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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140065
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】コークスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 57/04 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
C10B57/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051052
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼嶋 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】土肥 勇介
(72)【発明者】
【氏名】小柳 俊介
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012MA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】石炭中に元々存在する金属酸化物に起因するコークスの反応劣化を抑制できるコークスの製造方法を提供する。
【解決手段】成型炭及び粉炭を含む配合炭を乾留してコークスを製造する、コークスの製造方法であって、成型炭における灰分の含有率、及び成型炭の灰分における金属の含有率又は金属酸化物の含有率を求め、粉炭における灰分の含有率、及び粉炭の灰分における金属の含有率又は金属酸化物の含有率を求め、求められた成型炭における灰分の含有率及び金属の含有率又は金属酸化物の含有率から算出されるCAshbq(質量%)が、求められた粉炭における灰分の含有率及び金属の含有率又は金属酸化物の含有率から算出されるCAsh(質量%)よりも大きくなるように、成型炭及び粉炭における金属の含有率又は金属酸化物の含有率を調整した配合炭を乾留する、コークスの製造方法。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成型炭及び粉炭を含む配合炭を乾留してコークスを製造する、コークスの製造方法であって、
前記成型炭における灰分の含有率、及び、前記成型炭の前記灰分における金属の含有率又は金属酸化物の含有率を求め、
前記粉炭における灰分の含有率、及び、前記粉炭の前記灰分における金属の含有率又は金属酸化物の含有率を求め、
求められた前記成型炭における前記灰分の含有率及び前記金属の含有率又は前記金属酸化物の含有率から算出されるCAshbq(質量%)、及び、求められた前記粉炭における前記灰分の含有率及び前記金属の含有率又は前記金属酸化物の含有率から算出されるCAsh(質量%)が、以下の(1)式を満たすように、前記成型炭及び前記粉炭における前記金属の含有率又は前記金属酸化物の含有率を調整した配合炭を乾留する、コークスの製造方法。
CAshbq(質量%)>CAsh(質量%)・・・(1)
ここで、CAshbq(質量%)は以下の(6)式により算出されると共に、CAsh(質量%)は以下の(4)式により算出され、
CAshbq(質量%)=Ashbq(質量%)×(a×Nabq(質量%)+b×Kbq(質量%)+c×CaObq(質量%)+d×MgObq(質量%)+e×Fe3bq(質量%))/100 ・・・(6)
CAsh(質量%)=Ash(質量%)×(a×Na(質量%)+b×K(質量%)+c×CaO(質量%)+d×MgO(質量%)+e×Fe3p(質量%))/100 ・・・(4)
Ashbq(質量%)は前記成型炭における前記灰分の含有率、Ash(質量%)は前記粉炭における前記灰分の含有率、
Nabq(質量%)は前記成型炭の前記灰分におけるNaO含有率、Na(質量%)は前記粉炭の前記灰分におけるNaO含有率、
bq(質量%)は前記成型炭の前記灰分におけるKO含有率、K(質量%)は前記粉炭の前記灰分におけるKO含有率、
CaObq(質量%)は前記成型炭の前記灰分におけるCaO含有率、CaO(質量%)は前記粉炭の前記灰分におけるCaO含有率、
MgObq(質量%)は前記成型炭の前記灰分におけるMgO含有率、MgO(質量%)は前記粉炭の前記灰分におけるMgO含有率、
Fe3bq(質量%)は前記成型炭の前記灰分におけるFe含有率、Fe3p(質量%)は前記粉炭の前記灰分におけるFe含有率、を示し、
a、b、c、d、eは、前記粉炭について、乾留後におけるコークスの反応後強度又は反応性を目的変数とし、前記粉炭の前記灰分の含有率、前記灰分におけるNaO、KO、CaO、MgOFeの含有率を説明変数とした重回帰分析により決定される係数、である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭を成型して製造される成型炭及び成型していない粉状の粉炭を含む配合炭をコークス炉に装入して乾留する、コークスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉の操業を効率良く行うためには、高強度のコークスを用いて高炉操業を行うことが好ましい。これは、コークスが高炉内で粉化すると、発生粉により高炉の通気性が悪化し、効率的な操業が難しくなることが理由である。更に、コークスは高炉内でCOと反応して多孔質化するため、脆弱化する。つまり、高炉内でコークスの反応量が増加すると、コークスの反応後の強度が低下するため、COと反応した後の強度(以下、「反応後強度」と言う。)が高いことが求められる。
【0003】
また、近年、地球温暖化への対応のため、CO排出量の削減が求められている。このため、高炉操業に用いるコークスの使用量を低減することは、鉄鋼業におけるCO排出削減のために重要である。製造する溶銑1トンあたりに消費するコークスの量は、コークス比と言われ、コークスの反応後強度が高いほど、コークス比が低減することが報告されている。
【0004】
コークスの反応後強度を高める方法としては、COとの反応によるコークスの脆弱化(以下、「コークスの反応劣化」と言う。)を抑制するために、コークスの反応量を少なくする方法が知られている。例えば、コークス中に存在する金属成分(灰分)は、コークスの炭素質とCOガスとの反応を促進する触媒として作用することが知られている。そのため、触媒作用を有する金属成分の含有量を減らすことでCOとの反応量を減らし、反応に起因するコークスの反応劣化を抑制する方法が知られている。コークス中の金属成分の含有量を減らすためには、金属成分の含有量の低い石炭を用いることが一般的だが、石炭中の金属成分は、石炭の無機質分(灰となる成分)中に含まれるため、採掘された石炭から無機質分を除くためのコストを要し、金属成分の含有量の低い石炭は高価となる。また、金属成分の含有量が少ない石炭は、資源的にも賦存量が限られているという問題もある。
【0005】
コークスの反応劣化を抑止する別の方法としては、COと反応しても反応後強度の低下が起こりにくいようにする方法が開発されている。この方法は、高反応性かつ高強度のコークスを得るための技術として検討されてきた。具体的に、反応を促進する金属成分を石炭に添加してCOとの反応性を上げつつ、反応性の増加に起因するコークスの脆弱化を抑制させると共に、脆弱化する部分を補強する方法が開発されている。
【0006】
ここで、特許文献1には、触媒金属と石炭とを混合した粒をあらかじめ製造し、その粒を粉状の石炭に加えて乾留することで、添加した触媒金属が濃縮された粒の部分において反応を促進しつつ、触媒金属を添加していない部分では反応を促進させずにコークスの強度を維持する方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、ガス化反応を促進する触媒金属を混合した部分を核として、その外側に強度の高い材料(気孔壁強化材)を配置した造粒物(疑似粒子)を作製し、その造粒物を石炭に添加して乾留することで、コークスを得る方法が開示されている。この方法は、造粒物の核の部分で主としてガス化反応が起こるようにしつつ、強度を維持する構造を持つようにすることで、コークスの反応後強度を維持するとの思想に基づいている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005-232348号公報
【特許文献2】特開2003-147370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術においては、コークスのガス化反応を促進する触媒金属について、配合炭に積極的に添加する方法が開示されている。しかし、石炭中に元々存在する触媒金属に起因する反応劣化の抑制に関する方法や、触媒金属の含有量が多い石炭を用いた場合でも反応後強度を維持することが可能となるコークスの製造方法については開発が進められていない。
【0010】
特許文献1に開示された方法は、触媒金属の含有量が多い場合でもコークスの反応後強度を維持可能な技術であるものの、触媒金属を積極的に石炭に添加し、触媒金属が濃縮された状態とすることを特徴とする。このため、通常のコークスの製造において、触媒金属の含有量が元々多い石炭を使用する場合には適用することはできていない。そして、特許文献1に開示された方法により、石炭中に元々存在する触媒金属によるコークスの反応劣化を軽減できる効果を得られるか否かは、確認できない。また、特許文献1の実施例においては、触媒金属を添加させない場合、通常のコークス強度よりも反応後強度が低い例も散見される。これは、触媒金属を添加した場合にコークス強度が維持できなくなる場合があることを示唆するものである。つまり、高反応性コークスの製造を目的とする特許文献1の方法は、通常のコークスを製造する場合の反応劣化の問題点の解決に、そのまま適用できないことが示唆される。
【0011】
特許文献2に開示された方法は、高強度原料を用いることで、反応の増加に起因する反応後強度の低下を抑制する技術思想に基づく方法である。このため、通常のコークス製造において触媒金属の含有量が元々多い石炭を使用する方法としては、不適当となる。
【0012】
一方、特許文献1及び2に開示された方法を用いることなく、通常の方法で粉砕された石炭(粉炭)を乾留するのみでは、コークスの反応劣化は、石炭中に含まれる触媒金属によって大きく影響を受け、反応劣化の抑制は困難となる。
【0013】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたもので、石炭中に元々存在する金属酸化物に起因するコークスの反応劣化を抑制できるコークスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する本発明の要旨構成は以下のとおりである。
[1]成型炭及び粉炭を含む配合炭を乾留してコークスを製造する、コークスの製造方法であって、前記成型炭における灰分の含有率、及び、前記成型炭の前記灰分における金属の含有率又は金属酸化物の含有率を求め、前記粉炭における灰分の含有率、及び、前記粉炭の前記灰分における金属の含有率又は金属酸化物の含有率を求め、求められた前記成型炭における前記灰分の含有率及び前記金属の含有率又は前記金属酸化物の含有率から算出されるCAshbq(質量%)、及び、求められた前記粉炭における前記灰分の含有率及び前記金属の含有率又は前記金属酸化物の含有率から算出されるCAsh(質量%)が、以下の(1)式を満たすように、前記成型炭及び前記粉炭における前記金属の含有率又は前記金属酸化物の含有率を調整した配合炭を乾留する、コークスの製造方法。
CAshbq(質量%)>CAsh(質量%)・・・(1)
ここで、CAshbq(質量%)は以下の(6)式により算出されると共に、CAsh(質量%)は以下の(4)式により算出され、
CAshbq(質量%)=Ashbq(質量%)×(a×Nabq(質量%)+b×Kbq(質量%)+c×CaObq(質量%)+d×MgObq(質量%)+e×Fe3bq(質量%))/100 ・・・(6)
CAsh(質量%)=Ash(質量%)×(a×Na(質量%)+b×K(質量%)+c×CaO(質量%)+d×MgO(質量%)+e×Fe3p(質量%))/100 ・・・(4)
Ashbq(質量%)は前記成型炭における前記灰分の含有率、Ash(質量%)は前記粉炭における前記灰分の含有率、Nabq(質量%)は前記成型炭の前記灰分におけるNaO含有率、Na(質量%)は前記粉炭の前記灰分におけるNaO含有率、Kbq(質量%)は前記成型炭の前記灰分におけるKO含有率、K(質量%)は前記粉炭の前記灰分におけるKO含有率、CaObq(質量%)は前記成型炭の前記灰分におけるCaO含有率、CaO(質量%)は前記粉炭の前記灰分におけるCaO含有率、MgObq(質量%)は前記成型炭の前記灰分におけるMgO含有率、MgO(質量%)は前記粉炭の前記灰分におけるMgO含有率、Fe3bq(質量%)は前記成型炭の前記灰分におけるFe含有率、を示し、a、b、c、d、eは、前記粉炭について、乾留後におけるコークスの反応後強度又は反応性を目的変数とし、前記粉炭の前記灰分の含有率、前記灰分におけるNaO、KO、CaO、MgOFeの含有率を説明変数とした重回帰分析により決定される係数、である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、石炭中に元々存在する金属酸化物に起因するコークスの反応劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】石灰石の含有割合に対するコークスの反応性及び反応後強度の結果を示す図である。
図2】CAshと反応後強度との相関関係を示す図である。
図3】ΔCAshの値と反応性(CRI)又は反応後強度(CSR)との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を通じて本発明を説明する。
【0018】
本発明者らは、上記の目的を達成するため、成型炭配合法に注目した。成型炭配合法は、コークスの原料となる石炭の一部にバインダーを配合して混錬した後、機械的に圧密して成型炭とし、成型炭を成型していない粉状の石炭(以下、「粉炭」と言う。)と共にコークス炉に装入して乾留する方法である。成型炭配合法を採用することで、コークスの製造に不向きな比較的安価な粘結性の低い非微粘結炭の使用量を多くした場合でも、コークスの冷間での強度を維持できる。この効果は、石炭の一部を予め成型することにより、成型炭中において石炭粒子間の距離が縮まり、粘結性の低い石炭であっても石炭粒子同士が接着することで発現する。成型炭配合法は、石炭の一部を塊状にしてから乾留する点では特許文献1及び2に開示された方法と類似するものの、特許文献1及び2に開示された方法においては、疑似粒子化や造粒により塊成物を得ることとしており、圧密は行われていない。そして、造粒と圧密とでは、塊成物中におけるガスの拡散状態が異なることから、コークスとした後の反応性も異なると考えられるものの、この反応性の相違に関する影響は、従来検討されていなかった。
【0019】
そこで、本発明者等は、成型炭配合法にて生成した配合炭について、成型炭及び粉炭における触媒金属の含有率が、配合炭をコークスとした後の反応後強度及び反応性に及ぼす影響について鋭意調査を行った。その結果、金属を成型炭に含有させた場合には、金属を粉炭に含有させた場合に比べて、コークスの反応性を増大させる影響及び反応後強度を低下させる影響が共に小さいことが判明した。本発明は、この発見に基づいてなされたものである。
【0020】
<触媒金属を成型炭に多く含有させた場合におけるコークスの反応性及び反応後強度>
コークスの反応性を促進させる触媒金属の一例であるCaについて、成型炭及び粉炭に含有させた場合における、コークスの反応性に及ぼす影響を調査した。調査においては、Caとして石灰石(CaCO)を用いて、種々の割合で石灰石を含有させた成型炭及び粉炭を準備し、それらを乾留して得たコークスの反応性及び反応後強度に及ぼすCaの影響を調査した。
【0021】
粉炭は、複数の銘柄の石炭を混合して調製した。粉炭の品位は、コークスの製造に一般的に使用される原料炭と同様の品位である、Ro=1.02(%)、logMF=2.40(logddpm)、Ash=9.5(質量%)とした。粉炭の粒度は、気乾した石炭について、粒径が3(mm)未満である粉炭の割合を80(質量%)、粒径が3(mm)以上10(mm)以下である粉炭の割合を20(質量%)となるように調整した。粉炭の水分は、8(質量%)に調整して乾留試験に供した。ここで、RoはJIS M8816:1992の方法で求めた石炭のビトリニットの平均最大反射率であり、logMFは、JIS M8801:2008の方法で求めたギーセラー最高流動度MFの常用対数値であり、AshはJIS M8812:2006の方法により求められた石炭の灰分である。
【0022】
ここで、「灰分」は一般に、石炭を燃焼させた後の残留分と定義され、その量は「JIS M8812:2006」やそれに対応する各国、国際規格の方法により求められる。石炭中には脈石とも呼ばれることのある鉱物質が含まれている。石炭の燃焼時にはこの鉱物質が分解、酸化されて酸化物が生成し、揮発されずに残った鉱物質の酸化生成物が灰分の主成分である。石炭中の金属成分は、鉱物質中にも石炭の有機質中にも含まれ、金属成分のほとんどは燃焼(灰化ともいう)した際に金属酸化物となる。石炭中の金属成分は、乾留時にほとんど失われないので、コークス中にも石炭由来の金属成分が残留する。そしてコークス中に残留した金属成分には、コークスのCO等のガスとの反応(コークスのガス化反応)を促進する触媒効果を有する成分があることが知られている。石炭またはコークス中の金属成分を定量するには、様々な形態で存在する鉱物を定量することが難しいので、燃焼(灰化)処理によって生成した金属酸化物の含有量を定量することが一般的である。灰中の金属酸化物の定量は、金属酸化物自体の含有量を測定してもよいし、金属自体の含有量を測定してその金属が酸化物となった場合の酸化物の量を求めてもよい。本発明においては、灰中に含まれる金属酸化物の量を石炭中の金属成分量の指標として、コークスのガス化反応への影響を調査した。
【0023】
成型炭は、以下の手順で製造した。成型炭の製造に用いた石炭には、Ro=0.92(%)、logMF=2.4(logddpm)、Ash=9.5(質量%)となるように調整した成型炭用の配合炭を用いた。成型炭用の配合炭は、粒径が2(mm)未満である粉炭の割合が100(質量%)となるように調整した。成型炭用の配合炭に混合させる石灰石は、粒径が1(mm)未満である石灰石の割合が100(質量%)となるように調整した。そして、配合炭と石灰石とを所定の割合で混合した後、バインダー(石炭の100(質量%)に対してコールタール中ピッチ2(質量%)、軟ピッチ3.6(質量%)、アスファルトピッチ2.4(質量%))を添加(外添)し、混錬機で十分に混錬し、混錬物を得た。その後、6ccタマゴ型モールドを設置した高圧成型機において、混錬物を成型した。
【0024】
成型炭及び粉炭を合わせた配合炭に対する石灰石の含有率を0~9(質量%)と変化させつつ、石灰石を粉炭中のみに配合した水準と、成型炭中のみに配合した水準を設定した。成型炭と粉炭との配合の割合は、質量比で粉炭を80(質量%)とし、成型炭を20(質量%)となるようにした。粉炭及び成型炭を合わせた配合炭を嵩密度が830(kg-dry/m)となるようにSUS缶に装入し、乾留炉の炉壁温度を1200(℃)として20時間加熱し、窒素雰囲気下で冷却してコークスを得た。得られたコークスは、19~21(mm)の粒径となるように調整し、CO反応性試験(CRI)及びCO反応後強度試験(CSR)に供した。CO反応性試験(CRI)及びCO反応後強度試験(CSR)は、ISO18894:2006に準拠した方法で測定した。ここで、CO反応性試験により得られた結果が、コークスの「反応性」に相当する。そして、CO反応後強度試験により得られた結果が、コークスの「反応後強度」に相当する。
【0025】
図1に、石灰石の含有率に対するコークスの反応性及び反応後強度の結果を示す。図1に示す通り、粉炭に石灰石を含有させた場合には、従来の知見の通り、石灰石の含有率の増大に伴い反応性は増大(図1(a)参照)し、反応後強度は低下(図1(b)参照)した。一方で、成型炭に石灰石を含有させた場合には、石灰石の含有率を増大させても、反応性の増大及び反応後強度の低下は、殆ど確認できなかった。
【0026】
ここで、造粒物にCa等の触媒金属を添加する方法(特許文献1)では、触媒金属の含有と共に反応性は高くなる傾向を示していた。これに対し、図1に結果として示す通り、成型炭に触媒金属を含有させる方法においては、コークスの反応性は高くならないことが明らかとなった。この違いは、成型炭が、圧縮されて成型されて製造されたものであることから密度が高くなり、ガス化反応等の反応性が促進されなかったことが原因として挙げられる。
【0027】
具体的に、特許文献1においては、造粒物における触媒成分濃縮部分すなわち触媒金属を含む粒の部分の密度は、0.7~1.0(g/cm)とされている(特許文献1の明細書段落0060参照)。そのため、乾留後のコークスにおいても触媒成分濃縮部分の気孔率はガスが金属に到達しやすい程度に十分高いと考えられる。
【0028】
しかし、成型炭においては、密度は概ね1.1(g/cm)以上となる。そのため、成型炭では、乾留後でも局所的に気孔率が低くなり、触媒金属にガスが到達し難くなり、図1に示す結果の通り、反応性の促進が進まなかったと考えられる。即ち、特許文献1に記載された低密度の造粒物と、高密度の成型物とでは、ガス化反応による劣化のメカニズムが異なることが明らかとなった。
【0029】
<触媒金属(金属酸化物)のガス化反応に対する寄与>
以上に述べた通り、触媒金属を石炭に含有させて行った試験結果を考慮すると、触媒金属の含有率が多い石炭は、粉炭よりも成型炭に多く含有された方が、ガス化反応による反応性が促進されることなく、反応後強度の劣化が起こりにくい可能性が示唆された。
【0030】
しかし、石炭に元々含有されている触媒金属はCaのみではないため、石炭における触媒金属の含有率に基づく効果を定量的に把握しておくことが望ましい。そこで、石炭における触媒金属(金属酸化物)とコークスの反応後強度との関係を調査した。
【0031】
まず、コークスの製造に用いられる石炭の各銘柄について、灰分の含有量(率)及び灰分における触媒金属(金属酸化物)の含有量(率)を分析し、配合炭における灰分の含有率と、コークスの反応後強度との関係を調査した。なお、調査は、成型炭を含まない配合炭(粉炭のみの配合炭)について調査した。
【0032】
灰分における触媒金属(組成)は、灰分における触媒金属が全て金属酸化物となった状態として調査した。そして、配合炭に含有される金属酸化物の含有量(率)とコークスの反応後強度との関係について重回帰分析を行い、反応後強度に影響の大きい金属酸化物の種類及び影響度を調査した。その結果、反応後強度に影響の大きい金属の種類としてNa、K、Ca、Mg、Feが抽出され、コークスの反応後強度は、以下の(3)式で求められるCAshと相関性を有することを見出した。図2に、CAsh(質量%)と反応後強度との相関関係を示す。
CAsh=Ash×(a×Na+b×K+c×CaO+d×MgO+e×Fe3p) ・・・(3)
【0033】
ここで、Ashは粉炭における灰分の含有量、Naは粉炭の灰分におけるNaO含有量、Kは粉炭の灰分におけるKO含有量、CaOは粉炭の灰分におけるCaO含有量、MgOは粉炭の灰分におけるMgO含有量、Fe3pは粉炭の灰分におけるFe含有量を意味する。
【0034】
CAshは、石炭(粉炭)における灰分の含有量Ashに、灰分における触媒金属の各金属酸化物の含有量にコークスの反応後強度への影響の大きさを表す係数(a~e)を掛けて合計した値を、掛け合わせた値である。換言すれば、CAshは、粉炭のAshについて、灰分における金属酸化物の反応後強度への影響を反映して補正した値といえる。
【0035】
また、CAshの単位は、Ashを質量%で表すことで、同じく質量%となる。この場合、Ash及び灰分における各金属酸化物の含有量について、単位を質量%とする値を用いる場合、(3)式は以下の(4)式として現わすことができる。
CAsh(質量%)=Ash(質量%)×(a×Na(質量%)+b×K(質量%)+c×CaO(質量%)+d×MgO(質量%)+e×Fe3p(質量%))/100 ・・・(4)
【0036】
(4)式において、Ash(質量%)は粉炭における灰分の含有率、Na(質量%)は粉炭の灰分におけるNaO含有率、K(質量%)は粉炭の灰分におけるKO含有率、CaO(質量%)は粉炭の灰分におけるCaO含有率、MgO(質量%)は粉炭の灰分におけるMgO含有率、Fe3p(質量%)は粉炭の灰分におけるFe含有率を意味する。何れの含有率においても、質量基準の含有率を示す。
【0037】
CAsh(質量%)は、石炭(粉炭)における灰分の含有率Ash(質量%)に、灰分における触媒金属の各金属酸化物の含有率にコークスの反応後強度への影響の大きさを表す係数(a~e)を掛けて合計した値を、掛け合わせた値である。換言すれば、CAsh(質量%)は、粉炭のAsh(質量%)について、灰分における金属酸化物の反応後強度への影響を反映して補正した値といえる。
【0038】
(3)式及び(4)式における定数a、b、c、d、eは、重回帰分析により求められる係数である。重回帰分析は、先ず、種々の灰分の組成(金属酸化物)を有する配合炭(粉炭)を乾留して得られたコークスの反応後強度を測定する。そして、測定された反応後強度を目的変数として、配合炭(粉炭)における灰分の含有量(率)、灰分における金属酸化物である、NaO、KO、CaO、MgOFeの含有量(率)を説明変数として、分析してよい。重回帰分析の結果、(3)式または(4)式の形の重回帰式が得られるので、その重回帰式の各変数に対応した係数としてa、b、c、d、eを決定することができる。また、説明変数として、(3)式及び(4)式を展開したことによる、Ash×Na、Ash×K、Ash×CaO、Ash×MgO、Ash×Fe3pを用いてもよい。そして、コークスの反応後強度は、コークスの反応性と強い相関を持つ。このため、コークスの反応性を目的変数として重回帰分析を行い、得られた係数を反応後強度と反応性との相関関係を用いて換算して(3)式及び(4)式における定数a、b、c、d、eを求めてもよい。
【0039】
ここで、図2に示すCAsh(質量%)と反応後強度(CSR)との相関関係は、成型炭を含まない配合炭(粉炭)について調査した結果を示す。そして、配合炭に成型炭が含まれる場合には、成型炭が含まれていない配合炭(粉炭のみの配合炭)における灰分の含有量(率)及び金属酸化物の含有量(率)と、コークスの反応後強度又は反応性とを用いて、重回帰分析により定数a、b、c、d、eを求めてもよい。これは、図1に示した通り、成型炭における灰分は、コークスの反応後強度や反応性への影響が殆ど見られない一方で、成型炭を含まない配合炭(粉炭)における灰分の含有量(率)や金属酸化物の含有量(率)に起因する影響が大きいことに基づく。
【0040】
発明者等は、式(3)及び式(4)として示す通り、式中に含まれる5種類の金属酸化物(NaO、KO、CaO、MgOFe)の含有量(率)が、コークスの反応後強度及び反応性に大きな影響を持つことを見出した。このため、少なくともこれらの触媒金属の金属酸化物を式中に含める限り、CAsh又はCAsh(質量%)を算出するため、更にその他の触媒金属の金属酸化物を含める式としてもよい。
【0041】
<金属酸化物による反応劣化を抑制したコークスの製造方法>
以上に述べた通り、コークスのガス化反応を触媒する金属酸化物は、成型炭に存在する場合、コークスの反応劣化は促進されない。従って、コークスの反応劣化を招く金属酸化物について、粉炭に比べて成型炭に多く含まれるように調整することで、コークスの反応劣化を抑制できる。つまり、(3)式及び(4)式で算出されるCAsh又はCAsh(質量%)の値について、粉炭における金属酸化物の含有量(率)に基づいて算出される値に比べて、成型炭における金属酸化物の含有量(率)に基づいて算出される値が大きくなるように、調整すると良い。
【0042】
具体的には、以下の通りに調整を実施する。まず、コークスのガス化反応を触媒する金属酸化物について、各々の金属酸化物の有するガス化反応劣化への影響の大きさを決定する。具体的には、組成(金属酸化物)の異なる複数の石炭が配合された配合炭を準備し、その配合炭を乾留して得られるコークスの反応後強度又は反応性を測定する。そして、配合炭における成型炭を含まない部分(粉炭のみの配合炭)の灰分の含有量(率)及びその灰分における金属酸化物の含有量(率)を説明変数とし、コークスの反応後強度又は反応性を目的変数として重回帰分析を行い、回帰式の係数((3)式及び(4)式においては係数a~e)を決定する。
【0043】
回帰式の係数の算出において、灰分の含有量(率)及び灰分における金属酸化物の含有量(率)は、配合炭における成型炭を含まない部分(粉炭のみの配合炭)の石炭を採取して分析してよい。あるいは、配合炭における成型炭を含まない部分(粉炭のみの配合炭)における各石炭の灰分の含有量(率)及び灰分の金属酸化物の組成の含有量(率)から、粉炭を構成する石炭の各銘柄の配合比率に基づいて、加重平均した平均値を求めてもよい。そのようにして、例えば、CAsh=Ash×(a×Na+b×K+c×CaO+d×MgO+e×Fe3p)のような形((3)式又は(4)式の形)を求める。
【0044】
ここで、灰分における組成(金属酸化物)は、石炭の燃焼によって石炭の灰化を進めると共に石炭に含まれる有機物を燃焼して除去し、灰化した石炭における各金属の含有量(率)を公知の方法で定量して、金属酸化物の状態に換算して求めてよい。あるいは、金属酸化物の含有量として定量してもよい。分析方法の一例としては、「JIS M8815:1976 石炭灰及びコークス灰の分析方法」や、蛍光X線分析による金属酸化物の定量方法等が挙げられる。
【0045】
続いて、コークスの製造における原料となる成型炭のCAshbq、及び、粉炭のCAshを求める。粉炭のCAshは、(3)式を用いて算出してよい。粉炭のCAshを質量%で表す場合には、(4)式を用いて算出してよい。また、成型炭のCAshbqは、以下の(5)式を用いて算出してよい。成型炭のCAshbqを質量%で表す場合には、以下の(6)式を用いて算出してよい。
CAshbq=Ashbq×(a×Nabq+b×Kbq+c×CaObq+d×MgObq+e×Fe3bq) ・・・(5)
CAshbq(質量%)=Ashbq(質量%)×(a×Nabq(質量%)+b×Kbq(質量%)+c×CaObq(質量%)+d×MgObq(質量%)+e×Fe3bq(質量%))/100 ・・・(6)
【0046】
ここで、(5)式において、Ashbqは成型炭における灰分の含有量、Nabqは成型炭の灰分におけるNaO含有量、Kbqは成型炭の灰分におけるKO含有量、CaObqは成型炭の灰分におけるCaO含有量、MgObqは成型炭の灰分におけるMgO含有量、Fe3bqは成型炭の灰分におけるFe含有量を意味する。
【0047】
また、(6)式において、Ashbq(質量%)は成型炭における灰分の含有率、Nabq(質量%)は成型炭の灰分におけるNaO含有率、Kbq(質量%)は成型炭の灰分におけるKO含有率、CaObq(質量%)は成型炭の灰分におけるCaO含有率、MgObq(質量%)は成型炭の灰分におけるMgO含有率、Fe3bq(質量%)は成型炭の灰分におけるFe含有率を意味する。何れの含有率においても、質量基準の含有率を示す。
【0048】
CAshbqは、成型炭における灰分の含有量Ashbqに、灰分における触媒金属の各金属酸化物の含有量にコークスの反応後強度への影響の大きさを表す係数(a~e)を掛けて合計した値を、掛け合わせた値である。換言すれば、CAshbqは、成型炭のAshbqについて、灰分における金属酸化物の反応後強度への影響を反映して補正した値といえる。ただし、反応後強度への影響は、この組成で粉炭を配合した場合の影響であることは前述のとおりである。成型炭の配合においては、図1に例示するとおり、触媒金属成分の含有量(CAshbq)が変わっても反応後強度への影響はない。
【0049】
CAshbq(質量%)は、成型炭における灰分の含有率Ashbq(質量%)に、灰分における触媒金属の各金属酸化物の含有率にコークスの反応後強度への影響の大きさを表す係数(a~e)を掛けて合計した値を、掛け合わせた値である。換言すれば、CAshbq(質量%)は、成型炭のAshbq(質量%)について、灰分における金属酸化物の反応後強度への影響を反映して補正した値といえる。
【0050】
この場合、成型炭及び粉炭について、灰分の含有量(率)及び灰分における金属酸化物の含有量(率)を、実測して得られる値から算出してよい。あるいは、成型炭及び粉炭に用いる石炭等における灰分の含有量(率)及び灰分における金属酸化物の含有量(率)から、石炭の配合比率を考慮して、加重平均等の計算により算出してもよい。
【0051】
そして、(3)式及び(5)式を用いて算出されたCAshbq及びCAshについて、以下の(2)式の関係を満たすように、石炭等の種類及び配合率を決定して、成型炭及び粉炭を製造すると共に混合して得た配合炭を、コークス炉に装入して乾留してよい。即ち、算出されたCAshbq及びCAshについて、(2)式の関係を満たすように、成型炭及び粉炭における金属の含有率又は金属酸化物の含有量を調整した配合炭を乾留してよい。
CAshbq>CAsh ・・・(2)
【0052】
あるいは、CAshbq及びCAshの単位を質量%で表す場合には、(4)式及び(6)式を用いて算出されたCAshbq(質量%)及びCAsh(質量%)について、以下の(1)式の関係を満たすように、石炭等の種類及び配合率を決定して、成型炭及び粉炭を製造すると共に混合して得た配合炭を、コークス炉に装入して乾留してよい。この場合も、算出されたCAshbq(質量%)及びCAsh(質量%)について、(1)式の関係を満たすように、成型炭及び粉炭における金属の含有率又は金属酸化物の含有率を調整した配合炭を乾留してよい。
CAshbq(質量%)>CAsh(質量%) ・・・(1)
【0053】
上記した(1)式又は(2)式を満たすように、配合炭を調整することで、成型炭及び粉炭において、灰分の含有量(率)及び灰分における金属酸化物の含有量(率)を同じになるように配合させてコークスを製造した場合に比べて、反応劣化の小さなコークスを製造することができる。
【0054】
本発明に係るコークスの製造方法によれば、石炭中に元々存在する金属酸化物に起因するコークスの反応劣化を抑制できる。これにより、触媒金属(金属酸化物)を多く含む石炭を使用してもコークスの反応劣化を抑えて、反応後強度の高いコークスを製造することができる。更に、触媒金属(金属酸化物)の含有量の多い石炭の使用量を従来よりも増やすことができ、コークス原料として使用可能な石炭の範囲の拡大が可能となる。
【0055】
上記した実施形態においては、石炭における灰分及び触媒金属(金属酸化物)の含有量(率)として説明したものの、乾留後のコークスにおける灰分及び触媒金属(金属酸化物)の含有量(率)として、CAshbq、CAsh、CAshbq(質量%)、CAsh(質量%)を算出してもよい。また、灰分における金属酸化物の含有量(率)として、金属の含有量又は金属の含有率として算出に用いてもよい。
【0056】
石炭は、乾留することで揮発分が抜けるため、石炭中の灰分とコークス中の灰分との間においては、反応後強度及び反応性の観点から相関を有する。しかし、コークス炉の操業条件により抜ける揮発分の量が変わり、コークス中の灰分の含有量(率)は変動する。また、成型物及び粉炭に配合される石炭の種類及び配合率を決めるためには、石炭の灰分に基づいて配合比率を決めることが、操業上の都合から簡便である。このため、本実施形態においては、石炭の灰分に関して、(1)式及び(2)式の関係を満たすように条件を定めた。
【0057】
本発明に使用される石炭については、その種類を限定することなく、ガス化反応に起因する劣化の抑制が可能である。成型炭を得るための方法は、ロール成型以外の方法も採用が可能であり、石炭を圧密できることが好ましい。石炭の成型性を高めるために、バインダーとして、水、石炭系バインダー(コールタールピッチ、溶剤精製炭、タール、タール滓等)、石油系バインダー(アスファルト、アスファルトピッチ、プロパン脱瀝アスファルト等)、有機バインダー(でんぷん、糖蜜、樹脂等)等を使用してよい。また、粉コークス、オイルコークス、プラスチック、粘結材(ピッチ類、溶剤精製炭等)、バイオマス、バイオマスを熱処理して得られた炭化物等を成型炭及び粉炭の一部として使用しても良い。
【0058】
コークス炉に装入される配合炭にて成型物の占める割合は、成型炭の占有率として50(%)以下が望ましい。成型炭の占有率が50(%)を超えると、成型のためのコスト上の問題が発生する。一方、成型炭の占有率が少なすぎると、成型炭に高反応性成分を集中的に配合することによる金属又は金属酸化物の調整の効果が小さくなる。従って、配合炭における成型炭の占有率は、5(質量%)以上50(質量%)以下が好ましく、10(質量%)以上35(質量%)以下がより好ましい。
【0059】
成型炭の大きさについては、制約を設ける必要はなく、例えば、容積として6~120(cc)の成型炭を使用してよい。コークスの生産量及び成型炭の強度を考慮した場合、成型炭の大きさは、25~80(cc)の範囲とすることが、特に好ましい。
【0060】
また、本発明が適用されるコークスの製造条件については、条件を限定することなく、広く適用が可能である。石炭の事前処理プロセスとしては、粉砕、分級、混合、混錬、乾燥、加水、予熱工程等の一部又は全部を含んでよい。粉炭の粒度は、3(mm)以下の粒子の占有率が70~100(%)となるように、粉砕を行ってよい。乾留条件は、一般的な室炉式コークス炉により、概ね900(℃)以上の温度により乾留を行ってよい。
【実施例0061】
以下、本実施形態に係るコークスの製造方法を用いて行った実施例を説明する。
【0062】
実施例においては、高反応性の金属成分を多く含有する石炭を配合した成型炭を使用した条件で、コークスの反応劣化を抑制する試験を行った。
【0063】
石炭は、予め銘柄毎に灰分の含有率及び灰分における金属酸化物の含有率の分析を行った。粉炭には、一般的にコークスの製造に使用される原料炭として、Ro=1.050(%)、logMF=2.468(ddpm/log)の品位の石炭を用いた。石炭は、気乾した後、粒径が3(mm)未満である粉炭の割合を80(質量%)、粒径が3(mm)以上10(mm)以下である粉炭の割合を20(質量%)となるように調整し、水分を8(質量%)に調整して試験に供した。
【0064】
成型炭は以下の手順で製造した。成型炭用の石炭は、Ro=0.99~1.07(%)、logMF=2.13~2.79(ddpm/log)の範囲で配合を変えた配合炭を用いた。成型炭用の配合炭は、粒径が3(mm)未満である粉炭の割合が100(質量%)となるように調整した。成型炭用の配合炭を調製した後、バインダー(石炭の100(質量%)に対して、コールタール中ピッチ4.0(質量%)、軟ピッチ0.5(質量%)、タール6.0(質量%))を添加(外添)し、混錬機で十分に混錬して混錬物を得た。混錬物について、44mmマセック型モールドを設置した小型成型機にて成型を行った。得られた成型炭の密度は、1.12(g/cm)であった。粉炭と成型炭との配合の割合は、質量比で粉炭が80(質量%)であるのに対し、成型炭を20(質量%)となるように配合した。粉炭及び成型炭を含む試料の全体について、嵩密度が810(kg-dry/m)となるようにSUS製の乾留缶に装入し、炉壁の温度を1050(℃)とする電気炉において6時間加熱することで、コークスを得た。得られたコークスは、窒素雰囲気下で冷却した後、19~21(mm)に粒度調整し、反応性の試験(CRI)及び反応後強度の試験(CSR)に供した。
【0065】
表1に、成型炭の灰分における金属酸化物の含有率(表1の「NaO」、「KO」、「CaO」、「MgO」、「Fe」参照)と、成型炭における灰分の含有率(表1の「Ash」参照)と、成型炭を粉炭に配合した配合炭を乾留して得たコークスの反応性(表1の「CRI」参照)と、反応後強度(表1の「CSR」参照)との結果を示す。灰分の含有率(Ash)は、JIS M8812:2006の方法を用いて算出した。CAshは、実施形態にて述べた通り、予め求めておいた係数a~eを用いて、(6)式により算出された値である。また、ΔCAshは、成型炭におけるCAshbqと粉炭におけるCAshとの差を示す。
【0066】
【表1】
【0067】
「基準」とした条件は、成型炭及び粉炭における石炭の配合の構成を同一とした例である。即ち、「基準」におけるCAshは、成型炭におけるCAshbqと粉炭におけるCAshとで同じ値となる。つまり、ΔCAshの値は、表1に示す通り「0.0」となる。
【0068】
実施例1~3では、粉炭における石炭の配合は「基準」の場合と同一としつつ、それに対して成型炭における石炭の配合を変更して、金属酸化物の含有率の多い成型炭とした。従って、実施例1~3では、ΔCAshの値として示す通り、成型炭におけるCAshbqの値は、「基準」に基づく配合によるCAsh(=CAshbq=CAsh)の値よりも大きい値となっている。
【0069】
ここで、表1におけるΔCAshの値と、反応性(CRI)と、反応後強度(CSR)との関係について、図3を用いて説明する。図3は、ΔCAshの値と反応性(CRI)又は反応後強度(CSR)との関係を示す図である。
【0070】
図3において、ΔCAshの値が0となるプロット(図中の「□」)は、表1における「基準」の結果を示す。「基準」は、成型炭におけるCAshbqと粉炭におけるCAshとが等しい値となっている。また、実施例1~3の結果(図中の「●」)として示す通り、成型炭中のCAshbqが大きくなる条件、即ち、成型炭中の反応劣化に影響する金属酸化物が多い条件であっても、反応後強度及び反応性はΔCAshの大小に関係無く殆ど変化しないことが確認できた。つまり、本発明の方法によれば、コークスの反応劣化を起こすことなく、金属酸化物の多い石炭を使用できることが確認できた。
【0071】
図3にて「△」として示すプロットは、実施例2の成型炭に使用した石炭類(バインダー等を含む)を成型せずに粉炭に混合し、そのうちの20(質量%)分を成型して乾留した場合の結果を示す。「△」として示すデータは、成型炭及び粉炭におけるCAshが等しいため、ΔCAshの値は0となるものの、コークス炉に装入される石炭の配合は実施例2と同じとなるため、図3におけるデータの視認性を考慮して、横軸(ΔCAshの値)に関して実施例2と同じ位置にプロットした。
【0072】
「△」として示すデータについては、実施例2の成型炭に含まれていた金属酸化物が粉炭にも含まれるようになった結果、反応性(CRI)が上昇すると共に、反応後強度(CSR)が低下することが確認できた。また、図3において、実施例1~3(図中の「●」)と、比較例(図中の「△」)とを比較することで、本発明の方法により、コークスの反応劣化が抑制できることが確認できた。
図1
図2
図3