IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京エンジニアリングシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-チェーン給油器及びチェーン給油方法 図1
  • 特開-チェーン給油器及びチェーン給油方法 図2
  • 特開-チェーン給油器及びチェーン給油方法 図3
  • 特開-チェーン給油器及びチェーン給油方法 図4
  • 特開-チェーン給油器及びチェーン給油方法 図5
  • 特開-チェーン給油器及びチェーン給油方法 図6
  • 特開-チェーン給油器及びチェーン給油方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014007
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】チェーン給油器及びチェーン給油方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/42 20060101AFI20240125BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20240125BHJP
   B65G 45/08 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
E04H6/42 Z
F16H57/04 C
B65G45/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116535
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】712005920
【氏名又は名称】新明和パークテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤川 淳
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA33
3J063AB25
3J063BA07
3J063BA11
3J063XD03
3J063XD12
3J063XD56
3J063XD72
(57)【要約】
【課題】チェーンへの給油作業の無人化を図り、メンテナンス作業の負荷を軽減する。
【解決手段】チェーン給油器10は、潤滑油を貯蔵するためのオイルパン12と、撚り紐及び撚り紐が挿通されるチューブを含む導油管16とを含み、撚り紐の一端20aがオイルパン12内の潤滑油に浸けられた状態で固定され、他端20bが潤滑油を供給する給油位置に固定される。そして、オイルパン12は、撚り紐の一端20aの固定位置が他端20bよりも高い位置になるように設置される。これにより、撚り紐を介した毛細管現象と、撚り紐の一端20aと他端20bとの間の高低差による位置エネルギーとを利用して、オイルパン12内の潤滑油を任意の給油位置まで供給することができるため、潤滑油の給油作業の無人化を実現することができ、メンテナンス作業の負荷を軽減することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を収容する複数のパレットを備えた立体駐車装置において、少なくとも昇降移動を行うパレットの各々を、車両の出入庫方向に対応する前後方向と車両の幅方向に対応する側方向とに間隔を空けて吊り下げている4本のチェーンに対して、潤滑油を供給するためのチェーン給油器であって、
潤滑油を貯蔵するためのオイルパンと、
一端が前記オイルパン内の潤滑油に浸けられた状態で固定され、他端が潤滑油を供給する給油位置に固定される少なくとも1本の撚り紐と、
内部に前記撚り紐の各々が挿通され、該撚り紐を保持及び保護するためのチューブと、を含み、
前記オイルパンは、前記撚り紐の前記一端の固定位置が、前記給油位置よりも高い位置になるように設置されていることを特徴とするチェーン給油器。
【請求項2】
前記複数のパレットの中で昇降移動のみを行なう昇降パレットを対象として、前記オイルパンは、前記側方向に隣接する2台の前記昇降パレットの間に設置され、
前記オイルパンに対して、前記隣接する2台の昇降パレットのうち一方の昇降パレットを吊り下げている前記4本のチェーンの中で、前記隣接する2台の昇降パレットのうち他方の昇降パレット側を吊り下げている2本のチェーンと、前記他方の昇降パレットを吊り下げている前記4本のチェーンの中で、前記一方の昇降パレット側を吊り下げている2本のチェーンとを給油対象とする、複数本の前記撚り紐が固定されていることを特徴とする請求項1記載のチェーン給油器。
【請求項3】
前記複数のパレットの中で少なくとも昇降移動を行うパレットを対象として、前記オイルパンは、各パレットの後方側の前記側方向の中央近傍に設置され、
前記オイルパンの各々に対して、各パレットを吊り下げている前記4本のチェーンを給油対象とする、複数本の前記撚り紐が固定されていることを特徴とする請求項1記載のチェーン給油器。
【請求項4】
前記オイルパンに複数本の前記撚り紐が固定され、
前記複数本の撚り紐の中に、前記4本のチェーンのうち前記側方向について同じ側でパレットの前方側及び後方側の2箇所を吊り下げている2本のチェーンの、パレットに接続された端部とは反対の端部側へ同時に給油するように、前記給油位置が設定された撚り紐が含まれていることを特徴とする請求項1記載のチェーン給油器。
【請求項5】
前記2本のチェーンへ同時に給油する撚り紐の前記給油位置が、前記2本のチェーンを駆動する駆動スプロケットのために前記2本のチェーンをガイドするチェーンガイドであることを特徴とする請求項4記載のチェーン給油器。
【請求項6】
前記複数本の撚り紐の中に、前記2本のチェーンの、該2本のチェーンを駆動する駆動スプロケットに係合している部分の近傍へ同時に給油するように、前記給油位置が設定された撚り紐が含まれていることを特徴とする請求項4記載のチェーン給油器。
【請求項7】
前記複数本の撚り紐の中に、前記4本のチェーンのうちパレットの前方側を吊り下げている2本のチェーンの各々の、該チェーンがパレットの前方側で係合している従動スプロケットの近傍の部分へ個別に給油するように、前記給油位置が設定された2本の撚り紐が含まれていることを特徴とする請求項4記載のチェーン給油器。
【請求項8】
前記複数本の撚り紐の中に、前記他端が固定される前記給油位置が、各撚り紐が給油対象とするチェーンの上方に設置されたガイドプレートである撚り紐が含まれていることを特徴とする請求項2から7のいずれか1項記載のチェーン給油器。
【請求項9】
前記複数のパレットの中で昇降移動のみを行なう昇降パレットを対象として、複数の前記オイルパンが前記側方向に互いに間隔を空けて設置される場合に、前記側方向に隣接する2つの前記オイルパン間を接続するように、一端が前記2つのオイルパンのうち一方のオイルパン内の潤滑油に浸けられた状態で固定され、他端が前記2つのオイルパンのうち他方のオイルパン内の潤滑油に浸けられた状態で固定された油分配用撚り紐と、該油分配用撚り紐を保持及び保護するための保護チューブと、を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載のチェーン給油器。
【請求項10】
車両を収容する複数のパレットを備えた立体駐車装置において、少なくとも昇降移動を行うパレットの各々を、車両の出入庫方向に対応する前後方向と車両の幅方向に対応する側方向とに間隔を空けて吊り下げている4本のチェーンに対して、潤滑油を供給するためのチェーン給油方法であって、
一端をオイルパン内に貯蔵した潤滑油に浸けた状態で固定すると共に、他端を潤滑油の給油位置に固定する少なくとも1本の撚り紐を、該撚り紐を保持及び保護するためのチューブに挿通した状態で設置し、
前記オイルパンを、前記撚り紐の前記一端の固定位置が、前記給油位置よりも高い位置になるように設置することを特徴とするチェーン給油方法。
【請求項11】
前記給油位置に対する潤滑油の給油量に応じて、前記オイルパンの設置高さと、前記撚り紐の太さとのうち、少なくとも一方を調整することを特徴とする請求項10記載のチェーン給油方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体駐車装置のパレットを吊り下げているチェーンに対して潤滑油を供給するためのチェーン給油器及びチェーン給油方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昇降移動するパレットをチェーンで吊り下げている立体駐車装置では、メンテナンスの1つとしてチェーンへの給油が挙げられる。このチェーンへの給油では、各チェーンに対して潤滑油を供給することで、チェーンの潤滑性や耐錆性の向上を図り、キンクなどの発生を抑制するものである。このようなチェーンへの給油は、従来、作業者による手作業で行われており、例えば特許文献1には、作業者が油タンクを背負って噴射ノズルから油を噴霧する形式の給油装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-024828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、チェーンへの潤滑油の給油は、上述したように手作業で行なわれるため、上下方向に複数段のパレットを備える駐車装置では、必然的に高所での作業が発生し、また、チェーンへの給油箇所によっては、モータやスプロケットといった回転部材の近傍での作業も発生する。更に、昇降移動するパレットを吊り下げている全てのチェーンが給油対象となるため、パレットの数に応じて作業量が増加する。従って、安全面への万全な配慮や作業量などから、チェーンへの給油作業がメンテナンス作業の負荷を増大させる一因となっていた。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、チェーンへの給油作業の無人化を図り、メンテナンス作業の負荷を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではない。そのため、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)車両を収容する複数のパレットを備えた立体駐車装置において、少なくとも昇降移動を行うパレットの各々を、車両の出入庫方向に対応する前後方向と車両の幅方向に対応する側方向とに間隔を空けて吊り下げている4本のチェーンに対して、潤滑油を供給するためのチェーン給油器であって、潤滑油を貯蔵するためのオイルパンと、一端が前記オイルパン内の潤滑油に浸けられた状態で固定され、他端が潤滑油を供給する給油位置に固定される少なくとも1本の撚り紐と、内部に前記撚り紐の各々が挿通され、該撚り紐を保持及び保護するためのチューブと、を含み、前記オイルパンは、前記撚り紐の前記一端の固定位置が、前記給油位置よりも高い位置になるように設置されているチェーン給油器。
【0007】
本項に記載のチェーン給油器は、潤滑油を貯蔵するためのオイルパン、少なくとも1本の撚り紐、及び撚り紐を保持及び保護するためのチューブを含んでいる。撚り紐は、チューブの内部に挿通された状態で、一端がオイルパン内の潤滑油に浸けられた状態でオイルパン内に固定され、他端が潤滑油の供給先となる給油位置に固定される。そして、撚り紐の一端のオイルパン内での固定位置が、撚り紐の他端が固定される給油位置よりも高い位置になるように、オイルパンが設置されているものである。これにより、撚り紐を介した毛細管現象と、撚り紐の一端と他端との間の高低差による位置エネルギーとが利用されて、オイルパン内に貯蔵されている潤滑油が、撚り紐の他端が固定された任意の給油位置まで供給されることになる。
【0008】
更に、潤滑油は、チューブ内の撚り紐を伝うことになるため、チューブ内から漏れ出ることなく給油位置まで到達する。このため、撚り紐の他端からチェーンに対して直接的或いは間接的に潤滑油が供給されるような位置に給油位置が設定されることで、アクチュエータや電気設備などが使用されない単純な構成にも関わらず、チェーンに対する潤滑油の給油作業の無人化が実現されるものである。従って、チェーンへの給油のための作業者による高所作業やチェーンを駆動するための回転部材近傍での作業が不要となり、メンテナンス作業の負荷が軽減されるものである。しかも、上述したようにオイルパン、撚り紐、及びチューブという単純な構成のため、既設及び新設の立体駐車装置を問わず、設置作業が容易であり、簡便に適用されるものとなる。
【0009】
(2)上記(1)項において、前記複数のパレットの中で昇降移動のみを行なう昇降パレットを対象として、前記オイルパンは、前記側方向に隣接する2台の前記昇降パレットの間に設置され、前記オイルパンに対して、前記隣接する2台の昇降パレットのうち一方の昇降パレットを吊り下げている前記4本のチェーンの中で、前記隣接する2台の昇降パレットのうち他方の昇降パレット側を吊り下げている2本のチェーンと、前記他方の昇降パレットを吊り下げている前記4本のチェーンの中で、前記一方の昇降パレット側を吊り下げている2本のチェーンとを給油対象とする、複数本の前記撚り紐が固定されているチェーン給油器。
【0010】
本項に記載のチェーン給油器は、立体駐車装置の複数のパレットの中で、例えば立体駐車装置の最上段などに配置される昇降移動のみを行なう昇降パレットを対象として、オイルパンが、側方向に隣接する2台の昇降パレットの間に設置されるものである。このとき、昇降パレットが側方向に3台以上並んでいる場合は、複数のオイルパンが、隣接している昇降パレットの間の各々に分散して設置されてよい。そして、そのようなオイルパンに対して、各オイルパンを挟むような位置関係にある2台の昇降パレットの双方のチェーンへ給油するように、複数本の撚り紐が固定されている。具体的に、2台の昇降パレットのうち一方の昇降パレットに対しては、その一方の昇降パレットを吊り下げている4本のチェーンの中で、2台の昇降パレットのうち他方の昇降パレット側を吊り下げている2本のチェーン、換言すればオイルパンに近い側を吊り下げている2本のチェーンが、そのオイルパンからの給油対象となる。
【0011】
また、2台の昇降パレットのうち他方の昇降パレットに対しては、その他方の昇降パレットを吊り下げている4本のチェーンの中で、一方の昇降パレット側を吊り下げている2本のチェーン、換言すればオイルパンに近い側を吊り下げている2本のチェーンが、そのオイルパンからの給油対象となる。これにより、オイルパンから近い位置にあるチェーンに対して給油されるように、撚り紐がルーティングされることになるため、特に側方向について、撚り紐の引き回し長が短くなり、各撚り紐のルーティング作業が容易になるものである。更に、オイルパンが、隣接する昇降パレットの間、例えば立体駐車装置の支柱に近い位置の縦梁上などに設置されるため、オイルパンへの潤滑油の補充作業なども容易になるものである。
【0012】
(3)上記(1)項において、前記複数のパレットの中で少なくとも昇降移動を行うパレットを対象として、前記オイルパンは、各パレットの後方側の前記側方向の中央近傍に設置され、前記オイルパンの各々に対して、各パレットを吊り下げている前記4本のチェーンを給油対象とする、複数本の前記撚り紐が固定されているチェーン給油器。
本項に記載のチェーン給油器は、立体駐車装置の複数のパレットの中で、少なくとも昇降移動を行うパレットを対象として、オイルパンが、各パレットの後方側の側方向中央近傍に設置されるものである。すなわち、少なくとも昇降移動を行うパレットの各々に対応するように、複数のオイルパンが分散して設置される。そして、そのようなオイルパンの各々に対して、各オイルパンが対応するパレットを吊り下げている4本のチェーンを給油対象とした、複数本の撚り紐が固定されている。
【0013】
これにより、4本のチェーンのうち側方向の一方側を吊り下げている2本のチェーンと、それとは反対の側方向の他方側を吊り下げている2本のチェーンとに対して、略均等の長さで撚り紐がルーティングされることになる。このため、1台のパレットを給油対象とするオイルパンが側方向の何れかの側へ偏った位置に設置される場合と比較して、チェーンへの給油に必要な撚り紐の最大長さが抑制され、困難なルーティング作業が回避されるものである。また、昇降移動に加えて横行移動するパレットの場合には、横行枠を構成する後方側の横梁の側方向中央近傍にオイルパンが設置され、更に横行枠に沿って撚り紐がルーティングされることで、横行移動するパレットのチェーンに対しても問題なく潤滑油が供給されるものとなる。
【0014】
(4)上記(1)項において、前記オイルパンに複数本の前記撚り紐が固定され、前記複数本の撚り紐の中に、前記4本のチェーンのうち前記側方向について同じ側でパレットの前方側及び後方側の2箇所を吊り下げている2本のチェーンの、パレットに接続された端部とは反対の端部側へ同時に給油するように、前記給油位置が設定された撚り紐が含まれているチェーン給油器。
本項に記載のチェーン給油器は、オイルパンに複数本の撚り紐が固定されており、それら複数本の撚り紐の中に、パレットを吊り下げている4本のチェーンのうちの2本のチェーンへ同時に給油するような撚り紐が含まれている。
【0015】
すなわち、この撚り紐は、4本のチェーンのうち、側方向について同じ側(一方側或いは他方側)でパレットの前方側及び後方側の2箇所を吊り下げている2本のチェーンの、パレットに接続された一方の端部とは反対の他方の端部側へ同時に給油するように、給油位置が設定されている。これにより、パレットの前方側を吊り下げているチェーンの他方の端部側と、パレットの後方側を吊り下げているチェーンの他方の端部側とへ、1本の撚り紐から同時に潤滑油が供給されるため、効率よく給油されるものとなる。また、2本のチェーンの夫々を対象として別々に撚り紐を設置する場合と比較して、オイルパンからルーティングする撚り紐の本数が抑制されるため、設置作業が容易になるものである。
【0016】
(5)上記(4)項において、前記2本のチェーンへ同時に給油する撚り紐の前記給油位置が、前記2本のチェーンを駆動する駆動スプロケットのために前記2本のチェーンをガイドするチェーンガイドであるチェーン給油器。
本項に記載のチェーン給油器は、上記(4)項で言及したように2本のチェーンへ同時に給油する撚り紐の給油位置が、2本のチェーンを駆動する駆動スプロケットのために2本のチェーンをガイドするチェーンガイドになっている。すなわち、このようなチェーンガイドは、通常、側方向について同じ側でパレットを吊り下げる2本のチェーンの端部近傍で、それら2本のチェーンに接触或いは近接した状態でチェーンをガイドするようになっている。このため、そのようなチェーンガイドの適切な位置に給油位置が設定されることで、チェーンガイドを介して2本のチェーンへ同時に潤滑油が供給されるようになることから、2本のチェーンの端部側への同時給油が容易に実現されるものである。
【0017】
(6)上記(4)項において、前記複数本の撚り紐の中に、前記2本のチェーンの、該2本のチェーンを駆動する駆動スプロケットに係合している部分の近傍へ同時に給油するように、前記給油位置が設定された撚り紐が含まれているチェーン給油器。
本項に記載のチェーン給油器は、オイルパンへ固定された複数本の撚り紐の中に、上記(4)項で言及した2本のチェーンの、パレットに接続された端部と反対の端部側とは別の部分に、同時に給油するような撚り紐が含まれているものである。具体的に、この撚り紐は、側方向について同じ側でパレットを吊り下げている2本のチェーンの、これら2本のチェーンを駆動する駆動スプロケットに係合している部分の近傍へ、同時に給油するような位置に給油位置が設定されている。
【0018】
すなわち、2本のチェーンを駆動する駆動スプロケットには、互いに近接した状態の2本のチェーンが係合しているため、駆動スプロケットの近傍では2本のチェーンへの同時給油が容易に実現されるものとなる。更に、巻き取りや繰り出しにより、2本のチェーンの駆動スプロケットに係合する部分が変化し、それには、2本のチェーンの、端部側からの給油では潤滑油が到達できない部分が含まれている。従って、そのような部分に対して潤滑油が供給されるものとなり、潤滑油が供給されるチェーンの範囲が増大するものである。
【0019】
(7)上記(4)項において、前記複数本の撚り紐の中に、前記4本のチェーンのうちパレットの前方側を吊り下げている2本のチェーンの各々の、該チェーンがパレットの前方側で係合している従動スプロケットの近傍の部分へ個別に給油するように、前記給油位置が設定された2本の撚り紐が含まれているチェーン給油器。
本項に記載のチェーン給油器は、オイルパンへ固定された複数本の撚り紐の中に、パレットを吊り下げている4本のチェーンのうち、パレットの前方側を吊り下げている2本のチェーンへ個別に給油するような、2本の撚り紐が含まれているものである。
【0020】
すなわち、パレットの前方側を吊り下げているチェーンは、通常、後方寄りに設置された駆動スプロケットから、前方寄りに設置された従動スプロケットまで延び、そこから下方へ延びてパレットの前方側へ接続されている。このため、チェーンの従動スプロケットに係合している部分の近傍に給油位置が設定されていることで、後方側のチェーンよりも必然的に長くなる前方側のチェーンの、巻き取りや繰り出しによって変化する従動スプロケットに係合している部分に対して、潤滑油が供給されるようになる。これにより、パレットの前方側を吊り下げているチェーンの、パレットに接続されている端部の近傍を含む広い範囲に潤滑油が供給されるため、チェーンへの給油範囲が増大するものである。
【0021】
(8)上記(2)から(7)項において、前記複数本の撚り紐の中に、前記他端が固定される前記給油位置が、各撚り紐が給油対象とするチェーンの上方に設置されたガイドプレートである撚り紐が含まれているチェーン給油器。
本項に記載のチェーン給油器は、オイルパンへ固定された複数本の撚り紐の中に、他端がガイドプレートに接続された撚り紐が含まれているものである。具体的に、この撚り紐は、その他端が固定される給油位置がガイドプレートであり、そのガイドプレートは、ガイドプレートに固定された撚り紐が給油対象とするチェーンの上方に設置される。これにより、撚り紐を介してガイドプレートまで伝わった潤滑油が、ガイドプレートからその下方へ位置するチェーンへ滴り落ちるため、ガイドプレートがチェーンへ接触することなく、潤滑油が供給されるものとなる。しかも、上述したようにガイドプレートはチェーンに接触しないため、チェーンを支持したり直接的に案内したりするものではなく、単にチェーンの上振れを抑えるような位置にあることから、ガイドプレートが摩耗することはなく、また、配置の自由度が高くなるものである。
【0022】
(9)上記(1)から(7)項において、前記複数のパレットの中で昇降移動のみを行なう昇降パレットを対象として、複数の前記オイルパンが前記側方向に互いに間隔を空けて設置される場合に、前記側方向に隣接する2つの前記オイルパン間を接続するように、一端が前記2つのオイルパンのうち一方のオイルパン内の潤滑油に浸けられた状態で固定され、他端が前記2つのオイルパンのうち他方のオイルパン内の潤滑油に浸けられた状態で固定された油分配用撚り紐と、該油分配用撚り紐を保持及び保護するための保護チューブと、を含むチェーン給油器。
【0023】
本項に記載のチェーン給油器は、立体駐車装置の複数のパレットの中で、例えば立体駐車装置の最上段などに配置される昇降移動のみを行なう昇降パレットを対象として、複数のオイルパンが側方向に互いに間隔を空けて設置される。そして、そのような複数のオイルパンの中で、側方向に隣接する2つのオイルパン間を接続するように、油分配用撚り紐が設置される。すなわち、この油分配用撚り紐は、一端が一方のオイルパン内の潤滑油に浸けられた状態で固定され、他端が他方のオイルパン内の潤滑油に浸けられた状態で固定される。更に、油分配用撚り紐は、オイルパンから給油位置までの延びる撚り紐と同様に、保護チューブに挿通されることで、保持及び保護されるようになっている。
【0024】
このような構成により、油分配用撚り紐を介した毛細管現象によって、隣接する2つのオイルパン内の潤滑油が往来するようになるため、2つのオイルパン内の潤滑油の量が均等化されるものとなる。更に、複数のオイルパンの全てが上記のように油分配用撚り紐を介して接続されている場合であっても、それら複数のオイルパンの間で潤滑油の量が均等化されるため、複数のオイルパンの中で作業がし易い位置にある1つのオイルパンへのみ潤滑油が補充されることで、接続された全てのオイルパンへ潤滑油が補充されることになる。従って、潤滑油の補充作業の手間が大幅に削減され、これによってもメンテナンス作業の負荷が軽減されるものである。
【0025】
(10)車両を収容する複数のパレットを備えた立体駐車装置において、少なくとも昇降移動を行うパレットの各々を、車両の出入庫方向に対応する前後方向と車両の幅方向に対応する側方向とに間隔を空けて吊り下げている4本のチェーンに対して、潤滑油を供給するためのチェーン給油方法であって、一端をオイルパン内に貯蔵した潤滑油に浸けた状態で固定すると共に、他端を潤滑油の給油位置に固定する少なくとも1本の撚り紐を、該撚り紐を保持及び保護するためのチューブに挿通した状態で設置し、前記オイルパンを、前記撚り紐の前記一端の固定位置が、前記給油位置よりも高い位置になるように設置するチェーン給油方法。
本項に記載のチェーン給油方法は、上記(1)項のチェーン給油器を用いて実行されることで、上記(1)項のチェーン給油器と同様の作用を奏するものである。
【0026】
(11)上記(10)項において、前記給油位置に対する潤滑油の給油量に応じて、前記オイルパンの設置高さと、前記撚り紐の太さとのうち、少なくとも一方を調整するチェーン給油方法。
本項に記載のチェーン給油方法は、オイルパンから撚り紐を介して給油位置へと給油する給油量に応じて、オイルパンの設置高さと撚り紐の太さとのうち、少なくとも一方を調整するものである。すなわち、オイルパンの設置高さの調整によって、撚り紐の一端と他端との間の高低差による位置エネルギーが変化することになり、また、撚り紐の太さの調整によって、毛細管現象が発生する撚り紐内の隙間の数が増減することになる。従って、何れの方法によっても、撚り紐を伝わる潤滑油の量が調整されるため、給油位置に対する所望の給油量が容易に実現され、チェーンに対する過剰な給油や給油不足が回避されるものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明はこのように構成したので、チェーンへの給油作業の無人化を図ることができ、メンテナンス作業の負荷を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施の形態に係るチェーン給油器の構成を模式的に示す側面図である。
図2図1のチェーン給油器を図1における上側から示した平面図である。
図3図1のチェーン給油器を図1における右側から示した後面図である。
図4】本発明の実施の形態に係るチェーン給油器で使用する導油管の構成を概略的に示すイメージ図である。
図5】複数のオイルパンの各々から延びる導油管と、オイルパン同士を接続する導油管とを示す平面イメージ図である。
図6】本発明の実施の形態に係るチェーン給油器が適用される立体駐車装置の構成の一例を示す斜視図である。
図7】立体駐車装置においてパレットを吊り下げている4本のチェーンを、駆動スプロケット及び従動スプロケットと共に概略的に示すイメージ斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。ここで、図面の全体にわたって、同一部分又は対応する部分は、同一符号で示している。また、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略するものとする。
図1図3は、本発明の実施の形態に係るチェーン給油器10の構成の一例を概略的に示している。このチェーン給油器10は、図6に示されるような立体駐車装置50において、車両Vを収容する複数のパレット52(52A~52I)のうち、少なくとも昇降移動を行うパレット52を、図7に示すように吊り下げているチェーン56(56A~56D)に対して、潤滑油を供給するものである。
【0030】
まず、図6を参照して、本発明の実施の形態に係るチェーン給油器10が適用される、立体駐車装置50の構成の一例について説明する。図示のように、立体駐車装置50は、複数の支柱80と複数の縦梁82及び横梁84とによって構成された略矩形の構造体に、複数のパレット52が移動可能に支持された構造を有している。図6の例において、立体駐車装置50は、地上4段3連基(高さ方向に4段、側方向に3列)の構造であって、複数のパレット52として9台のパレット52A~52Iを備えており、更に、開閉ゲート90(90A~90C)を備えている。
【0031】
複数のパレット52A~52Iのうち、2台のパレット52A、52Bは、車両Vを出入庫する高さ位置(出入庫位置)で横行移動のみ行う。また、4台のパレット52C~52Fは、立体駐車装置50の利用者による呼び出し操作に応じて、出入庫位置(図6においてパレット52A、52B、52Gがある位置)まで、高さ方向及び側方向に移動可能なもの、すなわち昇降移動及び横行移動の双方に対応するものである。一方、残り3台のパレット52G~52Iは、昇降移動のみ行うものであって、以降ではこれらを昇降パレット52(52G~52I)とも言う。図6に示されている立体駐車装置50は、9台のパレット52A~52Iのうち、パレット52Gを除いた8台のパレット52A~52F、52H、52Iに、車両Vが格納された状態である。更に、3台のパレット52A、52B、52Gが出入庫位置にあり、残り6台のパレット52C~52F、52H、52Iが収容位置にある状態である。
【0032】
開閉ゲート90A~90Cの各々は、その後面側の出入庫位置に所望のパレット52が呼び出された後に開かれ、車両Vの出入庫が終わった後に、利用者の操作により閉じられるものである。また、立体駐車装置50は、詳しい説明は控えるが、上述した複数のパレット52A~52I、及び開閉ゲート90A~90Cの他にも、多くの構成要素を含んでいる。それらの構成要素には、例えば、利用者により立体駐車装置50の各操作を行うための入力が行われる操作盤、立体駐車装置50全体の制御を担う制御部、制御部による制御に応じてパレット52の移動や開閉ゲート90の開閉動作を行うための動力を発生及び伝達する駆動部、出入庫位置にある各パレット52の周辺の物体を検知する複数の光電センサなどが含まれる。
【0033】
そして、図1図3には、上述したような立体駐車装置50において、側方向に隣接する2台の昇降パレット52の間にあり、且つ立体駐車装置50を構成する縦梁82の中で最も高い位置にある縦梁82の、主に後方側近傍が示されている。ここでは、図1図3に示されている縦梁82が、図6の立体駐車装置50において最上段に収容された状態の、2台の昇降パレット52Hと52Iとの間に位置する縦梁82である場合を例にして説明する。以降では、特に断り書きのない限り、図1及び図2における左右方向を前後方向、図2における上下方向及び図3における左右方向を側方向、図1及び図3における上下方向を高さ方向として説明する。
【0034】
図1図3に示すように、縦梁82の側方向両側には、縦梁82を挟むようにしてチェーン56が2本ずつ、合計で4本のチェーン56が配設されている。これら4本のチェーン56のうち、符号56Aが付されているチェーン56は、図7に示された昇降パレット52を昇降パレット52Iとしたときの、図7に符号56Aで示されているチェーン56に該当する。同様に、図1図3で符号56Bが付されているチェーン56は、図7に示された昇降パレット52を昇降パレット52Iとしたときの、図7に符号56Bで示されているチェーン56に該当する。
【0035】
これに対し、図2及び図3で符号56Cが付されているチェーン56は、図7に示された昇降パレット52を昇降パレット52Hとしたときの、図7に符号56Cで示されているチェーン56に該当する。同様に、図2及び図3で符号56Dが付されているチェーン56は、図7に示された昇降パレット52を昇降パレット52Hとしたときの、図7に符号56Dで示されているチェーン56に該当する。すなわち、図1図3に示された4本のチェーン56A~56Dは、1台の昇降パレット52を吊り下げるものではなく、昇降パレット52Hを吊り下げている4本のチェーン56のうちの2本と、昇降パレット52Iを吊り下げている4本のチェーン56のうちの2本とに該当するものである。
【0036】
チェーン56Aは、その一端がパレット52I(図1のパレット52に相当)の後方側に接続され、縦梁82上に設置された従動スプロケット70を介して、同じく縦梁82上に設置された駆動スプロケット66に延びている。チェーン56Aは、駆動スプロケット66に係合するように板状のチェーンガイド68によって案内されており、更に下方へ延びてスプロケット74で上方へ折り返した後、他端側がチェーンガイド68の下部に固定されている。一方、チェーン56Bは、その一端がパレット52I(図1のパレット52に相当)の前方側に接続され、縦梁82上に設置された従動スプロケット72及び70を介して、駆動スプロケット66に延びている。チェーン56Bは、駆動スプロケット66に係合するように板状のチェーンガイド68によって案内されており、更に下方へ延びてスプロケット74で上方へ折り返した後、他端側がチェーンガイド68の下部に固定されている。
【0037】
なお、チェーン56Aが係合する従動スプロケット70とチェーン56Bが係合する従動スプロケット70とは、同軸上で個別に回転可能なものであり、チェーン56Aが係合する駆動スプロケット66とチェーン56Bが係合する駆動スプロケット66とは、同じ方向及び速度で回転するものである。チェーン56A及びチェーン56Bが係合する駆動スプロケット66は、図示しない位置に設置されたモータによって回転される。また、チェーン56Aを案内する板状のチェーンガイド68と、チェーン56Bを案内する板状のチェーンガイド68とは、互いに近接して平行に設置されている。これらのチェーンガイド68は、チェーン56や駆動スプロケット66を避けるようにして縦梁82に取り付けられた、取付部材76を介して設置されている。
【0038】
他方、チェーン56Cは、チェーン56Aと縦梁82を挟んで側方向について線対称の位置関係で、パレット52Hの後方側に接続された一端から、従動スプロケット70、駆動スプロケット66、及びスプロケット74を介して、チェーンガイド68の下部に固定された他端まで延びている。同様に、チェーン56Dは、チェーン56Bと縦梁82を挟んで側方向について線対称の位置関係で、パレット52Hの前方側に接続された一端から、従動スプロケット72、従動スプロケット70、駆動スプロケット66、及びスプロケット74を介して、チェーンガイド68の下部に固定された他端まで延びている。チェーン56C及び56Dが係合する駆動スプロケット66は、図3に示されたモータ60によって、図1に示された駆動チェーン62を介して回転される。
【0039】
ここからは、本発明の実施の形態に係るチェーン給油器10の具体的な説明に入るが、図1図3には、複数台のパレット52及びそれらの各々を吊り下げている4本のチェーン56を備えた立体駐車装置50に適用される、チェーン給油器10の一部の構成のみが図示されている。図1図3に示されるように、本発明の実施の形態に係るチェーン給油器10は、オイルパン12と複数本の導油管16とを含んでいる。オイルパン12は、チェーン56へ給油するための潤滑油を内部に貯蔵するためのものであり、本実施形態では取付部材76上に設置されることで、縦梁82上に設置された他の部材よりも高い位置に設置されている。オイルパン12には、雨水などの浸入を防ぐための蓋を設置することが好ましく、また、これに限定されるものではないが、オイルパン12には例えば2~4リットル程度の容量のものが想定される。オイルパン12には、チェーン56へ潤滑性や耐錆性などを付加するための、任意の潤滑油が貯蔵される。
【0040】
導油管16は、オイルパン12に貯蔵された潤滑油を所望の給油位置まで導くためのものであり、本実施形態では複数本の導油管16として6本の導油管16A~16Fが図示され、これらの導油管16の各々は、図4に示すような構成を有している。すなわち、導油管16は、撚り紐20とチューブ24と固定用端子26とを含み、チューブ24内に撚り紐20が挿通され、その状態の撚り紐20の一端20a及び他端20bの各々に固定用端子26が取り付けられている。撚り紐20には、潤滑油の浸透性が高い繊維の撚り紐を採用することが好ましく、特に耐候性や耐腐食性などを考慮して化学繊維を採用することが好ましい。撚り紐20は、これに限定されるものではないが、例えば直径3mm程度の太さのものが想定される。しかしながら、撚り紐20の太さは、後述するように所望の給油量などに応じて任意の大きさであってよい。
【0041】
チューブ24は、撚り紐20を保護及び保持するためのものであり、耐候性や耐油性に優れた樹脂製のものなどが採用される。チューブ24の太さは、内部に挿通された撚り紐20を伝う潤滑油の流れを阻害せずに、撚り紐20を保護及び保持し得る適切な大きさに設定される。固定用端子26は、撚り紐20の両端20a、20bを後述するような位置に固定するためのものであり、図4に図示されているのは、主にネジ止めなどでの固定に対応した固定用端子26である。しかしながら、固定用端子26は、撚り紐20の両端20a、20bの固定方法に応じた任意のものを採用してよい。
【0042】
図1図3に戻り、6本の導油管16は、撚り紐20の一端20aに取り付けられた固定用端子26が、オイルパン12内にネジ止めなどで固定されている。このとき、導油管16の各々は、オイルパン12内に貯蔵されている潤滑油に撚り紐20の一端20aが浸るように、例えばオイルパン12の底部近傍に固定される。導油管16の各々は、後述するようにオイルパン12の内側から外側へと延びることになるが、オイルパン12に蓋が設置されている場合は、その蓋やオイルパン12の側壁の上部などに穴や切欠きを設け、そこへ導油管16を通してもよく、或いはオイルパン12の蓋と側壁との間の隙間に導油管16を通してもよい。
【0043】
6本の導油管16のうちの導油管16Aは、側方向について昇降パレット52I寄り(図2における下寄り)の位置で、オイルパン12から主に下方へ向かって延び、撚り紐20の他端20bに取り付けられた固定用端子26が、図3のような前後方向視でコの字状をなすガイドプレート34Aに固定されている。このガイドプレート34Aは、平行に設置された2枚のチェーンガイド68の下部に固定された状態のチェーン56A及び56Bの端部に対して、直接取り付けられており、その取り付け部分からチェーン56A及び56Bが垂下している。より詳しくは、ガイドプレート34Aのコの字状の二股部の先端が下方になる向きで、二股部の一方がチェーン56Aの端部に取り付けられ、二股部の他方がチェーン56Bの端部に取り付けられている。そして、ガイドプレート34Aの二股部の間の部位に、導油管16Aの固定用端子26が固定されており、これによって導油管16Aの給油位置が、昇降パレット52Iを吊り下げている2本のチェーン56A、56Bに取り付けられたガイドプレート34Aに設定されている。
【0044】
導油管16Bは、導油管16Aと縦梁82を挟んで側方向について線対称の位置関係でルーティングされている。すなわち、導油管16Bは、側方向について昇降パレット52H寄り(図2における上寄り)の位置で、オイルパン12から主に下方へ向かって延び、撚り紐20の他端20bに取り付けられた固定用端子26が、ガイドプレート34Aと同じ形状を有するガイドプレート34Bに固定されている。このガイドプレート34Bは、平行に設置された2枚のチェーンガイド68の下部に固定された状態のチェーン56C及び56Dの端部に対して、直接取り付けられている。これによって導油管16Bの給油位置が、昇降パレット52Hを吊り下げている2本のチェーン56C、56Dに取り付けられたガイドプレート34Bに設定されている。
【0045】
なお、導油管16A、16Bのように、チェーンガイド68に固定されたチェーン56の端部を給油対象とする場合は、導油管16をチェーンガイド68に接続してもよい。例えば、チェーンガイド68の適切な位置に穴を設け、そこに導油管16の撚り紐20の他端20bに取り付けられた固定用端子26を固定してもよい。このような方法は、特にチェーンガイド68に穴などを形成することが容易な、新設の立体駐車装置50において有用である。
【0046】
導油管16Cは、側方向について昇降パレット52I寄り(図2における下寄り)の位置で、オイルパン12から主に下方へ向かって延び、撚り紐20の他端20bに取り付けられた固定用端子26が、図1のような側方向視でクランク状をなすガイドプレート34Cに固定されている。このガイドプレート34Cは、チェーン56A及び56Bが駆動スプロケット66に係合している部分の近傍で、チェーン56A及び56Bの上方に設置されている。より詳しくは、図1で確認できるように、クランク状をなすガイドプレート34Cの、互いに反対方向に突出した2つの突出部とその間を接続する接続部とのうち、一方の突出部が前後方向と略平行に図1における右下側に配置されるように設置されている。また、ガイドプレート34Cは、図2のような平面視で、2本のチェーン56A及び56Bに跨るような側方向の幅を有しており、一方の突出部の方が他方の突出部よりも幅が小さくなっている。そして、ガイドプレート34Cの接続部に設けられた穴を通して、ガイドプレート34Cの一方の突出部に導油管16Cの固定用端子26が固定されており、これによって導油管16Cの給油位置が、昇降パレット52Iを吊り下げている2本のチェーン56A、56Bの上方に位置するガイドプレート34Cに設定されている。
【0047】
導油管16Dは、導油管16Cと縦梁82を挟んで側方向について線対称の位置関係でルーティングされている。すなわち、導油管16Dは、側方向について昇降パレット52H寄り(図2における上寄り)の位置で、オイルパン12から主に下方へ向かって延び、撚り紐20の他端20bに取り付けられた固定用端子26が、ガイドプレート34Cと同じ形状を有するガイドプレート34D(図2にのみ図示)に固定されている。このガイドプレート34Dは、チェーン56C及び56Dが駆動スプロケット66に係合している部分の近傍で、チェーン56C及び56Dの上方に設置されている。これによって導油管16Dの給油位置が、昇降パレット52Hを吊り下げている2本のチェーン56C、56Dの上方に位置するガイドプレート34Dに設定されている。
【0048】
導油管16Eは、側方向について昇降パレット52I寄り(図2における下寄り)の位置で、オイルパン12から主に前方側へ向かって縦梁82に沿って延び、撚り紐20の他端20bに取り付けられた固定用端子26が、前後方向視で大略コの字状をなすガイドプレート34Eに固定されている。このガイドプレート34Eは、チェーン56Bが従動スプロケット72に係合している部分の近傍で、少なくとも導油管16Eの固定用端子26が固定された部分がチェーン56Bの上方に位置するように設置されている。より詳しくは、大略コの字状をなすガイドプレート34Eは、コの字状の二股部の一方が他方よりも高さ方向について長くなっており、その二股部の一方が縦梁82上で立設するように固定されている。このとき、図2のような平面視で、二股部の間の部位が縦梁82よりも昇降パレット52I側(図2における下側)へ突出することで、二股部の他方が、図1で確認できるようにその先端をチェーン56Bへ向ける態様で、チェーン56Bの上方に配置される。そして、ガイドプレート34Eの二股部の他方に導油管16Eの固定用端子26が固定されており、これによって導油管16Eの給油位置が、昇降パレット52Iを吊り下げているチェーン56Bの上方に位置するガイドプレート34Eに設定されている。
【0049】
導油管16Fは、導油管16Eと縦梁82を挟んで側方向について線対称の位置関係でルーティングされている。すなわち、導油管16Fは、側方向について昇降パレット52H寄り(図2における上寄り)の位置で、オイルパン12から主に前方側へ向かって縦梁82に沿って延び、撚り紐20の他端20bに取り付けられた固定用端子26が、ガイドプレート34Eと同じ形状を有するガイドプレート34Fに固定されている。このガイドプレート34Fは、チェーン56Dが従動スプロケット72に係合している部分の近傍で、少なくとも導油管16Fの固定用端子26が固定された部分がチェーン56Dの上方に位置するように設置されている。これによって導油管16Fの給油位置が、昇降パレット52Hを吊り下げているチェーン56Dの上方に位置するガイドプレート34Fに設定されている。
【0050】
ここで、昇降パレット52Iを吊り下げているチェーン56を給油対象とする導油管16A、16C、16Eは、図1で確認できるように、オイルパン12内に固定されている撚り紐20の一端20aが、ガイドプレート34に固定された撚り紐20の他端20bよりも高い位置にある。また、図1には図示されていないが、昇降パレット52Hを吊り下げているチェーン56を給油対象とする導油管16B、16D、16Fも、オイルパン12内に固定されている撚り紐20の一端20aが、ガイドプレート34に固定された撚り紐20の他端20bよりも高い位置にある。これは、各導油管16の撚り紐20の他端20bが固定される給油位置の高さを基準として、それよりも高い位置にオイルパン12が設置されることで実現される。
【0051】
また、導油管16の各々は、その撚り紐20の両端20a、20bが上述したように固定用端子26を介して固定されるが、その間のチューブ24で覆われた範囲も、状況に応じて固定されてよい。例えば、導油管16E及び16Fは、比較的長い範囲が縦梁82に沿ってルーティングされるため、その少なくとも一部の範囲のチューブ24が、接着などの任意の方法で縦梁82に固定されてもよい。他の導油管16についても、各々のルーティング経路に応じて、チューブ24で覆われている範囲の少なくとも一部が、任意の部材に対して任意の方法で固定されてよい。
【0052】
次に、図5には、図6のように側方向に3列のパレット52を有する立体駐車装置50の、昇降移動のみを行なう最上段の3台の昇降パレット52G~52Iを給油対象とした場合の、オイルパン12や導油管16の配置例を示している。図5は、図中の上下方向が側方向、図中の左右方向が前後方向に対応する平面視での配置イメージであり、4つのオイルパン12(12A~12D)が3台の昇降パレット52G~52Iの各々の両側に位置するように配置される。すなわち、オイルパン12Aとオイルパン12Bとの間に昇降パレット52Gが位置し、オイルパン12Bとオイルパン12Cとの間に昇降パレット52Hが位置し、オイルパン12Cとオイルパン12Dとの間に昇降パレット52Iが位置する態様となる。
【0053】
そして、4つのオイルパン12A~12Dのうちのオイルパン12Cは、図1図3を参照して説明したオイルパン12に該当するものであって、昇降パレット52H及び52Iを給油対象とするものである。すなわち、オイルパン12Cから延びる3本の導油管16A、16C、16Eは、オイルパン12Cに対して図5における下側で隣接する昇降パレット52Iを吊り下げている4本のチェーン56のうち、図7に示されるように側方向の一方側を吊り下げている2本のチェーン56A、56Bへ潤滑油を供給するように設置される。また、オイルパン12Cから延びる3本の導油管16B、16D、16Fは、オイルパン12Cに対して図5における上側で隣接する昇降パレット52Hを吊り下げている4本のチェーン56のうち、図7に示されるように側方向の他方側を吊り下げている2本のチェーン56C、56Dへ潤滑油を供給するように設置される。
【0054】
同様に、6本の導油管16が固定されたオイルパン12Bは、昇降パレット52G及び52Hを給油対象とするものである。すなわち、オイルパン12Bから延びる3本の導油管16A、16C、16Eは、オイルパン12Bに対して図5における下側で隣接する昇降パレット52Hを吊り下げている4本のチェーン56のうち、図7に示されるように側方向の一方側を吊り下げている2本のチェーン56A、56Bへ潤滑油を供給するように設置される。また、オイルパン12Bから延びる3本の導油管16B、16D、16Fは、オイルパン12Bに対して図5における上側で隣接する昇降パレット52Gを吊り下げている4本のチェーン56のうち、図7に示されるように側方向の他方側を吊り下げている2本のチェーン56C、56Dへ潤滑油を供給するように設置される。
【0055】
これに対し、オイルパン12Aから延びる3本の導油管16A、16C、16Eは、オイルパン12Aに対して図5における下側で隣接する昇降パレット52Gを給油対象とするものである。すなわち、これら3本の導油管16A、16C、16Eは、昇降パレット52Gを吊り下げている4本のチェーン56のうち、図7に示されるように側方向の一方側を吊り下げている2本のチェーン56A、56Bへ潤滑油を供給するように設置される。同様に、オイルパン12Dから延びる3本の導油管16B、16D、16Fは、オイルパン12Dに対して図5における上側で隣接する昇降パレット52Iを給油対象とするものである。すなわち、これら3本の導油管16B、16D、16Fは、昇降パレット52Iを吊り下げている4本のチェーン56のうち、図7に示されるように側方向の他方側を吊り下げている2本のチェーン56C、56Dへ潤滑油を供給するように設置される。
【0056】
更に、図5の例では、4つのオイルパン12A~12Dのうち、隣接する2つのオイルパン12A、12Bの間と、隣接する2つのオイルパン12B、12Cの間と、隣接する2つのオイルパン12C、12Dの間との各々が、調整管40によって接続されている。この調整管40は、図4に示すように、導油管16と同じ構成を有するものであって、油分配用撚り紐42と保護チューブ46と固定用端子26とを含み、保護チューブ46内に油分配用撚り紐42が挿通され、その状態の油分配用撚り紐42の一端42a及び他端42bの各々に固定用端子26が取り付けられている。そして、各調整管40の油分配用撚り紐42の一端42a及び他端42bは、接続先のオイルパン12内に貯蔵されている潤滑油に浸るように、例えばオイルパン12の底部近傍に固定用端子26を介して固定される。調整管40は、例えば立体駐車装置50の横梁84に沿ってルーティングされ、状況に応じて保護チューブ46の少なくとも一部が横梁84に固定されてもよい。
【0057】
ここで、図5の例では、3台の昇降パレット52G~52Iの各々の両側に位置するように4つのオイルパン12A~12Dが配置されているが、このうち2つのオイルパン12B、12Cのみを配置してもよい。この場合は、オイルパン12Aに固定される導油管16に代えて、オイルパン12Bに対して、昇降パレット52Gを吊り下げている2本のチェーン56A、56Bへ潤滑油を供給するための導油管16を更に接続すればよい。同様に、オイルパン12Dに固定される導油管16に代えて、オイルパン12Cに対して、昇降パレット52Iを吊り下げている2本のチェーン56C、56Dへ潤滑油を供給するための導油管16を更に接続すればよい。
【0058】
また、特に昇降移動及び横行移動の双方を行なうパレット52(図6の立体駐車装置50のパレット52C~52Fなど)を対象として、オイルパン12は、各パレット52の後方側の側方向中央近傍に設置されてもよい。この場合、オイルパン12は、例えばパレット52の横行枠88(図6参照)を構成する後方側の横梁上などに設置される。そしてこのオイルパン12に対して、このオイルパン12の前方側に位置するパレット52を吊り下げている4本のチェーン56へ給油するための、複数本の導油管16が固定されることになる。なお、昇降移動のみを行なう昇降パレット52を給油対象としたオイルパン12が、昇降パレット52の後方側の側方向中央近傍に設置されてもよく、そこから昇降パレット52を吊り下げている4本のチェーン56へ給油するための複数本の導油管16が延びていてもよい。
【0059】
上記のような何れの場合でも、オイルパン12は、オイルパン12内に固定された導油管16の撚り紐20の一端20aの位置が、導油管16の撚り紐20の他端20bが固定された位置よりも高くなるように設置される。オイルパン12の設置先は、取付部材76上に限定されることなく、上記の高さ関係が満たされれば、任意の部材を介して設置されてよい。また、オイルパン12は、オイルパン12に固定された導油管16を介して所望の量の潤滑油が供給されるように、オイルパン12の設置高さが調整されてもよい。更に、潤滑油の給油量に関して言及すると、導油管16を介して所望の量の潤滑油が供給されるように、各導油管16を構成する撚り紐20の太さが調整されてもよい。
【0060】
上述したように、図6のような立体駐車装置50では、4台のパレット52C~52Fが昇降移動及び横行移動の双方を行い、3台のパレット52G~52Iが昇降移動のみを行なう。このような立体駐車装置50に対して本発明の実施の形態に係るチェーン給油器10が適用される場合、7台のパレット52C~52Iを吊り下げている全てのチェーン56に対して潤滑油が供給されるように、複数のオイルパン12と、オイルパン12の各々から延びる複数本の導油管16とが設置される。そして、各オイルパン12の設置位置や各導油管16の給油位置及びルーティング経路は、上述した形態の何れかと同じものであってもよく、異なっていてもよい。
【0061】
また、本発明の実施の形態に係るチェーン給油器10は、上述した構成に限定されるものではなく、適用される立体駐車装置50の構成や状況などに合わせて、様々な形態を取り得るものである。例えば、立体駐車装置50に設置されるオイルパン12の数量や、それらの各オイルパン12から延びる導油管16の本数は、立体駐車装置50の大きさや昇降移動を行なうパレット52の数などに応じて、任意に設定してよい。また、給油位置となる導油管16の撚り紐20の他端20bの接続先は、ガイドプレート34やチェーンガイド68に限定されるものではなく、例えばチェーン56に接するように設置された塗油ローラなどであってもよい。更に、導油管16の撚り紐20の他端20bが固定される給油位置に、雨水による潤滑油の浸透性低下の影響を抑制するための雨避けカバーを設置してもよい。
【0062】
加えて、本発明の実施の形態に係るチェーン給油器10が適用される立体駐車装置50についても、図6のような構成に限定されるものではなく、チェーン56を介して昇降移動するパレット52を含むものであれば、任意の構成であってよい。例えば、立体駐車装置50は、地上だけではなく地下にパレット52を備えた構成であってもよく、側方向や高さ方向に加えて前後方向に複数列のパレット52を備えた構成であってもよい。更に、各方向に備えるパレット52の段数や列数も任意である。
【0063】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係るチェーン給油器10は、図1図4に示すように、潤滑油を貯蔵するためのオイルパン12と、撚り紐20及び撚り紐20を保持及び保護するためのチューブ24を含む導油管16とを含んでいる。撚り紐20は、チューブ24の内部に挿通された状態で、一端20aがオイルパン12内の潤滑油に浸けられた状態でオイルパン12内に固定され、他端20bが潤滑油の供給先となる給油位置に固定される。そして、撚り紐20の一端20aのオイルパン12内での固定位置が、撚り紐20の他端20bが固定される給油位置よりも高い位置になるように、オイルパン12が設置されているものである。これにより、撚り紐20を介した毛細管現象と、撚り紐20の一端20aと他端20bとの間の高低差による位置エネルギーとを利用して、オイルパン12内に貯蔵している潤滑油を、撚り紐20の他端20bが固定された任意の給油位置まで供給することができる。
【0064】
更に、潤滑油は、チューブ24内の撚り紐20を伝うことになるため、チューブ24内から漏れ出ることなく給油位置まで到達する。このため、撚り紐20の他端20bからチェーン56に対して直接的或いは間接的に潤滑油が供給されるような位置に給油位置を設定することで、アクチュエータや電気設備などを使用しない単純な構成にも関わらず、チェーン56に対する潤滑油の給油作業の無人化を実現することが可能となる。従って、チェーン56への給油のための作業者による高所作業やチェーン56を駆動するための回転部材近傍での作業が不要となり、メンテナンス作業の負荷を軽減することができる。しかも、上述したようにオイルパン12及び導油管16という単純な構成のため、既設及び新設の立体駐車装置50(図6参照)を問わず、設置作業が容易であり、簡便に適用することができる。
【0065】
また、本発明の実施の形態に係るチェーン給油器10は、立体駐車装置50の複数のパレット52の中で、例えば立体駐車装置50の最上段などに配置される昇降移動のみを行なう昇降パレット52(図6における昇降パレット52G~52Iなど)を対象として、オイルパン12が、側方向に隣接する2台の昇降パレット52の間に設置されるものである。そして、そのようなオイルパン12に対して、オイルパン12を挟むような位置関係にある2台の昇降パレット52の双方のチェーン56へ給油するように、複数本の導油管16(撚り紐20)が固定されている。例えば、側方向に隣接する2台の昇降パレット52H、52Iの間にオイルパン12が設置される場合について説明する。この場合、一方の昇降パレット52Hに対しては、その一方の昇降パレット52Hを吊り下げている4本のチェーン56A~56D(図7参照)の中で、他方の昇降パレット52I側を吊り下げている2本のチェーン56C、56D、換言すればオイルパン12に近い側を吊り下げている2本のチェーン56C、56Dが、そのオイルパン12からの給油対象となる。
【0066】
また、他方の昇降パレット52Iに対しては、その他方の昇降パレット52Iを吊り下げている4本のチェーン56A~56Dの中で、一方の昇降パレット52H側を吊り下げている2本のチェーン56A、56B、換言すればオイルパン12に近い側を吊り下げている2本のチェーン56A、56Bが、そのオイルパン12からの給油対象となる。これにより、オイルパン12から近い位置にあるチェーン56に対して給油されるように、導油管16がルーティングされることになるため、特に側方向について、導油管16の引き回し長が短くなり、各導油管16のルーティング作業を容易にすることができる。更に、オイルパン12が、隣接する昇降パレット52の間、例えば立体駐車装置50の支柱80に近い位置の縦梁82上などに設置されるため、オイルパン12への潤滑油の補充作業なども容易に行うことができる。
【0067】
また、本発明の実施の形態に係るチェーン給油器10は、立体駐車装置50の複数のパレット52の中で、少なくとも昇降移動を行うパレット52を対象として、オイルパン12が、各パレット52の後方側の側方向中央近傍に設置されてもよいものである。この場合は、少なくとも昇降移動を行うパレット52の各々に対応するように、複数のオイルパン12が分散して設置される。そして、そのようなオイルパン12の各々に対して、各オイルパン12が対応するパレット52を吊り下げている4本のチェーン56A~56Dを給油対象とした、複数本の導油管16(撚り紐20)が固定される。
【0068】
これにより、4本のチェーン56A~56Dのうち側方向の一方側を吊り下げている2本のチェーン56A、56Bと、それとは反対の側方向の他方側を吊り下げている2本のチェーン56C、56Dとに対して、略均等の長さで導油管16がルーティングされることになる。このため、1台のパレット52を給油対象とするオイルパン12が側方向の何れかの側へ偏った位置に設置される場合と比較して、チェーン56への給油に必要な導油管16の最大長さを抑制することができ、困難なルーティング作業を回避することができる。また、昇降移動に加えて横行移動するパレット52の場合には、その横行枠88(図6参照)を構成する後方側の横梁の側方向中央近傍にオイルパン12を設置し、更に横行枠88に沿って導油管16をルーティングすることで、横行移動するパレット52のチェーン56に対しても問題なく潤滑油を供給することが可能となる。
【0069】
更に、本発明の実施の形態に係るチェーン給油器10は、オイルパン12に複数本(図1図3では6本)の導油管16(撚り紐20)が固定されており、それら複数本の導油管16の中に、パレット52を吊り下げている4本のチェーン56のうちの2本のチェーン56へ同時に給油するような導油管16A、16Bが含まれている。すなわち、この導油管16A、16Bは、4本のチェーン56A~56Dのうち、側方向について同じ側でパレット52の前方側及び後方側の2箇所を吊り下げている2本のチェーン56A及び56B或いは56C及び56Dの、パレット52に接続された一方の端部とは反対の他方の端部側へ同時に給油するように、給油位置が設定されている。これにより、パレット52の前方側を吊り下げているチェーン56B或いは56Dの他方の端部側と、パレット52の後方側を吊り下げているチェーン56A或いは56Cの他方の端部側とへ、1本の導油管16から同時に潤滑油を供給することができるため、効率よく給油することが可能となる。また、2本のチェーン56A及び56B或いは56C及び56Dの夫々を対象として別々に導油管16を設置する場合と比較して、オイルパン12からルーティングする導油管16の本数を抑制することができるため、設置作業を容易にすることができる。
【0070】
また、本発明の実施の形態に係るチェーン給油器10は、2本のチェーン56A及び56B或いは56C及び56Dへ同時に給油する導油管16(撚り紐20)の給油位置が、2本のチェーン56A及び56B或いは56C及び56Dを駆動する駆動スプロケット66のために2本のチェーン56A及び56B或いは56C及び56Dをガイドするチェーンガイド68になっていてもよい。すなわち、このようなチェーンガイド68は、通常、側方向について同じ側でパレット52を吊り下げる2本のチェーン56A及び56B或いは56C及び56Dの端部近傍で、それら2本のチェーン56A及び56B或いは56C及び56Dに接触或いは近接した状態でチェーン56をガイドするようになっている。このため、そのようなチェーンガイド68の適切な位置に給油位置を設定することで、チェーンガイド68を介して2本のチェーン56A及び56B或いは56C及び56Dへ同時に潤滑油を供給できるようになることから、2本のチェーン56A及び56B或いは56C及び56Dの端部側への同時給油を容易に実現することが可能となる。
【0071】
また、本発明の実施の形態に係るチェーン給油器10は、図1図3に示すように、オイルパン12へ固定された複数本の導油管16(撚り紐20)の中に、2本のチェーン56A及び56B或いは56C及び56Dの、パレット52に接続された端部と反対の端部側とは別の部分に、同時に給油するような導油管16C、16Dが含まれているものである。具体的に、この導油管16C、16Dは、側方向について同じ側でパレット52を吊り下げている2本のチェーン56A及び56B或いは56C及び56Dの、これら2本のチェーン56A及び56B或いは56C及び56Dを駆動する駆動スプロケット66に係合している部分の近傍へ、同時に給油するような位置に給油位置が設定されている。
【0072】
すなわち、2本のチェーン56A及び56B或いは56C及び56Dを駆動する駆動スプロケット66には、互いに近接した状態の2本のチェーン56A及び56B或いは56C及び56Dが係合しているため、駆動スプロケット66の近傍では2本のチェーン56A及び56B或いは56C及び56Dへの同時給油を容易に実現することができる。更に、巻き取りや繰り出しにより、2本のチェーン56A及び56B或いは56C及び56Dの駆動スプロケット66に係合する部分が変化し、それには、2本のチェーン56A及び56B或いは56C及び56Dの、端部側からの給油では潤滑油が到達できない部分が含まれている。従って、そのような部分に対して潤滑油を供給することができ、潤滑油を供給する各チェーン56の範囲を増大させることができる。
【0073】
更に、本発明の実施の形態に係るチェーン給油器10は、オイルパン12へ固定された複数本の導油管16(撚り紐20)の中に、パレット52を吊り下げている4本のチェーン56A~56Dのうち、パレット52の前方側を吊り下げている2本のチェーン56B、56Dへ個別に給油するような、2本の導油管16E、16Fが含まれているものである。すなわち、パレット52の前方側を吊り下げているチェーン56B、56Dは、通常、後方寄りに設置された駆動スプロケット66から、前方寄りに設置された従動スプロケット72まで延び、そこから下方へ延びてパレット52の前方側へ接続されている。このため、チェーン56B、56Dの従動スプロケット72に係合している部分の近傍に給油位置を設定することで、後方側のチェーン56A、56Cよりも必然的に長くなる前方側のチェーン56B、56Dの、巻き取りや繰り出しによって変化する従動スプロケット72に係合している部分に対して、潤滑油を供給することができる。これにより、パレット52の前方側を吊り下げているチェーン56B、56Dの、パレット52に接続されている端部の近傍を含む広い範囲に潤滑油を供給することができるため、チェーン56B、56Dへの給油範囲を増大させることが可能となる。
【0074】
加えて、本発明の実施の形態に係るチェーン給油器10は、オイルパン12へ固定された複数本の導油管16(撚り紐20)の中に、他端20bがガイドプレート34C~34Fに接続された導油管16が含まれているものである。具体的に、この導油管16は、その他端20bが固定される給油位置がガイドプレート34C~34Fであり、これらのガイドプレート34C~34Fは、ガイドプレート34C~34Fに固定された導油管16が給油対象とするチェーン56の上方に設置される。これにより、導油管16を介してガイドプレート34C~34Fまで伝わった潤滑油が、ガイドプレート34C~34Fからその下方へ位置するチェーン56へ滴り落ちるため、ガイドプレート34C~34Fをチェーン56へ接触させることなく、潤滑油を供給することができる。
【0075】
しかも、上述したようにガイドプレート34C~34Fはチェーン56に接触しないため、チェーン56を支持したり直接的に案内したりするものではなく、単にチェーン56の上振れを抑えるような位置にある。従って、ガイドプレート34C~34Fの摩耗を回避することができ、また、ガイドプレート34の配置の自由度を高めることができる。なお、ガイドプレート34A、34Bについては、チェーン56の端部に直接接続されているが、そのチェーン56の端部はチェーンガイド68に固定されて動かないため、ガイドプレート34A、34Bの摩耗も回避することができる。
【0076】
また、本発明の実施の形態に係るチェーン給油器10は、立体駐車装置50の複数のパレット52の中で、例えば立体駐車装置50の最上段などに配置される昇降移動のみを行なう昇降パレット52(図6における昇降パレット52G~52Iなど)を対象として、図5に示すように、複数のオイルパン12が側方向に互いに間隔を空けて設置される。そして、そのような複数のオイルパン12の中で、側方向に隣接する2つのオイルパン12間を接続するように、油分配用撚り紐42及び保護チューブ46(図4参照)を含む調整管40が設置される。すなわち、この調整管40は、油分配用撚り紐42の一端42aが一方のオイルパン12内の潤滑油に浸けられた状態で固定され、他端42bが他方のオイルパン12内の潤滑油に浸けられた状態で固定される。
【0077】
このような構成により、油分配用撚り紐42を介した毛細管現象によって、隣接する2つのオイルパン12内の潤滑油が往来するようになるため、2つのオイルパン12内の潤滑油の量を均等化させることができる。更に、複数のオイルパン12の全てを上記のように調整管40を介して接続している場合であっても、それら複数のオイルパン12の間で潤滑油の量を均等化させることができる。このため、複数のオイルパン12の中で作業がし易い位置にある1つのオイルパン12へのみ潤滑油を補充することで、接続された全てのオイルパン12へ潤滑油を補充することができる。従って、潤滑油の補充作業の手間を大幅に削減することができ、これによってもメンテナンス作業の負荷を軽減することが可能となる。
【0078】
一方、本発明の実施の形態に係るチェーン給油方法は、上述した本発明の実施の形態に係るチェーン給油器10を用いて実行することで、本発明の実施の形態に係るチェーン給油器10と同様の作用効果を奏することができる。また、本発明の実施の形態に係るチェーン給油方法は、オイルパン12から導油管16を介して給油位置へと給油する給油量に応じて、オイルパン12の設置高さと撚り紐20の太さとのうち、少なくとも一方を調整してもよい。すなわち、オイルパン12の設置高さの調整によって、導油管16を構成する撚り紐20の一端20aと他端20bとの間の高低差による位置エネルギーを変化させることができる。更に、撚り紐20の太さの調整によって、毛細管現象が発生する撚り紐20内の隙間の数を増減させることができる。従って、何れの方法によっても、導油管16を伝わる潤滑油の量を調整することができるため、給油位置に対する所望の給油量を容易に実現することができ、チェーン56に対する過剰な給油や給油不足を回避することが可能となる。
【符号の説明】
【0079】
10:チェーン給油器、12:(12A~12D)オイルパン、16(16A~16F):導油管、20:撚り紐、20a:撚り紐の一端、20b:撚り紐の他端、24:チューブ、34(34A~34F):ガイドプレート、40:調整管、42:油分配用撚り紐、42a:油分配用撚り紐の一端、42b:油分配用撚り紐の他端、46:保護チューブ、50:立体駐車装置、52(52A~52I):複数のパレット(昇降パレット)、56(56A~56D):チェーン、66:駆動スプロケット、68:チェーンガイド、72:従動スプロケット、V:車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7