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特開2024-140066折板持ち上げ用治具及び、折板の持ち上げ方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140066
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】折板持ち上げ用治具及び、折板の持ち上げ方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 15/04 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E04D15/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051056
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴晴
(57)【要約】
【課題】 折板を安定して持ち上げることが可能な折板持ち上げ用治具及び折板の持ち上げ方法を提供する。
【解決手段】 平面部と、前記平面部の一端側及び、他端側において前記平面部に対して傾斜して形成されている傾斜部と、を有する折板を持ち上げる折板持ち上げ用治具である。折板持ち上げ用治具は、基部と、前記基部に設けられかつ、前記折板の前記平面部を上下方向から挟み込んで挟持する挟持部と、前記基部に設けられ前記基部を把持可能に形成された把持部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面部と、前記平面部の一端側及び、他端側において前記平面部に対して傾斜して形成されている傾斜部と、を有する折板を持ち上げる折板持ち上げ用治具であって、
基部と、
前記基部に設けられかつ、前記折板の前記平面部を上下方向から挟み込んで挟持する挟持部と、
前記基部に設けられかつ、作業者によって把持可能に形成された把持部と、
を有する折板持ち上げ用治具。
【請求項2】
前記挟持部は、前記折板の前記平面部を上方向から挟み込む上側板部材と、前記折板の前記平面部を下方向から挟み込む下側板部材と、によって構成される、請求項1に記載の折板持ち上げ用治具。
【請求項3】
前記基部及び、前記下側板部材を接続する接続部を有し、
前記接続部は、前記折板の前記傾斜部の傾斜に沿って形成されている、請求項2に記載の折板持ち上げ用治具。
【請求項4】
前記基部には、前記上側板部材を挿通可能に形成されている挿通孔が設けられ、
前記上側板部材は、前記挿通孔への挿通方向の一端側及び他端側に突起が形成されている、請求項2または3に記載の折板持ち上げ用治具。
【請求項5】
前記基部には、前記下側板部材を挿通可能に形成されている挿通孔が設けられ、
前記下側板部材は、前記挿通孔への挿通方向の基端側に形成されている突起を有する、請求項2又は3に記載の折板持ち上げ用治具。
【請求項6】
前記上側板部材と、前記下側板部材と、で前記折板の前記平面部を挟み込んだ状態を固定する固定部をさらに有する、請求項2又は3に記載の折板持ち上げ用治具。
【請求項7】
前記上側板部材と、前記下側板部材と、で前記折板の平面部を挟み込んだ状態を固定する固定部をさらに有する、請求項4に記載の折板持ち上げ用治具。
【請求項8】
前記上側板部材と、前記下側板部材と、で前記折板の平面部を挟み込んだ状態を固定する固定部をさらに有する、請求項5に記載の折板持ち上げ用治具。
【請求項9】
前記把持部は、前記基部に形成されている係止孔及び、前記係止孔に係止可能なフックを有する、請求項1~3のいずれかに記載の折板持ち上げ用治具。
【請求項10】
前記把持部は、前記基部に形成されている係止孔及び、前記係止孔に係止可能なフックを有する、請求項4に記載の折板持ち上げ用治具。
【請求項11】
前記把持部は、前記基部に形成されている係止孔及び、前記係止孔に係止可能なフックを有する、請求項5に記載の折板持ち上げ用治具。
【請求項12】
前記把持部は、前記基部に形成されている係止孔及び、前記係止孔に係止可能なフックを有する、請求項6に記載の折板持ち上げ用治具。
【請求項13】
前記把持部は、前記基部に形成されている係止孔及び、前記係止孔に係止可能なフックを有する、請求項7に記載の折板持ち上げ用治具。
【請求項14】
前記把持部は、前記基部に形成されている係止孔及び、前記係止孔に係止可能なフックを有する、請求項8に記載の折板持ち上げ用治具。
【請求項15】
請求項1~3のいずれかに記載の折板持ち上げ用治具を用いて、折板を持ち上げる方法であって、
前記折板持ち上げ用治具の前記挟持部で前記折板の前記平面部を挟持する挟持工程と、
前記把持部を作業者が把持して前記折板を持ち上げる持ち上げ工程と、
を有する折板の持ち上げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折板を持ち上げるための折板持ち上げ用治具及び、折板の持ち上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体育館や工場、倉庫等の大規模施設の屋根材には、折板が多く採用されている。折板は、側面視でV字状に形成されている溝を有している。折板は、屋根材として用いられる場合には、一方の折板の端部においてV字状に形成されている溝と、他方の折板の端部においてV字状に形成されている溝と、を重ね合わせて複数の折板を配列して所望の屋根長さとなるように設けられる。
【0003】
従来、屋根材として用いられている折板を設置したり交換したりする場合、人手によって折板を持ち上げて運搬している。また、折板を搬送する装置を用いて折板を搬送することも行われている。このような装置としては、折板の長手方向の一端側を係止する一端側フック及び、他端側を係止する他端側フックを有する運搬装置が特許文献1に開示されている。また、折板の長手方向の一端側を係止する一端側アーム及び、他端側を係止する他端側アームを有する運搬具が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63-138056号公報
【特許文献2】特開2015-200174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び、2に開示されている運搬装置、運搬具は、いずれも折板の配列方向の配されている両端にフックやアーム(以下、フック等とも称する)を係止して折板を運搬している。
【0006】
しかしながら、これらの運搬装置及び、運搬具では、折板の配列方向の長さが長い場合(V字状に形成されている溝が連続して形成されている場合)、フック等で持ち上げる際に折板が撓む恐れがある。折板が撓むと、中央部分が下に押し下げられるため、フック等による折板の係止が外れる恐れがある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、折板を安定して持ち上げることが可能な折板持ち上げ用治具及び、折板の持ち上げ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の特徴を有する。
[1]
平面部と、前記平面部の一端側及び、他端側において前記平面部に対して傾斜して形成されている傾斜部と、を有する折板を持ち上げる折板持ち上げ用治具であって、
基部と、
前記基部に設けられかつ、前記折板の前記平面部を上下方向から挟み込んで挟持する挟持部と、
前記基部に設けられかつ、作業者によって把持可能に形成された把持部と、
を有する折板持ち上げ用治具。
[2]
前記挟持部は、前記折板の前記平面部を上方向から挟み込む上側板部材と、前記折板の前記平面部を下方向から挟み込む下側板部材と、によって構成される、[1]に記載の折板持ち上げ用治具。
[3]
前記基部及び、前記下側板部材を接続する接続部を有し、
前記接続部は、前記折板の前記傾斜部の傾斜に沿って形成されている、[2]に記載の折板持ち上げ用治具。
[4]
前記基部には、前記上側板部材を挿通可能に形成されている挿通孔が設けられ、
前記上側板部材は、前記挿通孔への挿通方向の一端側及び他端側に突起が形成されている、[2]または[3]に記載の折板持ち上げ用治具。
[5]
前記基部には、前記下側板部材を挿通可能に形成されている挿通孔が設けられ、
前記下側板部材は、前記挿通孔への挿通方向の基端側に形成されている突起を有する、[2]または[3]に記載の折板持ち上げ用治具。
[6]
前記上側板部材と、前記下側板部材と、で前記折板の前記平面部を挟み込んだ状態を固定する固定部をさらに有する、[2]または[3]に記載の折板持ち上げ用治具。
[7]
前記把持部は、前記基部に形成されている係止孔及び、前記係止孔に係止可能なフックを有する、[1]~[6]のいずれかに記載の折板持ち上げ用治具。
[8]
[1]~[7]のいずれかに記載の折板持ち上げ用治具を用いて、折板を持ち上げる方法であって、
前記折板持ち上げ用治具の前記挟持部で前記折板の前記平面部を挟持する挟持工程と、
前記把持部を作業者が把持して前記折板を持ち上げる持ち上げ工程と、
を有する折板の持ち上げ方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の折板持ち上げ用治具によれば、基部に設けられかつ、折板の平面部を上下方向から挟み込んで挟持する挟持部を有することにより、折板を確実に保持することが可能となる。したがって、作業者は、把持部を把持して持ち上げるだけで、折板を安定した状態で容易に持ち上げることが可能となる。これにより、折板の持ち上げ、保持、運搬を安全に行うことができ、折板を持ち上げた状態で長時間保持することも可能となる。
【0010】
また、作業者は、把持部を把持することによって折板を持ち上げることができるため、安定な姿勢で折板を持ち上げ、保持、運搬することができる。このため、安全に折板の交換等の作業を行うことができる。これにより、例えば、既設の折板の下部に新しい折板を差し込む等の作業の効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】折板持ち上げ用治具の構成を示す説明図である。
図2】折板持ち上げ用治具の側面図である。
図3】折板持ち上げ用治具の背面からみた斜視図である。
図4】折板持ち上げ用治具の側面からみた斜視図である。
図5】折板持ち上げ用治具を用いて折板を持ち上げる態様を示す説明図である。
図6】折板持ち上げ用治具を用いて折板を持ち上げる態様を示す説明図である。
図7】折板持ち上げ用治具を用いて折板を持ち上げる態様を示す説明図である。
図8】折板持ち上げ用治具を用いて折板を持ち上げる態様を示す説明図である。
図9】他の実施形態の折板持ち上げ用治具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、折板持ち上げ用治具100の構成を示している。図1に示すように、折板持ち上げ用治具100は、折板10を持ち上げるための治具である。
【0013】
折板10は、平面部11と、平面部11の一端側及び、他端側において平面部11に対して傾斜して形成されている傾斜部12、13と、を有する。折板10は、図1においては、平面部11から上方に向かって傾斜する傾斜部12、13が設けられている溝部14と、平面部11から下方に向かって傾斜する傾斜部12、13が設けられている凸部15が交互に形成されている。折板10は、溝部14及び、凸部15によって、側面視で略V字状の形状が連続的に形成されている。折板10は、上面視が矩形状に形成されている。以後、折板10の略V字状の形状が連続的に形成されている方向を長手方向とも称する。また、折板10の表面において、V字状の形状が連続的に形成されている方向に直交する方向を短手方向とも称する。
【0014】
折板10は、例えば、屋根材として用いられる。折板10は、長手方向の端部を重ね合わせながら複数枚並べて配置することで、建造物の屋根を構成することができる。尚、折板10は屋根材として用いられるものに限られず、例えば、床材等に用いられるものであってもよい。
【0015】
本実施形態の折板持ち上げ用治具100は、基部20と、基部20に設けられかつ、折板10の平面部11を上下方向から挟み込んで挟持する挟持部30と、基部20に設けられかつ、作業者によって把持可能に形成された把持部40と、を有する。
【0016】
図2は、折板持ち上げ用治具100の側面図である。図3は、折板持ち上げ用治具100の背面から見た斜視図である。図4は、折板持ち上げ用治具100の側面から見た斜視図である。図2~4に示すように、基部20は、矩形の板状に形成されている。
【0017】
挟持部30は、折板10の平面部11を上方向から挟み込む上側板部材31と、折板10の平面部11を下方向から挟み込む下側板部材32と、を有して構成されている。
【0018】
上側板部材31は、平板状に形成されている。上側板部材31は、基部20の一端側(上端側)に形成されている挿通孔21に挿通可能に形成されている。上側板部材31の挿通孔21への挿通方向D1の一端側及び他端側には、突起33,34が形成されている。
【0019】
挿通方向D1の先端側(一端側)に形成されている突起33は、上側板部材31の上面から上方へ突出して形成されている。また、挿通方向D1の基端側(他端側)に形成されている突起34は、上側板部材31の下面から下方へ突出して形成されている。
【0020】
突起33,34は、挿通孔21の高さと同程度か、挿通孔21の高さよりも高く形成されているとよい。このように突起33,34を形成することによって、上側板部材31を挿通孔21から抜け難くすることができる。
【0021】
下側板部材32は、平板状に形成されている。下側板部材32は、接続部50を介して基部20の他端側(下端側)に接続されている。接続部50は、折板10の傾斜部12,13の傾斜に沿って形成されている。接続部50は、例えば、凸部15の平面部11の傾斜部12の傾斜に沿って形成されていることが好ましい。
【0022】
このようにして、接続部50及び、下側板部材32を形成することにより、折板10に下側板部材32を差し入れた際に、下側板部材32を傾斜部12の傾斜に沿って移動させることが可能となる。また、下側板部材32を平面部11に当接させた際に、傾斜部12と接続部50とを当接させることが可能となる。これにより、挟持部30による挟持状態を強固にすることが可能となる。
【0023】
尚、基部20と接続部50との間及び、下側板部材32と接続部50との間のうちの少なくとも一方に、接続部50の傾斜角度を調整する角度調整機構(図示せず)を設けてもよい。このように角度調整機構を設けることにより、多様な傾斜部12,13の形状に対応することが可能となる。
【0024】
図2に示すように、基部20の挿通孔21よりも一端側(上端側)には、把持部40が設けられている。把持部40は、基部20の挿通孔21よりも一端側(上端側)に形成されている係止孔41と、係止孔41に係止可能なフック42と、を有する。把持部40は、フック42に続いて作業者が把持可能に形成される本体部43を有する。
【0025】
図3及び図4に示すように、係止孔41は、基部20の幅方向において互いに異なる位置に2つ設けられている。係止孔41は、基部20の厚さ方向に貫通して形成されている。尚、係止孔41の数は、特には限定されず、1以上形成されているようにするとよい。
【0026】
フック42は、係止孔41に係止可能な形状であれば特には限定されないが、本実施形態においては、図2に示すように、U字状に形成されている。
【0027】
本体部43は、作業者が把持可能な形状であれば特には限定されないが、本実施形態においては、棒状に形成されている。尚、本体部43は、棒状に限られず、例えば、紐状に形成されたワイヤーであってもよい。
【0028】
作業者は、フック42を係止孔41に係止させて本体部43を把持することで、容易に折板10を持ち上げることが可能となる。
【0029】
基部20には、上側板部材31と、下側板部材32と、で折板10の平面部11を挟み込んだ状態を固定する固定部60が設けられている。固定部60は、基部20の他端側(下端側)の背面に設けられているナット61と、ナット61の下側からナット61に螺合するボルト62と、を有する。
【0030】
ナット61は、ボルト62と螺合可能なものであれば特には限定されない。ボルト62の長さは、上側板部材31からナット61までの長さL1よりも長く形成されている。ボルト62の長さは、上側板部材31からナット61までの長さL1及び、ナット61の長さL2を足し合わせた長さ以上であることが好ましい。
【0031】
このようにボルト62を形成することで、ボルト62を締め込んだ際に、ボルト62が上側板部材31に当接し、上側板部材31の挿通方向D1の基端を押し上げることが可能となる。ボルト62をさらに締め込むと、上側板部材31の挿通方向D1の先端が、下側板部材32に向かって近づく。これにより、折板10の平面部11をより強固に挟持することが可能となる。
【0032】
(持ち上げ方法)
以上で説明した折板持ち上げ用治具100を用いて折板10を持ち上げる方法について説明する。折板持ち上げ用治具100を用いて折板10を持ち上げる方法は、挟持部30で折板10の平面部11を挟持する挟持工程と、挟持部30による平面部11の挟持状態を固定する固定工程と、把持部40を把持して折板10を持ち上げる持ち上げ工程と、を有する。
【0033】
<挟持工程>
図5~8は、折板持ち上げ用治具100を用いて折板10を持ち上げる態様を示している。挟持工程では、上側板部材31と下側板部材32とによって、折板10の平面部11を上下方向から挟み込んで挟持する。
【0034】
具体的には、まず、図5に示すように、持ち上げる対象となる折板10(図中において一点鎖線で示されている)の長手方向の一端部を少し持ち上げ、当該一端部の下方から下側板部材32を差し入れる。下側板部材32を折板10に差し入れる際には、上側板部材31を挿通孔21に挿通しておくとよい。また、挿通方向D1において上側板部材31を後退させた状態で、下側板部材32を折板10に差し入れるとよい。このように上側板部材31を移動させることにより、上側板部材31が折板10に干渉することを防止することができる。
【0035】
その後、図6に示すように、挿通方向D1の前方に向かって上側板部材31をスライドさせて、上側板部材31及び下側板部材32で、折板10の平面部11を挟持する。
【0036】
尚、上側板部材31と下側板部材32とが、平面部11の長さに対応する長さで形成されることにより、平面部11をより広い面積で挟持することができ、挟持部30による挟持の状態をより安定させることができる。
【0037】
<固定工程>
次に、固定工程では、図7に示すように、固定部60のボルト62を下側からナット61に螺合させてボルト62を締め込むことによって、上側板部材31の挿通方向D1の基端側をボルト62によって押し上げ、上側板部材31の挿通方向D1の先端側を下側板部材32に近接させる。これにより、挟持部30による折板10の平面部11を挟持する状態を固定することができる。
【0038】
ボルト62は、上側板部材31の下面の突起34よりも挿通方向D1の基端側の位置で上側板部材31に当接させるとよい。このようにしてボルト62を締め込んで上側板部材31に当接させることにより、下側板部材32に対する上側板部材31の位置を固定することができる。これにより、上側板部材31の突起34が挿通方向D1の先端側及び基端側に移動することを防止することができる。なお、以上では折板10の長手方向の一端側に対して挟持工程及び、固定工程を行ったが、他の折板持ち上げ用治具100を用いて折板10の長手方向の他端側に対しても挟持工程及び、固定工程を行う。
【0039】
<持ち上げ工程>
次に、持ち上げ工程では、図8に示すように、基部20に形成された係止孔41にフック42を係止する。作業者は、折板10の長手方向の一端側及び他端側において把持部40の本体部43をそれぞれ把持し、吊り上げることによって、折板10を持ち上げる(吊り上げる)ことができる。
【0040】
このようにして折板10を持ち上げることにより、例えば、既設の折板10を新規の折板10に取り換える等の作業を安全に実施することが可能となる。
【0041】
尚、本実施形態においては、把持部40は、係止孔41及び、フック42によって構成される例を説明した。把持部40は、このような態様には限られず、例えば、基部20から伸縮自在に棒状に形成された棒状部(図示せず)で構成してもよい。
【0042】
以上のように、本実施形態の折板持ち上げ用治具100によれば、挟持部30によって折板10の平面部11を上下方向から挟み込んで挟持する。したがって、折板持ち上げ用治具100は、従来のフックを折板10の長手方向の端部に引っ掛けて吊り上げる場合と比較して、折板10を治具で保持する面積を増やすことができる。
【0043】
また、従来の折板10の運搬装置では、折板10の長手方向の両端が互いに近接するように持ち上げられるため、折板10の長手方向の中央に荷重が集中する。このため、折板10がU字状に撓むことになり、運搬装置による折板10の把持の状況が不安定になりやすい傾向がある。
【0044】
本実施形態の折板持ち上げ用治具100は、折板10の長手方向の一端と、他端と、をそれぞれ作業者が持ち上げることにより、折板10がU字状に撓むことを防止することができる。したがって、折板持ち上げ用治具100によれば、作業者は、把持部40を把持して持ち上げるだけで、折板10の形状を保持したまま安定した状態で容易に折板10を持ち上げることが可能となる。これにより、折板10の持ち上げ、保持、運搬を安全に行うことができる。
【0045】
また、把持部40で折板10を把持して持ち上げることにより、折板10の端部を作業者が直接持って持ち上げる場合と比較して、立位で折板10を持ち上げ、かつ持ち上げた状態を保持することができる。したがって、折板持ち上げ用治具100を折板10の交換作業に用いることで、作業の安全性を高めることができる。また、作業者の折板10の持ち上げに要する負荷を軽減することができるため、折板10を持ち上げた状態を長時間保持することができる。これにより、折板10の交換作業の効率を高めることが可能となる。
【0046】
また、上述の実施形態においては、固定部60を、ナット61及び、ボルト62によって構成した。固定部60は、このような態様に限られず、例えば、閂(図示せず)によって構成してもよい。具体的には、当該閂を、棒状に形成されたシャフトと、当該シャフトに設けられた突起と、基部20に設けられて当該シャフトの位置に応じて突起と係合する係合部と、を備えるもので構成してもよい。このように、固定部60を構成することによって、挟持部30による折板10の挟持状態を固定する固定部位において、突起と係合部とを係合又は、その解除をすることにより、容易にかつ、迅速に挟持状態の固定及び、その解除を行うことができる。
【0047】
(第2実施形態)
上述の実施形態においては、上側板部材31が基部20の挿通孔21に挿通可能に形成される例について説明した。折板持ち上げ用治具100は、このような例に限られず、下側板部材32が基部20の挿通孔に挿通可能に形成されるようにしてもよい。尚、第1実施形態と同一の構成については、同一箇所に同一の符号を付して説明を省略する。
【0048】
図9は、第2実施形態に係る折板持ち上げ用治具100を示している。図9に示すように、基部20には、下側板部材32を挿通可能に形成された下部挿通孔22が形成されている。
【0049】
下部挿通孔22には、下側板部材32が挿通されている。下側板部材32は、平板状に形成されている基端部36と、先端側と基端部36とを接続する接続部37と、を有している。
【0050】
下側板部材32の基端部36は、接続部37側に形成された突起38を有する。突起38は、基端部36の上面から上方へ突出して形成されている。突起38は、下部挿通孔22の高さと同程度か、下部挿通孔22の高さよりも高く形成されているとよい。このように、突起38を形成することによって、下側板部材32を下部挿通孔22から抜け難くすることができる。
【0051】
ボルト62は、上側板部材31の基端側に設けられたネジ孔63を介して上側から締め込まれる。ボルト62をさらに締め込むと、ボルト62が下側板部材32の基端部36の上面に当接し、下側板部材32の基端部36を押し下げる。その結果、下側板部材32が上側板部材31に近接するように移動する。その結果、挟持部30による平面部11の挟持を強固にすることができる。
【0052】
このように折板持ち上げ用治具100を構成しても、第1実施形態の折板持ち上げ用治具100と同様に、折板10の形状を保持したまま安定して持ち上げることができる。
【0053】
尚、上述の実施形態においては、挟持部30を2つの部材で構成する例を説明した。しかし、挟持部30の上側板部材31及び、下側板部材32を基部20と一体に形成してもよい。このようにして挟持部30を構成した場合は、上側板部材31及び、下側板部材32のうち少なくとも一方の端部を板バネのように形成し、一方の部材が他方の部材に対して近接するように付勢されるように設けるとよい。
【符号の説明】
【0054】
100 折板持ち上げ用治具
10 折板
11 平面部
12 傾斜部
13 傾斜部
20 基部
30 挟持部
31 上側板部材
32 下側板部材
33 突起
34 突起
38 突起
40 把持部
41 係止孔
42 フック
50 接続部
60 固定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9