(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140095
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】回路装置及び発振器
(51)【国際特許分類】
H03B 5/32 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H03B5/32 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051090
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】樋口 哲平
(72)【発明者】
【氏名】松崎 賞
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 裕一
(72)【発明者】
【氏名】臼田 俊也
【テーマコード(参考)】
5J079
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079AA06
5J079BA39
5J079BA43
5J079BA53
5J079FA14
5J079FA15
5J079FA21
5J079FA22
5J079FB03
5J079FB47
5J079FB48
5J079GA09
5J079HA03
5J079HA07
5J079HA09
5J079KA01
(57)【要約】
【課題】検査用の可変抵抗による負性抵抗への影響を低減させることが可能な回路装置を提供すること。
【解決手段】振動子に接続される第1端子及び第2端子と、前記第1端子からの信号を増幅して前記第2端子に出力する増幅回路と、前記増幅回路と前記第2端子との間の信号経路上に設けられ、可変抵抗、前記可変抵抗の一端に設けられた第1スイッチ及び前記可変抵抗の他端に設けられた第2スイッチを含む可変抵抗回路と、前記可変抵抗回路と並列に接続された第3スイッチと、前記可変抵抗の抵抗値を制御し、かつ、前記第1スイッチ、前記第2スイッチ及び前記第3スイッチをそれぞれオン又はオフに制御する制御回路と、を備える、回路装置。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動子に接続される第1端子及び第2端子と、
前記第1端子からの信号を増幅して前記第2端子に出力する増幅回路と、
前記増幅回路と前記第2端子との間の信号経路上に設けられ、可変抵抗、前記可変抵抗の一端に設けられた第1スイッチ及び前記可変抵抗の他端に設けられた第2スイッチを含む可変抵抗回路と、
前記可変抵抗回路と並列に接続された第3スイッチと、
前記可変抵抗の抵抗値を制御し、かつ、前記第1スイッチ、前記第2スイッチ及び前記第3スイッチをそれぞれオン又はオフに制御する制御回路と、
を備える、回路装置。
【請求項2】
請求項1において、
第1モードでは、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチがオフとなり、かつ、前記第3スイッチがオンとなり、
第2モードでは、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチがオンとなり、かつ、前記第3スイッチがオフとなる、回路装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記可変抵抗は、直列に接続された複数の抵抗と、前記複数の抵抗の各々と並列に接続された複数の抵抗値制御スイッチと、を含む、回路装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記複数の抵抗は、互いに抵抗値が異なる少なくとも2つの抵抗を含む、回路装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記複数の抵抗の抵抗値は、バイナリーに重みづけされている、回路装置。
【請求項6】
請求項3において、
前記可変抵抗回路は、
前記複数の抵抗値制御スイッチの少なくとも一部に接続され、前記少なくとも一部の前記抵抗値制御スイッチのそれぞれと逆論理でオン又はオフする少なくとも1つのダミースイッチを含む、回路装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記少なくとも1つのダミースイッチは、前記複数の抵抗の内、抵抗値が最も小さい抵抗に接続された第1ダミースイッチを含む、回路装置。
【請求項8】
振動子と、
前記振動子に接続された回路装置と、
前記振動子及び前記回路装置を収容する容器と、を備え、
前記回路装置は、
前記振動子に接続される第1端子及び第2端子と、
前記第1端子からの信号を増幅して前記第2端子に出力する増幅回路と、
前記増幅回路と前記第2端子との間の信号経路上に設けられ、可変抵抗、前記可変抵抗の一端に設けられた第1スイッチ及び前記可変抵抗の他端に設けられた第2スイッチを含む可変抵抗回路と、
前記可変抵抗回路と並列に接続された第3スイッチと、
前記可変抵抗の抵抗値を制御し、かつ、前記第1スイッチ、前記第2スイッチ及び前記第3スイッチをそれぞれオン又はオフに制御する制御回路と、を含む、発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路装置及び発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水晶振動子と直列に設けられたチェック抵抗の接続を外部からの制御信号で制御することで、発振余裕度の検査を可能とする水晶発振器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の水晶発振器では、通常使用時において、チェック抵抗の寄生容量が発振端子に付加されるため、負性抵抗が小さくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る回路装置の一態様は、
振動子に接続される第1端子及び第2端子と、
前記第1端子からの信号を増幅して前記第2端子に出力する増幅回路と、
前記増幅回路と前記第2端子との間の信号経路上に設けられ、可変抵抗、前記可変抵抗の一端に設けられた第1スイッチ及び前記可変抵抗の他端に設けられた第2スイッチを含む可変抵抗回路と、
前記可変抵抗回路と並列に接続された第3スイッチと、
前記可変抵抗の抵抗値を制御し、かつ、前記第1スイッチ、前記第2スイッチ及び前記第3スイッチをそれぞれオン又はオフに制御する制御回路と、
を備える。
【0006】
本発明に係る発振器の一態様は、
振動子と、
前記振動子に接続された回路装置と、
前記振動子及び前記回路装置を収容する容器と、を備え、
前記回路装置は、
前記振動子に接続される第1端子及び第2端子と、
前記第1端子からの信号を増幅して前記第2端子に出力する増幅回路と、
前記増幅回路と前記第2端子との間の信号経路上に設けられ、可変抵抗、前記可変抵抗の一端に設けられた第1スイッチ及び前記可変抵抗の他端に設けられた第2スイッチを含む可変抵抗回路と、
前記可変抵抗回路と並列に接続された第3スイッチと、
前記可変抵抗の抵抗値を制御し、かつ、前記第1スイッチ、前記第2スイッチ及び前記第3スイッチをそれぞれオン又はオフに制御する制御回路と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図6】可変抵抗回路及びスイッチの構成例を示す図。
【
図7】通常動作モードにおける可変抵抗回路及びスイッチの状態を示す図。
【
図8】検査モードにおける可変抵抗回路及びスイッチの状態を示す図。
【
図9】本実施形態の発振器に検査装置が接続された検査システムの構成を示す図。
【
図10】検査装置による発振余裕度の検査方法の手順の一例を示すフローチャート図。
【
図11】検査装置が発振余裕度の検査を行うときの各端子及び各信号の電圧波形の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1.発振器の構成
図1~
図4は、本実施形態の発振器1の構造の一例を示す図である。
図1は、発振器1の斜視図であり、
図2は、
図1のA-A断面図の一例である。
図3は、
図1のA-A断面図の他の一例であり、
図4は、発振器1の底面図である。
【0010】
図1~
図3に示すように、発振器1は、回路装置2、振動子3、パッケージ4、リッド5及び複数の外部端子6を含む。本実施形態では、振動子3は、基板材料として水晶を用いた水晶振動子であり、例えば、ATカット水晶振動子や音叉型水晶振動子等である。振動子3は、SAW共振子であってもよい。SAWはSurface Acoustic Waveの略である。また、振動子3の基板材料としては、水晶の他、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電単結晶や、ジルコン酸チタン酸鉛等の圧電セラミックス等の圧電材料等を用いることができる。振動子3の励振手段としては、圧電効果によるものを用いてもよい。また、本実施形態では、回路装置2は1チップの集積回路で実現されている。ただし、回路装置2は、少なくとも一部がディスクリート部品で構成されていてもよい。
【0011】
図2に示す発振器1は、シングルシール構造の発振器であり、パッケージ4は、回路装置2と振動子3とを同一空間内に収容する容器である。具体的には、パッケージ4には、凹部が設けられており、リッド5で凹部を覆うことによって収容室7となる。また、
図3に示す発振器1は、H型構造の発振器であり、パッケージ4は、回路装置2と振動子3とを別空間内に収容する容器である。具体的には、パッケージ4には、対向する面に2つの凹部が設けられており、リッド5で一方の凹部を覆うことによって収容室7aとなり、封止部材8で他方の凹部を覆うことによって収容室7bとなる。収容室7aには振動子3が収容され、収容室7bには回路装置2が収容されている。
【0012】
振動子3は、その表面及び裏面にそれぞれ金属の励振電極3a,3bを有しており、励振電極3a,3bを含む振動子3の形状や質量に応じた所望の周波数で発振する。パッケージ4の内部又は凹部の表面には、回路装置2の2つの端子、具体的には、後述する
図5のT1端子及びT2端子と、振動子3の2つの励振電極3a,3bとをそれぞれ電気的に接続するための不図示の配線が設けられている。また、パッケージ4の内部又は凹部の表面には、回路装置2の各端子とパッケージ4の底面に設けられた各外部端子6とを電気的に接続するための不図示の配線が設けられている。
【0013】
図4に示すように、本実施形態の発振器1は、底面であるパッケージ4の裏面に、電源電圧Vddが供給される電源端子であるVDD端子、グラウンド電圧Vssが供給されるグラウンド端子であるVSS端子、出力端子であるOUT端子及び出力イネーブル端子であるOE端子の4個の外部端子6が設けられている。すなわち、本実施形態では、パッケージ4は、VDD端子、VSS端子、OUT端子及びOE端子の4個の外部端子6を有する。
【0014】
図5は、本実施形態の発振器1の機能ブロック図である。
図5に示すように、本実施形態の発振器1は、回路装置2と振動子3とを含む。回路装置2は、外部接続端子として、T1端子、T2端子、T3端子、T4端子、T5端子及びT6端子を有している。T1端子は振動子3の一端と電気的に接続され、T2端子は振動子3の他端と電気的に接続されている。T3端子、T4端子、T5端子及びT6端子は、
図4に示した発振器1の複数の外部端子6であるOE端子、OUT端子、VDD端子及びVSS端子とそれぞれ電気的に接続されている。
【0015】
本実施形態では、回路装置2は、発振回路10、出力バッファー20、第1入出力回路30、第2入出力回路40、制御回路50及びパワーオンリセット回路60を備える。なお、回路装置2は、これらの要素の一部を省略又は変更し、あるいは他の要素を追加した構成としてもよい。
【0016】
発振回路10は、T1端子及びT2端子と接続され、振動子3を発振させて発振信号を生成する。発振回路10は、T1端子からの信号を増幅してT2端子に出力する増幅回路を含む。具体的には、発振回路10は、振動子3から出力される信号がT1端子を介して入力され、増幅回路により当該信号を増幅してT2端子を介して振動子3に供給する。例えば、
図5に示すように、発振回路10は、論理反転回路11、抵抗12,13、可変容量回路14,15、可変抵抗回路16、スイッチ17及び容量素子18を含む。
【0017】
可変容量回路14は、一端がT1端子と接続され、他端にはグラウンド電圧Vssが供給される。可変容量回路15は、一端がT2端子と接続され、他端にはグラウンド電圧Vssが供給される。容量素子18は、一端がT1端子と接続され、他端が抵抗12の一端及び論理反転回路11の入力端子と接続されている。
【0018】
論理反転回路11は、入力端子が容量素子18の他端及び抵抗12の一端と接続され、出力端子が抵抗12の他端及び抵抗13の一端と接続されている。抵抗13の他端は、可変容量回路15の一端、可変抵抗回路16の一端及びスイッチ17の一端と接続されている。可変抵抗回路16の他端及びスイッチ17の他端は、T2端子と接続されている。すなわち、可変抵抗回路16は、増幅回路である論理反転回路11とT2端子との間の信号経路上に設けられている。また、スイッチ17は、増幅回路である論理反転回路11とT2端子との間の信号経路上に設けられ、可変抵抗回路16と並列に接続されている。
【0019】
このように構成されている発振回路10では、振動子3からT1端子を介して入力される信号が、容量素子18によってDC成分がカットされて論理反転回路11に入力され、スイッチ17がオンのときは、増幅回路である論理反転回路11によって反転増幅された信号が抵抗13、スイッチ17及びT2端子を介して振動子3に供給される。これにより、振動子3が発振する。一方、スイッチ17がオフのときは、論理反転回路11によって反転増幅された信号が抵抗13、可変抵抗回路16及びT2端子を介して振動子3に供給され、振動子3が発振する。
【0020】
可変容量回路14,15は振動子3の負荷容量として機能する。可変容量回路14,15の容量値が大きいほど振動子3の発振周波数が低くなり、可変容量回路14,15の容量値が小さいほど振動子3の発振周波数が高くなる。可変容量回路14,15は、振動子3を所望の周波数で発振させるように、発振周波数の調整のために設けられており、不図示の不揮発性メモリーに可変容量回路14,15の容量値を設定するための情報が記憶されている。
【0021】
図6は、可変抵抗回路16及びスイッチ17の構成例を示す図である。
図6に示すように、可変抵抗回路16は、可変抵抗110、可変抵抗110の一端に設けられたスイッチ101及び可変抵抗110の他端に設けられたスイッチ102を含む。また、可変抵抗回路16は、複数のダミースイッチ151~154を含む。可変抵抗110は、複数のスイッチ111~121及び複数の抵抗131~141を含む。また、スイッチ17は、スイッチ103を含む。
【0022】
図6では、スイッチ101,102,103,111~121及びダミースイッチ151~154は、それぞれ、NMOSトランジスターとPMOSトランジスターとが並列に接続されたトランスミッションゲートである。
【0023】
スイッチ101の一端は、スイッチ103の一端、
図5の抵抗13の他端、可変容量回路15の一端及び出力バッファー20の入力端子と接続されている。また、スイッチ102の一端は、スイッチ103の他端及び
図5のT2端子と接続されている。
【0024】
抵抗131~141は、スイッチ101の他端とスイッチ102の他端との間に直列に接続されている。スイッチ111~121の各々は、抵抗131~141の各々と並列に接続されている。抵抗131~141は、互いに抵抗値が異なる少なくとも2つの抵抗を含む。
図6の例では、抵抗131~141は、それぞれ異なる抵抗値を有する。具体的には、スイッチ111の抵抗値Rに対して、スイッチ112~121の抵抗値は、2Rから1024Rまで2倍ずつ大きくなっている。すなわち、複数の抵抗131~141の抵抗値は、バイナリーに重みづけされている。
【0025】
ダミースイッチ151は、複数の抵抗131~141の内、抵抗値が最も小さい抵抗131に接続されている。具体的には、ダミースイッチ151の両端が、抵抗131と抵抗132とが接続されるノードに接続されている。
【0026】
ダミースイッチ152は、複数の抵抗131~141の内、抵抗値が2番目に小さい抵抗132に接続されている。具体的には、ダミースイッチ152の両端が、抵抗132と抵抗133とが接続されるノードに接続されている。
【0027】
ダミースイッチ153は、複数の抵抗131~141の内、抵抗値が3番目に小さい抵抗133に接続されている。具体的には、ダミースイッチ153の両端が、抵抗133と抵抗134とが接続されるノードに接続されている。
【0028】
ダミースイッチ154は、複数の抵抗131~141の内、抵抗値が4番目に小さい抵抗134に接続されている。具体的には、ダミースイッチ154の両端が、抵抗134と抵抗135とが接続されるノードに接続されている。
【0029】
スイッチ111には、互いに論理レベルが反転した2つの制御信号S1,S1Nが入力される。具体的には、スイッチ111を構成するNMOSトランジスター及びPMOSトランジスターの各ゲートに制御信号S1,S1Nがそれぞれ入力され、制御信号S1がハイレベルのときにスイッチ111がオンし、制御信号S1がローレベルのときにスイッチ111がオフする。
【0030】
スイッチ112~121についても、入力される制御信号が異なるものの、スイッチ111と同様の動作を行う。すなわち、スイッチ112は、互いに論理レベルが反転した2つの制御信号S2,S2Nが入力され、制御信号S2がハイレベルのときにオンし、制御信号S2がローレベルのときにオフする。また、スイッチ113は、互いに論理レベルが反転した2つの制御信号S3,S3Nが入力され、制御信号S3がハイレベルのときにオンし、制御信号S3がローレベルのときにオフする。また、スイッチ114は、互いに論理レベルが反転した2つの制御信号S4,S4Nが入力され、制御信号S4がハイレベルのときにオンし、制御信号S4がローレベルのときにオフする。また、スイッチ115は、互いに論理レベルが反転した2つの制御信号S5,S5Nが入力され、制御信号S5がハイレベルのときにオンし、制御信号S5がローレベルのときにオフする。また、スイッチ116は、互いに論理レベルが反転した2つの制御信号S6,S6Nが入力され、制御信号S6がハイレベルのときにオンし、制御信号S6がローレベルのときにオフする。また、スイッチ117は、互いに論理レベルが反転した2つの制御信号S7,S7Nが入力され、制御信号S7がハイレベルのときにオンし、制御信号S7がローレベルのときにオフする。また、スイッチ118は、互いに論理レベルが反転した2つの制御信号S8,S8Nが入力され、制御信号S8がハイレベルのときにオンし、制御信号S8がローレベルのときにオフする。また、スイッチ119は、互いに論理レベルが反転した2つの制御信号S9,S9Nが入力され、制御信号S9がハイレベルのときにオンし、制御信号S9がローレベルのときにオフする。また、スイッチ120は、互いに論理レベルが反転した2つの制御信号S10,S10Nが入力され、制御信号S10がハイレベルのときにオンし、制御信号S10がローレベルのときにオフする。また、スイッチ121は、互いに論理レベルが反転した2つの制御信号S11,S11Nが入力され、制御信号S11がハイレベルのときにオンし、制御信号S11がローレベルのときにオフする。
【0031】
そして、スイッチ111~121のうち、オフする各スイッチの両端に接続されている各抵抗が、スイッチ101とスイッチ102との間に直列に接続される。例えば、制御信号S1~S11のうち制御信号S3,S9のみがハイレベルの場合、スイッチ111~121のうちスイッチ113,119のみがオフするので、抵抗133,139がスイッチ101とスイッチ102との間に直列に接続される。この場合、可変抵抗110の抵抗値は4R+256R=260Rである。このように、スイッチ111~121は、それぞれ可変抵抗110の抵抗値を制御する抵抗値制御スイッチである。
【0032】
スイッチ101,102,103についても、入力される制御信号が異なるものの、スイッチ111~121と同様の動作を行う。すなわち、スイッチ101は、互いに論理レベルが反転した2つの制御信号SA,SANが入力され、制御信号SAがハイレベルのときにオンし、制御信号SAがローレベルのときにオフする。また、スイッチ102は、互いに論理レベルが反転した2つの制御信号SB,SBNが入力され、制御信号SBがハイレベルのときにオンし、制御信号SBがローレベルのときにオフする。また、スイッチ103は、互いに論理レベルが反転した2つの制御信号SC,SCNが入力され、制御信号SCがハイレベルのときにオンし、制御信号SCがローレベルのときにオフする。
【0033】
スイッチ103がオンのときは、
図5の抵抗13の他端とT2端子とが接続される。また、スイッチ103がオフであり、かつ、スイッチ101,102がオンのときは、
図5の抵抗13の他端とT2端子との間の可変抵抗110が接続される。
【0034】
ダミースイッチ151には、スイッチ111に入力される2つの制御信号S1,S1Nが入力される。具体的には、ダミースイッチ151を構成するNMOSトランジスター及びPMOSトランジスターの各ゲートに制御信号S1N,S1がそれぞれ入力され、制御信号S1がハイレベルのときにダミースイッチ151がオフし、制御信号S1がローレベルのときにダミースイッチ151がオンする。したがって、制御信号S1がローレベルのときは、スイッチ111がオフし、ダミースイッチ151がオンする。また、制御信号S1がハイレベルのときは、スイッチ111がオンし、ダミースイッチ151がオフする。すなわち、ダミースイッチ151は、スイッチ111と逆論理でオンまたはオフする。
【0035】
ダミースイッチ152,153,154についても、入力される制御信号が異なるものの、ダミースイッチ151と同様の動作を行う。具体的には、ダミースイッチ152は、互いに論理レベルが反転した2つの制御信号S2,S2Nが入力され、制御信号S2がハイレベルのときにオフし、制御信号S2がローレベルのときにオンする。すなわち、ダミースイッチ152は、スイッチ112と逆論理でオンまたはオフする。また、ダミースイッチ153は、互いに論理レベルが反転した2つの制御信号S3,S3Nが入力され、制御信号S3がハイレベルのときにオフし、制御信号S3がローレベルのときにオンする。すなわち、ダミースイッチ153は、スイッチ113と逆論理でオンまたはオフする。また、ダミースイッチ154は、互いに論理レベルが反転した2つの制御信号S4,S4Nが入力され、制御信号S4がハイレベルのときにオフし、制御信号S4がローレベルのときにオンする。すなわち、ダミースイッチ154は、スイッチ114と逆論理でオンまたはオフする。
【0036】
なお、
図6では、可変抵抗回路16は、複数のスイッチ111~121の一部に接続された複数のダミースイッチ151~154を含むが、複数の抵抗値制御スイッチの少なくとも一部に接続され、当該少なくとも一部の抵抗値制御スイッチのそれぞれと逆論理でオン又はオフする少なくとも1つのダミースイッチを含めばよい。
【0037】
図5の説明に戻り、出力バッファー20は、発振回路10からの発振信号が入力されてクロック信号CKを出力する。具体的には、出力バッファー20の入力端子には、発振回路10の論理反転回路11から出力される発振信号が入力される。そして、出力バッファー20は、当該発振信号をバッファリングし、制御端子に入力される信号がハイレベルのときに出力端子からクロック信号CKを出力する。出力バッファー20は、制御端子に入力される信号がローレベルのときは、出力端子からグラウンド電圧Vssを出力する。
【0038】
制御回路50は、各回路の動作を制御する。具体的には、制御回路50は、
図6に示した可変抵抗110の抵抗値を制御し、かつ、スイッチ101,102,103をそれぞれオン又はオフに制御する。また、制御回路50は、回路装置2の動作モードを、通常動作モード、外部通信モード及び検査モードを含む複数のモードのうちの1つに設定する。通常動作モードは、
図6に示したスイッチ101,102がオフし、かつ、スイッチ103がオンし、可変抵抗110が振動子3から切り離された状態で発振回路10が発振動作を行い、OE端子から入力される制御信号に応じて、OUT端子からクロック信号CKが出力されるか否かが制御される動作モードである。また、外部通信モードは、制御回路50がOE端子とOUT端子を介して不図示の外部装置と通信する動作モードである。検査モードは、スイッチ101,102がオンし、かつ、スイッチ103がオフし、可変抵抗110が振動子3に直列に接続された状態で発振回路10が発振動作を行う動作モードである。本実施形態では、
図5に示すように、制御回路50は、シリアルインターフェース回路51及びレジスター52を含む。
【0039】
シリアルインターフェース回路51は、VDD端子への電源電圧Vddの供給が開始してから所定期間内に、OE端子から所定のパターンの制御信号が入力された場合には、当該所定期間の経過後に動作モードを外部通信モードに設定する。また、シリアルインターフェース回路51は、電源電圧Vddの供給が開始してから所定期間内に、OE端子から所定のパターンの制御信号が入力されない場合には、当該所定期間の経過後に動作モードを外部通信モードに設定せずに、通常動作モードに設定する。例えば、シリアルインターフェース回路51は、電源電圧Vddの供給により振動子3が発振を開始して発振が安定したことを検出するまでの期間を当該所定期間としてもよいし、クロック信号CKのパルス数をカウントし、カウント値が所定の値に到達したら当該所定期間が経過したと判断してもよい。また、例えば、シリアルインターフェース回路51は、電源電圧Vddの供給により動作を開始するRC時定数回路の出力信号に基づいて当該所定期間を計測してもよい。
【0040】
外部通信モードでは、シリアルインターフェース回路51は、第1入出力回路30を介してOE端子と電気的に接続され、第2入出力回路40を介してOUT端子と電気的に接続され、OE端子及びOUT端子を介して不図示の外部装置とデータ通信を行うことができる。本実施形態では、外部通信モードにおいて、OE端子及びT3端子がシリアルデータ端子となり、OUT端子及びT4端子がシリアルクロック端子となる。そして、外部装置は、所定の通信規格に従い、OUT端子にシリアルクロック信号を出力し、シリアルクロック信号に同期して、OE端子にシリアルデータ信号を出力し、あるいは、シリアルインターフェース回路51からOE端子に出力される信号を取得する。シリアルインターフェース回路51は、外部通信モードにおいて、例えばI2Cバスの規格に準じて、シリアルクロック信号のエッジ毎に、各種のコマンドとしてのシリアルデータ信号をサンプリングする。I2Cは、Inter-Integrated Circuitの略である。そして、シリアルインターフェース回路51は、サンプリングしたコマンドに基づいて、動作モードの設定や、レジスター52に対するデータの読み出しや書き込み等の処理を行う。なお、本実施形態では、シリアルインターフェース回路51は、例えば、I2Cバス等の2線式バスの通信規格で外部装置と通信を行うが、SPIバス等の3線式バスあるいは4線式バスの通信規格で外部装置と通信を行ってもよい。SPIは、Serial Peripheral Interfaceの略である。
【0041】
例えば、シリアルインターフェース回路51は、レジスター設定コマンドをサンプリングした場合、レジスター設定コマンドで指定されたレジスター52のアドレスに、指定されたデータを書き込む。レジスター52は、複数ビットのデータを保持し、可変抵抗回路16及びスイッチ17を制御する信号を出力する。すなわち、レジスター52は、
図6に示したスイッチ101,102,103,111~121及びダミースイッチ151~154をそれぞれオン又はオフにする制御信号を出力する。
【0042】
外部装置は、外部通信モードにおいて、OE端子及びOUT端子を介して、シリアルインターフェース回路51にレジスター設定コマンドを送信することにより、
図6に示したスイッチ101,102,103,111~121及びダミースイッチ151~154をそれぞれオン又はオフに設定することができる。外部装置は、スイッチ101,102をオンに設定し、スイッチ103をオフに設定した後、通信を終了させると、動作モードが外部通信モードから検査モードに移行する。また、外部装置は、スイッチ101,102をオフに設定し、スイッチ103をオンに設定した後、通信を終了させると、動作モードが外部通信モードから通常動作モードに移行する。
【0043】
第1入出力回路30は、T3端子とレジスター52との間の信号経路上に設けられている。第1入出力回路30は、T3端子と出力バッファー20との間の信号経路上に設けられている。通常動作モード及び検査モードでは、第1入出力回路30を介して、T3端子と出力バッファー20の制御端子とが電気的に接続され、T3端子とレジスター52とが電気的に切断される。また、外部通信モードでは、第1入出力回路30及びシリアルインターフェース回路51を介してT3端子とレジスター52とが電気的に接続され、T3端子と出力バッファー20の制御端子とが電気的に切断される。
【0044】
第2入出力回路40は、出力バッファー20とT4端子との間の信号経路上に設けられている。また、第2入出力回路40は、T4端子とレジスター52との間の信号経路上に設けられている。通常動作モード及び検査モードでは、第2入出力回路40を介して、出力バッファー20の出力端子とT4端子とが電気的に接続され、T4端子とレジスター52とが電気的に切断される。また、外部通信モードでは、第2入出力回路40及びシリアルインターフェース回路51を介してT4端子とレジスター52とが電気的に接続され、出力バッファー20の出力端子とT4端子とが電気的に切断される。
【0045】
パワーオンリセット回路60は、VDD端子への電源電圧Vddの供給が開始すると、所定期間ハイレベルとなるリセット信号RSTを出力する。リセット信号RSTによってレジスター52がリセットされ、制御信号SA,SB,SCNがローレベルに初期化され、制御信号SAN,SBN,SCがハイレベルに初期化される。その後、所定期間が経過すると、回路装置2の動作モードが通常動作モードに初期化される。すなわち、回路装置2は、電源投入時に設定されるレジスター52の初期値により、通常動作モードに設定される。
【0046】
前述の通り、外部通信モードにおいて、T3端子及びT4端子を用いた通信によって、可変抵抗回路16及びスイッチ17を制御するための設定値がレジスター52に設定される。
【0047】
通常動作モードでは、制御信号SA,SB,SCNがローレベルであり、制御信号SAN,SBN,SCがハイレベルであり、
図7に示すように、スイッチ101,102がオフとなり、スイッチ103がオンとなる。したがって、通常動作モードでは、可変抵抗110が振動子3から切り離された状態で発振回路10が発振動作を行う。
【0048】
一方、検査モードでは、制御信号SA,SB,SCNがハイレベルであり、制御信号SAN,SBN,SCがローレベルであり、
図8に示すように、スイッチ101,102がオンとなり、スイッチ103がオフとなる。したがって、検査モードでは、可変抵抗110が振動子3に直列に接続された状態で発振回路10が発振動作を行う。
【0049】
そして、通常動作モードと検査モードのいずれの動作モードでも、T3端子に出力バッファー20の動作を制御する制御信号が入力され、T4端子からクロック信号CKが出力される。すなわち、発振器1は、OE端子から入力される制御信号に応じて、OUT端子からクロック信号CKを出力する。
【0050】
検査モードでは、可変抵抗110が振動子3に直列に接続されることにより負性抵抗が小さくなるので、外部装置である検査装置は、OE端子とOUT端子とを用いて、発振余裕度を検査することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、T1端子は第1端子の一例であり、T2端子は第2端子の一例である。また、スイッチ101は第1スイッチの一例であり、スイッチ102は第2スイッチの一例であり、スイッチ17あるいはスイッチ103は第3スイッチの一例である。また、ダミースイッチ151は、第1ダミースイッチの一例である。また、通常動作モードは第1モードの一例であり、検査モードは第2モードの一例である。
【0052】
2.発振余裕度の検査方法
前述の通り、本実施形態では、検査モードにおいて、振動子3に可変抵抗110が直列に接続されるので、外部装置である検査装置は、OE端子とOUT端子とを用いて発振余裕度を検査することができる。
【0053】
図9は、発振器1に検査装置100が接続された検査システムの構成を示す図である。
図9に示すように、検査装置100は、発振器1のVDD端子、VSS端子、OE端子及びOUT端子と接続されている。発振器1のグラウンドと検査装置100のグラウンドは共通である。
【0054】
図10は、
図9の検査システムにおいて、検査装置100による発振余裕度の検査方法の手順の一例を示すフローチャート図である。また、
図11は、
図10のフローチャートによって発振余裕度の検査を行うときの各端子及び各信号の電圧波形の一例を示す図である。
【0055】
図10の例では、まず、工程S1において、検査装置100は、発振器1のVDD端子に電源電圧Vddを供給する。工程S1により、
図11に示すように、VDD端子がグラウンド電圧Vssから所望の電圧まで上昇する。これにより、所定期間ハイレベルとなるリセット信号RSTが発生し、レジスター52の各ビットが初期化される。その結果、制御信号SA,SB,SCNがローレベルに初期化され、制御信号SAN,SBN,SCがハイレベルに初期化され、スイッチ101,102がオフし、スイッチ103がオンする。
【0056】
次に、工程S2において、検査装置100は、発振器1のOE端子に制御信号を供給し、発振器1を外部通信モードに設定する。すなわち、
図11に示すように、検査装置100は、VDD端子に電源電圧Vddを供給してから所定期間内に、発振器1のOE端子に予め決められた所定のパターンの信号を供給し、発振器1を外部通信モードに設定する。
【0057】
次に、工程S3において、検査装置100は、発振器1のOUT端子及びOE端子に制御信号を供給し、レジスター52に可変抵抗回路16の粗調用の設定値を書き込むためのコマンドを送信する。すなわち、
図11に示すように、検査装置100は、OE端子の論理レベルをハイレベルに固定し、かつ、OUT端子の論理レベルをハイレベルからローレベルに変化させることにより、スタートコンディションを成立させて通信を開始する。そして、検査装置100は、OE端子からシリアルクロック信号を入力し、OUT端子からシリアルデータ信号を入力して、レジスター52の各ビットに所望の値を書き込むためのコマンドを送信する。
【0058】
次に、工程S4において、検査装置100は、OE端子及びOUT端子を用いた通信を終了し、発振器1を検査モードに設定する。すなわち、
図11に示すように、検査装置100は、OE端子の論理レベルをハイレベルに固定し、かつ、OUT端子の論理レベルをローレベルからハイレベルに変化させることにより、ストップコンディションを成立させて通信を終了する。これにより、シリアルインターフェース回路51が、レジスター52に所望の設定値を書き込み、外部通信モードが終了し、発振器1が検査モードに設定される。
図6の例では、11個のスイッチ111~121がそれぞれオン又はオフすることにより可変抵抗110の抵抗値が決まる。すなわち、スイッチ111~121のそれぞれの制御ビットを下位ビットから順に割り当てた11ビットの設定値によって可変抵抗110の抵抗値が制御される。工程S3において、検査装置100は、この11ビットの設定値のうち、下位4ビットに例えばゼロを書き込み、上位7ビットに粗調用の設定値を書き込むためのコマンドを送信する。これにより、検査モードにおいて、可変抵抗110の抵抗値が所望の値となる。また、工程S3において、検査装置100は、スイッチ101,102,103を制御するビットに設定値を書き込むためのコマンドを送信する。これにより、
図11に示すように、制御信号SA,SB,SCNがローレベルからハイレベルに変化し、制御信号SAN,SBN,SCがハイレベルからローレベルに変化して、スイッチ101,102がオンし、スイッチ103がオフする。その結果、検査モードにおいて、振動子3に直列に所望の抵抗値の可変抵抗110が直列に接続される。
【0059】
次に、工程S5において、検査装置100は、発振器1からクロック信号CKが出力されるか否かを判定する。具体的には、検査装置100は、OE端子にハイレベルの制御信号を出力し、OUT端子からクロック信号CKが出力されるか否かを判定する。
【0060】
次に、工程S6において、検査装置100は、工程S5の判定結果に基づいて粗調を終了するか否かを判定する。検査装置100は、粗調を終了しない場合は、工程S7において、発振器1のVDD端子にグラウンド電圧Vssを供給した後、工程S1以降を再び行う。そして、検査装置100は、工程S6において粗調を終了するまで、工程S1~S7を繰り返す。例えば、検査装置100は、工程S1~S7を繰り返し、クロック信号CKが出力される設定値の範囲とクロック信号CKが出力されない設定値の範囲との境界となる設定値を2分探索法等により求め、当該境界の設定値が求まった場合に粗調を終了してもよい。
【0061】
工程S6において粗調を終了する場合、検査装置100は、工程S8において、発振器1のVDD端子にグラウンド電圧Vssを供給した後、工程S9において、発振器1のVDD端子に電源電圧Vddを供給する。これにより、所定期間ハイレベルとなるリセット信号RSTが発生し、レジスター52の各ビットが初期化される。その結果、制御信号SA,SB,SCNがローレベルに初期化され、制御信号SAN,SBN,SCがハイレベルに初期化され、スイッチ101,102がオフし、スイッチ103がオンする。
【0062】
次に、工程S10において、検査装置100は、発振器1のOE端子に制御信号を供給し、発振器1を外部通信モードに設定する。すなわち、
図11に示すように、検査装置100は、VDD端子に電源電圧Vddを供給してから所定期間内に、発振器1のOE端子に予め決められた所定のパターンの信号を供給し、発振器1を外部通信モードに設定する。
【0063】
次に、工程S11において、検査装置100は、発振器1のOUT端子及びOE端子に制御信号を供給し、レジスター52に可変抵抗回路16の微調用の設定値を書き込むためのコマンドを送信する。すなわち、
図11に示すように、検査装置100は、OE端子の論理レベルをハイレベルに固定し、かつ、OUT端子の論理レベルをハイレベルからローレベルに変化させることにより、スタートコンディションを成立させて通信を開始する。そして、検査装置100は、OE端子からシリアルクロック信号を入力し、OUT端子からシリアルデータ信号を入力して、レジスター52の各ビットに所望の値を書き込むためのコマンドを送信する。
【0064】
次に、工程S12において、検査装置100は、OE端子及びOUT端子を用いた通信を終了し、発振器1を検査モードに設定する。すなわち、
図11に示すように、検査装置100は、OE端子の論理レベルをハイレベルに固定し、かつ、OUT端子の論理レベルをローレベルからハイレベルに変化させることにより、ストップコンディションを成立させて通信を終了する。これにより、シリアルインターフェース回路51が、レジスター52に所望の設定値を書き込み、外部通信モードが終了し、発振器1が検査モードに設定される。
図6の例の場合、工程S11において、検査装置100は、スイッチ111~121のそれぞれの制御ビットを下位ビットから順に割り当てた11ビットの設定値のうち、上位7ビットに粗調によって求めた境界の設定値を書き込み、下位4ビットに微調用の設定値を書き込むためのコマンドを送信する。これにより、検査モードにおいて、可変抵抗110の抵抗値が所望の値となる。また、工程S11において、検査装置100は、スイッチ101,102,103を制御するビットに設定値を書き込むためのコマンドを送信する。これにより、
図11に示すように、制御信号SA,SB,SCNがローレベルからハイレベルに変化し、制御信号SAN,SBN,SCがハイレベルからローレベルに変化して、スイッチ101,102がオンし、スイッチ103がオフする。その結果、検査モードにおいて、振動子3に直列に所望の抵抗値の可変抵抗110が直列に接続される。
【0065】
次に、工程S13において、検査装置100は、発振器1からクロック信号CKが出力されるか否かを判定する。具体的には、検査装置100は、OE端子にハイレベルの制御信号を出力し、OUT端子からクロック信号CKが出力されるか否かを判定する。
【0066】
次に、工程S14において、検査装置100は、工程S13の判定結果に基づいて微調を終了するか否かを判定する。検査装置100は、微調を終了しない場合は、工程S8以降を再び行う。そして、検査装置100は、工程S14において微調を終了するまで、工程S8~S13を繰り返す。例えば、検査装置100は、工程S8~S13を繰り返し、クロック信号CKが出力される設定値とクロック信号CKが出力されない設定値との境界を2分探索法等により求め、当該境界が求まった場合に微調を終了してもよい。
【0067】
工程S14において微調を終了する場合、最後に、工程S15において、検査装置100は、発振器1が発振可能な可変抵抗110の抵抗値の上限を閾値と比較して発振余裕度の合否を判定する。例えば、検査装置100は、微調によって求めた境界の設定値から、発振器1が発振可能な可変抵抗110の抵抗値の上限を算出し、当該上限が閾値以上の場合は合格と判定し、当該上限が閾値未満の場合は不合格と判定してもよい。
【0068】
3.作用効果
以上に説明したように、本実施形態の発振器1では、回路装置2の通常動作モードにおいて、スイッチ101,102がオフとなって振動子3と可変抵抗110とが電気的に切断されるので、可変抵抗110による負性抵抗への影響がほとんど生じない。また、通常動作モードにおいて、スイッチ103がオンとなって増幅回路である論理反転回路11と振動子3とが電気的に接続されることにより振動子3が発振するが、スイッチ103のオン抵抗や寄生容量による負性抵抗への影響は極めて小さい。一方、検査モードにおいて、スイッチ101,102がオンとなり、スイッチ103がオフとなって振動子3と可変抵抗110とが電気的に接続されるので、検査装置100は、可変抵抗110の抵抗値を変化させて振動子3の発振余裕度を検査することができる。このように、本実施形態の発振器1によれば、検査用の可変抵抗110による負性抵抗への影響を低減させることができる。
【0069】
また、本実施形態の発振器1では、回路装置2の通常動作モードにおいて、可変抵抗110に含まれる複数のスイッチ111~121がすべてオンにしておけば、理想的には可変抵抗110の抵抗値がゼロになるが、実際には、スイッチ111~121のオン抵抗により、可変抵抗110は所定の抵抗値を有することになる。これに対して、本実施形態の発振器1によれば、通常モードにおいて、スイッチ101,102がオフとなって振動子3と可変抵抗110とが電気的に切断されるので、可変抵抗110に含まれる複数の抵抗131~141や複数のスイッチ111~121による負性抵抗への影響がほとんど生じない。
【0070】
また、本実施形態の発振器1では、回路装置2において、可変抵抗110に含まれる複数の抵抗131~141の抵抗値は、バイナリーに重みづけされている。したがって、検査装置100は、複数のスイッチ111~121を適切に制御することにより、可変抵抗110の抵抗値を一定量ずつ変化させることができるので、発振余裕度の検査を高精度かつ効率的に行うことができる。
【0071】
また、本実施形態の発振器1では、回路装置2において、可変抵抗110に含まれる抵抗131~141の内、抵抗値が小さい微調用の抵抗131~134にそれぞれ接続されるスイッチ111~114のオン/オフによる負荷容量の変動が、負性抵抗に最も大きく影響する。これに対して、本実施形態の発振器1によれば、回路装置2において、ダミースイッチ151~154が、それぞれ接続されるスイッチ111~114とは逆論理で動作するので、抵抗値が小さい微調用のスイッチ111~114のオン/オフによる負荷容量の変動が抑制される。したがって、本実施形態の発振器1によれば、検査用の可変抵抗110による負性抵抗への影響を低減させることができる。
【0072】
4.変形例
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0073】
例えば、上記の実施形態の発振器1は、SPXO等のシンプルな発振器であるが、TCXO等の温度補償機能を有する発振器であってもよいし、VCXO等の周波数制御機能を有する発振器であってもよい。SPXOはSimple Packaged Crystal Oscillatorの略である。TCXOはTemperature Compensated Crystal Oscillatorの略である。VCXOはVoltage Controlled Crystal Oscillatorの略である。また、発振器1は、VC-TCXO等の温度補償機能及び周波数制御機能を有する発振器であってもよいし、OCXO等の温度制御機能を有する発振器などであってもよい。VC-TCXOはVoltage Controlled Temperature Compensated Crystal Oscillatorの略である。また、OCXOは、Oven Controlled Crystal Oscillatorの略である。
【0074】
また、上記の実施形態では、T3端子に、出力バッファー20の出力を制御する信号が入力されるが、これ以外の制御信号が入力されてもよい。例えば、T3端子には、発振器1をスタンバイモードに設定するための制御信号が入力されてもよいし、発振器1がVCXO等の周波数制御機能を有する発振器であれば、クロック信号CKの周波数を制御するための信号が入力されてもよい。
【0075】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0076】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0077】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0078】
回路装置の一態様は、
振動子に接続される第1端子及び第2端子と、
前記第1端子からの信号を増幅して前記第2端子に出力する増幅回路と、
前記増幅回路と前記第2端子との間の信号経路上に設けられ、可変抵抗、前記可変抵抗の一端に設けられた第1スイッチ及び前記可変抵抗の他端に設けられた第2スイッチを含む可変抵抗回路と、
前記可変抵抗回路と並列に接続された第3スイッチと、
前記可変抵抗の抵抗値を制御し、かつ、前記第1スイッチ、前記第2スイッチ及び前記第3スイッチをそれぞれオン又はオフに制御する制御回路と、
を備える。
【0079】
この回路装置では、制御回路が、第1スイッチ及び第2スイッチをオンに制御し、第3スイッチをオフに制御することにより、振動子と可変抵抗とが電気的に接続された状態で振動子が発振する。そのため、この回路装置と接続される検査装置は、可変抵抗の抵抗値を変化させて振動子の発振余裕度を検査することができる。一方、制御回路が、第1スイッチ及び第2スイッチをオフに制御することにより振動子と可変抵抗とが電気的に切断され、第3スイッチをオンに制御することにより増幅回路と振動子とが可変抵抗を介さずに電気的に接続されるので、可変抵抗による負性抵抗への影響がほとんど生じることなく振動子が発振する。このように、この回路装置によれば、検査用の可変抵抗による負性抵抗への影響を低減させることができる。
【0080】
前記回路装置の一態様において、
第1モードでは、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチがオフとなり、かつ、前記第3スイッチがオンとなり、
第2モードでは、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチがオンとなり、かつ、前記第3スイッチがオフとなってもよい。
【0081】
この回路装置によれば、第1モードにおいて、第1スイッチ及び第2スイッチがオフとなって振動子と可変抵抗とが電気的に切断されるので、可変抵抗による負性抵抗への影響がほとんど生じない。また、第1モードにおいて、第3スイッチがオンとなって増幅回路と振動子とが電気的に接続されることにより振動子が発振するが、第3スイッチのオン抵抗や寄生容量による負性抵抗への影響は極めて小さい。一方、第2モードにおいて、第1スイッチ及び第2スイッチがオンとなり、第3スイッチがオフとなって振動子と可変抵抗とが電気的に接続されるので、検査装置は、可変抵抗の抵抗値を変化させて振動子の発振余裕度を検査することができる。
【0082】
前記回路装置の一態様において、
前記可変抵抗は、直列に接続された複数の抵抗と、前記複数の抵抗の各々と並列に接続された複数の抵抗値制御スイッチと、を含んでもよい。
【0083】
この回路装置によれば、第1モードにおいて、第1スイッチ及び第2スイッチがオフとなって振動子と可変抵抗とが電気的に切断されるので、可変抵抗に含まれる複数の抵抗や複数の抵抗値制御スイッチによる負性抵抗への影響がほとんど生じない。
【0084】
前記回路装置の一態様において、
前記複数の抵抗は、互いに抵抗値が異なる少なくとも2つの抵抗を含んでもよい。
【0085】
前記回路装置の一態様において、
前記複数の抵抗の抵抗値は、バイナリーに重みづけされていてもよい。
【0086】
この回路装置によれば、検査装置は、複数の抵抗値制御スイッチを適切に制御することにより、可変抵抗の抵抗値を一定量ずつ変化させることができるので、発振余裕度の検査を高精度かつ効率的に行うことができる。
【0087】
前記回路装置の一態様において、
前記可変抵抗回路は、
前記複数の抵抗値制御スイッチの少なくとも一部に接続され、前記少なくとも一部の前記抵抗値制御スイッチのそれぞれと逆論理でオン又はオフする少なくとも1つのダミースイッチを含んでもよい。
【0088】
この回路装置では、各ダミースイッチが、接続される抵抗値制御スイッチとは逆論理で動作するので、当該抵抗値制御スイッチのオン/オフによる負荷容量の変動が抑制される。したがって、この回路装置によれば、可変抵抗の抵抗値による負性抵抗の直線性を改善することができる。
【0089】
前記回路装置の一態様において、
前記少なくとも1つのダミースイッチは、前記複数の抵抗の内、抵抗値が最も小さい抵抗に接続された第1ダミースイッチを含んでもよい。
【0090】
この回路装置では、可変抵抗に含まれる複数の抵抗の内、抵抗値が最も小さい抵抗に接続される抵抗値制御スイッチのオン/オフによる負荷容量の変動が、負性抵抗に最も大きく影響する。これに対して、抵抗値が最も小さい抵抗に接続された第1ダミースイッチが、接続される抵抗値制御スイッチとは逆論理で動作するので、当該抵抗値制御スイッチのオン/オフによる負荷容量の変動が抑制される。したがって、この回路装置によれば、可変抵抗の抵抗値による負性抵抗の直線性を改善することができる。
【0091】
発振器の一態様は、
振動子と、
前記振動子に接続された回路装置と、
前記振動子及び前記回路装置を収容する容器と、を備え、
前記回路装置は、
前記振動子に接続される第1端子及び第2端子と、
前記第1端子からの信号を増幅して前記第2端子に出力する増幅回路と、
前記増幅回路と前記第2端子との間の信号経路上に設けられ、可変抵抗、前記可変抵抗の一端に設けられた第1スイッチ及び前記可変抵抗の他端に設けられた第2スイッチを含む可変抵抗回路と、
前記可変抵抗回路と並列に接続された第3スイッチと、
前記可変抵抗の抵抗値を制御し、かつ、前記第1スイッチ、前記第2スイッチ及び前記第3スイッチをそれぞれオン又はオフに制御する制御回路と、を含む。
【0092】
この発振器では、回路装置において、制御回路が、第1スイッチ及び第2スイッチをオンに制御し、第3スイッチをオフに制御することにより、振動子と可変抵抗とが電気的に接続された状態で振動子が発振する。そのため、この発振器と接続される検査装置は、可変抵抗の抵抗値を変化させて振動子の発振余裕度を検査することができる。一方、制御回路が、第1スイッチ及び第2スイッチをオフに制御することにより振動子と可変抵抗とが電気的に切断され、第3スイッチをオンに制御することにより増幅回路と振動子とが可変抵抗を介さずに電気的に接続されるので、可変抵抗による負性抵抗への影響がほとんど生じることなく振動子が発振する。このように、この発振器によれば、検査用の可変抵抗による負性抵抗への影響を低減させることができる。
【符号の説明】
【0093】
1…発振器、2…回路装置、3…振動子、3a…励振電極、3b…励振電極、4…パッケージ、5…リッド、6…外部端子、7,7a,7b…収容室、8…封止部材、10…発振回路、11…論理反転回路、12,13…抵抗、14,15…可変容量回路、16…可変抵抗回路、17…スイッチ、18…容量素子、20…出力バッファー、30…第1入出力回路、40…第2入出力回路、50…制御回路、51…シリアルインターフェース回路、52…レジスター、60…パワーオンリセット回路、100…検査装置、101,102、103…スイッチ、110…可変抵抗、111~121…スイッチ、131~141…抵抗、151~154…ダミースイッチ