(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140046
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20241003BHJP
C09J 133/06 20060101ALI20241003BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20241003BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/06
C09J11/08
G09F9/00 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051032
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】奥村 友香
(72)【発明者】
【氏名】岡原 快
(72)【発明者】
【氏名】横川 亮祐
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5G435
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004BA02
4J004CA03
4J004CA06
4J004DB04
4J004EA05
4J004EA06
4J004FA08
4J040DF031
4J040DF032
4J040EF282
4J040GA05
4J040GA07
4J040GA22
4J040HB41
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA17
4J040KA19
4J040KA23
4J040KA26
4J040KA28
4J040KA29
4J040KA31
4J040KA32
4J040KA35
4J040KA38
4J040LA01
4J040LA02
4J040LA06
4J040NA17
4J040NA19
5G435AA07
5G435AA12
5G435BB05
5G435BB12
5G435GG42
5G435HH18
5G435HH20
5G435LL07
5G435LL08
5G435LL14
5G435LL17
(57)【要約】
【課題】低温環境下において耐屈曲性に優れながら、常温から高温環境下の幅広い温度範囲で粘着性に優れる粘着シートを提供する。
【解決手段】粘着シート1は粘着剤層2を備える。粘着剤層2は、炭素数10以上の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを構成単位として含むアクリル系ポリマーと、粘着付与剤とを含む。粘着剤層2の-30℃における弾性率は5.0MPa以下、ゲル分率は50%以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層を備える粘着シートであり、
前記粘着剤層は、炭素数10以上の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを構成単位として含むアクリル系ポリマーと、粘着付与剤とを含み、
前記粘着剤層の-30℃における弾性率は5.0MPa以下、ゲル分率は50%以上である、粘着シート。
【請求項2】
前記アクリル系ポリマーは炭素数1~8の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを構成単位として含む、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着付与剤はオリゴマーまたは粘着付与樹脂を含む、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
電気電子機器における部材同士の固定用の両面粘着シートである請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項5】
請求項4に記載の粘着シートを備え、
前記粘着シートは両方の粘着面で部材同士を固定している、電気電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ等の画像表示装置や携帯電子機器に用いられる粘着シートには、高い粘着力をはじめとする様々な性能が求められている。
【0003】
近年では、樹脂フィルム等の折り曲げ可能な基板(フレキシブル基板)を用いた有機ELパネルが実用化されており、折り曲げ可能なフレキシブルディスプレイが提案されている。フレキシブルディスプレイにおいては、有機ELパネル等の表示パネルが折り曲げ可能であることに加えて、構成部材も折り曲げ可能であり、これらの部材が粘着シートを介して貼り合わせられる。折り畳み可能なフレキシブルディスプレイ(フォルダブルディスプレイ)では、同じ場所で屈曲が繰り返し行われる。屈曲箇所では、内側には圧縮応力、外側には引張応力が付与され、屈曲箇所およびその周辺に歪みが生じるため、屈曲箇所に折れや痕がついたり、粘着剤層の剥がれが生じたりすることが懸念される。
【0004】
例えば、特許文献1~7には、耐屈曲性を有することを目的とする粘着シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-111754号公報
【特許文献2】特開2019-108498号公報
【特許文献3】特開2020-111734号公報
【特許文献4】特開2020-139034号公報
【特許文献5】特開2020-164575号公報
【特許文献6】特開2018-27996号公報
【特許文献7】特開2019-218513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フレキシブルディスプレイが世界中で使用される可能性を考慮すれば、日本国内における常温においてのみ耐屈曲性が優れるのでは不充分であり、様々な環境下において耐屈曲性に優れることが求められる。しかしながら、従来の粘着シートは、常温において耐屈曲性を有する場合であっても、低温において耐屈曲性に劣る場合がある。
【0007】
低温における耐屈曲性を向上させるために、粘着シートを構成する粘着剤層に低ガラス転移温度のポリマーをベースポリマーとして使用することが考えられる。しかしながら、この場合、低温における弾性率とともに高温における弾性率も低下してしまい、その結果、高温での凝集力が低下して粘着性が低下し剥がれやすくなる。このため、低温における耐屈曲性に優れながら、高温において粘着性に優れる粘着シートを作製することは困難であった。
【0008】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、その目的は、低温環境下において耐屈曲性に優れながら、常温から高温環境下の幅広い温度範囲で粘着性に優れる粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の粘着シートによれば、低温環境下において耐屈曲性に優れながら、常温から高温環境下の幅広い温度範囲で粘着性に優れることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、粘着剤層を備える粘着シートであり、上記粘着剤層は、炭素数10以上の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを構成単位として含むアクリル系ポリマーと、粘着付与剤とを含み、上記粘着剤層の-30℃における弾性率は5.0MPa以下、ゲル分率は50%以上である、粘着シートを提供する。
【0011】
上記アクリル系ポリマーは炭素数1~8の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを構成単位として含むことが好ましい。
【0012】
上記粘着付与剤はオリゴマーまたは粘着付与樹脂を含むことが好ましい。
【0013】
上記粘着シートは、電気電子機器における部材同士の固定用の両面粘着シートであってもよい。
【0014】
また、本発明は、上記粘着シートを備え、上記粘着シートは両方の粘着面で部材同士を固定している、電気電子機器を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の粘着シートによれば、低温環境下において耐屈曲性に優れながら、常温から高温環境下の幅広い温度範囲で粘着性に優れる。このため、幅広い温度環境下での粘着性に優れながら、低温環境下において屈曲が繰り返し行われる箇所に使用された場合であっても、屈曲箇所に折れや痕がついたり、粘着シートの剥がれが生じたりしにくい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る粘着シートの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[粘着シート]
本発明の一実施形態に係る粘着シートは、アクリル系ポリマーと粘着付与剤とを含み、-30℃における弾性率は5.0MPa以下であり、ゲル分率は50%以上である粘着剤層を少なくとも備える。なお、本明細書において、上記粘着剤層を「本発明の粘着剤層」と称する場合がある。
【0018】
本発明の粘着シートは、基材(基材層)を有しない、いわゆる「基材レスタイプ」の粘着シートであってもよいし、基材を有するタイプの粘着シートであってもよい。なお、本明細書において、「基材レスタイプ」の粘着シートを「基材レス粘着シート」と称する場合があり、基材を有するタイプの粘着シートを「基材付き粘着シート」と称する場合がある。上記基材レス粘着シートとしては、例えば、本発明の粘着剤層のみからなる両面粘着シートや、本発明の粘着剤層とその他の粘着剤層(本発明の粘着剤層以外の粘着剤層)からなる両面粘着シート等が挙げられる。また、上記基材付き粘着シートとしては、例えば、基材の片面側に本発明の粘着剤層を有する片面粘着シートや、基材の両面側に本発明の粘着剤層を有する両面粘着シートや、基材の一方の面側に本発明の粘着剤層を有し、他方の面側にその他の粘着剤層を有する両面粘着シートなどが挙げられる。なお、上記の「基材(基材層)」とは、支持体のことであり、本発明の粘着シートを被着体に使用(貼付)する際には、粘着剤層とともに被着体に貼付される部分である。粘着シートの使用(貼付)時に剥離されるはく離ライナーは、上記基材に含まれない。
【0019】
図1は、本発明の粘着シートの一実施形態を示す断面模式図である。
図1に示す粘着シート1は、本発明の粘着剤層である粘着剤層2単層からなる基材レス両面粘着シートであり、その両方の粘着面には、それぞれ、はく離ライナー3およびはく離ライナー4が設けられている。
【0020】
(本発明の粘着剤層)
本発明の粘着シートは、粘着剤層を1層のみ備えていてもよいし、2層以上備えていてもよい。2層以上備える場合は、少なくとも1層が本発明の粘着剤層であればよく、他の粘着剤層は本発明の粘着剤層であってもよく、その他の粘着剤層であってもよい。本発明の粘着剤層を2層以上備える場合、複数の本発明の粘着剤層は、同一の粘着剤層であってもよく、組成、厚さ、物性などが異なる粘着剤層であってもよい。また、基材付き粘着シートの場合の基材の一方の面に設けられた粘着剤層は、単層であってもよく、同一または組成、厚さ、物性などが異なる層から構成される複層であってもよい。
【0021】
本発明の粘着剤層は、-30℃における弾性率が5.0MPa以下であり、好ましくは4.0MPa以下、より好ましくは3.0MPa以下、さらに好ましくは2.0MPa以下、特に好ましくは1.0MPa以下である。上記弾性率が5.0MPa以下であることにより、低温において屈曲を繰り返し受けた場合であっても、屈曲箇所に折れや痕がついたり、粘着シートの剥がれが生じたりしにくく、耐屈曲性に優れる。上記弾性率は、例えば0.1MPa以上であり、好ましくは0.2MPa以上である。
【0022】
なお、本明細書において「弾性率」は、動的せん断貯蔵弾性率(G')をいい、例えば、粘弾性試験機を用いて周波数1Hzのせん断歪みを与えながら、温度領域-50~150℃、5℃/分の昇温速度でせん断モードにより測定し、任意の温度のG’のピークを弾性率として得ることができる。
【0023】
本発明の粘着剤層のゲル分率(溶剤不溶成分の質量割合)は、50%以上であり、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。ゲル分率が50%以上であることにより、上記粘着剤層の凝集力が向上し、高温環境下での被着体との粘着性に優れる。上記ゲル分率は、例えば95%以下であり、好ましくは90%以下である。上記ゲル分率が95%であると、適度な柔軟性が得られ、より粘着性が向上する。なお、上記ゲル分率は、例えば、アクリル系ポリマーのモノマー組成、重量平均分子量、架橋剤の使用量(添加量)等により制御することができる。
【0024】
上記ゲル分率は、具体的には、例えば、以下の「ゲル分率の測定方法」により算出される値である。
(ゲル分率の測定方法)
粘着シートから粘着剤層約0.2gを採取し、平均孔径0.2μmの多孔質テトラフルオロエチレンシート(商品名「NTF1122」、日東電工株式会社製)に包んだ後、タコ糸で縛り、その際の質量を測定し、該質量を浸漬前質量とする。なお、当該浸漬前質量は、粘着剤層(上記で採取した粘着剤層)の質量(B)と、テトラフルオロエチレンシートの質量と、凧糸の質量との合計質量である。また、テトラフルオロエチレンシートとタコ糸との合計質量も測定しておき、該質量を包袋質量(A)とする。
次に、粘着剤層をテトラフルオロエチレンシートで包み凧糸で縛ったもの(「サンプル」と称する)を、酢酸エチルで満たした50ml容器に入れ、23℃にて7日間静置する。その後、容器からサンプル(酢酸エチル処理後)を取り出して、アルミニウム製カップに移し、130℃で2時間、乾燥機中で乾燥して酢酸エチルを除去した後、質量を測定し、該質量を浸漬後質量(C)とする。
そして、下記の式からゲル分率を算出する。
ゲル分率[質量%]=100×(C-A)/B
【0025】
本発明の粘着剤層は、室温におけるSUS平面に対する180°剥離粘着力が、5.0N/20mm以上であることが好ましく、より好ましくは5.5N/20mm以上、より好ましくは6.0N/20mm以上である。上記剥離粘着力が5.0N/20mm以上であると、室温付近において屈曲を繰り返し受けた場合であっても粘着シートの剥がれが生じたりしにくく、耐屈曲性に優れる。上記剥離粘着力は、高いほど剥がれが生じにくいが、例えば20.0N/20mm以下である。上記室温は、例えば温度23℃、相対湿度50%RHである環境をいう。
【0026】
本発明の粘着剤層はアクリル系ポリマーを含む粘着剤層である。本発明の粘着剤層は、粘着性を発揮するベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤層であることが好ましい。なお、本明細書において、ベースポリマーとは、粘着剤層を構成する粘着剤におけるポリマー成分の中の主成分、例えば50質量%を超えて含まれるポリマー成分をいうものとする。上記粘着剤層中のベースポリマーの含有割合は、粘着剤層の総量100質量%に対して、60質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上である。
【0027】
本発明の粘着剤層は、炭素数10以上の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを構成単位として含むアクリル系ポリマーと、粘着付与剤とを少なくとも含む。上記アクリル系ポリマーを「本発明のアクリル系ポリマー」と称する場合がある。本発明の粘着剤層は、本発明のアクリル系ポリマーを一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
【0028】
本発明のアクリル系ポリマーは、ポリマーを構成するモノマー成分として、アクリル系モノマー(分子中に(メタ)アクリロイル基を有するモノマー)を含むポリマーである。すなわち、上記アクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーに由来する構成単位を含む。なお、アクリル系ポリマーは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。また、上記アクリル系ポリマーは、モノマー成分としてアクリル系モノマーを一種のみを含んでいてもよいし、二種以上を含んでいてもよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および/または「メタクリル」(「アクリル」および「メタクリル」のうち、いずれか一方または両方)を表し、他も同様である。
【0029】
本発明のアクリル系ポリマーは、上記炭素数10以上の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを構成単位として含む。これにより、本発明の粘着シートは、常温および高温環境下における粘着性を低下させることなく低温環境下における耐屈曲性に優れる。上記炭素数10以上の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0030】
上記炭素数10以上の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどが挙げられる。
【0031】
上記炭素数10以上の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおける上記アルキル基の炭素数は、好ましくは10~18、より好ましくは12~16である。
【0032】
本発明のアクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分における上記炭素数10以上の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、上記全モノマー成分の総量(100質量%)に対して、1質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。また、上記割合は、他のモノマー成分を共重合可能とし当該他のモノマー成分の効果を得る観点から、70質量%以下であってもよく、60質量%以下、50質量%以下、20質量%以下、16質量%以下、10質量%以下であってもよい。
【0033】
本発明のアクリル系ポリマーは、さらに、炭素数1~8の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを構成単位として含むことが好ましい。これにより、本発明の粘着シートは、常温および高温環境下における粘着性により優れる。上記炭素数1~8の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0034】
上記炭素数1~8の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチルなどが挙げられる。
【0035】
上記炭素数1~8以上の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおける上記アルキル基の炭素数は、好ましくは2~8、より好ましくは4~8である。
【0036】
本発明のアクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分における上記炭素数1~8の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、上記全モノマー成分の総量(100質量%)に対して、30質量%以上が好ましく、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。また、上記割合は、他のモノマー成分を共重合可能とし当該他のモノマー成分の効果を得る観点から、99質量%以下であってもよく、96質量%以下、93質量%以下であってもよい。
【0037】
本発明のアクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を質量割合で最も多く含むポリマーであることが好ましい。上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。上記炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。上記炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0038】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、上記炭素数10以上の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして例示されたもの、上記炭素数1~8の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして例示されたもの、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニルなどが挙げられる。
【0039】
上記脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、(メタ)アクリル酸シクロオクチル等の一環式の脂肪族炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸イソボルニル等の二環式の脂肪族炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル;ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート等の三環以上の脂肪族炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0040】
上記芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステルなどが挙げられる。
【0041】
上記炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルによる粘着性等の基本特性を粘着剤層において適切に発現させるためには、上記アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分における上記炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルの割合は、上記全モノマー成分の総量(100質量%)に対して、50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上であってもよい。また、上記割合は、他のモノマー成分を共重合可能とし当該他のモノマー成分の効果を得る観点から、99.9質量%以下であってもよく、98質量%以下、95質量%以下、90質量%以下であってもよい。
【0042】
本発明のアクリル系ポリマーは、凝集力の向上や架橋点の導入等の改質を目的として、上記炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のモノマー成分に由来する構成単位を含んでいてもよい。上記他のモノマー成分としては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、窒素原子含有モノマー等の極性基含有モノマーなどが挙げられる。上記他のモノマー成分は、それぞれ、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0043】
上記ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0044】
上記窒素原子含有モノマーとしては、例えば、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマーなどが挙げられる。上記アミド基含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。上記アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。上記シアノ基含有モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられる。上記窒素原子含有環を有するモノマーとしては、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-ビニルモルホリン、N-ビニルカプロラクタム、N-(メタ)アクリロイルモルホリンなどが挙げられる。
【0045】
上記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などが挙げられる。上記酸無水物モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
【0046】
上記ケト基含有モノマーとしては、例えば、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレート、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、アリルアセトアセテート、ビニルアセトアセテートなどが挙げられる。
【0047】
上記アルコキシシリル基含有モノマーとしては、例えば、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0048】
上記グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどが挙げられる。
【0049】
上記スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などが挙げられる。
【0050】
上記リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどが挙げられる。
【0051】
本発明のアクリル系ポリマーを構成する上記極性基含有モノマーとしてヒドロキシ基含有モノマーおよび/または窒素原子含有モノマーを含むことが好ましい。このような極性基含有モノマーを用いることで、粘着剤の凝集力や極性を調整し、常温や高温環境下における粘着性を向上させ得る。
【0052】
本発明のアクリル系ポリマーが、ポリマーを構成するモノマー成分として上記ヒドロキシ基含有モノマーを含有する場合、上記全モノマー成分(100質量%)中の、上記ヒドロキシ基含有モノマーの割合は、特に限定されないが、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。また、上記ヒドロキシ基含有モノマーの割合は、常温環境下での粘着性や低温環境下における柔軟性向上の観点から、30質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下であり、3質量%以下であってもよい。
【0053】
本発明のアクリル系ポリマーが、ポリマーを構成するモノマー成分として上記窒素原子含有モノマーを含有する場合、上記全モノマー成分(100質量%)中の、上記窒素原子含有モノマーの割合は、特に限定されないが、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。また、上記窒素原子含有モノマーの割合は、常温環境下での粘着性や低温環境下における柔軟性向上の観点から、20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。
【0054】
本発明のアクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分(100質量%)中の、上記極性基含有モノマー(特に、上記窒素原子含有モノマーおよび上記ヒドロキシ基含有モノマーの合計)の割合の合計は、特に限定されないが、極性基含有モノマーの使用による効果をよりよく発揮する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは1質量%以上である。また、上記割合の合計は、適度な柔軟性を有する粘着剤層を得る観点から、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。
【0055】
本発明のアクリル系ポリマーを構成するモノマー成分としては、さらに、その他のモノマーを含んでいてもよい。上記その他のモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;スチレン、置換スチレン(α-メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有モノマー;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマーなどが挙げられる。上記その他のモノマー成分は、それぞれ、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0056】
上記アルコキシ基含有モノマーとしては、上記炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルにおける炭化水素基中の1以上の水素原子をアルコキシ基に置換したものが挙げられ、例えば、メトキシメチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート(エチルカルビトール(メタ)アクリレート)等のアルコキシ基を有する炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0057】
本発明のアクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分の総量100質量%中の、上記その他のモノマーの割合は、例えば、0.05質量%以上、0.5質量%以上、5質量%以上、10質量%以上であってもよい。上記割合は、例えば、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下であってもよく、実質的に含まなくてもよい。
【0058】
本発明のアクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、10×104以上であることが好ましく、より好ましくは60×104以上、さらに好ましくは100×104以上である。上記Mwが10×104以上であると、良好な凝集性を示す粘着剤が得られやすい。また、上記Mwは500×104以下であることが好ましく、より好ましくは400×104以下、さらに好ましくは300×104以下である。上記Mwが500×104以下であると、適度な流動性(ポリマー鎖の運動性)を示す粘着剤を形成しやすいことから、耐屈曲性により優れる。上記重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)によって測定 してポリスチレン換算により算出される。
【0059】
本発明のアクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、0℃以下が好ましく、好ましくは-10℃以下、より好ましくは-20℃以下である。上記ガラス転移温度が0℃以下であると、低温環境下において屈曲を繰り返し受けた場合であっても、屈曲箇所に折れや痕がついたり、粘着シートの剥がれが生じたりしにくい。上記ガラス転移温度は、-80℃以上が好ましく、より好ましく-70℃以上、さらに好ましくは-66℃以上である。
【0060】
上記ガラス転移温度は、下記式(X)(Fox式)に基づいて計算された値である。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn (X)
[式(X)中、Tgはポリマーのガラス転移温度(単位:K)、Tgi(i=1、2、・・・n)はモノマーiがホモポリマーを形成した際のガラス転移温度(単位:K)、Wi(i=1、2、・・・n)はモノマーiの全モノマー成分中の質量分率を表す。]
上記式(X)は、ポリマーが、モノマー1、モノマー2、・・・、モノマーnのn種類のモノマー成分から構成される場合の計算式である。
【0061】
なお、本明細書における「ホモポリマーを形成した際のガラス転移温度(Tg)」(単に「ホモポリマーのTg」と称する場合がある)とは、「当該モノマーの単独重合体のガラス転移温度(Tg)」を意味し、具体的には、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley&Sons,Inc、1987年)に数値が挙げられている。なお、上記文献に記載されていないモノマーのホモポリマーのTgは、ポリオルガノシロキサン骨格を有するモノマー以外は、例えば、以下の測定方法により得られる値(特開2007-51271号公報参照)をいう。すなわち、温度計、撹拌機、窒素導入管、および還流冷却管を備えた反応器に、モノマー100質量部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部および重合溶媒として酢酸エチル200質量部を投入し、窒素ガスを導入しながら1時間撹拌する。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し10時間反応させる。次いで、室温まで冷却し、固形分濃度33質量%のホモポリマー溶液を得る。次いで、このホモポリマー溶液をはく離ライナー上に流延塗布し、乾燥して厚さ約2mmの試験サンプル(シート状のホモポリマー)を作製する。そして、この試験サンプルを直径7.9mmの円盤状に打ち抜き、パラレルプレートで挟み込み、粘弾性試験機(商品名「ARES」、レオメトリックス社製)を用いて周波数1Hzのせん断歪を与えながら、温度領域-70~150℃、5℃/分の昇温速度でせん断モードにより粘弾性を測定し、tanδのピークトップ温度をホモポリマーのTgとする。
【0062】
本発明のアクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーを少なくとも含む組成物を重合することにより得られる。これらの重合方法としては、特に限定されないが、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合方法、熱重合方法、活性エネルギー線照射による重合方法(活性エネルギー線重合方法)などが挙げられる。中でも、粘着剤層の透明性、コストなどの点より、塊状重合方法、熱重合方法、活性エネルギー線重合方法が好ましい。また、得られるアクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれであってもよい。
【0063】
モノマー成分の重合に際しては、各種の一般的な溶剤が用いられてもよい。上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。上記溶剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0064】
モノマー成分のラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などは特に限定されず適宜選択して使用することができる。なお、ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件により制御可能であり、これらの種類に応じて適宜のその使用量が調整される。
【0065】
モノマー成分の重合に用いられる重合開始剤としては、重合反応の種類に応じて、熱重合開始剤や光重合開始剤(光開始剤)などが使用可能である。上記重合開始剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0066】
上記熱重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルマレエート、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、ベンゾイルパーオキサイド、過酸化水素等)、フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤、芳香族カルボニル化合物、レドックス系重合開始剤等が挙げられる。中でも、特開2002-69411号公報に開示されたアゾ系重合開始剤が好ましい。上記アゾ系重合開始剤としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリアン酸などが挙げられる。熱重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、モノマー成分100質量部に対して例えば0.01~5質量部、好ましくは0.05~3質量部の範囲から選択することができる。
【0067】
上記光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などが挙げられる。他にも、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤が挙げられる。上記ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。上記アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-(t-ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。上記α-ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オンなどが挙げられる。上記芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2-ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。上記光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1-フェニル-1,1-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)-オキシムなどが挙げられる。上記ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインなどが挙げられる。上記ベンジル系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルなどが挙げられる。上記ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。上記ケタール系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。上記チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが挙げられる。上記アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。上記チタノセン系光重合開始剤としては、例えば、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウムなどが挙げられる。光重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、モノマー成分100質量部に対して例えば0.01~5質量部、好ましくは0.05~3質量部の範囲から選択することができる。
【0068】
本発明のアクリル系ポリマーは、上記架橋剤に由来する構造部を含んでいてもよい。すなわち、本発明のアクリル系ポリマーは、上記架橋剤により架橋したものであってもよい。架橋剤を用いることにより、アクリル系粘着剤層におけるアクリル系ポリマー中に架橋構造を形成し、ゲル分率をコントロールすることができる。上記架橋剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0069】
上記架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、シリコーン系架橋剤、シラン系架橋剤(シランカップリング剤)などが挙げられる。
【0070】
上記架橋剤の含有量は、特に限定されないが、本発明のアクリル系ポリマーを構成するモノマー成分の総量100質量部に対して、0.001~20質量部が好ましく、より好ましくは0.01~15質量部、さらに好ましくは0.15~5質量部、さらに好ましくは0.1~3質量部、特に好ましくは0.2~2質量部である。
【0071】
上記イソシアネート系架橋剤は、1分子あたり平均2個以上のイソシアネート基を有する化合物(多官能イソシアネート化合物)である。上記イソシアネート系架橋剤としては、脂肪族ポリイソシアネート類、脂環族ポリイソシアネート類、芳香族ポリイソシアネート類等が挙げられる。
【0072】
上記脂肪族ポリイソシアネート類としては、例えば、1,2-エチレンジイソシアネート;1,2-テトラメチレンジイソシアネート、1,3-テトラメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート等のテトラメチレンジイソシアネート;1,2-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,5-ヘキサメチレンジイソシアネート等のヘキサメチレンジイソシアネート;2-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0073】
上記脂環族ポリイソシアネート類としては、例えば、イソホロンジイソシアネート;1,2-シクロヘキシルジイソシアネート、1,3-シクロヘキシルジイソシアネート、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート等のシクロヘキシルジイソシアネート;1,2-シクロペンチルジイソシアネート、1,3-シクロペンチルジイソシアネート等のシクロペンチルジイソシアネート;水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0074】
上記芳香族ポリイソシアネート類としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、キシリレン-1,4-ジイソシアネート、キシリレン-1,3-ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0075】
また、上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(商品名「コロネートL」、東ソー株式会社製)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物(商品名「コロネートHL」、東ソー株式会社製)、トリメチロールプロパン/キシリレンジイソシアネート付加物(商品名「タケネートD-110N」、三井化学株式会社製)などの市販品も挙げられる。
【0076】
なお、乳化重合にて作製した変性アクリル系ポリマーの水分散液では、イソシアネート系架橋剤を用いなくてもよいが、必要な場合には、水と反応し易いために、ブロック化したイソシアネート系架橋剤を用いることもできる。
【0077】
上記架橋剤としてイソシアネート系架橋剤を用いる場合の上記イソシアネート系架橋剤の含有量は、特に限定されないが、本発明のアクリル系ポリマーを構成するモノマー成分の総量100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、より好ましくは0.02質量部以上である。上記含有量は、1質量部以下が好ましく、より好ましくは0.5質量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以下、さらに好ましくは0.2質量部以下、特に好ましくは0.1質量部以下である。
【0078】
上記エポキシ系架橋剤(多官能エポキシ化合物)としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール-S-ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。また、上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、商品名「テトラッドC」(三菱ガス化学株式会社製)などの市販品も挙げられる。
【0079】
上記架橋剤としてエポキシ系架橋剤を用いる場合の上記エポキシ系架橋剤の含有量は、特に限定されないが、本発明のアクリル系ポリマーを構成するモノマー成分の総量100質量部に対して、0質量部を超えて1質量部以下が好ましく、より好ましくは0.001~0.5質量部、さらに好ましくは0.002~0.2質量部、さらに好ましくは0.005~0.1質量部、さらに好ましくは0.008~0.1質量部、特に好ましくは0.009~0.05質量部である。
【0080】
上記過酸化物系架橋剤としては、熱によりラジカル活性種を発生してベースポリマーの架橋を進行させるものであれば適宜使用可能であるが、作業性や安定性を勘案して、1分間半減期温度が80~160℃である過酸化物を使用することが好ましく、90~140℃である過酸化物を使用することがより好ましい。
【0081】
上記過酸化物系架橋剤としては、例えば、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:90.6℃)、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.4℃)、t-ブチルパーオキシネオデカノエート(1分間半減期温度:103.5℃)、t-ヘキシルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:109.1℃)、t-ブチルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:110.3℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジ-n-オクタノイルパーオキシド(1分間半減期温度:117.4℃)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(1分間半減期温度:124.3℃)、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキシド(1分間半減期温度:128.2℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)、t-ブチルパーオキシイソブチレート(1分間半減期温度:136.1℃)、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(1分間半減期温度:149.2℃)などが挙げられる。
【0082】
上記過酸化物系架橋剤の半減期とは、過酸化物の分解速度を表す指標であり、過酸化物の残存量が半分になるまでの時間をいう。任意の時間で半減期を得るための分解温度や、任意の温度での半減期時間に関しては、メーカーカタログなどに記載されており、例えば、日油株式会社の「有機過酸化物カタログ第9版(2003年5月)」などに記載されている。なお、反応処理後の残存した過酸化物分解量の測定方法としては、例えば、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により測定することができる。より具体的には、例えば、反応処理後の粘着剤を約0.2gずつ取り出し、酢酸エチル10mlに浸漬し、振とう機で25℃下、120rpmで3時間振とう抽出した後、室温で3日間静置する。次いで、アセトニトリル10ml加えて、25℃下、120rpmで30分振とうし、メンブランフィルター(0.45μm)によりろ過して得られた抽出液約10μlをHPLCに注入して分析し、反応処理後の過酸化物量とすることができる。
【0083】
上記架橋剤として過酸化物系架橋剤を用いる場合の上記架橋剤の含有量は、特に限定されないが、本発明のアクリル系ポリマーを構成するモノマー成分の総量100質量部に対して、2質量部以下が好ましく、より好ましくは0.02~2質量部、さらに好ましくは0.05~1.5質量部、さらに好ましくは0.05~1質量部、特に好ましくは0.1~1質量部である。
【0084】
また、上記架橋剤として、有機系架橋剤や多官能性金属キレートを併用してもよい。多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合または配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Tiなどが挙げられる。共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子などが挙げられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物などが挙げられる。
【0085】
上記架橋剤としては、中でも、イソシアネート系架橋剤を含むことが好ましい。また、イソシアネート系架橋剤と共に他の架橋剤を含むことがより好ましい。上記他の架橋剤としては、過酸化物系架橋剤が好ましい。このような架橋剤を用いると、本発明のアクリル系ポリマーにより、薄くてもより密着性に優れた粘着剤層とすることができる。
【0086】
本発明の粘着剤層は、粘着付与剤を含有する。本発明の粘着剤層が、本発明のアクリル系ポリマーと粘着付与剤とを含むことにより、被着体との密着性に優れ、屈曲を繰り返し受けた場合であっても低温環境下において剥がれにくく、耐屈曲性に優れる。上記粘着付与剤は、一種のみを使用してもよく、二種以上を使用してもよい。
【0087】
上記粘着付与剤としては、粘着付与樹脂およびオリゴマーが挙げられる。上記オリゴマーは、本発明の粘着剤層中において、オリゴマーとして存在していてもよく、上記オリゴマーに由来する構造部として本発明のアクリル系ポリマー中に存在していてもよい。すなわち、本発明のアクリル系ポリマーは、上記オリゴマーに由来する構造部を有していてもよい。
【0088】
上記粘着付与樹脂としては、例えば、フェノール系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、ロジン系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂などが挙げられる。上記粘着付与樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0089】
上記フェノール系粘着付与樹脂としては、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジンフェノール樹脂が挙げられる。上記テルペンフェノール樹脂は、テルペン残基およびフェノール残基を含むポリマーであり、テルペン類とフェノール化合物との共重合体(テルペン-フェノール共重合体樹脂)、テルペン類の単独重合体または共重合体をフェノール変性したもの(フェノール変性テルペン樹脂)が挙げられる。上記テルペンフェノール樹脂を構成するテルペン類としては、α-ピネン、β-ピネン、リモネン(d体、l体、d/l体(ジペンテン)等)等のモノテルペン類が挙げられる。上記水素添加テルペンフェノール樹脂は、上記テルペンフェノール樹脂を水素化した構造を有する樹脂である。上記アルキルフェノール樹脂は、アルキルフェノールとホルムアルデヒドから得られる樹脂(油性フェノール樹脂)である。上記アルキルフェノール樹脂としては、例えば、ノボラックタイプおよびレゾールタイプのものが挙げられる。上記ロジンフェノール樹脂は、ロジン類または後述の各種ロジン誘導体のフェノール変性物である。上記ロジンフェノール樹脂としては、例えば、ロジン類または後述の各種ロジン誘導体にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合する方法等により得られる。
【0090】
上記テルペン系粘着付与樹脂としては、α-ピネン、β-ピネン、d-リモネン、l-リモネン、ジペンテン等のテルペン類(典型的にはモノテルペン類)の重合体が挙げられる。上記テルペン類の重合体は、一種のテルペン類の単独重合体であってもよく、二種以上のテルペン類の共重合体であってもよい。一種のテルペン類の単独重合体としては、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体などが挙げられる。上記変性テルペン系粘着付与樹脂は、上記テルペン樹脂を変性したもの(変性テルペン樹脂)である。上記変性テルペン樹脂としては、スチレン変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂などが挙げられる。
【0091】
上記ロジン系粘着付与樹脂としては、ロジン類およびロジン誘導体樹脂が挙げられる。上記ロジン類としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン);これらの未変性ロジンを水素添加、不均化、重合等により変性した変性ロジン(水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等)などが挙げられる。上記ロジン誘導体樹脂としては、上記ロジン類の誘導体が挙げられる。上記ロジン誘導体樹脂としては、例えば、未変性ロジンとアルコール類とのエステルである未変性ロジンエステルや、変性ロジンとアルコール類とのエステルである変性ロジンエステル等のロジンエステル類;ロジン類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;ロジン類または上記の各種ロジン誘導体のカルボキシ基を還元処理したロジンアルコール類;ロジン類または上記の各種ロジン誘導体の金属塩などが挙げられる。上記ロジンエステル類の具体例としては、未変性ロジンまたは変性ロジンのメチルエステル、トリエチレングリコールエステル、グリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステルなどが挙げられる。
【0092】
上記炭化水素系粘着付与樹脂としては、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂(スチレン-オレフィン系共重合体等)、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂などが挙げられる。
【0093】
上記粘着付与樹脂の軟化点は、160℃以下が好ましく、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは140℃以下である。上記軟化点が低いと、少量添加において弾性率を低く維持することができ、低温環境下において耐屈曲性によりいっそう優れる。上記軟化点は、例えば60℃以上、好ましくは70℃以上である。
【0094】
上記オリゴマーの重量平均分子量は、2500~10000であることが好ましく、より好ましくは3000~8000である。なお、上記重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算して求めることができる。例えば、東ソー株式会社製の高速GPC装置「HPLC-8120GPC」を用いて、下記の条件により測定することができる。
カラム:TSKgel SuperHZM-H/HZ4000/HZ3000/HZ2000
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.6ml/分
【0095】
上記オリゴマーは、アクリル系モノマーを必須のモノマー成分として構成されるアクリル系オリゴマーが好ましい。上記アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分であるアクリル系モノマーとしては、本発明のアクリル系ポリマーを構成するモノマー成分として例示および説明されたものが挙げられる。上記アクリル系オリゴマーは、構成単位として脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましい。上記構成単位として含まれるアクリル系モノマーは、一種のみであってもよく二種以上であってもよい。
【0096】
上記アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分の総量100質量%中の、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルの割合は、40質量%以上であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは55質量%以上である。上記割合は、99質量%以下が好ましく、97質量%以下であってもよい。
【0097】
上記アクリル系オリゴマーは、一実施形態として、構成単位として(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル(MMA)が好ましい。上記アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分中の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上である。上記割合は、60質量%以下が好ましく、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下である。また、上記アクリル系オリゴマーは、構成単位として上記共重合性モノマーを含んでいてもよい。
【0098】
上記アクリル系オリゴマーは、一実施形態として、構成単位として官能基含有モノマーを含むことが好ましい。官能基含有モノマーとしては、極性基含有モノマーが好ましく、より好ましくはカルボキシ基含有モノマーである。上記アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分中の官能基含有モノマーの割合は、3質量%以上であることが好ましく、より好ましくは4質量%以上である。上記割合は、20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。また、上記アクリル系オリゴマーは、構成単位として上記共重合性モノマーを含んでいてもよい。
【0099】
上記オリゴマーは、上記オリゴマーを構成するモノマー成分を含む組成物を重合することにより得られる。これらの重合方法としては、上述のアクリル系ポリマーの重合方法として例示および説明されたものが挙げられる。中でも、塊状重合方法、熱重合方法、活性エネルギー線重合方法が好ましい。モノマー成分の重合に際しては、各種の一般的な溶剤が用いられてもよい。上記溶剤としては、上述のアクリル系ポリマーの重合に使用してもよい溶剤として例示および説明されたものが挙げられる。上記溶剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。モノマー成分のラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などは特に限定されず適宜選択して使用することができる。
【0100】
本発明の粘着剤層中の上記粘着付与剤の含有量は、特に限定されないが、本発明のアクリル系ポリマーの総量100質量部に対して、例えば0.6質量部以上であり、好ましくは2質量部以上である。上記含有量が0.6質量部以上であると、低温環境下において繰り返し屈曲を受けた場合であっても剥がれが生じにくい。上記含有量は、低温においても繰り返し屈曲を受けた場合であっても剥がれが生じにくい観点から、30質量部未満が好ましく、より好ましくは25質量部以下である。
【0101】
本発明の粘着剤層中の上記粘着付与剤の含有割合は、特に限定されないが、本発明の粘着剤層の総量100質量%に対して、0質量%を超え22質量%以下が好ましく、より好ましくは1~16質量%である。上記含有割合が上記範囲内であると、低温環境下において繰り返し屈曲を受けた場合であっても剥がれが生じにくい。
【0102】
本発明の粘着剤層は、着色剤を含有していてもよい。上記着色剤は、顔料であってもよいし、染料であってもよい。着色剤としては、例えば、黒系着色剤、シアン系着色剤、マゼンダ系着色剤、イエロー系着色剤等が挙げられる。視認性および意匠性により優れる観点からは、黒系着色剤が好ましい。上記着色剤は、一種のみを含有していてもよいし、二種以上を含有していてもよい。
【0103】
黒系着色剤としては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト(黒鉛)、酸化銅、二酸化マンガン、アゾメチンアゾブラック等のアゾ系顔料、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、活性炭、フェライト、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブデン、複合酸化物系黒色色素、アントラキノン系有機黒色染料、アゾ系有機黒色染料等が挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられる。黒系着色剤としては、C.I.ソルベントブラック3、同7、同22、同27、同29、同34、同43、同70;C.I.ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、同71;C.I.アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、同48、同52、同107、同109、同110、同119、同154;C.I.ディスパーズブラック1、同3、同10、同24;C.I.ピグメントブラック1、同7なども挙げられる。
【0104】
シアン系着色剤としては、例えば、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95;C.I.アシッドブルー6、同45;C.I.ピグメントブルー1、同2、同3、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:5、同15:6、同16、同17、同17:1、同18、同22、同25、同56、同60、同63、同65、同66;C.I.バットブルー4;同60、C.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
【0105】
マゼンダ系着色剤としては、例えば、C.I.ソルベントレッド1、同3、同8、同23、同24、同25、同27、同30、同49、同52、同58、同63、同81、同82、同83、同84、同100、同109、同111、同121、同122;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、同13、同14、同21、同27;C.I.ディスパースバイオレット1;C.I.ベーシックレッド1、同2、同9、同12、同13、同14、同15、同17、同18、同22、同23、同24、同27、同29、同32、同34、同35、同36、同37、同38、同39、同40;C.I.ベーシックバイオレット1、同3、同7、同10、同14、同15、同21、同25、同26、同27、28などが挙げられる。また、マゼンダ系着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同8、同9、同10、同11、同12、同13、同14、同15、同16、同17、同18、同19、同21、同22、同23、同30、同31、同32、同37、同38、同39、同40、同41、同42、同48:1、同48:2、同48:3、同48:4、同49、同49:1、同50、同51、同52、同52:2、同53:1、同54、同55、同56、同57:1、同58、同60、同60:1、同63、同63:1、同63:2、同64、同64:1、同67、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同92、同101、同104、同105、同106、同108、同112、同114、同122、同123、同139、同144、同146、同147、同149、同150、同151、同163、同166、同168、同170、同171、同172、同175、同176、同177、同178、同179、同184、同185、同187、同190、同193、同202、同206、同207、同209、同219、同222、同224、同238、同245;C.I.ピグメントバイオレット3、同9、同19、同23、同31、同32、同33、同36、同38、同43、同50;C.I.バットレッド1、同2、同10、同13、同15、同23、同29、同35などが挙げられる。
【0106】
イエロー系着色剤としては、例えば、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162;C.I.ピグメントオレンジ31、同43;C.I.ピグメントイエロー1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同10、同11、同12、同13、同14、同15、同16、同17、同23、同24、同34、同35、同37、同42、同53、同55、同65、同73、同74、同75、同81、同83、同93、同94、同95、同97、同98、同100、同101、同104、同108、同109、同110、同113、同114、同116、同117、同120、同128、同129、同133、同138、同139、同147、同150、同151、同153、同154、同155、同156、同167、同172、同173、同180、同185、同195;C.I.バットイエロー1、同3、同20などが挙げられる。
【0107】
本発明の粘着剤層は、必要に応じて、さらに、架橋促進剤、老化防止剤、酸化防止剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤、表面潤滑剤、レベリング剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、箔状物、防錆剤などの添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含有していてもよい。上記添加剤は、それぞれ、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0108】
上記防錆剤は、金属の錆(さび)や腐食を防ぐ化合物である。被着体が金属である場合、上記粘着シートを貼り合わせた際の錆や腐食を抑制することができる。上記防錆剤としては、例えば、アミン化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、亜硝酸塩類などが挙げられる。他にも、安息香酸アンモニウム、フタル酸アンモニウム、ステアリン酸アンモニウム、パルミチン酸アンモニウム、オレイン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、ジシクロヘキシルアミン安息香酸塩、尿素、ウロトロピン、チオ尿素、カルバミン酸フェニル、シクロヘキシルアンモニウム-N-シクロヘキシルカルバメート(CHC)などが挙げられる。上記防錆剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0109】
上記防錆剤の含有量は、特に限定されないが、ベースポリマー100質量部に対して、0.02~15質量部であることが好ましい。上記含有量が0.02質量部以上であると、良好な腐食防止性能が得やすくなる。上記含有量が15質量部以下であると、透明性を確保しやすくなる。
【0110】
中でも、上記防錆剤は、ベースポリマーに対する相溶性、接着信頼性、透明性、および腐食防止性の特性を、バランスよく高いレベルで得ることができる点、優れた外観性を得ることができる点より、ベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。
【0111】
ベンゾトリアゾール系化合物の含有量は、特に限定されないが、ベースポリマー100質量部に対して、0.02~3質量部であることが好ましく、より好ましくは0.02~2.5質量部、さらに好ましくは0.02~2質量部である。
【0112】
本発明の粘着剤層の厚さは、50μm以下であることが好ましく、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。上記厚さが50μm以下であると、屈曲を受けた際の内外径差が小さくなり、屈曲時に加わる応力を緩和させやすい。上記厚さは、特に限定されないが、粘着性により優れ屈曲を受けた際に剥がれが生じにくい観点から、6μm以上が好ましく、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上である。
【0113】
本発明の粘着シートが基材付き両面粘着シートである場合、片面の粘着剤層の総厚さは、特に限定されないが、6μm以上が好ましく、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上である。上記厚さが6μm以上であると、粘着性により優れ屈曲を受けた際に剥がれが生じにくい。上記片面の粘着剤層の総厚さは、50μm以下であることが好ましく、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。上記厚さが50μm以下であると、屈曲を受けた際の内外径差が小さくなり、屈曲時に加わる応力を緩和させやすい。なお、基材付き両面粘着シートである場合の両面の粘着剤層の厚さは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0114】
本発明の粘着シートを構成する粘着剤層は、いずれの形態であってもよく、例えば、エマルジョン型、溶剤型(溶液型)、活性エネルギー線硬化型、熱溶融型(ホットメルト型)などであってもよい。中でも、生産性に優れる粘着剤層が得やすい点より、溶剤型、活性エネルギー線硬化型の粘着剤層が好ましい。
【0115】
上記活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に、紫外線が好ましい。すなわち、上記活性エネルギー線硬化型粘着剤層は紫外線硬化型粘着剤層が好ましい。
【0116】
上記粘着剤層は、例えば、粘着剤層を形成するための粘着剤組成物をはく離ライナー上に塗布(塗工)し、得られた粘着剤組成物層を乾燥硬化させることや、上記粘着剤組成物をはく離ライナー上に塗布(塗工)し、得られた粘着剤組成物層に活性エネルギー線を照射して硬化させて製造することができる。また、必要に応じて、さらに、加熱乾燥してもよい。
【0117】
(基材)
上記基材は、粘着シートにおいて支持体として機能する要素である。上記基材は、単層であってもよいし、同種または異種の基材の積層体であってもよい。
【0118】
上記基材としては、例えば、プラスチック基材(例えばプラスチックフィルム)、紙、布、不織布等の多孔質材料、ネット、発泡シートなどが挙げられる。上記基材としては、プラスチック基材(特にプラスチックフィルム)が好ましい。また、上記基材は非発泡シートであることが好ましい。
【0119】
上記プラスチック基材を構成する樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ゴム系樹脂(天然ゴム系、合成ゴム系、これらの混合系等):ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリイミド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルイミド;アラミド、全芳香族ポリアミド等のポリアミド;ポリフェニルスルフィド;フッ素樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;セルロース樹脂;シリコーン樹脂などが挙げられる。上記樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0120】
上記基材は、充填剤(無機充填剤、有機充填剤等)、着色剤(顔料や染料)、分散剤(界面活性剤等)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤等の各種添加剤が配合されていてもよい。各種添加剤の配合割合は、上記基材の総質量100質量%に対して、30質量%未満(例えば20質量%未満、典型的には10質量%未満)程度である。
【0121】
上記基材は、補助的な層を含むものであってもよい。上記補助的な層の例としては、上記基材の表面に設けられた着色層、反射層、下塗り層、帯電防止層などが挙げられる。
【0122】
上記基材表面は、粘着剤層との密着性、保持性等を高める目的で、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、サンドマット加工処理、オゾン暴露処理、火炎暴露処理、高圧電撃暴露処理、イオン化放射線処理等の物理的処理;クロム酸処理等の化学的処理;コーティング剤(下塗り剤)による易接着処理等の表面処理が施されていてもよい。密着性を高めるための表面処理は、基材の表面全体に施されていることが好ましい。
【0123】
(粘着シート)
上記粘着シートの厚さは、6~100μmであることが好ましく、より好ましくは100~80μm、さらに好ましくは20~70μmである。上記厚さが6μm以上であると、粘着性により優れ屈曲を受けた際に剥がれが生じにくい。上記厚さが100μm以下であると、屈曲を受けた際の内外径差が小さくなり、屈曲時に加わる応力を緩和させやすい。なお、上記粘着シートの厚さは、片面粘着シートの場合は粘着剤層が形成されていない基材表面から粘着面までの厚さ、両面粘着シートの場合は一方の粘着面から他方の粘着面までの厚さ、すなわち粘着体の厚さをいい、はく離ライナーを含まない。
【0124】
本発明の粘着シートは、使用時まで、粘着剤層の表面(粘着面)にはく離ライナーが貼り合わせられていてもよい。上記粘着シートが両面粘着シートである場合、上記粘着シートにおける両面の各粘着面は、2枚のはく離ライナーによりそれぞれ保護されていてもよいし、両面が剥離面となっているはく離ライナー1枚により、ロール状に巻回される形態(巻回体)で保護されていてもよい。はく離ライナーは粘着剤層の保護材として用いられ、被着体に貼付する際に剥がされる。なお、はく離ライナーは必ずしも設けられなくてもよい。
【0125】
上記はく離ライナーとしては、慣用の剥離紙などを使用でき、特に限定されないが、例えば、剥離処理層を有する基材、フッ素ポリマーからなる低接着性基材や無極性ポリマーからなる低接着性基材などが挙げられる。上記剥離処理層を有する基材としては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙などが挙げられる。上記フッ素ポリマーからなる低接着性基材におけるフッ素系ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン-フッ化ビニリデン共重合体などが挙げられる。また、上記無極性ポリマーとしては、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)などが挙げられる。なお、はく離ライナーは公知乃至慣用の方法により形成することができる。また、はく離ライナーの厚さも特に限定されない。
【0126】
上記粘着シートは、電気電子機器に備えられる部材に貼り合わせて使用される、電気電子部材貼付用であることが好ましい。上記粘着シートは、特に、両面粘着シートの両方の粘着面にそれぞれ、電気電子機器に備えられる部品を貼り合わせて使用される用途、すなわち電気電子機器における部材同士の固定用の両面粘着シートであることが好ましい。上記両面粘着シートは、上記部材同士を固定する用途、あるいは仮固定する用途のいずれに使用されるものであってもよい。
【0127】
なお、「電気電子機器」とは、電気機器または電子機器の少なくともいずれかに該当する機器をいう。上記電気電子機器としては、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ等の画像表示装置や、携帯電子機器などが挙げられる。
【0128】
上記携帯電子機器としては、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン、ノート型パソコン、各種ウェアラブル機器(例えば、腕時計のように手首に装着するリストウェア型、クリップやストラップ等で体の一部に装着するモジュラー型、メガネ型(単眼型や両眼型。ヘッドマウント型も含む。)を包含するアイウェア型、シャツや靴下、帽子等に例えばアクセサリの形態で取り付ける衣服型、イヤホンのように耳に取り付けるイヤウェア型等)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、音響機器(携帯音楽プレーヤー、ICレコーダー等)、計算機(電卓等)、携帯ゲーム機器、電子辞書、電子手帳、電子書籍、車載用情報機器、携帯ラジオ、携帯テレビ、携帯プリンター、携帯スキャナ、携帯モデムなどが挙げられる。なお、本明細書において「携帯」とは、単に携帯することが可能であるだけでは充分ではなく、個人(標準的な成人)が相対的に容易に持ち運び可能なレベルの携帯性を有することを意味するものとする。上記両面粘着シートは、例えば、粘着剤層が上記携帯電子機器の部材に密着するように用いられる。
【0129】
本発明の粘着シートは、低温環境下において耐屈曲性に優れる。このため、低温環境下において、屈曲が繰り返し行われる箇所に使用された場合であっても、屈曲箇所に折れや痕がついたり、粘着シートの剥がれが生じたりしにくい。また、常温および高温環境下においては被着体に対する粘着性に優れる。このため、本発明の粘着シートは、繰り返し折り曲げて使用される部位に用いられることが好ましい。したがって、本発明の粘着シートは、折り曲げて使用される電気電子機器、例えば、折り曲げ可能な画像表示装置(フレキシブルディスプレイ)(特に、折り畳み可能な画像表示装置(フォルダブルディスプレイ))を有する電気電子機器における部材(特に、部材間)の貼り合わせに好ましくに用いられる。
【実施例0130】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0131】
調製例1
(アクリル系ポリマーAの調製)
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、および滴下ロートを備えた反応容器に、モノマー成分としてのアクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)70質量部、アクリル酸n-ブチル(BA)20質量部、ラウリルアクリレート(LA)8質量部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル(4HBA)1質量部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)0.6質量部と、熱重合開始剤としての2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1質量部と、重合溶媒としての酢酸エチルとを含む混合物(固形分濃度47質量%)を、56℃で6時間、窒素雰囲気下で撹拌した(重合反応)。これにより、アクリル系ポリマーAを含有するポリマー溶液を得た。このポリマー溶液中のアクリル系ポリマーAの重量平均分子量は約200万、ガラス転移温度は-63℃であった。
【0132】
調製例2
(アクリル系ポリマーBの調製)
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、および滴下ロートを備えた反応容器に、モノマー成分としての2EHA95質量部およびAA5質量部と、重合溶媒としての酢酸エチル199質量部とを仕込み、窒素ガスを導入しながら2時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、重合開始剤として0.2質量部のベンゾイルパーオキサイドを加え、60℃で6時間溶液重合してアクリル系ポリマーBの溶液を得た。このアクリル系ポリマーBのMwは約120×104であった。
【0133】
調製例3
(オリゴマーAの調製)
モノマー成分としてメタクリル酸ジシクロペンタニル60質量部およびメタクリル酸40質量部、連鎖移動剤としてα-チオグリセロール3.5質量部、および重合溶媒としてトルエン100質量部を混合し、窒素雰囲気下にて70℃で1時間撹拌した。次に、熱重合開始剤としてAIBN0.2質量部を投入し、70℃で2時間反応させた後、80℃に昇温して2時間反応させた。その後、反応液を130℃に加熱して、トルエン、連鎖移動剤、および未反応モノマーを乾燥除去して、固形状のアクリルオリゴマー(オリゴマーA)を得た。オリゴマーAの重量平均分子量は5100であった。
【0134】
調製例4
(オリゴマーBの調製)
モノマー成分としてメタクリル酸シクロヘキシル95質量部、AA5質量部、連鎖移動剤としてα-メチルスチレンダイマー10質量部、重合開始剤としてAIBN10質量部、および重合溶媒としてトルエン120質量部を混合し、窒素雰囲気下にて85℃で5時間反応させて、固形分濃度50質量%のオリゴマーBの溶液を得た。オリゴマーBの重量平均分子量は4300であった。
【0135】
実施例1
(粘着剤組成物の作製)
調製例1で調製したアクリル系ポリマーAの溶液に、アクリル系ポリマーA100質量部に対して、粘着付与剤として調製例3で調製したオリゴマーAを3質量部と、架橋剤Aとしてジベンゾイルパーオキサイド(商品名「ナイパーBMT-40SV」、日油株式会社製)0.26質量部および架橋剤Bとしてイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、東ソー株式会社製)0.03質量部とを加え、撹拌混合して粘着剤組成物を調製した。
【0136】
(粘着シートの作製)
上記粘着剤組成物を、片面をシリコーンで剥離処理した厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「ダイアホイルMRF」、三菱ケミカル株式会社製)の剥離処理層上に、粘着剤層の厚さが25μmになるように塗布し、150℃で3分間乾燥させて粘着剤層を形成し、片面をシリコーンで剥離処理した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「ダイアホイルMRF」、三菱ケミカル株式会社製)の剥離処理層を上記粘着剤層に重ね合わせて、実施例1の両面粘着シートを作製した。
【0137】
実施例2
(粘着剤組成物の作製)
調製例1で調製したアクリル系ポリマーAの溶液に、アクリル系ポリマーA100質量部に対して、粘着付与剤として調製例3で調製したオリゴマーAを6質量部と、架橋剤Aとしてジベンゾイルパーオキサイド(商品名「ナイパーBMT-40SV」、日油株式会社製)0.52質量部および架橋剤Bとしてイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、東ソー株式会社製)0.05質量部とを加え、撹拌混合して粘着剤組成物を調製した。
【0138】
(粘着シートの作製)
上記粘着剤組成物を使用したこと以外は実施例1と同様にして実施例2の両面粘着シートを作製した。
【0139】
実施例3
粘着付与剤として、調製例4で調製したオリゴマーBを20質量部使用したこと以外は、実施例2と同様にして粘着剤組成物および両面粘着シートを作製した。
【0140】
実施例4
粘着付与剤として、オリゴマーAを6質量部およびオリゴマーBを6質量部使用したこと以外は実施例2と同様にして粘着剤組成物および両面粘着シートを作製した。
【0141】
実施例5
粘着付与剤として、オリゴマーAを6質量部およびオリゴマーBを15質量部使用したこと以外は実施例2と同様にして粘着剤組成物および両面粘着シートを作製した。
【0142】
実施例6
粘着付与剤として、粘着付与樹脂B(商品名「ペンセルD-125」、ロジンエステル、荒川化学工業株式会社製、軟化点約125℃)を20質量部使用したこと以外は、実施例2と同様にして粘着剤組成物および両面粘着シートを作製した。
【0143】
実施例7
粘着付与剤として、オリゴマーAを10質量部および粘着付与樹脂A(商品名「YSポリスターS145」、テルペンフェノール樹脂、ヤスハラケミカル株式会社製、軟化点約145℃)を10質量部使用したこと以外は、実施例2と同様にして粘着剤組成物および両面粘着シートを作製した。
【0144】
実施例8
(粘着剤組成物の作製)
調製例1で調製したアクリル系ポリマーAの溶液に、アクリル系ポリマーA100質量部に対して、粘着付与剤としてオリゴマーBを10質量部と、架橋剤Bとしてイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、東ソー株式会社製)0.2質量部とを加え、撹拌混合して粘着剤組成物を調製した。
【0145】
(粘着シートの作製)
上記粘着剤組成物を使用したこと以外は実施例1と同様にして実施例8の両面粘着シートを作製した。
【0146】
比較例1
粘着付与剤を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物および両面粘着シートを作製した。
【0147】
比較例2
(粘着剤組成物の作製)
調製例1で調製したアクリル系ポリマーAの溶液に、アクリル系ポリマーA100質量部に対して、粘着付与剤として粘着付与樹脂B(商品名「ペンセルD-125」、ロジンエステル、荒川化学工業株式会社製、軟化点約125℃)を30質量部と、架橋剤Aとしてジベンゾイルパーオキサイド(商品名「ナイパーBMT-40SV」、日油株式会社製)0.78質量部および架橋剤Bとしてイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、東ソー株式会社製)0.1質量部とを加え、撹拌混合して粘着剤組成物を調製した。
【0148】
(粘着シートの作製)
上記粘着剤組成物を使用したこと以外は実施例1と同様にして比較例2の両面粘着シートを作製した。
【0149】
比較例3
(粘着剤組成物の作製)
調製例2で調製したアクリル系ポリマーBの溶液に、アクリル系ポリマーB100質量部に対して、粘着付与剤として粘着付与樹脂A(商品名「YSポリスターS145」、テルペンフェノール樹脂、ヤスハラケミカル株式会社製、軟化点約145℃)を10質量部と、架橋剤Bとしてイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、東ソー株式会社製)3質量部および架橋剤Cとしてエポキシ系架橋剤(商品名「TETRAD-C」、三菱ガス化学株式会社製)0.03質量部とを加え、撹拌混合して粘着剤組成物を調製した。
【0150】
(粘着シートの作製)
上記粘着剤組成物を、片面をシリコーンで剥離処理した厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「ダイアホイルMRF」、三菱ケミカル株式会社製)の剥離処理層上に、粘着剤層の厚さが25μmになるように塗布し、100℃で2分間乾燥させて粘着剤層を形成し、片面をシリコーンで剥離処理した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「ダイアホイルMRF」、三菱ケミカル株式会社製)の剥離処理層を上記粘着剤層に重ね合わせて、実施例1の両面粘着シートを作製した。
【0151】
比較例4
(粘着剤組成物の作製)
調製例1で調製したアクリル系ポリマーAの溶液に、アクリル系ポリマーA100質量部に対して、粘着付与剤として粘着付与樹脂B(商品名「ペンセルD-125」、ロジンエステル、荒川化学工業株式会社製、軟化点約125℃)を20質量部と、架橋剤Aとしてジベンゾイルパーオキサイド(商品名「ナイパーBMT-40SV」、日油株式会社製)0.26質量部および架橋剤Bとしてイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、東ソー株式会社製)0.05質量部とを加え、撹拌混合して粘着剤組成物を調製した。
【0152】
(粘着シートの作製)
上記粘着剤組成物を使用したこと以外は実施例1と同様にして比較例4の両面粘着シートを作製した。
【0153】
<評価>
実施例および比較例で得られた粘着シートについて、以下の評価を行った。結果を表に示す。
【0154】
(1)貯蔵弾性率G’(-30℃)
実施例および比較例で作製した両面粘着シートから両面のはく離ライナーを剥離し、両面粘着シートを積層して厚さ約1mmの試験サンプルを作製した。この試験サンプルを直径7.9mmの円盤状に打ち抜き、パラレルプレートで挟み込み、粘弾性試験機(商品名「ARES」、レオメトリックス社製)を用いて周波数1Hzのせん断歪みを与えながら、温度領域-50~150℃、5℃/分の昇温速度でせん断モードにより粘弾性を測定し、-30℃でのG’(動的せん断貯蔵弾性率)のピークトップ強度を求めた。
【0155】
(2)ゲル分率
粘着シートから約0.2gの粘着剤を掻き取り、100mm×100mmのサイズに切り出した細孔径0.2μmの多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜(商品名「NTF-1122」、日東電工株式会社製)で包み、包んだ口をタコ糸で縛った。この試料の質量から、予め測定しておいた多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜およびタコ糸の質量の合計(A)を差し引いて、粘着剤試料の質量(B)を算出した。多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜で包まれた粘着剤試料を、約50mLの酢酸エチル中に、23℃で7日間浸漬し、粘着剤のゾル成分を多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜外へ溶出させた。浸漬後、多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜で包まれた粘着剤を取出し、130℃で2時間乾燥させ、約20分間放冷した後、乾燥質量(C)を測定した。粘着剤のゲル分率は、次式により算出した。
ゲル分率(%)=100×(C-A)/B
【0156】
(3)180°剥離粘着力(RT)
23℃、50%RHの測定環境下において、実施例および比較例で作製した両面粘着シートから両面のはく離ライナーを剥離し、両面粘着シートの一方の粘着面に厚さ25μmのPETフィルムを貼り付けて裏打ちし、幅20mm、長さ100mmのサイズにカットして測定サンプルを作製した。作製した測定サンプルにつき、23℃、50%RHの環境下にて、上記測定サンプルの露出した粘着面を、ステンレス鋼板(SUS304BA板)の表面に、2kgのローラを1往復させて圧着した。これを同環境下に24時間放置した後、万能引張圧縮試験機を使用して、引張速度300mm/分、剥離角度180°、温度23℃、相対湿度50%RH(室温)の環境下の条件で、180°剥離強度(粘着力)[N/20mm]を測定した。万能引張圧縮試験機としてミネベア社製の引張圧縮試験機(商品名「TG-1kN」)を用いた。なお、片面粘着シートの場合、上記PETフィルムの裏打ちは不要である。
【0157】
(4)耐屈曲性試験
-30℃/50%RHの環境下にて、実施例および比較例で作製した両面粘着シートから一方のはく離ライナーを剥離し、露出した粘着面を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:50μm、ヤング率:4.5GPa)の一方の面に貼合した。次いで、他方のはく離ライナーを剥離し、露出した粘着面を、別のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:50μm、ヤング率:4.5GPa)の一方の面に貼合した。そして、株式会社栗原製作所製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置した。このようにして得た[PETフィルム/両面粘着シート/PETフィルム]からなる積層体を、20mm幅、200mm長に裁断し、これをサンプルとした。得られたサンプルを、耐久試験機(製品名「面状体無負荷U字伸縮環境試験機 CL09-TypeD01-FSC90」、ユアサシステム機器株式会社製)を用いて、以下の条件で繰り返し屈曲させた。その後、-30℃/50%RHでの試験後にサンプルの屈曲部に折れ痕がないか否か(耐屈曲性(低温))を目視により確認し、以下の基準により耐屈曲性を評価した。
<試験条件>
屈曲半径:2mm、屈曲回数:200000回、屈曲速度:60回/分
<評価基準>
〇:折れ痕がないもしくは、わずかに発生したが実用上使用可能レベルであった。
△:光でかざせば見えるレベルの折れ痕が発生したが、実用上使用可能レベルであった。
×:実用上使用できないレベルの折れが発生した。
【0158】
(5)高温保持力
23℃、50%RHの測定環境下において、実施例および比較例で作製した両面粘着シートを糊はみ出しが起こらないようにして10mm×20mmのサイズに切り出し、軽剥離側のはく離ライナー(片面をシリコーンで剥離処理した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)を剥離して、厚さ25μmのPETフィルムを貼り付けて裏打ちした。そして、重剥離側のはく離ライナーを剥離してステンレス鋼板(SUS304BA板)に貼り合わせ、2kgのローラを速度5mm/秒で1往復させて圧着し、これを80℃雰囲気下で30分間放置した。その後、23℃、50%RHの測定環境下に取り出し、始点からのPETフィルムとステンレス鋼板(SUS304BA板)との間に発生したズレの距離を測定した。そして、以下の評価基準に従って高温保持力を評価した。
<評価基準>
〇:剥離しない
×:剥離した
【0159】
【0160】
以下、本開示に係る発明のバリエーションを記載する。
[付記1]粘着剤層を備える粘着シートであり、
前記粘着剤層は、炭素数10以上の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを構成単位として含むアクリル系ポリマーと、粘着付与剤とを含み、
前記粘着剤層の-30℃における弾性率は5.0MPa以下、ゲル分率は50%以上である、粘着シート。
[付記2]前記アクリル系ポリマーは炭素数1~8の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを構成単位として含む、付記1に記載の粘着シート。
[付記3]前記粘着付与剤はオリゴマーまたは粘着付与樹脂を含む、付記1または2に記載の粘着シート。
[付記4]電気電子機器における部材同士の固定用の両面粘着シートである付記1~3のいずれか1つに記載の粘着シート。
[付記5]付記4に記載の粘着シートを備え、
前記粘着シートは両方の粘着面で部材同士を固定している、電気電子機器。