部20は、所定時間ごとに電波センサ11による室内の検知を行う(ステップS5)。この場合、制御部20は、電波センサ11により、検知の度に、運転者が離席した際の同乗者の着座位置と、同乗者の呼吸数又は心拍数(同乗者の身体状況)を検知し追跡する。
【0031】
次に、制御部20は、今回検知された同乗者の呼吸数又は心拍数が、運転者の離席時に検知された同乗者の呼吸数又は心拍数と比べて、第1基準値以上変化しているか否かを判定する(ステップS6)。この判定において、第1基準値以上変化している場合(ステップS6;Yes)には、制御部20は、車両のエアコン40を動作させる(ステップS7)。より詳しくは、制御部20は、車両制御部30のエアコン制御部32により、車両に設けられたエアコン40の動作の制御し、室内の温度を運転者の離席時と同じ温度の状態に調整する。また、制御部20は、すでにエアコン40が動作している場合には、その動作を継続する。この構成によれば、車両の室内温度が、運転者の離席時の室内の温度と同等に調整されるため、同乗者は室内で快適に過ごすことができ、同乗者の呼吸数又は心拍数を、運転者の離席時と同程度に安定させることができる。この場合、制御部20は、エアコン40を動作させるために、車両制御部30により、必要に応じて車両のエンジンを駆動させてもよい。制御部20は、エアコン40を動作させた後、処理をステップS9に移す。
【0032】
一方、この判定において、第1基準値以上変化していない場合(ステップS6;No)には、制御部20は、戻り予定時間が経過しているか否かを判定する(ステップS8)。すなわち、制御部20は、戻り予定時間管理部24により、事前に設定された戻り予定時間が経過したか否かを判定する(ステップS8)。
【0033】
この判定において、戻り予定時間が経過していない場合(ステップS8;No)には、処理をステップS5に戻す。また、戻り予定時間が経過している場合(ステップS8;Yes)には、処理をステップS11に移す。
【0034】
次に、制御部20は、今回検知された同乗者の呼吸数又は心拍数が、運転者の離席時に検知された同乗者の呼吸数又は心拍数と比べて、第2基準値以上変化しているか否かを判定する(ステップS9)。この第2基準値は、上記した第1基準値よりも大きな値に設定される。この判定において、第2基準値以上変化していない場合(ステップS9;No)には、制御部20は、処理をステップS8に移す。
【0035】
一方、第2基準値以上変化している場合(ステップS9;Yes)には、制御部20は、緊急通報を行う(ステップS10)。より詳しくは、制御部20は、車両制御部30の通信制御部31により、通信部13を介して、近隣の警察署又は消防署に緊急通報を行い、これら警察署又は消防署の緊急通報の受信を確認できた後、処理を終了する。この構成によれば、同乗者の身体状況が悪化する方向に大きく変化した場合に、警察署又は消防署に対して緊急通報を行うため、同乗者の健康が害されることを防止し、同乗者の安全を守ることができる。この場合、運転者に対して、同乗者の健康が害される可能性があるため、警察署又は消防署への緊急通報を行った旨を通知してもよい。
【0036】
また、上記したステップS8の判定において、戻り予定時間が経過している場合には、運転者に予定時間が過ぎている旨を通知(ステップS11)して、処理を終了する。この構成によれば、運転者に通知することにより、運転者が早く車両に戻ることを促すことができ、同乗者の健康が害されることを防止し、同乗者の安全を守ることができる。なお、
図2のフローチャートを実行中に、運転者が車両に戻った場合には、処理を終了するものとする。また、エアコン制御部32は、上記したステップS10、S11において、緊急通報または所定の通知をした後も、運転者、警察官又は消防員が到着して、停止操作をするまでエアコン40の動作を継続して実行するものとする。
【0037】
[第二実施形態]
図3は、第二実施形態に係る車内検知装置の構成例を示すブロック図である。第一実施形態に係る車内検知装置10と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。車内検知装置10Aは、
図3に示すように、電波センサ11と、室内温度センサ12と、通信部13と、カメラ14と、室外温度センサ15と、報知部16と、制御部(車内検知制御装置)20Aとを備える。
【0038】
カメラ14は、車両の周辺を撮影するカメラである。カメラ14は、車両に搭載され、車両の進行方向の前方および後方を撮影する。本実施形態では、カメラ14は、車両の前方および後方に配置されている。カメラ14は、車両(エンジン)が停止した状態でも起動可能に構成され、起動後に車両の周辺を撮影する。カメラ14は、撮影した映像を制御部20の画像取得部25へ出力する。
【0039】
室外温度センサ15は、車両の室外の温度(外気温)を計測する。室外温度センサ15は、車両に設けられたものを使用してもよい。室外温度センサ15は、計測した温度データを制御部20の温度取得部22に出力する。本実施形態では、温度取得部22は、上記した車両の室内の温度データに加え、室外温度センサ15は計測した車両の室外の温度データを取得する。
【0040】
報知部16は、車両の周辺にいる歩行者や、車両の周辺に位置する建物にいる人(居住者や買い物客など)に対して、車両の室内にいる同乗者の保護を求める旨を報知する。報知部16は、例えば車両に取り付けられたスピーカとして構成され、上記した同乗者の保護を求める旨を音声によって報知することができる。報知部16は、車両周辺の人に対して、例えば同乗者として幼児が乗っている場合には、『この車に幼児が残されています。この幼児を車両の外で保護してください』といったメッセージを報知することができる。また、報知部16は、車両周辺の人に対して、例えば同乗者として要介護者が乗っている場合には、『この車に介護が必要な人が残されています。この人を車両の外で保護してください』といったメッセージを報知することができる。なお、報知部16は、車両の外部に配置されて上記したメッセージを表示する表示部として構成されてもよい。
【0041】
制御部20Aは、センサ制御部21と、温度取得部22と、判定部23と、戻り予定時間管理部24と、画像取得部25と、周辺状況調査部26と、車両制御部30Aと、を備える。
【0042】
画像取得部25は、カメラ14が撮影した車両の周辺の画像データを取得する。画像取得部25は、例えば、車両に接近してくる歩行者や、車両の近くを走行する他の車両の有無、車両の周辺に設けられた建物を含み、カメラ14が出力した車両周辺の画像データを取得する。
【0043】
周辺状況調査部26は、画像取得部25が取得した画像データに基づき、車両の周辺状況を調査する。周辺状況調査部26は、車両の周辺が保護を求めることができる環境であるかについて周辺状況を調査する。具体的には、周辺状況調査部26は、例えば、車両の周辺に、同乗者の保護を依頼できる人がいるか、保護することができる施設(建物)があるか、又は車両の外が安全であるか等に関して周辺状況を調査する。
【0044】
周辺状況調査部26は、画像取得部25により取得された画像データに基づき、車両周辺に存在する所定の対象物(歩行者や建物)を検出し、検出した対象物の状態を調査する処理を実行する。周辺状況調査部26は、対象物を歩行者と認識するための参照テーブル(不図示)を含み、例えば、車両に向かって接近する歩行者が検出されると、同乗者の保護を依頼できる人がいると確認することができる。また、周辺状況調査部26は、例えば、建物(ショッピングセンターなど)が検出されると、保護することができる施設(建物)があると確認することができる。この場合、周辺の地図情報と、画像とに基づいて、施設を特定してもよい。また、周辺状況調査部26は、例えば、車両の周囲に多くの車両が駐車されている状態が検出されると、他の車両が駐車されている側は、走行する他の車両が通過する可能性は低く、ある程度の安全が保たれていると確認できる。
【0045】
車両制御部30Aは、通信制御部31と、エアコン制御部32と、報知制御部33と、ドアロック制御部34とを備える。報知制御部33は、報知部16の動作を制御する。より詳しくは、報知制御部33は、車両の周辺に、同乗者としての幼児の保護を依頼できる歩行者がいて、かつ、車両の周辺がある程度安全である場合に、例えば『この車に幼児が残されています。これからドアを開けますので、この幼児を車両の外の安全な場所で保護してください』というメッセージを作成し、このメッセージを報知部16に報知させる。また、報知制御部33は、車両の周辺に、同乗者としての幼児を保護できる施設(建物)があり、かつ、車両の右側がある程度安全である場合に、例えば『この車に幼児が残されています。これから右側後方のドアを開けますので、この幼児を○○(施設名)で保護してください』というメッセージを作成し、このメッセージを報知部16に報知させる。
【0046】
ドアロック制御部34は、車両のドア41の施錠動作を制御する。詳しくは、ドアロック制御部34は、上記メッセージが報知された後、車両近くに同乗者を保護するために人が集まると、所定のドア41のドアロックを解除して該ドア41を開放可能とする。また、ドアロック制御部34は、ドア41を開放する動作まで実行してもよい。
【0047】
次に、第二実施形態に係る車内検知装置10Aの動作について説明する。
図4は、第二実施形態に係る車内検知装置の動作の手順を示すフローチャートである。この
図4のフローチャートにおけるステップS21~ステップS28は、
図2のフローチャートにおけるステップS1~ステップS8とそれぞれ同一の動作であるので説明を省略する。
【0048】
制御部20Aは、ステップS28の判定において、戻り予定時間が経過している場合には、運転者に予定時間が過ぎている旨を通知する(ステップS29)。この構成によれば、戻り予定時間が経過している場合、運転者に通知することにより、運転者が早く車両に戻ることを促すことができ、同乗者の健康が害されることを防止し、同乗者の安全を守ることができる。
【0049】
次に、制御部20Aは、同乗者の着座位置に変更があるか否かを判定する(ステップS30)。より詳しくは、制御部20Aは、判定部23により、今回検知された同乗者の着座位置と運転者の離席時に検知された同乗者の着座位置とが、所定距離以上変化しているか否かを判定する。この判定において、同乗者の着座位置に変更がない場合(ステップS30;No)には、処理をステップS25に戻す。
【0050】
一方、この判定において、同乗者の着座位置に変更がある場合(ステップS30;Yes)には、同乗者に降車の意思があると推定できるため、同乗者を安全に降車させて保護してもらう処理を行う。具体的には、制御部20Aは、カメラ14を用いて車両の周囲を撮影する(ステップS31)。制御部20Aは、画像取得部25により、車両の周囲を撮影した画像データを取得する。
【0051】
次に、制御部20Aは、周辺状況を調査する(ステップS32)。より詳しくは、制御部20Aは、周辺状況調査部26により、画像取得部25が取得した画像データに基づき、車両の周辺状況が保護を求めることができる状況であるかについて調査を開始する。
【0052】
次に、制御部20Aは、車両の周囲の車両に向けて接近する人がいるか否かを判定する(ステップS33)。制御部20Aは、周辺状況調査部26により、取得された画像データに基づき、車両周辺に存在する所定の対象物(歩行者や建物)を検出し、検出した対象物の状態を調査する処理を実行し、車両に向かって接近する人(歩行者)がいるか否かを判定する。この判定において、車両に向かって接近する人がいる場合(ステップS33;Yes)には、同乗者の保護を依頼できる人がいると判定されるため、制御部20Aは、車外の人に向けて報知するとともに、ドアロックを解除し、ドアを開放して(ステップS34)、処理を終了する。
【0053】
すなわち、制御部20Aは、『この車に幼児が残されています。これからドアを開けますので、この幼児を車両の外の安全な場所で保護してください』というメッセージを作成し、報知部16を介して、このメッセージを車両に向かって接近する人に対して報知させる。また、制御部20Aは、ドアロック制御部34により、上記メッセージが報知された後、車両近くに同乗者を保護するために人が集まると、所定のドア41のドアロックを解除して該ドア41を開放可能とする。この構成によれば、車両に残された同乗者の着座位置の変化に基づき、同乗者の意思を推定することができ、近くの人に対して保護を求めることにより、同乗者の健康が害されることを防止し、同乗者の安全を守ることができる。
【0054】
一方、上記判定において、車両に向かって接近する人がいない場合(ステップS33;No)には、制御部20Aは、今回検知された同乗者の呼吸数又は心拍数が、運転者の離席時に検知された同乗者の呼吸数又は心拍数と比べて、第2基準値以上変化しているか否かを判定する(ステップS35)。この判定において、第2基準値以上変化していない場合(ステップS35;No)には、制御部20Aは、処理をステップS25に戻す。
【0055】
一方、第2基準値以上変化している場合(ステップS35;Yes)には、制御部20Aは、緊急通報を行い(ステップS36)、処理を終了する。より詳しくは、制御部20Aは、車両制御部30の通信制御部31により、通信部13を介して、近隣の警察署又は消防署に緊急通報を行い、これら警察署又は消防署の緊急通報の受信を確認できた後、処理を終了する。この構成によれば、同乗者の身体状況が悪化する方向に大きく変化した場合に、警察署又は消防署に対して緊急通報を行うため、同乗者の健康が害されることを防止し、同乗者の安全を守ることができる。この場合、運転者に対して、同乗者の健康が害される可能性があるため、警察署又は消防署への緊急通報を行った旨を通知してもよい。また、エアコン制御部32は、上記したステップS34、S36において、ドアロック解除または緊急通報をした後も、運転者、保護するための人、警察官又は消防員が到着して、停止操作をするまでエアコン40の動作を継続して実行するものとする。なお、本実施形態においても、
図4のフローチャートを実行中に、運転者が車両に戻った場合には、処理を終了するものとする。
【0056】
次に、第二実施形態に係る車内検知装置10Aの別の動作について説明する。
図5は、第二実施形態に係る車内検知装置の別の動作の手順を示すフローチャートである。この
図5のフローチャートにおけるステップS41~ステップS50は、
図4のフローチャートにおけるステップS21~ステップS30とそれぞれ同一の動作であるので説明を省略する。
【0057】
ステップS50の判定において、同乗者の着座位置に変更がある場合(ステップS50;Yes)には、同乗者に降車の意思があると推定できるため、同乗者の安全な降車を促す処理を行う。具体的には、制御部20Aは、カメラ14を用いて車両の周囲を撮影するとともに、室外温度センサ15を用いて車両の室外の温度を測定する(ステップS51)。制御部20Aは、画像取得部25により、車両の周囲を撮影した画像データを取得する。また、制御部20Aは、温度取得部22により、測定された車両の室外の温度データを取得する。
【0058】
次に、制御部20Aは、周辺状況を調査する(ステップS52)。より詳しくは、制御部20Aは、周辺状況調査部26により、画像取得部25が取得した画像データに基づき、車両の周辺状況が保護を求める施設があるか、及び、車両の周辺が安全な状況であるかについて調査を開始する。
【0059】
次に、制御部20Aは、車両の室外の温度(外気温度)が所定範囲内にあるか否かを判定する(ステップS53)。より詳しくは、制御部20Aは、温度取得部22により、取得された車両の室外の温度が所定温度範囲内(例えば、12℃以上25℃以下)にあるか否かを判定する。この所定温度範囲は、車両の外側において、比較的快適かつ安全に過ごすことができる温度帯である。この判定において、車両の室外の温度が所定範囲内にない場合(ステップS53;No)には、制御部20Aは、処理をステップS56に移す。
【0060】
一方、この判定において、車両の室外の温度が所定範囲内にある場合(ステップS53;Yes)には、制御部20Aは、車両の周辺に同乗者を保護することができる建物(施設)があるか否かを判定する(ステップS54)。より詳しくは、制御部20Aは、周辺状況調査部26により、取得された画像データに基づき、車両周辺に存在する所定の対象物(歩行者や建物)を検出し、検出した対象物の状態を調査する処理を実行し、車両の周辺に同乗者を保護することができる建物(例えばショッピングセンター等の施設)があるか否かを判定する。この場合、制御部20Aは、車両の外が安全であるか(周辺を他の車両が頻繁に走行していないか)についても判定することが好ましい。
【0061】
この判定において、車両の周辺に同乗者を保護することができる建物がない場合(ステップS54;No)には、制御部20Aは、処理をステップS56に移す。一方、この判定において、車両の周辺に同乗者を保護することができる建物がある場合(ステップS54;Yes)、制御部20Aは、車両の周辺が安全であるかを確認した上で、車外の人に向けて報知するとともに、ドアロックを解除し、ドアを開放して(ステップS55)、処理を終了する。
【0062】
すなわち、制御部20Aは、例えば、ショッピングセンターに来ている人に向けて、『この車に幼児が残されています。これから○○側のドアを開けますので、この幼児を○○(施設名)で保護してください』というメッセージを作成し、報知部16を介して、このメッセージを報知させる。また、制御部20Aは、同乗者に向けて『この車の近くに○○(施設名)があります。これから○○側のドアを開けますので、○○(施設名)まで気を付けて移動して保護して貰ってください』というメッセージを作成し、報知部16を介して、このメッセージを報知させてもよい。また、制御部20Aは、車両の周辺が安全であることが確認された場合、ドアロック制御部34により、上記メッセージが報知された後、所定のドア41のドアロックを解除して該ドア41を開放可能とする。この構成によれば、車両に残された同乗者の着座位置の変化に基づき、同乗者の意思を推定することができ、近くの建物(施設)にいる人に対して保護を求めることができるため、同乗者の健康が害されることを防止し、同乗者の安全を守ることができる。
【0063】
一方、上記判定において、車両の周辺に同乗者を保護することができる建物がない場合(ステップS54;No)には、制御部20Aは、今回検知された同乗者の呼吸数又は心拍数が、運転者の離席時に検知された同乗者の呼吸数又は心拍数と比べて、第2基準値以上変化しているか否かを判定する(ステップS56)。この判定において、第2基準値以上変化していない場合(ステップS56;No)には、制御部20Aは、処理をステップS45に戻す。
【0064】
一方、第2基準値以上変化している場合(ステップS56;Yes)には、制御部20Aは、緊急通報を行い(ステップS57)、処理を終了する。より詳しくは、制御部20Aは、車両制御部30の通信制御部31により、通信部13を介して、近隣の警察署又は消防署に緊急通報を行い、これら警察署又は消防署の緊急通報の受信を確認できた後、処理を終了する。この構成によれば、同乗者の身体状況が悪化する方向に大きく変化した場合に、警察署又は消防署に対して緊急通報を行うため、同乗者の健康が害されることを防止し、同乗者の安全を守ることができる。この場合、運転者に対して、同乗者の健康が害される可能性があるため、警察署又は消防署への緊急通報を行った旨を通知してもよい。また、エアコン制御部32は、上記したステップS55、S57において、ドアロック解除または緊急通報をした後も、運転者、保護するための人、警察官又は消防員が到着して、停止操作をするまでエアコン40の動作を継続して実行するものとする。この構成によれば、同乗者の身体状況が悪化する方向に大きく変化した場合に、警察署又は消防署に対して緊急通報を行うため、同乗者の健康が害されることを防止し、同乗者の安全を守ることができる。なお、本実施形態においても、
図5のフローチャートを実行中に、運転者が車両に戻った場合には、処理を終了するものとする。
【0065】
以上、本実施形態に係る車内検知装置10、10Aは、車両の室内に向けて電波を発信し、この電波の反射波の解析結果に基づいて、室内に同乗者が存在するか否か、同乗者の身体状態、及び同乗者の室内における着座位置を検知可能な電波センサ11と、車両の運転者が運転席から離れる際に、電波センサ11により車両の室内に同乗者が存在することが検知された場合、運転者の離席後に所定時間ごとに電波センサ11を動作させるセンサ制御部21と、電波センサ11により検知された、同乗者の身体状態の変化、又は同乗者の室内における着座位置の変化に応じて、車両の各部の動作を制御する車両制御部30、30Aと、を備える。この構成によれば、同乗者の身体状態の変化、又は同乗者の室内における着座位置の変化に応じて、車両の各部の動作を制御するため、車両の室内に残された同乗者の健康と安全を守ることができる。
【0066】
本実施形態に係る車内検知装置10、10Aにおいて、電波センサ11は、同乗者の身体状態として、同乗者の呼吸数、又は心拍数を検知し、所定時間ごとに検知された呼吸数、又は心拍数が、運転者の離席時に検知された呼吸数、又は心拍数と比べて、所定の第1基準値以上変化した場合、車両制御部30、30Aのエアコン制御部32は、車両に設けられたエアコン40の動作を制御して室内の温度を運転者の離席時と同じ温度状態に調整する。この構成によれば、室内の温度が快適な温度に保たれるため、同乗者の呼吸数又は心拍数を、運転者の離席時と同程度に安定させることができる。
【0067】
本実施形態に係る車内検知装置10、10Aは、車両の外部と通信する通信部13を有し、所定時間ごとに検知された呼吸数、又は心拍数が、運転者の離席時に検知された呼吸数、又は心拍数と比べて、第1基準値よりも大きい第2基準値以上変化した場合、車両制御部30、30Aの通信制御部31は、通信部13の動作を制御して警察署又は消防署へ緊急通報を行う。この構成によれば、同乗者の身体状況が悪化する方向に大きく変化した場合に、警察署又は消防署に対して緊急通報を行うため、同乗者の健康が害されることを防止し、同乗者の安全を守ることができる。
【0068】
本実施形態に係る車内検知装置10Aは、車両の周囲を撮影するカメラ14と、カメラが撮影した画像に基づき、車両の周辺状況を調査する周辺状況調査部26と、車両の外部に向けて報知する報知部16と、を備え、同乗者の着座位置が、運転者の離席時における着座位置と所定距離以上変化し、かつ周辺状況調査部26が、周辺状況として、車両に対する人の接近を判定した場合、車両制御部30Aの報知制御部33は、報知部16を通じて車両の外部に対して、同乗者の存在を報知する。また、車両制御部30Aのドアロック制御部34は、車両のドア41を制御して該ドア41のロックを解除する。この構成によれば、車両に残された同乗者の着座位置の変化に基づき、同乗者の意思を推定することができ、近くの人に対して保護を求めることにより、同乗者の健康が害されることを防止し、同乗者の安全を守ることができる。
【0069】
本実施形態に係る車内検知装置10Aは、車両の周囲を撮影するカメラ14と、カメラ14が撮影した画像に基づき、車両の周辺状況を判定する周辺状況調査部26と、車両の外部に向けて報知する報知部16と、車両の外気温度を取得する温度取得部22と、を備え、同乗者の着座位置が、運転者の離席時における着座位置と所定距離以上変化し、周辺状況調査部26が、周辺状況として、車両の周囲に建物の存在を確認し、かつ外気温度が所定温度範囲内にある場合、車両制御部30Aの報知制御部33は、報知部16を通じて、同乗者の建物への移動を促す報知を実行する。また、車両制御部30Aのドアロック制御部34は、車両のドア41を制御して該ドア41のロックを解除する。この構成によれば、車両に残された同乗者の着座位置の変化に基づき、同乗者の意思を推定することができ、近くの建物(施設)にいる人に対して保護を求めることができるため、同乗者の健康が害されることを防止し、同乗者の安全を守ることができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0071】
本実施形態では、同乗者は、特に就学前の幼児を例示して説明したが、これに限るものではなく、すべての年齢層にあてはまる。さらに、同乗者は、人である必要もなく、例えば犬や猫といったペット動物のように、電波センサにて検知可能なものであればよい。この場合、心拍数等の変化を判定するための基準値は、検知対象に合わせた複数設定した構成としてもよい。また、本実施形態では、運転者が運転席から離れた場合の処理を説明したが、運転者が運転席から離れて車内の別の席(例えば助手席)に滞在することも想定される。この場合であっても、車内の同乗者(運転者含む)が電波センサ11の検知によって、体調の不具合が検知されると、車内の運転者に連絡されるため、同乗者の健康が害されることを防止し、同乗者の安全を守ることができる。
【0072】
また、本実施形態に係る制御部(車内検知制御装置)20、20Aの各構成要素は、機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていなくてもよい。すなわち、各装置の具体的形態は、図示のものに限られず、各装置の処理負担や使用状況などに応じて、その全部または一部を任意の単位で機能的または物理的に分散または統合してもよい。制御部20、20Aの構成は、例えば、ソフトウェアとして、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。上記実施形態では、これらのハードウェアまたはソフトウェアの連携によって実現される機能ブロックとして説明した。すなわち、これらの機能ブロックについては、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、または、それらの組み合わせによって種々の形で実現できる。
【0073】
本開示は、SDGs(Sutainable Development Goals)の「住み続けられるまちづくりを」の実現に貢献し、公共施設の安心・安全に寄与する事項を含む。
【符号の説明】
【0074】
10、10A 車内検知装置
11 電波センサ
14 カメラ
16 報知部
20、20A 制御部
21 センサ制御部
22 温度取得部
23 判定部
24 戻り予定時間管理部
25 画像取得部
26 周辺状況調査部
30、30A 車両制御部
31 通信制御部
32 エアコン制御部
33 報知制御部
34 ドアロック制御部
40 エアコン
41 ドア