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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140061
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】回路装置及び表示システム
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/133 20060101AFI20241003BHJP
   G09G 3/36 20060101ALI20241003BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20241003BHJP
   G09G 3/34 20060101ALI20241003BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20241003BHJP
   H05B 45/10 20200101ALI20241003BHJP
【FI】
G02F1/133 535
G09G3/36
G09G3/20 R
G09G3/20 612U
G09G3/20 621K
G09G3/20 631U
G09G3/20 642J
G09G3/20 680B
G09G3/34 J
G02F1/13357
H05B45/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051048
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【弁理士】
【氏名又は名称】西河 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】マズロエイ セブダニ マムード
(72)【発明者】
【氏名】黎 國立
(72)【発明者】
【氏名】アナンド クマー アナンダバイラバサミー
【テーマコード(参考)】
2H193
2H391
3K273
5C006
5C080
【Fターム(参考)】
2H193ZG03
2H193ZG14
2H193ZG43
2H193ZG48
2H193ZG50
2H193ZH23
2H193ZR06
2H391AA03
2H391AB04
2H391CB13
2H391FA07
3K273PA09
3K273QA02
3K273RA02
3K273RA11
3K273RA17
3K273TA03
3K273TA15
3K273TA26
3K273TA28
3K273TA29
3K273TA40
3K273TA76
3K273TA77
3K273TA78
3K273TA79
3K273UA22
5C006AA22
5C006AF13
5C006BB11
5C006BB29
5C006BF08
5C006BF09
5C006EA01
5C006EC09
5C006EC14
5C006FA04
5C080AA10
5C080BB05
5C080DD02
5C080EE30
5C080JJ02
5C080JJ07
5C080KK02
5C080KK20
5C080KK43
(57)【要約】
【課題】ローカルディミングにおいて表示コンテンツ又は環境等に最適な調光が可能な回路装置等を提供すること。
【解決手段】回路装置100は、記憶部170と光源輝度決定回路140とを含む。記憶部170は、光源素子と画素の距離に対する光の減衰率分布を示す複数の減衰率分布情報を記憶する。光源輝度決定回路140は、入力画像データと複数の減衰率分布情報に基づく調光処理により、複数の光源素子の各光源素子が発光する輝度を示す光源輝度情報を決定する。光源輝度決定回路140は、第1モードでは、入力画像データと、複数の減衰率分布情報のうち第1減衰率分布情報とに基づいて、光源輝度情報を決定する。光源輝度決定回路140は、第2モードでは、入力画像データと、複数の減衰率分布情報のうち第1減衰率分布情報とは減衰率分布が異なる第2減衰率分布情報とに基づいて、光源輝度情報を決定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源素子と表示パネルとを含む表示装置を制御する回路装置であって、
光源素子と画素の距離に対する光の減衰率分布を示す複数の減衰率分布情報を記憶する記憶部と、
入力画像データと前記複数の減衰率分布情報に基づく調光処理により、前記複数の光源素子の各光源素子が発光する輝度を示す光源輝度情報を決定する光源輝度決定回路と、
を含み、
前記光源輝度決定回路は、
第1モードでは、前記入力画像データと、前記複数の減衰率分布情報のうち第1減衰率分布情報とに基づいて、前記光源輝度情報を決定し、
第2モードでは、前記入力画像データと、前記複数の減衰率分布情報のうち前記第1減衰率分布情報とは前記減衰率分布が異なる第2減衰率分布情報とに基づいて、前記光源輝度情報を決定することを特徴とする回路装置。
【請求項2】
請求項1に記載された回路装置において、
前記第1減衰率分布情報は、
前記距離を入力とする第1ルックアップテーブルであり、
前記第2減衰率分布情報は、
前記距離を入力とする第2ルックアップテーブルであることを特徴とする回路装置。
【請求項3】
請求項1に記載された回路装置において、
前記第1モードは、
前記第2モードに比べて高輝度に表示する高輝度モードであり、
前記第2モードは、
前記第1モードに比べてハローの発生を低減するハロー低減モードであることを特徴とする回路装置。
【請求項4】
請求項3に記載された回路装置において、
前記第2減衰率分布情報の前記減衰率分布は、
前記第1減衰率分布情報の前記減衰率分布に比べて、前記距離に対する光の減衰度合いが高いことを特徴とする回路装置。
【請求項5】
請求項1に記載された回路装置において、
前記第1モード及び前記第2モードは、
環境輝度に応じて設定されるモードであることを特徴とする回路装置。
【請求項6】
請求項1に記載された回路装置において、
前記表示パネルの第1領域において、前記第1モードが設定され、
前記表示パネルの前記第1領域とは異なる第2領域において、前記第2モードが設定されることを特徴とする回路装置。
【請求項7】
請求項1に記載された回路装置において、
前記光源輝度決定回路は、
前記入力画像データにおける対象画素の画素値と前回の光源輝度情報とに基づいて、前記表示パネルにおいて前記対象画素を照明する輝度の要求変化量を求め、
前記第1モードでは、前記要求変化量と前記第1減衰率分布情報に基づいて前記前回の光源輝度情報を更新することで今回の光源輝度情報を求め、
前記第2モードでは、前記要求変化量と前記第2減衰率分布情報に基づいて前記前回の光源輝度情報を更新することで前記今回の光源輝度情報を求めることを特徴とする回路装置。
【請求項8】
請求項7に記載された回路装置において、
前記光源輝度決定回路は、
前記第1モードでは、前記対象画素の周囲に配置された光源素子である周囲光源素子に対して、前記第1減衰率分布情報に基づく重み付けで前記要求変化量を分配することで、前記周囲光源素子の光源輝度を更新し、
前記第2モードでは、前記周囲光源素子に対して、前記第2減衰率分布情報に基づく重み付けで前記要求変化量を分配することで、前記周囲光源素子の光源輝度を更新することを特徴とする回路装置。
【請求項9】
請求項7に記載された回路装置において、
前記光源輝度決定回路は、
前記要求変化量がゼロ又は負であるとき、前記前回の光源輝度情報を更新せずに前記今回の光源輝度情報にすることを特徴とする回路装置。
【請求項10】
請求項7に記載された回路装置において、
前記光源輝度決定回路は、
前記対象画素の周囲に配置されたn×m個の光源素子に対する前記前回の光源輝度情報に基づいて、前記n×m個の光源素子に対する前記今回の光源輝度情報を求めることを特徴とする回路装置。
【請求項11】
請求項1に記載された回路装置において、
複数の減衰率分布情報のうち照明輝度演算用の減衰率分布情報と、前記光源輝度決定回路が決定した前記光源輝度情報とに基づいて、前記表示パネルの対象画素が前記複数の光源素子により照明される輝度を示す照明輝度情報を演算する照明輝度演算回路と、
前記照明輝度情報に基づいて前記入力画像データを色補正する色補正回路と、
を含むことを特徴とする回路装置。
【請求項12】
請求項1に記載された回路装置において、
前記光源輝度決定回路は、
第3モードでは、前記入力画像データと、前記複数の減衰率分布情報のうち前記第1減衰率分布情報及び前記第2減衰率分布情報とは前記減衰率分布が異なる第3減衰率分布情報とに基づいて、前記光源輝度情報を決定することを特徴とする回路装置。
【請求項13】
請求項1に記載された回路装置において、
前記表示装置は、
ヘッドアップディスプレイ、メーターパネル、センターインフォメーションディスプレイ、又は電子ミラーであることを特徴とする回路装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載された回路装置と、
前記表示装置と、
を含むことを特徴とする表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路装置及び表示システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハロー効果によるアーティファクトを回避または低減するために、暗領域における急激なバックライトの変化を低減するように、LEDの駆動値を変化させるバックライト式表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2012-516458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表示パネルへ光を出射する発光素子の輝度を低減することで、その光に起因したハローが低減される。しかし、ハローの低減と、表示パネルを照明する輝度の低下とがトレードオフになるため、表示コンテンツ又は環境等に最適な調光が行われない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、複数の光源素子と表示パネルとを含む表示装置を制御する回路装置であって、光源素子と画素の距離に対する光の減衰率分布を示す複数の減衰率分布情報を記憶する記憶部と、入力画像データと前記複数の減衰率分布情報に基づく調光処理により、前記複数の光源素子の各光源素子が発光する輝度を示す光源輝度情報を決定する光源輝度決定回路と、を含み、前記光源輝度決定回路は、第1モードでは、前記入力画像データと、前記複数の減衰率分布情報のうち第1減衰率分布情報とに基づいて、前記光源輝度情報を決定し、第2モードでは、前記入力画像データと、前記複数の減衰率分布情報のうち前記第1減衰率分布情報とは前記減衰率分布が異なる第2減衰率分布情報とに基づいて、前記光源輝度情報を決定する回路装置に関係する。
【0006】
また本開示の他の態様は、上記の回路装置と、前記表示装置と、を含む表示システムに関係する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】電子機器の構成例。
図2】回路装置の詳細構成例。
図3】ルックアップテーブルLUTAの例。
図4】ルックアップテーブルLUTAの減衰率分布の例。
図5】ルックアップテーブルLUTBの例。
図6】ルックアップテーブルLUTBの減衰率分布の例。
図7】ルックアップテーブルLUTCの例。
図8】ルックアップテーブルLUTCの減衰率分布の例。
図9】二次元のルックアップテーブルの例。
図10】光源輝度決定回路が行う処理のフロー。
図11】周囲光源素子の例。
図12】照明輝度演算回路が行う処理のフロー。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1.電子機器、表示システム及び回路装置
図1は、本実施形態の表示システムを含む電子機器の構成例である。電子機器500は、処理装置300と表示システム400とを含む。電子機器500は、一例としては、メーターパネル、センターインフォメーションディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ又は電子ミラーを含む車載表示機器、テレビジョン装置、或いは、ディスプレイを含む情報処理装置である。
【0010】
表示システム400は、回路装置100と表示装置200とを含む。回路装置100は、例えば、半導体基板に複数の回路素子が集積された集積回路装置である。なお、図1には回路装置100と表示装置200を別の構成要素として記載したが、回路装置100が表示装置200内に含まれてもよい。
【0011】
表示装置200は、バックライト210と表示パネル220と表示ドライバー230と光源ドライバー240と表示コントローラー250とを含む。表示装置200の一例は、テレビジョン装置又は情報処理装置等に用いられるディスプレイである。或いは、表示装置200は、目への投写装置を含むヘッドマウントディスプレイ、或いは、スクリーンへの投写装置を含むヘッドアップディスプレイ等であってもよい。表示装置200がヘッドアップディスプレイであるとき、表示装置200は、更に、バックライト210から出射されて表示パネル220を透過した光をスクリーンに投影するための光学系を含む。
【0012】
バックライト210に対する平面視において、バックライト210には光源素子が2次元配置されている。光源素子は、電力供給により光を発する発光素子であり、例えば無機発光ダイオード、或いは有機発光ダイオードである。ローカルディミング制御において、2次元配置された各光源素子の光量が互いに独立に制御される。或いは、バックライト210は複数のエリアに分割されてもよい。平面視において、各エリアには複数の光源素子が配置される。エリア内に配置された光源素子は同一の光量に制御されると共に、各エリアの光量が互いに独立に制御される。
【0013】
光源素子の2次元配置の一例は、複数行と複数列の交点の全てに光源素子が配置された正方配置である。但し2次元配置は正方配置に限定されない。例えば、2次元配置は例えば菱形配置又は千鳥配置と呼ばれる配置であってもよい。この配置において、奇数行及び偶数行の一方と奇数列との交点、及び奇数行及び偶数行の他方と偶数列との交点に光源素子が配置され、それ以外の交点に光源素子が配置されない。
【0014】
光源ドライバー240は、回路装置100から光源輝度データDDIMを受信し、その光源輝度データDDIMに基づいてバックライト210の各光源素子を駆動する。光源ドライバー240は例えば集積回路装置である。なお、光源ドライバーが複数設けられ、その各光源ドライバーが別個の集積回路装置であってもよい。
【0015】
表示パネル220は、バックライト210からの光を透過し、その透過率が制御されることで画像を表示する電気光学パネルである。例えば、表示パネル220は液晶表示パネルである。
【0016】
表示コントローラー250は、回路装置100から画像データIMBを受信し、その画像データIMBと、表示タイミングを制御するタイミング制御信号とを、表示ドライバー230に送信する。なお、表示コントローラー250は、受信した画像データIMBに対する階調補正、ホワイトバランス補正又は拡大縮小等の画像処理を行ってもよい。
【0017】
表示ドライバー230は、受信した画像データとタイミング制御信号に基づいて表示パネルを駆動することで、表示パネル220に画像を表示させる。なお、表示コントローラー250と表示ドライバー230の各々が別の集積回路装置で構成されてもよいし、一体の集積回路装置で構成されてもよい。
【0018】
処理装置300は、回路装置100に画像データIMAを送信する。処理装置300は、CPU、GPU、マイクロコンピューター、DSP、ASIC又はFPGA等のプロセッサーである。CPUはCentral Processing Unitの略である。GPUはGraphics Processing Unitの略である。DSPはDigital Signal Processorの略である。ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略である。FPGAはField Programmable Gate Arrayの略である。
【0019】
回路装置100は、画像データIMAを受信し、その画像データIMAに基づいて表示装置200のローカルディミング制御を行う。回路装置100は、画像データIMAの輝度に応じてバックライト210の各光源素子又は各エリアの発光輝度を調光し、その調光で得られた光源輝度情報を光源輝度データDDIMとして光源ドライバー240に出力する。また回路装置100は、光源輝度情報に基づいて画像データIMAに対する色補正を行い、色補正後の画像データIMBを表示コントローラー250に出力する。
【0020】
図2は、回路装置の詳細構成例である。回路装置100は、インターフェース回路110と光源制御回路130と光源輝度決定回路140と照明輝度演算回路150と色補正回路160と記憶部170とを含む。以下、ローカルディミングにおいてバックライト210の発光素子毎に独立に調光される場合を例に説明するが、複数の発光素子を含むエリア毎に独立に調光されてもよい。
【0021】
インターフェース回路110は、処理装置300から画像データIMAを受信する。インターフェース回路110は、LVDS、パラレルRGB方式又はディスプレイポート等の様々な画像インターフェース方式のインターフェース回路であってよい。LVDSはLow Voltage Differential Signalingの略である。
【0022】
記憶部170は、光源素子から表示パネルに届く光の減衰率分布を示すルックアップテーブルを減衰率分布情報として記憶する。図2には、記憶部170が、互いに減衰率分布が異なる3種類のルックアップテーブルLUTA、LUTB及びLUTCを記憶する例を示す。但し、ルックアップテーブルの数は2以上であればよい。減衰率分布は、光源素子から画素までの距離と、光源素子が画素を照明する光の減衰率との関係を示す。減衰率分布は、減衰特性又は輝度分布とも呼ばれる。記憶部170は、レジスター又はメモリーである。メモリーは、RAM等の揮発性メモリー、或いは、OTPメモリー又はEEPROM等の不揮発性メモリーである。RAMはRandom Access Memoryの略である。OTPはOne Time Programmableの略である。EEPROMはElectrically Erasable Programmable Read Only Memoryの略である。
【0023】
光源輝度決定回路140にはインターフェース回路110から画像データIMAが入力される。光源輝度決定回路140に入力される画像データIMAを入力画像データとも呼ぶ。光源輝度決定回路140は、ルックアップテーブルLUTA、LUTB及びLUTCのうち、モードに応じたルックアップテーブルを記憶部170から読み出す。例えば、処理装置300が記憶部170へモード設定を書き込む、或いは記憶部170の不揮発性メモリーに予めモード設定が書き込まれている。光源輝度決定回路140は、記憶部170からモード設定を読み出し、そのモード設定に対応したルックアップテーブルを読み出す。光源輝度決定回路140は、画像データIMAと、記憶部170から読み出したルックアップテーブルとを用いて調光処理を行うことで、各光源素子の発光輝度を示す光源輝度情報を決定し、その光源輝度情報を光源輝度データLLDとして出力する。
【0024】
設定可能なモードは、ハロー低減モードを含む。ハローとは、高コントラストな画像において明部の周囲の暗部に光が滲む現象のことである。明部の背後にある光源素子は高輝度で発光するので、その光が、周囲の暗部から漏れることによってハローが生じる。ハロー低減モードは、表示輝度とハロー低減のバランスにおいてハロー低減を重視したモードである。また、設定可能なモードは、高輝度モードを含む。高輝度モードは、表示輝度とハロー低減のバランスにおいて表示輝度を重視したモードである。また、設定可能なモードは、更にバランスモードを含んでもよい。バランスモードは、ハロー低減モードと高輝度モードの中間的なモードであり、表示輝度とハロー低減のバランスを重視したモードである。各モードに対応したルックアップテーブルは、互いに減衰率分布が異なる。各モードに対応して、どのような減衰率分布を用いるかは、自在にプログラム可能である。ルックアップテーブルの具体例については後述する。
【0025】
光源制御回路130は、光源輝度データLLDに基づいて光源ドライバー240を制御する。具体的には、光源制御回路130は、発光素子の発光タイミング又は発光輝度の更新タイミングを制御するタイミング制御信号を光源ドライバー240に出力すると共に、光源輝度データLLDを光源輝度データDDIMとして光源ドライバー240に出力する。光源ドライバー240は、タイミング制御信号により規定されたタイミングで、光源輝度データDDIMが示す各光源素子の発光輝度に対応したパルス幅のPWM信号により各発光素子を駆動する。これにより、各発光素子が、ローカルディミングで制御される発光輝度で発光する。
【0026】
照明輝度演算回路150は、ルックアップテーブルLUTA、LUTB及びLUTCのうち、照明輝度の演算に用いられるルックアップテーブルを記憶部170から読み出す。なお、モードに対応したルックアップテーブルLUTA、LUTB及びLUTCとは別個に、照明輝度の演算に用いられるルックアップテーブルが用意されていてもよい。照明輝度演算回路150は、光源輝度データLLDと、記憶部170から読み出したルックアップテーブルとに基づいて照明輝度情報を演算し、その照明輝度情報を照明輝度データLPXとして出力する。照明輝度情報は、バックライト210により表示パネル220が照明されるときの、表示パネル220の各画素における照明輝度を示す。
【0027】
色補正回路160は、照明輝度データLPXに基づいて画像データIMAの色補正を行い、補正後の画像データIMBを表示ドライバー230に出力する。具体的には、色補正回路160は、各画素の画素データに、その画素に届く光の輝度の逆数を乗算し、その結果をその画素の新たな画素データとする。
【0028】
なお、光源制御回路130、光源輝度決定回路140、照明輝度演算回路150及び色補正回路160は、デジタル信号を処理するロジック回路である。光源制御回路130、光源輝度決定回路140、照明輝度演算回路150及び色補正回路160の各々が、別個にロジック回路で構成されてもよいし、それらの一部又は全部が一体のロジック回路で構成されてもよい。或いは、DSP等のプロセッサーが、光源制御回路130、光源輝度決定回路140、照明輝度演算回路150及び色補正回路160の機能が記述された命令セット又はプログラムを実行することで、それらの回路の機能が実現されてもよい。
【0029】
或いは、回路装置100は、CPU、GPU、マイクロコンピューター、DSP、ASIC又はFPGA等のプロセッサーであってもよい。そして、プロセッサーが、回路装置100の各部の機能が記述された命令セット又はプログラムを実行することで、回路装置100の機能が実現されてもよい。
【0030】
回路装置100は歪み補正回路を含んでもよい。歪み補正回路は、表示パネル220に表示された画像をスクリーン等に投影する光学系に起因する画像歪み、又はスクリーンの歪みに起因する画像歪みを、補正する。具体的には、歪み補正回路は、インターフェース回路110が受信した画像データIMAに対して、上記画像歪みをキャンセル又は低減する画像補正を行い、補正後の画像データを光源輝度決定回路140、照明輝度演算回路150及び色補正回路160に出力する。但し、歪み補正回路は回路装置100ではなく処理装置300に設けられてもよい。
【0031】
以上では減衰率分布情報がルックアップテーブルである例を説明したが、減衰率分布情報は減衰率分布を示す情報であればよい。減衰率分布情報は、例えば、減衰率分布を示す関数であってもよい。関数の引数は距離であり、戻り値は減衰率である。記憶部170は、関数を規定する関数情報を記憶し、光源輝度決定回路140及び照明輝度演算回路150は、関数情報により規定された関数に距離を入力することで、減衰率を得る。関数情報は、例えば、関数に用いられる係数である。なお、以下では減衰率分布情報がルックアップテーブルである例を説明する。
【0032】
以上では離散的な複数のモードが用いられる例を説明したが、連続的に設定可能なモードが用いられてもよい。例えば、ハロー低減モードと高輝度モードの間で連続的にモード設定可能であってもよい。減衰率分布情報は、一例として関数であり、その関数の係数が連続的なモードに応じて連続的に変化する。なお、以下では離散的な複数のモードが用いられる例を説明する。
【0033】
2.光源輝度決定回路
以下、光源輝度決定回路140が行う処理の詳細を説明する。まず、ルックアップテーブルLUTA、LUTB及びLUTCの例を示す。ルックアップテーブルLUTA、LUTB及びLUTCは、入力された距離情報に対して、その距離情報に対応付けられた減衰率情報を出力する。以下では距離情報が距離の二乗であり、減衰率情報が100分率で表した減衰率である例を示すが、これに限定されない。距離情報は距離又は画素数等であってもよい。減衰率情報は任意の単位で表された減衰率であってもよい。
【0034】
図3は、ルックアップテーブルLUTAの例である。ルックアップテーブルLUTAは減衰率分布lsfのテーブルである。lsfの右肩の乗数は、ここではlsfの累乗を意味している。図4は、ルックアップテーブルLUTAの減衰率分布の例である。
【0035】
光源素子からの光は拡散シート等によって拡散され、その拡散光が表示パネルに照射される。このとき、拡散による光の輝度分布が減衰率分布である。但し、光源輝度の算出に用いられる減衰率分布は、現実の減衰率分布でなくてもよく、光源輝度の算出用にプログラムされた仮想的な減衰率分布であってよい。図3及び図4には、フラットな特性の減衰率分布を例として示している。
【0036】
図3に示すように、ルックアップテーブルLUTAは、距離の二乗が格納されたルックアップテーブルLUTA1と、減衰率が格納されたルックアップテーブルLUTA2とを含む。
【0037】
ルックアップテーブルLUTA1の各インデックスには、そのインデックスに対応付けられた距離の二乗が格納されている。ここではインデックスが0~10である例を示すが、インデックスの数は任意である。また距離が0~100の範囲で等間隔に刻まれる例を示すが、距離の範囲は任意であり、刻みは等間隔でなくてもよい。インデックスは、一例としてメモリーアドレスである。
【0038】
ルックアップテーブルLUTA2の各インデックスには、そのインデックスに対応付けられた減衰率が格納されている。減衰率は、最大輝度を100%として規格化された値で示される。減衰率分布lsfにおいては、全てのインデックスの減衰率が100%である。
【0039】
例えば、距離の二乗が300であるとき、光源輝度決定回路140はルックアップテーブルLUTA1から各インデックスの距離の二乗を順次に読み出して300と比較することで、300を挟む100及び400に対応したインデックス1及び2を決定する。光源輝度決定回路140は、ルックアップテーブルLUTA2からインデックス1及び2の減衰率100%及び100%を読み出し、補間により、距離の二乗300に対応した減衰率を求める。ここでは分布特性がフラットなので補間後の減衰率は100%となる。
【0040】
図5は、ルックアップテーブルLUTBの例である。ルックアップテーブルLUTBは減衰率分布lsfのテーブルである。図6は、ルックアップテーブルLUTBの減衰率分布の例である。減衰率分布lsfは、一例として現実の減衰率分布又はそれを近似した減衰率分布であるが、光源輝度の算出用にプログラムされた仮想的な減衰率分布であってもよい。図5及び図6には、減衰率分布lsfがガウス分布である例を示す。
【0041】
図5に示すように、ルックアップテーブルLUTBは、距離の二乗が格納されたルックアップテーブルLUTB1と、減衰率が格納されたルックアップテーブルLUTB2とを含む。ルックアップテーブルの内容と参照手法は、ルックアップテーブルLUTAと同様である。
【0042】
図7は、ルックアップテーブルLUTCの例である。ルックアップテーブルLUTCは減衰率分布lsfのテーブルである。図8は、ルックアップテーブルLUTCの減衰率分布の例である。減衰率分布lsfは、一例として現実の減衰率分布を二乗した分布であり、仮想的な減衰率分布である。但し、減衰率分布lsfは、現実の減衰率分布を二乗した分布に限らず、任意にプログラムされた分布であってよい。
【0043】
図7に示すように、ルックアップテーブルLUTCは、距離の二乗が格納されたルックアップテーブルLUTC1と、減衰率が格納されたルックアップテーブルLUTC2とを含む。ルックアップテーブルの内容と参照手法は、ルックアップテーブルLUTAと同様である。
【0044】
ルックアップテーブルLUTBの減衰率分布は、ルックアップテーブルLUTAの減衰率分布に比べて、距離に対する減衰度合いが高い。ルックアップテーブルLUTCの減衰率分布は、ルックアップテーブルLUTBの減衰率分布に比べて、距離に対する減衰度合いが高い。「距離に対する減衰度合いが高い」とは、減衰率分布において所定の減衰率まで低下する距離が短いことを意味する。所定の減衰率は任意であってよいが、例えば50%~0%の範囲内の減衰率である。或いは、「距離に対する減衰度合いが高い」とは、距離が増える方向の距離変化に対して、減衰率の減少幅が大きいことを意味する。或いは、
「距離に対する減衰度合いが高い」とは、その減衰率分布が表す光の拡がりが相対的に狭いことを意味する。図3図8には、距離に対して滑らかに変化する減衰率分布を示したが、減衰率分布は距離に対して段階的に変化してもよい。
【0045】
図3図5及び図7には一次元のルックアップテーブルを示したが、図9に示すように二次元のルックアップテーブルが用いられてもよい。図9には、減衰率分布lsfの二次元ルックアップテーブルの例を示すが、減衰率分布lsf、lsfについても同様に二次元ルックアップテーブルが用いられる。図9においてx距離は、表示パネルの水平走査方向における距離であり、y距離は、表示パネルの垂直走査方向における距離である。図9のルックアップテーブルは、光源素子の位置を原点とするxy平面の1/4に相当する減衰率分布を示している。x距離及びy距離を距離の絶対値とすれば、xy平面の残り3/4に対しても対称にルックアップテーブルを適用可能である。なお、二次元のルックアップテーブルにおいて、一次元ルックアップテーブルと同様に距離の二乗が用いられてもよい。一次元ルックアップテーブルは回転対称な減衰率分布を表すが、二次元ルックアップテーブルは非回転対称な減衰率分布のテーブルであってもよい。
【0046】
図10は、光源輝度決定回路が行う処理のフローである。
【0047】
ステップS1において、光源輝度決定回路140は、設定されているモードを確認する。モードが高輝度モードである場合には、ステップS2において光源輝度決定回路140はルックアップテーブルLUTA又はLUTBを選択する。モードがハロー低減モードである場合には、ステップS3において光源輝度決定回路140はルックアップテーブルLUTCを選択する。即ち、ハロー低減モードにおいては、距離に対する減衰度合いが高い減衰率分布のルックアップテーブルが選択されることになる。なお、更にバランスモードが設けられた場合には、高輝度モードにおいてLUTAが選択され、バランスモードにおいてLUTBが選択され、ハロー低減モードにおいてLUTCが選択されてもよい。
【0048】
モードは、例えば環境輝度に応じて自動的に設定されてもよい。即ち、表示システム400を搭載した電子機器又は移動体等に光センサーが搭載され、処理装置300が光センサーの検出信号に基づいてモード設定を回路装置100に送信し、光源輝度決定回路140が、そのモード設定に基づいてルックアップテーブルを選択してもよい。例えば、ある輝度より明るい環境において高輝度モードが選択され、ある輝度より暗い環境においてハロー低減モードが設定されてもよい。或いは、モードは、環境輝度に応じたユーザー操作によって手動で設定されてもよい。即ち、表示システム400を搭載した電子機器又は移動体等のユーザーが、不図示の操作部を介して環境輝度に応じたモード設定を行い、そのモード設定を処理装置300が回路装置100に送信してもよい。例えば、表示システム400が自動車に搭載される場合において、ヘッドライトのオンオフ操作に連動してモードが選択されてもよい。或いは、モードは、環境輝度に依らず任意のユーザー操作に基づいて設定されてもよい。
【0049】
ステップS4において、光源輝度決定回路140は、光源輝度情報を初期化する。例えば、全ての光源の輝度値がゼロに初期化される。
【0050】
ステップS5において、光源輝度決定回路140は、画像データIMAに含まれる画素から1つの画素を選択する。選択された画素を対象画素と呼ぶこととする。ステップS5からステップS8のループにおいて、対象画素が順次に選択される。例えば、初回のステップS5において画像データIMAの第1走査ラインの第1画素が選択され、以降のステップS5において順次に第2画素、第3画素、・・・が選択され、第1走査ラインの画素が全て選択されると、第2走査ラインの画素が順次に選択され、それが最終走査ラインまで繰り返される。
【0051】
ステップS6において、光源輝度決定回路140は対象画素の周囲にあるn×m個の光源素子を選択する。このn×m個の光源素子を周囲光源素子とも呼ぶ。図11は、周囲光源素子の例である。ここではn=4、m=4の例を示すが、nとmは各々2以上の整数であればよい。図11において、x方向は表示パネルの水平走査方向であり、y方向は表示パネルの垂直走査方向である。
【0052】
対象画素22の位置を(i,j)とする。iとjは整数であり、位置(i,j)は、第j走査ラインの第i画素であることを示す。光源輝度決定回路140は、位置(i,j)を基準に、+x方向と-x方向の各々において直近2列、且つ+y方向と-y方向の各々において直近2行の光源素子L1~L16を、選択する。kを1以上16以下の整数としたとき、光源素子Lkの位置を(xk,yk)と表す。
【0053】
図10のステップS7において、画像データIMAにおける対象画素22の画素値と、ステップS2又はS3で選択されたルックアップテーブルとを用いて、ステップS6で選択されたn×m個の光源素子の各光源素子に対する光源輝度情報を更新する。
【0054】
ステップS8において、光源輝度決定回路140は全ての画素が対象画素として選択されたか否かを判定し、全ての画素が選択された場合には処理を終了し、選択されていない画素がある場合にはステップS5に戻る。
【0055】
図11の例を用いて、ステップS7における光源輝度情報の更新処理を説明する。光源輝度決定回路140は、光源素子L1~L16から対象画素22が受ける光量に要求される変化量を示す要求変化量Δijを、下式(1)及び(2)により求める。
【0056】
【数1】
【0057】
【数2】
【0058】
上式(1)において、INTijは、画像データIMAにおける対象画素22の画素値に基づくピクセル強度である。ピクセル強度は、例えば対象画素22のRGB画素値から算出される輝度値、或いは対象画素22のRGB画素値のうち最大値である。上式(2)に示すように、lsf(k)は、光源素子Lkが対象画素22を照らす光の減衰率であり、現実の減衰率分布又はそれを近似した減衰率分布から求められる。上式(2)では距離の二乗を引数としているが、距離を引数としてもよい。光源輝度決定回路140は、ルックアップテーブルLUTBが現実の減衰率分布又はそれを近似した減衰率分布である場合には、ルックアップテーブルLUTBを用いてlsf(k)を求める。或いは、記憶部170が、ルックアップテーブルLUTA、LUTB及びLUTC以外に、lsf(k)を演算するためのルックアップテーブルを別途記憶しており、光源輝度決定回路140は、そのルックアップテーブルを用いてlsf(k)を求めてもよい。powc(k)は、光源素子Lkの前回の光源輝度情報である。前回の光源輝度情報とは、今回の対象画素22の1つ前に選択された前回の対象画素21を用いて算出された光源輝度情報である。前回の対象画素21は、x方向において位置(i,j)から1つ前の位置(i-1,j)の画素である。
【0059】
光源輝度決定回路140は、下式(3)及び(4)により、要求変化量Δijを光源素子Lkの光源輝度情報に分配することで、光源輝度情報を更新する。下式(3)の右辺において、Δij>0であるときの第2項の分母はkに依らず共通なので、要求変化量Δijがlsf(k)で重み付けされる。lsf(k)は、モードに応じて選択された減衰率分布情報である。例えば、図10のフローにおいては、高輝度モードではx=0又は1が選択され、ハロー低減モードにおいてはx=2が選択される。xが大きいほど減衰率分布が速く減衰するので、対象画素22から近い光源素子に要求変化量Δijが分配されやすく、対象画素22から遠い光源素子に要求変化量Δijが分配されにくくなる。これによって、高輝度な画素から遠い光源素子の光源輝度が上がりにくくなり、ハロー低減効果が得られる。
【0060】
【数3】
【0061】
【数4】
【0062】
上式(3)において、powu(k)は、今回の光源輝度情報、つまり更新後の光源輝度情報である。上式(4)に示すように、lsf(k)は、光源素子Lkが対象画素22を照らす光の減衰率である。上式(4)では距離の二乗を引数としているが、距離を引数としてもよい。xは0以上の整数である。図3図8の例ではx=0、1、2である。即ち、光源輝度決定回路140は、x=0のときにはルックアップテーブルLUTAを参照してlsf(k)を求め、x=1のときにはルックアップテーブルLUTBを参照してlsf(k)を求め、x=2のときにはルックアップテーブルLUTCを参照してlsf(k)を求める。但し、3以上のxに対応した減衰率分布情報が用いられてもよい。ここでの減衰率分布情報lsf(k)は、仮想的な減衰率分布であってよい。lsf(k)は、現実の減衰率分布又はそれを近似した減衰率分布であってもよいし、仮想的な減衰率分布であってもよい。
【0063】
光源輝度決定回路140は、下式(5)により光源輝度情報を更新してもよい。Δij>0であるときの第2項の分母において、lsfx+1(α)ではなくlsf(α)×lsf(α)が計算される。lsf(α)がlsfのx乗ではなく任意にプログラムされた減衰率分布である場合には、lsfx+1≠lsf×lsfとなる可能性がある。このような場合には、下式(5)により光源輝度情報が更新されてもよい。lsf(α)は、現実の減衰率分布又はそれを近似した減衰率分布から求められる。
【0064】
【数5】
【0065】
3.照明輝度演算回路
図12は、照明輝度演算回路が行う処理のフローである。
【0066】
ステップS11において、照明輝度演算回路150は、画像データIMAに含まれる画素から1つの画素を選択する。選択された画素を対象画素と呼ぶこととする。ステップS11からステップS14のループにおいて、対象画素が順次に選択される。例えば、初回のステップS11において画像データIMAの第1走査ラインの第1画素が選択され、以降のステップS11において順次に第2画素、第3画素、・・・が選択され、第1走査ラインの画素が全て選択されると、第2走査ラインの画素が順次に選択され、それが最終走査ラインまで繰り返される。
【0067】
ステップS12において、照明輝度演算回路150は対象画素の周囲にあるs×t個の光源素子を選択する。sとtは各々2以上の整数であればよい。s×t個は図10のn×m個と同じであってもよいし、異なってもよい。またs×t個の光源素子ではなく全ての光源素子から照明輝度情報を求めるようにしてもよい。
【0068】
ステップS13において、照明輝度演算回路150は、選択されたs×t個の光源素子の光源輝度情報と、照明輝度演算用のルックアップテーブルとを用いて、対象画素の照明輝度情報を求める。具体的には、照明輝度演算回路150は下式(6)により対象画素の照明輝度情報を求める。
【0069】
【数6】
【0070】
上式(6)において、PL(i,j)は、位置(i,j)の画素に対する照明輝度情報である。pow(β)は、光源輝度決定回路140が決定した光源輝度情報である。即ち、図10のステップS5~S8のループが画像データIMAの最後の画素まで実行された後における、上式(3)又は(5)のpowuが上式(6)のpowとして用いられる。なお、ステップS5~S8のループが画像データIMAの最後の画素まで実行されていなくても、対象画素が進むに従って光源素子の光源輝度情報の更新が順次に終了していくので、その更新が終了した光源輝度情報がpowとして用いられてもよい。lsf(β)は、現実の減衰率分布又はそれを近似した減衰率分布から求められる。照明輝度演算回路150は、ルックアップテーブルLUTBが現実の減衰率分布又はそれを近似した減衰率分布である場合には、ルックアップテーブルLUTBを用いてlsf(β)を求める。或いは、記憶部170が、ルックアップテーブルLUTA、LUTB及びLUTC以外に、lsf(β)を演算するためのルックアップテーブルを別途記憶しており、照明輝度演算回路150は、そのルックアップテーブルを用いてlsf(β)を求めてもよい。
【0071】
ステップS14において、照明輝度演算回路150は全ての画素が対象画素として選択されたか否かを判定し、全ての画素が選択された場合には処理を終了し、選択されていない画素がある場合にはステップS11に戻る。
【0072】
以上に説明した本実施形態の回路装置100は、複数の光源素子と表示パネル220とを含む表示装置200を制御する。回路装置100は、記憶部170と光源輝度決定回路140とを含む。記憶部170は、光源素子と画素の距離に対する光の減衰率分布を示す複数の減衰率分布情報を記憶する。光源輝度決定回路140は、入力画像データと複数の減衰率分布情報に基づく調光処理により、複数の光源素子の各光源素子が発光する輝度を示す光源輝度情報を決定する。光源輝度決定回路140は、第1モードでは、入力画像データと、複数の減衰率分布情報のうち第1減衰率分布情報とに基づいて、光源輝度情報を決定する。光源輝度決定回路140は、第2モードでは、入力画像データと、複数の減衰率分布情報のうち第2減衰率分布情報とに基づいて、光源輝度情報を決定する。第2減衰率分布情報の減衰率分布は、第1減衰率分布情報の減衰率分布とは異なる。
【0073】
本実施形態によれば、モードに応じた減衰率分布に基づいて光源輝度情報が決定される。ローカルディミングにおいては入力画像データの輝度に応じて各光源素子が調光されるが、その調光に用いられる減衰率分布を変えることによって調光結果を変えることができる。即ち、光源素子の輝度を変えても、その光源素子から光の届かない画素への影響はないので、光源素子から光の届く範囲にある画素の画素データに基づいて光源素子が調光される。減衰率分布は、光源素子からの光の拡散を示すものであり、その減衰率分布を変えることによって、光源素子からどの程度の範囲に光が届くと看做すのかを、変えることができる。本実施形態によれば、モードに応じて減衰率分布情報が変わることで調光が変わるので、モードを選択することで、表示コンテンツ又は環境等に最適な調光を選択できる。
【0074】
なお、図2の例では入力画像データは画像データIMAに対応する。図10の例では第1モードは高輝度モードに対応し、第1減衰率分布情報はルックアップテーブルLUTA又はLUTBに対応し、第2モードはハロー低減モードに対応し、第2減衰率分布情報はルックアップテーブルLUTCに対応する。但し、第1モード及び第2モードは任意のモードであってもよい。例えば、第1モードがバランスモードであり、第2モードがハロー低減モードであってもよい。或いは、第1モードが高輝度モードであり、第2モードがバランスモードであってもよい。減衰率分布情報はルックアップテーブルに限らず、上述のように関数情報であってもよい。
【0075】
また本実施形態では、第1減衰率分布情報は、距離を入力とする第1ルックアップテーブルである。第2減衰率分布情報は、距離を入力とする第2ルックアップテーブルである。
【0076】
本実施形態によれば、光源輝度決定回路140は、第1モードにおいて、第1減衰率分布をテーブル化した第1ルックアップテーブルを参照することで、第1減衰率分布情報に基づく光源輝度情報の決定を行うことができる。また、光源輝度決定回路140は、第2モードにおいて、第2減衰率分布をテーブル化した第2ルックアップテーブルを参照することで、第2減衰率分布情報に基づく光源輝度情報の決定を行うことができる。
【0077】
また本実施形態では、第1モードは、第2モードに比べて高輝度に表示する高輝度モードであり、第2モードは、第1モードに比べてハローの発生を低減するハロー低減モードである。
【0078】
本実施形態によれば、第1モードを選択することで、表示コンテンツを高輝度に表示することが可能となる。一方、第2モードを選択することで、明部と暗部が隣り合うようなハローが発生しやすい状況において光源素子の発光輝度を抑え、ハローを低減できる。これにより、ハローの低減と、表示パネルを照明する輝度の低下とのトレードオフにおいて、モードを選択することで、表示コンテンツ又は環境等に最適な調光を行うことができる。
【0079】
また本実施形態では、第2減衰率分布情報の減衰率分布は、第1減衰率分布情報の減衰率分布に比べて、距離に対する光の減衰度合いが高い。
【0080】
減衰度合いが高い減衰率分布は、減衰度合いが低い減衰率分布に比べて、光源素子から距離が離れた画素に光が届きにくいことを意味する。光源素子から光の届く範囲にある画素の画素データに基づいて光源素子が調光されることから、減衰度合いが高い減衰率分布を用いた場合には高輝度画素から遠い光源素子の輝度が上がりにくくなる。これにより、ハロー低減モードにおいて、高輝度画素から遠い光源素子の輝度が上がりにくくなるので、高輝度画素の周辺の暗部に光が当たりにくくなり、ハローが低減される。
【0081】
また本実施形態では、第1モード及び第2モードは、環境輝度に応じて設定されるモードである。
【0082】
環境輝度に応じて適切な調光が異なる。即ち、昼間の屋外等の明るい環境においては、ハローは目立ちにくいと共に高輝度な表示が必要である。一方、日陰又は夜間等の暗い環境においてはハローが目立ちやすいと共に表示は比較的低輝度であってもよい。本実施形態によれば、環境輝度に応じてモードが設定されることで、環境輝度に応じて適切に調光できる。
【0083】
また本実施形態では、表示パネルの全領域において同一のモードが設定される例を説明したが、これに限定されない。即ち、表示パネルの第1領域において、第1モードが設定され、表示パネルの第1領域とは異なる第2領域において、第2モードが設定されてもよい。
【0084】
具体的には、記憶部170は、領域を規定する情報、及び各領域のモード設定の情報を記憶している。これらの情報は処理装置300から記憶部170に書き込まれてもよいし、或いは記憶部170が不揮発性メモリーを含む場合において、情報が事前に不揮発性メモリーに書き込まれてもよい。光源輝度決定回路140は、記憶部170に記憶される情報に基づいて、対象画素が属する領域を判定し、その領域に設定されるモードの減衰率分布情報を記憶部170から読み出し、その減衰率分布情報を用いて光源輝度情報を決定する。
【0085】
本実施形態によれば、表示パネルの領域に応じて、その領域の表示コンテンツ等に最適な調光を選択できる。例えば、暗部の中に高輝度な文字又はアイコン等が表示される領域においては、ハロー低減モードが設定され、ナビゲーション画面等のようにハローが比較的出にくい画像が表示される領域においては、高輝度モードが設定されてもよい。或いは、高輝度な文字又はアイコン等が表示される領域であっても、重要な文字又はアイコンが表示される領域においては、高輝度モードが設定され、重要度が低い文字又はアイコンが表示される領域においては、ハロー低減モードが設定されてもよい。
【0086】
また本実施形態では、上式(1)で説明したように、光源輝度決定回路140は、入力画像データにおける対象画素の画素値と前回の光源輝度情報powc(k)とに基づいて、表示パネル220において対象画素を照明する輝度の要求変化量Δijを求める。上式(3)又は(5)で説明したように、光源輝度決定回路140は、第1モードでは、要求変化量Δijと第1減衰率分布情報に基づいて前回の光源輝度情報powc(k)を更新することで今回の光源輝度情報powu(k)を求める。光源輝度決定回路140は、第2モードでは、要求変化量Δijと第2減衰率分布情報に基づいて前回の光源輝度情報powc(k)を更新することで今回の光源輝度情報powu(k)を求める。
【0087】
具体的には、光源輝度決定回路140は、第1モードでは、対象画素の周囲に配置された光源素子である周囲光源素子に対して、第1減衰率分布情報に基づく重み付けで要求変化量Δijを分配することで、周囲光源素子の光源輝度を更新する。光源輝度決定回路140は、第2モードでは、周囲光源素子に対して、第2減衰率分布情報に基づく重み付けで要求変化量Δijを分配することで、周囲光源素子の光源輝度を更新する。
【0088】
例えば、図10のフローにおいて高輝度モードを第1モードとしたとき、第1モードにおいてルックアップテーブルLUTA又はLUTBが選択される。即ち、上式(3)又は(5)においてx=0又は1であり、第1減衰率分布情報はlsf又はlsfである。このとき、要求変化量Δijはlsf(k)又はlsf(k)に基づく重み付けで、光源素子Lkに分配される。またハロー低減モードを第2モードとしたとき、第2モードにおいてルックアップテーブルLUTCが選択される。即ち、上式(3)又は(5)においてx=2であり、第2減衰率分布情報はlsfである。このとき、要求変化量Δijはlsf(k)に基づく重み付けで、光源素子Lkに分配される。
【0089】
本実施形態によれば、モードに応じた減衰率分布に基づく重み付けで、要求変化量Δijが対象画素の周囲の光源素子に分配される。これにより、光の拡がりが大きい減衰率分布の場合には、対象画素から遠い光源素子まで要求変化量Δijが分配されて輝度が上がりやすく、光の拡がりが小さい減衰率分布の場合には、対象画素から遠い光源素子には要求変化量Δijが分配されにくく輝度が上がりにくい。前者は、光源の輝度を重視した調光となるので、高輝度モードに相当する。後者は、高輝度な表示物から離れた光源素子の輝度が上がりにくい調光となるので、ハロー低減モードに相当する。
【0090】
また本実施形態では、上式(3)又は(5)に示すように、光源輝度決定回路140は、要求変化量Δijがゼロ又は負であるとき、前回の光源輝度情報powc(k)を更新せずに今回の光源輝度情報powu(k)にする。
【0091】
例えば同じような輝度の画素が続く場合には、光源輝度情報の更新が繰り返されて十分な輝度になると、それ以降は要求変化量Δijがゼロになる。要求変化量Δijがゼロの場合には、それを用いて光源輝度情報を更新する意味がない。また、高輝度な画素に対して調光された後に低輝度な画素があると、要求変化量Δijが負になる。負の要求変化量Δijで更新すると光源輝度が下がるが、そうすると高輝度な画素に合わせて調光した光源輝度が下がってしまい、光量不足となる。要求変化量Δijが負の場合に光源輝度情報を更新しないことで、光量不足を防止できる。
【0092】
また本実施形態では、光源輝度決定回路140は、対象画素の周囲に配置されたn×m個の光源素子に対する前回の光源輝度情報powc(k)に基づいて、n×m個の光源素子に対する今回の光源輝度情報powu(k)を求める。
【0093】
本実施形態によれば、更新処理の対象を、対象画素の周囲に配置されたn×m個の光源素子に限定することで、バックライト210の全ての光源素子を対象として光源輝度情報を更新する場合に比べて、処理負荷を低減できる。
【0094】
また本実施形態では、回路装置100は、照明輝度演算回路150と色補正回路160とを含む。照明輝度演算回路150は、複数の減衰率分布情報のうち照明輝度演算用の減衰率分布情報と、光源輝度決定回路140が決定した光源輝度情報pow(β)とに基づいて、表示パネル220の対象画素が複数の光源素子により照明される輝度を示す照明輝度情報PL(i,j)を演算する。色補正回路160は、照明輝度情報PL(i,j)に基づいて入力画像データを色補正する。
【0095】
本実施形態によれば、光源輝度決定回路140がモードに応じた減衰率分布情報を用いる一方で、光源輝度情報が決定された後においては、照明輝度演算回路150が照明輝度演算用の減衰率分布情報を用いて、各画素の照明輝度を演算する。これにより、現実の減衰率分布又はそれを近似した減衰率分布に即して、各画素に実際に届く光の輝度又はそれを近似した輝度が演算される。これにより、モードに依らない色補正が実行される。
【0096】
また本実施形態では、光源輝度決定回路140は、第3モードでは、入力画像データと、複数の減衰率分布情報のうち第3減衰率分布情報とに基づいて、光源輝度情報を決定してもよい。第3減衰率分布情報の減衰率分布は、第1減衰率分布情報の減衰率分布及び第2減衰率分布情報の減衰率分布とは異なる。
【0097】
例えば、第1モードは高輝度モードであり、第2モードはハロー低減モードであり、第3モードはバランスモードであってもよい。このとき、第1減衰率分布情報はルックアップテーブルLUTAに対応し、第2減衰率分布情報はルックアップテーブルLUTCに対応し、第3減衰率分布情報はルックアップテーブルLUTBに対応してもよい。
【0098】
本実施形態によれば、多段階のモード選択が可能になるので、表示コンテンツ又は環境等に対して、更に最適な調光を実施できる。
【0099】
また本実施形態では、表示装置200は、ヘッドアップディスプレイ、メーターパネル、センターインフォメーションディスプレイ、又は電子ミラーであってもよい。
【0100】
ヘッドアップディスプレイ、メーターパネル、センターインフォメーションディスプレイ、又は電子ミラーは、自動車等の移動体に搭載される。このため、移動体の移動又は時刻の変化に伴って環境が変化したり、ユーザーへの情報提供に伴う様々な表示コンテンツが表示されたりする。本実施形態によれば、モードに応じた調光が可能であることから、表示コンテンツ又は環境等に最適な調光を実施できる。
【0101】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また回路装置、バックライト、表示装置、表示システム、処理装置及び電子機器等の構成及び動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0102】
22…対象画素、100…回路装置、110…インターフェース回路、130…光源制御回路、140…光源輝度決定回路、150…照明輝度演算回路、160…色補正回路、170…記憶部、200…表示装置、210…バックライト、220…表示パネル、230…表示ドライバー、240…光源ドライバー、250…表示コントローラー、300…処理装置、400…表示システム、500…電子機器、DDIM…光源輝度データ、IMA,IMB…画像データ、L1~L16…光源素子、LLD…光源輝度データ、LPX…照明輝度データ、LUTA,LUTB,LUTC…ルックアップテーブル
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