(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014009
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】眼科装置、眼科装置を制御する方法、プログラム、及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
A61B 3/135 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
A61B3/135
【審査請求】未請求
【請求項の数】29
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116540
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】山口 達夫
(72)【発明者】
【氏名】坂東 龍
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA03
4C316AA08
4C316AB19
4C316FB21
4C316FY01
4C316FY08
4C316FZ01
4C316FZ03
(57)【要約】
【課題】眼科イメージングで得られる画像の品質の向上を図る。
【解決手段】1つの実施形態に係る眼科装置は、撮影部と、制御部と、画像処理部とを含んでいる。撮影部は、シャインプルーフの条件を満足する光学系を含んでいる。制御部は、撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように撮影部の制御を行うように構成されている。画像処理部は、撮影条件が異なる2回以上の撮影により取得された被検眼の2つ以上の画像に基づいてハイダイナミックレンジ画像を生成するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャインプルーフの条件を満足する光学系を含む撮影部と、
撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように前記撮影部の制御を行う制御部と、
前記2回以上の撮影により取得された前記被検眼の2つ以上の画像に基づいてハイダイナミックレンジ画像を生成する画像処理部と
を含む、眼科装置。
【請求項2】
前記光学系は、予め設定された照明条件に基づき前記被検眼に照明光を投射する照明光学系を含み、
前記制御部は、少なくとも照明条件が異なる2回以上の撮影を前記被検眼に適用するように前記撮影部の前記制御を行う、
請求項1の眼科装置。
【請求項3】
前記照明条件は、照明光の強度を定める照明強度条件を含み、
前記制御部は、少なくとも照明強度条件が異なる2回以上の撮影を前記被検眼に適用するように前記撮影部の前記制御を行う、
請求項2の眼科装置。
【請求項4】
前記撮影部は、前記光学系を移動する移動機構を更に含み、
前記照明強度条件は、2つ以上の条件を含み、
前記制御部は、前記2つ以上の条件を巡回的に適用するための前記照明光学系の制御と、前記光学系を移動するための前記移動機構の制御とを組み合わせることにより、前記2つ以上の条件に対応する2つ以上の画像からなる画像群を前記撮影部に繰り返し取得させる、
請求項3の眼科装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、前記撮影部により取得された複数の画像群に基づいて複数のハイダイナミックレンジ画像を生成する、
請求項4の眼科装置。
【請求項6】
前記照明条件は、照明光の投射時間を定める照明時間条件を含み、
前記制御部は、少なくとも照明時間条件が異なる2回以上の撮影を前記被検眼に適用するように前記撮影部の前記制御を行う、
請求項2の眼科装置。
【請求項7】
前記撮影部は、前記光学系を移動する移動機構を更に含み、
前記照明時間条件は、2つ以上の条件を含み、
前記制御部は、前記2つ以上の条件を巡回的に適用するための前記照明光学系の制御と、前記光学系を移動するための前記移動機構の制御とを組み合わせることにより、前記2つ以上の条件に対応する2つ以上の画像からなる画像群を前記撮影部に繰り返し取得させる、
請求項6の眼科装置。
【請求項8】
前記画像処理部は、前記撮影部により取得された複数の画像群に基づいて複数のハイダイナミックレンジ画像を生成する、
請求項7の眼科装置。
【請求項9】
前記光学系は、予め設定された露光条件に基づき前記被検眼を撮影する撮影光学系を含み、
前記制御部は、少なくとも露光条件が異なる2回以上の撮影を前記被検眼に適用するように前記撮影部の前記制御を行う、
請求項1の眼科装置。
【請求項10】
前記撮影光学系は、撮像素子を含み、
前記露光条件は、前記撮像素子による露光時間を定める露光時間条件を含み、
前記制御部は、少なくとも露光時間条件が異なる2回以上の撮影を前記被検眼に適用するように前記撮影部の前記制御を行う、
請求項9の眼科装置。
【請求項11】
前記撮影部は、前記光学系を移動する移動機構を更に含み、
前記露光時間条件は、2つ以上の条件を含み、
前記制御部は、前記2つ以上の条件を巡回的に適用するための前記撮影光学系の制御と、前記光学系を移動するための前記移動機構の制御とを組み合わせることにより、前記2つ以上の条件に対応する2つ以上の画像からなる画像群を前記撮影部に繰り返し取得させる、
請求項10の眼科装置。
【請求項12】
前記画像処理部は、前記撮影部により取得された複数の画像群に基づいて複数のハイダイナミックレンジ画像を生成する、
請求項11の眼科装置。
【請求項13】
前記撮影光学系は、2つ以上の撮像素子を含み、
前記制御部は、前記2つ以上の撮像素子を用いて前記2回以上の撮影を行うように前記撮影部の前記制御を行う、
請求項9の眼科装置。
【請求項14】
前記2つ以上の撮像素子は、第1の撮像素子及び第2の撮像素子を含み、
前記制御部は、前記第1の撮像素子による第1の露光時間と前記第2の撮像素子による第2の露光時間とが異なるように前記撮影部の前記制御を行う、
請求項13の眼科装置。
【請求項15】
前記2つ以上の撮像素子は、第1の撮像素子及び第2の撮像素子を含み、
前記制御部は、前記第1の撮像素子による第1の露光期間の少なくとも一部と前記第2の撮像素子による第2の露光期間の少なくとも一部とが重複するように前記撮影部の前記制御を行う、
請求項13の眼科装置。
【請求項16】
前記撮影部は、前記光学系を移動する移動機構を更に含み、
前記制御部は、前記2つ以上の撮像素子を用いた前記2回以上の撮影を前記被検眼に繰り返し適用するための前記撮影光学系の制御と、前記光学系を移動するための前記移動機構の制御とを組み合わせることにより、前記2つ以上の撮像素子を用いた前記2回以上の撮影に対応する2つ以上の画像からなる画像群を前記撮影部に繰り返し取得させる、
請求項13の眼科装置。
【請求項17】
前記画像処理部は、前記撮影部により取得された複数の画像群に基づいて複数のハイダイナミックレンジ画像を生成する、
請求項16の眼科装置。
【請求項18】
前記光学系は、
予め設定された照明条件に基づき前記被検眼に照明光を投射する照明光学系と、
予め設定された露光条件に基づき前記被検眼を撮影する撮影光学系と
を含み、
前記撮影光学系は、第1の撮像素子及び第2の撮像素子を含み、
前記制御部は、
前記第1の撮像素子による第1の露光時間と前記第2の撮像素子による第2の露光時間とが異なり、
前記第1の撮像素子による第1の露光期間の少なくとも一部と前記第2の撮像素子による第2の露光期間の少なくとも一部とが重複し、且つ、
前記照明光学系による前記照明光の投射期間の第1の部分が前記第1の露光期間に重複し且つ前記投射期間の第2の部分が前記第2の露光期間に重複するように、
前記撮影部の前記制御を行う、
請求項1の眼科装置。
【請求項19】
前記撮影部は、前記光学系を移動する移動機構を更に含み、
前記制御部は、前記第1の撮像素子を用いた第1の撮影を前記被検眼に繰り返し適用し且つ前記第2の撮像素子を用いた第2の撮影を前記被検眼に繰り返し適用するための前記撮影光学系の制御と、前記光学系を移動するための前記移動機構の制御とを組み合わせることにより、前記第1の撮影に対応する画像と前記第2の撮影に対応する画像とを含む画像群を前記撮影部に繰り返し取得させる、
請求項18の眼科装置。
【請求項20】
前記画像処理部は、前記撮影部により取得された複数の画像群に基づいて複数のハイダイナミックレンジ画像を生成する、
請求項19の眼科装置。
【請求項21】
前記2つ以上の画像は、第1の画像及び第2の画像を含み、
前記画像処理部は、
前記第1の画像から、所定の画素値条件を満足する第1の画素を特定し、
前記第1の画素に対応する前記第2の画像の第2の画素の画素値に基づいて前記第1の画素の画素値を変更する、
請求項1の眼科装置。
【請求項22】
前記第1の画像は、前記2つ以上の画像のうち相対的に明るい画像であり、
前記第2の画像は、前記2つ以上の画像のうち相対的に暗い画像であり、
前記画像処理部は、前記第1の画像から、第1の閾値以上の輝度値を有する画素を前記第1の画素として特定する、
請求項21の眼科装置。
【請求項23】
前記第1の画像は、前記2つ以上の画像のうち相対的に暗い画像であり、
前記第2の画像は、前記2つ以上の画像のうち相対的に明るい画像であり、
前記画像処理部は、前記第1の画像から、第2の閾値以下の輝度値を有する画素を前記第1の画素として特定する、
請求項21の眼科装置。
【請求項24】
前記2つ以上の画像は、第1の画像及び第2の画像を含み、
前記画像処理部は、
前記第1の画像から、前記被検眼の所定の部位に相当する第1の画像領域を特定し、
前記第2の画像から、前記所定の部位に相当する第2の画像領域を特定し、
前記第1の画像領域の画素値を前記第2の画像領域の画素値に基づいて変更する、
請求項1の眼科装置。
【請求項25】
前記画像処理部は、前記2つ以上の画像にトーンマッピング処理を適用する、
請求項1の眼科装置。
【請求項26】
前記光学系は、
被検眼に照明光を投射する照明光学系と、
前記被検眼を撮影する撮影光学系と
を含み、
前記撮影部は、前記照明光学系及び前記撮影光学系を移動する移動機構を含み、
前記制御部は、前記2回以上の撮影のための前記撮影部の前記制御において、前記被検眼に対する前記照明光の投射時間が前記撮影光学系の露光時間よりも短くなるように、且つ、前記被検眼に対する前記照明光の投射期間の少なくとも一部と前記撮影光学系の露光期間の少なくとも一部とが重複するように、前記照明光学系及び前記撮影光学系の少なくとも一方を制御する、
請求項1の眼科装置。
【請求項27】
シャインプルーフの条件を満足する光学系を含む撮影部と、プロセッサとを含む眼科装置を制御する方法であって、
前記プロセッサを、
撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように前記撮影部の制御を行う制御部、及び、
前記2回以上の撮影により取得された前記被検眼の2つ以上の画像に基づいてハイダイナミックレンジ画像を生成する画像処理部
として機能させる、方法。
【請求項28】
シャインプルーフの条件を満足する光学系を含む撮影部と、プロセッサとを含む眼科装置を動作させるためのプログラムであって、
前記プロセッサを、
撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように前記撮影部の制御を行う制御部、及び、
前記2回以上の撮影により取得された前記被検眼の2つ以上の画像に基づいてハイダイナミックレンジ画像を生成する画像処理部
として機能させる、プログラム。
【請求項29】
シャインプルーフの条件を満足する光学系を含む撮影部と、プロセッサとを含む眼科装置を動作させるためのプログラムが記録された、コンピュータ可読な非一時的記録媒体であって、
前記プログラムが、前記プロセッサを、
撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように前記撮影部の制御を行う制御部、及び、
前記2回以上の撮影により取得された前記被検眼の2つ以上の画像に基づいてハイダイナミックレンジ画像を生成する画像処理部
として機能させる、記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科装置、眼科装置を制御する方法、プログラム、及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科分野において画像診断は重要な位置を占める。眼科画像診断では、各種の眼科装置が用いられる。眼科装置には、スリットランプ顕微鏡、眼底カメラ、走査型レーザー検眼鏡(SLO)、光干渉断層計(OCT)などがある。また、レフラクトメータ、ケラトメータ、眼圧計、スペキュラーマイクロスコープ、ウェーブフロントアナライザ、マイクロペリメータなどの各種の検査装置や測定装置にも、前眼部や眼底を撮影する機能が搭載されている。
【0003】
これら様々な眼科装置のうち最も広く且つ頻繁に使用される装置の1つが、眼科医にとっての聴診器とも呼ばれるスリットランプ顕微鏡である。スリットランプ顕微鏡は、スリット光で被検眼を照明し、照明された断面を側方から顕微鏡で観察したり撮影したりするための眼科装置である(例えば、特許文献1、2を参照)。また、シャインプルーフの条件を満足するように構成された光学系を用いることにより被検眼の3次元領域を高速でスキャンすることが可能なスリットランプ顕微鏡も知られている(例えば、特許文献3を参照)。なお、スリットランプ顕微鏡の他にも、スリット光で対象物をスキャンする撮像方式としてはローリングシャッターカメラなどが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-159073号公報
【特許文献2】特開2016-179004号公報
【特許文献3】特開2019-213733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の1つの目的は、眼科イメージングで得られる画像の品質の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の1つの例示的な態様は、シャインプルーフの条件を満足する光学系を含む撮影部と、撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように前記撮影部の制御を行う制御部と、前記2回以上の撮影により取得された前記被検眼の2つ以上の画像に基づいてハイダイナミックレンジ画像を生成する画像処理部とを含む、眼科装置である。
【0007】
実施形態の他の例示的な態様は、シャインプルーフの条件を満足する光学系を含む撮影部と、プロセッサとを含む眼科装置を制御する方法であって、前記プロセッサを、撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように前記撮影部の制御を行う制御部、及び、前記2回以上の撮影により取得された前記被検眼の2つ以上の画像に基づいてハイダイナミックレンジ画像を生成する画像処理部として機能させる、方法である。
【0008】
実施形態の更に他の例示的な態様は、シャインプルーフの条件を満足する光学系を含む撮影部と、プロセッサとを含む眼科装置を動作させるためのプログラムであって、前記プロセッサを、撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように前記撮影部の制御を行う制御部、及び、前記2回以上の撮影により取得された前記被検眼の2つ以上の画像に基づいてハイダイナミックレンジ画像を生成する画像処理部として機能させる、プログラムである。
【0009】
実施形態の更に他の例示的な態様は、シャインプルーフの条件を満足する光学系を含む撮影部と、プロセッサとを含む眼科装置を動作させるためのプログラムが記録された、コンピュータ可読な非一時的記録媒体であって、前記プログラムが、前記プロセッサを、撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように前記撮影部の制御を行う制御部、及び、前記2回以上の撮影により取得された前記被検眼の2つ以上の画像に基づいてハイダイナミックレンジ画像を生成する画像処理部として機能させる、記録媒体である。
【発明の効果】
【0010】
実施形態によれば、眼科イメージングで得られる画像の品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置の構成を表す概略図である。
【
図2】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理を表すフローチャートである。
【
図3】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置の構成を表す概略図である。
【
図4】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理を表すフローチャートである。
【
図5】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置の構成を表す概略図である。
【
図6】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理を表すフローチャートである。
【
図7A】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理を表すタイミングチャートである。
【
図7B】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理を表すタイミングチャートである。
【
図7C】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理との比較のために示された従来の処理のタイミングチャートである。
【
図8】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置の構成を表す概略図である。
【
図9】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理を表すフローチャートである。
【
図10A】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理を表すタイミングチャートである。
【
図10B】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理を表すタイミングチャートである。
【
図11】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理を表すフローチャートである。
【
図12】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置の構成を表す概略図である。
【
図13】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理を表すフローチャートである。
【
図14】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置の構成を表す概略図である。
【
図15】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理を表すフローチャートである。
【
図16】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理を表すタイミングチャートである。
【
図17】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置の構成を表す概略図である。
【
図18】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置の構成を表す概略図である。
【
図19A】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理を表すタイミングチャートである。
【
図19B】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理を表すタイミングチャートである。
【
図20】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理を表すタイミングチャートである。
【
図21】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理を表すフローチャートである。
【
図22A】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理を表すタイミングチャート、及び当該処理により得られる画像の概略図である。
【
図22B】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理を表すタイミングチャート、及び当該処理により得られる画像の概略図である。
【
図23】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置が実行するハイダイナミックレンジ画像生成を表す概略図である。
【
図24A】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理を表すフローチャートである。
【
図24B】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理を表すフローチャートである。
【
図25】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置が実行する処理を表すタイミングチャート、及び当該処理により得られる画像の概略図である。
【
図26】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置の構成を表す概略図である。
【
図27】実施形態の例示的な態様に係る眼科装置の構成を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態の幾つかの非限定的な例示的態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
本開示に係るいずれかの態様に任意の公知技術を組み合わせることができる。例えば、本明細書で引用する文献に開示されている任意の事項を、本開示に係るいずれかの態様に組み合わせることができる。更に、本開示に関連する技術分野における任意の公知技術を、本開示に係るいずれかの態様に組み合わせることができる。
【0014】
特許文献3(特開2019-213733号公報)に開示されている全ての内容は、参照によって本開示に援用される。また、本開示に関連する技術について本願の出願人により開示された任意の技術事項(特許出願、論文などにおいて開示された事項)を、本開示に係るいずれかの態様に組み合わせることができる。
【0015】
本開示に係る様々な態様のうちのいずれか2つ以上の態様を、少なくとも部分的に組み合わせることが可能である。
【0016】
本開示において説明される要素の機能の少なくとも一部は、回路構成(circuitry)又は処理回路構成(processing circuitry)を用いて実装される。回路構成又は処理回路構成は、開示された機能の少なくとも一部を実行するように構成及び/又はプログラムされた、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、従来の回路構成、及びそれらの任意の組み合わせのいずれかを含む。プロセッサは、トランジスタ及び/又は他の回路構成を含む、処理回路構成又は回路構成とみなされる。本開示において、回路構成、ユニット、手段、又はこれらに類する用語は、開示された機能の少なくとも一部を実行するハードウェア、又は、開示された機能の少なくとも一部を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されたハードウェアであってよく、或いは、記載された機能の少なくとも一部を実行するようにプログラム及び/又は構成された既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが或るタイプの回路構成とみなされ得るプロセッサである場合、回路構成、ユニット、手段、又はこれらに類する用語は、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせであり、このソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサを構成するために使用される。
【0017】
以下の実施形態では、モノクロ画像を扱う場合(モノクロカメラを用いる場合)の様々な態様を説明するが、カラー画像を扱う場合(カラーカメラを用いる場合)においても同様の処理を行うことができることは、当業者であれば理解できるであろう。カラー画像を扱う場合の非限定的な例として、一般的にカラーカメラは3つの色成分画像(R成分画像、G成分画像、B成分画像)を生成するものであることを考慮し、成分画像ごとにハイダイナミックレンジ画像を生成する方法、3つの色成分画像から生成される輝度信号値(Y)を用いてハイダイナミックレンジ画像を生成する方法、カラー画像をモノクロ画像に変換してハイダイナミックレンジ画像を生成する方法、選択された色成分画像のみからハイダイナミックレンジ画像を生成する方法などを採用することが可能である。
【0018】
<実施形態の概要>
本開示に係る実施形態は、シャインプルーフの条件を満足する光学系を用いた眼科イメージングの向上を図るものである。その応用として、本開示に係る実施形態の幾つかの例示的な態様は、シャインプルーフの条件を満足する光学系を移動しつつ画像収集を行う眼科イメージングの向上を図るものである。
【0019】
より具体的に述べると、本開示に係る実施形態は、シャインプルーフの条件を満足する光学系を用いて得られた画像のダイナミックレンジの向上を図るものである。その応用として、本開示に係る実施形態の幾つかの例示的な態様は、シャインプルーフの条件を満足する光学系を移動しつつ収集された一連の画像のそれぞれのダイナミックレンジの向上を図るものである。
【0020】
一般的にダイナミックレンジを向上させることには様々な利点があり、本開示が扱う眼科イメージングにおいては次のような利点がある。
【0021】
光を利用する眼科イメージングにおいて、光反射率が大きく異なる2以上の眼部位を1つの画像に表現することがある。例えば、前眼部イメージングでは、角膜と水晶体とが描出された画像を生成することが往々にしてあるが、角膜と水晶体とでは反射率が大きく異なっており、実際、角膜表面での反射率は、水晶体表面での反射率の約62倍もあることが知られている。したがって、一般的な撮像素子のダイナミックレンジでは、角膜と水晶体とをそれぞれ好適な明るさで表現することができない。
【0022】
このような問題を解決するために本開示に係る実施形態を用いることができる。すなわち、本開示に係る実施形態は、反射率が大きく異なる2以上の眼部位を1つの画像に好適に表現することを1つの目的としている。これにより、眼科イメージングで得られる画像の品質向上を図ることが可能になる。
【0023】
本開示に係る眼科イメージングで得られた広いダイナミックレンジの画像を様々に利用することができる。例えば、本開示に係る眼科イメージングで得られた画像の広いダイナミックレンジの一部(部分レンジ)を選択的に抽出することにより、任意の出力装置(表示装置など)の特性(ダイナミックレンジ範囲など)に応じた画像をその出力装置に提供することが可能になる。
【0024】
眼科イメージングで得られる画像のダイナミックレンジを向上させるために、本開示に係る実施形態は、シャインプルーフの条件を満足する光学系を用いて撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用し、それにより取得された被検眼の2つ以上の画像に基づいてハイダイナミックレンジ画像を生成するように構成される。
【0025】
シャインプルーフの条件を満足する光学系を用いて行われる撮影条件が異なる2回以上の撮影は、任意の撮影態様によって行われてよい。例えば、実施形態に係る2回以上の撮影は、順次的(逐次的)に実行される2つ以上の撮影でもよいし、並行的(同時的)に実行される2つ以上の撮影でもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
【0026】
また、実施形態に係る2回以上の撮影に使用されるカメラ(撮像素子、撮影装置)の個数は任意であってよい。幾つかの例示的な態様では、1つのカメラを用いて順次的に2つ以上の撮影が行われる。また、幾つかの例示的な態様では、2つ以上のカメラを用いて並行的に2つ以上の撮影が行われる。
【0027】
シャインプルーフの条件を満足する光学系は、例えば、特許文献3(特開2019-213733号公報)に開示されたものであってよいが、それに限定されるものではない。シャインプルーフの条件を満足する光学系を用いることで、被検眼の広い範囲にピントを合わせて撮影を行うことが可能となる。例えば、前眼部イメージングであれば、少なくとも角膜前面及び水晶体後面により画成される範囲にピントを合わせて撮影を行うことができ、前眼部の主要な観察対象の全体を高精細に表現することが可能になる。
【0028】
したがって、本開示に係る実施形態により生成されるハイダイナミックレンジ画像は、被検眼の広い範囲が高精細に表現され、且つ、描出されている各部位が好適な明るさで表現されたものとなる。
【0029】
このように、本開示に係る実施形態は、撮影範囲の広さ、撮影範囲全体にわたる高い精細性、及び、部位ごとの明るさの好適性の全てが達成された新規な眼画像を提供することを可能にするものであり、そのために、シャインプルーフの条件を満足する光学系を用いて撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用し、それにより取得された被検眼の2つ以上の画像に基づいてハイダイナミックレンジ画像を生成する、という新規な構成を備えるものである。
【0030】
撮影条件は、シャインプルーフの条件を満足する光学系を用いた撮影において設定される任意の条件であってよい。例えば、撮影条件の種類には、光学系に関する条件(光学系条件)、光学系の移動に関する条件(移動条件)、及び、これら以外の条件がある。
【0031】
光学系条件の種類には、被検眼に照明光を投射するための照明光学系に関する条件(照明条件)、撮像素子を用いて被検眼を撮影するための撮影光学系に関する条件(露光条件)などがある。
【0032】
照明条件の種類には、照明光の強度に関する条件(照明強度条件)、照明光の投射時間に関する条件(照明時間条件)などがある。照明光の投射時間は、被検眼に照明光が投射されている期間(投射期間)の長さである。本開示において、照明光の投射時間を照明時間と呼ぶことがある。
【0033】
照明強度条件の例として、照明光を発する光源に関する条件(例えば、光源制御パルスの高さ)、照明光学系に設けられた減光フィルターに関する条件(例えば、2つ以上の減光フィルターの選択に関する条件、バリアブル減光フィルターの制御に関する条件)などがある。
【0034】
照明時間条件の例として、照明光を発する光源に関する条件(例えば、光源制御パルスの幅)、照明光学系に設けられたシャッターに関する条件(例えば、シャッターの開放時間)などがある。
【0035】
露光条件の種類として露光時間条件がある。露光時間条件は、例えば、撮像素子に関する条件(例えば、撮像素子の露光時間)、撮影光学系に設けられたシャッターに関する条件(例えば、シャッターの開放時間)などがある。露光時間は、撮像素子が光を受けることが可能な期間(露光期間)の長さである。
【0036】
撮影光学系が2つ以上の撮像素子を有する場合、これら撮像素子の露光条件(露光時間、露光期間など)を連係させることができる。
【0037】
移動条件の種類には、光学系の移動範囲(スキャン範囲、スキャン開始位置、スキャン終了位置)、移動距離(スキャン距離)、移動速度(スキャン速度)、移動タイミング(スキャン開始タイミング、スキャン終了タイミングなど)、移動モード(連続的移動、断続的移動(間欠的移動)など)などがある。
【0038】
光学系条件及び移動条件以外の条件には、2つ以上の条件の連係(同期)に関する条件、被検眼に関する条件などがある。
【0039】
2つ以上の条件の連係に関する条件の例として、2つ以上の光学系条件の連係に関する条件、2つ以上の移動条件の連係に関する条件、1つ以上の光学系条件と1つ以上の移動条件との連係に関する条件などがある。
【0040】
被検眼に関する条件の例として、固視に関する条件、造影剤の使用の有無に関する条件、散瞳剤の使用の有無に関する条件、眼の特性に関する条件などがある。この眼の特性は、眼画像の明るさに影響を与えるパラメータや、眼画像の明るさに影響を与える可能性のあるパラメータを含んでいてよく、その例として、瞳孔径、虹彩の色などがある。
【0041】
幾つかの例示的な態様では、シャインプルーフの条件を満足する光学系を用いて行われる撮影条件が異なる2回以上の撮影は、被検眼の実質的に同じ位置に対して適用される。
【0042】
光学系の移動が連続的である場合には、例えば、2回以上の撮影に掛かる時間の長さが光学系の移動速度に対して十分に短くなるように制御を行うことによって、被検眼のほぼ同じ位置が描出された2つ以上の画像を取得することができる。
【0043】
光学系の移動が断続的である場合には、例えば、被検眼の同じ位置に対する2回以上の撮影と、光学系の移動とを交互に行うように制御を行うことによって、被検眼のほぼ同じ位置が描出された2つ以上の画像を取得することができる。
【0044】
これに対し、幾つかの別の例示的な態様では、シャインプルーフの条件を満足する光学系を用いて行われる撮影条件が異なる2回以上の撮影は、被検眼の異なる2つ以上の位置に対して適用されてもよい。例えば、撮影条件が異なる2回以上の撮影として、スキャン方向が異なる2回以上のスキャンを被検眼の3次元領域に適用することができる。1つの具体例は、横方向を長手方向とするスリット光を縦方向に移動させて第1の撮影条件の第1のスキャンを実行し、縦方向を長手方向とするスリット光を横方向に移動させて第2の撮影条件の第2のスキャンを実行し、第1のスキャンで得た第1の3次元画像と第2のスキャンで得た第2の3次元画像とに基づいてハイダイナミックレンジ画像を生成するように構成されてよい。
【0045】
シャインプルーフの条件を満足する光学系を用いて取得された2つ以上の画像からハイダイナミックレンジ画像を生成する処理は、取得された2つ以上の画像の全てに基づきハイダイナミックレンジ画像を生成する処理であってもよいし、取得された2つ以上の画像の一部のみに基づきハイダイナミックレンジ画像を生成する処理であってもよい。
【0046】
本開示のハイダイナミックレンジ画像は、シャインプルーフの条件を満足する光学系を用いて行われた撮影条件が異なる2回以上の撮影で取得された2つ以上の画像(オリジナル画像群)のダイナミックレンジよりも広いダイナミックレンジを有する画像である。換言すると、本開示のハイダイナミックレンジ画像は、オリジナル画像群に含まれる画像よりも拡張(拡大)されたダイナミックレンジを有する画像である。
【0047】
本開示に係る実施形態は、少なくともこのような機能を実現するための制御を行うように構成されていてよい。この制御は、前述したように、照明光学系の制御及び/又は撮影光学系の制御を含んでいてよい。なお、本開示に係る実施形態は、他の機能を実現するための制御を実行可能に構成されてもよい。
【0048】
照明光学系の制御は、任意の方式の制御であってよく、例えば、光源の制御(点灯/消灯)や電子シャッターの制御などの電気的制御でもよいし、機械式シャッターの制御や回転式シャッターの制御などの機械的制御でもよいし、電気的制御と機械的制御との組み合わせでもよい。なお、これらのシャッターは、照明光学系に設けられており、光源から出力された照明光の通過と遮蔽とを切り替えるように(つまり、被検眼に対する照明光の投射と不投射とを切り替えるように)機能する。
【0049】
照明光学系の制御は、被検眼に対して照明光が投射されている状態(投射状態)と投射されていない状態(不投射状態)とを切り替えるための制御に限定されず、被検眼に投射される照明光の強度や光量を変調するための制御であってもよい。
【0050】
なお、投射状態と不投射状態との切り替えは、被検眼に投射される照明光の強度を正値とゼロとに切り替えることに相当する。これに対し、強度変調は、被検眼に投射される照明光の強度を、互いに異なる第1の値と第2の値とに切り替えることに相当する。ここで、第1の値及び第2の値はいずれも非負値であり、第1の値及び第2の値のいずれか一方又は双方は正値である。したがって、投射状態と不投射状態との切り替えは、強度変調の1つの例に相当するものと言える。
【0051】
撮影光学系の制御は、任意の方式の制御であってよく、例えば、撮像素子の制御や電子シャッターの制御などの電気的制御でもよいし、機械式シャッターの制御や回転式シャッターの制御などの機械的制御でもよいし、電気的制御と機械的制御との組み合わせでもよい。
【0052】
実施形態の幾つかの例示的な態様は、シャインプルーフの条件を満足する照明光学系及び撮影光学系を(連続的に又は断続的に)移動しながら複数回の撮影(撮影群)を行うことによって、被検眼の複数の位置(複数の断面)に対応する一連のシャインプルーフ画像(シャインプルーフ画像群)を生成する技術と、この撮影群によって取得されたシャインプルーフ画像群に基づいてハイダイナミックレンジ画像を生成する技術とを組み合わせた構成であってよい。
【0053】
幾つかの例示的な態様は、光学系の移動と撮影群との並行的な組み合わせを撮影条件を逐次に変えながら複数回実行することによって、複数の撮影条件に対応する複数のシャインプルーフ画像群を取得し、更に、取得された複数のシャインプルーフ画像群に基づいて1つ以上のハイダイナミックレンジ画像を生成するように構成されていてよい。本態様では、撮影群に含まれる2つ以上の撮影の対象位置(2つ以上の撮影位置、2つ以上の対象断面)に対応する2つ以上のハイダイナミックレンジ画像を生成することができる。例えば、本態様によれば、光学系の移動と撮影群との並行的な組み合わせによってスキャンされた被検眼のボリューム(3次元領域)を表現するハイダイナミックレンジ画像を生成することが可能である。
【0054】
照明条件及び露光条件の双方が可変である場合において、幾つかの例示的な態様は、照明条件のみを制御することによって複数のシャインプルーフ画像群を収集するように構成されてもよいし、露光条件のみを制御することによって複数のシャインプルーフ画像群を収集するように構成されてもよいし、照明条件及び露光条件の双方を制御することによって複数のシャインプルーフ画像群を収集するように構成されてもよい。
【0055】
より一般に、2つ以上の種類の撮影条件が可変な実施形態において、幾つかの例示的な態様は、これら2つ以上の種類の撮影条件から選択された1つ以上の種類の撮影条件を逐次に変えながら、光学系の移動と撮影群との並行的な組み合わせを複数回実行することによって、異なる複数の撮影条件に対応する複数のシャインプルーフ画像群を取得し、これらシャインプルーフ画像群から1つ以上のハイダイナミックレンジ画像を生成するように構成されていてよい。
【0056】
撮影条件の種類の選択は、例えばユーザー又はコンピュータによって行われてよい。コンピュータによる選択は、所定の情報に基づいて実行される。例えば、コンピュータは、過去の撮影で適用された撮影条件、被検者及び/又は被検眼に関する医療情報(電子カルテなど)、検査やスクリーニングの対象となる疾患、被検者の属性や状態、被検眼の状態などに基づいて撮影条件の種類の選択を行うように構成されてよい。
【0057】
照明条件が可変であり且つ露光条件が固定又はプリセットである場合、実施形態は、照明条件を制御することによって複数のシャインプルーフ画像群を収集するように構成される。2つ以上の種類の照明条件が可変である場合、実施形態は、複数のシャインプルーフ画像群を収集するために制御される照明条件の種類を変更(選択)することができる。
【0058】
逆に、照明条件が固定又はプリセットであり且つ露光条件が可変である場合、実施形態は、露光条件を制御することによって複数のシャインプルーフ画像群を収集するように構成される。2つ以上の種類の露光条件が可変である場合、実施形態は、複数のシャインプルーフ画像群を収集するために制御される露光条件の種類を変更(選択)することができる。
【0059】
前述したように、実施形態において使用される撮像素子の個数は任意であってよい。1つの撮像素子を使用する態様では、撮影条件が異なる2回以上の撮影を順次に被検眼に適用する。一方、2つ以上の撮像素子を使用する態様では、撮影条件が異なる2回以上の撮影を時間的に部分的に並行して被検眼に適用することができる。換言すると、2つ以上の撮像素子を使用する態様では、撮影条件が異なる2回以上の撮影を互いの撮影時間が少なくとも部分的に重複するように被検眼に適用することができる。なお、2つ以上の撮像素子を使用する態様においても、1つの撮像素子を使用する態様と同様に、時間的に部分的に並行して被検眼に適用してもよい。
【0060】
以上に概要を説明した実施形態について幾つかの例示的な態様を説明する。本開示では、眼科装置の例示的な態様、眼科装置を制御する方法の例示的な態様、プログラムの例示的な態様、及び記録媒体の例示的な態様について主に説明するが、実施形態の態様はこれらに限定されるものではない。例えば、医療方法の様々な態様、撮影方法の様々な態様、データ処理方法の様々な態様などが本開示によって提供されることは、当業者であれば理解することができるであろう。
【0061】
<眼科装置>
実施形態に係る眼科装置の幾つかの例示的な態様を提供する。
【0062】
実施形態の1つの態様に係る眼科装置の構成を
図1に示す。本例の眼科装置1000は、撮影部1010と、制御部1020と、画像処理部1030とを含んでいる。
【0063】
撮影部1010は、シャインプルーフの条件を満足する光学系1011を含み、この光学系を用いて被検眼を撮影することによってデジタル画像(シャインプルーフ画像)を生成する。光学系1011は、デジタル画像を生成するための図示しない撮像素子を備えている。シャインプルーフの条件を満足する光学系1011を含む撮影部1010については、その幾つかの非限定的な具体例を後述する。
【0064】
制御部1020は、撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように撮影部1010の制御を行う。制御部1020により実行される制御の下に、撮影部1010は、異なる2つ以上の撮影条件にそれぞれ対応する2つ以上のシャインプルーフ画像を生成する。前述したように、制御部1020により実行される制御の下に撮影部1010によって生成される2つ以上のシャインプルーフ画像は、被検眼の実質的に同じ位置を撮影した画像である。
【0065】
制御部1020は、プロセッサ、記憶装置などのハードウェア要素を含む。記憶装置には、制御プログラム等のコンピュータプログラムが記憶されている。制御部1020の機能は、制御プログラム等のソフトウェアと、プロセッサ等のハードウェアとの協働によって実現される。
【0066】
本態様の撮影条件は、生成される画像の明るさに影響を与える任意の条件(パラメータ)であってよい。なお、本態様の撮影条件としては、例えば、前述した照明条件(例:照明強度、照明時間)や露光条件(例:露光時間、露光期間)などがある。撮影条件が異なる2回以上の撮影を撮影部1010に実行させるための制御については、その幾つかの非限定的な具体例を後述する。
【0067】
このように、制御部1020により実行される制御の下に撮影部1010によって生成される2つ以上のシャインプルーフ画像は、被検眼の実質的に同じ位置を描出した、異なる明るさを有する2つ以上の画像である。
【0068】
画像処理部1030は、制御部1020により実行される制御の下に撮影部1010によって生成された2つ以上のシャインプルーフ画像に基づいてハイダイナミックレンジ画像を生成する。
【0069】
画像処理部1030は、プロセッサ、記憶装置などのハードウェア要素を含む。記憶装置には、画像処理プログラム等のコンピュータプログラムが記憶されている。画像処理部1030の機能は、画像処理プログラム等のソフトウェアと、プロセッサ等のハードウェアとの協働によって実現される。
【0070】
前述したように、本態様のハイダイナミックレンジ画像は、制御部1020により実行される制御の下に撮影部1010によって生成された2つ以上のシャインプルーフ画像(オリジナル画像群)のダイナミックレンジよりも広いダイナミックレンジを有する画像である。
【0071】
オリジナル画像群からハイダイナミックレンジ画像を生成するために画像処理部1030が実行する処理の種類は任意であってよい。画像処理部1030により実行される処理の幾つかの例を以下に説明する。なお、画像処理部1030が実行する処理はこれらの例に限定されない。
【0072】
ハイダイナミックレンジ画像生成の第1の例を説明する。以下の具体例では2つのオリジナル画像が考慮される場合について説明するが、3つ以上のオリジナル画像が考慮される場合についても同様の処理を実行できることは、当業者であれば理解することができるであろう。
【0073】
本例では、オリジナル画像群に含まれる2つのオリジナル画像(第1のオリジナル画像及び第2のオリジナル画像)を考慮する。前述したように、第1のオリジナル画像と第2のオリジナル画像とは被検眼の実質的に同じ位置を描出しており、且つ、第1のオリジナル画像の明るさと第2のオリジナル画像との明るさとは互いに異なっている。
【0074】
まず、画像処理部1030は、第1のオリジナル画像から、予め設定された画素値条件を満足する第1の画素を特定する。
【0075】
更に、画像処理部1030は、第1のオリジナル画像から特定された第1の画素に対応する第2のオリジナル画像の第2の画素の画素値に基づいて、第1のオリジナル画像の第1の画素の画素値を変更する。
【0076】
このように、画像処理部1030は、第1のオリジナル画像から第1の画素を特定する第1の処理と、この第1の画素に対応する第2のオリジナル画像の第2の画素を特定する第2の処理と、この第2の画素の画素値に基づいて第1の画素の画素値を変更する第3の処理とを実行する。
【0077】
第1の処理について、画素値条件は、画素(ピクセル)の値に関する条件であり、本態様では、画像の明るさに関する条件、つまり輝度に関する条件である。画素値条件は、例えば、画素値の閾値、画素値の範囲(レンジ)などであってよい。
【0078】
また、画素値条件は、デフォルト値でもよいし、デフォルト値でなくてもよい。後者の場合、例えば、画像処理部1030が、オリジナル画像群(例えば、第1のオリジナル画像及び第2のオリジナル画像)の輝度に基づいて決定することができる。
【0079】
第1の処理において、画像処理部1030は、例えば、第1のオリジナル画像の各画素を画素値条件と対照することによって、第1のオリジナル画像の画素のうち画素値条件を満足する画素を特定する。本例では、画素値条件を満足する画素の集合を特定画素群と呼び、この特定画素群に含まれる各画素を特定画素と呼ぶ。
【0080】
第2の処理について説明する。前述したように、第1のオリジナル画像と第2のオリジナル画像とは、被検眼の実質的に同じ位置を描出した画像である。
【0081】
第1のオリジナル画像に描出されている被検眼の像と第2のオリジナル画像に描出されている被検眼の像との間に実質的な位置ずれが存在しないと仮定できる場合、又は、実質的な位置ずれが存在しないと判定された場合、第1のオリジナル画像の画素の位置と第2のオリジナル画像の画素の位置との間に自然な対応関係を定義することができる。
【0082】
位置ずれが存在しないと仮定できる場合の例として、第1のオリジナル画像を生成するための撮影と、第2のオリジナル画像を生成するための撮影との間の時間差が十分に小さい(眼球運動の速度や、後述するスキャンにおける光学系の移動速度などと比較して、十分に小さい)場合がある。
【0083】
位置ずれが存在しないと判定された場合の例として、第1のオリジナル画像と第2のオリジナル画像との間の位置ずれ評価(例えば、画像レジストレーションなど、任意の公知の処理)を実行してそのような判定結果が得られた場合がある。
【0084】
上記の自然な対応関係では、被検眼の任意の特徴点について、第1のオリジナル画像における当該特徴点の画素位置(座標)と、第2のオリジナル画像における当該特徴点の画素位置(座標)とが実質的に一致する。換言すると、第1のオリジナル画像と第2のオリジナル画像を互いに重ねたとき、第1のオリジナル画像中の被検眼の像と第2のオリジナル画像中の被検眼の像とが実質的に重なり合う。
【0085】
この自然な対応関係が定義された場合、画像処理部1030は、第1の処理で第1のオリジナル画像から特定された第1の画素(画素値条件を満足する各画素)について、この第1の画素の座標と同じ座標に位置する第2のオリジナル画像の画素を特定し、この特定された画素を第2の画素に設定することができる。
【0086】
これに対し、第1のオリジナル画像に描出されている被検眼の像と第2のオリジナル画像に描出されている被検眼の像との間に実質的な位置ずれが存在する可能性がある場合、又は、実質的な位置ずれが存在すると判定された場合、画像処理部1030は、第1のオリジナル画像と第2のオリジナル画像との間のレジストレーションを実行することができる。この画像レジストレーションは、例えば、被検眼の所定の部位に対応する第1のオリジナル画像中の特徴点を特定し、同じ部位に対応する第2のオリジナル画像中の特徴点を特定し、これら特徴点の間の相対変位を算出することによって実行される。
【0087】
第1のオリジナル画像における画素位置の定義座標系と、第2のオリジナル画像における画素位置の定義座標系との間の対応関係を、画像レジストレーションで算出された相対変位に基づき決定することによって、画像処理部1030は、第1の処理で第1のオリジナル画像から特定された第1の画素(画素値条件を満足する各画素)に対応する第2のオリジナル画像の画素を特定し、この特定された画素を第2の画素に設定することができる。
【0088】
第3の処理は、第1の処理で第1のオリジナル画像から特定された第1の画素の画素値を、第2の処理で第2のオリジナル画像から特定された第2の画素(当該第1の画素に対応する画素)の画素値に基づいて変更するものである。
【0089】
第3の処理において実行される処理の幾つかの例として、次のものがある:第2の画素の画素値で第1の画素の画素値を置換する処理;第2の画素の画素値を変更して第1の画素の画素値を置換する処理;第2の画素を含む第2のオリジナル画像の画素群における画素値に基づいて第1の画素の画素値を決定する処理;第1の画素の画素値と第2の画素の画素値とに基づいて第1の画素の画素値を決定する処理。
【0090】
このような第1~第3の処理によって、第1のオリジナル画像において所定の画素値条件を満足する各画素の画素値を、第1のオリジナル画像とは明るさが異なる第2のオリジナル画像の対応画素の画素値を用いて変更することができ、これらオリジナル画像のダイナミックレンジよりも拡大されたダイナミックレンジを有する画像(本開示で言うハイダイナミックレンジ画像)を生成することができる。
【0091】
前述したように、第1のオリジナル画像及び第2のオリジナル画像は、制御部1020により実行される制御の下に撮影部1010によって生成されたオリジナル画像群の要素である。幾つかの例示的な態様において、第1のオリジナル画像は、このオリジナル画像群の要素である2つ以上のオリジナル画像のうち相対的に明るい画像であり、第2のオリジナル画像は、相対的に暗い画像である。この場合、画像処理部1030は、上記した第1~第3の処理を次のようにして実行するように構成されてよい。
【0092】
まず、第1の処理において、画像処理部1030は、相対的に明るい第1のオリジナル画像から、予め設定された第1の閾値以上の輝度値を有する画素を第1の画素(特定画素)として特定する。この第1の閾値は、輝度値が高すぎる画素(明るすぎる画素、輝度が(ほぼ)飽和している画素など)を特定することができるように設定されてよい。
【0093】
次に、第2の処理において、画像処理部1030は、第1の処理で第1のオリジナル画像から特定された第1の画素に対応する、第2のオリジナル画像(相対的に暗い画像)の第2の画素を特定する。
【0094】
そして、第3の処理において、画像処理部1030は、第2の処理で第2のオリジナル画像から特定された第2の画素の画素値に基づいて、第1の処理で第1のオリジナル画像から特定された第1の画素(この第2の画素に対応する第1のオリジナル画像の画素)の画素値を変更する。
【0095】
このような態様によれば、相対的に明るい第1のオリジナル画像において輝度が高すぎる画素の画素値を、相対的に暗い第2のオリジナル画像における対応画素の画素値に基づき変更することができるので、第1のオリジナル画像の明るすぎる部分の露出が適正化されたハイダイナミックレンジ画像を生成することが可能である。
【0096】
逆に、幾つかの例示的な態様において、第1のオリジナル画像は、オリジナル画像群の要素である2つ以上のオリジナル画像のうち相対的に暗い画像であり、第2のオリジナル画像は、相対的に明るい画像である。この場合、画像処理部1030は、上記した第1~第3の処理を次のようにして実行するように構成されてよい。
【0097】
まず、第1の処理において、画像処理部1030は、相対的に暗い第1のオリジナル画像から、予め設定された第2の閾値以下の輝度値を有する画素を第1の画素(特定画素)として特定する。この第2の閾値は、輝度値が低すぎる画素(暗すぎる画素)を特定することができるように設定されてよい。
【0098】
次に、第2の処理において、画像処理部1030は、第1の処理で第1のオリジナル画像から特定された第1の画素に対応する、第2のオリジナル画像(相対的に明るい画像)の第2の画素を特定する。
【0099】
そして、第3の処理において、画像処理部1030は、第2の処理で第2のオリジナル画像から特定された第2の画素の画素値に基づいて、第1の処理で第1のオリジナル画像から特定された第1の画素(この第2の画素に対応する第1のオリジナル画像の画素)の画素値を変更する。
【0100】
このような態様によれば、相対的に暗い第1のオリジナル画像において輝度が低すぎる画素の画素値を、相対的に明るい第2のオリジナル画像における対応画素の画素値に基づき変更することができるので、第1のオリジナル画像の暗すぎる部分の露出が適正化されたハイダイナミックレンジ画像を生成することが可能である。
【0101】
オリジナル画像の明るすぎる部分の露出を適正化する処理と暗すぎる部分を適正化する処理とを組み合わせることができる。本態様では、オリジナル画像群から、少なくとも3つのオリジナル画像が選択される。以下の具体例では3つのオリジナル画像が考慮される場合について説明するが、4つ以上のオリジナル画像が考慮される場合についても同様の処理を実行できることは、当業者であれば理解することができるであろう。
【0102】
3つのオリジナル画像が選択された場合、これらを明るい順に、高輝度オリジナル画像、中輝度オリジナル画像、及び低輝度オリジナル画像と呼ぶ。ここで、高輝度、中輝度、及び低輝度は、相対的な輝度の大きさを意味する。この場合、画像処理部1030は、上記した第1~第3の処理を次のようにして実行するように構成されてよい。
【0103】
まず、第1の処理において、画像処理部1030は、中輝度オリジナル画像から、予め設定された第1の閾値以上の輝度値を有する画素(高輝度画素と呼ぶ)と、予め設定された第2の閾値以下の輝度値を有する画素(低輝度画素と呼ぶ)とを特定する。
【0104】
次に、第2の処理において、画像処理部1030は、第1の処理で中輝度オリジナル画像から特定された高輝度画素に対応する低輝度オリジナル画像の画素を特定する。更に、画像処理部1030は、第1の処理で中輝度オリジナル画像から特定された低輝度画素に対応する高輝度オリジナル画像の画素を特定する。
【0105】
そして、第3の処理において、画像処理部1030は、第2の処理で低輝度オリジナル画像から特定された画素の画素値に基づいて、第1の処理で中輝度オリジナル画像から特定された高輝度画素の画素値を変更する。更に、画像処理部1030は、第2の処理で高輝度オリジナル画像から特定された画素の画素値に基づいて、第1の処理で中輝度オリジナル画像から特定された低輝度画素の画素値を変更する。
【0106】
このような態様によれば、中輝度オリジナル画像において輝度が高すぎる画素(高輝度画素)の画素値を、中輝度オリジナル画像と比べて相対的に暗い低輝度オリジナル画像における対応画素の画素値に基づき変更するとともに、中輝度オリジナル画像において輝度が低すぎる画素(低輝度画素)の画素値を、中輝度オリジナル画像と比べて相対的に明るい高輝度オリジナル画像における対応画素の画素値に基づき変更することができるので、第1のオリジナル画像の明るすぎる部分及び暗すぎる部分の双方の露出が適正化されたハイダイナミックレンジ画像を生成することが可能である。以上で、ハイダイナミックレンジ画像生成の第1の例の説明を終了する。
【0107】
次に、ハイダイナミックレンジ画像生成の第2の例を説明する。本例は、眼の画像では、明るく描出される部位と暗く描出される部位とが決まっているという事実、すなわち、或る部位は常に明るく描出されるとともに別の或る部位は常に暗く描出されるという事実に着目したものである。例えば、前眼部の画像において、角膜(特に、角膜頂点及びその近傍領域)は明るく描出され、水晶体は暗く描出される。また、眼底の画像において、視神経乳頭は明るく描出され、黄斑は暗く描出される。
【0108】
以下の具体例では2つのオリジナル画像が考慮される場合について説明するが、3つ以上のオリジナル画像が考慮される場合についても同様の処理を実行できることは、当業者であれば理解することができるであろう。
【0109】
オリジナル画像群に含まれる2つのオリジナル画像(第1のオリジナル画像及び第2のオリジナル画像)を考慮する。前述したように、第1のオリジナル画像と第2のオリジナル画像とは被検眼の実質的に同じ位置を描出しており、且つ、第1のオリジナル画像の明るさと第2のオリジナル画像との明るさとは互いに異なっている。
【0110】
まず、画像処理部1030は、第1のオリジナル画像から、被検眼の所定の部位に相当する画像領域(第1の画像領域)を特定する。また、画像処理部1030は、第2のオリジナル画像から、同じ部位に相当する画像領域(第2の画像領域)を特定する。更に、画像処理部1030は、第1のオリジナル画像における第1の画像領域の画素値を、第2のオリジナル画像における第2の画像領域の画素値に基づいて変更する。
【0111】
具体例を説明する。オリジナル画像群に含まれる各オリジナル画像が前眼部画像である場合において、画像処理部1030は、第1のオリジナル画像及び第2のオリジナル画像のそれぞれから、被検眼の角膜に相当する画像領域を特定する。第1のオリジナル画像から特定された画像領域を第1の角膜領域と呼び、第2のオリジナル画像から特定された画像領域を第2の角膜領域と呼ぶ。
【0112】
ここで、第1のオリジナル画像は相対的に明るい画像であり、第2のオリジナル画像は相対的に暗い画像であるとする。
【0113】
画像処理部1030は、第1のオリジナル画像における第1の角膜領域の画素値を、第2のオリジナル画像における第2の角膜領域の画素値に基づいて変更する。
【0114】
本具体例によれば、相対的に明るい第1のオリジナル画像において特に明るく描出されている第1の角膜領域に含まれる画素の画素値を、相対的に暗い第2のオリジナル画像における第2の角膜領域に含まれる画素の画素値に基づき変更することができるので、第1のオリジナル画像における第1の角膜領域の露出が適正化されたハイダイナミックレンジ画像を生成することが可能である。
【0115】
別の具体例を説明する。オリジナル画像群に含まれる各オリジナル画像が前眼部画像である場合において、画像処理部1030は、第1のオリジナル画像及び第2のオリジナル画像のそれぞれから、被検眼の水晶体に相当する画像領域を特定する。第1のオリジナル画像から特定された画像領域を第1の水晶体領域と呼び、第2のオリジナル画像から特定された画像領域を第2の水晶体領域と呼ぶ。
【0116】
ここで、本具体例における第1のオリジナル画像は相対的に暗い画像であり、第2のオリジナル画像は相対的に明るい画像であるとする。
【0117】
画像処理部1030は、第1のオリジナル画像における第1の水晶体領域の画素値を、第2のオリジナル画像における第2の水晶体領域の画素値に基づいて変更する。
【0118】
本具体例によれば、相対的に暗い第1のオリジナル画像において特に暗く描出されている第1の水晶体領域に含まれる画素の画素値を、相対的に明るい第2のオリジナル画像における第2の水晶体領域に含まれる画素の画素値に基づき変更することができるので、第1のオリジナル画像における第1の水晶体領域の露出が適正化されたハイダイナミックレンジ画像を生成することが可能である。以上で、ハイダイナミックレンジ画像生成の第2の例の説明を終了する。
【0119】
次に、ハイダイナミックレンジ画像生成の第3の例を説明する。本例の画像処理部1030は、オリジナル画像群に含まれる2つ以上のオリジナル画像にトーンマッピング処理を適用することによってハイダイナミックレンジ画像を生成するように構成される。
【0120】
一般に、トーンマッピングは、或るダイナミックレンジの画像をより狭いダイナミックレンジのメディアで出力する(例えば、表示装置で表示する、紙に印刷する、など)ために当該画像の画素値分布を新たな画素値分布に変換する技術である。
【0121】
本例の画像処理部1030は、異なる複数の撮影条件で取得された異なる明るさの複数の画像のそれぞれの輝度分布をスケーリングすることによって、出力デバイス(例えば、表示装置、印刷装置など)で表現可能な輝度分布に合わせ込むように構成される。これにより、見かけ上の(表現上の)ハイダイナミックレンジ画像が生成される。以上で、ハイダイナミックレンジ画像生成の第3の例の説明を終了する。
【0122】
ハイダイナミックレンジ画像生成の方法は以上に説明したものに限定されない。幾つかの例示的な態様は、機械学習モデルを利用してハイダイナミックレンジ画像生成を実行するように構成されてよい。この機械学習モデルは、例えば、撮影条件が異なる2回以上の撮影によって取得された画像群と当該画像群から生成されたハイダイナミックレンジ画像との組を複数含んだ訓練データをニューラルネットワーク(例えば、畳み込みニューラルネットワーク)に適用することによって構築される。この機械学習モデルは、2つ以上の眼画像の入力を受けてハイダイナミックレンジ画像を出力するように機能する。
【0123】
別の例において、機械学習モデルは、単一の眼画像とこの眼画像から生成されたハイダイナミックレンジ画像との組を複数含んだ訓練データをニューラルネットワーク(例えば、畳み込みニューラルネットワーク)に適用することによって構築されてよい。この機械学習モデルは、1つの眼画像の入力を受けてハイダイナミックレンジ画像を出力するように機能する。
【0124】
【0125】
まず、眼科装置1000は、制御部1020により撮影部1010を制御することによって、撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用する(S1)。これにより、2つ以上の撮影条件にそれぞれ対応する2つ以上のシャインプルーフ画像からなるオリジナル画像群が得られる。
【0126】
更に、眼科装置1000は、画像処理部1030により、ステップS1で取得されたオリジナル画像群に基づいて、オリジナル画像のダイナミックレンジよりも拡大されたダイナミックレンジを有するハイダイナミックレンジ画像を生成する(S2)。
【0127】
眼科装置1000は、ステップS2で生成されたハイダイナミックレンジ画像を出力する。例えば、眼科装置1000は、ハイダイナミックレンジ画像を表示装置に提供すること、別のコンピュータに送信すること、記憶装置に保存すること、記録媒体に記録すること、及び、印刷装置に提供することのうちのいずれかの出力処理を実行するように構成されていてよい。
【0128】
このような眼科装置1000により生成される画像は、シャインプルーフ画像としての広範囲にわたる高い精細性と、ハイダイナミックレンジ画像としての全体的な明るさの適正性との双方を具備するという、特有の優れた品質を有する画像である。以上で、本態様に係る眼科装置1000の説明を終了する。
【0129】
実施形態の1つの態様に係る眼科装置の構成を
図3に示す。上記の眼科装置1000と同様に、本例の眼科装置1100は、撮影部1010と、制御部1020と、画像処理部1030とを含んでおり、更に、撮影部1010は光学系1011を含んでいる。
【0130】
本態様の光学系1011は、照明光学系1012を含んでいる。照明光学系1012は、被検眼に照明光を投射するように構成されている。照明光学系1012は、予め設定された照明条件に基づく制御部1020による制御の下に動作する。
【0131】
上記の眼科装置1000の制御部1020と同様に、本態様の制御部1020は、撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように撮影部1010の制御を行う。本態様の撮影条件は、少なくとも照明光学系1012に関する条件(照明条件)を含んでいる。よって、本態様の制御部1020は、少なくとも照明条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように撮影部1010(少なくとも照明光学系1012)の制御を実行するものである。
【0132】
【0133】
まず、眼科装置1100は、制御部1020により撮影部1010を制御することによって、少なくとも照明条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用する(S11)。これにより、(2つ以上の照明条件を少なくとも含む)2つ以上の撮影条件にそれぞれ対応する2つ以上のシャインプルーフ画像からなるオリジナル画像群が得られる。
【0134】
更に、眼科装置1100は、画像処理部1030により、ステップS11で取得されたオリジナル画像群に基づいて、オリジナル画像のダイナミックレンジよりも拡大されたダイナミックレンジを有するハイダイナミックレンジ画像を生成する(S12)。ステップS12で生成される画像は、シャインプルーフ画像としての広範囲にわたる高い精細性と、ハイダイナミックレンジ画像としての全体的な明るさの適正性との双方を備えている。
【0135】
幾つかの例示的な態様において、照明条件は、照明光の強度を定める照明強度条件を含んでいてよい。この場合、制御部1020は、少なくとも照明強度条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように撮影部1010(少なくとも照明光学系1012)の制御を行うように構成されてよい。照明強度条件に関する事項(照明強度条件の種類、照明強度条件を変更するための構成など)については前述した。照明強度条件が用いられる例示的な態様については後述する。
【0136】
幾つかの例示的な態様において、照明条件は、照明光の投射時間を定める照明時間条件を含んでいてよい。この場合、制御部1020は、少なくとも照明時間条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように撮影部1010(少なくとも照明光学系1012)の制御を行うように構成されてよい。照明時間条件に関する事項(照明時間条件の種類、照明時間条件を変更するための構成など)については前述した。照明時間条件が用いられる例示的な態様については後述する。以上で、本態様に係る眼科装置1100の説明を終了する。
【0137】
実施形態の1つの態様に係る眼科装置の構成を
図5に示す。本態様は、照明強度条件が用いられる態様の例である。上記の眼科装置1100と同様に、本例の眼科装置1200は、撮影部1010と制御部1020と画像処理部1030とを含み、撮影部1010は光学系1011を含み、光学系1011は照明光学系1012を含んでいる。
【0138】
本態様の撮影部1010は、移動機構1019を備えている。移動機構1019は、光学系1011を移動するように構成されている。なお、移動機構1019は、光学系1011の移動と同等の機能(光学系1011の移動と同じ作用)を有する機構を含んでいてもよい。そのような機構の例として、照明光(スリット光)を偏向することによって照明位置を移動する機構(照明スキャナー、可動照明ミラー)、被検眼から撮影部1010(図示しない撮像素子)に向かう光を偏向することによって撮影位置を移動する機構(撮影スキャナー、可動撮影ミラー)などがある。
【0139】
上記の眼科装置1000の制御部1020と同様に、本態様の制御部1020は、撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように撮影部1010の制御を行う。本態様の撮影条件は少なくとも照明条件を含み、更に、本態様の照明条件は少なくとも照明強度条件を含んでいる。よって、本態様の制御部1020は、少なくとも照明強度条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように撮影部1010(少なくとも照明光学系1012)の制御を実行する。
【0140】
本態様の照明強度条件は、2つ以上の条件を含んでいる。すなわち、本態様の照明強度条件は、異なる複数の照明強度に対応する2つ以上の条件を含んでいる。照明強度条件に含まれる2つ以上の条件の具体例として、後述する
図7A及び
図7Bに示す制御態様では、相対的に高い強度を示す条件(マル1)と、相対的に低い強度を示す条件(マル2)とが設けられている。
【0141】
本態様の制御部1020は、照明強度条件に含まれる2つ以上の条件を巡回的に適用するための照明光学系1012の制御(照明制御と呼ぶ)と、光学系1011を移動するための移動機構1019の制御(移動制御と呼ぶ)とを組み合わせることにより、照明強度条件に含まれる2つ以上の条件にそれぞれ対応する2つ以上の画像からなる画像群を撮影部1010に繰り返し取得させるように構成されている。すなわち、制御部1020は、照明制御と移動制御とを実行することにより複数の画像群を取得するように構成されており、複数の画像群のそれぞれは、照明強度条件に含まれる2つ以上の条件にそれぞれ対応する2つ以上の画像を含んでいる。
【0142】
照明制御について説明する。照明強度条件に含まれるK個の条件を、第1の条件、第2の条件、・・・、及び、第Kの条件とする。ここで、Kは2以上の整数である。第1~第Kの条件は、この順番で順序付けられているものとする。第1~第Kの条件をこの順序で適用することを、一連の条件適用と呼ぶ。この一連の条件適用を照明光学系1012に反復的に実行させるための制御が照明制御である。
【0143】
照明制御の具体例として、後述する
図7A及び
図7Bに示す制御態様では、相対的に高い強度を示す条件(マル1)と、相対的に低い強度を示す条件(マル2)とからなる一連の条件適用を、繰り返し実行している。なお、照明強度条件に2つの条件が含まれている場合の照明制御(巡回的な適用)は、これら2つの条件の交互的な適用である。
【0144】
第1~第Kの条件の適用モードは巡回的適用に限定されず、第1~第Kの条件をその順序を変えながら反復的に適用してもよい。また、第1~第Kの条件の反復的な適用において、K個の条件の全てを各々の反復において適用する必要はない。
【0145】
移動制御について説明する。移動制御は、光学系1011により撮影される被検眼の位置を変えるための制御である。移動制御は、撮影部1010が被検眼の複数の位置の画像を取得することを可能にする。また、移動制御は、光学系1011がシャインプルーフの条件を満足している状態を維持したまま光学系1011を移動させる。これにより、広い範囲にピントの合った複数の画像を収集することができる。
【0146】
このように、本態様では、制御部1020による照明制御及び移動制御の下に、撮影部1010が被検眼のスキャン(複数の位置に対する撮影)を行って複数のシャインプルーフ画像を収集する。換言すると、本態様の撮影部1010は、照明制御にしたがって照明強度条件を巡回的に変化させながら、移動制御にしたがってスキャン位置(照明光の投射位置及び撮影位置)を変えることによって、一連のシャインプルーフ画像を収集する。
【0147】
本態様の画像処理部1030は、照明制御と移動制御との組み合わせにより取得された複数の画像群に基づいて複数のハイダイナミックレンジ画像を生成することができる。前述したように、照明強度条件に含まれる条件の個数はK個であるとする(Kは2以上の整数)。照明強度条件に含まれる各条件をC(k)で表す(k=1、2、・・・、K)。また、移動制御によるスキャン位置の個数をL個とする(Lは2以上の整数)。各スキャン位置をP(l)で表す(l=1、2、・・・、L)。
【0148】
本態様では、各スキャン位置P(l)においてK個の画像が得られる。スキャン位置P(l)と第kの条件C(k)とに対応する画像をG(P(l)、C(k))で表す。また、スキャン位置P(l)に対応するK個の画像G(P(l)、C(1))、G(P(l)、C(2))、・・・、G(P(l)、C(K))を、それぞれ、第1の条件画像、第2の条件画像、・・・、第Kの条件画像と呼ぶ。
【0149】
画像処理部1030は、各スキャン位置P(l)に対応するK個の条件画像G(P(l)、C(1))~G(P(l)、C(K))に基づいて、当該スキャン位置P(l)におけるハイダイナミックレンジ画像H(P(l))を生成する。これにより、L個のスキャン位置P(1)~P(L)にそれぞれ対応するL個のハイダイナミックレンジ画像H(P(1))~H(P(L))が得られる。
【0150】
画像処理部1030は、L個のハイダイナミックレンジ画像H(P(1))~H(P(L))に基づいて、被検眼のボリューム(3次元領域)を表現するハイダイナミックレンジ画像を生成することができる。
【0151】
【0152】
まず、眼科装置1200の撮影部1010は、制御部1020による照明制御及び移動制御によって被検眼のスキャンを開始する(S21)。被検眼のスキャンでは、まず、照明強度条件のK個の条件(第1~第Kの条件)での撮影が第1のスキャン位置P(1)において行われる(S22)。これにより、第1のスキャン位置P(1)に対応する第1~第Kの条件画像G(P(1)、C(1))~G(P(1)、C(K))が得られる。眼科装置1200は、第1~第Kの条件画像G(P(1)、C(1))~G(P(1)、C(K))を第1のスキャン位置P(1)に対応付けて保存する(S23)。例えば、条件画像の保存処理は制御部1020により実行され、条件画像の保存先は制御部1020内の記憶装置(前述)である。
【0153】
ステップS22及びS23は、スキャンが終了するまで繰り返し実行される(S24)。スキャンが終了していない場合(S24:No)、移動制御によって次のスキャン位置での撮影に移行する(S25)。スキャンが終了したらステップS26に移行する(S24:Yes)。
【0154】
これにより、ステップS22及びS23がL個のスキャン位置P(1)~P(L)のそれぞれにおいて実行され、各スキャン位置P(l)に対応するK個の条件画像G(P(l)、C(1))~G(P(l)、C(K))が取得され、保存される。
【0155】
画像処理部1030は、各スキャン位置P(l)に対応するK個の条件画像G(P(l)、C(1))~G(P(l)、C(K))に基づいて、当該スキャン位置P(l)におけるハイダイナミックレンジ画像H(P(l))を生成する(S26)。これにより、L個のスキャン位置P(1)~P(L)にそれぞれ対応するL個のハイダイナミックレンジ画像H(P(1))~H(P(L))が得られる。
【0156】
ステップS26で生成される各画像は、シャインプルーフ画像としての広範囲にわたる高い精細性と、ハイダイナミックレンジ画像としての全体的な明るさの適正性との双方を備えている。更に、本態様では、このような高品質な画像を被検眼の複数の位置について取得することができる。
【0157】
幾つかの例示的な態様では、このような高品質な画像を被検眼の3次元領域にわたって取得することができることに加え、被検眼のボリューム(3次元領域)を表現するハイダイナミックレンジ画像を生成することも可能である。
【0158】
照明制御及び移動制御によるスキャンの2つの例を
図7A及び
図7Bに示す。また、
図7Cは、これらの例との比較のための従来のスキャンを示す。
【0159】
図7Cに示す従来のスキャンは、光源の発光(照明光の出力、被検眼に対する照明光の投射)と、カメラの露光(撮影)と、スキャン位置(移動される光学系1011の位置)との連係的な制御(同期制御)によって実現されたものである。
【0160】
より具体的には、この従来のスキャンは、照明光の連続的な発光と、カメラによる反復的な撮影(露光)と、スキャン開始位置からスキャン終了位置までの光学系1011の連続的な移動とを組み合わせたものである。カメラの反復的な露光は、露光と電荷転送(及び露光待機)とを交互に繰り返すことによって行われる。
【0161】
これに対し、
図7Aに示す本態様のスキャンでは、カメラの露光及びスキャン位置の移動については
図7Cに示す従来のスキャンと同じ要領で実行されるが、光源の発光については、照明光を連続発光する
図7Cに示す従来のスキャンと異なり、照明光を断続的に出力(パルス発光)している。
【0162】
更に、
図7Aに示す本態様のスキャンでは、
図7Cに示す従来のスキャンでは実行されていない照明強度条件の切り替え制御が行われている。ここで、照明強度条件「マル1」及び「マル2」は、それぞれ、前述した条件C(1)及びC(2)に相当する。すなわち、
図7Aの例では、照明強度条件は2つの条件C(1)及びC(2)を含んでおり、この2つの条件C(1)及びC(2)を巡回的に(つまり、交互に)適用している。なお、条件C(1)は相対的に高い強度を示す照明強度条件であり、条件C(2)は相対的に低い強度を示す照明強度条件である。
【0163】
図7Aのスキャンでは、照明光の発光(投射)のシーケンス(時系列に並ぶ複数回の発光)と、カメラの露光のシーケンス(時系列に並ぶ複数回の露光)とが、互いに同期されている。照明光のシーケンスにおけるそれぞれの発光の期間が投射期間に相当し、その長さが投射時間に相当する。
【0164】
同様に、露光のシーケンスにおけるそれぞれの露光の期間が露光期間に相当し、その長さが露光時間に相当する。投射時間は一定でも非一定でもよい。露光時間は一定でも非一定でもよい。
【0165】
図7Aのスキャンでは、露光のシーケンスにおける各露光期間について、その露光期間の一部の期間と1つの投射期間とが一致している。すなわち、露光のシーケンスにおける各露光期間について、その露光期間の長さ(露光時間)よりも投射期間の長さ(投射時間)が短くなっており、且つ、この露光期間の一部とこの投射期間の全体とが重複している。
【0166】
これにより、露光のシーケンスにおける各露光期間において、その露光期間よりも短い投射期間にのみ実質的に露光(撮像素子による受光、電荷蓄積)が行われるため、露光中のスキャン位置の移動や眼球運動に起因する像のぼやけを、従来の眼科イメージング技術よりも低減することができる。したがって、従来の眼科イメージング技術よりも高い品質の画像を提供することが可能になる。
【0167】
また、従来の眼科画像解析技術よりも高い品質で画像解析(例えば、角膜検出、細胞検出など)を行うことが可能になる。しかも、被検眼に照明光が投射されている時間を短くすることができるため、
図7Cのように照明光を連続的に投射する場合と比較して、被検者に与える負担を軽減することが可能になる。
【0168】
また、
図7Aのスキャンでは、スキャン開始位置からスキャン終了位置まで光学系1011を連続的に移動しており、光学系1011の急発進及び急停止を繰り返すことがないため、それに起因する振動がスキャン中に発生することがなく、撮影品質に悪影響を与えることもない。
【0169】
一方、
図7Bに示す本態様の別のスキャンでは、スキャン開始位置からスキャン終了位置まで光学系1011を断続的に移動していること以外は、
図7Aのスキャンと同じである。したがって、
図7Bのスキャンによれば、光学系1011の急発進及び急停止に起因する振動の問題を除いて、
図7Aのスキャンと同様の効果が得られる。なお、眼科装置1200の構造や機構を工夫することによって、光学系1011の急発進及び急停止に起因する振動の問題を軽減又は解消することができる。
【0170】
実施形態の1つの態様に係る眼科装置の構成を
図8に示す。本態様は、照明時間条件が用いられる態様の例である。上記の眼科装置1200と同様に、本例の眼科装置1300は、撮影部1010と制御部1020と画像処理部1030とを含み、撮影部1010は光学系1011と移動機構1019とを含み、光学系1011は照明光学系1012を含んでいる。
【0171】
上記の眼科装置1000の制御部1020と同様に、本態様の制御部1020は、撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように撮影部1010の制御を行う。本態様の撮影条件は少なくとも照明条件を含み、更に、本態様の照明条件は少なくとも照明時間条件を含んでいる。よって、本態様の制御部1020は、少なくとも照明時間条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように撮影部1010(少なくとも照明光学系1012)の制御を実行する。
【0172】
本態様の照明時間条件は、2つ以上の条件を含んでいる。すなわち、本態様の照明時間条件は、異なる複数の照明時間に対応する2つ以上の条件を含んでいる。照明時間条件に含まれる2つ以上の条件の具体例として、後述する
図10A及び
図10Bに示す制御態様では、相対的に短い照明時間を示す条件(マル1)と、相対的に長い照明時間を示す条件(マル2)とが設けられている。
【0173】
本態様の制御部1020は、照明時間条件に含まれる2つ以上の条件を巡回的に適用するための照明光学系1012の制御(照明制御と呼ぶ)と、光学系1011を移動するための移動機構1019の制御(移動制御と呼ぶ)とを組み合わせることにより、照明時間条件に含まれる2つ以上の条件にそれぞれ対応する2つ以上の画像からなる画像群を撮影部1010に繰り返し取得させるように構成されている。
【0174】
すなわち、制御部1020は、照明制御と移動制御とを実行することにより複数の画像群を取得するように構成されており、複数の画像群のそれぞれは、照明時間条件に含まれる2つ以上の条件にそれぞれ対応する2つ以上の画像を含んでいる。
【0175】
照明制御について説明する。照明時間条件に含まれるM個の条件を、第1の条件、第2の条件、・・・、及び、第Mの条件とする。ここで、Mは2以上の整数である。第1~第Mの条件は、この順番で順序付けられているものとする。第1~第Mの条件をこの順序で適用することを、一連の条件適用と呼ぶ。この一連の条件適用を照明光学系1012に反復的に実行させるための制御が照明制御である。
【0176】
照明制御の具体例として、後述する
図10A及び
図10Bに示す制御態様では、相対的に短い照明時間を示す条件(マル1)と、相対的に長い照明時間を示す条件(マル2)とからなる一連の条件適用を、繰り返し実行している。なお、照明時間条件に2つの条件が含まれている場合の照明制御(巡回的な適用)は、これら2つの条件の交互的な適用である。
【0177】
第1~第Mの条件の適用モードは巡回的適用に限定されず、第1~第Mの条件をその順序を変えながら反復的に適用してもよい。また、第1~第Mの条件の反復的な適用において、M個の条件の全てを各々の反復において適用する必要はない。
【0178】
移動制御について説明する。移動制御は、光学系1011により撮影される被検眼の位置を変えるための制御である。移動制御は、撮影部1010が被検眼の複数の位置の画像を取得することを可能にする。また、移動制御は、光学系1011がシャインプルーフの条件を満足している状態を維持したまま光学系1011を移動させる。これにより、広い範囲にピントの合った複数の画像を収集することができる。
【0179】
このように、本態様では、制御部1020による照明制御及び移動制御の下に、撮影部1010が被検眼のスキャン(複数の位置に対する撮影)を行って複数のシャインプルーフ画像を収集する。換言すると、本態様の撮影部1010は、照明制御にしたがって照明時間条件を巡回的に変化させながら、移動制御にしたがってスキャン位置(照明光の投射位置及び撮影位置)を変えることによって、一連のシャインプルーフ画像を収集する。
【0180】
本態様の画像処理部1030は、照明制御と移動制御との組み合わせにより取得された複数の画像群に基づいて複数のハイダイナミックレンジ画像を生成することができる。
【0181】
前述したように、照明時間条件に含まれる条件の個数はM個であるとする(Mは2以上の整数)。照明時間条件に含まれる各条件をC(m)で表す(m=1、2、・・・、M)。また、移動制御によるスキャン位置の個数をN個とする(Nは2以上の整数)。各スキャン位置をP(n)で表す(n=1、2、・・・、N)。
【0182】
本態様では、各スキャン位置P(n)においてM個の画像が得られる。スキャン位置P(n)と第mの条件C(m)とに対応する画像をG(P(n)、C(m))で表す。また、スキャン位置P(n)に対応するM個の画像G(P(n)、C(1))、G(P(n)、C(2))、・・・、G(P(n)、C(M))を、それぞれ、第1の条件画像、第2の条件画像、・・・、第Mの条件画像と呼ぶ。
【0183】
画像処理部1030は、各スキャン位置P(n)に対応するM個の条件画像G(P(n)、C(1))~G(P(n)、C(M))に基づいて、当該スキャン位置P(n)におけるハイダイナミックレンジ画像H(P(n))を生成する。これにより、N個のスキャン位置P(1)~P(N)にそれぞれ対応するN個のハイダイナミックレンジ画像H(P(1))~H(P(N))が得られる。
【0184】
画像処理部1030は、N個のハイダイナミックレンジ画像H(P(1))~H(P(N))に基づいて、被検眼のボリューム(3次元領域)を表現するハイダイナミックレンジ画像を生成することができる。
【0185】
【0186】
まず、眼科装置1300の撮影部1010は、制御部1020による照明制御及び移動制御によって被検眼のスキャンを開始する(S31)。
【0187】
被検眼のスキャンでは、まず、照明時間条件のM個の条件(第1~第Mの条件)での撮影が第1のスキャン位置P(1)において行われる(S32)。これにより、第1のスキャン位置P(1)に対応する第1~第Mの条件画像G(P(1)、C(1))~G(P(1)、C(M))が得られる。
【0188】
眼科装置1300は、第1~第Mの条件画像G(P(1)、C(1))~G(P(1)、C(M))を第1のスキャン位置P(1)に対応付けて保存する(S33)。
【0189】
ステップS32及びS33は、スキャンが終了するまで繰り返し実行される(S34)。スキャンが終了していない場合(S34:No)、移動制御によって次のスキャン位置での撮影に移行する(S35)。スキャンが終了したらステップS36に移行する(S34:Yes)。
【0190】
これにより、ステップS32及びS33がN個のスキャン位置P(1)~P(N)のそれぞれにおいて実行され、各スキャン位置P(n)に対応するM個の条件画像G(P(n)、C(1))~G(P(n)、C(K))が取得され、保存される。
【0191】
画像処理部1030は、各スキャン位置P(n)に対応するM個の条件画像G(P(n)、C(1))~G(P(n)、C(M))に基づいて、当該スキャン位置P(n)におけるハイダイナミックレンジ画像H(P(n))を生成する(S36)。これにより、N個のスキャン位置P(1)~P(N)にそれぞれ対応するN個のハイダイナミックレンジ画像H(P(1))~H(P(N))が得られる。
【0192】
ステップS36で生成される各画像は、シャインプルーフ画像としての広範囲にわたる高い精細性と、ハイダイナミックレンジ画像としての全体的な明るさの適正性との双方を備えている。更に、本態様では、このような高品質な画像を被検眼の複数の位置について取得することができる。
【0193】
幾つかの例示的な態様では、このような高品質な画像を被検眼の3次元領域にわたって取得することができることに加え、被検眼のボリューム(3次元領域)を表現するハイダイナミックレンジ画像を生成することも可能である。
【0194】
本態様の照明制御及び移動制御によるスキャンの2つの例を
図10A及び
図10Bに示す。
【0195】
図10Aに示す本態様のスキャンにおいては、カメラの露光及びスキャン位置の移動は前述した
図7Cに示した従来のスキャンと同じ要領で実行されるが、光源の発光については、照明光を連続発光する
図7Cに示す従来のスキャンと異なり、照明光を断続的に出力(パルス発光)している。
【0196】
更に、
図10Aに示す本態様のスキャンでは、
図7Cに示した従来のスキャンでは実行されていない照明時間条件の切り替え制御が行われている。ここで、照明時間条件「マル1」及び「マル2」は、それぞれ、前述した条件C(1)及びC(2)に相当する。すなわち、
図10Aの例では、照明時間条件は2つの条件C(1)及びC(2)を含んでおり、この2つの条件C(1)及びC(2)を巡回的に(つまり、交互に)適用している。なお、条件C(1)は相対的に短い時間を示す照明時間条件であり、条件C(2)は相対的に長い時間を示す照明時間条件である。
【0197】
図10Aのスキャンでは、照明光の発光(投射)のシーケンス(時系列に並ぶ複数回の発光)と、カメラの露光のシーケンス(時系列に並ぶ複数回の露光)とが、互いに同期されている。照明光のシーケンスにおけるそれぞれの発光の期間が投射期間に相当し、その長さが投射時間(照明時間)に相当する。
【0198】
同様に、露光のシーケンスにおけるそれぞれの露光の期間が露光期間に相当し、その長さが露光時間に相当する。本態様では、投射時間(照明時間)が非一定である。露光時間は一定でも非一定でもよい。
【0199】
図10Aのスキャンでは、露光のシーケンスにおける各露光期間について、その露光期間の一部の期間と1つの投射期間とが一致している。すなわち、露光のシーケンスにおける各露光期間について、その露光期間の長さ(露光時間)よりも投射期間の長さ(投射時間、照明時間)が短くなっており、且つ、この露光期間の一部とこの投射期間の全体とが重複している。これにより、露光のシーケンスにおける各露光期間において、その露光期間よりも短い投射期間にのみ実質的に露光(撮像素子による受光、電荷蓄積)が行われるため、露光中のスキャン位置の移動や眼球運動に起因する像のぼやけを、従来の眼科イメージング技術よりも低減することができる。したがって、従来の眼科イメージング技術よりも高い品質の画像を提供することが可能になる。
【0200】
また、従来の眼科画像解析技術よりも高い品質で画像解析(例えば、角膜検出、細胞検出など)を行うことが可能になる。しかも、被検眼に照明光が投射されている時間を短くすることができるため、
図7Cのように照明光を連続的に投射する場合と比較して、被検者に与える負担を軽減することが可能になる。
【0201】
また、
図10Aのスキャンでは、スキャン開始位置からスキャン終了位置まで光学系1011を連続的に移動しており、光学系1011の急発進及び急停止を繰り返すことがないため、それに起因する振動がスキャン中に発生することがなく、撮影品質に悪影響を与えることもない。
【0202】
一方、
図10Bに示す本態様の別のスキャンでは、スキャン開始位置からスキャン終了位置まで光学系1011を断続的に移動していること以外は、
図10Aのスキャンと同じである。したがって、
図10Bのスキャンによれば、光学系1011の急発進及び急停止に起因する振動の問題を除いて、
図10Aのスキャンと同様の効果が得られる。なお、眼科装置1300の構造や機構を工夫することによって、光学系1011の急発進及び急停止に起因する振動の問題を軽減又は解消することができる。
【0203】
幾つかの例示的な態様において、照明条件は、照明強度条件及び照明時間条件の双方を含んでいてもよい。本態様の眼科装置は、照明強度条件と照明時間条件とを組み合わせて照明条件を切り替えつつ2回以上の撮影を被検眼に適用するように構成される。このような本態様の眼科装置の構成や動作内容については、
図5~
図10B及びこれら図面に基づく上記説明などから、当業者であれば理解することができるであろう。これら以外の条件を照明条件が含んでいる場合についても同様である。
【0204】
図5~
図7Bに示す態様及び
図8~
図10Bに示す態様では、2つ以上の条件に対応する2つ以上の画像群の収集を1回のスキャンで行っている。すなわち、
図5~
図7Bに示す態様及び
図8~
図10Bに示す態様では、スキャン開始位置からスキャン終了位置までの光学系1011の移動を1回だけ行っている間に、2つ以上の条件に対応する2つ以上の画像群を収集している。
【0205】
しかしながら、2つ以上の条件に対応する2つ以上の画像群を収集するためのスキャンの態様はこれに限定されない。次に説明する
図11に示す態様では、2つ以上の条件に対応する2つ以上の画像群を収集するために2回以上のスキャンを実行する。
【0206】
なお、
図11に示す態様では照明時間条件が2つ以上の条件を含む場合を採用しているが、照明強度条件が2つ以上の条件を含む場合、別の種類の照明条件が2つ以上の条件を含む場合、照明条件以外の種類の撮影条件が2つ以上の条件を含む場合などにおいても同様である。
【0207】
図11に示す態様について説明する。
図8~
図10Bに示す態様で用いられた用語や符号を適宜準用する。まず、照明制御及び移動制御によって被検眼のスキャンが開始される(S41)。
【0208】
スキャンが開始されると、照明時間条件のM個の条件(第1~第Mの条件)のうちの第1の条件C(1)でのスキャンが被検眼に適用される(S42)。このスキャンは、照明時間条件を第1の条件C(1)に固定した状態でスキャン開始位置からスキャン終了位置まで光学系1011を移動しつつ複数回(N回)の撮影を行うものである。これにより、第1の条件C(1)について、N個のスキャン位置P(1)~P(N)に対応するN個の画像G(P(1)、C(1))~G(P(N)、C(1))が得られる。第1の条件C(1)に対応するN個の画像G(P(1)、C(1))~G(P(N)、C(1))を第1の画像群と呼ぶ。
【0209】
第1の条件C(1)でのスキャンが完了したら、次の第2の条件C(2)でのスキャンがステップS42と同じ要領で行われる(S43)。
【0210】
このようなスキャンが、M個の条件C(1)~C(M)のそれぞれについて実行される(S44)。或る条件でのスキャンがまだ行われていない場合(S44:No)、次の条件でのスキャンに移行する(S45)。全ての条件でのスキャンが終了したらステップS46に移行する(S44:Yes)。
【0211】
これにより、M個の条件C(1)~C(M)にそれぞれ対応するM個の画像群が得られる。第mの条件C(m)に対応する第mの画像群は、N個のスキャン位置P(1)~P(N)にそれぞれ対応するN個の画像G(P(1)、C(m))~G(P(N)、C(m))を含んでいる。
【0212】
全ての条件でのスキャンが終了したら(S44:Yes)、画像処理部1030は、第1~第Mの画像群の間の位置合わせ(レジストレーション)を行う(S46)。このレジストレーションは、同じスキャン位置P(n)に対応するM個の画像G(P(n)、C1))~G(P(n)、C(M))の位置合わせをするものである。
【0213】
このレジストレーションに使用される手法は任意であってよく、例えば、各スキャンにおける制御内容(移動制御の内容、照明制御の内容、撮影制御の内容など)、スキャンとは別に取得された被検眼の画像、公知のレジストレーション法などを含んでいてよい。
【0214】
幾つかの例示的な態様では、M個の条件C(1)~C(M)に対応するM個の画像群からM個のボリュームデータ(3次元画像)を生成し、これらM個のボリュームデータの間のレジストレーション(3次元レジストレーション)を実行し、この3次元レジストレーションの結果を用いてM個の画像群の位置合わせを行ってもよい。
【0215】
ステップS46のレジストレーションにより、各スキャン位置P(n)に対応するM個の画像G(P(n)、C(1))~G(P(n)、C(M))の位置合わせがなされ、互いに対応付けられる。このようにして得られたM個の画像G(P(n)、C(1))~G(P(n)、C(M))は、前述した、スキャン位置P(n)に対応するM個の条件画像G(P(n)、C(1))~G(P(n)、C(M))に相当する。
【0216】
画像処理部1030は、各スキャン位置P(n)に対応するM個の条件画像G(P(n)、C(1))~G(P(n)、C(M))に基づいて、当該スキャン位置P(n)におけるハイダイナミックレンジ画像H(P(n))を生成する(S47)。これにより、N個のスキャン位置P(1)~P(N)にそれぞれ対応するN個のハイダイナミックレンジ画像H(P(1))~H(P(N))が得られる。
【0217】
ステップS47で生成される各画像は、シャインプルーフ画像としての広範囲にわたる高い精細性と、ハイダイナミックレンジ画像としての全体的な明るさの適正性との双方を備えている。更に、本態様では、このような高品質な画像を被検眼の複数の位置について取得することができる。
【0218】
幾つかの例示的な態様では、このような高品質な画像を被検眼の3次元領域にわたって取得することができることに加え、被検眼のボリューム(3次元領域)を表現するハイダイナミックレンジ画像を生成することも可能である。
【0219】
実施形態の1つの態様に係る眼科装置の構成を
図12に示す。眼科装置1000と同様に、本例の眼科装置1400は、撮影部1010と、制御部1020と、画像処理部1030とを含んでおり、更に、撮影部1010は光学系1011を含んでいる。
【0220】
本態様の光学系1011は、上記の眼科装置1200と同様に照明光学系1012を含んでいることに加えて、撮影光学系1013を更に含んでいる。撮影光学系1013は、照明光学系1012により照明光が投射されている被検眼を撮影するように構成されている。撮影光学系1013は、予め設定された露光条件に基づく制御部1020による制御の下に動作する。
【0221】
眼科装置1000の制御部1020と同様に、本態様の制御部1020は、撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように撮影部1010の制御を行う。本態様の撮影条件は、少なくとも撮影光学系1013に関する条件(露光条件)を含んでいる。よって、本態様の制御部1020は、少なくとも露光条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように撮影部1010(少なくとも撮影光学系1013)の制御を実行するものである。
【0222】
【0223】
まず、眼科装置1400は、制御部1020により撮影部1010を制御することによって、少なくとも露光条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用する(S51)。これにより、(2つ以上の露光条件を少なくとも含む)2つ以上の撮影条件にそれぞれ対応する2つ以上のシャインプルーフ画像からなるオリジナル画像群が得られる。
【0224】
更に、眼科装置1400は、画像処理部1030により、ステップS51で取得されたオリジナル画像群に基づいて、オリジナル画像のダイナミックレンジよりも拡大されたダイナミックレンジを有するハイダイナミックレンジ画像を生成する(S52)。ステップS52で生成される画像は、シャインプルーフ画像としての広範囲にわたる高い精細性と、ハイダイナミックレンジ画像としての全体的な明るさの適正性との双方を備えている。
【0225】
幾つかの例示的な態様において、露光条件は、撮影光学系1013による露光時間を定める露光時間条件を含んでいてよい。この場合、制御部1020は、少なくとも露光時間条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように撮影部1010(少なくとも撮影光学系1013)の制御を行うように構成されてよい。露光時間条件に関する事項(露光時間条件の種類、露光時間条件を変更するための構成など)については前述した。露光時間条件が用いられる例示的な態様については後述する。以上で、本態様に係る眼科装置1400の説明を終了する。
【0226】
実施形態の1つの態様に係る眼科装置の構成を
図14に示す。本態様は、露光時間条件が用いられる態様の例である。上記の眼科装置1400と同様に、本例の眼科装置1500は、撮影部1010と制御部1020と画像処理部1030とを含み、撮影部1010は光学系1011と移動機構1019とを含み、光学系1011は照明光学系1012と撮影光学系1013とを含んでいる。加えて、本例の撮影光学系1013は、撮像素子1014と、被検眼からの光を撮像素子1014に導く光学系(図示せず)とを含んでいる。
【0227】
照明光学系1012と撮影光学系1013とは、シャインプルーフの条件を満足するように構成されており、シャインプルーフカメラとして機能する。より具体的には、照明光学系1012の光軸を通る平面(物面を含む平面)と、撮影光学系1013の主面と、撮像素子1014の撮像面とが、同一の直線上にて交差するように、照明光学系1012及び撮影光学系1013が構成されている。
【0228】
シャインプルーフの条件を満足した照明光学系1012及び撮影光学系1013を用いることにより、物面内の全ての位置(照明光学系1012の光軸に沿う方向における全ての位置)に撮影光学系1013のピントが合った状態で撮影を行うことができる。
【0229】
本態様の露光時間条件は、2つ以上の条件を含んでいる。すなわち、本態様の露光時間条件は、異なる複数の露光時間に対応する2つ以上の条件を含んでいる。露光時間条件に含まれる2つ以上の条件の具体例として、後述する
図16に示す制御態様では、相対的に長い露光時間を示す条件(マル1)と、相対的に短い露光時間を示す条件(マル2)とが設けられている。
【0230】
本態様の制御部1020は、露光時間条件に含まれる2つ以上の条件を巡回的に適用するための撮影光学系1013の制御(露光制御と呼ぶ)と、光学系1011を移動するための移動機構1019の制御(移動制御と呼ぶ)とを組み合わせることにより、露光時間条件に含まれる2つ以上の条件にそれぞれ対応する2つ以上の画像からなる画像群を撮影部1010に繰り返し取得させるように構成されている。
【0231】
すなわち、制御部1020は、露光制御と移動制御とを実行することにより複数の画像群を取得するように構成されており、複数の画像群のそれぞれは、露光時間条件に含まれる2つ以上の条件にそれぞれ対応する2つ以上の画像を含んでいる。
【0232】
露光制御について説明する。露光時間条件に含まれるQ個の条件を、第1の条件、第2の条件、・・・、及び、第Qの条件とする。ここで、Qは2以上の整数である。第1~第Qの条件は、この順番で順序付けられているものとする。第1~第Qの条件をこの順序で適用することを、一連の条件適用と呼ぶ。この一連の条件適用を撮影光学系1013に反復的に実行させるための制御が露光制御である。
【0233】
露光制御の具体例として、後述する
図106に示す制御態様では、相対的に長い露光時間を示す条件(マル1)と、相対的に短い露光時間を示す条件(マル2)とからなる一連の条件適用を、繰り返し実行している。なお、露光時間条件に2つの条件が含まれている場合の露光制御(巡回的な適用)は、これら2つの条件の交互的な適用である。
【0234】
第1~第Qの条件の適用モードは巡回的適用に限定されず、第1~第Qの条件をその順序を変えながら反復的に適用してもよい。また、第1~第Qの条件の反復的な適用において、Q個の条件の全てを各々の反復において適用する必要はない。
【0235】
移動制御について説明する。移動制御は、光学系1011により撮影される被検眼の位置を変えるための制御である。移動制御は、撮影部1010が被検眼の複数の位置の画像を取得することを可能にする。また、移動制御は、光学系1011がシャインプルーフの条件を満足している状態を維持したまま光学系1011を移動させる。これにより、広い範囲にピントの合った複数の画像を収集することができる。
【0236】
このように、本態様では、制御部1020による露光制御及び移動制御の下に、撮影部1010が被検眼のスキャン(複数の位置に対する撮影)を行って複数のシャインプルーフ画像を収集する。
【0237】
換言すると、本態様の撮影部1010は、露光制御にしたがって露光時間条件を巡回的に変化させながら、移動制御にしたがってスキャン位置(照明光の投射位置及び撮影位置)を変えることによって、一連のシャインプルーフ画像を収集する。
【0238】
本態様の画像処理部1030は、露光制御と移動制御との組み合わせにより取得された複数の画像群に基づいて複数のハイダイナミックレンジ画像を生成することができる。
【0239】
前述したように、露光時間条件に含まれる条件の個数はQ個であるとする(Qは2以上の整数)。露光時間条件に含まれる各条件をC(q)で表す(q=1、2、・・・、Q)。また、移動制御によるスキャン位置の個数をR個とする(Rは2以上の整数)。各スキャン位置をP(r)で表す(r=1、2、・・・、R)。
【0240】
本態様では、各スキャン位置P(r)においてQ個の画像が得られる。スキャン位置P(r)と第qの条件C(q)とに対応する画像をG(P(r)、C(q))で表す。また、スキャン位置P(r)に対応するQ個の画像G(P(r)、C(1))、G(P(r)、C(2))、・・・、G(P(r)、C(Q))を、それぞれ、第1の条件画像、第2の条件画像、・・・、第Qの条件画像と呼ぶ。
【0241】
画像処理部1030は、各スキャン位置P(r)に対応するQ個の条件画像G(P(r)、C(1))~G(P(r)、C(Q))に基づいて、当該スキャン位置P(r)におけるハイダイナミックレンジ画像H(P(r))を生成する。これにより、R個のスキャン位置P(1)~P(R)にそれぞれ対応するR個のハイダイナミックレンジ画像H(P(1))~H(P(R))が得られる。
【0242】
画像処理部1030は、R個のハイダイナミックレンジ画像H(P(1))~H(P(R))に基づいて、被検眼のボリューム(3次元領域)を表現するハイダイナミックレンジ画像を生成することができる。
【0243】
【0244】
まず、眼科装置1500の撮影部1010は、制御部1020による露光制御及び移動制御によって被検眼のスキャンを開始する(S61)。
【0245】
被検眼のスキャンでは、まず、露光時間条件のQ個の条件(第1~第Qの条件)での撮影が第1のスキャン位置P(1)において行われる(S62)。これにより、第1のスキャン位置P(1)に対応する第1~第Qの条件画像G(P(1)、C(1))~G(P(1)、C(Q))が得られる。
【0246】
眼科装置1500は、第1~第Qの条件画像G(P(1)、C(1))~G(P(1)、C(Q))を第1のスキャン位置P(1)に対応付けて保存する(S63)。
【0247】
ステップS62及びS63は、スキャンが終了するまで繰り返し実行される(S64)。スキャンが終了していない場合(S64:No)、移動制御によって次のスキャン位置での撮影に移行する(S65)。スキャンが終了したらステップS66に移行する(S64:Yes)。
【0248】
これにより、ステップS62及びS63がR個のスキャン位置P(1)~P(R)のそれぞれにおいて実行され、各スキャン位置P(r)に対応するQ個の条件画像G(P(r)、C(1))~G(P(r)、C(Q))が取得され、保存される。
【0249】
画像処理部1030は、各スキャン位置P(r)に対応するQ個の条件画像G(P(r)、C(1))~G(P(r)、C(Q))に基づいて、当該スキャン位置P(r)におけるハイダイナミックレンジ画像H(P(r))を生成する(S66)。これにより、R個のスキャン位置P(1)~P(R)にそれぞれ対応するR個のハイダイナミックレンジ画像H(P(1))~H(P(R))が得られる。
【0250】
ステップS66で生成される各画像は、シャインプルーフ画像としての広範囲にわたる高い精細性と、ハイダイナミックレンジ画像としての全体的な明るさの適正性との双方を備えている。更に、本態様では、このような高品質な画像を被検眼の複数の位置について取得することができる。
【0251】
幾つかの例示的な態様では、このような高品質な画像を被検眼の3次元領域にわたって取得することができることに加え、被検眼のボリューム(3次元領域)を表現するハイダイナミックレンジ画像を生成することも可能である。
【0252】
本態様の照明制御及び移動制御によるスキャンの例を
図16に示す。
図16に示すスキャンにおいては、スキャン位置の移動は前述した
図7Cに示した従来のスキャンと同じ要領で実行されるが、光源の発光については照明光を断続的に出力(パルス発光)し、更に、カメラの露光については露光時間条件の切り替え制御が行われている。
【0253】
本例では、露光時間条件「マル1」及び「マル2」は、それぞれ、前述した条件C(1)及びC(2)に相当する。すなわち、
図16の例では、露光時間条件は2つの条件C(1)及びC(2)を含んでおり、この2つの条件C(1)及びC(2)を巡回的に(つまり、交互に)適用している。なお、条件C(1)は相対的に長い時間を示す露光時間条件であり、条件C(2)は相対的に短い時間を示す露光時間条件である。
【0254】
本例では、照明光の出力は断続的に行われているが、照明光の出力は連続的であってもよい。連続出力の場合、断続出力により達成される効果を得ることはできないが、光源の制御が容易であること、制御処理の負荷が小さいことなどの利点がある。
【0255】
図16のスキャンでは、照明光の発光(投射)のシーケンス(時系列に並ぶ複数回の発光)と、カメラの露光のシーケンス(時系列に並ぶ複数回の露光)とが、互いに同期されている。照明光のシーケンスにおけるそれぞれの発光の期間が投射期間に相当し、その長さが投射時間(照明時間)に相当する。
【0256】
同様に、露光のシーケンスにおけるそれぞれの露光の期間が露光期間に相当し、その長さが露光時間に相当する。本例では、投射時間(照明時間)は一定でも非一定でもよいが、露光時間は非一定である。
【0257】
図16のスキャンでは、露光のシーケンスにおける各露光期間について、その露光期間の一部の期間と1つの投射期間とが一致している。すなわち、露光のシーケンスにおける各露光期間について、その露光期間の長さ(露光時間)よりも投射期間の長さ(投射時間、照明時間)が短くなっており、且つ、この露光期間の一部とこの投射期間の全体とが重複している。これにより、露光のシーケンスにおける各露光期間において、その露光期間よりも短い投射期間にのみ実質的に露光(撮像素子による受光、電荷蓄積)が行われるため、露光中のスキャン位置の移動や眼球運動に起因する像のぼやけを、従来の眼科イメージング技術よりも低減することができる。したがって、従来の眼科イメージング技術よりも高い品質の画像を提供することが可能になる。
【0258】
また、従来の眼科画像解析技術よりも高い品質で画像解析(例えば、角膜検出、細胞検出など)を行うことが可能になる。しかも、被検眼に照明光が投射されている時間を短くすることができるため、照明光を連続的に投射する場合と比較して、被検者に与える負担を軽減することが可能になる。
【0259】
また、
図16のスキャンでは、スキャン開始位置からスキャン終了位置まで光学系1011を連続的に移動しており、光学系1011の急発進及び急停止を繰り返すことがないため、それに起因する振動がスキャン中に発生することがなく、撮影品質に悪影響を与えることもない。
【0260】
図16のスキャンでは、スキャン開始位置からスキャン終了位置まで光学系1011を連続的に移動しているが、前述した
図7B及び
図10Bのように光学系1011を断続的に移動してもよい。
【0261】
幾つかの例示的な態様では、照明条件の切り替えと露光条件の切り替えとの双方を実行可能であってよく、2つ以上の照明条件の切り替えと2つ以上の露光条件の切り替えとを組み合わせて行いながら2回以上の撮影を被検眼に適用してもよい。そのような眼科装置の構成や動作内容については、当業者であれば本開示から理解することができるであろう。
【0262】
図12~
図16に示す態様では、2つ以上の露光条件に対応する2つ以上の画像群の収集を1回のスキャンで行っているが、
図11に示す態様のように、2つ以上の露光条件に対応する2つ以上の画像群を収集するために2回以上のスキャンを実行してもよい。そのような眼科装置の構成や動作内容については、当業者であれば本開示から理解することができるであろう。
【0263】
実施形態の1つの態様に係る眼科装置の構成を
図17に示す。本態様の眼科装置1600は、撮影部1010と制御部1020と画像処理部1030とを含み、撮影部1010は光学系1011と移動機構1019とを含んでいる。
【0264】
本態様の光学系1011は、照明光学系1012と撮影光学系1013とを含んでいる。本態様の撮影光学系1013は、第1の撮像素子1014Aと、第2の撮像素子1014Bと、被検眼からの光を第1の撮像素子1014Aに導く光学系(図示せず)と、被検眼からの光を第2の撮像素子1014Bに導く光学系(図示せず)とを含んでいる。
【0265】
照明光学系1012と撮影光学系1013とは、シャインプルーフの条件を満足するように構成されており、シャインプルーフカメラとして機能する。より具体的には、照明光学系1012の光軸を通る平面(物面を含む平面)と、撮影光学系1013の主面と、第1の撮像素子1014Aの撮像面とが、同一の直線上にて交差するように、且つ、照明光学系1012の光軸を通る平面(物面を含む平面)と、撮影光学系1013の主面と、第2の撮像素子1014Bの撮像面とが、同一の直線上にて交差するように、照明光学系1012及び撮影光学系1013が構成されている。これにより、第1の撮像素子1014A及び第2の撮像素子1014Bの双方によって、物面内の全ての位置(照明光学系1012の光軸に沿う方向における全ての位置)に撮影光学系1013のピントが合った状態での撮影を行うことができる。
【0266】
本態様の眼科装置1600の1つの例を
図18に示す。本例の眼科装置1700は、眼科装置1600の撮影光学系1300として、第1の撮影光学系1013Aと第2の撮影光学系1013Bとを含んでいる。
【0267】
図示は省略するが、第1の撮影光学系1013Aは、
図17の第1の撮像素子1014Aと、被検眼からの光を第1の撮像素子1014Aに導く光学系とを含んでいる。同様に、第2の撮影光学系1013Bは、
図17の第2の撮像素子1014Bと、被検眼からの光を第2の撮像素子1014Bに導く光学系とを含んでいる。
【0268】
図18に示す眼科装置1700では、互いに独立した2つの撮影光学系1013A及び1013Bが設けられている。そのような実施例は後述される。眼科装置に設けられる撮影光学系の個数は3つ以上であってもよい。
【0269】
なお、
図17に示す眼科装置1600は、
図18のように2つ以上の撮影光学系が設けられている構成だけでなく、単一の撮影光学系に2つ以上の撮像素子が設けられている構成も含んでいる。単一の撮影光学系における2つ以上の撮像素子は、例えば、ハーフミラーなどのビームスプリッタを用いて分岐された2つ以上の光路にそれぞれ配置されている。
【0270】
本態様の撮影条件は、照明光学系1012の動作と、第1の撮影光学系1013Aの動作と、第2の撮影光学系1013Bの動作との同期制御を行うための条件(同期条件)を含む。この同期条件の例を
図19A及び
図19Bに示す。
図19Bは、
図19Aの一部の拡大図である。
【0271】
図19A及び
図19Bにおいて、カメラAは第1の撮影光学系1013Aの第1の撮像素子1014Aに相当し、カメラBは第2の撮影光学系1013Bの第2の撮像素子1014Bに相当する。
【0272】
本例の制御部1020は、第1の撮像素子1014Aによる実際の露光時間と、第2の撮像素子1014Bによる実際の露光時間とが互いに異なるように、照明光学系1012の発光タイミング(照明期間)と、第1の撮像素子1014Aの露光タイミング(露光期間)と、第2の撮像素子1014Bの露光タイミング(露光期間)との同期制御を行う。この同期制御は、第1の撮像素子1014Aの露光時間と、第2の撮像素子1014Bの露光時間との2つの露光時間条件を実現するためのものである。
【0273】
図19A及び
図19Bに示す例において、照明期間と第1の撮像素子1014Aの露光期間とが重複している期間(第1の露光期間)の長さTAは、照明期間と第2の撮像素子1014Bの露光期間とが重複している期間(第2の露光期間)の長さTBよりも長くなっている。
【0274】
ここで、第1の露光期間の長さ(第1の露光時間)TAは、第1の撮像素子1014Aによる実際の露光時間であり、第2の露光期間の長さ(第2の露光時間)TBは、第2の撮像素子1014Bによる実際の露光時間である。本例では、第1の露光時間TAは、第2の露光時間の約2倍に設定されている。
【0275】
このように、本例の制御部1020は、第1の撮像素子1014Aによる第1の露光期間の少なくとも一部と第2の撮像素子1014Bによる第2の露光期間の少なくとも一部とが重複するように撮影部1010の制御を行うものであり、また、第1の撮像素子1014Aによる第1の露光時間TAと第2の撮像素子1014Bによる第2の露光時間TBとが異なるように撮影部1010の制御を行うものである。これにより、本例の制御部1020は、2つの撮像素子1014A及び1014Bを用いて、撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように撮影部1010の制御を行う。
【0276】
また、
図19Aに示すように、本例のスキャンは、照明光を断続的に出力(パルス発光)するための光源の発光制御と、2つのカメラ(2つの撮像素子1014A及び1014B、2つの撮影光学系1013A及び1013B)の露光制御とを同期させることによって行われる。
【0277】
本例では、
図19Bに示すように、光源の1回の発光期間(1つのパルスの幅、照明期間、投射期間)の長さ(照明時間、投射時間)は、第1の露光時間TAに等しい。つまり、本例では、カメラAの露光可能時間(カメラAの露光動作を示すシーケンスにおける1つのパルスの上辺の長さ)を照明時間TAよりも長く設定し、且つ、カメラAの露光可能期間(カメラAの露光動作を示すシーケンスにおける1つのパルスの上辺が示す期間)が照明期間の全体と重複するように同期条件を設定しているので、カメラAの実際の露光時間(第1の露光時間TA)が照明時間TAに等しくなっている。
【0278】
一方、カメラBの露光可能時間(カメラBの露光動作を示すシーケンスにおける1つのパルスの上辺の長さ)はカメラAの露光可能時間に等しく設定されており、照明時間TAよりも長くなっているが、照明期間及びカメラAの露光可能期間に対してカメラBの露光可能期間を時間的にずらすことによって、カメラBの露光可能期間(カメラBの露光動作を示すシーケンスにおける1つのパルスの上辺が示す期間)が照明期間の一部(本例では、照明期間の約半分)のみに重複するように同期条件が設定されている。これにより、カメラBの実際の露光時間(第2の露光時間TB)は、照明時間TAの約半分、つまり第1の露光時間TAの約半分になっている。
【0279】
図19A及び
図19Bに示す例では、照明光の出力が断続的に行われているが、照明光の出力は連続的であってもよい。連続出力の場合、露光可能期間と露光期間とが等しくなるため、カメラA(第1の撮像素子1014A、第1の撮影光学系1013A)の露光可能期間とカメラB(第2の撮像素子1014B、第2の撮影光学系1013B)の露光可能期間とが互いに異なる値になるように同期条件が設定される。
【0280】
図20は、このような連続出力の場合における、照明光学系1012の動作と、第1の撮影光学系1013Aの動作と、第2の撮影光学系1013Bの動作との同期制御を行うための同期条件の1つの例を示している。
【0281】
図19Aに示す例、
図19Bに示す例、及び
図20に示す例では、スキャン開始位置からスキャン終了位置まで光学系1011を連続的に移動しているが、前述した
図7B及び
図10Bのように光学系1011を断続的に移動してもよい。
【0282】
このように、本態様の制御部1020は、2つの撮像素子1014A及び1014Bを用いて撮影条件が異なる2回の撮影を被検眼に繰り返し適用するための撮影光学系1013(例えば、2つの撮影光学系1013A及び1013B)の制御と、光学系1011を移動するための移動機構1019の制御とを組み合わせることによって、2つの撮影条件に対応する2つの画像からなる画像群を撮影部1010に繰り返し取得させる。
【0283】
更に、本態様の画像処理部1030は、制御部1020の制御の下に撮影部1010によって取得された複数の画像群に基づいて複数のハイダイナミックレンジ画像を生成することができる。
【0284】
例えば、画像処理部1030は、1つの照明期間に重複するカメラAの露光期間に取得された画像と、同じ照明期間に重複するカメラBの露光期間に取得された画像とを含む画像群に基づいて、1つのハイダイナミックレンジ画像を生成するように構成されてよい。つまり、本例の画像処理部1030は、照明期間ごとにハイダイナミックレンジ画像の生成を行うように構成される。
【0285】
本例によれば、同時に取得された画像群からハイダイナミックレンジ画像を生成することができるので、画像群に含まれる画像の間のレジストレーションを行う必要がないという利点がある。また、同じハイダイナミックレンジ画像の生成に提供される画像群を形成する処理を非常に容易に行うことができるという利点もある。
【0286】
別の例において、画像処理部1030は、第1の照明期間に重複するカメラAの露光期間に取得された画像と、第1の照明期間に対する時間差が小さい第2の照明期間に重複するカメラBの露光期間に取得された画像とを含む画像群に基づいて、1つのハイダイナミックレンジ画像を生成するように構成されてよい。例えば、第1の照明期間の直前又は直後の照明期間を第2の照明期間として選択することが可能である。
【0287】
本例によれば、実質的に同時に取得された画像群からハイダイナミックレンジ画像を生成することができるので、画像群に含まれる2つの画像の間のレジストレーションを行う必要がないという利点がある。また、同じハイダイナミックレンジ画像の生成に提供される画像群を形成する処理を容易に行うことができるという利点もある。
【0288】
本態様の画像処理部1030により実行される処理はこれらの例に限定されない。画像処理部1030は、自由に選択された2つの照明期間に対応する2つの画像からなる画像群に基づいてハイダイナミックレンジ画像を生成するように構成されてよい。
【0289】
以上、2つの撮像素子が用いられる場合について説明したが、3つ以上の撮像素子が用いられる場合においても同様の構成及び処理を適用できることは、当業者であれば理解することができるであろう。
【0290】
2つ以上の撮像素子が用いられる場合において、露光条件以外の撮影条件の設定は任意であってよい。例えば、2つ以上の撮像素子のゲインは等しく設定されてよい。
【0291】
実施形態に係る眼科装置(例えば、眼科装置1000~1700のいずれか1つ、又は、眼科装置1000~1700のいずれか2つ以上の少なくとも部分的な組み合わせ)の1つの実施例が実行する処理について、
図21~
図23を更に参照しながら説明する。
【0292】
本実施例では、照明条件が異なる2回の撮影が被検眼に適用され、それにより取得された2つの画像に基づいてハイダイナミックレンジ画像が生成される。特に言及しない限り、本実施例における処理は、本開示に係るいずれかの態様、及び/又は、本開示に係るいずれかの実施例と同様であってよい。
【0293】
図21のフローチャートに示すように、本例の処理では、まずアライメントが行われる(S71)。アライメントは、被検眼に対する光学系1011の位置合わせである。アライメントは自動で及び/又は手動で実行される。また、アライメント以外の準備的動作も行われる。
【0294】
次に、光学系1011がスキャン開始位置に移動される(S72)。光学系1011のスキャン開始位置への移動は、自動で及び/又は手動で実行される。
【0295】
光学系1011がスキャン開始位置に配置されたら、撮影部1010は、制御部1020による制御の下に被検眼のスキャンを開始する(S73)。本ステップのスキャンは、照明制御と移動制御との組み合わせによって実行される。制御部1020は、所定のイベントに対応して撮影部1010にスキャンを開始させる。このイベントは、例えば、ユーザーからの指示、又はステップS72の完了であってよい。
【0296】
スキャンの開始を受けて、制御部1020は、光学系1011の撮像素子1014を制御して露光を開始させ(S74)、照明光学系1012の光源を制御して高出力パルス光を発振させ(S75)、撮像素子1014を制御して露光を終了させる(S76)。高出力パルス光は、後述の低出力パルス光と比較して、相対的に高い出力のパルス光である。
【0297】
更に、制御部1020は、ステップS74~S76によって撮像素子1014に取得された画像を図示しない記憶装置に保存する(S77)。この画像は、ステップS75の高出力パルス光を用いて取得された、後述の低輝度画像と比較して相対的に明るい画像である。本例では、この画像を高輝度画像と呼ぶ。
【0298】
高輝度画像が取得され保存されたら、制御部1020は、光学系1011の撮像素子1014を制御して露光を開始させ(S78)、照明光学系1012の光源を制御して低出力パルス光を発振させ(S79)、撮像素子1014を制御して露光を終了させる(S80)。低出力パルス光は、前述の高出力パルス光と比較して、相対的に低い出力のパルス光である。
【0299】
更に、制御部1020は、ステップS78~S80によって撮像素子1014に取得された画像を図示しない記憶装置に保存する(S81)。この画像は、ステップS79の低出力パルス光を用いて取得された、前述の高輝度画像と比較して相対的に暗い画像である。本例では、この画像を低輝度画像と呼ぶ。
【0300】
ステップS74~S81に示す一連の撮影動作が完了したら、制御部1020は、予め指定された枚数の画像が取得されたか判定を行う(S82)。指定枚数の画像が未だ取得されていない場合(S82:No)、処理はステップS74に戻る。指定枚数の画像が既に取得された場合(S82:Yes)、処理はステップS83に進み、スキャンは終了となる(S83)。
【0301】
なお、ステップS82の判定のパラメータは画像枚数に限定されず、例えば、ステップS74~S81の反復の回数、ステップS74~S81の反復の経過時間、光学系1011の移動距離などであってもよい。
【0302】
このように、制御部1020は、指定枚数の画像が取得されるまで、ステップS74~S82を繰り返し実行する。ステップS74~S82の総反復回数を「U」とする。
図22Aは、第u回目の反復及び第u+1回目の反復における動作を表している。ここで、uは、1以上、且つ、U-1以下の整数である。
【0303】
第u回目の反復に対応するスキャン位置P(u)において、高出力パルス光V(u、H)と低出力パルス光V(u、L)とが光源から出力されるとともに、撮像素子1014の2回の露光W(u、H)及びW(u、L)が行われる。
【0304】
ここで、露光W(u、H)の期間は高出力パルス光V(u、H)の投射期間に対応し、露光W(u、L)の期間は低出力パルス光V(u、L)の投射期間に対応している。撮像素子1014が露光W(u、H)により取得した画像G(u、H)は高輝度画像であり、露光W(u、L)により取得した画像G(u、L)は低輝度画像である。
【0305】
第u+1回目の反復に対応するスキャン位置P(u+1)における動作、及び、それにより得られる画像群についても同様である。これにより、U個の画像群(高輝度画像と低輝度画像とのペア)が収集される。
【0306】
図22Bは、スキャンの別の例を表している。本例では、第u回目の反復に対応するスキャン位置P(u)において、単一のパルス光V(u)が出力され、且つ、2回の露光(第1の露光及び第2の露光)が実行される。
【0307】
第1の露光の期間の一部のみ(例えば、第1の露光の期間の半分のみ)がパルス光V(u)の投射期間と重複しており、且つ、第2の露光の期間の全てがパルス光V(u)の投射期間と重複している。第1の露光の期間とパルス光V(u)の投射期間との重複期間が、第1の露光における実際の露光W(u、L)である。この実際の露光W(u、L)も第1の露光と呼ぶことにする。同様に、第2の露光の期間とパルス光V(u)の投射期間との重複期間が第2の露光における実際の露光W(u、H)である。
【0308】
本例では、第1の露光W(u、L)によって低輝度画像G(u、L)が取得され、且つ、第2の露光W(u、H)によって高輝度画像G(u、H)が取得される。第u+1回目の反復に対応するスキャン位置P(u+1)における動作、及び、それにより得られる画像群についても同様である。これにより、U個の画像群(高輝度画像と低輝度画像とのペア)が収集される。
【0309】
画像処理部1030は、スキャンによって収集されたU個の画像群に基づいてU個のハイダイナミックレンジ画像を生成する(S84)。本例では、各画像群に基づいて、つまり、高輝度画像G(u、H)と低輝度画像G(u、L)との各ペアに基づいて、ハイダイナミックレンジ画像が生成される。
【0310】
ステップS84の1つの具体例を説明する。画像処理部1030は、高輝度画像G(u、H)から所定の閾値以上の輝度値を有する画素(輝度超過画素)を特定し、特定された輝度超過画素に対応する低輝度画像G(u、L)の画素(対応画素)を特定し、輝度超過画素の画素値を対応画素の画素値に基づく画素値に置換する。
【0311】
例えば、画像処理部1030は、対応画素の画素値に所定値(例えば、2)を乗算し、その積の値で輝度超過画素の画素値を置換する。対応画素の画素値に乗算される値は、事前に設定されたデフォルト値、高輝度画像G(u、H)と低輝度画像G(u、L)とのペアに基づき決定された値、又は、他の方法で決定された値であってよい。
【0312】
ステップS84の例を
図23に示す。高輝度画像G(u、H)の輝度超過領域g(u、H)は、輝度超過画素からなる画像領域である。また、低輝度画像G(u、L)の領域g(u、L)は、高輝度画像G(u、H)の輝度超過領域g(u、H)に対応する画像領域(対応領域)である。
【0313】
上記具体例で説明した処理によれば、高輝度画像G(u、H)の輝度超過領域g(u、H)の明るさが、低輝度画像G(u、L)の対応領域g(u、L)に基づいて適正化される。これにより画像(ハイダイナミックレンジ画像)H(u)が取得される。ハイダイナミックレンジ画像H(u)の領域h(u)は、明るさが適正化された画像領域を示している。
【0314】
なお、
図23の例は、角膜領域の明るさの適正化を説明しているが、他の部位の画像領域の明るさの適正化も同じ要領で実行される。
【0315】
このようなステップS84により、被検眼の各種の部位(角膜上皮、角膜内皮、水晶体前面、水晶体後面など)が同等のトーンで表現されたハイダイナミックレンジ画像が得られる。また、被検眼の3次元領域(スキャンされた領域)を表現したハイダイナミックレンジ画像が得られる。
【0316】
次に、眼科装置1000(例えば、画像処理部1030)は、ステップS84で生成されたハイダイナミックレンジ画像にガンマ補正を適用することにより、出力用デバイスに対応した輝度及び三刺激値の画像を生成する(S85)。
【0317】
そして、眼科装置1000は、ステップS85でガンマ補正が施されて生成された画像を、所定の出力デバイスに提供する。例えば、眼科装置1000は、ステップS85でガンマ補正が施されて生成された画像を、図示しない表示装置に表示させる(S86)。また、眼科装置1000は、本例で生成された様々な画像のうちのいずれか1つ以上を、図示しない記憶装置に保存する(S86)。以上で、本実施例において実行される処理の説明を終了する。
【0318】
実施形態に係る眼科装置(例えば、眼科装置1000~1700のいずれか1つ、又は、眼科装置1000~1700のいずれか2つ以上の少なくとも部分的な組み合わせ)の1つの実施例が実行する処理について、
図24A~
図25を更に参照しながら説明する。
【0319】
本実施例では、2つの撮像素子を用いた2回の撮影が被検眼に適用され、それにより取得された2つの画像に基づいてハイダイナミックレンジ画像が生成される。
【0320】
特に言及しない限り、本実施例の幾つかの工程における処理は、本開示に係るいずれかの態様、及び/又は、本開示に係るいずれかの実施例で説明した処理と同じ又は類似の要領で実行されてよい。
【0321】
図24A及び
図24Bのフローチャートに示すように、本例の処理では、まずアライメントが行われ(S91)、光学系1011がスキャン開始位置に移動され(S92)、被検眼のスキャンが開始される(S93)。本ステップのスキャンは、照明制御と露光制御と移動制御との組み合わせによって実行される。
【0322】
図25を参照する。スキャンの開始を受けて、制御部1020は、第1の撮像素子1014Aを制御して露光を開始させ(S94)、ステップS94から時間Δaだけ待機し(S95)、第2の撮像素子1014Bを制御して露光を開始させる(S96)。
【0323】
更に、制御部1020は、照明光学系1012の光源を制御してパルス光の出力を開始させ(S97)、ステップS97から時間Δbだけ待機し(S98)、第1の撮像素子1014Aを制御して露光を終了させ(S99)、ステップS94~S99の露光期間において第1の撮像素子1014Aにより取得された画像(第1の画像)を図示しない記憶装置に保存する(S100)。
【0324】
ステップS100で取得された第1の画像は、後述する第2の撮像素子1014Bの露光期間と比較して相対的に短い露光期間において取得された、後述の高輝度画像と比較して相対的に暗い画像である。本例では、この第1の画像を低輝度画像と呼ぶ。
【0325】
更に、制御部1020は、ステップS99から時間Δcだけ待機し(S101)、照明光学系1012の光源を制御してパルス光の出力を停止させ(S102)、第2の撮像素子1014Bを制御して露光を終了させ(S103)、ステップS96~S103の露光期間において第2の撮像素子1014Bにより取得された画像(第2の画像)を図示しない記憶装置に保存する(S104)。
【0326】
ステップS104で取得された第2の画像は、前述した第1の撮像素子1014Aの露光期間と比較して相対的に長い露光期間において取得された、前述の低輝度画像と比較して相対的に明るい画像である。本例では、この第2の画像を高輝度画像と呼ぶ。
【0327】
ステップS94~S104に示す一連の撮影動作が完了したら、制御部1020は、予め指定された枚数の画像が取得されたか判定を行う(S105)。指定枚数の画像が未だ取得されていない場合(S105:No)、処理はステップS94に戻る。指定枚数の画像が既に取得された場合(S105:Yes)、処理はステップS106に進み、スキャンは終了となる(S106)。
【0328】
なお、ステップS105の判定のパラメータは画像枚数に限定されず、例えば、ステップS94~S104の反復の回数、ステップS94~S104の反復の経過時間、光学系1011の移動距離などであってもよい。
【0329】
このように、制御部1020は、指定枚数の画像が取得されるまで、ステップS94~S105を繰り返し実行する。ステップS94~S105の総反復回数を「U」とする。
図25は、第u回目の反復及び第u+1回目の反復における動作を表している。ここで、uは、1以上、且つ、U-1以下の整数である。
【0330】
第u回目の反復に対応するスキャン位置において、照明光学系1012の光源の1回の発光と、第1の撮像素子1014Aの露光と、第2の撮像素子1014Bの露光とが実行される。照明光の投射期間と、第1の撮像素子1014Aの露光期間と、第2の撮像素子1014Bの露光期間との間の関係は、
図25及び上記説明の通りである。
【0331】
このような照明光学系1012と第1の撮像素子1014Aと第2の撮像素子1014Bとの連係的な制御により、第u回目の反復に対応するスキャン位置に対応する低輝度画像G(u、L)と高輝度画像G(u、H)とのペアが得られる。第u+1回目の反復に対応するスキャン位置についても同様である。これにより、U個の画像群(高輝度画像と低輝度画像とのペア)が収集される。
【0332】
画像処理部1030は、スキャンによって収集されたU個の画像群に基づいてU個のハイダイナミックレンジ画像を生成する(S107)。ステップS107で実行される処理は、例えば、
図21のステップS84、
図23、及びそれらの説明に係る手法と同様であってよい。
【0333】
ステップS107により、被検眼の各種の部位(角膜上皮、角膜内皮、水晶体前面、水晶体後面など)が同等のトーンで表現されたハイダイナミックレンジ画像が得られる。また、被検眼の3次元領域(スキャンされた領域)を表現したハイダイナミックレンジ画像が得られる。
【0334】
次に、眼科装置1000(例えば、画像処理部1030)は、ステップS107で生成されたハイダイナミックレンジ画像にガンマ補正を適用し(S108)、表示装置に表示させる(S86)。また、眼科装置1000は、本例で生成された様々な画像のうちのいずれか1つ以上を記憶装置に保存する(S86)。以上で、本実施例において実行される処理の説明を終了する。
【0335】
以上に説明した幾つかの例示的な態様に係る眼科装置1000~1700として機能することが可能な眼科装置の具体的構成の例を
図26に示す。
図26は上面図である。
【0336】
被検眼Eの軸に沿う方向をZ方向とし、これに直交する方向のうち被検者にとって左右の方向をX方向とし、X方向及びZ方向の双方に直交する方向(上下方向、体軸方向)をY方向とする。
【0337】
本例の眼科装置は、特許文献3(特開2019-213733号公報)に開示されているものと同様の構成を有するスリットランプ顕微鏡システム1であり、照明光学系2と、撮影光学系3と、動画撮影光学系4と、光路結合素子5と、移動機構6と、制御部7と、データ処理部8と、通信部9と、ユーザーインターフェイス10とを含む。
【0338】
被検眼Eの角膜を符号Cで示し、水晶体を符号CLで示す。前房は、角膜Cと水晶体CLとの間の領域(角膜Cと虹彩との間の領域)に相当する。
【0339】
スリットランプ顕微鏡システム1の各要素の詳細については、特許文献3(特開2019-213733号公報)を参照されたい。
【0340】
照明光学系2、撮影光学系3、及び移動機構6の組み合わせは、眼科装置1000(~1700)の撮影部1010の例である。照明光学系2は照明光学系1012の例であり、撮影光学系3は撮影光学系1013の例である。
【0341】
照明光学系2は、被検眼Eの前眼部にスリット光を投射する。符号2aは、照明光学系2の光軸(照明光軸)を示す。
【0342】
撮影光学系3は、照明光学系2からのスリット光が投射されている前眼部を撮影する。符号3aは、撮影光学系3の光軸(撮影光軸)を示す。光学系3Aは、スリット光が投射されている被検眼Eの前眼部からの光を撮像素子3Bに導く。撮像素子3Bは、光学系3Aにより導かれた光を撮像面にて受光する。撮像素子3Bは、2次元の撮像エリアを有するエリアセンサ(CCDエリアセンサ、CMOSエリアセンサなど)を含む。撮像素子3Bは、眼科装置1000(~1700)の撮像素子1014(1014A、1014B)の例である。
【0343】
照明光学系2及び撮影光学系3は、シャインプルーフカメラとして機能するものであり、照明光軸2aに沿う物面と光学系3Aと撮像素子3Bの撮像面とがシャインプルーフの条件を満足するように、すなわち照明光軸2aを通るYZ面(物面を含む)と光学系3Aの主面と撮像素子3Bの撮像面とが同一の直線上にて交差するように、構成されている。
【0344】
これにより、照明光学系2及び撮影光学系3は、少なくとも角膜Cの後面から水晶体CLの前面までの範囲(前房)にピントが合っている状態で、撮影を行うことができる。また、照明光学系2及び撮影光学系3は、少なくとも角膜Cの前面の頂点(Z=Z1)から水晶体CLの後面の頂点(Z=Z2)までの範囲にピントが合っている状態で、撮影を行うことができる。なお、座標Z=Z0は照明光軸2aと撮影光軸3aとの交点を示す。
【0345】
動画撮影光学系4は、ビデオカメラであり、照明光学系2及び撮影光学系3による被検眼の撮影と並行して被検眼Eの前眼部を動画撮影する。光路結合素子5は、照明光学系2の光路(照明光路)と、動画撮影光学系4の光路(動画撮影光路)とを結合している。
【0346】
照明光学系2、撮影光学系3、動画撮影光学系4、及び光路結合素子5を含む光学系の具体例を
図27に示す。
図27に示す光学系は、照明光学系2の例である照明光学系20と、撮影光学系3(
図18の眼科装置1700の第1の撮影光学系1013A及び第2の撮影光学系1013B)の例である左撮影光学系30L及び右撮影光学系30Rと、動画撮影光学系4の例である動画撮影光学系40と、光路結合素子5の例であるビームスプリッタ47とを含んでいる。
【0347】
符号20aは照明光学系20の光軸(照明光軸)を示し、符号30Laは左撮影光学系30Lの光軸(左撮影光軸)を示し、符号30Raは右撮影光学系30Rの光軸(右撮影光軸)を示す。角度θLは照明光軸20aと左撮影光軸30Laとがなす角度を示し、角度θRは照明光軸20aと右撮影光軸30Raとがなす角度を示す。座標Z=Z0は、照明光軸20aと左撮影光軸30Laと右撮影光軸30Raとの交点を示す。
【0348】
移動機構6は、照明光学系20、左撮影光学系30L、及び右撮影光学系30Rを、矢印49で示す方向(X方向)に移動する。
【0349】
照明光学系20の照明光源21は照明光(例えば可視光)を出力し、正レンズ22は照明光を屈折する。スリット形成部23はスリットを形成して照明光の一部を通過させる。生成されたスリット光は、対物レンズ群24及び25により屈折され、ビームスプリッタ47により反射され、被検眼Eの前眼部に投射される。
【0350】
左撮影光学系30Lの反射器31L及び結像レンズ32Lは、照明光学系20によりスリット光が投射されている前眼部からの光(左撮影光学系30Lの方向に進行する光)を撮像素子33Lに導く。撮像素子33Lは、導かれた光を撮像面34Lにて受光する。
【0351】
左撮影光学系30Lは、移動機構6による照明光学系20、左撮影光学系30L及び右撮影光学系30Rの移動と並行して繰り返し撮影を行う。これにより複数の前眼部画像(一連のシャインプルーフ画像)が得られる。
【0352】
照明光軸20aに沿う物面と反射器31L及び結像レンズ32Lを含む光学系と撮像面34Lとは、シャインプルーフの条件を満足する。右撮影光学系30Rも同様の構成及び機能を有する。
【0353】
撮像素子33Lと撮像素子33Rとのペアは、第1の撮像素子1014Aと第2の撮像素子1014Bとのペアの例である。
【0354】
左撮影光学系30Lによるシャインプルーフ画像収集と右撮影光学系30Rによるシャインプルーフ画像収集とは、互いに並行して行われる。
【0355】
制御部7は、左撮影光学系30Lによる繰り返し撮影と右撮影光学系30Rによる繰り返し撮影とを同期させることができる。これにより、左撮影光学系30Lにより得られた一連のシャインプルーフ画像と、右撮影光学系30Rにより得られた一連のシャインプルーフ画像との間の対応関係が得られる。
【0356】
なお、左撮影光学系30Lにより得られた複数の前眼部画像と、右撮影光学系30Rにより得られた複数の前眼部画像との間の対応関係を求める処理を、制御部7又はデータ処理部8により実行してもよい。
【0357】
動画撮影光学系40は、左撮影光学系30Lによる撮影及び右撮影光学系30Rによる撮影と並行して、被検眼Eの前眼部を固定位置から動画撮影する。ビームスプリッタ47を透過した光は、反射器48により反射されて動画撮影光学系40に入射する。動画撮影光学系40に入射した光は、対物レンズ41により屈折された後、結像レンズ42によって撮像素子43(エリアセンサ)の撮像面に結像される。動画撮影光学系40は、被検眼Eの動きのモニタ、アライメント、トラッキング、収集されたシャインプルーフ画像の処理などに利用される。
【0358】
図26の参照に戻る。移動機構6は、照明光学系2及び撮影光学系3を一体的にX方向に移動する。
【0359】
制御部7は、スリットランプ顕微鏡システム1の各部を制御する。制御部7は、照明光学系2、撮影光学系3及び移動機構6の制御と、動画撮影光学系4の制御とを、互いに並行して実行することにより、眼科装置1000(~1700)の撮影部1010によるスリットスキャン(一連のシャインプルーフ画像の収集)と、動画撮影(一連の時系列画像の収集)とを互いに並行して実行させることができる。
【0360】
また、制御部7は、照明光学系2、撮影光学系3及び移動機構6の制御と、動画撮影光学系4の制御とを、互いに同期して実行することにより、スリットスキャンと動画撮影とを互いに同期させることができる。
【0361】
撮影光学系3が左撮影光学系30L及び右撮影光学系30Rを含む場合、制御部7は、左撮影光学系30Lによる繰り返し撮影(シャインプルーフ画像群の収集)と、右撮影光学系30Rによる繰り返し撮影(シャインプルーフ画像群の収集)とを互いに同期させることができる。
【0362】
制御部7は、プロセッサ、記憶装置などを含む。記憶装置には、各種の制御プログラム等のコンピュータプログラムが記憶されている。制御部7の機能は、制御プログラム等のソフトウェアと、プロセッサ等のハードウェアとの協働によって実現される。制御部7は、被検眼Eの3次元領域をスリット光でスキャンするために、照明光学系2、撮影光学系3及び移動機構6の制御を実行する。この制御の詳細については、特許文献3(特開2019-213733号公報)を参照されたい。
【0363】
データ処理部8は、各種のデータ処理を実行する。データ処理部8は、プロセッサ、記憶装置などを含む。記憶装置には、各種のデータ処理プログラム等のコンピュータプログラムが記憶されている。データ処理部8の機能は、データ処理プログラム等のソフトウェアと、プロセッサ等のハードウェアとの協働によって実現される。データ処理部8は、眼科装置1000(~1700)の画像処理部1030の機能を有している。データ処理部8の機能はこれに限定されない。
【0364】
通信部9は、スリットランプ顕微鏡システム1と他の装置との間におけるデータ通信を行う。ユーザーインターフェイス10は、表示デバイス、操作デバイスなど、任意のユーザーインターフェイスデバイスを含む。
【0365】
図26及び
図27に示すスリットランプ顕微鏡システム1は例示に過ぎず、眼科装置1000~1700を実施するための構成はスリットランプ顕微鏡システム1に限定されない。
【0366】
実施形態に係る眼科装置の幾つかの非限定的な特徴について説明する。
【0367】
実施形態に係る眼科装置の第1の態様例は、撮影部と、制御部と、画像処理部とを含んでいる。撮影部は、シャインプルーフの条件を満足する光学系を含んでいる。制御部は、撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように撮影部の制御を行うように構成されている。画像処理部は、撮影条件が異なる2回以上の撮影によって取得された被検眼の2つ以上の画像に基づいてハイダイナミックレンジ画像を生成するように構成されている。
【0368】
実施形態に係る眼科装置の第2の態様例は、第1の態様例の非限定的な特徴に加えて、次の非限定的な特徴を備えている。光学系は、予め設定された照明条件に基づき被検眼に照明光を投射する照明光学系を含んでいる。更に、制御部は、少なくとも照明条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように撮影部の制御を行うように構成されている。
【0369】
実施形態に係る眼科装置の第3の態様例は、第2の態様例の非限定的な特徴に加えて、次の非限定的な特徴を備えている。照明条件は、照明光の強度を定める照明強度条件を含んでいる。更に、制御部は、少なくとも照明強度条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように撮影部の制御を行うように構成されている。
【0370】
実施形態に係る眼科装置の第4の態様例は、第3の態様例の非限定的な特徴に加えて、次の非限定的な特徴を備えている。撮影部は、光学系を移動する移動機構を更に含んでいる。照明強度条件は、2つ以上の条件を含んでいる。制御部は、照明強度条件に含まれている2つ以上の条件を巡回的に適用するための照明光学系の制御と、光学系を移動するための移動機構の制御とを組み合わせることにより、照明強度条件に含まれている2つ以上の条件に対応する2つ以上の画像からなる画像群を撮影部に繰り返し取得させるように構成されている。
【0371】
実施形態に係る眼科装置の第5の態様例は、第4の態様例の非限定的な特徴に加えて、次の非限定的な特徴を備えている。画像処理部は、照明光学系の制御と移動機構の制御との組み合わせの下に撮影部により取得された複数の画像群に基づいて複数のハイダイナミックレンジ画像を生成するように構成されている。
【0372】
実施形態に係る眼科装置の第6の態様例は、第2~第5のいずれかの態様例の非限定的な特徴に加えて、次の非限定的な特徴を備えている。照明条件は、照明光の投射時間を定める照明時間条件を含んでいる。制御部は、少なくとも照明時間条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように撮影部の制御を行うように構成されている。
【0373】
実施形態に係る眼科装置の第7の態様例は、第6の態様例の非限定的な特徴に加えて、次の非限定的な特徴を備えている。撮影部は、光学系を移動する移動機構を更に含んでいる。照明時間条件は、2つ以上の条件を含んでいる。制御部は、照明時間条件に含まれている2つ以上の条件を巡回的に適用するための照明光学系の制御と、光学系を移動するための移動機構の制御とを組み合わせることにより、照明時間条件に含まれている2つ以上の条件に対応する2つ以上の画像からなる画像群を撮影部に繰り返し取得させるように構成されている。
【0374】
実施形態に係る眼科装置の第8の態様例は、第7の態様例の非限定的な特徴に加えて、次の非限定的な特徴を備えている。画像処理部は、照明光学系の制御と移動機構の制御との組み合わせの下に撮影部により取得された複数の画像群に基づいて複数のハイダイナミックレンジ画像を生成するように構成されている。
【0375】
実施形態に係る眼科装置の第9の態様例は、第1~第8のいずれかの態様例の非限定的な特徴に加えて、次の非限定的な特徴を備えている。光学系は、予め設定された露光条件に基づき被検眼を撮影する撮影光学系を含んでいる。制御部は、少なくとも露光条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように撮影部の制御を行うように構成されている。
【0376】
実施形態に係る眼科装置の第10の態様例は、第9の態様例の非限定的な特徴に加えて、次の非限定的な特徴を備えている。撮影光学系は、撮像素子を含んでいる。露光条件は、撮像素子による露光時間を定める露光時間条件を含んでいる。制御部は、少なくとも露光時間条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように撮影部の制御を行うように構成されている。
【0377】
実施形態に係る眼科装置の第11の態様例は、第10の態様例の非限定的な特徴に加えて、次の非限定的な特徴を備えている。撮影部は、光学系を移動する移動機構を更に含んでいる。露光時間条件は、2つ以上の条件を含んでいる。制御部は、露光時間条件に含まれている2つ以上の条件を巡回的に適用するための撮影光学系の制御と、光学系を移動するための移動機構の制御とを組み合わせることにより、露光時間条件に含まれている2つ以上の条件に対応する2つ以上の画像からなる画像群を撮影部に繰り返し取得させるように構成されている。
【0378】
実施形態に係る眼科装置の第12の態様例は、第11の態様例の非限定的な特徴に加えて、次の非限定的な特徴を備えている。画像処理部は、撮影光学系の制御と移動機構の制御との組み合わせの下に撮影部により取得された複数の画像群に基づいて複数のハイダイナミックレンジ画像を生成するように構成されている。
【0379】
実施形態に係る眼科装置の第13の態様例は、第9~第12のいずれかの態様例の非限定的な特徴に加えて、次の非限定的な特徴を備えている。撮影光学系は、2つ以上の撮像素子を含んでいる。制御部は、撮影条件が異なる2回以上の撮影を2つ以上の撮像素子を用いて行うように撮影部の制御を行うように構成されている。
【0380】
実施形態に係る眼科装置の第14の態様例は、第13の態様例の非限定的な特徴に加えて、次の非限定的な特徴を備えている。撮影光学系に含まれている2つ以上の撮像素子は、第1の撮像素子及び第2の撮像素子を含んでいる。制御部は、第1の撮像素子による第1の露光時間と第2の撮像素子による第2の露光時間とが異なるように撮影部の制御を行うように構成されている。
【0381】
実施形態に係る眼科装置の第15の態様例は、第13又は第14の態様例の非限定的な特徴に加えて、次の非限定的な特徴を備えている。撮影光学系に含まれている2つ以上の撮像素子は、第1の撮像素子及び第2の撮像素子を含んでいる。制御部は、第1の撮像素子による第1の露光期間の少なくとも一部と第2の撮像素子による第2の露光期間の少なくとも一部とが重複するように撮影部の制御を行うように構成されている。
【0382】
実施形態に係る眼科装置の第16の態様例は、第13~第15のいずれかの態様例の非限定的な特徴に加えて、次の非限定的な特徴を備えている。撮影部は、光学系を移動する移動機構を更に含んでいる。制御部は、撮影光学系に含まれている2つ以上の撮像素子を用いた撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に繰り返し適用するための撮影光学系の制御と、光学系を移動するための移動機構の制御とを組み合わせることにより、撮影光学系に含まれている2つ以上の撮像素子を用いた撮影条件が異なる2回以上の撮影に対応する2つ以上の画像からなる画像群を撮影部に繰り返し取得させるように構成されている。
【0383】
実施形態に係る眼科装置の第17の態様例は、第16の態様例の非限定的な特徴に加えて、次の非限定的な特徴を備えている。画像処理部は、撮影光学系の制御と移動機構の制御との組み合わせの下に撮影部により取得された複数の画像群に基づいて複数のハイダイナミックレンジ画像を生成するように構成されている。
【0384】
実施形態に係る眼科装置の第18の態様例は、第1の態様例の非限定的な特徴に加えて、次の非限定的な特徴を備えている。光学系は、予め設定された照明条件に基づき被検眼に照明光を投射する照明光学系と、予め設定された露光条件に基づき被検眼を撮影する撮影光学系とを含んでいる。撮影光学系は、第1の撮像素子及び第2の撮像素子を含んでいる。制御部は、次の4つの条件を満足するように撮影部の制御を行う。第1の条件は、第1の撮像素子による第1の露光時間と第2の撮像素子による第2の露光時間とが異なることである。第2の条件は、第1の撮像素子による第1の露光期間の少なくとも一部と第2の撮像素子による第2の露光期間の少なくとも一部とが重複することである。第3の条件は、照明光学系による照明光の投射期間の第1の部分が第1の撮像素子による第1の露光期間に重複することである。第4の条件は、照明光の投射期間の第2の部分が第2の撮像素子による第2の露光期間に重複することである。
【0385】
実施形態に係る眼科装置の第19の態様例は、第18の態様例の非限定的な特徴に加えて、次の非限定的な特徴を備えている。撮影部は、光学系を移動する移動機構を更に含んでいる。制御部は、第1の撮像素子を用いた第1の撮影を被検眼に繰り返し適用し且つ第2の撮像素子を用いた第2の撮影を被検眼に繰り返し適用するための撮影光学系の制御と、光学系を移動するための移動機構の制御とを組み合わせることにより、第1の撮像素子を用いた第1の撮影に対応する画像と第2の撮像素子を用いた第2の撮影に対応する画像を含む画像群を撮影部に繰り返し取得させるように構成されている。
【0386】
実施形態に係る眼科装置の第20の態様例は、第19の態様例の非限定的な特徴に加えて、次の非限定的な特徴を備えている。画像処理部は、撮影光学系の制御と移動機構の制御との組み合わせの下に撮影部により取得された複数の画像群に基づいて複数のハイダイナミックレンジ画像を生成するように構成されている。
【0387】
実施形態に係る眼科装置の第21の態様例は、第1~第20のいずれかの態様例の非限定的な特徴に加えて、次の非限定的な特徴を備えている。撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用することによって取得された被検眼の2つ以上の画像は、第1の画像及び第2の画像を含んでいる。画像処理部は、第1の画像から、所定の画素値条件を満足する第1の画素を特定する処理と、第1の画像から特定された第1の画素に対応する第2の画像の第2の画素の画素値に基づいて第1の画像の第1の画素の画素値を変更する処理とを実行するように構成されている。
【0388】
実施形態に係る眼科装置の第22の態様例は、第21の態様例の非限定的な特徴に加えて、次の非限定的な特徴を備えている。撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用することによって取得された被検眼の2つ以上の画像に含まれている第1の画像は、当該2つ以上の画像のうち相対的に明るい画像である。撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用することによって取得された被検眼の2つ以上の画像に含まれている第2の画像は、当該2つ以上の画像のうち相対的に暗い画像である。画像処理部は、相対的に明るい第1の画像から、予め定められた第1の閾値以上の輝度値を有する画素を第1の画素として特定するように構成されている。更に、画像処理部は、相対的に明るい第1の画像において第1の閾値以上の画素値を有する第1の画素に対応する相対的に暗い第2の画像の第2の画素の画素値に基づいて、相対的に明るい第1の画像において第1の閾値以上である第1の画素の画素値を変更するように構成されている。
【0389】
実施形態に係る眼科装置の第23の態様例は、第21の態様例の非限定的な特徴に加えて、次の非限定的な特徴を備えている。撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用することによって取得された被検眼の2つ以上の画像に含まれている第1の画像は、当該2つ以上の画像のうち相対的に暗い画像である。撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用することによって取得された被検眼の2つ以上の画像に含まれている第2の画像は、当該2つ以上の画像のうち相対的に明るい画像である。画像処理部は、相対的に暗い第1の画像から、予め定められた第2の閾値以下の輝度値を有する画素を第1の画素として特定するように構成されている。更に、画像処理部は、相対的に暗い第1の画像において第2の閾値以下の画素値を有する第1の画素に対応する相対的に明るい第2の画像の第2の画素の画素値に基づいて、相対的に暗い第1の画像において第2の閾値以下である第1の画素の画素値を変更するように構成されている。
【0390】
実施形態に係る眼科装置の第24の態様例は、第1~第23のいずれかの態様例の非限定的な特徴に加えて、次の非限定的な特徴を備えている。撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用することによって取得された被検眼の2つ以上の画像は、第1の画像及び第2の画像を含んでいる。画像処理部は、当該第1の画像から、被検眼の所定の部位に相当する第1の画像領域を特定する処理と、当該第2の画像から、被検眼の同じ部位に相当する第2の画像領域を特定する処理と、当該第1の画像における第1の画像領域の画素値を当該第2の画像における第2の画像領域の画素値に基づいて変更するように構成されている。
【0391】
実施形態に係る眼科装置の第25の態様例は、第1~24のいずれかの態様例の非限定的な特徴に加えて、次の非限定的な特徴を備えている。画像処理部は、撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用することによって取得された被検眼の2つ以上の画像にトーンマッピング処理を適用するように構成されている。
【0392】
実施形態に係る眼科装置の第26の態様例は、第1~第25のいずれかの態様例の非限定的な特徴に加えて、次の非限定的な特徴を備えている。光学系は、被検眼に照明光を投射する照明光学系と、被検眼を撮影する撮影光学系とを含んでいる。撮影部は、照明光学系及び撮影光学系を移動する移動機構を含んでいる。制御部は、撮影条件が異なる2回以上の撮影のための撮影部の制御において、被検眼に対する照明光の投射時間が撮影光学系の露光時間よりも短くなるように、且つ、被検眼に対する照明光の投射期間の少なくとも一部と撮影光学系の露光期間の少なくとも一部とが重複するように、照明光学系及び撮影光学系の少なくとも一方を制御するように構成されている。
【0393】
本開示において説明したように、これらの非限定的な特徴を有する眼科装置によれば、眼科イメージングで得られる画像の品質の向上を図ることが可能である。特に、光スキャンを用いた撮像方式の眼科イメージングで得られる画像の品質の向上を図ることが可能である。
【0394】
また、本開示において説明した任意の事項を、いずれかの非限定的な特徴を有する眼科装置に組み合わせることによって、眼科イメージングにおける更なる画像向上を図ることが可能であること、そして、眼科イメージングの様々な応用を提供することが可能であることは、当業者であれば理解することができるであろう。
【0395】
<他の実施形態>
ここまで眼科装置の実施形態について説明したが、本開示に係る実施形態は眼科装置に限定されない。眼科装置以外の実施形態として、眼科装置の制御方法、プログラム、記録媒体などがある。眼科装置の実施形態と同様に、これらの実施形態によっても、眼科イメージングにおける画質向上を図ることができる。
【0396】
一実施形態に係る眼科装置の制御方法は、眼科装置を制御する方法である。
【0397】
この眼科装置は、撮影部とプロセッサとを含んでいる。撮影部は、シャインプルーフの条件を満足する光学系を含んでいる。
【0398】
本実施形態に係る方法は、眼科装置に含まれているプロセッサを、制御部及び画像処理部として機能させるように構成されている。
【0399】
制御部として機能するプロセッサは、撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように撮影部の制御を行う。
【0400】
画像処理部として機能するプロセッサは、撮影条件が異なる2回以上の撮影により取得された被検眼の2つ以上の画像に基づいてハイダイナミックレンジ画像を生成する。
【0401】
本開示において説明した任意の事項を、本実施形態に係る方法に組み合わせることができる。
【0402】
一実施形態に係るプログラムは、眼科装置を動作させるためのプログラムである。
【0403】
この眼科装置は、撮影部とプロセッサとを含んでいる。撮影部は、シャインプルーフの条件を満足する光学系を含んでいる。
【0404】
本実施形態に係るプログラムは、眼科装置に含まれているプロセッサを、制御部及び画像処理部として機能させるように構成されている。
【0405】
本実施形態に係るプログラムにより制御部として機能するプロセッサは、撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように撮影部の制御を行う。
【0406】
本実施形態に係るプログラムにより画像処理部として機能するプロセッサは、撮影条件が異なる2回以上の撮影により取得された被検眼の2つ以上の画像に基づいてハイダイナミックレンジ画像を生成する。
【0407】
本開示において説明した任意の事項を、本実施形態に係るプログラムに組み合わせることができる。
【0408】
一実施形態に係る記録媒体は、眼科装置を動作させるためのプログラムが記録された、コンピュータ可読な非一時的記録媒体である。
【0409】
この眼科装置は、撮影部とプロセッサとを含んでいる。撮影部は、シャインプルーフの条件を満足する光学系を含んでいる。
【0410】
本実施形態に係る記録媒体に記録されているプログラムは、眼科装置に含まれているプロセッサを、制御部及び画像処理部として機能させるように構成されている。
【0411】
本実施形態に係る記録媒体に記録されているプログラムにより制御部として機能するプロセッサは、撮影条件が異なる2回以上の撮影を被検眼に適用するように撮影部の制御を行う。
【0412】
本実施形態に係る記録媒体に記録されているプログラムにより画像処理部として機能するプロセッサは、撮影条件が異なる2回以上の撮影により取得された被検眼の2つ以上の画像に基づいてハイダイナミックレンジ画像を生成する。
【0413】
本開示において説明した任意の事項を、本実施形態に係る記録媒体に組み合わせることができる。
【0414】
本実施形態に係る記録媒体として使用可能な、コンピュータ可読な非一時的記録媒体は、任意の形態の記録媒体であってよく、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、及び半導体メモリのいずれかであってよい。
【0415】
眼科装置の実施形態において説明された任意の事項を、眼科装置以外の実施形態に組み合わせることができる。
【0416】
例えば、実施形態に係る眼科装置の任意的な態様として説明された様々な事項のうちから任意に選択された事項を、眼科装置の制御方法の実施形態、プログラムの実施形態、記録媒体の実施形態などに組み合わせることができる。
【0417】
また、本開示において説明された任意の事項を、眼科装置の制御方法の実施形態、プログラムの実施形態、記録媒体の実施形態などに組み合わせることができる。
【0418】
本開示は、幾つかの実施形態及びその幾つかの例示的な態様を提示するものである。これらの実施形態及び態様は、本発明の例示に過ぎない。したがって、本発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加など)を、本開示において提示された実施形態や態様に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0419】
1 スリットランプ顕微鏡システム(眼科装置)
2 照明光学系
3 撮影光学系
3B 撮像素子
6 移動機構
7 制御部
20 照明光学系
30L 左撮影光学系
30R 右撮影光学系
33L、33R 撮像素子
1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700 眼科装置
1010 撮影部
1011 光学系
1012 照明光学系
1013、1013A、1013B 撮影光学系
1014、1014A、1014B 撮像素子
1019 移動機構
1020 制御部
1030 画像処理部