IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大日本印刷株式会社の特許一覧

特開2024-140071インジェクションチューブおよびその製造方法
<>
  • 特開-インジェクションチューブおよびその製造方法 図1
  • 特開-インジェクションチューブおよびその製造方法 図2
  • 特開-インジェクションチューブおよびその製造方法 図3
  • 特開-インジェクションチューブおよびその製造方法 図4
  • 特開-インジェクションチューブおよびその製造方法 図5
  • 特開-インジェクションチューブおよびその製造方法 図6
  • 特開-インジェクションチューブおよびその製造方法 図7
  • 特開-インジェクションチューブおよびその製造方法 図8
  • 特開-インジェクションチューブおよびその製造方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140071
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】インジェクションチューブおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20241003BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C45/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051064
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】弁理士法人東京UIT国際特許
(72)【発明者】
【氏名】船島 諒
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AD08
4F202AD09
4F202AH55
4F202CA11
4F202CB12
4F202CB13
4F202CQ01
4F206AD08
4F206AD09
4F206AH55
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB13
4F206JL02
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】バリア性を持つインジェクションチューブを提供する。
【解決手段】インジェクションチューブ1は,口部11,肩部12および胴部13が樹脂の射出成形によって一体に成形されたものである。胴部13の外周面にインモールドラベル21が熱融着されている。インモールドラベル21はインジェクションチューブ1を樹脂成形するための型内に挿入され,胴部13を射出成形するときに胴部13と一体化される。インモールドラベル21によって,インジェクションチューブ1にバリア性を付与し,射出成形と同時に絵柄を表示することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部,肩部および胴部が樹脂の射出成形によって一体に成形されるインジェクションチューブであって,
上記胴部の外周面にインモールドラベルが熱融着されている,
インジェクションチューブ。
【請求項2】
上記肩部の下縁に外向きに突出する平坦部が形成されており,
上記平坦部によって上記インモールドラベルの上端が覆われている,
請求項1に記載のインジェクションチューブ。
【請求項3】
上記胴部が上記肩部の下端部と連続する筒状部を備えている,
請求項1に記載のインジェクションチューブ。
【請求項4】
上記筒状部が上部から下部に向けて全体的に径が大きくなっている,
請求項3に記載のインジェクションチューブ。
【請求項5】
上記胴部が,上記肩部の下端部と連続する環状部と,上記環状部の下縁の一部に連続して下向きにのびる柱状部を備えている,
請求項1に記載のインジェクションチューブ。
【請求項6】
口部,肩部および胴部の外形を有するキャビティ型を準備し,
キャビティ型内の上記胴部の外形を有する部分にインモールドラベルを挿入し,
上記インモールドラベルが挿入されたキャビティ型内に上記口部,肩部および胴部の外形を有するコア型を型締めし,
上記キャビティ型内に樹脂を注入し,
上記キャビティ型と上記コア型との間で上記口部および肩部を形成し,
上記インモールドラベルと上記コア型との間で上記胴部を形成する,
インジェクションチューブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,インジェクションチューブおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は射出成形(インジェクション)チューブ容器を開示する。射出成形に用いられる樹脂として高MFRの低密度ポリエチレンを用いることで,柔軟性および耐ストレスクラッキング性に優れる射出成形チューブを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-11126号公報
【0004】
射出成形チューブ容器は,あらかじめ機能層を積層したラミネートシートを丸めて端部同士の重ね合せ部分をヒートシールすることによって製造されるラミネートチューブに比べ一般にバリア性に劣る。また,射出成形チューブ容器の表面に成分や商品名を表示するには印刷工程が成形工程後の後工程として必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は,バリア性を有するインジェクションチューブを提供することを目的とする。
【0006】
またこの発明は,成形後の印刷工程を経ることなくインジェクションチューブに成分や商品名等を表示できるようにすることを目的とする。
【0007】
この発明によるインジェクションチューブは,口部,肩部および胴部が樹脂の射出成形によって一体に成形されるものであって,上記胴部の外周面にインモールドラベルが熱融着されていることを特徴とする。
【0008】
この発明によるインジェクションチューブの製造方法は,口部,肩部および胴部の外形を有するキャビティ型(雌型,凹型)を準備し,キャビティ型内の上記胴部の外形を有する部分にインモールドラベルを挿入し,上記インモールドラベルが挿入されたキャビティ型内に上記口部,肩部および胴部の外形を有するコア型(雄型,凸型)を型締めし,上記キャビティ型内に樹脂を注入し,上記キャビティ型と上記コア型との間で上記口部および肩部を形成し,上記インモールドラベルと上記コア型との間で上記胴部を形成するものである。
【0009】
この発明によるインジェクションチューブは,口部,肩部および胴部の全体が既存の射出成形設備を用いて製造される。射出成形によって形成されるインジェクションチューブは,たとえば圧縮成形によって形成されるチューブに比べてネジ部や口元を精度よく成形することができる。また,胴部に熱融着されるインモールドラベルによってインジェクションチューブの胴部に文字,絵柄等を表示することができるので,成形後の印刷工程を経ることなく,インジェクションチューブに成分や商品名等を表示することができる。インモールドラベルはインジェクションチューブにバリア性を付与するために用いることもできる。
【0010】
好ましくは,上記肩部の下縁に外向きに突出する平坦部が形成されており,上記平坦部によって上記インモールドラベルの上端が覆われている。胴部の外周面に熱融着されるインモールドラベルの上端が外に露出しないので,見栄えのよいインジェクションチューブが提供される。
【0011】
一実施態様では,上記胴部が上記肩部の下端部と連続する筒状部を備えている。筒状の胴部内に内容物が充填される。
【0012】
好ましくは,上記筒状部が上部から下部に向けて全体的に径が大きくなっている。内容物を充填する前の複数のインジェクションチューブをスタックすることができるので,複数のインジェクションチューブを搬送時にコンパクトにまとめることができる。
【0013】
他の実施態様では,上記胴部が,上記肩部の下端部と連続する環状部と,上記環状部の下縁の一部に連続して下向きにのびる柱状部を備えている。この実施態様では,上記インモールドラベルは環状部および柱状部に熱融着される。インジェクションチューブの胴部の広い範囲がインモールドラベルのみによって構成される。胴部を含むチューブの基本的形状の全体が樹脂から作られ,樹脂製胴部の外周面にインモールドラベルが熱融着されるインジェクションチューブに比べて,用いられる樹脂量を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】インジェクションチューブの斜視図である。
図2】肩部と胴部の境界部分の一部拡大断面図である。
図3】インジェクションチューブの製造工程を示す。
図4】インジェクションチューブの製造工程を示す。
図5】インジェクションチューブの製造工程を示す。
図6】インジェクションチューブの製造工程を示す。
図7】他の実施例のインジェクションチューブを示す斜視図である。
図8】さらに他の実施例のインジェクションチューブを示す斜視図である。
図9図8に示すインジェクションチューブからインモールドラベルを取り除いた状態を示す。
【実施例0015】
図1はインジェクションチューブ1の斜視図を示している。
【0016】
インジェクションチューブ1は,ネジ部が外周面に形成された円筒状の口部11,概略円錐台形状の肩部12,および円筒状の胴部13を含む。後述するように口部11,肩部12および胴部13はその全体が射出成形によって一体に形成されており,口部11から胴部13にかけて連続する内部空間を持つ。
【0017】
射出成形後のインジェクションチューブ1は,口部11は開口していず,胴部13の下端(底部)15が開口している。開口している胴部13の下端15からインジェクションチューブ1内に,内容物たとえば化粧品,歯磨き粉,薬品,その他のクリーム状,リキッド状の化学品,医薬品,食品等が充填される。インジェクションチューブ1内に内容物が充填された後,胴部13の下端15が閉じられる(一般には下端15の内面同士が重ね合わされて横一文字に熱溶着される)。口部11の先端の開栓部をちぎることによって内容物の出口が口部11に作られる。内周面にネジ部が形成されたスクリューキャップ(図示略)が口部11に取り付けられる。
【0018】
インジェクションチューブ1の胴部13の外周面にインモールドラベル21が熱融着されている。後述するように,インモールドラベル21はインジェクションチューブ1を射出成形するときに胴部13と一体化される。
【0019】
図2はインジェクションチューブ1の肩部12と胴部13との境界部分(左肩部分)を拡大して示す断面図である。
【0020】
上述したように,胴部13の外周面にはインモールドラベル21が熱融着されており,インモールドラベル21によってインジェクションチューブ1の胴部13は覆われている。インモールドラベル21の厚さ(30μm~100μm程度)に比べて胴部13は厚い(約500~2000μm程度)。
【0021】
胴部13を覆うインモールドラベル21の上端面を外に露出させないようにするために,肩部12の下縁に連続して外向きに短く突出する平坦部12Aが形成されている。平坦部12Aによってインモールドラベル21の上端面が覆われる。
【0022】
インモールドラベル21には複数の機能層21a~21cを積層した積層体を用いることができ,インジェクションチューブ1内に充填される内容物の特性に合わせたバリア機能をインモールドラベル21によってインジェクションチューブ1に持たせることができる。図2には3つの層21a~21cを備える3層構造のインモールドラベル21を示すが,積層数は3層に限らず2層であっても4層以上であってもよい。たとえば,以下の層構成および層厚を採用することができる(右側が内容物側)。
【0023】
(1)直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)またはヒートシール延伸ポリプロピレン(HSOPP)30μm/アルミ箔7μm/延伸ポリプロピレン(OPP)30μm
(2)LLDPEまたはHSOPP30μm/アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート(VM-PET)12μm/OPP30μm
(3)LLDPEまたはヒートシール材コーティング30μm/アルミ箔7μm/OPP30μm
【0024】
図3から図6はインモールドラベル21を備えるインジェクションチューブ1の製造工程を示している。
【0025】
図3を参照して,インジェクションチューブ1を成形するための成形型は,互いに対向して配置されるキャビティ型31およびコア型32を含む。
【0026】
キャビティ型31は成形すべきインジェクションチューブ1の外形に応じた形状の成形面(凹面)31Aを備えている。他方,コア型32は成形すべきインジェクションチューブ1の外形に応じた外形形状(凸面)を備えている。
【0027】
図4を参照して,キャビティ型31とコア型32を型締めすると,キャビティ型31の成形面31Aとコア型32の外面との間にキャビティ35が形成される。キャビティ型31はこのキャビティ35と連通する樹脂注入ポート31Bを備えており,樹脂注入ポート31Bを通じてキャビティ35に樹脂(ポリプロピレン,ポリエチレン(低密度,高密度,直鎖状低密度のいずれでもよい)など)を注入することができる。
【0028】
図5を参照して,キャビティ型31にコア型32を型締めする前に,筒状に丸められたインモールドラベル21がキャビティ型31内の胴部を形成するための部分に挿入される。インモールドラベル21は周りからの拘束が解かれたときに元の形に戻ろうとする塑性を有している。このためキャビティ型31内に挿入されたインモールドラベル21はキャビティ型31の成形面31Aにぴったりと接触し,インモールドラベル21と成形面31Aとの間に隙間はほぼ形成されない。あるいはキャビティ型31に設けられる吸引孔より負圧を生じさせて,インモールドラベル21とキャビティ型31の成形面31Aをぴったりと接触させてもよい。
【0029】
図6を参照して,キャビティ型31にコア型32を型締めした後,樹脂注入ポート31Bから樹脂25を注入する。キャビティ型31とコア型32とによってつくられるキャビティ35が樹脂25によって満たされる。図6において薄いインモールドラベル21の図示は省略されている。
【0030】
上述したようにキャビティ型31内に挿入されたインモールドラベル21はキャビティ型31の成形面31Aにぴったりと接触しているので,キャビティ型31の成形面31Aとインモールドラベル21との間に樹脂25が入り込むことはなく,キャビティ型31内の胴部を形成するための部分において,樹脂25は,インモールドラベル21とコア型32の間の隙間に注入される。他方,キャビティ型31内の口部および肩部を形成する部分においては,樹脂25はキャビティ型31の成形面31Aとコア型32の間の隙間に注入される。口部11,肩部12および胴部13が樹脂25によって一体に形成され,かつインモールドラベル21が胴部13の外周面に一体化されたインジェクションチューブ1(図1)が成形される。なおインジェクションチューブ1を容易に取り出すために,キャビティ型31は複数に分割できる構造としてもよい。
【0031】
インモールドラベル21の表面には,典型的には,インジェクションチューブ1に充填されるべき内容物の成分や商品名等があらかじめ印刷される。上述の製造工程を得ることで,インジェクションチューブ1が完成すると同時に成分や商品名等の表示も完成する。インジェクションチューブ1を射出成形した後に,後工程においてインモールドラベル21の表面に印刷を施す必要は必ずしもない。また,平坦な状態のインモールドラベル21に成分,商品名,絵柄等を印刷しておくことができるので,グラビア印刷といった精細なデザイン等に適する印刷をすることができる。
【0032】
さらに,インモールドラベル21によってインジェクションチューブ1の胴部13が覆われているので,酸素や水蒸気に対する高いバリア性,高い遮光性等をインジェクションチューブ1に付与することができる。
【0033】
図7は他の実施例のインジェクションチューブ2を示している。図1に示すインジェクションチューブ1とは,胴部13Aが,下にいくほど直径が拡大する円錐台状の形状を持つ点が異なる。
【0034】
インジェクションチューブ1,2は,上述したように,内容物が充填される前は胴部13,13Aの下端15が開口している。内容物は下端15の開口から充填され,内容物が充填された後に下端15の開口は閉じられる。インジェクションチューブ1,2は一般にその製造場所(工場)から内容物の充填場所(工場)に搬送され,そこで内容物が充填されかつ下端15が閉じられる。胴部13Aが下にいくほど直径が拡大していることによって図7に示すように複数のインジェクションチューブ2をスタックすることができ,多数のインジェクションチューブ2を一度に搬送することができる。
【0035】
図8はさらに他の実施例のインジェクションチューブ3を示している。図9図8に示すインジェクションチューブ3からインモールドラベル21を取り除いた状態を示している。
【0036】
図1および図7に示すインジェクションチューブ1,2が筒状の樹脂製胴部13,13Aを備え,この胴部13,13Aの外周面にインモールドラベル21が熱融着されているのに対し,図8に示すインジェクションチューブ3は,筒状の樹脂製胴部を持たず,肩部12に連続する樹脂製の環状部13Cと,環状部13Cの下端の一部に一端が連続し,下向きにのびる樹脂製の柱状部13Dとを備えており,胴部13Bのほとんどがインモールドラベル21のみによって構成される点が異なる。インモールドラベル21は環状部13Cおよび柱状部13Dと一体化(熱融着)される。
【0037】
インジェクションチューブ3は胴部13Bのほとんどの範囲に樹脂成形部分を持たないので,インジェクションチューブ1,2に比べて樹脂量の大幅な削減を図ることができる。
【0038】
インジェクションチューブ3は,胴部13Bのほとんどの範囲がインモールドラベル21のみによって形成されているので,樹脂製胴部13,13Aを備えるインジェクションチューブ1,2に用いられるインモールドラベル21に比べて高い強度(厚さ)を持つインモールドラベル21が用いられる。たとえば,以下の層構成および厚さのインモールドラベル21を,インジェクションチューブ3に用いることができる(右側が内容物側である)。
【0039】
(1)ポリエチレンテレフタレート(PET)12μm/アルミニウム(AL)7μm/延伸ナイロン(ON)15μm/無延伸ポリプロピレン(CPP)または直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)60μm
(2)PET12μm/ON15μm/AL7μm/CPPまたはLLDPE60μm
(3)蒸着PET12μm/ON15μm/CPPまたはLLDPE60μm
(4)PET12μm/蒸着ON15μm/CPPまたはLLDPE60μm
(5)コーティングPET12μm/CPPまたはLLDPE60μm
(6)蒸着ON15μm/CPPまたはLLDPE60μm
(7)PET12μm/蒸着PET12μm/ON15μm/CPPまたはLLDPE60μm
(8)ポリブチレンテレフタレート(PBT)20μm/AL7μm/CPPまたはLLDPE60μm
【符号の説明】
【0040】
1,2,3 インジェクションチューブ
11 口部
12 肩部
12A 平坦部
13,13A,13B 胴部
13C 環状部
13D 柱状部
21 インモールドラベル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9