(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140092
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】投射型表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 3/36 20060101AFI20241003BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20241003BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20241003BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20241003BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 660E
G09G3/20 680C
G03B21/00 E
G03B21/14 Z
H04N5/74 B
G09G3/20 642A
G09G3/20 650C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051087
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】青木 透
(72)【発明者】
【氏名】水迫 和久
(72)【発明者】
【氏名】小室 佑介
【テーマコード(参考)】
2K203
5C006
5C058
5C080
【Fターム(参考)】
2K203FA03
2K203FA23
2K203FA34
2K203FA43
2K203FA62
2K203GB13
2K203GB26
2K203HA57
2K203HB13
2K203MA05
2K203MA26
5C006AA02
5C006AA22
5C006AF34
5C006AF44
5C006BB16
5C006BC06
5C006EC11
5C006FA22
5C006FA23
5C058AA06
5C058BA06
5C058EA02
5C058EA26
5C080AA10
5C080BB05
5C080CC03
5C080DD05
5C080DD06
5C080FF11
5C080JJ01
5C080JJ02
5C080JJ04
5C080JJ06
(57)【要約】
【課題】表示ムラを抑える。
【解決手段】投射型表示装置1は、Rの光に対応した第1パネル画素を有する液晶パネル100Rと、Gの光に対応した第2パネル画素を有する液晶パネル100Gと、第1パネル画素および第2パネル画素の投射位置をシフトする光路シフト素子230と、液晶パネル100R、100Gおよび光路シフト素子230を制御する表示制御回路20と、を含む。表示制御回路20は、光路シフト素子230に対し、1フレーム期間の第1単位期間から第4単位期間までの投射位置を単位期間毎にシフトする。第1単位期間から第4単位期間まで第1パネル画素が投射される経路の重心と、第1単位期間から第4単位期間まで第2パネル画素が投射される経路の重心とは、異なる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光に対応した第1パネル画素を有する第1液晶パネルと、
第2光に対応した第2パネル画素を有する第2液晶パネルと、
前記第1パネル画素および前記第2パネル画素の投射位置をシフトする光路シフト素子と、
前記第1液晶パネル、前記第2液晶パネルおよび前記光路シフト素子を制御する表示制御回路と、
を含み、
前記表示制御回路は、
前記光路シフト素子に対し、1フレーム期間に含まれる、第1単位期間から第k(kは2以上の整数)単位期間までのk個の単位期間毎に前記投射位置をシフトし、
映像画像を構成する画素データのうち、
前記第1光の画素データであって、前記投射位置に対応した画素データを前記単位期間毎に変換して前記第1パネル画素に供給し、
前記第2光の画素データであって、前記投射位置に対応した画素データを前記単位期間毎に変換して前記第2パネル画素に供給し、
前記第1単位期間から前記第k単位期間まで第1パネル画素が投射される経路の重心と、
前記第1単位期間から前記第k単位期間まで第2パネル画素が投射される経路の重心とが異なる
投射型表示装置。
【請求項2】
前記kは4であり、
前記第1液晶パネルでは、前記第1パネル画素が、第1方向および第2方向に沿ってマトリクス状に配列し、
前記第2液晶パネルでは、前記第2パネル画素が、前記第1方向および前記第2方向に沿ってマトリクス状に配列し、
前記第2パネル画素は、前記第1パネル画素に対して、前記第1方向および前記第2方向にパネル画素の半サイズで位置がずれている
請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項3】
前記光路シフト素子は、
前記投射画素の位置を、
前記1フレーム期間において、
第1単位期間から第2単位期間までにおいて前記第1軸に沿った一方方向にシフトし、
第2単位期間から第3単位期間までにおいて前記第2軸に沿った一方方向にシフトし、
第3単位期間から第4単位期間までにおいて前記第1軸に沿った他方方向にシフトし、
第4単位期間から前記第2フレーム期間の第1単位期間までにおいて前記第2軸に沿った他方方向にシフトする
請求項2に記載の投射型表示装置。
【請求項4】
前記1フレーム期間が、第1フレーム期間と第2フレーム期間とで連続する
請求項3に記載の投射型表示装置。
【請求項5】
前記表示制御回路は、
前記第1フレーム期間の第1単位期間から第4単位期間までにおいてシフト前の投射画素の位置からシフト後の投射画素の位置に向かうシフト方向が、
前記第2フレーム期間の第1単位期間から第4単位期間までにおいてシフト前の投射画素の位置からシフト後の投射画素の位置に向かうシフト方向と反対方向になるように前記光路シフト素子を制御する
請求項4に記載の投射型表示装置。
【請求項6】
さらに、第3光に対応した第3パネル画素を有する第3液晶パネルを有し、
前記第3パネル画素は、前記第1パネル画素と投射像でみて重なる
請求項1乃至5のいずれかに記載の投射型表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン等に、液晶パネルなどにより作成された画像光を投射する投射型表示装置において、光路シフト素子によって解像度を擬似的に高める技術が知られている。詳細には、投射型表示装置では、1フレーム期間が複数の単位期間に分けられ、液晶パネルにおける1つのパネル画素の投射位置が、当該複数の単位期間毎にシフトされて映像データにおける複数の画素データで指定された階調レベルを表現する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、投射された画像を拡大してみると、例えば明領域と暗領域とが表れる表示ムラが視認される、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る投射型表示装置は、第1光に対応した第1パネル画素を有する第1液晶パネルと、第2光に対応した第2パネル画素を有する第2液晶パネルと、前記第1パネル画素および前記第2パネル画素の投射位置をシフトする光路シフト素子と、前記第1液晶パネル、前記第2液晶パネルおよび前記光路シフト素子を制御する表示制御回路と、を含み、前記表示制御回路は、前記光路シフト素子に対し、1フレーム期間に含まれる、第1単位期間から第k(kは2以上の整数)単位期間までのk個の単位期間毎に前記投射位置をシフトし、映像画像を構成する画素データのうち、前記第1光の画素データであって、前記投射位置に対応した画素データを前記単位期間毎に変換して前記第1パネル画素に供給し、前記第2光の画素データであって、前記投射位置に対応した画素データを前記単位期間毎に変換して前記第2パネル画素に供給し、前記第1単位期間から前記第k単位期間まで第1パネル画素が投射される経路の重心と、前記第1単位期間から前記第k単位期間まで第2パネル画素が投射される経路の重心とが異なる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る投射型表示装置を示す図である。
【
図2】投射型表示装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】投射型表示装置における液晶パネルの構成を示す斜視図である。
【
図5】液晶パネルの電気的な構成を示すブロック図である。
【
図6】液晶パネルにおける画素回路の構成を示す図である。
【
図7】第1実施形態に係る投射型表示装置における1フレーム期間と単位期間とを示す図である。
【
図8】第1実施形態に係る光路シフト素子の動作を示す図である。
【
図9】映像画素の配列とパネル画素の配列との関係等を示す図である。
【
図10】第1実施形態においてGのパネル画素に供給される画素データの順番を示す図である。
【
図11】第1実施形態において1フレーム期間の映像画素とパネル画素と投射位置との関係を示す図である。
【
図12】比較例においてパネル画素同士の位置を投射像で示す図である。
【
図13】比較例における表示ムラを説明するための図である。
【
図14】第1実施形態においてパネル画素同士の位置を投射像で示す図である。
【
図15】第1実施形態における表示ムラを説明するための図である。
【
図16】第1実施形態における表示ムラの低減を説明するための図である。
【
図17】第1実施形態において1フレーム期間で読み出されるG成分の映像画素とRおよびB成分の映像画素との位置関係を示す図である。
【
図18】第2実施形態に係る投射型表示装置における奇数および偶数フレーム期間と単位期間とを示す図である。
【
図19】第2実施形態に係る光路シフト素子の動作を示す図である。
【
図20】第2実施形態において映像画素とパネル画素との関係を示す図である。
【
図21】映像画素の配列とパネル画素の配列との関係等を示す図である。
【
図22】第2実施形態においてGのパネル画素に供給される画素データの順番を示す図である。
【
図23】第2実施形態において奇数フレーム期間の映像画素とパネル画素と投射位置との関係を示す図である。
【
図24】第2実施形態において偶数フレーム期間の映像画素とパネル画素と投射位置との関係を示す図である。
【
図25】第2実施形態において偶数フレーム期間で読み出されるG成分の映像画素とRおよびB成分の映像画素との位置関係を示す図である。
【
図26】第2実施形態において偶数フレーム期間の表示ムラを説明するための図である。
【
図27】第2実施形態において偶数フレーム期間での表示ムラの低減を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態に係る投射型表示装置について図面を参照して説明する。なお、各図において、各部の寸法および縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0008】
図1は、第1実施形態に係る投射型表示装置1の光学的な構成を示す図である。図に示されるように、投射型表示装置1は、液晶パネル100R、100Gおよび100Bを含む。また、投射型表示装置1の内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット2102が設けられている。このランプユニット2102から射出された投射光は、内部に配置された3枚のミラー2106および2枚のダイクロイックミラー2108によって、赤(R)、緑(G)および青(B)の3原色に分離される。このうち、Rの光は液晶パネル100Rに、Gの光は液晶パネル100Gに、Bの光は液晶パネル100Bに、それぞれ入射する。
なお、Bの光路は、Rの光路およびGの光路と比較して長いので、Bの光路での損失を防ぐ必要がある。このため、Bの光路には、入射レンズ2122、リレーレンズ2123および出射レンズ2124からなるリレーレンズ系2121が設けられる。
【0009】
液晶パネル100Rは、複数の画素回路を有する。複数の画素回路の各々は、それぞれ液晶素子を含む。液晶パネル100Rの液晶素子は、後述するようにRに対応するデータ信号に基づいて駆動されることによって、当該データ信号の電圧に応じた透過率となる。
このため、液晶パネル100Rでは、液晶素子の透過率を個別に制御することによって、Rの透過像が生成される。同様に、液晶パネル100Gでは、Gに対応するデータ信号に基づいてGの透過像が生成され、液晶パネル100Bでは、Bに対応するデータ信号に基づいてBの透過像が生成される。
【0010】
液晶パネル100R、100Gおよび100Bによってそれぞれ生成された各色の透過像は、ダイクロイックプリズム2112に三方向から入射する。ダイクロイックプリズム2112において、RおよびBの光は90度に屈折する一方、Gの光は直進する。したがって、ダイクロイックプリズム2112が各色の画像を合成する。ダイクロイックプリズム2112による合成像は光路シフト素子230を介して投射レンズ2114に入射する。
投射レンズ2114は、光路シフト素子230を介した合成像を、スクリーンScrに拡大して投射する。
【0011】
光路シフト素子230は、ダイクロイックプリズム2112から出射される合成像をシフトする。詳細には、光路シフト素子230は、スクリーンScrに投射される画像を、投射面に対し左右方向または/および上下方向にシフトする。
【0012】
なお、液晶パネル100R、100Bによる透過像は、ダイクロイックプリズム2112により反射した後に投射されるのに対し、液晶パネル100Gによる透過像は直進して投射される。したがって、液晶パネル100R、100Bによる各透過像は、液晶パネル100Gの透過像に対して左右反転した関係となる。
説明の便宜のため、投射型表示装置1からスクリーンScrの投射面を見た場合に、左右方向をX軸とし、上下方向をY軸とする。なお、X軸に沿った左右方向のうち、右方向をX方向とし、左方向をX方向の反対方向とする。また、Y軸に沿った上下方向のうち、下方向をY方向とし、上方向をY方向の反対方向とする。投射型表示装置1の投射方向をZ方向とする。
【0013】
図2は、投射型表示装置1の電気的な構成を示すブロック図である。図に示されるように、投射型表示装置1は、表示制御回路20と、上述した液晶パネル100R、100Gおよび100Bと、光路シフト素子230とを含む。
【0014】
図示省略されたホスト装置等の上位装置から、映像データVid-inが同期信号Syncに同期して供給される。映像データVid-inは、表示すべき画像における画素の階調レベルを、RGB毎に例えば8ビットで指定する。
【0015】
なお、映像データVid-inで指定される画像の画素を映像画素と表記し、映像画素の階調レベルを指定するデータを画素データと表記し、液晶パネル100R、100Gまたは100Bによる合成前の像の画素をパネル画素と表記する。また、光路シフト素子230によってシフトされて、スクリーンScrに投射されるパネル画素の位置を、投射位置と表記する。
液晶パネル100R、100Gおよび100Bでは、パネル画素が投射像でみればX軸およびY軸に沿ってマトリクス状に配列する。第1実施形態において、映像データVid-inで階調レベルが指定される映像画素の配列は、液晶パネル100R、100Gまたは100Bによるパネル画素の配列と比較して、例えば、縦方向で2倍、横方向で2倍となっている。
【0016】
第1実施形態において、スクリーンScrに投射されるカラー画像は、液晶パネル100R、100Gおよび100Bの各透過像を合成することで表現される。したがって、カラー画像の最小単位である画素は、液晶パネル100Rによる赤の副画素、液晶パネル100Gによる緑の副画素、および、液晶パネル100Bによる青の副画素に分けることができる。ただし、液晶パネル100R、100Gおよび100Bにおける副画素について、色を特定する必要がない場合や、単に明暗のみを問題とする場合等では、副画素と敢えて表記する必要がない。そこで本説明では、液晶パネル100R、100Gおよび100Bにおける表示単位についても、パネル画素とする。
【0017】
同期信号Syncには、映像データVid-inの垂直走査開始を指示する垂直同期信号や、水平走査開始を指示する水平同期信号、および、映像データVid-inにおける映像画素の1つ分のタイミングを示すクロック信号が含まれる。
【0018】
表示制御回路20は、処理回路22、変換回路23R、23Gおよび23Bを含む。
処理回路22は、上位装置から供給される映像データVid-inを、1または2以上のフレーム期間分を内部のバッファで一旦蓄積した後、光路シフト素子230による投射位置に対応する映像画素の画素データを、RGB成分別に出力する。
【0019】
なお、処理回路22から出力される画素データのうち、Rの成分を画素データVad_Rと表記し、Gの成分を画素データVad_Gと表記し、Bの成分を画素データVad_Bと表記する。また、本実施形態では、画素データVad_Gが指定する映像画素と、画素データVad_RおよびVad_Bが指定する映像画素とは、同一ではない。詳細には後述するように、画素データVad_RおよびVad_Bが指定する映像画素は、画素データVad_Gが指定する映像画素を基準にして、右方向に映像画素で1画素分、下方向に映像画素で1画素分シフトした関係にある。
【0020】
本実施形態では、1フレーム期間を4分割した単位期間毎に投射位置が変化するので、連続する1フレーム期間における4つの単位期間では、投射位置として4箇所とすることが可能である。
なお、単位期間とは、映像データVid-inで指定される1フレーム期間の画像の解像度を1/4に落とした画像を、液晶パネル100R、100Gおよび100Bによる合成画像でユーザに視認させるための期間である。
【0021】
処理回路22は、各単位期間において光路シフト素子230による投射位置を制御する。詳細には、処理回路22は、光路シフト素子230に対し、X軸に沿った方向のシフトを制御信号P_xで制御し、Y軸に沿った方向のシフトを制御信号P_yで制御する。
なお、単位期間毎の投射位置、および、パネル画素が各投射位置に対応して映像データVid-in で指定される映像画素のうち、どの映像画素を表現するかの詳細については後述する。
また、処理回路22は、液晶パネル100R、100Gおよび100Bを単位期間毎に制御するための制御信号Ctrを生成する。
【0022】
変換回路23Rは、画素データVad_Rをアナログ電圧のデータ信号Vid_Rに変換して液晶パネル100Rに供給する。変換回路23Gは、画素データVad_Gをアナログ電圧のデータ信号Vid_Gに変換して液晶パネル100Gに供給する。変換回路23Bは、画素データVad_Bをアナログ電圧のデータ信号Vid_Bに変換して液晶パネル100Bに供給する。
【0023】
次に、液晶パネル100R、100Gおよび100Bについて説明する。液晶パネル100R、100Gおよび100Bについては、入射する光の色、すなわち波長だけが異なり、構造的には共通である。そこで、液晶パネル100R、100Gおよび100Bについては、符号を100として、色を特定しないで一般的に説明する。
【0024】
図3は、液晶パネル100の要部を示す図であり、
図4は、
図3におけるH-h線で切断した断面図である。
これらの図に示されるように、液晶パネル100では、画素電極118が設けられた素子基板100aと、コモン電極108が設けられた対向基板100bとが、一定の間隙を保ちつつ、互いに電極形成面が対向するようにシール材90によって貼り合わせられ、この間隙に液晶105が封入されている。
【0025】
素子基板100aおよび対向基板100bとしては、それぞれガラスや石英などの光透過性を有する基板が用いられる。
図3に示されるように、素子基板100aにおける一辺は、対向基板100bから張り出している。この張り出した領域に、図において横方向に沿って複数の端子106が設けられている。複数の端子106には、図示省略されたFPC(Flexible Printed Circuits)基板の一端が接続される。なお、当該FPC基板の他端は、表示制御回路20に接続されて、上述した各種の信号が供給される。
【0026】
素子基板100aにおいて対向基板100bに向かう面には、画素電極118が、例えばITO(Indium Tin Oxide)などの透明性を有する導電層のパターニングによって形成される。
また、特に図示しないが、対向基板100b(または素子基板100a)には、パネル画素となる開口部に多くの光を効率よく送り込むために、マイクロレンズがパネル画素毎に設けられる。この構成によって遮光部で弾かれていた光がマイクロレンズの開口部に送り込まれるので、光の利用効率が高められる。
【0027】
図5は、液晶パネル100の電気的な構成を示すブロック図である。液晶パネル100には、表示領域10の周縁に、走査線駆動回路130およびデータ線駆動回路140が設けられる。
【0028】
液晶パネル100の表示領域10においては、画素回路110がマトリクス状に配列される。詳細には、表示領域10において、複数本の走査線12が図において横方向に延在して設けられ、また、複数本のデータ線14が縦方向に延在し、かつ、走査線12と互いに電気的な絶縁を保って設けられる。そして、複数本の走査線12と複数本のデータ線14との交差に対応して画素回路110がマトリクス状に設けられる。
【0029】
走査線12の本数をmとし、データ線14の本数をnとした場合、画素回路110は、縦m行×横n列でマトリクス状に配列する。m、nは、いずれも2以上の整数である。走査線12と画素回路110とにおいて、マトリクスの行を区別するために、図において上から順に1、2、3、…、(m-1)、m行と呼ぶ場合がある。同様にデータ線14および画素回路110において、マトリクスの列を区別するために、図において左から順に1、2、3、…、(n-1)、n列と呼ぶ場合がある。
【0030】
走査線駆動回路130は、表示制御回路200による制御にしたがって走査線12を例えば1、2、3、…、m行目という順番で1本ずつ選択し、選択した走査線12への走査信号をHレベルとする。なお、走査線駆動回路130は、選択した走査線12以外の走査線12への走査信号をLレベルとする。
データ線駆動回路140は、処理回路220R、220Gまたは220Bのうち、対応する色の回路から供給されたデータ信号を1行分ラッチするとともに、走査線12への走査信号がHレベルとなった期間において、当該走査線12に位置する画素回路110に、データ線14を介して出力する。
【0031】
図6は、隣り合う2本の走査線12と、隣り合う2本のデータ線14との交差に対応する縦2行横2列の計4個の、画素回路110の等価回路を示す図である。
図に示されるように、画素回路110は、トランジスター116と液晶素子120とを含む。トランジスター116は、例えばnチャネル型の薄膜トランジスターである。画素回路110において、トランジスター116のゲートノードは、走査線12に接続される一方、そのソースノードはデータ線14に接続され、そのドレインノードは、平面視で正方形形状の画素電極118に接続される。
【0032】
画素電極118に対向するようにコモン電極108が全画素に対して共通に設けられる。コモン電極108には電圧LCcomが印加される。そして、画素電極118とコモン電極108との間には上述したように液晶105が挟持される。したがって、画素回路110毎に、画素電極118およびコモン電極108によって液晶105を挟持した液晶素子120が構成される。
また、液晶素子120に対して並列に蓄積容量109が設けられる。蓄積容量109において、一端が画素電極118に接続され、他端が容量線107に接続されている。容量線107は、時間的に一定の電圧、例えば、コモン電極108への印加電圧と同じ電圧LCcomが印加される。画素回路110は、走査線12の延在方向である横方向とデータ線14の延在方向である縦方向とにわたってマトリクス状に配列するので、画素回路110に含まれる画素電極118についても縦方向および横方向にわたって配列する。
【0033】
走査信号がHレベルとなった走査線12では、当該走査線12に対応して設けられる画素回路110のトランジスター116がオン状態になる。トランジスター116のオン状態により、データ線14と画素電極118とが電気的に接続された状態となるので、データ線14に供給されたデータ信号が、オン状態になったトランジスター116を介して画素電極118に到達する。走査線12がLレベルになると、トランジスター116はオフ状態になるが、画素電極118に到達したデータ信号の電圧は、液晶素子120の容量性および蓄積容量109によって保持される。
【0034】
周知のように、液晶素子120では、画素電極118およびコモン電極108によって生じる電界に応じて液晶分子の配向が変化する。したがって、液晶素子120は、印加された電圧の実効値に応じた透過率となる。
なお、液晶素子120においてパネル画素として機能する領域、すなわち、電圧の実効値に応じた透過率となる領域は、素子基板100aおよび対向基板100bを平面視したときに、画素電極118とコモン電極108とが重なる領域である。画素電極118は、平面視で正方形であるので、液晶パネル100による画素の形状も正方形となる。
また、本実施形態において、液晶105が、VA(Vertical Alignment)方式であって、液晶素子120への印加電圧がゼロであるときに透過率が最低であり、印加電圧が高くなるにつれて、透過率が高くなるノーマリーブラックモードである。
【0035】
液晶素子120の画素電極118にデータ信号を供給する動作が、1つの単位期間において1、2、3、…、m行目という順番で実行される。これによりm行n列で配列する画素回路110の液晶素子120の各々にデータ信号に応じた電圧が保持されて、各液晶素子120が目的とする透過率となり、m行n列で配列する液晶素子120によって、対応する色の透過像が生成される。
このように透過像の生成がRGB毎に実行されて、RGBを合成したカラー画像がスクリーンScrに投射される。
1つの単位期間に対応して処理回路22から出力される映像画素の画素データVad_R、Vad_GおよびVad_Bは、当該単位期間に対応する映像画素の画素データである。このため、当該単位期間では投射位置に対応したカラーの合成画像が、当該投射位置において投射される。
【0036】
上述したように、映像データVid-inにおける映像画素の配列は、液晶パネル100R、100Gおよび100Bにおけるパネル画素の配列であるm行n列に対して縦方向で2倍、横方向で2倍であり、2m行2n列である。換言すれば、パネル画素の配列は、映像画素の配列に比べて縦方向で1/2倍、横方向で1/2倍である。
そこで、本実施形態では、1フレーム期間でみて、1つのパネル画素を、縦2地点×横2地点の計4箇所でシフトさせることによって、1つのパネル画素が、映像データVid-inで指定される4つの映像画素を示しているかのように視認させる。
【0037】
図7は、第1実施形態におけるフレームと単位期間との関係を説明するための図である。図に示されるように、本実施形態では、1フレーム(1F)期間が、4つの単位期間に分割される。1フレーム期間における4つの単位期間を区別するために便宜的に、符号が、時間の順にf1-1、f1-2、f1-3、f1-4と付与される。
なお、1フレーム期間に含まれる単位期間の個数の「4」は、2以上である整数kの一例である。
【0038】
1フレーム期間とは、上位装置からの映像データVid-inで示される画像の1コマ分が供給される期間であり、同期信号Syncに含まれる垂直同期信号の周波数が60Hzである場合、1周期の16.7ミリ秒である。この場合、各単位期間の長さは、それぞれ1フレーム期間の長さの1/4である4.17ミリ秒である。
【0039】
図8は、光路シフト素子230に供給される制御信号P_xおよびP_yの波形の一例を示す図である。
光路シフト素子230は、スクリーンScrに投射される画像を、投射面に対しX軸およびY軸に沿って方向にシフトする。便宜的に当該シフトの量については、スクリーンScrにおいて投写される画素の大きさ、すなわちパネル画素の大きさに換算して説明する。
【0040】
本実施形態において、制御信号P_xおよびP_yは、単位期間f1-1~f1-4の後端期間以外において0または-Aの二値のいずれかのレベルをとる。制御信号P_xおよびP_yのレベルは、後端期間において変化する。後端期間とは、垂直走査帰線期間に相当する期間である。
なお、制御信号P_xまたはP_yのレベルは、連続する2つの単位期間に跨がってレベルが一定となる場合もある。
【0041】
1フレーム期間における単位期間f1-1のうち、後端期間以外の期間における投射位置、すなわち、制御信号P_xおよびP_yのレベルが0である期間における投射位置を、上述した基準位置とする。
光路シフト素子230は、制御信号P_xのレベルが-Aであれば、投射位置を基準位置からX方向の反対方向にパネル画素の半分だけシフトさせる。また、光路シフト素子230は、制御信号P_yのレベルが-Aであれば、投射位置を基準位置からY方向の反対方向にパネル画素の半分だけシフトさせる。
【0042】
なお、
図8において各単位期間の後端期間に示される矢印は、当該後端期間において制御信号P_xおよびP_yのレベルが変化または維持した場合に、投射位置がどの方向にシフトするのかを示す。
また、光路シフト素子230による投射位置のシフトは、制御信号P_xおよびP_yのレベル通りではなく、時間遅れを伴う場合がある。
【0043】
次に、1フレーム期間において、液晶パネル100GによるGのパネル画素が、映像データVid-inの映像画素のうち、どの映像画素のG成分を表現するかについて説明する。なお、パネル画素が、ある映像画素を表現するとは、当該パネル画素が、当該映像画素に対応するデータ信号によって、当該画素データで指定される階調レベルに相当する輝度(明るさ)になることをいう。
【0044】
図9における左欄は、映像画素の配列を説明するために、映像データVid-inで示される映像画像のうち、一部だけを抜き出した図である。また、同図における右欄は、Gのパネル画素のうち、当該左欄における映像画素の配列に対応したパネル画素の配列を示す図である。
【0045】
なお、
図9における左欄では、映像データVid-inの映像画素を区別するために、便宜的に符号として1行目にA11、B11、A21、B21、A31、B31が、それぞれ付与される。2~4行目についても同様に、図に示されるように符号がそれぞれ付与される。
図9における右欄では、パネル画素を区別するために、便宜的に符号として1行目にp11、p21、p31が、2行目にp12、p22、p32が、それぞれ付与される。
【0046】
図10は、Gにおける1つのパネル画素p11が、1フレーム期間において表現する映像画素(G成分)の順番を示す図である。なお、図において縦2行×横2列の計4個の映像画素を囲む太線は、Gのパネル画素p11が表現する映像画素のまとまりを示す。図に示されるように、パネル画素p11は、1フレーム期間において、順に映像画素C11、B11、A11、D11を表現する。
【0047】
図11は、実施形態に係る投射型表示装置1において、Gのパネル画素が、どの映像画素を、どの投射位置で表現するのかを示す図である。詳細には、
図12は、
図9の右欄における6個のパネル画素が、
図9の左欄における映像画素のG成分を、1フレーム期間の単位期間f1-1~f1-4において、どの投射位置で表現するのかを示す図である。
【0048】
上述したように1フレーム期間の単位期間f1-1における投射位置を基準位置とする。
図11に示されるように、1フレーム期間の単位期間f1-1において、Gのパネル画素p11、p21、p31、p12、p22およびp32は、ハッチングが付された映像画素C11、C21、C31、C12、C22およびC32のG成分を順に表現する。
【0049】
単位期間f1-1の後端期間(垂直帰線期間)において、光路シフト素子230は、投射位置を、破線で示される単位期間f1-1における基準位置から、図において上方向(Y方向の反対方向)にパネル画素の0.5画素分シフトさせる。次の単位期間f1-2では、パネル画素p11、p21、p31、p12、p22およびp32は、ハッチングが付された映像画素B11、B21、B31、B12、B22およびB32のG成分を順に表現する。
単位期間f1-2の後端期間において、光路シフト素子230は、投射位置を、破線で示される単位期間f1-2における投射位置から、図において左方向(X方向の反対方向)にパネル画素の0.5画素分シフトさせる。次の単位期間f1-3では、パネル画素p11、p21、p31、p12、p22およびp32は、ハッチングが付された映像画素A11、A21、A31、A12、A22およびA32のG成分を順に表現する。
単位期間f1-3の後端期間において、光路シフト素子230は、投射位置を、破線で示される単位期間f1-3における投射位置から、図において下方向(Y方向)にパネル画素の0.5画素分シフトさせる。次の単位期間f1-4では、パネル画素p11、p21、p31、p12、p22およびp32は、ハッチングが付された映像画素D11、D21、D31、D12、D22およびD32のG成分を順に表現する。
【0050】
単位期間f1-4の後端期間において、光路シフト素子230は、投射位置を、破線で示される単位期間f1-4における投射位置から、図において右方向(X方向)にパネル画素の0.5画素分シフトさせて基準位置に戻す。
次の1フレームの期間に移行して、パネル画素は、単位期間f1-1~f1-4の投射位置において、映像画素を表現する動作を繰り返す。
【0051】
図11において、Gのパネル画素p11、p21、p31、p12、p22およびp32は、単位期間1-1において順に映像画素C11、C21、C31、C12、C22およびC32を表現する。すなわち、各単位期間においてパネル画素で表現される映像画素は、1つおきになる。
このように映像画素でみれば隣り合わないが、同一の単位期間においてパネル画素で表現される映像画素を同系列にある、と説明することがある。上記の例でいえば、映像画素C11、C21、C31、C12、C22およびC32が同系列である。
【0052】
ここで、実施形態に係る投射型表示装置1の優位性を説明するために、実施形態に対する比較例について説明する。
上述したように、投射型表示装置1は、液晶パネル100Rによる赤色の画像、液晶パネル100Gによる緑色の画像、および、液晶パネル100Bによる青色の画像の合成によりカラー画像が投射される。
【0053】
図12は、比較例に係る液晶パネル100R、100Gおよび100Bにおけるパネル画素の位置関係を投射像でみた場合で示す図である。この図に示されるように、液晶パネル100Rのパネル画素、液晶パネル100Gのパネル画素、および、液晶パネル100Bのパネル画素は、合成したときに一致する位置関係にある。
【0054】
図13は、比較例における表示ムラを説明するための図である。液晶パネル100R、100Gおよび100Bには、上述したように、光の利用効率を高めるためにマイクロレンズがパネル画素毎に設けられる。このため、パネル画素は、均一でなく、実際には、
図13の上欄に示されるように、中央付近で明るくなり、中央付近から外側に向かうにつれて暗くなる。なお、枠Repは、基準位置において、液晶パネル100R、100Gおよび100Bによるパネル画素の外縁を示している。
【0055】
このように視認されるパネル画素が、単位期間f1-1~f1-4において、
図13の中欄に示されるように、基準位置から順に、上方向→左方向→下方向→右方向に0.5画素分ずつシフトされる。
このため、1フレーム期間で通してみたときに、パネル画素では、明るい領域が
図13の下欄において矢印で示される経路で循環する結果、比較的明るい領域として視認される明領域Braと、それ以外の暗領域Draとに別れてしまう。これが表示ムラとして視認されてしまう。
図における矢印は、パネル画素における平面視の中心のシフトによる移動方向を示す。パネル画素における平面視の中心は、明領域Braの中心でもある。この表示ムラは、比較的明るい静止画を表示する場合に視認されやすい。
また、
図13の下欄では、暗領域Draが格子状で示されているが、実際には、暗領域Draは、明領域Bra以外の領域である。
【0056】
そこで、このような表示ムラを抑えるために、本実施形態では、
図14に示される液晶パネル100Gに対して、液晶パネル100Rおよび100Bの位置が、右方向に0.5画素、下方向に0.5画素だけずれている。詳細には、スクリーンScrへの投射像でみた場合に、液晶パネル100Gのパネル画素を基準して液晶パネル100Rおよび100Bのパネル画素が、X方向に0.5画素、Y方向に0.5画素ずれる位置に、ダイクロイックプリズム2112に対して、液晶パネル100R、100Gおよび100Bが取り付けられている。
【0057】
本実施形態において、液晶パネル100Gのパネル画素は、単位期間f1-1~f1-4において、
図15の左上欄に示されるように比較例と同様に、基準位置から順に、上方向→左方向→下方向→右方向に0.5画素分ずつシフトされる。
なお、枠Rgpは、説明便宜のために、基準位置において、液晶パネル100Gによるパネル画素の外縁を示している。
液晶パネル100Gの単体において、1フレーム期間で通してみたときに、Gのパネル画素では、明るい領域が図の左下欄において矢印で示される経路で循環する結果、比較例と同様に、明領域Braと、それ以外の暗領域Draとに別れてしまう。
【0058】
液晶パネル100Rおよび100Bのパネル画素は、単位期間f1-1~f1-4において、
図15の右上欄に示されるように、基準位置から順に、上方向→左方向→下方向→右方向に0.5画素分ずつシフトされる。なお、破線で示される枠Rhpは、説明便宜のために、枠Rgpのパネル画素とマトリクス配列でみて同じ位置のパネル画素であって、基準位置における液晶パネル100Rおよび100Bによるパネル画素の外縁を示している。枠Rhpは、枠Rgpに対して、右方向に0.5画素、下方向に0.5画素ずれている。
液晶パネル100Rおよび100Gの合成において、1フレーム期間で通してみたときに、RおよびBのパネル画素では、同様に、明るい領域が図の右下欄において矢印で示される経路で循環する結果、明領域Braと、それ以外の暗領域Draとに別れてしまう。
【0059】
しかしながら、本実施形態において、
図15の左下欄で示される液晶パネル100Gのパネル画素と、
図15の右下欄で示される液晶パネル100Rおよび100Bのパネル画素とが合成されると、
図16に示されるように、明領域Braと暗領域Draとが交互にずれて重なり合う。したがって、本実施形態に係る投射型表示装置1は、表示ムラを比較例に対して低減することができる。
【0060】
換言すれば、液晶パネル100Gにおいてパネル画素がシフトしたときの経路の重心Cegと、液晶パネル100Rおよび1000Gにおいてパネル画素がシフトしたときの経路の重心Cegとが一致していると、比較例のように表示ムラが視認されるが、本実施形態では、一致せずに、異なるので、表示ムラを比較例に対して低減することができる。
本実施形態では、液晶パネル100Gに対して、液晶パネル100Rおよび100Bの位置が、パネル画素でみて右方向に0.5画素、下方向に0.5画素ずつずれているので、Gの映像画素と、RおよびBの映像画素との位置ずれを考慮する必要がある。このため、液晶パネル100Gが、ある単位期間において、ある映像画素(G成分)を表現する場合、液晶パネル100Rは、液晶パネル100Gが表現する映像画素に対して、右方向に映像画素でみて1画素シフトし、下方向に映像画素でみて1画素シフトした映像画素(R成分)を表現する。同様に、液晶パネル100Bは、液晶パネル100Gが表現する映像画素に対して、右方向に1画素および下方向に1画素シフトした映像画素(B成分)を表現する。
【0061】
具体的には、液晶パネル100Gのパネル画素がp11、p21、p31、p12、p22およびp32が、単位期間f1-1~f1-4において、
図17の左欄でハッチングが付された映像画素を表現する場合、液晶パネル100Rおよび100Bにおいて同じ(右および下方向に0.5画素分位置がずれた)パネル画素が
図17の右欄でハッチングが付された映像画素を表現する構成とする。なお、
図17の右欄において太枠で示される映像画素は、液晶パネル100Gで表現される映像画素を示す。
このような構成は、例えば、処理回路22がバッファから読み出す画素データVad_Gに対して、1行分下であって、右方向に1列分だけシフトした画素データVad_RおよびVad_Bを、読み出す構成とすればよい。
【0062】
次に、第2実施形態について説明する。
図18は、第2実施形態におけるフレームと単位期間との関係を説明するための図である。図に示されるように、本実施形態では、2フレーム(2F)期間が、時間的に先の奇数フレーム(Odd Frame)期間と、時間的に後の偶数フレーム(Even Frame)期間とに分けられる。
【0063】
奇数フレーム期間は、第1実施形態と同様に4つの単位期間に分割される。偶数フレーム期間は、奇数フレーム期間と同様に4つの単位期間に分割される。このため、2フレーム(2F)期間における単位期間の個数は「8」になる。
奇数フレーム期間における4つの単位期間を区別するために便宜的に、符号が、時間の順にf1-1、f1-2、f1-3、f1-4と付与される。偶数フレーム期間も同様に4つの単位期間に分割される。偶数フレーム期間における4つの単位期間を区別するために便宜的に、符号が、時間の順にf2-1、f2-2、f2-3、f2-4と付与される。
【0064】
図19は、第2実施形態において、光路シフト素子230に供給される制御信号P_xおよびP_yの波形の一例を示す図である。
第2実施形態では、制御信号P_xおよびP_yが、単位期間f1-1~f1-4およびf2-1~f2-4における後端期間以外において+A、0または-Aの三値のいずれかのレベルをとる。
制御信号P_xおよびP_yが、0または-Aである場合の投射位置は、第1実施形態と同様である。また、第2実施形態において、光路シフト素子230は、制御信号P_xのレベルが+Aであれば、投射位置を基準位置からX方向にパネル画素の半分だけシフトさせる。光路シフト素子230は、制御信号P_yのレベルが+Aであれば、投射位置を基準位置からY方向にパネル画素の半分だけシフトさせる。
【0065】
次に、奇数フレーム期間および偶数フレーム期間において、液晶パネル100GによるGのパネル画素が、映像データVid-inの映像画素のうち、どの映像画素を表現するかについて説明する。
【0066】
図20における左欄は、映像画素の配列を説明するために、映像データVid-inで示される映像画像のうち、一部だけを抜き出した図である。また、同図における右欄は、パネル画素のうち、当該左欄における映像画素の配列に対応したGのパネル画素の配列を示す図である。
図20の左欄では、説明のために、
図9の左欄と比較して、映像画素としてD41、A42、D42、B13、A23、B23、A33、B33およびA43が追加されている。
【0067】
図21は、パネル画素が、奇数フレーム期間と偶数フレーム期間とにおいて表現する映像画素を示す図である。なお、図において縦2行×横2列の計4個の映像画素を囲む太線の黒枠は、1つのパネル画素が表現する映像画素のまとまりを示す。1つのパネル画素が表現する4つの映像画素は、奇数フレーム期間と偶数フレーム期間とで異なる。詳細には、ある1つのパネル画素が偶数フレーム期間において表現する2×2の映像画素は、当該パネル画素が奇数フレーム期間において表現する2×2の映像画素に対して、第2実施形態では、右方向に映像画素で1画素および下方向に映像画素で1画素ずれた関係にある。
【0068】
図22は、特に液晶パネル100Gのパネル画素p11に着目し、当該パネル画素p11が奇数フレーム期間と偶数フレーム期間とにおいて表現する映像画素(G成分)の順番を示す図である。
第2実施形態では、当該パネル画素p11は、奇数フレーム期間の単位期間f1-1~1-4において第1実施形態と同様に、順に映像画素C11、B11、A11、D11を表現する。また、当該パネル画素p11は、偶数フレーム期間の単位期間f2-1~2-4において、順に映像画素C12、B11、A11、D11を表現する。換言すれば、パネル画素p11が奇数フレーム期間において映像画素を表現する順序と、偶数フレーム期間において映像画素を表現する順序とは、映像画素C11を基準にして点対称の関係にある。
【0069】
このため、第2実施形態において、例えば奇数フレーム期間の単位期間f1-1から単位期間f1-2までにおいてシフト前の投射画素からシフト後の投射画素に向かうシフト方向と、偶数フレーム期間の単位期間f2-1から単位期間f2-2までにおいてシフト前の投射画素からシフト後の投射画素に向かうシフト方向と、反対方向になる。また、例えば奇数フレーム期間の単位期間f1-2から単位期間f1-3までにおいてシフト前の投射画素からシフト後の投射画素に向かうシフト方向と、偶数フレーム期間の単位期間f2-2から単位期間f2-3までにおいてシフト前の投射画素からシフト後の投射画素に向かうシフト方向とについても、反対方向になる。
【0070】
図23および
図24は、第2実施形態に係る投射型表示装置1において、液晶パネル100Gのパネル画素が、どの映像画素を、どの投射位置で表現するのかを示す図である。詳細には、
図23は、
図20における6個のパネル画素が、
図20の左欄における映像画素を、奇数フレーム期間の単位期間f1-1~f1-4において、どの投射位置で表現するのかを示す図である。また、
図24は、パネル画素の6個が、映像画素を、偶数フレーム期間の単位期間f2-1~f2-4において、どの投射位置で表現するのかを示す図である。
【0071】
なお、第2実施形態における奇数フレーム期間の動作(
図23)は、第1実施形態における1フレーム期間の動作(
図11)とは、単位期間f1-1に戻る方向が異なる以外、共通である。このため、第2実施形態では、主に偶数フレームの期間について説明する。
【0072】
第2実施形態では、単位期間f1-4の後端期間において、光路シフト素子230は、投射位置を、破線で示される単位期間f1-4における投射位置から、
図24において右方向(X方向)にパネル画素の0.5画素分シフトさせて基準位置に戻す。偶数フレーム期間における最初の単位期間f2-1では、液晶パネル100Gのパネル画素p11、p21、p31、p12、p22およびp32は、ハッチングが付された映像画素C11、C21、C31、C12、C22およびC32をそれぞれ表現する。すなわち、ある1つのパネル画素が単位期間1-1において表現する映像画素と、当該1つのパネル画素が単位期間2-1において表現する映像画素とは同一である。
単位期間f2-1の後端期間において、光路シフト素子230は、投射位置を、破線で示される単位期間f2-1における基準位置から、図において下方向(Y方向)にパネル画素の0.5画素分シフトさせる。次の単位期間f2-2では、液晶パネル100Gのパネル画素p11、p21、p31、p12、p22およびp32は、ハッチングが付された映像画素B12、B22、B32、B13、B23およびB33をそれぞれ表現する。
単位期間f2-2の後端期間において、光路シフト素子230は、投射位置を、破線で示される単位期間f2-2における投射位置から、図において右方向(X方向)にパネル画素の0.5画素分シフトさせる。また、単位期間f2-3では、液晶パネル100Gのパネル画素p11、p21、p31、p12、p22およびp32は、ハッチングが付された映像画素A22、A32、A42、A23、A33およびA42をそれぞれ表現する。
単位期間f2-3の後端期間において、光路シフト素子230は、投射位置を、破線で示される単位期間f2-3における投射位置から、図において上方向(Y方向の反対方向)にパネル画素の0.5画素分シフトさせる。次の単位期間f2-4では、液晶パネル100Gのパネル画素p11、p21、p31、p12、p22およびp32は、ハッチングが付された映像画素D21、D31、D41、D22、D32およびD42をそれぞれ表現する。
単位期間f2-4の後端期間において、光路シフト素子230は、投射位置を、破線で示される投射位置から、図において左方向(X方向の反対方向)にパネル画素の0.5画素分シフトさせて基準位置に戻す。
【0073】
図25は、偶数フレーム期間の単位期間f2-1~f2-4において処理回路22から読み出される画素データVad_Gの映像画素と、画素データVad_RおよびVad_Bの映像画素との位置関係を示す図である。
【0074】
具体的には、液晶パネル100Gのパネル画素がp11、p21、p31、p12、p22およびp32が、単位期間f2-1~f2-4において、
図25の左欄でハッチングが付された映像画素を表現する場合、当該映像画素に対して、右方向に映像画素で0.5画素、下方向に映像画素で0.5画素だけシフトした映像画素が、液晶パネル100Rおよび100Bにおいて同じ(右および下方向に0.5画素分位置がずれた)パネル画素で表現される。
【0075】
第2実施形態において、奇数フレーム期間の動作は、第1実施形態における1フレーム期間の動作とほぼ同様である。
このため、第2実施形態における奇数フレームの期間では、
図15の左下欄で示される液晶パネル100Gのパネル画素により視認される状態と、
図15の右下欄で示される液晶パネル100Rおよび100Bのパネル画素により視認される状態とが合成される。このため、奇数フレーム期間において、明領域Braと暗領域Draとが
図16に示されるように交互にずれて重なり合うので、表示ムラが低減される。
【0076】
第2実施形態において、液晶パネル100Gのパネル画素は、単位期間f2-1~f2-4において、
図26の左上欄に示されるように、基準位置から順に、下方向→右方向→上方向→左方向に0.5画素分ずつシフトされる。
液晶パネル100Gの単体において、偶数フレーム期間で通してみたときに、パネル画素では、明るい領域が
図26の左下欄において矢印で示される経路で循環する結果、比較的明るい領域として視認される明領域Braと、それ以外の暗領域Draとに別れてしまう。
【0077】
また、液晶パネル100Rおよび100Bのパネル画素は、単位期間f2-1~f2-4において、
図26の右上欄に示されるように、基準位置から順に、下方向→左方向→上方向→左方向に0.5画素分ずつシフトされる。
液晶パネル100Rおよび100Gの合成において、偶数フレーム期間で通してみたときに、パネル画素では、同様に、明るい領域が
図26の右下欄において矢印で示される経路で循環する結果、比較的明るい領域として視認される明領域Braと、それ以外の暗領域Draとに別れてしまう。
【0078】
ただし、第2実施形態では、偶数フレーム期間において、
図26の左下欄で示される液晶パネル100Gのパネル画素と、
図26の右下欄で示される液晶パネル100Rおよび100Bのパネル画素とが合成されるので、
図27に示されるように、明領域Braと暗領域Draとが交互にずれて重なり合うので、表示ムラが低減される。
したがって、第2実施形態に係る投射型表示装置1は、奇数フレーム期間および偶数フレーム期間の双方において表示ムラを低減することができる。
【0079】
また、第2実施形態では、例えば液晶パネル100Gのパネル画素p11が奇数フレーム期間において順に映像画素C11、B11、A11、D11を表現し、偶数フレーム期間において順に映像画素C11、B12、A22、D11を表現する。このため、奇数フレーム期間において表現される映像画素の順番と、偶数フレーム期間において表現される映像画素の順番とは、同じ系列で揃う。
同じ系列の映像画素は、特に静止画を表示する場合に、相関性または類似性が高く、階調レベルが同じであることが多い。仮に、映像画素A11およびA22の階調レベルが同じである場合に、奇数フレーム期間において表現される映像画素A11の順番と、偶数フレーム期間において表現される映像画素A12の順番とが異なっていると、映像画素A11およびA22の表現間隔が不等になり、フリッカーの原因になる。
これに対し、第2実施形態では、奇数フレーム期間と偶数フレーム期間とで表現される映像画素の系列の順番が揃うので、フリッカーが低減される。
【0080】
上述した第1実施形態および第2実施形態(以下「実施形態等」と称呼する)では、以下のように種々の変形または応用が可能である。
【0081】
実施形態等では、1フレーム期間を4つの単位期間に分けた構成とした。すなわち、1フレーム期間に含まれる単位期間の個数であるkとして「4」を一例として挙げて説明した。kは「4」に限られず、「2」以上であればよい。
【0082】
実施形態等では、液晶パネル100Gに対して、液晶パネル100Rおよび100Bの位置が、パネル画素でみて、右方向に0.5画素、下方向に0.5画素ずつずれた構成としたが、これ以外の構成もよい。例えば、液晶パネル100Rに対して、液晶パネル100Gおよび100Bの位置が、パネル画素でみて右方向に0.5画素、下方向に0.5画素ずつずれた構成としてもよい。
【0083】
実施形態等では、光路シフト素子230に供給される制御信号P_xおよびP_yのレベルが変化する期間を、単位期間f1-1~f1-4、f2-1~f2-4における垂直走査期間に相当する後端期間としたが、上述したように、光路シフト素子230による投射位置のシフトは、制御信号P_xおよびP_yのレベル通りではなく、時間遅れを伴う場合がある。このような場合、例えば単位期間において液晶パネル100によって形成される画像が、当該単位期間に対応する投射位置にシフトされるように、時間遅れを見越して、制御信号P_xおよびP_yのレベル変化を開始させてもよい。
【0084】
Rの光が第1光の一例であり、液晶パネル100Rが第1液晶パネルの一例であり、液晶パネル100Rのパネル画素が第1パネル画素の一例である。Gの光が第2光の一例であり、液晶パネル100Gが第2液晶パネルの一例であり、液晶パネル100Gのパネル画素が第2パネル画素の一例である。Bの光が第3光の一例であり、液晶パネル100Bが第3液晶パネルの一例であり、液晶パネル100Bのパネル画素が第3パネル画素の一例である。
X軸が第1軸の一例であり、Y軸が第2軸の一例である。奇数フレーム期間が第1フレーム期間の一例であり、偶数フレーム期間が第2フレーム期間の一例である。1フレーム期間または奇数フレーム期間の単位期間f1-1~f1-4が、第1フレーム期間における第1単位期間~第4単位期間の一例であり、偶数フレーム期間の単位期間f2-1~f2-4が、第2フレーム期間における第1単位期間~第4単位期間の一例である。
【0085】
以上に例示した形態から、例えば以下の態様が把握される。
【0086】
ひとつの態様(態様1)に係る投射型表示装置は、第1光に対応した第1パネル画素を有する第1液晶パネルと、第2光に対応した第2パネル画素を有する第2液晶パネルと、前記第1パネル画素および前記第2パネル画素の投射位置をシフトする光路シフト素子と、前記第1液晶パネル、前記第2液晶パネルおよび前記光路シフト素子を制御する表示制御回路と、を含み、前記表示制御回路は、前記光路シフト素子に対し、1フレーム期間に含まれる、第1単位期間から第k(kは2以上の整数)単位期間までのk個の単位期間毎に前記投射位置をシフトし、映像画像を構成する画素データのうち、前記第1光の画素データであって、前記投射位置に対応した画素データを前記単位期間毎に変換して前記第1パネル画素に供給し、前記第2光の画素データであって、前記投射位置に対応した画素データを前記単位期間毎に変換して前記第2パネル画素に供給し、前記第1単位期間から前記第k単位期間まで第1パネル画素が投射される経路の重心と、前記第1単位期間から前記第k単位期間まで第2パネル画素が投射される経路の重心とが異なる。
【0087】
態様1によれば、第1パネル画素で発生する明領域および暗領域と、第2パネル画素で発生する明領域および暗領域とがずれて重なり合うので、表示ムラを低減することができる。
【0088】
態様1の具体的な態様(態様2)において、前記kは4であり、前記第1液晶パネルでは、前記第1パネル画素が、第1方向および第2方向に沿ってマトリクス状に配列し、前記第2液晶パネルでは、前記第2パネル画素が、前記第1方向および前記第2方向に沿ってマトリクス状に配列し、前記第2パネル画素は、前記第1パネル画素に対して、前記第1方向および前記第2方向にパネル画素の半サイズで位置がずれている。
【0089】
態様2の具体的な態様(態様3)において、前記光路シフト素子は、前記投射画素の位置を、前記1フレーム期間において、第1単位期間から第2単位期間までにおいて前記第1軸に沿った一方方向にシフトし、第2単位期間から第3単位期間までにおいて前記第2軸に沿った一方方向にシフトし、第3単位期間から第4単位期間までにおいて前記第1軸に沿った他方方向にシフトし、第4単位期間から前記第2フレーム期間の第1単位期間までにおいて前記第2軸に沿った他方方向にシフトする。
【0090】
態様3の具体的な態様(態様4)において、前記1フレーム期間が、第1フレーム期間と第2フレーム期間とで連続する。
【0091】
態様4の具体的な態様(態様5)において、前記表示制御回路は、前記第1フレーム期間の第1単位期間から第4単位期間までにおいてシフト前の投射画素の位置からシフト後の投射画素の位置に向かうシフト方向が、前記第2フレーム期間の第1単位期間から第4単位期間までにおいてシフト前の投射画素の位置からシフト後の投射画素の位置に向かうシフト方向と反対方向になるように前記光路シフト素子を制御する。態様5によれば、表示ムラだけでなく、フリッカーを低減することができる。
【0092】
態様1乃至5のいずれかの具体的な態様(態様6)において、さらに、第3光に対応した第3パネル画素を有する第3液晶パネルを有し、前記第3パネル画素は、前記第1パネル画素と投射像でみて重なる。態様6によれば、第1光、第2光および第3光の加法混色によるカラー表示が可能になる。
【0093】
1…投射型表示装置、100R、100G、100B…液晶パネル、110…画素回路、118…画素電極、120…液晶素子、20…表示制御回路、22…処理回路、230…光路シフト素子。