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特開2024-140078医療用管状体搬送装置の遠位端部に用いられるチップ、及び医療用管状体搬送装置
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  • 特開-医療用管状体搬送装置の遠位端部に用いられるチップ、及び医療用管状体搬送装置 図1
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  • 特開-医療用管状体搬送装置の遠位端部に用いられるチップ、及び医療用管状体搬送装置 図13
  • 特開-医療用管状体搬送装置の遠位端部に用いられるチップ、及び医療用管状体搬送装置 図14
  • 特開-医療用管状体搬送装置の遠位端部に用いられるチップ、及び医療用管状体搬送装置 図15
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140078
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】医療用管状体搬送装置の遠位端部に用いられるチップ、及び医療用管状体搬送装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/966 20130101AFI20241003BHJP
【FI】
A61F2/966
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051072
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼淵 崇亘
(72)【発明者】
【氏名】佐野 絵里奈
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一博
(72)【発明者】
【氏名】清水 一朗
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB11
4C267BB12
4C267CC04
4C267CC08
4C267DD01
4C267GG34
(57)【要約】
【課題】接触組織を損傷し難く、且つ狭窄部位に挿入し易いチップを提供する。
【解決手段】医療用管状体を体内に搬送する医療用管状体搬送装置の遠位端部に用いられるチップであって、チップの近位端を含む第1部材と、第1部材の遠位端部よりも遠位側に位置する第2部材とを有し、第1部材は、第2部材に対向する第1対向面を有し、第1対向面は、第2部材に固定されている第1固定部と、第2部材に固定されていない非固定部とを有し、第2部材は、X線不透過性物質を含み、第1部材は、X線不透過性物質を含まないか、または第1部材のX線不透過性物質の含有量(質量%)よりも少ない含有量(質量%)でX線不透過性物質を含んでいるチップ。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用管状体を体内に搬送する医療用管状体搬送装置の遠位端部に用いられるチップであって、
前記チップの近位端を含む第1部材と、
前記第1部材の遠位端部よりも遠位側に位置する第2部材とを有し、
前記第1部材は、前記第2部材に対向する第1対向面を有し、前記第1対向面は、前記第2部材に固定されている第1固定部と、前記第2部材に固定されていない非固定部とを有し、
前記第2部材は、X線不透過性物質を含み、前記第1部材は、X線不透過性物質を含まないか、または前記第1部材のX線不透過性物質の含有量(質量%)よりも少ない含有量(質量%)でX線不透過性物質を含んでいるチップ。
【請求項2】
前記第1部材は、近位端から遠位端へ延在する内腔を有し、
前記第2部材は、近位端から遠位端へ延在し前記内腔に連通する内腔を有している請求項1に記載のチップ。
【請求項3】
前記非固定部は、前記第1固定部よりも前記内腔側に位置している請求項2に記載のチップ。
【請求項4】
前記第1対向面は、前記第2部材に固定されている第2固定部を有し、
前記第2固定部は、前記非固定部よりも前記内腔側に位置している請求項2に記載のチップ。
【請求項5】
前記第1対向面は、前記非固定部よりも前記内腔側において、前記第2部材に固定されている固定部を有していない請求項2に記載のチップ。
【請求項6】
前記非固定部は、前記内腔の周方向に延在する溝である請求項2に記載のチップ。
【請求項7】
前記溝は、前記周方向の一部において延在しており、前記周方向の全周にわたって延在していない請求項6に記載のチップ。
【請求項8】
前記第1対向面は、前記第1固定部よりも外側において、前記第2部材に固定されていない非固定部を有していない請求項1に記載のチップ。
【請求項9】
前記第1部材は、前記第1部材の前記遠位端に向かって外径が大きくなっている拡径部を有している請求項1に記載のチップ。
【請求項10】
前記第1部材は第1樹脂を含み、
前記第2部材は、前記第1樹脂の融点と同じか又は前記第1樹脂の融点よりも低い融点を有する第2樹脂を含む請求項1に記載のチップ。
【請求項11】
前記第1対向面は、前記第1固定部において、溶着により前記第2部材に固定されている請求項1に記載のチップ。
【請求項12】
前記第2部材は、前記チップの遠位端を含んでいる請求項1に記載のチップ。
【請求項13】
前記第2部材は、前記チップの前記遠位端を含むリング部を有しており、前記リング部は、前記X線不透過性物質を含む請求項12に記載のチップ。
【請求項14】
前記第2部材の前記内腔側の内側面のうち少なくとも一部は、前記X線不透過性物質を有している請求項2に記載のチップ。
【請求項15】
前記第2部材の外側面のうち少なくとも一部は、前記X線不透過性物質を有している請求項1に記載のチップ。
【請求項16】
前記第1部材は、樹脂を含み且つX線不透過性物質を含んでいない請求項1に記載のチップ。
【請求項17】
前記第2部材に含まれる前記X線不透過性物質は、X線不透過性フィラーを含んでいる請求項1に記載のチップ。
【請求項18】
医療用管状体を体内に搬送する医療用管状体搬送装置であって、
内側チューブと、
内腔に前記内側チューブの少なくとも一部が配置されている外側チューブと、
前記内側チューブの遠位端部の少なくとも一部に固定されている請求項1~17のいずれかに記載のチップと、
前記内側チューブの前記遠位端部の外側面と、前記外側チューブの内側面との間に配置されている医療用管状体とを有している医療用管状体搬送装置。
【請求項19】
前記医療用管状体の遠位端は、前記第1対向面の前記非固定部よりも近位側に位置する請求項18に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項20】
前記第1部材は、前記内側チューブに固定されており、前記第2部材は、前記内側チューブに固定されていない請求項18に記載の医療用管状体搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用管状体搬送装置の遠位端部に用いられるチップ、及び医療用管状体搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、狭窄した消化器管や血管等の狭窄部位にカテーテルを挿入するか又は通過させる場合があり、カテーテルの先端にはチップが設けられていた。先端チップを有するカテーテルとして、例えば特許文献1には、内層と、内層を覆う補強体と、補強体を覆う外層とを有するチューブ体と、チューブ体の先端に設けられた金属から成る管状の先端チップとを備え、先端チップにはスリットが形成されており、先端チップの外周面には外側被覆が設けられ、且つ、外側被覆がスリットの内部に入り込んでいるカテーテルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-208425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の先端チップには、全体的に曲り易くするために軸方向に延在するらせん状のスリットが設けられているが、外側被覆がスリットの内部に入り込んでいるため、外側被覆の素材によってはチップがほとんど曲らない可能性があった。また近年ではステントデリバリーカテーテルを用いて狭窄部位にステントを留置する処置が行われることが多く、特にステントデリバリーカテーテルの先端チップには、接触組織の損傷回避等の安全性の向上と、狭窄部位への挿入のし易さの向上が求められていた。本発明は上記の様な問題に着目してなされたものであって、その目的は、接触組織を損傷し難く、且つ狭窄部位に挿入し易いチップを提供することにある。またその他の目的は、接触組織を損傷し難く、且つ狭窄部位に挿入し易い医療用管状体搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することのできた本発明の実施の形態に係る医療用管状体搬送装置の遠位端部に用いられるチップは、以下の通りである。
[1]医療用管状体を体内に搬送する医療用管状体搬送装置の遠位端部に用いられるチップであって、
前記チップの近位端を含む第1部材と、
前記第1部材の遠位端部よりも遠位側に位置する第2部材とを有し、
前記第1部材は、前記第2部材に対向する第1対向面を有し、前記第1対向面は、前記第2部材に固定されている第1固定部と、前記第2部材に固定されていない非固定部とを有し、
前記第2部材は、X線不透過性物質を含み、前記第1部材は、X線不透過性物質を含まないか、または前記第1部材のX線不透過性物質の含有量(質量%)よりも少ない含有量(質量%)でX線不透過性物質を含んでいるチップ。
【0006】
上記の通り、第1対向面が非固定部を有していることにより、第1部材と第2部材との間に緩衝部として機能する間隙が形成されてチップが部分的に柔軟になるため、チップは体内において接触組織を損傷し難くなる。更に、第1対向面が固定部を有していることにより、第1部材と第2部材が遠近方向に固定されて、チップを近位側から遠位側に向けて狭窄部内に押し込み易くなる。更に、少なくとも第2部材がX線不透過性物質を含むことにより、X線透視下においてチップの遠位部の位置を把握し易くすることができるため、チップを狭窄部に挿入し易くなる。更に、第1部材がX線不透過性物質を含まないか、又は第2部材のX線不透過性物質よりも少ない含有量でX線不透過性物質を含むことにより、チップの近位端部のX線透過性を相対的に向上させることができる。このようなチップを医療用管状体搬送装置の先端チップとして用いれば、X線透視下においてチップの近位端近傍に位置するX線不透過性の医療用管状体の遠位端等の位置を正確に把握し易くすることができる。
【0007】
本発明の実施の形態に係るチップは、以下の[2]~[17]のいずれかであることが好ましい。
[2]前記第1部材は、近位端から遠位端へ延在する内腔を有し、
前記第2部材は、近位端から遠位端へ延在し前記内腔に連通する内腔を有している[1]に記載のチップ。
[3]前記非固定部は、前記第1固定部よりも前記内腔側に位置している[2]に記載のチップ。
[4]前記第1対向面は、前記第2部材に固定されている第2固定部を有し、
前記第2固定部は、前記非固定部よりも前記内腔側に位置している[2]または[3]に記載のチップ。
[5]前記第1対向面は、前記非固定部よりも前記内腔側において、前記第2部材に固定されている固定部を有していない[2]または[3]に記載のチップ。
[6]前記非固定部は、前記内腔の周方向に延在する溝である[2]、[3]、または[5]に記載のチップ。
[7]前記溝は、前記周方向の一部において延在しており、前記周方向の全周にわたって延在していない[6]に記載のチップ。
[8]前記第1対向面は、前記第1固定部よりも外側において、前記第2部材に固定されていない非固定部を有していない[1]~[7]のいずれかに記載のチップ。
[9]前記第1部材は、前記第1部材の前記遠位端に向かって外径が大きくなっている拡径部を有している[1]~[8]のいずれかに記載のチップ。
[10]前記第1部材は第1樹脂を含み、
前記第2部材は、前記第1樹脂の融点と同じか又は前記第1樹脂の融点よりも低い融点を有する第2樹脂を含む[1]~[9]のいずれかに記載のチップ。
[11]前記第1対向面は、前記第1固定部において、溶着により前記第2部材に固定されている[1]~[10]のいずれかに記載のチップ。
[12]前記第2部材は、前記チップの遠位端を含んでいる[1]~[11]のいずれかに記載のチップ。
[13]前記第2部材は、前記チップの前記遠位端を含むリング部を有しており、前記リング部は、前記X線不透過性物質を含む[12]に記載のチップ。
[14]前記第2部材の前記内腔側の内側面のうち少なくとも一部は、前記X線不透過性物質を有している[2]~[13]のいずれかに記載のチップ。
[15]前記第2部材の外側面のうち少なくとも一部は、前記X線不透過性物質を有している[1]~[14]のいずれかに記載のチップ。
[16]前記第1部材は、樹脂を含み且つX線不透過性物質を含んでいない[1]~[15]のいずれかに記載のチップ。
[17]前記第2部材に含まれる前記X線不透過性物質は、X線不透過性フィラーを含んでいる[1]~[16]のいずれかに記載のチップ。
【0008】
上記課題を解決することのできた本発明の実施の形態に係る医療用管状体搬送装置は、[18]の通りであり、[19]または[20]であることが好ましい。
[18]医療用管状体を体内に搬送する医療用管状体搬送装置であって、
内側チューブと、
内腔に前記内側チューブの少なくとも一部が配置されている外側チューブと、
前記内側チューブの遠位端部の少なくとも一部に固定されている[1]~[17]のいずれかに記載のチップと、
前記内側チューブの前記遠位端部の外側面と、前記外側チューブの内側面との間に配置されている医療用管状体とを有している医療用管状体搬送装置。
[19]前記医療用管状体の遠位端は、前記第1対向面の前記非固定部よりも近位側に位置する[18]に記載の医療用管状体搬送装置。
[20]前記第1部材は、前記内側チューブに固定されており、前記第2部材は、前記内側チューブに固定されていない[18]または[19]に記載の医療用管状体搬送装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記構成により、接触組織を損傷し難く、且つ狭窄部位に挿入し易いチップを提供することができる。また本発明によれば、接触組織を損傷し難く、且つ狭窄部位に挿入し易い医療用管状体搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態に係るチップの側面図である。
図2図2は、図1の軸方向の断面図である。
図3図3は、図1のA-A断面を示す断面図である。
図4図4は、図3の断面の変形例を示す断面図である。
図5図5は、図3の断面の変形例を示す断面図である。
図6図6は、他の実施の形態に係るチップの軸方向の断面図である。
図7図7は、図3の断面の変形例を示す断面図である。
図8図8は、図3の断面の変形例を示す断面図である。
図9図9は、内側チューブに固定された第1部材と、第1部材に固定される前の第2部材を示す側面図である。
図10図10は、X線透視下におけるチップと医療用管状体の一例を示す模式図である。
図11図11は、X線透視下における実施の形態に係るチップと医療用管状体を示す模式図である。
図12図12は、図1のチップの変形例の側面図である。
図13図13は、実施の形態に係る医療用管状体搬送装置の側面図である。
図14図14は、図13の軸方向の断面図である。
図15図15は、他の実施の形態に係る医療用管状体搬送装置の軸方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0012】
本発明の実施の形態に係るチップは、医療用管状体を体内に搬送する医療用管状体搬送装置の遠位端部に用いられるチップであって、チップの近位端を含む第1部材と、第1部材の遠位端部よりも遠位側に位置する第2部材とを有し、第1部材は、第2部材に対向する第1対向面を有し、第1対向面は、第2部材に固定されている第1固定部と、第2部材に固定されていない非固定部とを有し、第2部材は、X線不透過性物質を含み、第1部材は、X線不透過性物質を含まないか、または第1部材のX線不透過性物質の含有量(質量%)よりも少ない含有量(質量%)でX線不透過性物質を含んでいる。
【0013】
上記の通り、第1対向面が非固定部を有していることにより、第1部材と第2部材との間に緩衝部として機能する間隙が形成されてチップが部分的に柔軟になるため、チップは体内において接触組織を損傷し難くなる。更に、第1対向面が固定部を有していることにより、第1部材と第2部材が遠近方向に固定されて、チップを近位側から遠位側に向けて狭窄部内に押し込み易くなる。更に、少なくとも第2部材がX線不透過性物質を含むことにより、X線透視下においてチップの遠位部の位置を把握し易くすることができるため、チップを狭窄部に挿入し易くなる。更に、第1部材がX線不透過性物質を含まないか、又は第2部材のX線不透過性物質よりも少ない含有量でX線不透過性物質を含むことにより、チップの近位端部のX線透過性を相対的に向上させることができる。このようなチップを医療用管状体搬送装置の先端チップとして用いれば、X線透視下においてチップの近位端近傍に位置するX線不透過性の医療用管状体の遠位端等の位置を正確に把握し易くすることができる。
【0014】
以下では、図1図15を参照しながら、実施の形態に係るチップ、及び実施の形態に係る医療用管状体搬送装置の順に説明する。図1は、実施の形態に係るチップの側面図である。図2は、図1の軸方向の断面図である。図3は、図1のA-A断面を示す断面図である。図4、5、7、8は、図3の断面の変形例を示す断面図である。図6は、他の実施の形態に係るチップの軸方向の断面図である。図9は、内側チューブに固定された第1部材と、第1部材に固定される前の第2部材を示す側面図である。図10は、X線透視下におけるチップと医療用管状体の一例を示す模式図である。図11は、X線透視下における実施の形態に係るチップと医療用管状体を示す模式図である。図12は、図1のチップの変形例の側面図である。図13は、実施の形態に係る医療用管状体搬送装置の側面図であり、図14は、図13の軸方向の断面図である。図15は、他の実施の形態に係る医療用管状体搬送装置の軸方向の断面図である。
【0015】
図1に示すチップ1は、医療用管状体を体内に搬送する医療用管状体搬送装置の遠位端部に用いられるチップである。例えば図13図15に示すように、チップ1は、医療用管状体4を体内に搬送する医療用管状体搬送装置10の遠位端部10bに用いられるチップであることが好ましい。
【0016】
図1図3に示す通り、チップ1は、チップ1の近位端1Aを含む第1部材11と、第1部材11の遠位端部11bよりも遠位側に位置する第2部材12とを有している。第1部材11は、第2部材12に対向する第1対向面11Sを有し、第1対向面11Sは、第
2部材12に固定されている第1固定部11Tと、第2部材12に固定されていない非固定部11Yとを有している。
【0017】
第1対向面11Sが非固定部11Yを有していることにより、第1部材11と第2部材12との間に緩衝部として機能する間隙が形成される。その結果、チップ1が部分的に柔軟になるため、チップ1は体内において接触組織を損傷し難くなる。更に、第1対向面11Sが第1固定部11Tを有していることにより、第1部材11により第2部材12を遠位側に押し込み易くすることができる。
【0018】
図1図2に示す通り、第1部材11と第2部材12は、それぞれチップ1の軸方向1Xに延在していることが好ましい。これによりチップ1を軸方向1Xに押し込み易くすることができる。また第1部材11の軸方向と、第2部材12の軸方向は同一方向であることが好ましい。
【0019】
第1対向面11Sの第1固定部11Tは、第2部材12に固定されていればよい。第1固定部11Tを第2部材12に固定する方法としては、例えば、第1部材11の第1対向面11Sの一部を第2部材12の第2対向面12Sに接触、溶着して固定する方法、第1部材11の第1対向面11Sの一部を接着剤により第2部材12の第2対向面12Sに固定する方法が挙げられる。第2対向面12Sは、第2部材12のうち第1部材11に対向する面である。
【0020】
第1対向面11Sは、第1固定部11Tにおいて、溶着により第2部材12に固定されていることが好ましい。溶着によれば第1部材11と第2部材12の固定強度が向上するため、第1部材11により第2部材12を遠位側に押し込み易くすることができる。
【0021】
第1対向面11Sから第2対向面12Sに至るまでの軸方向1Xにおける最長直線距離は、第1部材11の最大外径の0.1倍以上であることが好ましく、0.2倍以上であることがより好ましい。これにより、第1部材11と第2部材12との間の間隙が緩衝部として機能し易くなる。一方、当該最長直線距離は、第1部材11の最大外径の0.5倍以下であることが好ましく、0.4倍以下であることがより好ましく、0.3倍以下であることが更に好ましい。これにより、チップ1を軸方向1Xに押し込み易くすることができる。
【0022】
図2に示す通り、チップ1の軸方向1Xの断面において、第1固定部11Tの外縁と軸方向1Xとのなす角度は、80度以上、100度以下であることが好ましく、85度以上、95度以下であることがより好ましく、88度以上、92度以下であることが更に好ましい。第1固定部11Tの外縁と軸方向1Xとのなす角度が90度に近い方が第1部材11により第2部材12を遠位側に押し込み易くすることができる。
【0023】
図2に示す通り、第1部材11は、近位端11Aから遠位端11Bへ延在する内腔11Lを有し、第2部材12は、近位端12Aから遠位端12Bへ延在し内腔11Lに連通する内腔12Lを有していることが好ましい。これによりチップ1の柔軟性を向上することができる。更にガイドワイヤー等の長尺体を内腔11L、12Lに挿入することもできる。内腔11Lと内腔12Lは、チップ1の軸方向1Xに延在していることが好ましい。
【0024】
図2図3に示す通り、非固定部11Yは、第1固定部11Tよりも内腔11L側に位置していることが好ましい。このような配置の非固定部11Yにより形成される間隙は、チップ1の遠位端1Bから近位端1Aにかかる力を緩衝して、チップ1の接触組織への突き刺さりを回避し易くすることができる。
【0025】
図2図3に示す通り、第1対向面11Sは、非固定部11Yよりも内腔11L側にお
いて、第2部材12に固定されている固定部を有していないことが好ましい。これにより、内腔1Lと連通する間隙が形成されるため、チップ1の遠位端1Bから近位端1Aにかかる力をより一層、緩衝し易くすることができる。
【0026】
図3に示す通り、非固定部11Yは、内腔11Lの周方向に延在する溝11Zであることが好ましい。周方向に延在する溝11Zにより、チップ1の遠位端1Bから近位端1Aにかかる力をより一層、緩衝し易くすることができる。軸方向1Xの断面において、溝11Zは、V字状またはU字状であることが好ましく、U字状であることがより好ましい。溝11Zは、軸方向1Xに延在していないことが好ましい。これにより、チップ1の狭窄突破性を向上することができる。
【0027】
溝11Zの最大深さは、第1部材11の最大外径の0.1倍以上であることが好ましく、0.2倍以上であることがより好ましい。これにより、溝11Zが緩衝部として機能し易くなる。一方、溝11Zの最大深さは、第1部材11の最大外径の0.4倍以下であることが好ましく、0.3倍以下であることがより好ましい。これにより、チップ1を軸方向1Xに押し込み易くすることができる。
【0028】
図4に示す通り、溝11Zは、周方向の一部において延在しており、周方向の全周にわたって延在していないことが好ましい。これにより軸方向1Xに力がかかったときに、第2部材12が溝11Z側に僅かに曲り易くなるため、チップ1の接触組織への突き刺さりを回避し易くすることができる。
【0029】
図5に示す通り、非固定部11Yは、第1固定部11Tよりも内腔11L側に位置する部分と、第1固定部11Tよりも内腔11L側に位置していない部分とを有していてもよい。これにより、チップ1が多方向に曲り易くなるため、ガイドワイヤーへの追従性を向上することができる。なお第1対向面11Sは、周方向において複数の第1固定部11Tを有していてもよい。
【0030】
図5に示す通り、非固定部11Yは、チップ1の内腔1Lとチップ1外の空間とに連通していてもよい。患部によってはチップ1の一部が破断して残留しても健康上、問題の無い部分もあり、そのような患部にチップ1を挿入するに当たっては、チップ1の内腔1Lとチップ1外の空間とに連通する非固定部11Yを設けてチップ1の一部を破断し易くすることにより、チップ1の接触組織への突き刺さりをより一層、回避し易くすることができる。また、非固定部11Yがチップ1外の空間と連通していることにより、非固定部11Yを視認マーカーとして機能させることもできる。
【0031】
図2に示す通り、第1対向面11Sは、第1固定部11Tよりも外側において、第2部材12に固定されていない非固定部を有していないことが好ましい。これにより、チップ1の挿入時においてチップ1の開口部分が外側に向かって広がる等の変形を防止し易くすることができる。
【0032】
図6図7に示す通り、第1対向面11Sは、第2部材12に固定されている第2固定部11Uを有し、第2固定部11Uは、非固定部11Yよりも内腔11L側に位置していてもよい。これによりガイドワイヤーのチップ1の内腔1Lにおける引っかかりを回避し易くすることができる。
【0033】
図6図7に示す通り、非固定部11Yは第1固定部11Tよりも内腔11L側に位置し、且つ第2固定部11Uは、非固定部11Yよりも内腔11L側に位置していてもよい。このような配置によれば、非固定部11Yにより形成される間隙は径方向に封鎖されるため、チップ1の塑性変形を防止し易くすることができる。図示していないが、非固定部11Yは、周方向の一部において延在しており、周方向の全周にわたって延在していないことが好ましい。これにより軸方向1Xに力がかかったときに、第2部材12が非固定部11Y側に僅かに曲り易くなるため、チップ1の接触組織への突き刺さりを回避し易くすることができる。また図示していないが、図6図7に示す第1対向面11Sは、更に、第2固定部11Uよりも内腔11L側に、非固定部を有していてもよい。当該非固定部は、内腔11Lの周方向に延在する溝であることが好ましい。更に当該非固定部は、周方向の一部において延在しており、周方向の全周にわたって延在していないことが好ましい。
【0034】
図6に示す通り、第2固定部11Uの外縁と軸方向1Xとのなす角度は、80度以上、100度以下であることが好ましく、85度以上、95度以下であることがより好ましく、88度以上、92度以下であることが更に好ましい。第2固定部11Uの外縁と軸方向1Xとのなす角度が90度に近い方が第1部材11により第2部材12を遠位側に押し込み易くすることができる。
【0035】
図8に示す通り、第1対向面11Sは、周方向において、複数の第1固定部11Tと、それぞれ複数の第1固定部11Tの間に配置された複数の非固定部11Yとを有していてもよい。このように第1対向面11Sは、2つ以上の非固定部を有していてもよい。これにより、チップ1が多方向に曲り易くなるため、ガイドワイヤーへの追従性を向上することができる。
【0036】
図1に示す通り、第1部材11は、第1部材11の遠位端11Bに向かって外径が大きくなっている拡径部を有していることが好ましい。拡径部は、遠位端11Bに向かって外径が連続的に大きくなっていることが好ましい。これにより、第1部材11の遠位側が肉厚になるため第2部材12を遠位側に押し込み易くすることができる。側面視における拡径部の外縁は、直線状および/または曲線状であることが好ましく、直線状であることがより好ましい。なお第1部材11は、拡径部を2つ以上、有していてもよい。
【0037】
図示していないが、第1部材11は、拡径部よりも遠位側に外径の大きさが一定である定径部を有していてもよい。これにより、第1部材11により第2部材12を遠位側に押し込み易くすることができる。
【0038】
第1部材11の軸方向の長さは、第1部材11の最大外径より長いことが好ましい。これにより、第1部材11を狭窄部に挿入し易くすることができる。
【0039】
図1に示す通り、第2部材12は、第2部材12の遠位端12Bに向かって外径が小さくなっている縮径部を有していることが好ましい。縮径部は、遠位端12Bに向かって外径が連続的に小さくなっていることが好ましい。これにより、第2部材12の遠位側が先細り形状になるため第2部材12を狭窄部に押し込み易くすることができる。側面視における縮径部の外縁は、直線状および/または曲線状であることが好ましく、直線状であることがより好ましい。なお第2部材12は、縮径部を2つ以上、有していてもよい。
【0040】
図1に示す通り、チップ1の側面視において、拡径部の外縁の軸方向1Xに対する傾斜角度は、縮径部の外縁の軸方向1Xに対する傾斜角度よりも大きいことが好ましい。これにより、第2部材12により第1部材11を遠位側に押し込み易くすることができると共に、第2部材12を狭窄部に挿入し易くすることができる。
【0041】
第2部材12は、チップ1の遠位端1Bを含んでいることが好ましい。これにより第2部材12を狭窄部に押し込み易くすることができる。またチップ1は第2部材12よりも遠位側に他の部材を含んでいないことが好ましい。
【0042】
図示していないが、第2部材12は、縮径部よりも近位側に外径の大きさが一定である定径部を有していてもよい。これにより、第2部材12をより一層、遠位側に押し込み易くすることができる。
【0043】
第2部材12の軸方向の長さは、第1部材11の軸方向の長さよりも長いことが好ましい。これにより、チップ1全体にかかる力が第1部材11と第2部材12の間の間隙により緩衝され易くなる。第1部材11の軸方向の長さとは、第1部材11の近位端11Aから遠位端11Bの軸方向の長さであり、第2部材12の軸方向の長さとは、第2部材12の近位端12Aから遠位端12Bの軸方向の長さである。
【0044】
第2部材12の軸方向の長さは、第2部材12の最大外径より長いことが好ましい。これにより、第2部材12を狭窄部に挿入し易くすることができる。
【0045】
第1部材11は第1樹脂を含み、第2部材12は、第1樹脂の融点と同じか又は第1樹脂の融点よりも低い融点を有する第2樹脂を含むことが好ましい。これにより、後述するように内側チューブ2に固定した第1部材11に対して、第2部材12を加熱により固定する場合に、第2部材12の固定の際の加熱温度を低減することができるため、内側チューブ2にかかる熱ストレスを低減できる。第1部材11は第1樹脂からなることがより好ましい。また第2部材12の融点は、第1部材11の融点と同じか又は第1部材11の融点よりも低いことが好ましく、第1部材11の融点よりも低いことがより好ましい。融点は、例えばDSCにより測定することができ、DSC曲線の吸熱ピークのトップを示す温度を融点とすることが好ましい。
【0046】
第1部材11は、例えば以下の方法により第2部材12に固定することが好ましい。具体的には図9に示す通り、第1部材11の内腔11Lに医療用管状体搬送装置の内側チューブ2の遠位端部2bを挿入して第1部材11を内側チューブ2に固定した後に、第1部材11の第1対向面11Sの少なくとも一部を第2部材12の第2対向面12Sに接触させてから、第1部材11を第2部材12に固定することが好ましい。これにより、第1部材11を第2部材12に固定してから第1部材11を内側チューブ2に固定する場合よりも、第1部材11と第2部材12の固定部に対する製造時の熱ストレス等を低減できるため、第1部材11の第2部材12の固定部の固定強度を維持し易くすることができる。
【0047】
第1部材11と第2部材12とを固定する方法としては、溶着が好ましく、熱溶着がより好ましい。熱溶着としては熱風溶着が好ましい。例えば、図1図3に示すチップ1は、第1部材11の第1対向面11Sを第2部材12の第2対向面12Sに接触させた状態で、内腔1Lに冷却した芯材を挿入して、次いで第1部材11と第2部材12の接触部を外部から熱風により溶着することにより形成することができる。また図4に示すチップ1は、例えば、一部のみを冷却した芯材を内腔1Lに挿入して、上記と同様に外部から熱風により溶着することにより形成することができる。また図5に示すチップ1は、例えば、内腔1Lに冷却した芯材を挿入して、第1部材11と第2部材12の接触部を径方向において部分的に熱風を当てることにより形成することができる。図6図7に示すチップ1は、例えばチップ1の融点+10℃以内の温度にて芯材を加熱しつつ、同温度にて外部からの熱風による加熱を好ましくは1秒以上、5秒以下の間行うことにより形成することができる。図8に示すチップ1は、第1部材11と第2部材12の接触部を径方向において、外部から部分的に熱風を当てることにより形成することができる。
【0048】
第1部材11と第2部材12は、接着剤により固定してもよい。接着剤としては、例えば、ホットメルト型接着剤、湿気硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、2液硬化型接着剤が挙げられる。これらのうちホットメルト型接着剤または湿気硬化型接着剤が好ましい。
また接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、シリコーン系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、エポキシ系接着剤が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
第1部材11と第2部材12は、それぞれ、樹脂を含むことが好ましい。第1部材11は、樹脂からなることがより好ましい。樹脂は熱可塑性樹脂であることが好ましい。樹脂として具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、またはこれらの混合物であることが好ましい。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また第1部材11と第2部材12は、それぞれ、加水分解防止剤、難燃剤、充填材、架橋剤等の添加剤を含んでいてもよい。第1部材11と第2部材12は、同じ樹脂を含んでいてもよいが、異なる樹脂を含むことが好ましい。また第1部材11と第2部材12は、それぞれ、多層構造を有していてもよく、各層は異なる樹脂を含んでいてもよく、同じ樹脂を含んでいてもよい。
【0050】
第1部材11、第2部材12は、それぞれ上記樹脂を用いて、例えば射出成形や押出成形することにより製造することができる。
【0051】
第2部材12は、X線不透過性物質を含み、第1部材11は、X線不透過性物質を含まないか、または第1部材11のX線不透過性物質の含有量(質量%)よりも少ない含有量(質量%)でX線不透過性物質を含んでいる。このように少なくとも第2部材12がX線不透過性物質を含有することにより、X線透視下においてチップ1の遠位部の位置を把握し易くすることができる。また、チップ1の第1部材11がX線不透過性物質を含まないか、又は相対的に少ない含有量でX線不透過性物質を含むことにより、チップ1の近位端部のX線透過性を相対的に向上させることができる。これにより、X線透視下においてチップ1の近位端1A近傍に位置するX線不透過性の医療用管状体4の遠位端4B等の位置を正確に把握し易くすることができる。例えば全体的に均一な濃度で且つ高濃度のX線不透過性フィラーを含むチップの場合におけるX線透視下では、図10に示すようにチップのX線不透過領域21と医療用管状体のX線不透過領域20とが重複して見えてしまうため、医療用管状体のX線不透過領域20の遠位端20Bの位置が確認し難くなる。一方、実施の形態に係るチップ1は第1部材11がX線不透過性物質を含まないか、又は第2部材12よりも少ない含有量でX線不透過性物質を含むことにより、図11に示すように医療用管状体4のX線不透過領域20の遠位端20Bが見え易くなるため、医療用管状体4の遠位端4Bの位置を正確に把握することができる。
【0052】
第1部材11は、樹脂を含み且つX線不透過性物質を含んでいないことが好ましい。これにより、X線透視下において第1部材11はほぼ見えなくなるため、医療用管状体4の遠位端4B等を確認し易くすることができる。X線不透過性物質としては、例えば、後述する第2部材12に含まれるX線不透過性物質が挙げられる。なお第1部材11は、第2部材12に含まれるX線不透過性物質よりも少ない量であればX線不透過性物質を含んでいてもよい。
【0053】
第1部材11は、樹脂を含み且つX線不透過性物質を含んでいない少なくとも1つのX線透過性管状層を有していることが好ましく、少なくとも1つのX線透過性管状層からなることがより好ましい。X線透過性管状層として、例えば樹脂からなる管状層が挙げられる。
【0054】
第1部材11がX線不透過性物質を含む場合、第1部材11のX線不透過性物質の含有量(質量%)は、第2部材12のX線不透過性物質の含有量(質量%)の0.8倍以下であることが好ましく、0.5倍以下であることがより好ましく、0.2倍以下であることが更に好ましく、0.1倍以下であることが更により好ましい。一方、当該倍率は0.01倍以上であってもよい。
【0055】
第2部材12は樹脂とX線不透過性物質を含むことが好ましい。第2部材12が樹脂を含むことにより柔軟性が向上し、第2部材12がX線不透過性物質を含むことにより、X線透視下における第2部材12の位置を確認し易くすることができる。
【0056】
第2部材12に含まれるX線不透過性物質としては、金、白金、銀、タングステン、タンタル、イリジウム、パラジウム、レニウム、ロジウム、スズ、ニッケル、チタン、これらの合金、硫酸バリウム、ビスマス化合物、タングステン化合物、これらの混合物が挙げられる。合金としては、金-パラジウム合金、白金-イリジウム合金、NiTiPd合金、NiTiAu合金、NiTi合金、またはこれらの混合物が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
第2部材12に含まれるX線不透過性物質は、X線不透過性マーカーバンドを含んでいることが好ましい。X線不透過性マーカーバンドはX線透視下において小さい面積であっても位置を把握し易いため、X線不透過性マーカーバンドを第2部材12に設けると第2部材12の位置を把握し易くなる。第2部材12は、X線不透過性フィラー、X線不透過性マーカーバンド、及び樹脂を含んでいてもよい。X線不透過性マーカーバンドの詳細については、後述するリング部12Rの説明を参照すればよい。
【0058】
図12に示す通り、第2部材12は、チップ1の遠位端1Bを含むリング部12Rを有しており、リング部12Rは、X線不透過性物質を含むことが好ましい。リング部12Rは、X線不透過性物質からなることがより好ましい。即ち、リング部12RはX線不透過性マーカーバンドであることがより好ましい。X線不透過性マーカーバンドの形状は筒状であることが好ましいが、スリットを有していてもよい。チップ1は上述の通り非固定部11Yを有してることにより柔軟であるため、硬いリング部12Rをチップ1の遠位端1Bに配置しても接触組織を損傷し難い。このようなリング部12Rをチップ1の遠位端1Bに配置すると、X線透視下においてチップ1の遠位端1Bを確認し易くすることができる。これにより、例えばチップ1の周方向における第1固定部11Tと非固定部11Yの位置が非対称である場合に、チップ1の遠位端1Bが生体組織と接触した際にブレても、ブレた遠位端1Bの位置を把握し易くすることができる。またこれにより、例えば消化器官や血管等の分岐部において既に展開したステントの網目の間からチップ1の遠位端1Bを通して、新たな狭窄部にステントを送達する等の細かい操作を行い易くすることができる。
【0059】
第2部材12に含まれるX線不透過性物質は、X線不透過性フィラーを含んでいることが好ましい。第2部材12が、X線不透過性物質としてX線不透過性フィラーを含むことにより、第2部材12に均一なX線不透過性を付与し易くなる。
【0060】
X線不透過性フィラーの形態としてはX線不透過性粒子が挙げられる。X線不透過性フィラーの平均粒子径は、好ましくは、0.01~200μm、より好ましくは0.1~50μmである。これによりX線不透過性を発揮しつつ、チップ1の耐久性を維持することができる。当該粒子径は、粒子の輪郭線上の2点間の直線距離のうち最大の直線距離を意味する。平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等を用いて、例えば粒子10個以上を確認することができる視野中における粒子の粒子径の平均値を算出すればよい。
【0061】
第2部材12は樹脂とX線不透過性フィラーの混錬物を含むことが好ましく、当該混錬物からなることがより好ましい。これにより、第2部材12の硬度のバラツキを低減することができ、更に第2部材12に均一なX線不透過性を付与し易くなる。
【0062】
第2部材12の内腔12L側の内側面12Iのうち少なくとも一部は、X線不透過性物質を有していることが好ましい。これによりX線透視下において第2部材12の中心軸近傍のX線不透過性を向上することができ、第2部材12の位置を把握し易くすることができる。第2部材12の内側面12Iのうちの全部がX線不透過性物質を有していることがより好ましい。
【0063】
第2部材12の外側面12Oのうち少なくとも一部は、X線不透過性物質を有していることが好ましい。これによりX線透視下において、第2部材12の輪郭近傍のX線不透過性を向上することができ、第2部材12の位置を把握し易くすることができる。第2部材12の外側面12Oのうちの全部がX線不透過性物質を有していることがより好ましい。
【0064】
第2部材12は、少なくとも1つのX線不透過性管状層を有していることが好ましく、少なくとも1つのX線不透過性管状層からなることがより好ましい。X線不透過性管状層は、樹脂とX線不透過性フィラーを含んでいてもよく、X線不透過性物質からなるものであってもよい。X線不透過性管状層として、例えば樹脂とX線不透過性フィラーの混錬物、X線不透過性マーカーバンド等が挙げられる。第2部材12は、X線不透過性管状層より内側および/または外側に積層され、X線不透過性物質を含まない少なくとも1つのX線透過性管状層を更に有していてもよい。X線透過性管状層として、例えば樹脂からなる管状層が挙げられる。
【0065】
第2部材12は、軸方向1Xにおいて第1部材11と隣接していることが好ましい。第2部材12が第1部材11と隣接していることにより、X線透視下において、第2部材12のX線不透過性が強調されて第2部材12が見え易くなる一方、第1部材11を見え難くさせることができる。
【0066】
第2部材12の軸方向の長さは、第2部材12の径方向の最大長さ以上の長さであることが好ましく、第2部材12の径方向の最大長さより長いことがより好ましい。これにより第2部材12を確認し易くすることができる。
【0067】
以上、実施の形態に係るチップについて説明したが、以下では、実施の形態にかかる医療用管状体搬送装置について説明する。図13図14に示す通り、実施の形態に係る医療用管状体搬送装置10は、医療用管状体4を体内に搬送する医療用管状体搬送装置であって、内側チューブ2と、内腔3Lに内側チューブ2の少なくとも一部が配置されている外側チューブ3と、内側チューブ2の遠位端部2bの少なくとも一部に固定されているチップ1と、内側チューブ2の遠位端部2bの外側面2Oと、外側チューブ3の内側面3Iとの間に配置されている医療用管状体4とを有している。
【0068】
内側チューブ2は内腔2Lを有し、内腔2Lはガイドワイヤーを挿入できるように構成されている。これにより、ガイドワイヤーに沿って内側チューブ2等を移動させて医療用管状体4等を狭窄部まで送達することができる。
【0069】
内側チューブ2の遠位端部2bの少なくとも一部は、チップ1の内側面に固定されていることが好ましい。そのため、チップ1の内腔1Lの一部は、内側チューブ2の遠位端部2bを収容できるように、内側チューブ2の外径以上の径を有していることが好ましい。更に、チップ1の内腔1Lの他の部分は、内側チューブ2の内腔2Lの径以下の径を有し
ていてもよい。チップ1と内側チューブ2は熱溶着等により直接固定されていてもよく、接着剤等を用いて間接的に固定されていてもよい。
【0070】
内側チューブ2の遠位端は、チップ1の第1部材11の遠位端11Bよりも近位側にあることが好ましい。これにより、第2部材12にかかる力を、第1部材11と第2部材12の間の間隙により、緩衝し易くすることができる。
【0071】
第1部材11は、内側チューブ2に固定されており、第2部材12は、内側チューブ2に固定されていないことが好ましい。これにより、第2部材12にかかる力を、第1部材11と第2部材12の間の間隙により緩衝し易くすることができる。
【0072】
内側チューブ2は、少なくとも一部が外側チューブ3の内腔3Lに配置されていればよい。内側チューブ2の遠位端は、外側チューブ3の遠位端よりも遠位側に位置することが好ましい。これによりキンクを防いだり、剛性段差を低減することができる。また、内側チューブ2の近位部は外側チューブ3の近位部に直接または間接に、着脱可能に固定されていることが好ましい。これにより、デリバリー時には上記固定を行って意図しない医療用管状体4の展開を防止する一方で、医療用管状体4の留置時には上記固定を外して外側チューブ3を近位側に移動させることにより医療用管状体4を展開させることができる。なお当該着脱は、後述する外側ハンドル部材7を介して行うことができる。
【0073】
医療用管状体4は、後述する自己拡張型である場合、内側チューブ2の遠位端部2bの外側面2Oと、外側チューブ3の内側面3Iとの間に配置されていることにより、収縮状態を維持することができ、外側チューブ3よりも遠位側に移動することにより拡張することができる。またチップ1により、医療用管状体4を狭窄部に配置する前に外側チューブ3よりも遠位側に医療用管状体4が移動して展開してしまう等の誤作動を回避することができる。
【0074】
医療用管状体4の遠位端4Bは、第1対向面11Sの非固定部11Yよりも近位側に位置することが好ましい。これにより、デリバリー時のチップ1の動きに伴う医療用管状体4の遠位端4Bの損傷を回避し易くすることができる。一方、医療用管状体4の遠位端4Bは、第1部材11の近位端11Aよりも遠位側に位置することが好ましい。これにより医療用管状体4の軸方向の動きを低減して、位置ズレを防止することができる。また、医療用管状体4の遠位端部とチップ1が重なることで、剛性段差を減らしたり、キンクを防止し易くすることができる。
【0075】
図14に示す通り、内側チューブ2は、近位端部2aに内側ハンドル部材6を有することが好ましい。また外側チューブ3は、近位端部3aに外側ハンドル部材7を有することが好ましい。これにより、例えば内側ハンドル部材6を把持したままの状態で、外側ハンドル部材7を介して外側チューブ3を引くことにより、医療用管状体4が外側チューブ3よりも遠位側に位置する状態になって拡張することができる。
【0076】
内側チューブ2の外側面2Oには、プッシャー部材5が固定されていることが好ましい。プッシャー部材5により、医療用管状体4を押し出し易くすることができる。プッシャー部材5は管状体であることが好ましい。
【0077】
図15に示す通り、外側チューブ3は、軸方向に移動可能であってもよい。例えば、医療用管状体搬送装置10は、内腔3XLに外側チューブ3の少なくとも一部が配置されている最外側チューブ3Xと、外側チューブ3の近位端部3aに遠位端部3Ybが固定された線状部材3Yとを有していることが好ましい。更に、最外側チューブ3Xと内側チューブ2は、近位端部3Xaと近位端部2aに内側ハンドル部材6を有していることがより好ましい。このような態様により、例えば内側ハンドル部材6を把持したまま、外側ハンドル部材7を介して線状部材3Yを手元側に引くことにより、最外側チューブ3X内で外側チューブ3を手元側に引き戻すことができ、医療用管状体4を展開させることができる。なお線状部材3Yは、サムホイール等の回転体、及び回転体に巻き取られるものであってもよい。
【0078】
図14に示す通り、外側ハンドル部材7は、フラッシュ用内腔8を有していてもよい。これにより、フラッシュ用内腔8から所望の液体を外側チューブ3の内腔3L内に注入することができる。
【0079】
外側チューブ3は遠位端部3bにX線不透過性を有するX線不透過性領域を有していてもよい。これにより、外側チューブ3の遠位端部3bの位置を把握することができる。X線不透過性領域は、チップ1の第1部材11の遠位端11Bよりも近位側であって、近位端11Aよりも遠位側に位置することが好ましい。これにより、外側チューブ3は遠位端部3bの剛性を高めることができる。X線不透過性領域は、樹脂と混錬されたX線不透過性粒子および/またはX線不透過性のマーカーバンドを含有していてもよい。X線不透過性粒子としては、例えばX線不透過性物質からなる粒子が挙げられる。X線不透過性のマーカーバンドとしては、例えばX線不透過性物質からなるマーカーバンドが挙げられる。X線不透過性物質については、第2部材12のX線不透過性物質の説明の記載を参照すればよい。
【0080】
内側チューブ2、外側チューブ3、プッシャー部材5、最外側チューブ3Xは、それぞれ、樹脂を含むことが好ましい。樹脂は、ポリエチレン、ポリイミド、ポリエーテルブロックアミド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、シリコーン、ポリアミドエラストマー、PTFE、PFA等のフッ素樹脂、またはこれらの混合物を含むことが好ましい。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また樹脂は、加水分解防止剤、難燃剤、充填材、架橋剤等の添加剤を含んでいてもよい。内側チューブ2、外側チューブ3、最外側チューブ3Xは、それぞれ、内層及び外層を有していてもよい。内側チューブ2、外側チューブ3、最外側チューブ3Xは、管状の補強部材を有していてもよい。補強部材として、例えば、らせん状の線材、編組された線材等が挙げられる。線材は、例えば、ステンレス、チタン、コバルトクロム合金、Ni-Ti、タングステン、ポリアリレート繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、PBO繊維、炭素繊維、これらの混合物が挙げられる。また線状部材3Yの素材としては、例えば、ステンレス、チタン、コバルトクロム合金、Ni-Ti、タングステン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
医療用管状体4は、X線不透過性物質を含むことが好ましい。これにより、医療用管状体4の位置をX線透視下で確認することができる。X線不透過性物質については、第2部材12のX線不透過性物質の説明の記載を参照すればよい。医療用管状体4は、樹脂および/または金属を含んでいることが好ましく、金属を含んでいることがより好ましく、金属からなることが更に好ましい。医療用管状体4は、ステント、ステントグラフト、閉塞具、注入カテーテル、またはプロテーゼ弁であることが好ましく、ステントであることがより好ましい。ステントとしては、例えば、樹脂および/または金属の線状体で形成されたコイル状のステント、チューブをレーザーによって切り抜いて加工したステント、シートをレーザーで切り抜いた後に円筒形状に巻いてレーザー溶接したステント、線状体をレーザーによって溶接して組み立てたステント、複数の線状樹脂および/または金属を織って作成したステントが挙げられる。ステントは、ステントをマウントしたバルーンによって拡張させるバルーン拡張型ステント、またはステントの拡張を抑制する外部部材を取り除くことによって自ら拡張させる自己拡張型ステントであることが好ましく、自己拡張型ステントであることがより好ましい。
【0082】
医療用管状体搬送装置10は、心臓の冠動脈、その他の血管、気管、食道、胆管、尿道等に生じた狭窄部に対して用いることができる。
【符号の説明】
【0083】
1 チップ
1A チップの近位端
1B チップの遠位端
1L チップの内腔
1X チップの軸方向
2 内側チューブ
2a 内側チューブの近位端部
2b 内側チューブの遠位端部
2O 内側チューブの外側面
2L 内側チューブの内腔
3 外側チューブ
3a 外側チューブの近位端部
3b 外側チューブの遠位端部
3L 外側チューブの内腔
3I 外側チューブの内側面
3X 最外側チューブ
3Xa 近位端部
3XL 内腔
3Y 線状部材
3Yb 遠位端部
4 医療用管状体
4B 医療用管状体の遠位端
5 プッシャー部材
6 内側ハンドル部材
7 外側ハンドル部材
8 フラッシュ用内腔
10 医療用管状体搬送装置
10b 遠位端部
11 第1部材
11A 近位端
11B 遠位端
11b 遠位端部
11L 第1部材の内腔
11S 第1対向面
11T 第1固定部
11U 第2固定部
11Y 非固定部
11Z 溝
12 第2部材
12A 近位端
12B 遠位端
12I 内側面
12L 内腔
12O 外側面
12R リング部
12S 第2対向面
20 医療用管状体のX線不透過領域
20B 遠位端
21 チップのX線不透過領域
図1
図2
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