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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140060
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】回路装置及び表示システム
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/36 20060101AFI20241003BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20241003BHJP
   G09G 3/34 20060101ALI20241003BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20241003BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20241003BHJP
   H05B 45/10 20200101ALI20241003BHJP
   G02B 27/01 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 R
G09G3/20 612U
G09G3/20 631U
G09G3/20 642J
G09G3/20 680B
G09G3/34 J
G02F1/133 535
G02F1/13357
H05B45/10
G02B27/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051047
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【弁理士】
【氏名又は名称】西河 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】マズロエイ セブダニ マムード
(72)【発明者】
【氏名】黎 國立
(72)【発明者】
【氏名】アナンド クマー アナンダバイラバサミー
【テーマコード(参考)】
2H193
2H199
2H391
3K273
5C006
5C080
【Fターム(参考)】
2H193ZG03
2H193ZG14
2H193ZG43
2H193ZG48
2H193ZG50
2H193ZH23
2H193ZR06
2H199DA34
2H199DA35
2H199DA43
2H391AA03
2H391AB04
2H391CB13
2H391FA07
3K273PA09
3K273QA02
3K273RA02
3K273RA11
3K273RA17
3K273TA03
3K273TA15
3K273TA26
3K273TA28
3K273TA29
3K273TA76
3K273TA77
3K273TA78
3K273TA79
3K273UA22
5C006AA22
5C006AF13
5C006BB11
5C006BB29
5C006BF08
5C006BF09
5C006EA01
5C006EC09
5C006EC14
5C080AA10
5C080BB05
5C080DD22
5C080JJ02
5C080JJ07
5C080KK02
5C080KK20
5C080KK43
(57)【要約】
【課題】減衰率の計算精度とテーブルの記憶容量を両立できる回路装置等を提供すること。
【解決手段】回路装置100は、記憶部170と照明輝度演算回路150と色補正回路160とを含む。記憶部170は、光源素子と画素の距離に対する光の減衰率分布を示すルックアップテーブルLUTを記憶する。照明輝度演算回路150は、ルックアップテーブルLUTから出力される減衰率情報と、各光源素子が発光する輝度を示す光源輝度情報とに基づいて、表示パネル220の対象画素が複数の光源素子により照明される輝度を示す照明輝度情報を演算する。色補正回路160は、照明輝度情報に基づいて入力画像データを色補正する。ルックアップテーブルLUTは、第1距離範囲では、第1距離分解能で減衰率情報を出力し、減衰率分布の傾きが第1距離範囲より大きい第2距離範囲では、第1距離分解能より高い第2距離分解能で減衰率情報を出力する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源素子と表示パネルとを含む表示装置を制御する回路装置であって、
光源素子と画素の距離に対する光の減衰率分布を示すルックアップテーブルを記憶する記憶部と、
前記ルックアップテーブルから出力される減衰率情報と、前記複数の光源素子の各光源素子が発光する輝度を示す光源輝度情報とに基づいて、前記表示パネルの対象画素が前記複数の光源素子により照明される輝度を示す照明輝度情報を演算する照明輝度演算回路と、
前記照明輝度情報に基づいて入力画像データを色補正する色補正回路と、
を含み、
前記ルックアップテーブルは、
第1距離範囲では、第1距離分解能で前記減衰率情報を出力し、前記減衰率分布の傾きが前記第1距離範囲より大きい第2距離範囲では、前記第1距離分解能より高い第2距離分解能で前記減衰率情報を出力することを特徴とする回路装置。
【請求項2】
請求項1に記載された回路装置において、
前記ルックアップテーブルは、
前記減衰率分布の傾きが前記第2距離範囲より小さい第3距離範囲では、前記第2距離分解能より低い第3距離分解能で前記減衰率情報を出力し、
前記第2距離範囲は、前記第1距離範囲と前記第3距離範囲の間であることを特徴とする回路装置。
【請求項3】
請求項1に記載された回路装置において、
前記第1距離分解能及び前記第2距離分解能の少なくとも一方は可変であることを特徴とする回路装置。
【請求項4】
請求項1に記載された回路装置において、
前記第1距離範囲及び前記第2距離範囲の少なくとも一方は可変であることを特徴とする回路装置。
【請求項5】
請求項1に記載された回路装置において、
前記ルックアップテーブルは、
複数のインデックスの各インデックスに距離情報が格納された第1ルックアップテーブルと、
前記各インデックスに前記減衰率情報が格納された第2ルックアップテーブルと、
を含むことを特徴とする回路装置。
【請求項6】
請求項5に記載された回路装置において、
前記照明輝度演算回路は、
前記対象画素と前記各光源素子との距離を示す距離情報に対応したインデックスを、前記第1ルックアップテーブルの前記複数のインデックスから選択し、
選択された前記インデックスに格納された前記減衰率情報を、前記第2ルックアップテーブルから読み出し、
読み出された前記減衰率情報を用いて前記照明輝度情報を演算することを特徴とする回路装置。
【請求項7】
請求項6に記載された回路装置において、
前記照明輝度演算回路は、
前記距離情報に基づいて、前記第1ルックアップテーブルの前記複数のインデックスから第1インデックスと第2インデックスを選択し、
前記第2ルックアップテーブルから、前記第1インデックスに格納される第1減衰率情報と、前記第2インデックスに格納される第2減衰率情報とを読み出し、
前記第1減衰率情報と前記第2減衰率情報を補間することで、前記距離情報に対応した減衰率情報を求め、
求められた前記減衰率情報を用いて前記照明輝度情報を演算することを特徴とする回路装置。
【請求項8】
請求項5に記載された回路装置において、
前記第1ルックアップテーブルは、
光源素子と画素の距離の二乗が前記距離情報として格納されることを特徴とする回路装置。
【請求項9】
請求項5に記載された回路装置において、
前記第1ルックアップテーブルは、
前記各インデックスに、水平走査方向における距離を示すx距離情報と、垂直走査方向における距離を示すy距離情報とが格納され、
前記第2ルックアップテーブルは、
前記各インデックスに、前記x距離情報及び前記y距離情報に対応した前記減衰率情報が格納されることを特徴とする回路装置。
【請求項10】
請求項9に記載された回路装置において、
前記記憶部は、
光源素子の照明領域を第1~第4象限に分割したときの1つの象限における、又は前記1つの象限を分割した領域における前記減衰率分布を示す前記ルックアップテーブルを記憶することを特徴とする回路装置。
【請求項11】
請求項1に記載された回路装置において、
前記表示装置は、
ヘッドアップディスプレイ、メーターパネル、センターインフォメーションディスプレイ、又は電子ミラーであることを特徴とする回路装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載された回路装置と、
前記表示装置と、
を含むことを特徴とする表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路装置及び表示システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ローカルディミングを行う画像表示装置が開示されている。画像表示装置は、LED出力値算出部と表示輝度データ算出部とLCDデータ算出部とを含む。LED出力値算出部は、画像の各エリアに対応する光源の発光時の輝度を示す発光輝度データを求める。表示輝度データ算出部は、発光輝度データに対して、点拡散関数又は輝度拡散関数を用いた畳み込み処理を施すことで、拡散輝度データを求める。点拡散関数又は輝度拡散関数として、距離を入力とするテーブルが用いられているが、その距離は等間隔となっている。線形補間部は、拡散輝度データに対して線形補間処理を行うことにより、原色別に画素毎の値を持つデータである表示輝度データを求める。LCDデータ算出部は、入力画像データと表示輝度データとに基づいて、原色別に画素毎の光透過率を求め、その光透過率を表すデータをLCDデータとして出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-095559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
減衰率分布は、光源素子から画素までの距離と光源素子が画素を照明する光の減衰率との関係を示す。この減衰率分布は、距離に対して減衰率の変化が急な部分と緩やかな部分が存在する。距離を等間隔にして減衰率分布のテーブルを作成した場合、減衰率の計算精度を上げようとすると距離の間隔を小さくする必要があり、テーブルの記憶容量が大きくなる。このように、減衰率の計算精度とテーブルの記憶容量を両立することが難しいという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、複数の光源素子と表示パネルとを含む表示装置を制御する回路装置であって、光源素子と画素の距離に対する光の減衰率分布を示すルックアップテーブルを記憶する記憶部と、前記ルックアップテーブルから出力される減衰率情報と、前記複数の光源素子の各光源素子が発光する輝度を示す光源輝度情報とに基づいて、前記表示パネルの対象画素が前記複数の光源素子により照明される輝度を示す照明輝度情報を演算する照明輝度演算回路と、前記照明輝度情報に基づいて入力画像データを色補正する色補正回路と、を含み、前記ルックアップテーブルは、第1距離範囲では、第1距離分解能で前記減衰率情報を出力し、前記減衰率分布の傾きが前記第1距離範囲より大きい第2距離範囲では、前記第1距離分解能より高い第2距離分解能で前記減衰率情報を出力する回路装置に関係する。
【0006】
また本開示の他の態様は、上記の回路装置と、前記表示装置と、を含む表示システムに関係する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】電子機器の構成例。
図2】回路装置の詳細構成例。
図3】照明輝度演算回路が行う処理のフロー。
図4】周囲光源素子の例。
図5】ルックアップテーブルの第1詳細例。
図6】ルックアップテーブルの第1詳細例における減衰率分布の例。
図7】ルックアップテーブルの第2詳細例。
図8】ルックアップテーブルの第3詳細例。
図9】ルックアップテーブルの第3詳細例における減衰率分布の例。
図10】ルックアップテーブルの第4詳細例。
図11】ルックアップテーブルの第4詳細例。
図12】光源輝度決定回路が行う処理のフロー。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1.電子機器、表示システム及び回路装置
図1は、本実施形態の表示システムを含む電子機器の構成例である。電子機器500は、処理装置300と表示システム400とを含む。電子機器500は、一例としては、メーターパネル、センターインフォメーションディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ又は電子ミラーを含む車載表示機器、テレビジョン装置、或いは、ディスプレイを含む情報処理装置である。
【0010】
表示システム400は、回路装置100と表示装置200とを含む。回路装置100は、例えば、半導体基板に複数の回路素子が集積された集積回路装置である。なお、図1には回路装置100と表示装置200を別の構成要素として記載したが、回路装置100が表示装置200内に含まれてもよい。
【0011】
表示装置200は、バックライト210と表示パネル220と表示ドライバー230と光源ドライバー240と表示コントローラー250とを含む。表示装置200の一例は、テレビジョン装置又は情報処理装置等に用いられるディスプレイである。或いは、表示装置200は、目への投写装置を含むヘッドマウントディスプレイ、或いは、スクリーンへの投写装置を含むヘッドアップディスプレイ等であってもよい。表示装置200がヘッドアップディスプレイであるとき、表示装置200は、更に、バックライト210から出射されて表示パネル220を透過した光をスクリーンに投影するための光学系を含む。
【0012】
バックライト210に対する平面視において、バックライト210には光源素子が2次元配置されている。光源素子は、電力供給により光を発する発光素子であり、例えば無機発光ダイオード、或いは有機発光ダイオードである。ローカルディミング制御において、2次元配置された各光源素子の光量が互いに独立に制御される。或いは、バックライト210は複数のエリアに分割されてもよい。平面視において、各エリアには複数の光源素子が配置される。エリア内に配置された光源素子は同一の光量に制御されると共に、各エリアの光量が互いに独立に制御される。
【0013】
光源素子の2次元配置の一例は、複数行と複数列の交点の全てに光源素子が配置された正方配置である。但し2次元配置は正方配置に限定されない。例えば、2次元配置は例えば菱形配置又は千鳥配置と呼ばれる配置であってもよい。この配置において、奇数行及び偶数行の一方と奇数列との交点、及び奇数行及び偶数行の他方と偶数列との交点に光源素子が配置され、それ以外の交点に光源素子が配置されない。
【0014】
光源ドライバー240は、回路装置100から光源輝度データDDIMを受信し、その光源輝度データDDIMに基づいてバックライト210の各光源素子を駆動する。光源ドライバー240は例えば集積回路装置である。なお、光源ドライバーが複数設けられ、その各光源ドライバーが別個の集積回路装置であってもよい。
【0015】
表示パネル220は、バックライト210からの光を透過し、その透過率が制御されることで画像を表示する電気光学パネルである。例えば、表示パネル220は液晶表示パネルである。
【0016】
表示コントローラー250は、回路装置100から画像データIMBを受信し、その画像データIMBと、表示タイミングを制御するタイミング制御信号とを、表示ドライバー230に送信する。なお、表示コントローラー250は、受信した画像データIMBに対する階調補正、ホワイトバランス補正又は拡大縮小等の画像処理を行ってもよい。
【0017】
表示ドライバー230は、受信した画像データとタイミング制御信号に基づいて表示パネルを駆動することで、表示パネル220に画像を表示させる。なお、表示コントローラー250と表示ドライバー230の各々が別の集積回路装置で構成されてもよいし、一体の集積回路装置で構成されてもよい。
【0018】
処理装置300は、回路装置100に画像データIMAを送信する。処理装置300は、CPU、GPU、マイクロコンピューター、DSP、ASIC又はFPGA等のプロセッサーである。CPUはCentral Processing Unitの略である。GPUはGraphics Processing Unitの略である。DSPはDigital Signal Processorの略である。ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略である。FPGAはField Programmable Gate Arrayの略である。
【0019】
回路装置100は、画像データIMAを受信し、その画像データIMAに基づいて表示装置200のローカルディミング制御を行う。回路装置100は、画像データIMAの輝度に応じてバックライト210の各光源素子又は各エリアの発光輝度を調光し、その調光で得られた光源輝度情報を光源輝度データDDIMとして光源ドライバー240に出力する。また回路装置100は、光源輝度情報に基づいて画像データIMAに対する色補正を行い、色補正後の画像データIMBを表示コントローラー250に出力する。
【0020】
図2は、回路装置の詳細構成例である。回路装置100は、インターフェース回路110と光源制御回路130と光源輝度決定回路140と照明輝度演算回路150と色補正回路160と記憶部170とを含む。以下、ローカルディミングにおいてバックライト210の発光素子毎に独立に調光される場合を例に説明するが、複数の発光素子を含むエリア毎に独立に調光されてもよい。
【0021】
インターフェース回路110は、処理装置300から画像データIMAを受信する。インターフェース回路110は、LVDS、パラレルRGB方式又はディスプレイポート等の様々な画像インターフェース方式のインターフェース回路であってよい。LVDSはLow Voltage Differential Signalingの略である。
【0022】
記憶部170は、光源素子から表示パネルに届く光の減衰率分布を示すルックアップテーブルLUTを記憶する。減衰率分布は、光源素子から画素までの距離と、光源素子が画素を照明する光の減衰率との関係を示す。減衰率分布は、減衰特性又は輝度分布とも呼ばれる。記憶部170は、レジスター又はメモリーである。メモリーは、RAM等の揮発性メモリー、或いは、OTPメモリー又はEEPROM等の不揮発性メモリーである。RAMはRandom Access Memoryの略である。OTPはOne Time Programmableの略である。EEPROMはElectrically Erasable Programmable Read Only Memoryの略である。
【0023】
光源輝度決定回路140にはインターフェース回路110から画像データIMAが入力される。光源輝度決定回路140に入力される画像データIMAを入力画像データとも呼ぶ。光源輝度決定回路140は、画像データIMAの輝度を解析し、その解析の結果に基づいて各発光素子の発光輝度を決定し、その各発光素子の発光輝度を示す光源輝度情報を光源輝度データLLDとして出力する。具体的には、光源輝度決定回路140は、バックライト210の発光素子に対応する画像エリアにおいて、その画像エリアに属する画素データの最大輝度を決定する。光源輝度決定回路140は、その最大輝度を表示装置200において表示できる範囲で最小の発光輝度を決定し、それを、その発光素子の発光輝度とする。或いは、光源輝度決定回路140は、画像データIMAと、記憶部170に格納されたルックアップテーブルLUTとを用いて調光処理を行うことで、各光源素子の発光輝度を決定してもよい。この手法の詳細については後述する。
【0024】
光源制御回路130は、光源輝度データLLDに基づいて光源ドライバー240を制御する。具体的には、光源制御回路130は、発光素子の発光タイミング又は発光輝度の更新タイミングを制御するタイミング制御信号を光源ドライバー240に出力すると共に、光源輝度データLLDを光源輝度データDDIMとして光源ドライバー240に出力する。光源ドライバー240は、タイミング制御信号により規定されたタイミングで、光源輝度データDDIMが示す各光源素子の発光輝度に対応したパルス幅のPWM信号により各発光素子を駆動する。これにより、各発光素子が、ローカルディミングで制御される発光輝度で発光する。
【0025】
照明輝度演算回路150は、光源輝度データLLDと、記憶部170に格納されたルックアップテーブルとに基づいて照明輝度情報を演算し、その照明輝度情報を照明輝度データLPXとして出力する。照明輝度情報は、バックライト210により表示パネル220が照明されるときの、表示パネル220の各画素における照明輝度を示す。
【0026】
色補正回路160は、照明輝度データLPXに基づいて画像データIMAの色補正を行い、補正後の画像データIMBを表示ドライバー230に出力する。具体的には、色補正回路160は、各画素の画素データに、その画素に届く光の輝度の逆数を乗算し、その結果をその画素の新たな画素データとする。
【0027】
なお、光源制御回路130、光源輝度決定回路140、照明輝度演算回路150及び色補正回路160は、デジタル信号を処理するロジック回路である。光源制御回路130、光源輝度決定回路140、照明輝度演算回路150及び色補正回路160の各々が、別個にロジック回路で構成されてもよいし、それらの一部又は全部が一体のロジック回路で構成されてもよい。或いは、DSP等のプロセッサーが、光源制御回路130、光源輝度決定回路140、照明輝度演算回路150及び色補正回路160の機能が記述された命令セット又はプログラムを実行することで、それらの回路の機能が実現されてもよい。
【0028】
或いは、回路装置100は、CPU、GPU、マイクロコンピューター、DSP、ASIC又はFPGA等のプロセッサーであってもよい。そして、プロセッサーが、回路装置100の各部の機能が記述された命令セット又はプログラムを実行することで、回路装置100の機能が実現されてもよい。
【0029】
回路装置100は歪み補正回路を含んでもよい。歪み補正回路は、表示パネル220に表示された画像をスクリーン等に投影する光学系に起因する画像歪み、又はスクリーンの歪みに起因する画像歪みを、補正する。具体的には、歪み補正回路は、インターフェース回路110が受信した画像データIMAに対して、上記画像歪みをキャンセル又は低減する画像補正を行い、補正後の画像データを光源輝度決定回路140、照明輝度演算回路150及び色補正回路160に出力する。但し、歪み補正回路は回路装置100ではなく処理装置300に設けられてもよい。
【0030】
2.照明輝度演算回路
図3は、照明輝度演算回路が行う処理のフローである。
【0031】
ステップS11において、照明輝度演算回路150は、画像データIMAに含まれる画素から1つの画素を選択する。選択された画素を対象画素と呼ぶこととする。ステップS11からステップS14のループにおいて、対象画素が順次に選択される。例えば、初回のステップS11において画像データIMAの第1走査ラインの第1画素が選択され、以降のステップS11において順次に第2画素、第3画素、・・・が選択され、第1走査ラインの画素が全て選択されると、第2走査ラインの画素が順次に選択され、それが最終走査ラインまで繰り返される。
【0032】
ステップS12において、照明輝度演算回路150は対象画素の周囲にあるs×t個の光源素子を選択する。このs×t個の光源素子を周囲光源素子とも呼ぶ。図4は、周囲光源素子の例である。ここではs=4、t=4の例を示すが、sとtは各々2以上の整数であればよい。図4において、x方向は表示パネルの水平走査方向であり、y方向は表示パネルの垂直走査方向である。
【0033】
対象画素22の位置を(i,j)とする。iとjは整数であり、位置(i,j)は、第j走査ラインの第i画素であることを示す。照明輝度演算回路150は、位置(i,j)を基準に、+x方向と-x方向の各々において直近2列、且つ+y方向と-y方向の各々において直近2行の光源素子L1~L16を、選択する。βを1以上16以下の整数としたとき、光源素子Lβの位置を(xβ,yβ)と表す。
【0034】
ステップS13において、照明輝度演算回路150は、選択されたs×t個の光源素子の光源輝度情報と、ルックアップテーブルLUTとを用いて、対象画素の照明輝度情報を求める。
【0035】
ステップS14において、照明輝度演算回路150は全ての画素が対象画素として選択されたか否かを判定し、全ての画素が選択された場合には処理を終了し、選択されていない画素がある場合にはステップS11に戻る。
【0036】
図4の例を用いて、ステップS13における照明輝度情報の演算処理を説明する。照明輝度演算回路150は下式(1)及び(2)により対象画素22の照明輝度情報を求める。
【0037】
【数1】
【0038】
【数2】
【0039】
上式(1)において、PL(i,j)は、位置(i,j)の画素に対する照明輝度情報である。pow(β)は、光源輝度決定回路140が決定した光源輝度情報である。lsf(β)は、光源素子Lβが対象画素22を照らす光の減衰率である。照明輝度演算回路150は、ルックアップテーブルLUTを用いてlsf(β)を求める。上式(2)では、距離の二乗をルックアップテーブルの入力としているが、距離をルックアップテーブルの入力としてもよい。
【0040】
なお、照明輝度演算回路150は、対象画素の周囲にあるs×t個の光源素子の光源輝度情報だけでなく、バックライト210の全ての光源素子の光源輝度情報から、対象画素の照明輝度情報を求めてもよい。
【0041】
以下、ルックアップテーブルLUTの詳細例を説明する。ルックアップテーブルLUTは、入力された距離情報に対して、その距離情報に対応付けられた減衰率情報を出力する。以下では距離情報が距離又は距離の二乗であり、減衰率情報が100分率で表した減衰率である例を示すが、これに限定されない。距離情報は画素数等であってもよい。減衰率情報は任意の単位で表された減衰率であってもよい。
【0042】
図5は、ルックアップテーブルの第1詳細例である。図6は、ルックアップテーブルの第1詳細例における減衰率分布の例である。
【0043】
光源素子からの光は拡散シート等によって拡散され、その拡散光が表示パネルに照射される。このとき、拡散による光の輝度分布が減衰率分布である。具体的には、光源素子及び拡散シートの特性に応じた減衰率分布又はそれを近似した減衰率分布がテーブル化され、ルックアップテーブルLUTとして記憶部170に記憶される。図1の処理装置300が記憶部170にルックアップテーブルLUTを書き込んでもよいし、或いは、記憶部170が不揮発性メモリーを含む場合において、予めルックアップテーブルLUTが不揮発性メモリーに格納されていてもよい。ルックアップテーブルLUTは自在にプログラム可能であって、例えば表示装置200の機種に応じて変更されてもよい。
【0044】
図5に示すように、ルックアップテーブルLUTは、距離が格納された第1ルックアップテーブルLUT1と、減衰率が格納された第2ルックアップテーブルLUT2とを含む。
【0045】
第1ルックアップテーブルLUT1の各インデックスには、そのインデックスに対応付けられた距離が格納されている。ここではインデックスが0~15である例を示すが、インデックスの数は任意である。また距離が0~20の範囲であり、3つの距離範囲の各々において独立に距離の分解能が設定される例を示すが、距離の範囲は任意であり、距離範囲の数は2以上であればよい。インデックスは、一例としてメモリーアドレスである。
【0046】
第2ルックアップテーブルLUT2の各インデックスには、そのインデックスに対応付けられた減衰率が格納されている。減衰率は、最大輝度を100%として規格化された値で示される。減衰率分布は、距離ゼロ付近で最大値であり、且つ距離が遠くなるに従って減少していく。減少の傾きは、距離に応じて変化する。但し、反射光等を考慮した減衰率分布においては、減少する区間と増加する区間が混在してもよい。
【0047】
例えば、ルックアップテーブルLUTに入力された距離が2であるとき、照明輝度演算回路150は第1ルックアップテーブルLUT1から各インデックスの距離を順次に読み出して入力距離2と比較することで、入力距離2を挟む距離1.5及び距離3に対応したインデックス「1」及び「2」を決定する。この選択されたインデックス「1」を第1インデックスとし、インデックス「2」を第2インデックスとする。第1インデックスは、第1ルックアップテーブルLUT1に格納された距離のうち、入力距離以下、且つ入力距離に最も近い距離である。第2インデックスは、第1ルックアップテーブルLUT1に格納された距離のうち、入力距離以上、且つ入力距離に最も近い距離である。照明輝度演算回路150は、第2ルックアップテーブルLUT2からインデックス「1」及び「2」の減衰率97.2%及び89.4%を読み出す。第1インデックスである「1」に格納された減衰率97.2%を第1減衰率情報とし、第2インデックスである「2」に格納された減衰率89.4%を第2減衰率情報とする。照明輝度演算回路150は、第1減衰率情報と第2減衰率情報を補間することで、入力距離2に対応した減衰率を求める。補間は、一例として直線補間(Linear Interpolate)、スプライン補間、又はラグランジュ補間である。
【0048】
図6に示すように、距離0~3の距離範囲DRAにおける減衰率分布の傾きは、距離3~12の距離範囲DRBにおける減衰率分布の傾きよりも小さい。また、距離12~20の距離範囲DRCにおける減衰率分布の傾きは、距離3~12の距離範囲DRBにおける減衰率分布の傾きよりも小さい。「傾き」は、傾きの絶対値、つまり減衰率分布を距離で微分した微分値の絶対値である。「傾きが小さい」とは、例えば距離範囲における傾きの平均値が小さい、或いは距離範囲における傾きの最大値が小さいことである。
【0049】
図5及び図6に示すように、各距離範囲において上記の傾きに応じた距離分解能でルックアップテーブルLUTが作成されている。距離分解能とは、減衰率分布をテーブル化するときの距離の間隔のことであり、インデックスの1ステップに対する距離の間隔のことである。「距離分解能が高い」とは、インデックスの1ステップに対する距離の間隔が小さいことである。距離分解能Δdは、距離範囲DRAにおいて1.5であり、距離範囲DRBにおいて1であり、距離範囲DRCにおいて2である。即ち、減衰率分布の傾きが相対的に大きい距離範囲DRBでは距離分解能Δdが高く、減衰率分布の傾きが相対的に小さい距離範囲DRA及びDRCでは距離分解能Δdが低い。図5には、距離範囲DRCにおける距離分解能Δdが距離範囲DRAにおける距離分解能Δdより低い例を示したが、距離範囲DRCにおける距離分解能Δdは距離範囲DRAにおける距離分解能Δd以上であってもよい。
【0050】
減衰率分布の傾きが相対的に大きい距離範囲で距離分解能Δdを高くすることで、照明輝度情報の精度を向上できる。そして、減衰率分布の傾きが相対的に小さい距離範囲で距離分解能Δdを低くすることで、ルックアップテーブルLUTの記憶容量を節約できる。
【0051】
図7は、ルックアップテーブルの第2詳細例である。減衰率分布は第1詳細構成例と同じである。
【0052】
ルックアップテーブルLUTは、距離の二乗が格納された第1ルックアップテーブルLUT1と、減衰率が格納された第2ルックアップテーブルLUT2とを含む。図7の第1ルックアップテーブルLUT1は、図5の第1ルックアップテーブルLUT1における距離を二乗したテーブルとなっている。図7の第2ルックアップテーブルLUT2は、図5の第2ルックアップテーブルLUT2と同じである。
【0053】
このように、ルックアップテーブルLUTに用いられる距離情報は、距離の二乗であってもよい。表示パネルの水平走査方向における距離をx距離とし、表示パネルの垂直走査方向における距離をy距離としたとき、(距離)=(x距離)+(y距離)である。即ち、距離の二乗をルックアップテーブルLUTの入力とすることで、(x距離)+(y距離)の平方根を演算することなく、そのままルックアップテーブルLUTの入力とすることができる。
【0054】
図8は、ルックアップテーブルの第3詳細例である。図9は、ルックアップテーブルの第3詳細例における減衰率分布の例である。この減衰率分布は、第1詳細構成例の減衰率分布とは異なる。
【0055】
図9に示すように、距離0~8の距離範囲DRAにおける減衰率分布の傾きは、距離8~17の距離範囲DRBにおける減衰率分布の傾きよりも小さい。また、距離17~20の距離範囲DRCにおける減衰率分布の傾きは、距離8~17の距離範囲DRBにおける減衰率分布の傾きよりも小さい。図8及び図9に示すように、距離分解能Δdは、距離範囲DRAにおいて2であり、距離範囲DRBにおいて1であり、距離範囲DRCにおいて1.5である。
【0056】
このように、距離範囲DRA、DRB及びDRCが可変に設定されてもよい。また、各距離範囲における距離分解能Δdが可変に設定されてもよい。第1詳細構成例及び第3詳細構成例ともに、距離範囲DRBにおける距離分解能Δdが1となっているが、1以外に設定されてもよい。処理装置300又はテスト装置等の外部からルックアップテーブルLUTを記憶部170に書き込み可能であり、それによってルックアップテーブルLUTを自在にプログラム可能である。これにより、距離範囲DRA、DRB及びDRC、及び各距離範囲における距離分解能Δdが、可変に設定される。
【0057】
図10及び図11は、ルックアップテーブルの第4詳細例である。本例のルックアップテーブルLUTは、x距離及びy距離を入力とする2次元ルックアップテーブルである。
【0058】
図10に示すように、x距離に関する距離分解能は、0~3の距離範囲DRAxにおいて1.5であり、3~11の距離範囲DRBxにおいて1であり、11~20の距離範囲DRCxにおいて3である。y距離に関する距離分解能は、0~3の距離範囲DRAyにおいて1.5であり、3~11の距離範囲DRByにおいて1であり、11~20の距離範囲DRCyにおいて3である。なお、距離範囲DRAxとDRAyは異なってもよいし、距離範囲DRAxとDRAyで距離分解能が異なってもよい。距離範囲DRBxとDRByは異なってもよいし、距離範囲DRBxとDRByで距離分解能が異なってもよい。距離範囲DRCxとDRCyは異なってもよいし、距離範囲DRCxとDRCyで距離分解能が異なってもよい。
【0059】
本例のルックアップテーブルLUTは、光源素子の位置を原点とするxy平面の1/4に相当する減衰率分布を示している。即ち、x≧0且つy≧0の領域を第1象限とし、x≧0且つy≦0の領域を第2象限とし、x≦0且つy≧0の領域を第3象限とし、x≦0且つy≦0の領域を第4象限とする。ルックアップテーブルLUTは、第1~第4象限のうち1つの象限における減衰率分布を示している。x距離及びy距離を距離の絶対値とすれば、第1~第4象限の各象限に対して対称にルックアップテーブルを適用可能である。なお、ルックアップテーブルLUTは、光源素子の位置を原点とするxy平面の1/8に相当する減衰率分布を示すものであってもよい。即ち、図10のルックアップテーブルを、x距離=y距離を境界として2つのルックアップテーブルに分割し、その一方をルックアップテーブルLUTとして記憶部170に記憶させてもよい。具体的には、ルックアップテーブルLUTは、x距離≧y距離又はx距離≦y距離を満たすx距離とy距離に対応した減衰率を、格納したルックアップテーブルであってもよい。例えばルックアップテーブルLUTがx距離≧y距離を満たすx距離とy距離に対応した減衰率を格納している場合に、x距離<y距離を満たすx距離とy距離が入力されたとき、x距離とy距離を入れ替えてルックアップテーブルLUTを参照することで、減衰率が得られる。
【0060】
図11に示すように、ルックアップテーブルLUTは、x距離とy距離の組が格納された第1ルックアップテーブルLUT1と、減衰率が格納された第2ルックアップテーブルLUT2とを含む。
【0061】
例えば、ルックアップテーブルLUTに入力されたx距離が1であり、入力されたy距離が2であるとする。照明輝度演算回路150は、第1ルックアップテーブルLUT1から各インデックスのx距離とy距離の組を順次に読み出して、入力x距離1と入力y距離2の組と比較する。これにより、照明輝度演算回路150は、入力x距離1を挟む距離0と距離1.5、及び入力y距離2を挟む距離1.5と距離3に対応したインデックス「1」、「2」、「17」及び「18」を決定する。照明輝度演算回路150は、第2ルックアップテーブルLUT2からインデックス「1」、「2」、「17」及び「18」の減衰率97.3%、89.5%、94.6%、87.0%を読み出し、補間により、入力x距離1と入力y距離2の組に対応した減衰率を求める。補間は、一例としてバイリニア補間、又はバイキュービック補間である。
【0062】
3.光源輝度決定回路
図12は、光源輝度決定回路が行う処理のフローである。
【0063】
ステップS1において、光源輝度決定回路140は、光源輝度情報を初期化する。例えば、全ての光源素子の輝度値がゼロに初期化される。
【0064】
ステップS2において、光源輝度決定回路140は、画像データIMAに含まれる画素から1つの画素を選択する。選択された画素を対象画素と呼ぶこととする。ステップS2からステップS5のループにおいて、対象画素が順次に選択される。例えば、初回のステップS2において画像データIMAの第1走査ラインの第1画素が選択され、以降のステップS2において順次に第2画素、第3画素、・・・が選択され、第1走査ラインの画素が全て選択されると、第2走査ラインの画素が順次に選択され、それが最終走査ラインまで繰り返される。
【0065】
ステップS3において、光源輝度決定回路140は対象画素の周囲にあるn×m個の光源素子を選択する。このn×m個の光源素子を周囲光源素子とも呼ぶ。nとmは各々2以上の整数であればよい。図4を例に説明する。なお、図4は照明輝度演算回路150の説明に用いたが、光源輝度決定回路140が行う処理は、照明輝度演算回路150が行う処理とは別個の処理である。
【0066】
図4に示すように、対象画素22の位置を(i,j)とする。iとjは整数であり、位置(i,j)は、第j走査ラインの第i画素であることを示す。図4の例ではn=m=4である。光源輝度決定回路140は、位置(i,j)を基準に、+x方向と-x方向の各々において直近2列、且つ+y方向と-y方向の各々において直近2行の光源素子L1~L16を、選択する。kを1以上16以下の整数としたとき、光源素子Lkの位置を(xk,yk)と表す。
【0067】
図12のステップS4において、画像データIMAにおける対象画素22の画素値と、記憶部170に格納されたルックアップテーブルLUTとを用いて、ステップS3で選択されたn×m個の光源素子の各光源素子に対する光源輝度情報を更新する。
【0068】
ステップS5において、光源輝度決定回路140は全ての画素が対象画素として選択されたか否かを判定し、全ての画素が選択された場合には処理を終了し、選択されていない画素がある場合にはステップS2に戻る。
【0069】
図4の例を用いて、ステップS4における光源輝度情報の更新処理を説明する。光源輝度決定回路140は、光源素子L1~L16から対象画素22が受ける光量に要求される変化量を示す要求変化量Δijを、下式(3)により求める。
【0070】
【数3】
【0071】
上式(3)において、INTijは、画像データIMAにおける対象画素22の画素値に基づくピクセル強度である。ピクセル強度は、例えば対象画素22のRGB画素値から算出される輝度値、或いは対象画素22のRGB画素値のうち最大値である。lsf(k)は、上式(2)と同様に、光源素子Lkが対象画素22を照らす光の減衰率であり、現実の減衰率分布又はそれを近似した減衰率分布から求められる。光源輝度決定回路140は、ルックアップテーブルLUTを用いてlsf(k)を求める。powc(k)は、光源素子Lkの前回の光源輝度情報である。前回の光源輝度情報とは、今回の対象画素22の1つ前に選択された前回の対象画素を用いて算出された光源輝度情報である。前回の対象画素は、x方向において位置(i,j)から1つ前の位置(i-1,j)の画素である。
【0072】
光源輝度決定回路140は、下式(4)により、要求変化量Δijを光源素子Lkの光源輝度情報に分配することで、光源輝度情報を更新する。
【0073】
【数4】
【0074】
上式(4)において、powu(k)は、今回の光源輝度情報、つまり更新後の光源輝度情報である。上式(4)の右辺第2項において、減衰率lsf(k)=lsf(k)であり、減衰率lsfx+1(k)=lsf(k)=lsf(k)×lsf(k)である。即ち、光源輝度決定回路140は、ルックアップテーブルLUTを用いて減衰率lsf(k)を求め、その減衰率lsf(k)を用いて右辺第2項を計算する。或いは、記憶部170が、ルックアップテーブルLUT以外に、減衰率lsf(k)及び減衰率lsfx+1(k)を演算するためのルックアップテーブルを別途記憶しており、光源輝度決定回路140は、そのルックアップテーブルを用いて減衰率lsf(k)及び減衰率lsfx+1(k)をを求めてもよい。
【0075】
なお、図12のフローにおけるステップS2~S5のループが画像データIMAの最後の画素まで実行された後における、上式(4)のpowuが上式(1)のpowとして用いられる。なお、ステップS2~S5のループが画像データIMAの最後の画素まで実行されていなくても、対象画素が進むに従って光源素子の光源輝度情報の更新が順次に終了していくので、その更新が終了した光源輝度情報がpowとして用いられてもよい。
【0076】
以上に説明した本実施形態の回路装置100は、複数の光源素子と表示パネル220とを含む表示装置200を制御する。回路装置100は、記憶部170と照明輝度演算回路150と色補正回路160とを含む。記憶部170は、光源素子と画素の距離に対する光の減衰率分布を示すルックアップテーブルLUTを記憶する。照明輝度演算回路150は、ルックアップテーブルLUTから出力される減衰率情報と、複数の光源素子の各光源素子が発光する輝度を示す光源輝度情報とに基づいて、表示パネル220の対象画素が複数の光源素子により照明される輝度を示す照明輝度情報を演算する。色補正回路160は、照明輝度情報に基づいて入力画像データを色補正する。ルックアップテーブルLUTは、第1距離範囲では、第1距離分解能で減衰率情報を出力し、減衰率分布の傾きが第1距離範囲より大きい第2距離範囲では、第1距離分解能より高い第2距離分解能で減衰率情報を出力する。
【0077】
本実施形態によれば、減衰率分布の傾きが相対的に大きい第2距離範囲において距離分解能が高いことで、照明輝度演算回路150が高精度に減衰率を求めることができ、それによって照明輝度情報の精度を向上できる。そして、減衰率分布の傾きが相対的に小さい第1距離範囲において距離分解能が低いことで、ルックアップテーブルLUTの記憶容量を小さくできるので、記憶部170の容量を節約できる。
【0078】
なお、図2の例では入力画像データは画像データIMAに対応する。図5を例にとると、第1距離範囲は、距離範囲DRA又はDRCに対応し、第1距離分解能は、距離範囲DRAにおける距離分解能Δd=1.5、又は距離範囲DRCにおける距離分解能Δd=2に対応する。第2距離範囲は、距離範囲DRBに対応し、第2距離分解能は、距離範囲DRBにおける距離分解能Δd=1に対応する。
【0079】
また本実施形態では、ルックアップテーブルLUTは、減衰率分布の傾きが第2距離範囲より小さい第3距離範囲では、第2距離分解能より低い第3距離分解能で減衰率情報を出力する。第2距離範囲は、第1距離範囲と第3距離範囲の間である。
【0080】
本実施形態によれば、減衰率分布の傾きが相対的に小さい第3距離範囲において距離分解能が低いことで、ルックアップテーブルLUTの記憶容量を小さくできるので、記憶部170の容量を節約できる。減衰率分布は、距離がゼロ付近で減衰率が100%に近く且つ傾きが小さく、距離が遠くなると共に傾きが増し、更に距離が遠くなると再び傾きが小さくなり且つ減衰率が0%に近づく。このことから、例えば、距離ゼロ付近に第1距離範囲を設定し、距離が遠く且つ減衰率0%付近に第3距離範囲を設定し、それらの間に第2距離範囲を設定できる。
【0081】
なお、図5を例にとると、第1距離範囲は、距離範囲DRA及びDRCの一方に対応し、第1距離分解能は、距離分解能Δd=1.5及びΔd=2の一方に対応する。第3距離範囲は、距離範囲DRA及びDRCの他方に対応し、第3距離分解能は、距離分解能Δd=1.5及びΔd=2の他方に対応する。第2距離範囲は、距離範囲DRBに対応し、第2距離分解能は、距離範囲DRBにおける距離分解能Δd=1に対応する。
【0082】
また本実施形態では、第1距離分解能及び第2距離分解能の少なくとも一方は可変である。なお、第1距離分解能、第2距離分解能及び第3距離分解能のうち1つ以上の距離分解能が可変であってもよい。
【0083】
本実施形態によれば、減衰率分布の特性に応じて、つまり各距離範囲における減衰率分布の傾きに応じて、減衰率の算出精度と記憶容量の低減を両立する適切な距離分解能を、設定可能である。
【0084】
また本実施形態では、第1距離範囲及び第2距離範囲の少なくとも一方は可変である。なお、第1距離範囲、第2距離範囲及び第3距離範囲のうち1つ以上の距離範囲が可変であってもよい。
【0085】
本実施形態によれば、減衰率分布の特性に応じて、つまり減衰率分布の形状に応じて、減衰率の算出精度と記憶容量の低減を両立する適切な距離範囲を、設定可能である。
【0086】
また本実施形態では、ルックアップテーブルLUTは、複数のインデックスの各インデックスに距離情報が格納された第1ルックアップテーブルLUT1と、各インデックスに減衰率情報が格納された第1ルックアップテーブルLUT1と、を含む。
【0087】
本実施形態によれば、第1ルックアップテーブルLUT1に格納された距離情報が、インデックスを介して、第2ルックアップテーブルLUT2に格納された減衰率情報に対応付けられる。これにより、距離情報に対して、それに対応した減衰率情報を出力するルックアップテーブルLUTが、構成される。
【0088】
また本実施形態では、照明輝度演算回路150は、対象画素と各光源素子との距離を示す距離情報に対応したインデックスを、第1ルックアップテーブルLUT1の複数のインデックスから選択する。照明輝度演算回路150は、選択されたインデックスに格納された減衰率情報を、第2ルックアップテーブルLUT2から読み出す。照明輝度演算回路150は、読み出された減衰率情報を用いて照明輝度情報を演算する。
【0089】
本実施形態によれば、照明輝度演算回路150が、第1ルックアップテーブルLUT1及び第2ルックアップテーブルLUT2を参照することで、対象画素と各光源素子との距離を示す距離情報に対応した減衰率分布を取得し、その減衰率情報を用いて照明輝度情報を演算できる。
【0090】
また本実施形態では、照明輝度演算回路150は、距離情報に基づいて、第1ルックアップテーブルLUT1の複数のインデックスから第1インデックスと第2インデックスを選択する。照明輝度演算回路150は、第2ルックアップテーブルLUT2から、第1インデックスに格納される第1減衰率情報と、第2インデックスに格納される第2減衰率情報とを読み出す。照明輝度演算回路150は、第1減衰率情報と第2減衰率情報を補間することで、距離情報に対応した減衰率情報を求め、求められた減衰率情報を用いて照明輝度情報を演算する。
【0091】
本実施形態によれば、ルックアップテーブルLUTの距離分解能が高い距離範囲においては、より精度よく減衰率を補間できる。これにより、減衰率分布の傾きが相対的に大きい第2距離範囲において距離分解能が高いことで、照明輝度演算回路150が高精度に減衰率を求めることができ、それによって照明輝度情報の精度を向上できる。
【0092】
また本実施形態では、第1ルックアップテーブルLUT1は、光源素子と画素の距離の二乗が距離情報として格納されてもよい。
【0093】
表示パネルの水平走査方向における距離をx距離とし、表示パネルの垂直走査方向における距離をy距離としたとき、(距離)=(x距離)+(y距離)である。即ち、第1ルックアップテーブルLUT1に距離の二乗が格納されることで、(x距離)+(y距離)の平方根を演算することなく、そのままルックアップテーブルLUTの入力とすることができる。
【0094】
また本実施形態では、第1ルックアップテーブルLUT1は、各インデックスに、水平走査方向における距離を示すx距離情報と、垂直走査方向における距離を示すy距離情報とが格納されてもよい。第2ルックアップテーブルLUT2は、各インデックスに、x距離情報及びy距離情報に対応した減衰率情報が格納されてもよい。
【0095】
本実施形態によれば、照明輝度演算回路150が、2次元のルックアップテーブルLUTを用いて減衰率を求めることができる。2次元のルックアップテーブルLUTは、回転対称でない減衰率分布を表すことが可能であるため、光源素子の減衰率分布が回転対称でない場合であっても、より精度の高い減衰率が求められる。
【0096】
また本実施形態では、記憶部170は、光源素子の照明領域を第1~第4象限に分割したときの1つの象限における、又は1つの象限を分割した領域における減衰率分布を示すルックアップテーブルLUTを記憶する。
【0097】
本実施形態によれば、第1~第4象限の全てについてルックアップテーブルLUTを作成する場合よりも、ルックアップテーブルLUTの記憶容量を低減できる。例えば、各象限で減衰率分布が対象である場合には、1つの象限におけるルックアップテーブルLUTを作成すれば足りる。或いは、更に1つの象限を分割した各領域で減衰率分布が対象である場合には、その分割した領域におけるルックアップテーブルLUTを作成すれば足りる。
【0098】
また本実施形態では、表示装置200は、ヘッドアップディスプレイ、メーターパネル、センターインフォメーションディスプレイ、又は電子ミラーであってもよい。
【0099】
ヘッドアップディスプレイ、メーターパネル、センターインフォメーションディスプレイ、又は電子ミラーは、自動車等の移動体に搭載される。このため、移動体の移動又は時刻の変化に伴って環境が変化したり、ユーザーへの情報提供に伴う様々な表示コンテンツが表示されたりする。環境又は表示コンテンツによっては、ルックアップテーブルから計算される照明輝度と実際の照明輝度との誤差によって、アーティファクトが見えるおそれがある。本実施形態によれば、減衰率分布の傾きに応じた距離分解能でルックアップテーブルが作成されていることから、上記誤差を小さくしてアーティファクトを低減できると共に、ルックアップテーブルの記憶容量を節約できる。
【0100】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また回路装置、バックライト、表示装置、表示システム、処理装置及び電子機器等の構成及び動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0101】
22…対象画素、100…回路装置、110…インターフェース回路、130…光源制御回路、140…光源輝度決定回路、150…照明輝度演算回路、160…色補正回路、170…記憶部、200…表示装置、210…バックライト、220…表示パネル、230…表示ドライバー、240…光源ドライバー、250…表示コントローラー、300…処理装置、400…表示システム、500…電子機器、DDIM…光源輝度データ、DRA,DRB,DRC…距離範囲、IMA,IMB…画像データ、L1~L16…光源素子、LLD…光源輝度データ、LPX…照明輝度データ、LUT…ルックアップテーブル、LUT1…第1ルックアップテーブル、LUT2…第2ルックアップテーブル、Δd…距離分解能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12