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特開2024-140072モノマテリアルチューブおよびその製造方法
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  • 特開-モノマテリアルチューブおよびその製造方法 図1
  • 特開-モノマテリアルチューブおよびその製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140072
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】モノマテリアルチューブおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/02 20060101AFI20241003BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241003BHJP
   B65D 35/10 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B65D65/02 E
B65D65/40 D
B65D35/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051065
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】弁理士法人東京UIT国際特許
(72)【発明者】
【氏名】船島 諒
(72)【発明者】
【氏名】亀田 克巳
【テーマコード(参考)】
3E065
3E086
【Fターム(参考)】
3E065AA02
3E065BA35
3E065BB02
3E065CA09
3E065DA04
3E065DB05
3E065DC01
3E065DD05
3E065EA07
3E065HA01
3E086AA22
3E086AC07
3E086AD03
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA24
3E086BB01
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB51
3E086CA01
3E086CA28
3E086CA29
3E086DA08
(57)【要約】
【課題】リサイクルに適するチューブを提供する。
【解決手段】モノマテリアルチューブ1は,口部11および肩部12を含むPET製頭部,上記PET製頭部の肩部12の下端部に上端部が熱融着された筒状のPET製フィルム13から構成されるPET製胴部13,ならびに上記口部11の開口を塞ぐPET製シール21を備えている。口部11に取り付けられるスクリューキャップ2もPET製である。全体がPET素材から作られているので,リサイクルしやすく環境にやさしいチューブ1が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部および肩部を含む頭部,
上記肩部の下端部に上端部が熱融着された筒状のフィルムから構成される胴部,ならびに
上記口部の開口を塞ぐ口部閉鎖シールを備え,
上記頭部,胴部および口部閉鎖シールがポリエチレンテレフタレート製である,
モノマテリアルチューブ。
【請求項2】
口部,肩部および胴部の一部を含む頭部,
上記胴部に上端部が熱融着され,上記胴部の残りの部分を形成する筒状フィルム,ならびに
上記口部の開口を塞ぐ口部閉鎖シールを備え,
上記頭部,筒状フィルムおよび口部閉鎖シールがポリエチレンテレフタレート製である,
モノマテリアルチューブ。
【請求項3】
上記肩部の下端部の外周面に内向きの段差部が形成されており,
上記段差部に胴部を構成するフィルムが重ねられている,
請求項1に記載のモノマテリアルチューブ。
【請求項4】
上記胴部を構成する筒状フィルムが種類の異なる複数のポリエチレンテレフタレート層を備えている,
請求項1または2に記載のモノマテリアルチューブ。
【請求項5】
上記口部閉鎖シールが種類の異なる複数のポリエチレンテレフタレート層を備えている,
請求項1または2に記載のモノマテリアルチューブ。
【請求項6】
上記頭部の表面に洗浄によって除去可能なコーティング層が積層されている,
請求項1または2に記載のモノマテリアルチューブ。
【請求項7】
上記頭部が射出成形によって形成されている,
請求項1または2に記載のモノマテリアルチューブ。
【請求項8】
口部および肩部を含む頭部ならびに胴部の外形を有するキャビティ型を準備し,
キャビティ型内の上記胴部の外形を有する部分から上記肩部の下端部の外形を有する部分にかけて筒状のポリエチレンテレフタレート製フィルムを挿入し,
上記ポリエチレンテレフタレート製フィルムが挿入されたキャビティ型内に上記口部および肩部を含む頭部ならびに胴部の外形を有するコア型を型締めし,
上記キャビティ型内にポリエチレンテレフタレート樹脂を注入し,
上記キャビティ型と上記コア型との間で上記頭部を形成する,
モノマテリアルチューブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,モノマテリアルチューブおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は全体の90質量%以上をポリプロピレンで形成したチューブ容器を記載する。分別等を必要とせずそのままポリプロピレンとして再資源化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-133959号公報
【0004】
特許文献1のチューブ容器は,胴部と胴部に取り付けられた注出口部から構成され,注出口部が備えるフランジ部に胴部を構成するフィルムが溶着されることでチューブ容器が構成される。
【0005】
特許文献1の第2の実施形態のチューブ容器は,注出口部のフランジ部がテーパー形状を有している。図10を参照して,テーパー形状のフランジ部の下端部を覆うようにフィルムから構成される胴部が溶着されている。フィルムか構成される胴部の溶着部分に皺がよるので,胴部とフランジの境界におけるバリア性が低下するおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は,バリア性を有するモノマテリアルチューブを提供することを目的とする。
【0007】
第1の発明によるモノマテリアルチューブは,口部および肩部を含む頭部,上記肩部の下端部に上端部が熱融着された筒状のフィルムから構成される胴部,ならびに上記口部の開口を塞ぐ口部閉鎖シールを備え,上記頭部,胴部および口部閉鎖シールがポリエチレンテレフタレート製であることを特徴とする。
【0008】
第1の発明によるモノマテリアルチューブの製造方法は,口部および肩部を含む頭部ならびに胴部の外形を有するキャビティ型を準備し,キャビティ型内の上記胴部の外形を有する部分から上記肩部の下端部の外形を有する部分にかけて筒状のポリエチレンテレフタレート製フィルムを挿入し,上記ポリエチレンテレフタレート製フィルムが挿入されたキャビティ型内に上記口部および肩部を含む頭部ならびに胴部の外形を有するコア型を型締めし,上記キャビティ型内にポリエチレンテレフタレート樹脂を注入し,上記キャビティ型と上記コア型との間で上記頭部を形成するものである。
【0009】
第2の発明によるモノマテリアルチューブは,口部,肩部および胴部の一部を含む頭部,上記胴部に上端部が熱融着され,上記胴部の残りの部分を形成する筒状フィルム,ならびに上記口部の開口を塞ぐ口部閉鎖シールを備え,上記頭部,筒状フィルムおよび口部閉鎖シールがポリエチレンテレフタレート製である。
【0010】
第1および第2の発明によると,ポリエチレンテレフタレート(PET)のモノマテリアルからチューブ全体が構成されているので,複雑な分別工程を経ることなく,使用済みのチューブを比較的簡便にリサイクルすることができる。環境にやさしいチューブが提供される。
【0011】
好ましくは,上記胴部を構成する筒状フィルムが種類の異なる複数のポリエチレンテレフタレート層を備えている。また好ましくは,口部の開口を塞ぐ上記口部閉鎖シールも種類の異なる複数のポリエチレンテレフタレート層を備えている。たとえば胴部を構成する筒状フィルムにアルミナやシリカが蒸着された蒸着PET層を含ませることによって酸素等に対するバリア性を胴部に持たせることができる。口部閉鎖シールについても同様にバリア性を持たせたPET層と易剥離性を持たせたイージーピールPET層の2層構造によって構成することによって,口部から剥がしやすくかつ口部閉鎖シールによって閉じられているときの口部開口におけるバリア性の向上を図ることができる。
【0012】
第1の発明の一実施態様では,上記肩部の下端部の外周面に内向きの段差部が形成されており,上記段差部に胴部を構成するフィルムが重ねられている。肩部の下端部の段差部に胴部を構成するフィルムが重ねられるので肩部と胴部との間を滑らかにつなぐことができる。
【0013】
好ましくは,上記頭部の表面に洗浄によって除去可能なコーティング層が積層されている。頭部のバリア性を向上することができる。
【0014】
一実施態様では,上記頭部が射出成形によって形成されている。口部やネジ部等を精度よく成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】右半分を断面によって示す,モノマテリアルチューブの上部およびスクリューキャップの正面図である。
図2】モノマテリアルチューブの肩部と胴部の境界部分の部分拡大断面図である。
図3】モノマテリアルチューブの製造工程を示す。
図4】モノマテリアルチューブの製造工程を示す。
図5】モノマテリアルチューブの製造工程を示す。
図6】右半分を断面によって示す,他の実施例のモノマテリアルチューブの上部およびスクリューキャップの正面図である。
【実施例0016】
図1はモノマテリアルチューブ1およびスクリューキャップ2の正面図である。図1において,モノマテリアルチューブ1はその上部(後述する胴部の上側まで)が図示されている。また,一点鎖線で示す中心から右側は断面が示されている。
【0017】
モノマテリアルチューブ1は,ネジ部が外周面に形成された円筒状の口部11,概略円錐台形状の肩部12,および円筒状の胴部13を含む。後述するように,口部11および肩部12はポリエチレンテレフタレート(PET)25を射出成形することで一体に形成されており,以下,射出成形される口部11および肩部12を包括して「頭部」と呼ぶ。他方,胴部13は,後述するように頭部を構成する肩部12の下端部に熱融着されるPETフィルム27から構成される。モノマテリアルチューブ1は口部11から胴部13にかけて連続する内部空間を備え,この内部空間に内容物,たとえば化粧品,歯磨き粉,薬品,その他のクリーム状,リキッド状の化学品,医薬品,食品等が充填される。胴部13の下端は,たとえば胴部13の下端の内面同士を重ね合わせて横一文字に熱融着することによって閉じられる。内容物は,閉じる前の胴部13の下端開口から内部空間に充填される。
【0018】
スクリューキャップ2は内周面にネジ部が形成されたもので,モノマテリアルチューブ1の口部11の外周面に形成されたネジ部との間でネジ嵌めされる。スクリューキャップ2も樹脂の射出成形によってつくられる。
【0019】
モノマテリアルチューブ1の頭部(口部11および肩部12)とスクリューキャップ2には,たとえばメルトフローレート(MFR)が0.5~5.0程度の射出成型用ポリエチレンテレフタレート(PET)が用いられる。
【0020】
射出成形されるモノマテリアルチューブ1の頭部(口部11および肩部12)とスクリューキャップ2の表面(外面,または外面と内面の両面)には,たとえば,カルボキシ基含有樹脂と多価金属化合物との反応生成物を含むコーティング層を積層してもよい。この反応生成物は多価金属(イオン)によりカルボキシ基含有樹脂を架橋したものであり,ガスバリア性を付与することができる。この反応生成物は酸またはアルカリに対する易溶解性を有するので,モノマテリアルチューブ1を回収・粉砕・洗浄することによってコーティング層を除去することができ,容易にリサイクルすることが可能である。
【0021】
モノマテリアルチューブ1の口部11の上端は開口しており,この口部11の開口が口部閉鎖シール21によって塞がれている。口部閉鎖シール21は口部11の上端縁部(上面)に易接着されており,口部閉鎖シール21を剥がすことによって口部11の上端に内容物の出口がつくられる。口部閉鎖シール21には,たとえば蒸着PET12μmとイージーピールPET3μmとを積層した積層体を用いることができる。「蒸着PET」はシリカやアルミナなどを蒸着したPETであり,酸素や水蒸気に対するバリア性を向上させたもので,0.1~2g/m・day・atm程度のバリア性を口部閉鎖シール21に持たせることができる。「イージーピールPET」はヒートシール性と易剥離性を両立させたPETであり,一般的なシーラントと比べて120℃程度の低温でシール可能なものを採用することができる。
【0022】
図2はモノマテリアルチューブ1の肩部12と胴部13との境界部分(右肩部分)を拡大して示す断面図である。
【0023】
上述したように,モノマテリアルチューブ1は,PET25の射出成形によって一体に形成される口部11および肩部12を含む頭部と,上記肩部12に熱溶着されるPETフィルム27から構成される胴部13とから構成される。胴部13を構成するPETフィルム27の厚さ(60μm~100μm程度)に比べて肩部12は厚い(約1000~2000μm程度)。図2において図示は省略するが,口部11は肩部12とほぼ同じ厚さを持つ。
【0024】
円錐台形状の肩部12の下端部の表面(外面)に内向きの段差部12Aが形成されており,肩部12の下端部は段差部12Aを境界にその厚さがわずか薄くなっている。この厚さが薄い範囲の肩部12の下端部の表面に胴部13を構成するPETフィルム27の上端部が位置している。段差部12Aの深さはPETフィルム27の厚さとほぼ同程度であり,これによって肩部12の表面とPETフィルム27の表面とがほぼ面一となり,肩部12と胴部13と境目に段差がつくられず,肩部12と胴部13との境目のバリア性が向上する。
【0025】
PETフィルム27には複数の機能層27a~27cを積層した積層体を用いることができ,モノマテリアルチューブ1内に充填される内容物の特性に合わせたバリア機能をモノマテリアルチューブ1に持たせることができる。図2には4つの層27a~27cを備える4層構造のPETフィルム27を示すが,積層数は4層に限らず2層ないし3層であっても5層以上であってもよい。たとえば,以下の層構成および層厚を採用することができる(右側が内容物側)。
【0026】
(1)ヒートシールポリエチレンテレフタレート(HSPET)50μm/ポリエチレンテレフタレート(PET)12μm/蒸着PET12μm/HSPET50μm
(2)HSPET50μm/蒸着PET12μm/HSPET50μm
(3)HSPET50μm/バリアコーティングPET12μm/HSPET50μm
【0027】
蒸着PETにはアルミナやシリカが蒸着されたPETを用いることができる。また,各層間には接着層が設けられていてもよい。
【0028】
図3から図5はモノマテリアルチューブ1の製造工程を示している。
【0029】
図3を参照して,モノマテリアルチューブ1を成形するための成形型は,互いに対向して配置されるキャビティ型31およびコア型32を含む。
【0030】
キャビティ型31は成形すべきモノマテリアルチューブ1の外形に応じた形状の成形面(凹面)31Aを備えている。他方,コア型32は成形すべきモノマテリアルチューブ1の外形に応じた外形形状(凸面)を備えている。
【0031】
キャビティ型31とコア型32を型締めすると,キャビティ型31の成形面31Aとコア型32の外面との間にキャビティ35が形成される。キャビティ型31はこのキャビティ35と連通する樹脂注入ポート31Bを備えており,樹脂注入ポート31Bを通じて,後述するキャビティ35に樹脂,具体的には上述したMFRが0.5~5.0程度のPET25が注入される。
【0032】
図4を参照して,キャビティ型31にコア型32を型締めする前に,円筒状のPETフィルム27が,キャビティ型31内の胴部を形成するための部分から肩部の下端部を形成する部分にかけて挿入される。PETフィルム27はキャビティ型31の成形面31Aにぴったりと接触し,PETフィルム27と成形面31Aとの間に隙間はほぼ形成されない。
【0033】
図5を参照して,キャビティ型31にコア型32を型締めすると,キャビティ型31内の口部および肩部を形成するための部分にキャビティ35が形成される。胴部を形成するための部分はPETフィルム27が挿入されておりPETフィルム27によってキャビティ35が占められているので,この部分にキャビティ35は形成されない。樹脂注入ポート31BからPET25を注入すると口部および肩部を形成するための部分にPET25が充填される。口部11および肩部12がPET25によって一体に形成される。
【0034】
肩部の下端部を形成する部分にはPETフィルム27の先端部(上端部)が位置している。そして上述したようにPETフィルム27はキャビティ型31の成形面31Aにぴったりと接触している。このため,肩部の下端部を形成する部分においてはコア型32とPETフィルム27の間のわずかな隙間にPET25が入り込む。これによって肩部の下端部に上述した段差部12Aが形成され(図2参照),この段差部12Aの段差を無くすようにPETフィルム27が配置される。PETフィルム27は肩部12の下端外周面に熱融着されて一体化される。モノマテリアルチューブ1(図1)が完成する。
【0035】
スクリューキャップ2(図1参照)についても,モノマテリアルチューブ1と同様に,キャビティ型とコア型とを用いた射出成形によって成形される。スクリューキャップ2もPETを用いて射出成形することで,モノマテリアルチューブ1とスクリューキャップ2の全体をPETによって形成することができる。
【0036】
モノマテリアルチューブ1は,その全体がPET材質を用いて構成されているので,リサイクルに適している。
【0037】
図6は他の実施例のモノマテリアルチューブ1Aおよびスクリューキャップ2の正面図であり,図1に示すモノマテリアルチューブ1とは,胴部13の一部(上端部)までが頭部を形成し,PET25を射出成形することによって成形されている点が異なっている。PETフィルム27はPET25によって形成される胴部13の一部の外面に熱融着される。図6に示すモノマテリアルチューブ1は,口部11,肩部12および胴部13の一部をPET25によって射出成形し,後工程において胴部13の残り部分を形成するPETフィルム27を熱融着することによって製造される。PET25から形成される円筒状の胴部13の一部とPETフィルム27とを熱融着することによって,PETフィルム27に皺をよらせることなくPETフィルム27を熱融着することができる。モノマテリアルチューブ1Aもその全体がPET材質であることはモノマテリアルチューブ1と同じであり,リサイクルに適している。
【符号の説明】
【0038】
1,1A モノマテリアルチューブ
11 口部
12 肩部
12A 段差部
13 胴部
21 口部閉鎖シール
27 PETフィルム
31 キャビティ型
31A 成形面
31B 樹脂注入ポート
32 コア型
35 キャビティ
図1
図2
図3
図4
図5
図6